JP4290946B2 - 積層型圧電素子及び噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型圧電素子及び噴射装置に関し、例えば、自動車用燃料噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止用の駆動素子等に用いられる積層型圧電素子及び噴射装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来より、積層型圧電素子としては、圧電磁器と内部電極を交互に積層した積層型圧電アクチュエータが知られている。積層型圧電アクチュエータには、同時焼成タイプと、圧電磁器と内部電極板を交互に積層したスタックタイプとの2種類に分類されており、低電圧化、製造コスト低減の面から考慮すると、同時焼成タイプの積層型圧電アクチュエータが薄層化に対して有利であるために、その優位性を示しつつある。
【0003】
図5は、従来の積層型圧電アクチュエータを示すもので、このアクチュエータでは、圧電磁器51と内部電極52が交互に積層されて柱状積層体53が形成され、その積層方向における両端面には不活性層55が積層されている。内部電極52は、その一方の端部が左右交互に絶縁体61で被覆され、その上から帯状外部電極70が内部電極52と左右各々一層おきに導通するように形成されている。帯状外部電極70上には、さらにリード線76が半田77により固定されている。
【0004】
ところで、近年においては、小型の圧電アクチュエータで大きな圧力下において大きな変位量を確保するため、より高い電界を印加し、長期間連続駆動させることが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した圧電アクチュエータでは、高電界、高圧力下で長期間連続駆動させた場合、圧電磁器51間に形成された内部電極52と、正極、負極用の外部電極70との間で剥離が発生し、一部の圧電磁器51に電圧供給されなくなり、駆動中に変位特性が変化するという問題があった。
【0006】
また、一般に内部電極として高価なAg/Pdが用いられており、しかも近年における圧電磁器の薄層化、積層数の増加に伴い、使用するAg/Pd量が増加し、製造コストが増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、高電界、高圧力下で長期間連続駆動させた場合でも、外部電極と内部電極とが断線することがなく、耐久性に優れた安価な積層型圧電素子及び噴射装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層型圧電素子は、耐還元性の圧電磁器と卑金属からなる内部電極とを交互に積層してなる柱状積層体と、該柱状積層体の側面に設けられ、前記内部電極が一層おきに交互に電気的に接続された一対の外部電極とを具備してなる積層型圧電素子であって、前記内部電極の端部に一層おきに前記柱状積層体の側面から突出する突起状導電性端子を設け、該突起状導電性端子を、導電性接着剤を塗布して形成された前記外部電極中に埋設してなるとともに、前記突起状導電性端子が前記内部電極の端部に拡散接合していることを特徴とする。
【0009】
本発明の積層型圧電素子では、内部電極の端部には突起状導電性端子が設けられ、この突起状導電性端子が外部電極中に埋設されているため、突起状導電性端子のアンカー効果により外部電極が内部電極に強固に接合しており、高電界、高圧力下で長期間連続運転させた場合でも、外部電極と内部電極との断線を抑制することができ、耐久性を大幅に向上できる。
【0010】
また、従来は、内部電極の端部に外部電極を接合しており、外部電極との接合面積が小さく、導電性が低く、接続信頼性も低いものであったが、本発明では、突起状導電性端子を外部電極中に埋設しているため、突起状導電性端子と外部電極との接合面積が大きく、外部電極と内部電極間の導電性を向上でき、しかも外部電極と内部電極との接続信頼性も向上できる。
【0011】
さらに、内部電極を安価な卑金属を用いて形成でき、安価な積層型圧電素子が得られるとともに、Agを内部電極材料として用いないため、マイグレーションを防止できる。
【0012】
