JP2007224447A - 導電性複合繊維およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 導電成分、非導電成分それぞれの融点および溶融粘度を適切な組合せとすることで、製糸時の糸切れトラブルなく安定して生産可能な、導電性能に優れた導電性複合繊維およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 導電性カーボンブラックを含有した導電性熱可塑性樹脂(樹脂A)と、樹脂Aの融点+15℃以下であるポリエステル系熱可塑性樹脂(樹脂B)が接合してなる導電性複合繊維において、樹脂Aの溶融粘度(η)と樹脂Bの溶融粘度(η)の比(η/η)が0.4〜2.5であり、単糸横断面形状が、樹脂Aが回転対称に2点以上繊維表面に露出した形状であり、沸水収縮率が12%以下である導電性複合繊維。
【選択図】図1

Description

本発明は導電性複合繊維に関するものであり、詳しくは繊維表面での導電性能が高く、かつ製糸工程での工程通過性に優れた導電性複合繊維およびその製造方法に関するものである。
ポリエステル系熱可塑性樹脂からなる合成繊維は広く衣料用のみならず、産業用分野にまで利用されている。しかしながら、これらの合成繊維は電気抵抗が著しく高く、静電気を帯びやすいという致命的な欠点を有し、衣類においては脱着時の不快感、裾のまとわりつき、汚れの付着等の問題があり、特に作業衣として用いる場合は可燃ガスへの引火の危険性や、精密機器類の破壊の問題がある。これら静電気による欠点を排除すべく、これまで種々の方法が提案されている。
従来から除電性能の優れた繊維としての導電性繊維については、種々の提案がなされており、例えば繊維表面に金属メッキを施して導電性を付与せしめたものや、導電性カーボンブラックを分散せしめた樹脂類を繊維表面にコートすることによって導電性被覆層を形成せしめたもの等がある。しかし、これらは製造工程が複雑化して技術的に困難な方法によって得られたものであったり、導電性繊維を実用に供するため準備段階、例えば製織編のための精練工程での薬品処理や実際の使用における摩耗や繰り返し洗濯といった外的な作用によって導電性が容易に低下し、実用の域を脱してしまうという問題があった。
他の導電性繊維として、スチール繊維の様な金属繊維が除電性能の優れたものとして知られているが、金属繊維はコストが高く、しかも一般の有機素材とはなじみ難く、紡績性不良となったり、製織・染色仕上げ工程でのトラブルの原因となったり、着用時の洗濯による断線・脱落が生じやすく、さらには通電性に基づく感電・スパークの問題、布帛の溶融トラブル等の原因となっていた。
また、導電性カーボンブラックを均一分散させたポリマー単体より導電性繊維を得る方法が提案されているが、この導電性繊維はカーボンブラックを多量に含有するために繊維の製造が難しく、且つ繊維物性が著しく低下するという問題があった。これらの問題を解決せんとする提案として、芯鞘複合タイプ複合繊維の芯成分ポリマーに導電性カーボンブラックを含有させ、それを通常の繊維形成性ポリマーからなる鞘で包み込もうという方法がある。この場合、繊維性能を保つため芯部を非導電性の鞘が厚く包囲しているため、十分な導電性が得られない。
上記の問題を解決するため、カーボンブラックを含有した導電層成分が繊維表面の一部に露出した導電性複合繊維が数々提案されている(特許文献1参照)。これらの導電性繊維は繊維表面に導電層が露出しているため、優れた除電性能を発揮するが、導電成分樹脂はカーボンブラックを多量に含有するため溶融粘度が著しく高く、かつ曳糸性に乏しいため、製糸工程、とりわけ紡糸工程における複合異常や紡糸糸切れが問題となっている。
例えば特許文献1には、導電成分側樹脂として、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂対比、カーボンブラック添加後の溶融粘度が比較的低いナイロン6を用い、非導電成分としてポリエチレンテレフタレートを使用した導電性繊維が記載されている。このような系で導電性繊維を紡糸する際には、両樹脂成分のうち融点の高いポリエチレンテレフタレート(一般に融点250〜260℃程度)に合せた紡糸温度にて両樹脂成分を溶融紡糸するため、融点230℃前後のナイロン6は著しく熱劣化し、樹脂のゲル化および低分子量成分の発生により、曳糸性の低下や、紡糸口金の吐出孔付近への汚れの堆積を引き起こし、製糸時の糸切れを誘発するばかりか、得られる製品中に劣化した樹脂が混入するため、品位・品質が劣ったものとなる問題があった。
