JP2007228874A - 加水調理食品用原料およびその製造法 - Google Patents

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【課題】
本発明は、水性溶媒との混和が容易で、その状態から簡便な手段で加水調理食品を製造できる加水調理食品用原料およびその製造法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明によって、含油原料に可食物を混和処理し、微細化工程、より具体的にはロールリファイニングなどにより細粒化、粉末化またはフレーク化物といった微細化物の形態をとることによって、水性溶媒との混和が容易で、簡便な手段で加水調理食品を製造できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水性溶媒になじみやすい、且つ平易な方法にて製造できる加水調理食品用原料及びその製造法、並びにその加水調理食品用原料を使用した加水調理食品の製造法に関するものである。
一般的に油性原料、特にチョコレート、固形のカレールーに代表されるような油分の高いものは可食物とのなじみが悪い。
例えば、水やクリームといった水性媒体に油性原料はなじみが極めて悪く、加温下でも、混ぜ合わせただけでは不溶物が残留・沈殿して不均一になったり、油脂が分離して浮遊するなどの問題が起きる。さらには品温が室温域以下の低温であったり、油性原料が固形の形状をしている場合は他の原料と均一になじませるのは困難である。
一方で油性原料を加水調理食品に用いる事、一例をあげれば、カカオ分を含有するチョコレートを他の小麦や熱凝固性の可食物と水や牛乳などといった水性溶媒を混和して焼成するタイプのパンやケーキなどは古くから用いられており、特に濃厚なチョコレート感を有するチョコレートケーキは市場からの要望が極めて大きいものであるにもかかわらず、前述のような理由により、製造工程が煩雑なものとなった。
このため油性原料を可食物へ溶解ないし分散させる技術について、さまざまな方法が検討されてきた。
例えば、一般的なチョコレートケーキやブラウニーは原材料としてココアを使用する事が多い(例えば非特許文献1・非特許文献2)。ココアはカカオマスからココアバターを取り除いたものでカカオマスに比べると若干低油分であるため他の可食物とのなじみがいくぶん高く、また粉体であるため、他の原料との混和が容易い。反面、ココアはチョコレートと製造工程が異なるため、どうしてもチョコレート的な濃厚感といったものが不足しがちであった。
ココアではなくチョコレートを用いる焼成菓子もガトーショコラ、チョコレートトルテなどが知られている (例えば非特許文献3) 。
しかしながら、チョコレートは予め砕いて細かくする必要がある上に、湯せん等で融解させる必要もあり、また融けたチョコレートを他の可食物と混和する手間はかなり大きなものであった。
チョコレート粉末中のレシチン量を調整・組み合わせることで、冷たい液体にも可溶とする方法も発明されている(たとえば特許文献1)。しかし、チョコレート粉末の作成工程が複雑で、また特殊な工程を経たココア粉末を大量に使用する必要があり、現実的な製法とはいえなかった。
このように、チョコレートをはじめとする油性原料を平易な方法にて加水調理食品に用いる方法は市場からの要求が大きいにもかかわらず、有効な方法が見出されてはいなかった。
大阪あべの辻調理師学校製菓製パン研究室著、「マックスライナー氏のドイツ菓子」(昭和55年4月1日初版 株式会社鎌倉書房発行、第65頁) 井田和子著、「ケーキブック 基礎とバリエ」(1994年1月第10刷 ひかりのくに株式会社発行、第56〜57頁) 「暮らしの設計 225号」(1996年5月1日 中央公論社発行、第30〜31頁) 特開平2−291232号公報(第3−4頁)
本発明は、水性溶媒との混和が容易で、その状態から簡便な手段で加水調理食品を製造できる加水調理食品用原料およびその製造法を提供することを目的とする。