また、本発明の積層型圧電素子は、内部電極はCuを主成分とすることが望ましい。内部電極としてCuを用いているため、Ag/Pd電極に比べ、安価に作製できるとともに、Agを内部電極材料として用いていないため、マイグレーションを防止できる。
【0014】
また、本発明の積層型圧電素子は、突起状導電性端子及び外部電極の導電材が、銀を主成分とすることを特徴とする。銀は比較的低温で拡散移動しやすいため、後述する製法により、内部電極の端部に突起状導電性端子を容易に形成できるとともに、この突起状導電性端子を外部電極中に容易に埋設できる。また、銀は耐酸化性を有し、ヤング率が低いため、外部電極として最適となる。
【0015】
また、本発明の積層型圧電素子では、外部電極の圧電磁器側表層部に、ガラスリッチ層が形成されており、該ガラスリッチ層が前記圧電磁器の表面に接合していることを特徴とする。本発明では、圧電磁器に接する外部電極のガラスリッチ層の組成が、外部電極の他の部分よりもガラス成分が多いため、ガラスリッチ層と圧電磁器間で相互拡散しやすく、ガラスリッチ層を圧電磁器表面に強固に接合でき、外部電極と柱状積層体との接合強度を向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明の積層型圧電素子では、外部電極を構成するガラスの軟化点が、前記外部電極を構成する導電材の融点以下であることを特徴とする。これにより、外部電極の焼き付け温度を、導電材の融点以下で、且つガラスの軟化点以上の温度にすることができ、導電材の凝集を防ぐとともに、十分な接合強度で焼き付けを行うことができる。
【0017】
また、本発明の積層型圧電素子では、外部電極を構成するガラスが非晶質であることを特徴とする。このように、ガラスを非晶質とすることにより、結晶質よりもヤング率が低いので、外部電極におけるクラック発生を抑制できる。
【0018】
本発明の噴射装置は、噴射孔を有する収納容器と、該収納容器内に収容された上記積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備するものである。
【0019】
このような噴射装置では、上記したように、積層型圧電素子自体において外部電極と内部電極との断線を抑制でき、耐久性を大幅に向上できるため、噴射装置の耐久性をも向上できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の積層型圧電アクチュエータからなる積層型圧電素子の一形態を示すもので、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A’線に沿った縦断面図、(c)、(d)は内部電極と外部電極の接合部近傍の拡大図である。
【0021】
積層型圧電アクチュエータは、図1に示すように、耐還元性の圧電磁器1と卑金属からなる内部電極2とを交互に複数積層してなる四角柱状の柱状積層体1aの側面において、内部電極2の端部を一層おきに絶縁体3で被覆し、絶縁体3で被覆していない内部電極2の端部に突起状導電性端子5を設け、該突起状導電性端子5を、銀を主成分とする導電材とガラスからなる外部電極4中に埋設して接合し、各外部電極4にリード線6を接続固定して構成されている。
【0022】
圧電磁器1は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3(以下PZTと略す)、或いはチタン酸バリウムBaTiO3を主成分とする圧電セラミックス材料等で形成されている。この圧電セラミックスは、その圧電特性を示す圧電歪み定数d33が高いものが望ましい。圧電磁器1は耐還元性を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0023】
また、圧電磁器1の厚み、つまり内部電極2間の距離は50〜250μmが望ましい。これは、積層型圧電アクチュエータは電圧を印加してより大きな変位量を得るために、積層数を増加させる方法がとられるが、上記のような圧電磁器1の厚みを採用することにより、アクチュエータの小型化、低背化を達成できるとともに、圧電磁器1の絶縁破壊を防止できるからである。
【0024】
圧電磁器1の間には内部電極2が配されているが、この内部電極2は卑金属から形成されており、各圧電磁器1に所定の電圧を印加し、圧電磁器1に逆圧電効果による変位を起こさせる作用をなす。卑金属としては、Cu、Co、Ni等があり、特に、焼成時に内部電極が酸化しにくいという点からCuが望ましい。
