JP5205702B2 - 積層型圧電素子及びその製造方法 - Google Patents

積層型圧電素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、積層型圧電素子に関し、特にCuを含む内部電極層及びAgを含む端子電極を備えた積層型圧電素子に関するものである。
従来から圧電素子は電気的エネルギを逆圧電効果により機械的エネルギに変換できる特性を利用して、種々の装置の駆動源として用いられている。一般的な圧電素子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電体層の両面に導体ペーストを印刷・焼成して電極層を形成した構造を有している。しかし、圧電体層が1層では得られる変位量が小さいため、大きな変位量を得たい場合には、圧電体層と内部電極層とを積層して変位量を増やしている。これが積層型圧電素子である。
図1は、積層型圧電素子1の構成例を示す断面図である。積層型圧電素子1は、複数の圧電体層11と複数の内部電極層12とを交互に積層した積層体10を備えている。圧電体層11の一層当たりの厚さは例えば1〜200μm、好ましくは20〜150μmである。なお、圧電体層11の積層数は目標とする変位量に応じて決定される。
圧電体層11を構成する圧電磁器組成物は、Pb、Ti及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とするのが一般的である。
内部電極層12は、導電材料を含有している。内部電極層12を構成する導電材料として、Ag、Ag−Pd合金等の貴金属が用いられていた。しかし、貴金属材料は積層型圧電素子1のコストを上昇させる要因の一つであることから、卑金属材料であるCuを導電材料として用いることが試みられている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、内部電極の導電材料としてCuを用い、端子電極をAgから構成した積層型圧電素子において、内部電極の端部に一層おきに突起状導電性端子を設けてこれを積層体と端子電極との界面から端子電極側に突出させることを提案している。
複数の内部電極層12は交互に逆方向に延長されており、その延長方向には内部電極層12と電気的に接続された一対の端子電極21がそれぞれ設けられている。端子電極21は、例えば、図示しないリード線を介して図示しない外部電源に対して電気的に接続される。
ここで、端子電極21を形成するための従来の工程を図2を用いて説明する。図2に示すように、まずAg、Pd等の導電材料、ガラス組成物及び有機ビヒクルを含む導体ペーストを積層体10に印刷し(S210)、乾燥させる。次いで、酸化性雰囲気で脱バインダを行なう(S220)。酸化性雰囲気で脱バインダを行うのは、還元性雰囲気では脱バインダが十分に進行しないためである。より安価な卑金属材料(例えばCu)で内部電極層12を構成する場合、酸化性雰囲気で脱バインダを行うと内部電極層12の一部が酸化されてしまう。このため、脱バインダ(S220)の後に還元処理(S230)を行い、酸化物を金属に戻す。そして、非酸化性雰囲気で端子電極21の焼き付けを行っている(S240)。このように非酸化性雰囲気で端子電極21の焼き付けを行うのは、例えばCu等の卑金属材料で内部電極層12を構成する場合、酸化性雰囲気(例えば、空気中)で端子電極21の焼き付けを行うと、低温で焼き付けを行ったとしても内部電極層12の一部が酸化し、導電性が損なわれるためである。
特開2004−95593号公報
このように非酸化性雰囲気において端子電極21の焼き付けを行うことにより内部電極層12自体の酸化は防げるが、内部電極層12がCuを含み、端子電極21の導電材料が純Agである場合に、内部電極層12と端子電極21との間の導通がとれない、という問題が生じた。
導通がとれない積層型圧電素子1の断面を観察した結果、内部電極層12を構成するCuが端子電極21側に過度に拡散してしまい、その結果、断線が生じていることがわかった。ここで、図3(a)は端子電極用ペーストPが積層体10の表面に印刷、乾燥された状態を模式的に示す部分断面図であり、図3(b)は端子電極21を焼き付けた後の内部電極層12の状態を模式的に示す部分断面図である。図3(a)に示すように、内部電極層12の端部は端子電極21の焼き付け前には積層体10の表面に露出している。ところが、端子電極21の焼き付けの過程で内部電極層12を構成するCuが端子電極21側に拡散してしまい、図3(b)に示すように端子電極21の焼き付け後には内部電極層12の端部は積層体10の内部に位置し、表面には露出しない。このため、内部電極層12と端子電極21との導通がとれないのである。ここで、端子電極21としてAgを、内部電極としてCuを用い、500〜600℃の温度範囲で端子電極21の焼き付けを行った場合の積層型圧電素子1のSEM(Scanning Electron Microscope)像を図11に示す。上記特許文献1では、端子電極側のAgを内部電極層を構成するCu側に拡散させて、内部電極層の端部に一層おきに突起状導電性端子を設けることを提案しているが、図11に示すようにAgがCu側に拡散する速度に比べて、CuがAg側に拡散する速度の方がはるかに速いため、特許文献1が提案しているAg拡散を利用した突起状導電性端子の実現は極めて困難である。