本発明者達は上記目的を達成する為に鋭意研究を行った結果、含油原料に可食物を混和処理し、微細化工程、より具体的にはロールリファイニングなどにより細粒化、粉末化またはフレーク化物といった微細化形態をとることによって、水和性に富んだ加水調理食品原料を製造できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は(1)としては、含油原料と可食物を混和し、塑性を呈する油分に調整したものを微細化の工程に供することで得られた細粒化、粉末化またはフレーク化物を使用する加水調理食品用原料であり、(2)としては、微細化の工程前後の混和物の水分含有率が5%以下である(1)記載の加水調理食品用原料であり、(3)としては、微細化の工程前後の混和物の油分含有率が10〜40%である(1)または(2)記載の加水調理食品用原料であり、(4)としては、微細化をロールリファイニングにより行うことを特徴とした(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の加水調理食品用原料であり、(5)としては、熱凝固性物質を成分としてさらに含む(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の加水調理食品用原料であり、(6)としては、膨張剤を成分として含む(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の加水調理食品用原料であり、(7)としては、(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の加水調理食品用原料に水性溶媒を加え、加熱することを特徴とする加水調理食品の製造法であり、(8)としては、加熱方法がマイクロウエーブ加熱である(7)記載の加水調理食品の製造法であり、(9)としては、加熱行程前に発酵工程を持つ(8)記載の加水調理食品の製造方法である。
本発明によって、含油原料に可食物を混和処理し、微細化工程、より具体的にはロールリファイニングなどにより細粒化、粉末化またはフレーク化物といった微細化物の形態をとることによって、水性溶媒との混和が容易で、簡便な手段で加水調理食品を製造できる。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、例中、%及び部は重量基準を意味する。
本発明で言うところの加水調理食品用原料とは含油原料と可食物を混和したものを微細化の工程に供することで得られた細粒化、粉末化またはフレーク化物を使用したものを指すものである。本発明にて作成された微細化物は水性溶媒への溶解性・風味が高いため、他の配合とのバランスや加水調理食品としての機能を失わない範囲においては、少量でも従来の加水調理食品用原料と置き換えることで効果が得られ、多いほどその効果も高くなる。そのため微細化物の下限量については特に限定はされないものの加水調理食品用原料に対して5重量%以上、望ましくは10重量%以上が望ましい。配合量が少ないほど水性溶媒への溶解性・風味の増大効果は弱くなる。上限量はさらに限定されない。微細化物100重量%で加水調理食品用原料を作成することも可能である。
含油原料とは、加水調理食品用原料の一般的な原料の中で油脂そのもの、あるいは油脂を多く含むものならば特に限定はしないが、目的とする加水調理食品用原料に応じて適宜選択される。加水調理食品用原料がチョコレートケーキ様の加水調理食品の原料として用いられる場合はカカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳もしくは油脂のいずれか一種類以上を主成分として用いられる、特に風味佳良なチョコレート焼成菓子を得ようとするには、カカオマス、ココアパウダー、及び油脂としてココアバターが油性原料中の主成分となるのがよい。
また、目的とする加水調理食品がチョコレート元来の風味にとらわれず、例えばホワイトチョコレート風味や抹茶風味、イチゴ風味の加水調理食品用の加水調理食品原料を得たいときは、カカオマスやココアといった風味成分に代えて、全脂粉乳・チーズパウダー・ナッツ類、豆乳粉末等を、さらにカカオ脂といった脂肪成分にかえて、ハードバターその他の油脂を油性原料として好適に用いることができる。
さらには、目的とする加水調理食品がカレー風味などの場合も同様に獣・家禽肉由来のパウダーや獣脂・乳脂などを用いることができる。