一方、非導電成分としてイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、導電成分にはポリブチレンテレフタレートに導電性カーボンブラックを25重量%含有せしめた樹脂を用いた発明が開示されている(特許文献2参照)。この方法であれば、非導電成分側のポリエチレンテレフタレートをイソフタル酸と共重合させることにより、融点を低下させることが出来、導電成分の融点差(それぞれ、240℃、230℃程度と推定される)が小さくすることが可能となり、両成分ともに熱劣化し難い紡糸温度を選択することが可能である。しかしながら、両成分の溶融粘度差が大きく(後述する溶融粘度比η/ηが2.7〜3.3程度と推定される)、紡糸口金からの吐出時に糸条曲がりによる紡糸糸切れが発生したり、長手で複合形態が変動する複合異常が発生するおそれがある。また、万一、良好な製糸性で得られるとしても、非導電成分にイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用いているため、通常の溶融紡糸方法では、得られる導電性複合繊維内の分子鎖構造に歪を生じ、沸水収縮率が15%以上の高いものとなる。そのため、通常のポリエステル糸等と共に交織・交編した場合、布帛の熱セット工程、染色工程、実使用時の洗濯・乾燥時に導電性複合繊維のみが大きく収縮し、布帛にシボ感が生じるばかりか、導電性複合繊維が通常のポリエステル糸等の内部に潜り込み、布帛の制電性が低下する問題があった。
また、非導電成分としてイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、導電成分にはイソフタル酸およびアジピン酸を共重合したポリブチレンテレフタレートに導電性カーボンブラックを25重量%含有せしめた樹脂を用いた発明が開示されている(特許文献3)。この方法も前記同様、非導電成分にイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用いているため、非導電性分の融点を低下させ、両成分ともに熱劣化を回避できる紡糸温度を選択することが出来るが、やはり通常の溶融紡糸方法では、得られる導電性複合繊維内の分子鎖構造に歪を生じ、沸水収縮率が15%以上の高いものとなる。
特開平2−300317号公報(実施例1) 特開平9−279416号公報(実施例1) 特開2004−44071号公報(実施例1)
本発明は、上記問題を解決するべく、導電成分、非導電成分それぞれの融点および溶融粘度を適切な組合せとすることで、製糸時の糸切れトラブルなく安定して生産可能な、導電性能に優れた導電性複合繊維を得るためにある。
導電性カーボンブラックを含有した導電性熱可塑性樹脂(樹脂A)と、樹脂Aの融点+15℃以下であるポリエステル系熱可塑性樹脂(樹脂B)が接合してなる導電性複合繊維において、樹脂Aの溶融粘度(η)と樹脂Bの溶融粘度(η)の比(η/η)が0.4〜2.5であり、単糸横断面形状が、樹脂Aが回転対称に2点以上繊維表面に露出した形状であり、沸水収縮率が12%以下であることを特徴とする導電性複合繊維。
本発明により製糸時の糸切れトラブルなく安定して生産可能な、導電性能に優れた導電性複合繊維を得ることが出来る。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる導電性カーボンブラックとしては、10−3〜10Ωcmの固有体積抵抗を有するものが良く、具体的にはファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックを好適に用いることができる。本発明における導電性カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂の導電性カーボンブラックの含有量は、熱可塑性樹脂がポリアミド系であれば20〜50重量%、ポリエステル系であれば15〜40重量%の範囲であれば、導電性、曳糸性、複合安定性の観点から好ましい。また、本発明における導電性カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂には、本発明の効果を損なわない限り、抗酸化剤、熱安定剤、顔料、無機粒子、流動化剤、滑剤、ワックス類を添加することが出来る。