また、内部電極層12がCuを含み、かつ端子電極21の導電材料がAg合金、特にAg−Pdである場合に、端子電極21の密着性が不十分である、という問題が生じている。その原因を検討した結果、端子電極21の焼き付けの過程で内部電極層12を構成するCuが図3(c)に示すように端子電極21側に突き出して端子電極21を部分的に押し上げ、これにより、積層体10と端子電極21との間に空孔が形成されて端子電極21と積層体10との密着性が低下していることがわかった。近年、積層型圧電素子1は高速応答の次世代自動車エンジン燃料噴射制御装置の電子部品として注目されているが、この用途の積層型圧電素子1は、高電界、高圧力下で連続的に駆動されるものであり、端子電極21が積層体10から剥離しないような高い密着性が要求されている。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、Cuを内部電極の導電材料として用いた場合にも内部電極層と端子電極との間の導通が確保されるとともに、端子電極と積層体との密着性が高い積層型圧電素子を提供することを目的とする。
上記した問題は、内部電極層中のCuが端子電極の焼き付け過程で拡散してしまうことに起因している。そこで、本発明者等はCuの拡散を抑制するために様々な検討を行った。その結果、内部電極層の端部が酸化された状態で端子電極の焼き付けを行うことにより、Cuの拡散を抑制することができることを知見した。すなわち、本発明は、複数の圧電体層と、複数の圧電体層間に形成されたCuを含む内部電極層とを備える積層体と、積層体に接合され、内部電極層の端部と接触して内部電極層と外部の電源とを電気的に接続する端子電極とを備える積層型圧電素子の製造方法において、まず、圧電体層前駆体と、内部電極層前駆体とが積層された状態で焼成して積層体を得た後、積層体の所定領域に端子電極前駆体を塗布する。次いで、内部電極層の端部が酸化された状態で端子電極前駆体を積層体に焼き付けて端子電極を形成し、その後、端子電極が形成された積層体を還元性雰囲気中で熱処理する。内部電極層の端部が酸化された状態で端子電極の焼き付けを行うには、内部電極層の端部を予め酸化処理した後に焼き付けを行えばよいことはもちろんであるが、焼き付けの初期に内部電極層の端部を酸化させ、酸化物を介在させた状態で焼き付けを進行する形態も本発明は包含する。
従来法では図2に示したように、端子電極の焼き付けの直前に内部電極層の還元処理を行っているが、本願では内部電極層の端部をあえて酸化させた状態で焼き付けを行って、焼き付け過程におけるCuの拡散を抑制し、焼き付け後の熱処理により、内部電極層の端部を還元する。焼き付け後の熱処理により、内部電極層と端子電極とが電気的に接続される。
上述した端子電極前駆体の焼き付けは酸化性雰囲気中で行うことができるが、非酸化性雰囲気中で行ってもよい。非酸化性雰囲気中で焼き付けを行う場合には、焼き付けの前に内部電極層の端部が酸化されていればよい。
端子電極はAgを含むものとすることができる。Agは耐酸化性に優れる点で端子電極として好適である。そして、Agを含む端子電極を採用した場合にCuの拡散が顕著であることは上述の通りであるが、内部電極層の端部が酸化された状態で端子電極の焼き付けを行うという本発明によれば、焼き付け過程におけるCuの拡散を抑制することができるからである。
上述した焼き付けは450〜700℃で行うことが好ましい。
本発明の積層型圧電素子の製造方法によれば、Cu又はCu合金から構成される内部電極層とAgを含む端子電極とを備えた積層型圧電素子であって、積層体と端子電極との界面を基準として、端子電極と接触する内部電極層の端部における端子電極側への突出量が3μm以下、さらには1μm未満である積層型圧電素子を得ることができる。
従来法で作製された積層型圧電素子では、端子電極としてAg−Pd合金を用いた場合には図3(c)に示したように、内部電極層の端部における端子電極側への突出量が6μm程度と大きかった。これに対し、本発明の積層型圧電素子では、Ag−Pd合金を端子電極として用いた場合にも、上記突出量を3μm以下、さらには1μm未満とすることができ、端子電極と積層体との密着強度が高い。
本発明によれば、Cuを内部電極の導電材料として用いた場合にも内部電極層と端子電極との間の導通が確保されるとともに、端子電極と積層体との密着性が高い積層型圧電素子が提供される。
積層型圧電素子1の基本的な構成は、すでに図1に基づいて説明したので省略し、ここでは図4を参照しつつ積層型圧電素子1の製造工程を説明し、本発明についてより具体的に説明する。
図4は積層型圧電素子1の製造工程を示すフローチャートである。
まず、圧電体層11を得るための主成分の出発原料として、例えば、PbO、TiO、ZrO、ZnO及びNb又は焼成によりこれら酸化物に変わり得る化合物;SrO、BaO及びCaOから選ばれる少なくとも一つの酸化物又は焼成によりこれら酸化物に変わり得る化合物等の粉末を用意し、秤量する(ステップS101)。出発原料としては、酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよい。これらの原料粉末は、通常、平均粒子径0.5〜10μm程度のものが用いられる。