なお、一般的に焙炒したカカオ豆の胚乳(ニブ)をグライディングミル或いはロールミル等ですりつぶしてペースト状とした物をカカオマスと称し、このカカオマスを圧搾し油分を一部取り除いたものがココアまたはココアパウダー、取り除かれた油脂分をココアバターと称されている。
なお以降明細書中に「チョコレート」と称する場合、このチョコレートは法令や規格に規定とは関係なくノーテンパリングタイプのチョコレート類や、イチゴ風味や抹茶風味といった、所謂チョコレート様食品等も包含して指称する。
また油脂としては、動植物性油脂及びそれらの硬化油脂の単独又は2種以上の混合物、或いはこれらのものに種々の化学処理又は物理処理を施したものが例示できる。特に限定はされないが、かかる油脂としては、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ゴマ油、カポック油、ヤシ油、パーム核油、カカオ脂、乳脂、ラード、魚油、鯨油等の各種の動植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂が例示できる。
含油原料と可食物を混和したものの水分含有率は低いことが望ましい。水分含有率が過剰に多い場合、含油原料と可食物中の糖類などが水和し粘調になるため塑性を呈せず、この工程のあとの微細化工程にかけにくくなる。加えて、水分含有量が低い状態で微細化工程に供されることで可食物の表面構造が親水性の高い状態になっているものと考えられる。特に限定はされないが、好ましくは水分が5%以下、さらに好ましくは4%以下、もっとも好ましくは3.5%以下であることが望ましい。なお水分含有率は微細化工程前において規定以下であることが望ましく、微細化工程の前後でを通じて上記の量以下であることがより望ましい。
可食物としては特に限定は無いが、糖類や脱脂粉乳、脱脂豆乳粉末、食品添加物が挙げられる。糖類としては、単糖類、砂糖、オリゴ糖類、糖アルコール類、デンプン類、デキストリン類、水飴等が例示できる。食品添加物としても乳化剤、増粘多糖類、ゲル化剤、pH調整剤などが例示できる。
乳化剤は、親水性の高い乳化剤が多いほど水和性が大きくなるものの、必要以上の乳化剤の添加は悪風味を生じさせる。
加水調理食品用原料は、水性溶媒との速やかな混和が重要であり、ここで添加する親水性乳化剤の存在により混和が幾分速やかに効果はあるが、微細化が施されることがより重要であって、本発明においては特に親水性乳化剤は必須というわけではない。
ただ、乳化剤の必要以上の悪風味を防止しつつ、より速やかな水和を期待するという点では、親水性乳化剤は含油原料に対して0.05〜10%、より好ましくは0.1〜2%程度の添加量が望ましい。
また上記乳化剤のHLBは高い方が水和性を発揮するため、好ましくはHLBは5以上、より望ましくは7以上が望ましい。一般にHLBが高いほど親水性が高く、油脂や親油性の原料に対して溶けにくくなる。
使用する乳化剤の種類については特に限定しないが、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びレシチン等が挙げられる。
親水性乳化剤以外の添加物として、増粘多糖類、ゲル化剤、またはpH調整剤を併用することで焼成後の物性が安定するが、必要以上に添加すると風味に悪影響を及ぼすため、必要最低限にとどめるのがより好ましい。
増粘多糖類としてはキサンタンガム、タマリンドガム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム等が例示され、ゲル化剤としてはジュランガム、アルギニン酸、アルギニン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、ゼラチン、ペクチン類等が例示され、pH調整剤としてはクエン酸,DL−リンゴ酸など有機酸類とその塩類、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩類、リン酸などリン酸類、ジュウソウなど重炭酸塩類等が挙げられる。
pHの調整は、加水調理食品用原料を水和させる際のpHを5.5乃至8、望ましくは最適には6乃至7.5の範囲にすると水和性の増大に寄与することが多い。
