JP2005002535A - 導電性複合繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた除電効果と製糸・加工安定性を有する導電性複合繊維を得ること。
【解決手段】導電性カーボンブラックを15〜40重量%、エステル系化合物を0.5〜5.0重量%を含有する熱可塑性ポリマーからなり、ズリ速度60sec−1下での285℃溶融粘度が500〜9000poiseである導電ポリマーAと、主な繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルからなる保護ポリマーBとが複合されており、導電ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出し、保護ポリマーBが繊維横断面積の70〜90%を形成することを特徴とする導電性複合繊維。
【選択図】図1
【解決手段】導電性カーボンブラックを15〜40重量%、エステル系化合物を0.5〜5.0重量%を含有する熱可塑性ポリマーからなり、ズリ速度60sec−1下での285℃溶融粘度が500〜9000poiseである導電ポリマーAと、主な繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルからなる保護ポリマーBとが複合されており、導電ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出し、保護ポリマーBが繊維横断面積の70〜90%を形成することを特徴とする導電性複合繊維。
【選択図】図1
Description
本発明は、除電性能に優れた複合繊維に関するものであり、更に詳しくは、製糸性・加工性に優れ、かかる複合繊維は全体としては導電性カーボンブラックの含有量が少量であるにも関わらず優れた制電性能を有する布帛が得られる導電性複合繊維に関するものである。
【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
【従来の技術】
従来から除電性能の優れた繊維としての導電性繊維については、種々の提案がなされており、例えば導電性を有さない繊維の表面に金属メッキして導電性を付与せんとしたものや、導電性カーボンブラックを樹脂やゴム類に分散させた後、これを繊維表面にコートすることによって導電性被覆層を形成せしめたもの等がある。しかし、これらは製造工程が複雑化して技術的に困難な方法によって得られたものであったり、導電性繊維を実用に供するため準備段階、例えば製織編のための精練工程での薬品処理や実際の使用における摩耗や繰り返し洗濯といった外的な作用によって導電性が容易に低下し、実用の域を脱してしまうという問題があった。
【0003】
他の導電性繊維として、スチール繊維の様な金属繊維が除電性能の優れたものとして知られているが、金属繊維はコストが高く、しかも一般の有機素材とはなじみ難く、紡績性不良となったり、製織・染色仕上げ工程でのトラブルの原因となったり、着用時の洗濯による断線・脱落が生じやすく、さらには通電性に基づく感電・スパークの問題、布帛の溶融トラブル等の原因となっていた。
【0004】
また、別のタイプの導電性繊維として、導電性カーボンブラックを均一分散させたポリマーを繊維化する方法が提案されているが、カーボンブラックを多量に含有するために繊維の製造が難しく、コスト高であり、且つ繊維物性が著しく低下し、特殊な工程を用いる以外に製品化が困難であるという問題があった。これらの問題を解決せんとする提案として、芯鞘複合タイプの芯成分ポリマーに導電性カーボンブラックを含有させ、それを通常の繊維形成性ポリマーからなる鞘で包み込もうという方法である(特許文献1参照)。この場合、繊維性能を保つため芯部を50%以下にする必要があり、そのため非導電性の鞘が厚く包囲しているため、低カーボン含有量では十分な性能が発揮されない。さらに、導電性カーボンを含む導電性ポリマー層とそれと同じポリマーで導電性カーボンを含まない非導電性ポリマー層とを多層状に張りあわせた繊維が、上記単一の芯鞘型導電性繊維の除電性能向上と成分層間の剥離紡防止を中心とした耐久性向上を目的として提案されている(特許文献2参照)。この場合もやはり導電性カーボンブラックを含む層が表面に露出しすぎているため、耐薬品性、耐久性の向上は認められない。
【0005】
一方、有機導電性物質を含有する線状重合体を繊維形成性重合体内に筋状分散せしめた導電性繊維が提案されている(特許文献3,4参照)。これらにおいては導電性成分が繊維表面ではなく、内部に入っているために剥離、表面摩擦、洗濯などの耐久性が向上するというものである。しかし、この場合、有機導電性物質を含有する線状重合体はそれと全く相溶性のない繊維形成性重合体に筋状分散つまり、長さ方向へは非連続状態で分散混合しているわけで、繊維強度には全く寄与しないため繊維強度の低下は避けることが出来ない。また、最も重要な繊維性能である導電性が筋状分散によって変化するため、製造条件、製品品質の管理が非常に難しい。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第3803453号公報
【0007】
【特許文献2】