【0025】
また、突起状導電性端子5が形成された柱状積層体1aの側面に一層おきに深さ30〜500μm、積層方向の幅30〜200μmの凹溝11が形成されており、この凹溝11内にガラスやシリコンゴム等が充填されて絶縁体3が形成されている。凹溝11内の絶縁体3はヤング率が小さいものが望ましい。
【0026】
突起状導電性端子5と絶縁体3は、外部電極4が形成された柱状積層体1aの一側面に露出した内部電極2の端部に、交互に形成されている。
【0027】
即ち、凹溝11内に充填された絶縁体3により内部電極2の端部が互い違いに一層おきに絶縁され、内部電極2の絶縁されていない他方の端部は、突起状導電性端子5を介して銀を主成分とする導電材とガラスからなる外部電極4と接合されている。尚、外部電極4は、銀を主成分とする導電材とポリイミド樹脂であっても良い。
【0028】
突起状導電性端子5は、内部電極2の端部に拡散接合している。即ち、内部電極2が卑金属を主成分とし、突起状導電性端子5が銀を主成分としている場合、内部電極2と突起状導電性端子5の元素が相互に拡散するとともに、内部電極2の卑金属が突起状導電性端子5に拡散し、これにより突起状導電性端子5が内部電極2の端部に拡散接合している。
【0029】
柱状積層体1aの対向する側面には、導電性接着剤を塗布して形成され、銀を主成分とする導電材と、ガラスとからなる外部電極4が接合しており、この外部電極4中には、突起状導電性端子5が埋設され、これにより外部電極4に内部電極2が一層おきに電気的に接続されている。この銀を主成分とする導電材とガラスからなる外部電極4は、接続されている各内部電極2に圧電磁器1を逆圧電効果により変位させるに必要な電圧を共通に供給する作用をなす。
【0030】
外部電極4、突起状導電性端子5の導電材は銀を主成分とするもので、これ以外に、ニッケル、銅、金、アルミニウム等の導電性を備えた金属及びそれらの合金から構成されていても良いが、外部電極4の導電材、突起状導電性端子5は、同一金属又は同一合金を主成分とすることが望ましい。
【0031】
外部電極4の導電材、突起状導電性端子5は、耐酸化性を有し、比較的低温で拡散移動しやすく、ヤング率が低いという点から、銀、若しくは銀主成分の合金が望ましい。
【0032】
また、本発明では、外部電極4の圧電磁器側表層部には、他の部分4aよりもガラス成分が多いガラスリッチ層4bが形成されており、このガラスリッチ層4bが圧電磁器1表面に接合している。このように、圧電磁器1に接する外部電極4のガラスリッチ層4bが、外部電極4の他の部分4aよりもガラス成分を多く含むようにすることにより、外部電極4と柱状積層体1aとの接合強度を強固なものとすることができる。ガラスリッチ層4bには、ガラスが外部電極4の他の部分4aよりも1.1倍以上の割合で存在する。
【0033】
突起状導電性端子5の周囲に該当する部分にも外部電極4のガラスリッチ層4bが形成され易いが、突起状導電性端子5は外部電極4の導電材と接続しており、さらなる導電性向上のためにはガラスリッチ層4b中の導電材量が多い方が望ましい。
【0034】
尚、突起状導電性端子5の形状、突起状導電性端子5に接するガラスリッチ層4b及び圧電磁器1に接するガラスリッチ層4bの形状、厚み等は、図1(c)、(d)に示すように、均一である必要はない。
【0035】
また、外部電極4中の導電材は50〜95体積%、残部のガラス成分は5〜50体積%とされている。これにより、適度なガラス成分量を確保できるため、外部電極4と柱状積層体1a及び突起状導電性端子5との接合強度を効果的に高めることができ、また、外部電極4の抵抗値を低くでき、外部電極4の局所発熱を抑制し、外部電極4の断線を防止できる。
【0036】
さらに、本発明では、外部電極4を構成するガラス成分の軟化点を、外部電極4を構成する導電材の融点以下にしている。これにより、後述する製法において、外部電極4の焼き付け温度を導電材の融点以下で且つガラス成分の軟化点以上の温度にすることができ、導電材の凝集を防ぐとともに、十分な接合強度で焼き付けを行うことができる。
【0037】
また、本発明では、外部電極4を構成するガラス成分を非晶質にしている。これにより、ガラス成分が結晶質である場合よりもヤング率を小さくでき、クラック等の発生を防ぐことができる。