必要に応じて副成分の出発原料をそれぞれ用意し、秤量する(ステップS101)。副成分の出発原料としては、例えばTa、Sb、Nb及びWOから選ばれる少なくとも一つの酸化物又は焼成によりこれら酸化物に変わり得る化合物を用いることができる。ただし、酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよい。これら副成分は、焼結性を向上させ、焼成温度をより低くする効果を奏する。
続いて、主成分及び副成分の出発原料を例えばボールミルを用いて湿式粉砕・混合して、原料混合物とする(ステップS102)。
なお、副成分の出発原料は、後述する仮焼成(ステップS103)の前に添加してもよいが、仮焼成後に添加するようにしてもよい。但し、仮焼成前に添加した方がより均質な圧電体層11を作製することができるので好ましい。仮焼成後に添加する場合には、副成分の出発原料には酸化物を用いることが好ましい。
次いで、原料混合物を乾燥し、例えば、600〜950℃の温度で1〜6時間にわたり仮焼成する(ステップS103)。この仮焼成は、大気中で行っても良く、また大気中よりも酸素分圧の高い雰囲気又は純酸素雰囲気で行ってもよい。仮焼成したのち、例えば、この仮焼成物をボールミルにて湿式粉砕・混合し、主成分及び必要に応じて副成分を含む仮焼成粉とする(ステップS104)。
次に、この仮焼成粉にバインダを加えて圧電体層用ペーストを作製する(ステップS105)。具体的には以下の通りである。はじめに、例えばボールミル等を用いて、湿式粉砕によりスラリを得る。このとき、スラリの溶媒として、水もしくはエタノールなどのアルコール、又は水とエタノールとの混合溶媒を用いることができる。湿式粉砕は、仮焼成粉の平均粒径が0.5〜2.0μm程度となるまで行うことが好ましい。
次いで、得られたスラリを有機ビヒクル中に分散させる。有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものであり、有機ビヒクルに用いられるバインダは、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、このとき用いられる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート成形法など、利用する方法に応じてテルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、MEK(メチルエチルケトン)、ターピネオール等の有機溶剤から適宜選択すればよい。
ペーストの有機ビヒクルの含有量は、特に限定されず、通常の含有量、たとえば、バインダは5〜10質量%程度、溶剤は10〜50質量%程度とすればよい。また、ペースト中には必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されてもよい。
内部電極層用ペースト、端子電極用ペーストも同様の有機ビヒクルを用いればよい。
圧電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、仮焼成粉とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
また、内部電極層用ペーストを作製する(ステップS106)。
内部電極層用ペーストは、導電材料としてのCu粒子と、上述した有機ビヒクルとを混練して調製される。
また、端子電極用ペーストを作製する(ステップS107)。
端子電極用ペーストは、導電材料、ガラス及び有機ビヒクルを含む。この中で、ガラスは端子電極21を積層体10へ接合する役割を果たす。また、有機ビヒクルは、ペースト作製のために添加される。
導電材料としては、従来から用いられているAg、Pd、Cu、Ni、Ptからなる粒子を用いることができる。この導電材料は前記元素の合金とすることもできる。この粒子の粒径は、0.1〜3.0μmの範囲から適宜選択すればよい。また、端子電極用ペーストにおける導電材料の量は50〜85質量%の範囲とすることが好ましい。50質量%未満では、金属量が少なすぎて、かすれを生じ、内部電極層と接しない領域ができる場合がある。また、85質量%を超えると、ペースト化ができなくなる。端子電極用ペーストにおけるより好ましい導電材料の量は70〜80質量%である。
Agは耐酸化性に優れ、PdやPtよりも安価であることから、端子電極用ペーストの導電材料はAgを主体とすることが好ましい。また、純Ag、AgとPdとの混合粉末、Ag−Pd合金は、所定の静電容量を得つつ端子電極21の密着強度を高めることができるため、好ましい。Ag−Pd合金を導電材料として用いる場合には、Pdの割合を30wt%以下とすることが好ましい。Pdの割合がこの範囲にあるときに、積層体10に対する端子電極21の密着強度が特に高いからである。Ag−Pd合金におけるPdのより好ましい割合は15wt%以下である。なお、AgとPdとの混合粉末を導電材料として用いる場合には、Ag−Pd合金を用いる場合に準じて両者の割合を設定すればよい。
端子電極用ペーストにおけるガラスの量は3〜20質量%の範囲とすることが好ましい。3質量%未満では、積層体10に対する十分な密着性を確保することが困難となる。また、20質量%を超えると、ガラスが導電材料の焼結を阻害するようになり、端子電極21に十分な導電性を付与することが困難となる。端子電極用ペーストにおけるより好ましいガラスの量は5〜15質量%である。
以上では圧電体層用ペースト、内部電極層用ペースト及び端子電極用ペーストを順番に作製しているが、並行して作製してもよいし、逆の順番でもよいことは言うまでもない。