特開昭52−152513号公報
【0008】
【特許文献3】
特開昭53−147865号公報
【0009】
【特許文献4】
特開昭54−34470号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決し、製糸性・加工性に優れ、複合繊維は全体としては導電性カーボンブラックの含有量が少量であるにも関わらず優れた除電性能を有する布帛が得られる導電性複合繊維を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明は、導電性カーボンブラックを15〜40重量%、エステル系化合物を0.5〜5.0重量%を含有する熱可塑性ポリマーからなり、ズリ速度60sec−1下での285℃溶融粘度が500〜9000poiseである導電ポリマーAと、主な繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルからなる保護ポリマーBとが複合されており、導電ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出し、保護ポリマーBが繊維横断面積の70〜90%を形成することを特徴とする導電性複合繊維である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明において、導電ポリマーAにおける導電性カーボンブラックの含有量は15〜40重量%であり、好ましくは20〜30重量%である。導電性カーボンブラックの含有量が15重量%より少ない場合には十分な除電性能は発揮されない。一方、40重量%を超える場合では、ポリマー流動性が著しく低下して製糸性が極端に悪化する。カーボンブラックは完全に粒子分散をしている場合は一般に導電性が不良であって、ストラクチャーと呼ばれる連鎖構造をとると導電性が向上して導電性カーボンブラックと言われるものになる。従って、導電性カーボンブラックによって、ポリマーを導電化するにあたっては、このストラクチャーを破壊しないでカーボンブラックを分散させることが肝要となる。そして、導電性カーボンブラック含有複合体の電気伝導メカニズムとしては、カーボンブラック連鎖の接触によるものとトンネル効果によるものが考えられるが、前者の方が主と考えられる。従って、カーボンブラックの連鎖が長く高密度ポリマー中に存在する方が接触確率大となり、高導電性となる。本発明者らの検討結果では、導電性カーボンブラック含有量15重量%未満では殆ど効果がなく、20重量%になると急激に導電性が向上し、30重量%を超えるとほぼ飽和する。
【0014】
ポリマーA中に含有せしめる導電性カーボンブラックとしては、10−3〜102Ω・cmの固有電気抵抗を有するものが好ましい。
【0015】
本発明における導電ポリマーAとして用いる熱可塑性ポリマーには、エステル系化合物を0.5〜5.0重量%、好ましくは1.0〜3.0重量%含有する。エステル系化合物を含有することで、カーボンブラックを含有せしめた後の溶融粘度が適正な範囲となる。本発明者らの検討結果では、エステル系化合物としては、モンタン酸エステル系化合物や亜リン酸エステル系化合物などが好ましく、これらエステル系化合物を1種、もしくは2種以上を併用しても構わないが、含有量は0.5重量%未満では殆ど効果がなく、5.0重量%を超えると耐熱性が低下してしまう。ここで言う導電ポリマーAの溶融粘度の適正な範囲とは、ズリ速度60sec−1における285℃溶融粘度が500〜9000poiseである。紡糸機ポリマー配管や紡糸口金での流動性や保護ポリマーBとの複合安定性を確保し、安定した生産を行うためのものであり、500poise未満では粘性が低すぎて、紡糸口金での計量性が低下し、各単糸間あるいは単糸内での複合ムラが発生する。また、9000poiseを上回ると、紡糸口金での流動性が低すぎて安定吐出することが出来ない。好ましくは800〜8000poiseであり、より好ましくは1000〜7000poiseである。
【0016】
本発明における導電ポリマーAとして用いる熱可塑性ポリマーは、特に限定するものではないが、保護ポリマーBとの複合安定性や製糸性を考慮した場合、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル、または、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/ナイロン66共重合体、あるいはポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0017】
本発明における保護ポリマーBは、主な繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルである。本発明における導電性複合繊維の繊維化の際の良好な複合安定性や製糸性、高次加工通過性を維持するために、ポリマーAと類似した熱特性や収縮特性を有する結晶性ポリエステルポリマーとするものである。また、これらにテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、フタール酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを本来ポリエステルホモポリマーの有する繊維形成性を損なわない程度に共重合させても良い。