【0038】
外部電極4にはリード線6が半田により接続固定されている。このリード線6は外部電極4を外部の電圧供給部に接続する作用をなす。
【0039】
本発明の積層型圧電素子の製法について説明する。まず、柱状積層体1aを作製する。PZT等の圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系、ブチラール系等の有機高分子から成るバインダーと、DBP(フタル酸ジオチル)、DOP(フタル酸ジブチル)等の可塑剤とを混合してスラリーを作製し、該スラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法により圧電磁器1となるセラミックグリーンシートを作製する。
【0040】
圧電磁器1は、内部電極材料として使用される卑金属が酸化されない程度の温度、還元雰囲気で焼成されても、還元しない耐還元性を有する必要がある。
【0041】
次に、例えばCu粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを前記各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって1〜40μmの厚みに印刷する。
【0042】
そして、上面に導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを複数積層するとともに、この積層体の上下面に、導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートを複数積層し、この積層体を所定の温度で脱バインダーを行った後、窒素雰囲気等の還元雰囲気中960℃以下で焼成することによって作製される。
【0043】
その後、図2(a)に示すように、ダイシング装置等により柱状積層体1aの側面に一層おきに凹溝11を形成する。そして、図2(b)に示すように該凹溝11内にガラス粉末を分散させたペーストを充填し、窒素雰囲気等の還元雰囲気中700〜1000℃で焼き付けを行い、ガラスを凹溝11内に充填し、凹溝11内に絶縁体3が充填された柱状積層体1aを形成する。
【0044】
その後、柱状積層体1aの凹溝11を形成した側面に、図2(c)に示すように、平均粒径0.1〜10μmの銀粉末(融点:960℃)を50〜95体積%と、残部が平均粒径0.1〜10μmでケイ素を主成分とする軟化点が400〜930℃のガラス粉末5〜50体積%からなる混合物に、バインダーを加えて作製した銀ガラス導電性ペースト21を塗布し、ガラスの軟化点よりも高い温度、且つ銀の融点以下の温度で窒素雰囲気等の還元雰囲気中で焼き付けを行うことにより、銀ガラス導電性ペースト21中の銀が内部電極2端部に集合し、図2(d)に示すように、突起状導電性端子5が形成されるとともに、外部電極4を形成することができる。
【0045】
即ち、銀ガラス導電性ペースト21中にガラス成分を分散させ、ガラスの軟化点よりも高い温度で、且つ銀の融点以下で熱処理することにより、ガラスが軟化し、この状態において圧電磁器1には拡散しにくい銀が内部電極2の端部に集合して突起状導電性端子5を形成し、同時に該突起状導電性端子5及び圧電磁器1近傍にはガラス成分が残存する。このようにして、突起状導電性端子5及び外部電極4が形成される。
【0046】
また、同時に内部電極2を構成する卑金属と、突起状導電性端子5の銀が相互に拡散し、突起状導電性端子5と内部電極2との接合が強固なものとなる。突起状導電性端子5の柱状積層体1aからの突出高さは、1μm以上、特には3μm以上が好ましい。このように、突出高さを高くするためには、焼き付け時の熱処理温度を高くしたり、熱処理時間を長くしたり、ガラスの軟化点を低下させることにより達成できる。
【0047】
該銀ガラス導電性ペーストの焼き付け温度は、凹溝11内に充填したガラスの焼き付け温度以下の温度が好ましい。
【0048】
また、外部電極4を構成するガラス成分は、シリカガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛アルカリけい酸塩ガラス、アルミノほうけい酸塩ガラス、ほうけい酸塩ガラス、アルミノけい酸塩ガラス、ほう酸塩ガラス、りん酸塩ガラス等を用いる。