焼成菓子を作る場合は熱凝固性物質又は/及び膨張剤を成分とすることが望ましい。なお、熱凝固性物質又は/及び膨張剤の添加時期は特に限定せず、「含油原料と可食物の混和物」の微細化前でも、後でも構わない。
熱凝固物質は加熱によって形成するものならば特に限定はしないが、目的とする加水調理食品用原料に応じて適宜選択される。加水調理食品用原料がチョコレートケーキ様の加水調理食品の原料として用いられる場合は卵白粉末、卵黄粉末、卵、といった蛋白類、及び小麦粉、デンプン類、その他の多糖類が上げられ、特に良い口溶けをもったチョコレート焼成菓子を得ようとするには、α化デンプンと卵が熱凝固物質の主成分となるのがよい。膨張剤としてはふくらし粉やベーキングパウダーが例示され、より安定的に膨張をしたものを得ることができる。
可食物と含油原料を混和する過程は特に限定はされないが、一例として、コンチェ、ニーダー、ボールミル、ミキサーのいずれか一種、または一種以上を適宜組み合わせることにより行われるのが望ましい。加水調理食品用原料と可食物の混和は用いられる含油原料や添加される油脂量、物性にもよるが、均一に混合するために、油脂が少なくとも部分的に融解する温度以上に加温するのがよく、通常30〜70℃の範囲が適している。
含油原料と可食物を混和したものは塑性を呈する油分に調整されている必要がある。
ロールリファイニングの工程を例にとると、極端に高い含油量の場合はロールリファイニング時に粒子とロールが「すべる」と呼ばれる現象が起こり、十分な微細化が困難で、フレーク状または粉末にならない。そのため、ロールリファイニング工程でロールフレークを得たい場合には投入する原料の含油量は好ましくは10〜40%、より好ましくは15〜30%が望ましい。
ただし、前出のとおり、加水調理食品用原料は微細化物のみで構成されている必要がないため、最終的な加水調理食品原料全体での含油量は上記の範囲に規定されない。
上記混和工程後に、微細化の工程に供する。微細化の工程は、細粒化、粉末化またはフレーク化物といった微細化が得られれば特に限定はされないが、ロールリファイニング、アトライター、ボールミル、凍結粉砕、細孔から吐出法などが挙げられる。
特にロールリファイニングによる加工は、従来のチョコレートの製造工程においてよく用いられる比較的平易な加工装置であるため、付加的な設備を必要とせず、また短時間で大量の加工が可能である点で望ましい。
ロールリファイニングの条件は従来のチョコレートなどのロールリファイニングの製造条件に準じて行うことが出来る。ロールリファイニングの工程では投入された原料の粒子が細かく粉砕されることにより表面積が大きくなるため、それまで連続相となっていた油脂分が油脂以外の粒子を十分に「巻く」或いは覆う事が出来ず、流動性を失って、見かけ上粉末状ないし粉末粒子同士が弱く結着したフレーク状になる。(以下のように得られたものを「ロールフレーク」ということがある)。
従来、チョコレートの様な固形脂の多い食品を水性溶媒と合わせる際、溶融する必要があったが、粉状にすることで、室温にて水性溶媒と混ぜあわせることができ、レンジなどで簡単に加水調理食品を作ることができる。これはチョコレートに限らず、固形脂の多い食品全般、たとえば固形カレールーや油脂ベースの調味素材に広く応用可能である。
また、アトライターやボールミル、凍結粉砕を用いることでも粉末状の微細化物が、細孔から吐出法によってはスプレーチョコレートのような細粒状の微細化物が得られる。
以上のように、含油原料を可食物に混和、ロールリファイニングによりフレーク状または粉末にした形態をとることによって、比較的油分は高いが、水和性に富んだ加水調理食品原料を得る事できる。
微細化した加水調理食品用原料は水性溶媒を加え、加熱することで従来よりも平易に加水調理食品を作ることができる。水性溶媒は特に限定はされないが、水や水溶液、アルコール類、牛乳やクリームなどの乳化物が一例として挙げられる。
微細化した加水調理食品用原料に加える水性溶媒量は目的とした食品に応じて適宜設定できるため特には限定はされないが、一例としては加水調理食品用原料に対し10〜200%、好ましくは50〜120%程度が望ましい。加える水性溶媒は少ない場合は生地が硬く、加水調理食品独特のふくらした食感が得られにくいが、クッキーのような硬い食感の加水調理食品が得られる。一方、水性溶媒が多すぎると焼成に時間がかかるだけでなく、ふっくらした食感が得られにくい。