【0018】
ポリマーAとポリマーBとの複合形態については、ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出するようにすることが重要である。そうすることで、導電成分であるポリマーAの存在による除電性能の実効を得ることができる。また、目的の除電性能を得るための複合繊維の抵抗値は1.58×106〜7.94×108Ω、すなわちLog(Ω)=6.2〜8.9の範囲にあることが好ましく、より好ましくはLog(Ω)が7.9以下である。
【0019】
複合形態としては、図1〜3に示すような、繊維表面に導電成分を配した海島型や偏心芯鞘型、さらには導電成分を鞘とした芯鞘型、サイドバイサイド型等を採用することができる。
【0020】
ポリマーAとポリマーBとの複合比率としては、ポリマーBが導電性繊維の繊維横断面積の70〜90%を占有することが重要である。
保護成分であるポリマーBが繊維横断面積の95%を超えて多くなり、導電成分であるポリマーAが5%未満になると、安定した複合構造として紡糸するのが困難になる。特に導電ポリマーを糸横断面方向に分散させて複合する場合には、繊維長さ方向に導電ポリマーの連続層を得るのが困難になる。一方、導電ポリマーAが繊維横断面積の30%を超えると、複合した系の紡糸性、延伸性、さらには繊維物性が極端に低下し、実用性は全く失われてしまう。従って、導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合面積比率A:Bは10:90〜30:70であり、好ましくは15:85〜25:75である。
【0021】
本発明の導電性複合繊維は、単糸繊度が4.0デシテックス以上であることが好ましい。単糸繊度を4.0デシテックス以上とすることで、通常の非導電性繊維に導電性複合繊維を少量混繊して布帛加工した場合でも導電性複合繊維の導電成分露出面積を確保でき、十分な徐電性能が得られる。
【0022】
本発明の導電性複合繊維は、通常の複合繊維の製造方法をそのまま用いることができ、特に限定するものではなく、複合紡糸した未延伸糸を一旦巻き取った後に加熱延伸する方法を採用しても良く、複合紡糸した未延伸糸を一旦巻き取ること無く、加熱延伸する直接紡糸延伸法を採用しても良い。
【0023】
【実施例】
以下本発明を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中における溶融粘度、複合繊維抵抗値、製糸安定性、加工安定性は以下の通りである。
【0024】
また、実施例中に示す導電ポリマーAに含有せしめるエステル化合物については、亜リン酸エステル化合物をα、モンタン酸エステル化合物をβと略す。
1.溶融粘度
東洋精機社製キャピロフローテスターを用い、直径1.0mm、深さ10mmのキャピラリーにて、溶融温度285℃で20分加温した後にズリ速度60sec−1下で溶融粘度(poise)を測定した。
2.複合繊維抵抗値
得られた複合繊維を小池機械社製筒編み機にて、ゲージ26、針数240本にて幅150mmの筒編み地を作成し、MEISEI社製SRM−100 SURFACE RESISTANCE CHECKERにて測定した表面抵抗値(Ω)より算出した。なお除電効果については、表面抵抗値の対数=Log(Ω)を求め、以下の通り判定した。
【0025】
6.0〜7.9:○、8.0〜8.9:△、9.0以上:×
3.通常の複合紡糸機にて、1,000kgの未延伸糸を巻き取った後に、通常の延伸機にてボビンに0.5kgの延伸糸を巻き取り、1,000kgの未延伸糸に対する製品収率で以下の通り判定し、○および△を合格とした。
【0026】
91%以上:○、80〜90%:△、79%以下:×
4.加工安定性
得られた繊維をポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)/綿=65/35の混紡糸でカバーリングし、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)/綿=65/35、綿番手20S/2の経糸に80本に1本の割合で打ち込んでタテ80本/inヨコ50本/inの2/1ツイル織物とした。この際の、ポリエステル/綿混紡糸でのカバーリングを行う際の、導電繊維の給糸ガイドおよび糸道での毛羽・糸切れ発生頻度(導電繊維の給糸長100,000m当たり)で評価し、○および△を合格とした。
5回以下:○、6〜10回:△、11回以上:×
実施例1
導電ポリマーAは、カーボンブラックを15重量%、亜リン酸エステル化合物を0.5重量%含有した溶融粘度7800poiseのポリエチレンテレフタレートを用い、図1の如く複合形態を成し、且つ繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=30:70となるようポリエチレンテレフタレートである保護ポリマーBと複合紡糸した。その後延伸を実施し27デシテックス3フィラメントの導電性複合繊維を得た。製糸操業性としては、製品収率88.5%で生産可能なレベルであった。得られた複合繊維の抵抗値は25.12×107Ω、すなわちLog(Ω)=8.4であり、これを用いた織物における除電効果は問題なく、カバーリング加工時の毛羽・糸切れ発生回数は9回と生産可能なレベルであった。