【0049】
使用するガラスに関しては、外部電極4を形成する際の作業温度が400〜930℃のガラスを使用することが好ましい。
【0050】
例えば、ほうけい酸塩ガラスとしては、SiO240〜70重量%、B2O32〜30重量%、Al2O30〜20重量%、MgO、CaO、SrO、BaOのようなアルカリ土類金属酸化物を総量で0〜20重量%、Na2O、K2O、Li2Oのようなアルカリ金属酸化物を総量で0〜10重量%含有するものを使用することができる。また、上記のほうけい酸塩ガラスに、5〜30重量%のZnOを含むようなガラスとしても構わない。ZnOは、ほうけい酸塩ガラスの作業温度を低下させる効果がある。
【0051】
また、りん酸塩ガラスとしては、P2O540〜80重量%、Al2O30〜30重量%、B2O30〜30重量%、ZnO0〜30重量%、アルカリ土類金属酸化物0〜30重量%、アルカリ金属酸化物0〜10重量%を含むようなガラスを使用することができる。
【0052】
また、鉛ガラスとしては、PbO30〜80重量%、SiO20〜40重量%、Bi2O30〜30重量%、Al2O30〜20重量%、ZnO0〜30重量%、アルカリ土類金属酸化物0〜30重量%、アルカリ金属酸化物0〜10重量%を含むようなガラスを使用することができる。
【0053】
上述のように、突起状導電性端子5及び外部電極4を形成した後、リード線6を接続することにより本発明の積層型圧電素子が完成する。
【0054】
そして、リード線6を介して一対の外部電極4に0.1〜3kV/mmの直流電圧を印加し、柱状積層体1aを分極処理することによって、製品としての積層型圧電アクチュエータが完成し、リード線6を外部の電圧供給部に接続し、リード線6及び外部電極4を介して内部電極2に電圧を印加させれば、各圧電磁器1は逆圧電効果によって大きく変位し、これによって例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能する。
【0055】
以上のように構成された積層型圧電素子は、内部電極2の端部には突起状導電性端子5が設けられ、この突起状導電性端子5が外部電極4中に埋設されているため、突起状導電性端子5のアンカー効果により外部電極4が内部電極2に強固に接合しており、高電界、高圧力下で長期間連続運転させた場合でも、外部電極4と内部電極2との断線を抑制することができ、耐久性を大幅に向上できる。
【0056】
また、突起状導電性端子5が外部電極4中に埋設しているため、突起状導電性端子5と外部電極4との接合面積が大きく、外部電極4と内部電極2間の導電性を向上でき、しかも外部電極4と内部電極2との接続信頼性も向上できる。
【0057】
尚、本発明では、図3に示すように、外部電極4の外側に導電性補助部材7を形成しても良い。この場合には、外部電極4の外面に導電性補助部材7を設けることによりアクチュエータに大電流を投入し、高速で駆動させる場合においても、大電流を導電性補助部材7に流すことができ、外部電極4に流れる電流を低減でき、外部電極4が局所発熱を起こし断線することを防ぐことができ、耐久性を大幅に向上させることができる。
【0058】
なお、導電性補助部材7は、板状導電部材、導電性接着剤、導電性コイル、導電性波板、導電性繊維集合体(ウール状)の一つ若しくは複合体からなる。
【0059】
本発明の積層型圧電素子はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、突起状導電性端子5、外部電極4を同一材料から構成し、突起状導電性端子5の形成と同時に外部電極4を形成した例について説明したが、先ず、上記した銀ガラス導電性ペースト21を用いて突起状導電性端子5を形成した後、突起状導電性端子5とは異なる材料にて、例えばガラス種が異なる銀ガラス導電性ペーストや、銀とポリイミドを用いて外部電極を形成しても良い。この場合、突起状導電性端子5の根元部はガラスで埋設されている。
【0060】
また、上記例では、凹溝11内にガラスを充填したが、先ず凹溝間の素子本体側面に上記した銀ガラス導電性ペーストを塗布し、熱処理して根元部がガラスで埋設された突起状導電性端子を形成し、この後、凹溝の開口部を塞ぐように紙等の遮蔽物を設け、凹溝が形成された素子本体の側面に、外部電極を形成する銀とポリイミド樹脂を塗布し、熱処理して外部電極を形成し、この後、凹溝内にシリコーンゴムを真空引きして充填してもよい。この場合には、凹溝内に弾性係数の小さいシリコーンゴムが充填されているため、柱状積層体の伸縮を妨げることがない。