本発明における導電性カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂としては、カーボンブラックの分散性や樹脂Bとの接合性などの面から、ポリエステル系であれば、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびそれらを主成分とする共重合熱可塑性樹脂、ポリアミド系であればナイロン6およびそれを主成分とした共重合熱可塑性樹脂が好適に用いることができる。
本発明におけるポリエステル系熱可塑性樹脂Bはポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンフタレート等が挙げられるが、中でも前者のテレフタル酸を主たる酸成分とし、炭素原子数2〜6のアルキレングリコール成分、即ちエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、及びヘキサメチレングリコールから選ばれた少なくとも一種のグリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルを対象とする。なお、このポリエステルはそのテレフタル酸成分の一部を他の二官能基カルボン酸成分で置き換えてもよい。かかるカルボン酸としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、ジブロモテレフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルキシエンタンカルボン酸、β−オキシエトキシ安息香酸の如き二官能性芳香族カルボン酸、セバシン酸、アジピン酸、シュウ酸の如き二官能性脂肪族カルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き二官能性脂環族カルボン酸等を挙げることができる。また、上記グリコール成分の一部を他のグリコール成分と置き換えてもよく、かかるグリコール成分としてはシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、2,2−ビス〔3,5−ジブロモ−4−(2−ハイドロキシエトキシ)フェニル〕プロパンの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオールが挙げられる。更に上述のポリエステルに必要に応じて他のポリマーを少量ブレンド溶融したもの、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメリット酸等の鎖分岐剤を少割合使用したものであってもよい。この他、本発明のポリエステルは通常のポリエステルと同様に酸化チタン等の顔料のほか、従来公知の抗酸化剤、着色防止剤が添加されていても勿論よい。
また、発明におけるポリエステル系熱可塑性樹脂Bの融点は、樹脂Aの融点の+15℃以下とする必要がある。導電性カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂Aが樹脂Bより融点が低い場合、紡糸時には高融点側の樹脂Bの融点に合せた温度で紡糸することとなるため、カーボンブラックを多量に含有している樹脂Aは著しく熱劣化し、紡糸機配管壁への堆積による操業トラブルや、口金吐出孔付近への汚れの堆積による紡糸時糸切れ、熱劣化樹脂の糸条への混入による紡糸時糸切れや品位低下が引き起こされ、実質安定製糸が不可能となる。従って、樹脂Bの融点は樹脂Aの融点の+15℃以下とする必要があり、さらに樹脂Aの融点−30〜+10℃とすれば、いずれの樹脂も熱劣化し難くなり、紡糸安定性に優れるため好ましい。かかる観点から、融点190〜240℃のポリエステルを樹脂Bとして用いれば、前述する樹脂Aのベース樹脂として好ましく用いることが出来るナイロン6やポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびそれらを主成分とした共重合樹脂の融点−30〜+10℃とすることが出来るため好ましい。