加熱方法としては、特に限定されないがオーブン加熱、直火焼き、釜焼き、蒸しあげなどが一例として挙げられるが、平易に短時間で処理できることからマイクロウエーブ加熱が好ましい。
特に必須ではないが、加水調理食品を焼成する際に、より安定的に膨張をしたものが得たい場合は、加熱行程前にイーストなどによる発酵工程を加えて発酵処理する手法を取り入れても構わない。
微細化した加水調理食品用原料に水性溶媒を加えたものを焼成する際、焼成で膨張しても、生地自体の重さで焼成後生地が沈んでしまうことがある。このような場合は焼成前の加水調理食品を収載する容器の表面が摩擦のかかりやすい凸凹したものにすると、生地が沈みにくく、ふっくらした食感の加水調理食品が得られやすい。
この発明を実施することにより、水性溶媒になじみやすく焼成により凝固し、かつ平易な方法にて製造できる加水調理食品用原料を製造でき、その加水調理食品用原料を使用することで、洋菓子・パン類を平易な方法にて作成できる利点がある。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、部は重量基準を意味する
<実施例1>
55℃に調温したカカオマス40部に全脂粉乳12部、脱脂粉乳8部、砂糖40部、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、「リョートーシュガーエステル S−1670」、HLB=16)0.4部を加え、55℃を保ちながらコンチェにて約30分間攪拌混合する。混ぜ合わせたものをロールリファイナー(BUHLER社株式会社製、「Three−roll mill SDY−300」)により、粒度が約20μmになるような条件にてリファイニングにかけ、油性食品を得た。(なお、本発明では、含油原料と可食物を混和したものを微細化工程の有無にかかわらず油性食品と称した。本発明により得られた微細化物や従来タイプのブロック状のものすべてを含むものとする。)
この油性食品にリファイニング後の混合物は粒子同士が弱く結着し、フレーク状をしている為、以降ロールフレークと称する。
得られた油性食品のロールフレーク50部にデンプンを4.6部(松谷化学株式会社製の「パインベークCC」を2.3部+「マツノリンSM」を2.3部)、卵白粉末(太陽化学株式会社製「卵白粉末」)を2.9部、ベーキングパウダー(三菱化学フーズ株式会社、ベーキングパウダーウルトラ)を1.0部混ぜ合わせた加水調理食品用原料を得た後、さらに48部の牛乳を加え、水性溶媒との混ぜやすさを観察した。さらに、これらの混合物をカップケーキ用紙製のカップに注ぎいれ、電子レンジにて2分間加熱し、膨らみ具合を観察した。結果は表1にまとめた。
<比較例1>
実施例1のロールフレークを、通常のチョコレート製造法の定法に従いコンチング(60℃、1時間)した後、モールディングしてブロック状にした油性食品50部を実施例1と同様にデンプン、卵白粉末、ベーキングキングパウダーを混ぜ合わせた加水調理食品用原料を得た後、さらに牛乳を加え、評価を行った。結果は表1にまとめた。
<実施例2>
カカオマス40部、砂糖52部、植物性油脂8部、レシチン0.5%の通常のチョコレート製造法の定法に従い作り、60℃で融解した状態で細い吐出口から連続的に吐出・成型させ、直径1.5mm、長さ約5mmの細粒状油性食品(一般にはスプレーチョコレートと呼ばれるが、水性溶媒に溶解させたチョコレートをスプレードライヤーにて噴霧乾燥させたものとは異なる。)を得、実施例1同様の方法で評価を行った。結果は表1にまとめた。
<比較例2>
実施例2の油性食品をモールディングしてブロック状にしたものを実施例1と同様な方法で評価を行った。結果は表1にまとめた。
<比較例3>
カカオマス45部、砂糖40部、ココアバター15部、レシチン0.5%のチョコレートを通常のチョコレート製造法の定法に従い作り、60℃で融解した状態のものをモールディングしてブロック状にした油性食品を作成し、実施例1と同様な方法で評価を行った。
[表1]