次に、以上のペーストを用いて焼成の対象であるグリーンチップ(積層体)を作製する(ステップS108)。
印刷法を用いグリーンチップを作製する場合は、圧電体層用ペーストを、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の基板上に所定厚さで複数回印刷して、図1に示すように、グリーン状態の外側圧電体層11aを形成する。次に、このグリーン状態の外側圧電体層11aの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層(内部電極層前駆体)12aを形成する。次に、このグリーン状態の内部電極層12aの上に、前記同様に圧電体層用ペーストを所定厚さで複数回印刷して、グリーン状態の圧電体層(圧電体層前駆体)11bを形成する。次に、このグリーン状態の圧電体層11bの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層12bを形成する。グリーン状態の内部電極層12a、12b…は、対向して相異なる端部表面に露出するように形成する。以上の作業を所定回数繰り返し、最後に、グリーン状態の内部電極層12の上に、前記同様に圧電体層用ペーストを所定厚さで所定回数印刷して、グリーン状態の外側圧電体層11cを形成する。その後、加熱しながら加圧、圧着し、所定形状に切断してグリーンチップ(積層体)とする。
以上では、印刷法によりグリーンチップを作製する例を説明したが、シート成形法を用いてグリーンチップを作製することもできる。
次に、グリーンチップについて脱バインダ処理を行う(ステップS109)。
脱バインダ処理において、内部電極層前駆体中の導電材料によってその雰囲気を決定する必要がある。本発明ではCuを導電材料として用いるため酸化を考慮する必要があり、還元性雰囲気中で脱バインダ処理を行う。また、脱バインダ処理において、圧電体層前駆体に含まれる酸化物、例えばPbOが還元されることを考慮する必要がある。よって、CuとCuOの平衡酸素分圧(以下、単にCuの平衡酸素分圧)及びPbとPbOの平衡酸素分圧(以下、単にPbの平衡酸素分圧)に基づいて、いかなる還元性雰囲気を脱バインダ処理に適用するか設定することが好ましい。
脱バインダ処理の温度が300℃未満では脱バインダを円滑に行うことができず、650℃を超えても温度に見合う脱バインダの効果を得ることができずエネルギの浪費になる。また、脱バインダ処理の時間は、温度及び雰囲気によって定める必要があるが、0.5〜50時間の範囲で選定することができる。さらに、脱バインダ処理は、焼成と別個に独立して行うことができるし、焼成と連続的に行うことができる。焼成と連続的に行う場合には、焼成の昇温過程で脱バインダ処理を実行すればよい。
脱バインダ処理の後に、焼成(ステップS110)を行う。
積層体10は、還元焼成条件において焼成することが好ましい。積層体10の作製に際し、酸化性雰囲気中で焼成すると、例えば内部電極層12の電極材料として貴金属を用いる必要がある。これに対して、積層体10は、還元焼成条件において焼成されたものであるので、本発明では安価なCuを内部電極層12に用いることができる。ここで、還元焼成条件としては、例えば、焼成温度800℃〜1200℃、酸素分圧1×10−10〜1×10−6気圧である。
焼成温度が800℃未満では焼成が十分に進行せず、また1200℃を超えるとCuの溶融が懸念される。好ましい焼成温度は850〜1100℃、さらに好ましい焼成温度は900〜1050℃である。
酸素分圧が1×10−10気圧未満では圧電体層前駆体に含まれる酸化物、例えばPbOが還元されて金属Pbとして析出し、最終的に得られる焼結体の圧電歪定数を低下させる恐れがあり、また1×10−6気圧を超えると電極材料であるCuの酸化が懸念される。好ましい酸素分圧は1×10−9〜1×10−7気圧、さらに好ましい酸素分圧は1×10−8〜1×10−7気圧である。
焼成後の圧電体層11は、Pb、Ti及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とすることが好ましい。この複合酸化物の例としては、例えばチタン酸鉛(PbTiO)とジルコン酸鉛(PbZrO)及び亜鉛・ニオブ酸鉛[Pb(Zn1/3Nb2/3)O]により構成される3元系の複合酸化物や、前記3元系の複合酸化物においてPbの一部をSr、Ba、Ca等で置換した複合酸化物が掲げられる。
具体的な組成としては、下記(1)式、あるいは(2)式で表される複合酸化物を挙げることができる。なお、これら(1)式、あるいは(2)式において、酸素の組成は化学量論的に求めたものであり、実際の組成においては、化学量論組成からのずれは許容されるものとする。
Pb[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O ・・・(1)
(ただし、0.96≦a≦1.03、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。)
(Pba−bMe)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O ・・・(2)
(ただし、0.96≦a≦1.03、0<b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。また、式中のMeは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種を表す。)