ポリエステル繊維として一般的な熱可塑性樹脂からこれらに該当する例を挙げると、前記した共重合成分を共重合したポリエチレンテレフタレートや、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートが好適に用いることが出来、中でも、融点、溶融粘度の調整の容易性や曳糸性、得られる繊維物性の観点からイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートが特に好ましく、イソフタル酸の共重合率としては5〜20モル%であれば、概ね融点が190〜240℃となるため好ましい。
本発明における樹脂Aと樹脂Bの溶融粘度比(η/η)は0.4〜2.5である。η/ηが0.4を下回る、あるいは2.5を上回ると樹脂Bと樹脂Aの溶融粘度乖離が大きくなるため、複合異常や吐出曲がりによる糸切れ・品質異常を引き起こし、安定して製糸することが困難となる。η/ηが0.5〜2.0であれば、より安定した製糸が可能となるため、好ましい。
一般に、導電性カーボンブラックを多量に添加させた熱可塑性樹脂は、樹脂のみの場合と比較して、樹脂分子とカーボンブラック粒子、あるいはカーボンブラック粒子同士の相互作用の影響により、溶融粘度が大きくなる。樹脂種によって異なるものの、溶融粘度の増大幅はカーボンブラック粒子の添加量に依存して大きくなり、導電性能を発揮する量のカーボンブラックを添加した樹脂は、添加前の溶融粘度と比較して、一般に2〜20倍程度大きくなる。極度に溶融粘度が増大した場合、曳糸性が乏しいものとなり、紡糸が困難になるばかりか、複合繊維とする場合は、前記のような他成分との複合異常が発生するという問題がある。前記したη/ηの値を0.4〜2.5とするためには、現実的には樹脂Aの溶融粘度を低めに抑制することが好ましい。かかる観点から、樹脂Aのベースの熱可塑性樹脂としてナイロン6、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、およびそれらを主成分とした共重合樹脂を用いれば、溶融粘度の増加を抑制しつつ高い導電性能を得ることが出来、かつ曳糸性に優れるため好ましい。
本発明の導電性複合繊維における、樹脂Aの配合比率は、5〜40重量%であることが好ましい。5重量%以上であれば優れた導電性能が得られ、40重量%以下であれば製糸性、得られる導電性複合繊維の強伸度特性が好ましいものとなる。
本発明の導電性複合繊維は繊維表面に樹脂Aが露出している必要がある。樹脂Aが繊維表面に露出していない場合、繊維表面は絶縁体となるため、表面での導電性は不十分なものとなるため、本発明の対象にはならない。また、その複合形態は繊維横断面形状において回転対称に2点以上露出したものである。露出数が1点、あるいは回転対称ではない場合、紡糸口金から糸条が吐出された直後に、樹脂Aと樹脂Bの粘度差による糸条の曲がりが発生し、紡糸工程での糸切れを引き起こす問題がある。特に、露出点数が2〜4点であれば、製糸操業性・複合安定性に優れるため、好ましい。
本発明の導電性複合繊維は沸水収縮率が12%以下である。導電性複合繊維の主たる用途は、非導電性繊維と混繊、交編、交織した制電性布帛であるが、導電性複合繊維の沸水収縮率が12%を超えると、布帛のヒートセット加工や、洗濯・乾燥の際に導電性複合繊維が大きく収縮し、布帛の品位を低下させるばかりか、導電性複合繊維が布帛中で非導電性繊維内にもぐり込み、布帛の制電性能が劣るものとなる。
本発明の導電性複合繊維の製造は、通常の複合繊維の製造方法をそのまま用いることができ、樹脂A、樹脂Bをそれぞれ別々の溶融押出機により押出した後、従来公知の複合紡糸口金内で複合せしめる複合紡糸方法を適用すればよい。紡糸糸条は冷却後、油剤を給油し、500〜3500m/分程度で未延伸糸を引き取る。この際、複合紡糸した未延伸糸を一旦巻き取った後に加熱延伸する2工程法、もしくは複合紡糸した未延伸糸を一旦巻き取ることなく、加熱延伸する直接紡糸延伸法であれば、操業性が良好かつ、導電性能に優れた導電性複合繊維が得られ易いため好ましい。いずれの方法においても、加熱延伸時には、樹脂A、樹脂Bのガラス転移点のうち、高いほうの温度+10℃以上で予熱すれば、延伸ムラがなく、スムースな延伸が可能なため、好ましい。このときの延伸倍率は樹脂種、未延伸糸の配向状態により様々な値をとることが出来るが、概ね最大延伸倍率(破断が生じる延伸倍率)の40〜80%とすれば、得られる導電性複合繊維の機械特性、導電性能が優れるものとなる。