Figure 2007228874
[油性食品と他の粉体との混合時作業性]
実施例1は加水調理食品用原料と粉体のなじみが良く、短時間で均一に混ざりあった。実施例2も実施例1には劣るものの、加水調理食品用原料は比較的きれいに分散した。
一方、比較例1〜3は粉体となじまなかった。ただし、比較例3は溶解させれば若干混ざり合う傾向にあったが、粘度が高く、作業性が非常に悪かった。また、加水調理食品用原料を溶解させるには手間がかかった。
[粉体との混合の後の水性溶媒との混合しやすさ]
実施例1は簡単にまとまり、均一になった。実施例2はまだらであったり沈んだりするものの、焼成後品質に影響が出ない程度に混ざりあった。
比較例1〜3は、不均一に存在するデンプンや卵白粉末などの粉体だけが水性溶媒を吸収し、油性食品は完全に分離した。
[焼成後の状態]
実施例1は加熱後、均一でふっくらとしたチョコレート味濃厚な良い風味のチョコレートケーキが得られた。
実施例2はまだらで、実施例1よりも膨らみが弱いため、実施例1よりも少しべちゃべちゃした食感となったものの、商品価値は十分にあるチョコレートケーキが得られた。
比較例1〜3は油性食品と粉体が分離しており、水性溶媒はデンプンや卵白粉末などの粉体にだけ吸収され、加熱後に膨らむのは粉体だけとなり、チョコレートケーキにはなりえなかった。
<比較例4・実施例3・実施例4・実施例5・実施例6・実施例7・比較例5>
砂糖とココアバターのバランスを調整し、ロールリファイナーでの粉末化に適した油分の範囲を検証した。
45部の砂糖に溶解したココアバターを55部加え、約50℃で攪拌混合し、ロールリファイナーにかけ、粉末化を試み、比較例4とした。
また、砂糖/ココアバターを60部/40部(実施例3)、70部/30部(実施例4)、80部/20部(実施例5)、85部/15部(実施例6)、90部/10部(実施例7)、95部/5部(比較例5)にする以外は比較例4と同様な方法で粉末化を試みた、それぞれの配合と結果を表2にまとめた。
[表2]
Figure 2007228874
作業性評価基準 ×;粉末にできず、△;粉末にはなるが作業性が悪い、
○;粉末にでき、作業性に問題がない、◎;粉末にでき、作業性が良い。
比較例4ではロール上で滑ってしまい、粉末にはならなかった。実施例3はロール上で滑り、時間もかかるが粉末化可能だった。実施例4、5と進むにつれ、作業性も良く、きれいな粉末が得られた。
一方、実施例6、7と進むにつれ、ロールに生地をかけにくくなり、比較例5ではロールにかけられなかった。
<実施例8>
熱凝固成分の有無による焼成後の焼き残りについて検証した。
実施例1で作成したロールフレーク50部に砂糖7.5部、ベーキングパウダーを1部混ぜ合わせた後、48部の牛乳を加えた混合物を電子レンジにて2分間加熱したものをもって実施例8とし、膨らみ具合の観察に供した。
<実施例9>
55℃に調温したカカオマス40部に全脂粉乳12部、脱脂粉乳8部、砂糖27部、デンプン9.2部(松谷化学株式会社製、「パインベークCC」を4.6部と「マツノリンSM」を4.6部)、卵白粉末(太陽化学株式会社製「卵白粉末」)5.8部、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、「リョートーシュガーエステル S−1670」、HLB=16)0.4部を加え、55℃を保ちながらコンチェにて約30分間攪拌混合する。混ぜ合わせたものをロールリファイナーにより、粒度が約20μmになるような条件にてリファイニングにかけ、ロールフレークを得た。
このロールフレーク50部に砂糖7.5部、ベーキングパウダー(三菱化学フーズ株式会社、ベーキングパウダーウルトラ)1.0部混ぜ合わせた後、牛乳48部を加え加えた混合物を電子レンジにて2分間加熱したものをもって実施例9とし、膨らみ具合の観察に供した
<実施例10>
実施例1で作成したロールフレーク50部にデンプン4.6部(松谷化学株式会社製、「パインベークCC」を2.3部とマツノリンSMを2.3部)、卵白粉末を2.9部、ベーキングパウダーを1.0部混ぜ合わせた後、48部の牛乳を加え加えた混合物を電子レンジにて2分間加熱したものをもって実施例10とし、膨らみ具合の観察に供した。