【0061】
さらに、上記例では、柱状積層体1aの対向する側面に外部電極4を形成した例について説明したが、本発明では、例えば隣設する側面に一対の外部電極を形成してもよい。
【0062】
図4は、本発明の噴射装置を示すもので、図において符号31は収納容器を示している。この収納容器31の一端には噴射孔33が設けられ、また収納容器31内には、噴射孔33を開閉することができるニードルバルブ35が収容されている。
【0063】
噴射孔33には燃料通路37が連通可能に設けられ、この燃料通路37は外部の燃料供給源に連結され、燃料通路37に常時一定の高圧で燃料が供給されている。従って、ニードルバルブ35が噴射孔33を開放すると、燃料通路37に供給されていた燃料が一定の高圧で内燃機関の図示しない燃料室内に噴出されるように形成されている。
【0064】
また、ニードルバルブ35の上端部は直径が大きくなっており、収納容器31に形成されたシリンダ39と摺動可能なピストン41となっている。そして、収納容器31内には、上記した圧電アクチュエータ43が収納されている。
【0065】
このような噴射装置では、圧電アクチュエータ43が電圧を印加されて伸長すると、ピストン41が押圧され、ニードルバルブ35が噴射孔33を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると圧電アクチュエータ43が収縮し、皿バネ45がピストン41を押し返し、噴射孔33が燃料通路37と連通して燃料の噴射が行われるようになっている。
【0066】
【実施例】
組成がPb0.96Ba0.04Yb0.005W0.005Zr0.49Ti0.50O3で表される圧電セラミックスの仮焼粉末と、バインダーと、可塑剤とを混合してスラリーを作製し、該スラリーをドクターブレード法にてセラミックグリーンシートを作製した。
【0067】
次に、Cu粉末にバインダー、可塑剤を添加混合して導電性ペーストを作製し、これをグリーンシートの上面にスクリーン印刷した。
【0068】
そして、上面に導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを複数積層するとともに、この積層体の上下面に、導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートを複数積層し、この積層体を所定の温度で脱バインダーを行った後、窒素雰囲気中950℃で焼成し、内部電極の厚みが3μmで、圧電磁器の厚みが90μm、圧電磁器及び内部電極の各々の積層数は300層とした。
【0069】
その後、図2(a)に示すように、ダイシング装置により柱状積層体の側面の内部電極の端部に一層おきに深さ50μm、幅50μmの凹溝を形成した。そして、図2(b)に示すように該凹溝内にガラス粉末を分散させたペーストを充填し、900℃の窒素雰囲気中で焼き付けを行い、ガラスを凹溝内に充填した。
【0070】
次に、平均粒径5μmの銀粉末を90体積%と、残部が平均粒径5μmのケイ素を主成分とする軟化点が600℃の非晶質のほうけい酸塩ガラス(Si、Al、Bを含有)粉末10体積%との混合物にバインダーを加え、十分に混合して銀ガラス導電性ペーストを作製し、図2(c)に示すように、前記柱状積層体の凹溝を形成した側面に塗布し、窒素雰囲気中700℃で焼き付けを行い、図2(d)に示すように、突起状導電性端子を形成するとともに、外部電極を形成した。突起状導電性端子の積層方向厚みは平均で3μm、柱状積層体の側面からの突出高さは平均で5μmであった。
【0071】
この時、該突起状導電性端子の主成分は銀で、該突起状導電性端子には、内部電極からCuが拡散し、内部電極には突起状導電性端子から銀が拡散していることを確認した。また、外部電極の突起状導電性端子及び圧電磁器に接する部分には、他の外部電極の部分よりもガラス成分が多いガラスリッチ層が形成されており、そのガラスリッチ層の平均的な厚みは約2μmであった。
【0072】
その後、外部電極にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図1に示すような積層型圧電アクチュエータを作製した。