また、加熱延伸のヒートセット時に弛緩熱処理することが好ましい。本発明の弛緩熱処理とは、延伸工程にて未延伸糸を任意の倍率にて加熱延伸した後に、更に加熱し、繊維構造を固定するヒートセット工程において、加熱体と接触する繊維を弛緩させることを指す。この方法は、緊張させてヒートセットする方法に比べ、得られる導電性複合繊維の内部構造の歪を小さくすることが出来るため、前述した沸水収縮率を低く抑えることが容易であり、かつ導電性複合繊維内でのカーボンブラックの配列が密になるため、得られる導電性複合繊維の導電性能が向上するという利点がある。特に、前述した樹脂Aとして好適な熱可塑性樹脂である、イソフタル酸を5〜20モル%共重合したポリエチレンテレフタレートや、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートは通常の紡糸・延伸方法を適用すると、沸水収縮率が15%前後の高い値となり易いため、これらの熱可塑性樹脂を使用する場合には弛緩熱処理を伴う延伸方法が好適である。尚、この弛緩熱処理法以外で沸水収縮率を抑制する延伸方法としては、ヒートセット温度をなるべく高くすることが考えられるが、ヒートセット温度が融点近くなると糸切れや単糸同士が融着する懸念があるため、得られる導電性複合繊維の沸水収縮率と製糸操業性のバランスを考慮し、ヒートセット温度を決定する必要がある。導電性複合繊維の原料として使用する熱可塑性樹脂の種類にもよるが、概ね、ヒートセット温度は融点−30℃以下とするのが良く、その範囲のヒートセット温度においても沸水収縮率が12%を超える場合は、特に弛緩熱処理法が有効である。弛緩熱処理時の弛緩率(Rx%)は0.5〜6.0%程度であれば、弛緩熱処理の効果が得られ易く、かつ糸条の走行状態が安定し、操業性が優れるものとなるため、好ましい。
以下に本発明を詳細に説明する。尚、実施例中の評価は以下の評価方法に従った。
1.繊度(dtex)
浅野機械製作(株)製検尺機を用い、得られた導電性複合繊維を100mサンプリングして重量を測定し、10000mに換算した重量値を総繊度とした。
2.融点
Perkin elmer社製DSC−7を用いて2nd runで融点を測定した。この時、試料重量を約10mg、昇温速度を10℃/分とした。
3.溶融粘度
東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、径1.0mm、深さ10mmのキャピラリーを使用し毛細粘度計にて窒素雰囲気下で測定した。尚、測定時の温度は後述する実施例中の溶融温度と同一とし、剪断速度2432/secでの見掛け粘度(poise)を溶融粘度とした。
4.比抵抗値
導電性複合繊維を束ねて約1000dtexとし、弱アニオン系洗剤を用い、十分に精錬して油剤などを除いた後、20℃、40%RHの状態で24時間放置し、同温度、湿度下にてその両端の500Vの印加電圧のもと流れた電流を測定することによって原糸の比抵抗ρ[Ωcm]を求めた。ρの値が、1000未満の場合○、1000〜5000の場合△、5000を超える場合×とし、○および△を合格とした。
5.沸水収縮率
導電性複合繊維を周長1mのかせ取り機で20回巻き取ってかせを作り、0.09cN/dtex荷重下で初長:Lを求める。次に無荷重下99.8℃の沸騰水中で15分間処理した後、風乾した。次いで、0.09cN/dtex荷重下で処理後の長さ:Lを求め、次式により算出し、12%以下を合格とした。
沸騰水収縮率(%)={(L−L)/L}×100
6.製糸性
後述する実施例の方法で導電性複合繊維を得るに当たり、樹脂原料1000kg当りに発生した紡糸工程での糸切れ数が5回未満を○、5回以上15回未満を△、15回以上あるいは複合異常が認められた場合を×とし、○および△を合格とした。
7.総合評価
製糸性、比抵抗値および、沸水収縮率の全てが○の場合○とし、すべて合格であるものの1つでも△がある場合を△、いずれか1つでも不合格な場合を×とし、○および△を合格とした。
実施例1