それぞれの結果は表3にまとめた。
[表3]
Figure 2007228874
※ 実施例9のデンプンはロールフレーク全体を100部としての配合量であり、加水調理食品原料全体としてはロールフレークは50部であるため、相対的にデンプンの配合量も半分になる。すなわち実施例9と実施例10は同じ量のデンプンが配合されていることになる。
実施例8は加熱時の膨化後が加熱を止めた直後にかなりつぶれてしまい、保型性がやや乏しく、出来上がりも実施例1などのパンやケーキのような形状ものとはことなるものの、糖をボディーとしたカルメ焼きのような堅く良好な食感・口どけのものが得られた。実施例9は加熱後の保型性に差は良かった。しかし、実施例9のようにあらかじめロールフレークに熱凝固成分を添加しておいた方が後でデンプンなどの粉体を添加・攪拌しなくて良いので作業性に優れていた。
<実施例11>
膨張剤の有無による焼成時の膨らみの差について検証した。
実施例1で作成したロールフレーク50部にデンプン4.6部、卵白粉末2.9部、ベーキングパウダー1.0部混ぜ合わせた後、牛乳48部を加え加えた混合物を電子レンジにて2分間加熱し、膨らみ具合を観察した。結果は表4にまとめた。
<比較例7>
実施例1で作成したロールフレーク50部にデンプン4.6部、卵白粉末2.9部混ぜ合わせた後、牛乳48部を加えた混合物を電子レンジにて2分間加熱し、膨らみ具合を観察した。結果は表4にまとめた。
[表4]
Figure 2007228874
実施例11は加熱による生地が膨らむものの、比較例7は加熱しても生地が膨らまず、求める食感を得られなかった。
なお、ベーキングパウダーは熱凝固物質同様に、ロールフレークにあらかじめ添加しておいても、後ほどロールフレークと混ぜ合わせても膨らみには大きな差はみられなかった。
<実施例12>
実施例9と同等の配合と工程にて得られたロールフレーク100部に、ソルビトール(商品名「ソルビトール」、サンエイ糖化株式会社製)13部、ベーキングパウダー1部、3倍希釈タイプ濃縮乳(商品名「プロベスト500」、不二製油株式会社製)を30部、洋酒5部を混ぜ合わせ、容器に流し込んで焼成(上火180℃、下火170℃×15分)した。結果は配合とともに表5にまとめた。
[表5]
Figure 2007228874
実施例12は加熱後の保型性がよく、加熱後、均一でふっくらとしたチョコレート味濃厚な良い風味のチョコレートケーキが得られた。
本発明によって、水性溶媒になじみやすく焼成により凝固し、かつ平易な方法にて製造できる加水調理食品用原料を製造でき、その加水調理食品用原料を使用することで、洋菓子・パン類を平易な方法にて作成できる。

Claims (9)

  1. 含油原料と可食物を混和し、塑性を呈する油分に調整したものを微細化の工程に供することで得られた細粒化、粉末化またはフレーク化物を使用したものである加水調理食品用原料。
  2. 微細化の工程前後の混和物の水分含有率が5%以下である請求項1記載の加水調理食品用原料。
  3. 微細化の工程前後の混和物の油分含有率が10〜40%である請求項1または請求項2記載の加水調理食品用原料。
  4. 微細化をロールリファイニングにより行う請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の加水調理食品用原料。
  5. 熱凝固性物質を成分としてさらに含む請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の加水調理食品用原料。
  6. 膨張剤を成分として含む請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の加水調理食品用原料。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の加水調理食品用原料に水性溶媒を加え加熱する加水調理食品の製造法。
  8. 加熱方法がマイクロウエーブ加熱である請求項7記載の加水調理食品の製造法。
  9. 加熱行程前に発酵工程を持つ請求項7記載の加水調理食品の製造法。
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