前記複合酸化物は、いわゆるペロブスカイト構造を有しており、Pb及び(2)式における置換元素Meについては、ペロブスカイト構造のいわゆるAサイトに位置する。ZnやNb、Ti、Zrは、ペロブスカイト構造のいわゆるBサイトに位置する。
前記(1)式や(2)式で表される複合酸化物において、Aサイト元素の割合aは、0.96≦a≦1.03であることが好ましい。Aサイト元素の割合aが0.96未満であると、低温での焼成が困難になるおそれがある。逆に、Aサイト元素の割合aが1.03を超えると、得られる圧電磁器組成物の密度が低下し、その結果、十分な圧電特性が得られなくなるおそれがあり、機械的強度も低下するおそれがある。さらに好ましいAサイト元素の割合aは0.98≦a≦1.01であり、より好ましいAサイト元素の割合aは0.99≦a≦1.005である。
前記(2)式で表される複合酸化物においては、Pbの一部を置換元素Me(Sr,Ca,Ba)で置換しているが、これにより圧電歪定数を大きくすることができる。ただし、置換元素Meの置換量bが多くなりすぎると、焼結性が低下してしまい、その結果、圧電歪定数が小さくなり、機械強度も低下する。また、キュリー温度も置換量bの増加に伴って低下する傾向にある。したがって、置換元素Meの置換量bは、0.1以下とすることが好ましい。さらに好ましい置換元素Meの置換量bは0.06以下であり、より好ましい置換元素Meの置換量bは0.04以下である。
一方、Bサイト元素のうち、ZnとNbの割合xは、0.05≦x≦0.15とすることが好ましい。前記割合xは焼成温度に影響を与え、この値が0.05未満であると焼成温度を低下させる効果が不足するおそれがある。逆に0.15を超えると、焼結性に影響を及ぼし、その結果、圧電歪定数が小さくなるとともに、機械的強度が低下するおそれがある。さらに好ましいZnとNbの割合xは0.06≦x≦0.125であり、より好ましいZnとNbの割合xは0.08≦x≦0.1である。
Bサイト元素のうちTiの割合y及びZrの割合zは、圧電特性の観点から好ましい範囲が設定される。具体的には、Tiの割合yは、0.25≦y≦0.5であることが好ましく、Zrの割合zは、0.35≦z≦0.6であることが好ましい。前記範囲内に設定することで、モルフォトロピック相境界(MPB)付近において、大きな圧電歪定数を得ることができる。さらに好ましいTiの割合yは0.275≦y≦0.48であり、より好ましいTiの割合yは0.3≦y≦0.45である。また、さらに好ましいZrの割合zは0.375≦z≦0.55であり、より好ましいZrの割合zは0.35≦z≦0.5である。
以上の工程を経て作製された積層体10は、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、端子電極用ペーストを印刷、焼き付けることにより端子電極21を形成する(ステップS111)。
本発明は端子電極21の形成方法に特徴を有する。以下、この特徴について、図5〜図7を用いて説明する。
図5は本実施の形態における端子電極21の形成手順を示すフローチャートである。まず、図3(a)に示したように、端子電極用ペーストPを積層体10の所定の領域に印刷(ステップS201)した後に、端子電極用ペーストPを乾燥する。
次いで脱バインダを兼ねた焼き付けを行う(ステップS202)。焼き付けは、酸化性雰囲気中、例えば大気中、450〜700℃で0.1〜3時間程度保持すればよい。なお、脱バインダ処理は焼き付けの昇温過程で実行することができる。450℃未満又は700℃を超える焼き付けでは端子電極21の密着強度が低い。より好ましい焼き付け温度は500〜600℃、さらに好ましくは500〜560℃である。焼き付けに要する時間は採用する焼き付け温度ならびに積層型圧電素子1のサイズに応じて適宜設定すればよい。
酸化性雰囲気中で焼き付けを行うと、図6(a)に示すように端子電極21と接する内部電極層12の端部は酸化され、その端部の表面に酸化物Oが形成される。内部電極層12がCuで構成される場合、端子電極21と接触する内部電極層12の端部はCuO(又はCuO)となる。このように、本発明では、内部電極層12を構成するCuの一部を焼き付けの過程であえて酸化させる。積層体10と端子電極21との界面で、内部電極層12を構成するCuと端子電極21を構成する金属、例えばAgとが接触した状態で焼き付けが進行すると、AgがCu側へ拡散する速度よりもCuがAg側へ拡散する速度の方がはるかに速いために、Cu(内部電極層12)がAg(端子電極21)側に過度に拡散してしまう。その結果、図3(b)に示したように、焼き付けにより端子電極21が形成された後には、内部電極層12と端子電極21との間で断線が生じてしまう。これに対し、図6(a)に示すように、内部電極層12を構成するCuと端子電極21を構成するAgとの間に酸化物Oを介在させて焼き付けを行うと、Cu原子の移動が酸化物Oにより阻害されるためにCuの端子電極21側への拡散を抑制することができる。端子電極21がAg−Pd合金から構成される場合には、内部電極層12を構成するCuと端子電極21を構成するAg−Pd合金との間に酸化物Oを介在させて焼き付けを行うと、やはりCu原子の移動が酸化物Oにより阻害されるために、図3(c)に示したような端子電極21側へのCuの突き出しを抑制することができる。