カーボンブラック(ファーネスブラック)を35重量%添加したナイロン6(N6)を樹脂A(融点225℃)とし、イソフタル酸を8モル%共重合したポリエチレンテレフタレート(PET)を樹脂B(融点227℃)として使用した。それぞれ別々の溶融押出装置に供給し、図1の如き断面が得られるように設計された複合紡糸口金より、樹脂Aの配合比率が15重量%となるように糸条を吐出させた。このとき溶融温度は260℃であり、該温度下におけるηは1.5×10poise、ηは1.5×10poiseであった。吐出された糸条は冷却、給油したのち、表面速度1500m/分のゴデーローラーを介し、同速度で未延伸糸としてチーズ状パッケージに巻き取った。紡糸工程における糸切れ数は2回であり、複合形態の異常なく、良好な紡糸性であった。
得られた未延伸糸は図2に示す延伸機にて延伸した。この時、延伸倍率は2.7倍、予熱ホットロール温度は90℃、ヒートセット温度は150℃とし、図2中のヒートセットロール表面速度V(m/分)とドローロール表面速度V(m/分)により下記式にて示される弛緩率Rx=0.5%にて弛緩熱処理し、28dtex3フィラメントの導電性複合繊維延伸糸を得た。
Rx(%)=100×(V−V)/V
得られた導電性複合繊維の比抵抗値は300Ωcm、沸水収縮率は7.1%であり、いずれも良好な物性が得られた。
実施例2
樹脂Aとして、カーボンブラックを25重量%添加したポリブチレンテレフタレート(PBT)を、樹脂Bとしてポリプロピレンテレフタレートを使用した以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。尚、樹脂Aの融点は224℃、溶融粘度は4.2×10poiseであり、樹脂Bの融点は231℃、溶融粘度は1.8×10poiseであった。
溶融粘度比2.33と若干高めであるため糸条の曲がりによる糸切れが11回発生したものの、複合異常は無く、また得られた導電性複合繊維の物性は良好であった。
実施例3
樹脂Aとしてカーボンブラックを25重量%添加したPPT(融点231℃、溶融粘度4.0×10poise)を使用した以外、実施例2と同様の方法で導電性複合繊維を得た。
溶融粘度比2.22と若干高めであるため糸条の曲がりによる糸切れが9回発生したものの、複合異常は無く、また得られた導電性複合繊維の物性は良好であった。
実施例4
延伸時に弛緩熱処理ではなく緊張熱処理(Rx=−0.5%)とし、熱セットロール温度を180℃とした以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。沸水収縮率が11.3%とやや高めになったものの、問題ないレベルであり、製糸性(糸切れ回数3回)導電性(比抵抗480Ωcm)は良好であった。
実施例5
樹脂Bとしてポリ乳酸(融点172℃、溶融粘度9.0×10poise)を使用し、延伸時の熱セットロール温度を130℃とした以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。ポリ乳酸の熱劣化による糸切れが9回発生したものの、得られた導電性複合繊維の比抵抗値(310Ωcm)、沸水収縮率(9.9%)ともに良好な値であった。
実施例6
複合紡糸口金を図3のように、樹脂Aが単繊維当り6点露出する口金とした以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。単糸断面において樹脂Aが細かく分配されたことによると推定される糸切れが8回発生したものの、得られた導電性複合繊維の非抵抗値(380Ωcm)、沸水収縮率(7.6%)ともに良好な値であった。
実施例7
樹脂Aの配合比率を4重量%とした以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。紡糸における糸切れは1回と良好な操業性であった。得られた導電性複合繊維の比抵抗値は1210Ωcmと、やや高めの値であったが十分な導電性能が得られた。
実施例8
樹脂Aの配合比率を45重量%とした以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。樹脂Aの配合比率が高いため、紡糸における糸切れが14回発生したものの、得られた導電性複合繊維の比抵抗値(110Ωcm)、沸水収縮率(7.4%)ともに良好な値であった。
比較例1