【0073】
得られた積層型圧電アクチュエータに150Vの直流電圧を印加した結果、積層方向に40μmの変位量が得られた。さらに、このアクチュエータに室温で0〜+150Vの交流電圧を150Hzの周波数にて印加して1×108サイクルまで駆動したところ40μmの変位量が得られ、外部電極の異常は見られなかった。
【0074】
【発明の効果】
本発明の積層型圧電素子によれば、内部電極の端部には突起状導電性端子が設けられ、この突起状導電性端子が外部電極中に埋設されているため、突起状導電性端子のアンカー効果により外部電極が内部電極に強固に接合しており、高電界、高圧力下で長期間連続運転させた場合でも、外部電極と内部電極との断線を抑制することができ、耐久性を大幅に向上できる。また、突起状導電性端子を外部電極中に埋設しているため、突起状導電性端子と外部電極との接合面積が大きく、外部電極と内部電極間の導電性を向上でき、しかも外部電極と内部電極との接続信頼性も向上できる。さらに、内部電極を安価な卑金属を用いて形成するため、安価な積層型圧電素子が得られるとともに、内部電極材料としてAgを用いないためマイグレーションを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型圧電素子を示すもので、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A’線に沿った縦断面図、(c)及び(d)は(b)の一部を拡大して示す断面図である。
【図2】本発明の積層型圧電素子の製法を説明するための工程図である。
【図3】外部電極表面に導電性補助部材を形成した積層型圧電素子を示すもので、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A’線断面図である。
【図4】本発明の噴射装置を示す断面図である。
【図5】従来の積層型圧電アクチュエータの縦断面図である。
【符号の説明】
1・・・圧電磁器
1a・・・柱状積層体
2・・・内部電極
4・・・外部電極
4b・・・ガラスリッチ層
5・・・突起状導電性端子
31・・・収納容器
33・・・噴射孔
35・・・バルブ
43・・・圧電アクチュエータ
Claims (7)
- 耐還元性の圧電磁器と卑金属からなる内部電極とを交互に積層してなる柱状積層体と、該柱状積層体の側面に設けられ、前記内部電極が一層おきに交互に電気的に接続された一対の外部電極とを具備してなる積層型圧電素子であって、前記内部電極の端部に一層おきに前記柱状積層体の側面から突出する突起状導電性端子を設け、該突起状導電性端子を、導電性接着剤を塗布して形成された前記外部電極中に埋設してなるとともに、前記突起状導電性端子が前記内部電極の端部に拡散接合していることを特徴とする積層型圧電素子。
- 前記内部電極がCuを主成分とすることを特徴とする請求項1記載の積層型圧電素子。
- 前記突起状導電性端子及び前記外部電極の導電材が、銀を主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型圧電素子。
- 前記外部電極の圧電磁器側表層部には、ガラスリッチ層が形成されており、該ガラスリッチ層が前記圧電磁器の表面に接合していることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の積層型圧電素子。
- 前記外部電極を構成するガラスの軟化点が、前記外部電極を構成する導電材の融点以下であることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれかに記載の積層型圧電素子。
- 前記外部電極を構成するガラスが非晶質であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれかに記載の積層型圧電素子。
- 噴射孔を有する収納容器と、該収納容器内に収容された請求項1乃至6のうちいずれかに記載の積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなることを特徴とする噴射装置。
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