次に、還元処理を行う(ステップS203)。焼き付けの過程で、内部電極層12を構成するCuの一部が酸化し、形成された酸化物Oが図6(a)に示したように端子電極21と接することになるため、このままでは内部電極層12と端子電極21との間で導通がとれない。そこで、還元処理を施すことにより、図6(b)に示すように酸化物O、つまりCuOを金属Cuに戻し、内部電極層12と端子電極21との間の導通を確保するのである。還元処理は、還元ガス、例えば水素と不活性ガスの混合ガス雰囲気で300〜400℃で0.1〜1時間加熱保持すればよい。還元処理の温度が400℃を超えて上記した焼き付けの温度と同等になると、端子電極21中のガラス成分が溶融してしまうという不具合がある。また還元処理の温度が300℃未満では還元が十分に進まず、得られた積層型圧電素子1の静電容量が低下することから、300〜400℃の範囲内で還元処理を行うことが好ましい。水素と窒素の混合ガス雰囲気で還元処理を行う場合には、水素濃度が窒素に対して1〜5%であることが好ましい。
以上により、図1に示した積層型圧電素子1を得ることができる。
なお、焼き付けを酸化性雰囲気で行う場合について説明したが、非酸化性雰囲気で焼き付けを行ってもよい。この場合における工程の手順を図7に示している。
まず上述した場合と同様にして端子電極用ペーストPを印刷(ステップS201)した後に、端子電極用ペーストPを乾燥し、次いで酸化性雰囲気中で脱バインダを行う(ステップS301)。これにより、端子電極21と接する内部電極層12の端部は酸化され、図6(a)に示したようにその端部の表面に酸化物Oが形成される。脱バインダの条件は、積層体10を得る工程における条件を踏襲することができる。
次に、非酸化性雰囲気、例えば窒素等の不活性ガス雰囲気で焼き付けを行う(ステップS302)。内部電極層12を構成するCuの一部が脱バインダの過程ですでに酸化しているため、ここでの焼き付けは図6(b)に示したように、内部電極層12を構成するCuと端子電極21を構成する金属、例えばAgとの間に酸化物Oを介在させた状態で進行する。酸化物Oの介在により、焼き付け過程でCuが端子電極21側へ拡散することが抑制される。端子電極21がAg−Pd合金から構成される場合には、内部電極層12を構成するCuと端子電極21を構成するAg−Pd合金との間に酸化物Oを介在させて焼き付けを行うことにより、図3(c)に示したような端子電極21側へのCuの突き出しを抑制することができる。
続く還元処理(ステップS303)では図6(b)に示したように酸化物O、つまりCuOを金属Cuに戻し、内部電極層12と端子電極21との間の導通を確保する。図7の還元処理(ステップS303)は図5の還元処理(ステップS203)と同様にして行えばよい。ただし、非酸化性雰囲気で焼き付けを行った場合には、酸化性雰囲気で焼き付けを行った場合に比べて内部電極層12を構成するCuの酸化の度合が軽微であることから、還元処理に要する時間を短縮することができる。
本発明の積層型圧電素子1の製造方法によれば、焼き付け過程でCuが端子電極21側へ拡散することが抑制されるため、得られた積層型圧電素子1は以下の形態を有する。すなわち、積層体10と端子電極21との界面を基準として、端子電極21と接触する内部電極層12の端部における端子電極21側への突出量はわずか3μm以下である。なお、従来法で作製された場合には、その突出量は6μm程度である。
上述のように、本発明の積層型圧電素子1の製造方法によれば、焼き付け過程でCuが端子電極21側へ拡散することが抑制されるため、Cuの拡散に起因した断線や端子電極21の積層体10からの剥離を防止することができる。本発明の積層型圧電素子1によれば、以下の実施例で示すように、端子電極21の密着強度が7N以上、さらには10N以上と高いため、本発明の積層型圧電素子1は高速応答の次世代自動車エンジン燃料噴射制御装置の電子部品として好適である。
下記の主成分に対して、副成分としてTaを1質量%添加して圧電磁器組成物を作製した。
主成分:(Pb0.992Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O
圧電磁器組成物は、次のようにして作製した。先ず、主成分の原料として、PbO粉末、SrCO粉末、BaCO粉末、CaCO粉末、ZnO粉末、Nb粉末、TiO粉末、ZrO粉末を用意し、前記主成分の組成となるように秤取した。なお、式中のMeはSr、Ba、Caのいずれかである。次に、ボールミルを用いてこれら原料を湿式混合し、大気中において850℃で3時間仮焼した。得られた仮焼物を粉砕した圧電磁器組成物粉末に有機ビヒクルを加え、混練して圧電体層用ペーストを作製した。それとともに、導電材料であるCu粉末を有機ビヒクルと混練し、内部電極層用ペーストを作製した。続いて、圧電体層用ペースト及び内部電極層用ペーストを用いて、印刷法により積層体の前駆体であるグリーンチップを作製した。積層数は300であり、各圧電体層の厚さが80μm、各内部電極層の厚さは3μmである。さらに、脱バインダ処理を行い、還元焼成条件で焼成し、積層体を得た。還元焼成条件としては、還元性雰囲気(酸素分圧1×10−10〜1×10−6気圧)下、焼成温度950℃で8時間焼成を行った。
また、以下の手順で端子電極用ペーストを作製した。