樹脂Aとして、カーボンブラックを25重量%添加したPBT(融点224℃、溶融粘度4.2×10poise)を使用した以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。紡糸口金直下における吐出糸条の曲がり、ピクツキが著しく、紡糸糸切れ45回であり、安定生産不可能なレベルであった。
比較例2
樹脂Aとして、カーボンブラックを25重量%添加したPET(融点256℃、溶融粘度6800poise)を、樹脂BとしてPET(融点256℃、溶融粘度1.8×10poise)を使用し、溶融温度を285℃とした以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。紡糸口金直下における吐出糸条の曲がり、ピクツキが著しく、また、樹脂Aの溶融粘度が著しく高いため極度に曳糸性が低くなり、紡糸糸切れ多発し、生産不可能であった。
比較例3
樹脂BとしてPET(融点256℃、溶融粘度1.8×10poise)を使用し、溶融温度を285℃とした以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。樹脂A側のベース樹脂(ナイロン6)が著しく熱劣化したことにより、紡糸糸切れ多発し、生産不可能であった。
比較例4
樹脂BとしてPET(融点256℃、溶融粘度3.5×10poise)を使用し、溶融温度を285℃とした以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。紡糸口金直下における吐出糸条の曲がり、ピクツキが著しく、また樹脂A側のベース樹脂(ナイロン6)が著しく熱劣化したことにより、紡糸糸切れ多発した。
比較例5
複合紡糸口金を図4のように、樹脂Aが単繊維当り1点露出する口金とした以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。紡糸口金直下における吐出糸条の曲がり、ピクツキが著しく、紡糸糸切れ22回と、安定生産不可能であった。
比較例6
延伸時に弛緩熱処理ではなく緊張熱処理(Rx=−0.5%)とし、熱セットロール温度を110℃とした以外、実施例1と同様の方法で導電性複合繊維を得た。紡糸時の糸切れ4回と良好な操業性が得られたものの、得られた導電性複合繊維の沸水収縮率は16.2%と高く、実使用にたえないものであった。
以上の実施例を表1に、比較例を表2にそれぞれまとめた。
Figure 2007224447
Figure 2007224447
実施例1で得られた導電性複合繊維の単繊維横断面模式図 実施例中で使用した延伸機の模式図 実施例6で得られた導電性複合繊維の単繊維横断面模式図 比較例5で得られた導電性複合繊維の単繊維横断面模式図
符号の説明
A:樹脂A
B:樹脂B
1:糸条
2:予熱ホットロール
3:熱セットロール
4:ドローロール
5:リング
6:スピンドル

Claims (3)

  1. 導電性カーボンブラックを含有した導電性熱可塑性樹脂(樹脂A)と、樹脂Aの融点+15℃以下であるポリエステル系熱可塑性樹脂(樹脂B)が接合してなる導電性複合繊維において、樹脂Aの溶融粘度(η)と樹脂Bの溶融粘度(η)の比(η/η)が0.4〜2.5であり、単糸横断面形状が、樹脂Aが回転対称に2点以上繊維表面に露出した形状であり、沸水収縮率が12%以下であることを特徴とする導電性複合繊維。
  2. 樹脂Bがイソフタル酸を5〜20モル%以上共重合したポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1記載の導電性複合繊維。
  3. 導電性カーボンブラックを含有した導電性熱可塑性樹脂(樹脂A)と、樹脂Aの融点+15℃以下かつ、樹脂Aの溶融粘度(η)と樹脂Bの溶融粘度(η)の比(η/η)が0.4〜2.5であるイソフタル酸を5〜20モル%共重合したポリエチレンテレフタレートを非導電ポリエステル系樹脂(樹脂B)とし、樹脂Aと樹脂Bをそれぞれ別々の溶融押出機に供給し、樹脂Aが回転対称に繊維表面に2点以上露出した断面形状となるような複合紡糸用口金ノズルより紡糸した未延伸糸に加熱延伸を施した後、弛緩熱処理を施すことを特徴とする導電性複合繊維の製造方法。
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