導電材料粉末として平均粒径0.6μmのAg−Pd合金粉末、ガラス粉末及び有機ビヒクルを用意した。導電材料粉末:75質量%、ガラス粉末:10質量%、有機ビヒクル:残部を混合して導体ペーストを得た。なお、有機ビヒクルとしては、アルカリ系樹脂を用いた。
続いて、図5に示した手順で、得られた積層体にスクリーン印刷法により端子電極用ペーストを印刷し、乾燥した後に大気中、表1に示す各温度で10分間保持する脱バインダ兼焼き付けを行って端子電極を形成した。次いで、350℃、4%H−Nガス雰囲気で30分間保持する還元処理を行った。
次に、端子電極21上に、Snめっきを施したL字状のCu線Wを図8に示すようにはんだ付けした。Cu線Wを図8の矢印で示す方向に10mm/minの速度で引張りながら、積層体10から端子電極21が剥離したときの強度を密着強度として測定した。その結果を表1に示す。
Figure 0005205702
表1に示すように、焼き付け温度が400℃、850℃の場合には密着強度が全く得られず、焼き付け温度が800℃の場合には密着強度が3.0Nと低い。これに対して、焼き付け温度が450〜700℃の場合には、7N以上、さらには10N以上の密着強度が得られ、積層型圧電素子の端子電極として十分な密着性が得られることがわかった。
500〜800℃で端子電極の焼き付けを行って作製した積層型圧電素子について、以下の条件で還元処理を行った後、150℃のシリコーンオイル中で2.5kVの電界を5分間印加し、分極処理を行った。その後、静電容量、誘電率ε、変位を評価した。その結果を表1に示す。なお、静電容量および誘電率εはインピーダンスアナライザーを用いて測定周波数1kHzで測定した。変位は2.0kV/mmの電圧を印加したときの測定値であり、レーザードップラー変位計により測定した。
<還元処理の条件>
端子電極を焼き付けた積層体を管状炉へセットした後、4%H−Nガスを流し、炉内が十分に還元雰囲気で満たされるよう20分間フローした。その後、室温から350℃まで10℃/minの昇温速度で昇温し、350℃に達したところで30分間温度を保持し還元を行った後、100℃以下まで降温した。
表1に示すように、各試料について1.8μF以上の静電容量が得られていることから、端子電極を酸化性雰囲気中で焼き付けた後に還元処理を行った場合にも、内部電極層と端子電極との間で導通が確保されていることは明らかである。
また、焼き付け温度が500〜580℃の場合に、変位量が28μm以上と大きいが、焼き付け温度が700℃になると変位量が28μm未満となってしまう。よって、焼き付け温度は500〜600℃とすることが好ましい。そして、変位量が28μm以上と大きい試料は9N以上という高い密着強度を得ていることから、端子電極の密着強度を高めることが高い圧電特性を得る上で有効であるといえる。焼き付け温度が500〜560℃の場合には、上記特性に加えて1.84μF以上の静電容量及び2200以上の誘電率εも得ることができるため、この温度範囲で焼き付けを行うことがより好ましい。
<比較例1>
図2に示した手順で端子電極の形成を行った以外は、上記と同様にして積層型圧電素子を作製した。具体的には、上記で得られた積層体にスクリーン印刷法により端子電極用ペーストを印刷し、乾燥した後に大気中、350℃で10分間保持することにより脱バインダを行った。ついで、350℃、4%H−Nガス雰囲気で30分間保持する還元処理を行った後に、Nガス雰囲気中、表1に示す各温度で10分間保持する焼き付けを行って端子電極を形成し積層型圧電素子を作製した。得られた積層型圧電素子について、上記と同様の方法で端子電極の密着強度を測定した。その結果を表2に示す。なお、比較の便宜のために、実施例1で作製した積層型圧電素子における端子電極の密着強度も表2に併せて示す。
Figure 0005205702
表2に示すように、図2に示した手順で端子電極を形成した場合には、図5に示した手順で端子電極を形成した場合と比較して密着強度が得られる焼き付け温度の範囲が狭い。また、図2に示した手順で端子電極を形成した場合には、焼き付け温度を変動させても7N以上の密着強度を得ることができず、密着強度の最大値は6Nに留まった。
ここで、540℃で端子電極の焼き付けを行った実施例1の積層型圧電素子のSEM像を図9に、540℃で端子電極の焼き付けを行った比較例1の積層型圧電素子のSEM像を図10にそれぞれ示す。なお、実施例1の積層型圧電素子は端子電極の焼き付け後、かつ還元処理前のものである。
図9に示すように、図5に示す手順で端子電極の形成を行った実施例1については、端子電極と積層体との界面に略一致するように内部電極の端面が位置していた。つまり、図6(a)の模式図とほぼ同様の状態であった。端子電極と積層体との界面を基準として内部電極の端部が端子電極側に突出している量はわずか1μmであった。還元後には図6(b)の模式図とほぼ同様の状態になっているものと判断される。
これに対し、図2に示す手順で端子電極の形成を行った比較例1については、端子電極と積層体との界面を基準として内部電極の端部が端子電極側に突出しており、端子電極が積層体から剥離している箇所があった。つまり、図3(c)の模式図と同様の状態であった。その突出量は約6μmであった。
端子電極の導電材料として表3に示すものを用い、540℃で端子電極の焼き付けを行った以外は実施例1と同様の条件で積層型圧電素子を作製した。得られた積層型圧電素子について、上記と同様の方法で端子電極の密着強度を測定した。その結果を表3に示す。なお、比較の便宜のために、540℃で端子電極の焼き付けを行った実施例1で作製した積層型圧電素子(端子電極の導電材料:Ag−Pd合金)の密着強度も表3に併せて示す。
Figure 0005205702
表3に示すように、AgとPdとの混合粉末を用いた場合、ならびにAg−Pt合金を用いた場合に10N以上という高い密着強度を得ることができた。また、AgとPdとの混合粉末を用いた場合には、Ag−Pd合金を用いた場合と同等の密着強度を示した。高い密着強度を得ることができること、ならびにPdがPtよりも安価であることを考慮すると、端子電極にはAgとPdとの混合粉末、Ag−Pd合金及び純Agのうちのいずれかを用いることが好ましい。
なお、得られた積層型圧電素子について静電容量を測定したところ、いずれも1.0μF以上という良好な値を示した。
端子電極の導電材料として、Pdの割合が表4に示すものであるAg―Pd合金を用い、540℃で端子電極の焼き付けを行った以外は実施例1と同様の条件で積層型圧電素子を作製した。得られた積層型圧電素子について、上記と同様の方法で端子電極の密着強度を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 0005205702
表4に示すように、Ag−Pd合金におけるPdの割合が0〜50wt%の場合に、9N以上という高い密着強度を得ることができた。Pdの割合が増加すると密着強度が増加するが、Pdの割合が45wt%になると、Pdを含有しない場合の密着強度を下回る。よって、端子電極の導電材料としてAg−Pd合金を用いる場合には、Pdの割合を0超30wt%以下とすることが好ましい。AgよりもPdの方が高価であることを考慮すると、Ag−Pd合金を用いる場合におけるPdの割合は15wt%以下であることがより好ましい。
本実施の形態における積層型圧電素子の一構成例を示す図である。 従来法における端子電極の形成手順を示すフローチャートである。 (a)は端子電極用ペーストが積層体の表面に印刷、乾燥された状態を模式的に示す部分断面図、(b)は端子電極がAgから構成されている場合における端子電極焼き付け後の内部電極の状態を模式的に示す部分断面図、(c)は端子電極がAg−Pd合金から構成されている場合における端子電極焼き付け後の内部電極の状態を模式的に示す部分断面図である。 本実施の形態における積層型圧電素子の製造手順を示すフローチャートである。 本実施の形態における端子電極の形成手順を示すフローチャートである。 (a)は内部電極層の端部が酸化され、その端部の表面に酸化物が形成された状態を模式的に示す部分断面図、(b)は内部電極層の酸化された端部が還元された状態を模式的に示す部分断面図である。 本実施の形態における端子電極の形成手順を示す他のフローチャートである。 本実施例における端子電極の密着強度の測定方法を示す図である。 540℃で端子電極の焼き付けを行った実施例1の積層型圧電素子のSEM像である。 540℃で端子電極の焼き付けを行った比較例1の積層型圧電素子のSEM像である。 端子電極としてAgを、内部電極としてCuを用い、500〜600℃の温度範囲で端子電極の焼き付けを行った場合の積層型圧電素子のSEM像である。
符号の説明
1…積層型圧電素子、10…積層体、11…圧電体層、12…内部電極層、21…端子電極、O…酸化物

Claims (6)

  1. 複数の圧電体層と、複数の前記圧電体層間に形成されたCuを含む内部電極層とを備える積層体と、
    前記積層体に接合され、前記内部電極層の端部と接触して前記内部電極層と外部の電源とを電気的に接続する端子電極とを備える積層型圧電素子の製造方法であって、
    圧電体層前駆体と、内部電極層前駆体とが積層された状態で焼成して前記積層体を得る工程と、
    前記積層体の所定領域に端子電極前駆体を塗布する工程と、
    前記内部電極層の前記端部が酸化された状態で前記端子電極前駆体を前記積層体に焼き付けて前記端子電極を形成する工程と、
    前記端子電極が形成された前記積層体を還元性雰囲気中で熱処理する工程と、
    を備えることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  2. 前記端子電極前駆体の焼き付けは酸化性雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子の製造方法。
  3. 前記熱処理により、酸化された前記内部電極層の前記端部が還元されることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層型圧電素子の製造方法。
  4. 前記端子電極はAgを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層型圧電素子の製造方法。
  5. 前記焼き付けは450〜700℃で行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層型圧電素子の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法で作製されたことを特徴とする積層型圧電素子。
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