【0027】
実施例2
導電ポリマーAに、カーボンブラックを40重量%、モンタン酸エステル化合物を3.0重量%含有した溶融粘度8100poiseのポリブチレンテレフタレートを用い、繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=10:90となるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合繊維を得た。製糸操業性としては、製品収率80.3%で生産可能なレベルであった。得られた複合繊維の抵抗値は0.16×107Ω、すなわちLog(Ω)=6.2であり、これを用いた織物は優れた除電効果を有し、カバーリング加工時の毛羽・糸切れ発生回数は10回と生産可能なレベルであった。
【0028】
実施例3
導電ポリマーAに、カーボンブラックを30重量%、モンタン酸エステル化合物を1.0重量%、亜リン酸エステル化合物を1.0%含有した溶融粘度1120poiseのナイロン6を用い、繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=15:85となるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合繊維を得た。製品収率92%で良好な製糸操業性であった。得られた複合繊維の抵抗値は1.99×107Ω、すなわちLog(Ω)=7.3であり、これを用いた織物は優れた除電効果を有し、カバーリング加工時の毛羽・糸切れ発生回数は6回と生産可能なレベルであった。
【0029】
実施例4
導電ポリマーAに、カーボンブラックを30重量%、モンタン酸エステル化合物を1.0重量%、亜リン酸エステル化合物を0.5%含有した溶融粘度5070poiseのポリブチレンテレフタレートを用い、繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=15:85となるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合繊維を得た。製品収率95%で良好な製糸操業性であった。得られた複合繊維の抵抗値は5.04×107Ω、すなわちLog(Ω)=7.7であり、これを用いた織物は優れた除電効果を有し、カバーリング加工時の毛羽・糸切れ発生回数は3回と加工安定性も良好であった。
【0030】
実施例5〜7
複合形態が図2〜4となるようにした事以外、実施例4と同様の方法で複合繊維を得た。いずれについても、優れた除電性能を有しており、製糸操業性・加工安定性も問題の無いものであった。
【0031】
実施例1〜7の結果をまとめて、表1に示す。
【0032】
比較例1
導電ポリマーAに、カーボンブラックを10重量%、亜リン酸エステル化合物を0.5重量%含有した溶融粘度5850poiseのポリエチレンテレフタレートを用いたこと以外、実施例1と同様の方法で複合繊維を得た。製糸操業性や加工安定性は問題なかったが、得られた複合繊維の抵抗値は1.25×1011Ω、すなわちLog(Ω)=11.2となり、これを用いた織物は優れた除電効果を有するものとは言えないものであった。
【0033】
比較例2
導電ポリマーAに、カーボンブラックを30重量%含有した溶融粘度9700poiseのナイロン6を用いたこと以外、実施例3と同様の方法で複合繊維を得た。得られた繊維は、抵抗値は1.58×107Ω〜79.43×107Ω、すなわちLog(Ω)=7.2〜8.9のレベルでバラツキがあり、製品収率74.2%と製糸操業性が生産可能なレベルになく、複合繊維断面を観察すると各単繊維間に導電ポリマーAの流動性不足によると思われる複合ムラがあることが判明した。
【0034】
比較例3
繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=5:95となるように変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で複合繊維を得た。製糸操業性および加工安定性には問題なかったが、得られた複合繊維の抵抗値は2.51×1010Ω、すなわちLog(Ω)=10.4であり、これを用いた織物は優れた除電効果を有しているとは言えないものとなった。
【0035】
比較例4
導電ポリマーAに、カーボンブラックを30重量%、モンタン酸エステルを5.5重量%、亜リン酸エステルを2.0重量%含有した溶融粘度410poiseのポリブチレンテレフタレートを用いたこと以外、実施例4と同様の方法で複合繊維を得ようとしたが、導電ポリマーAの熱劣化によると思われる単糸切れや複合ムラによる糸切れが頻発し、採取した複合糸の抵抗値は、3.98×107Ω、すなわちLog(Ω)=7.9であり、除電性能は良好であったが、製糸操業性が生産可能なレベルではなかった。。
【0036】
比較例5
導電ポリマーAに、カーボンブラックを50重量%、モンタン酸エステルを3.0重量%、亜リン酸エステルを2.0重量%含有した溶融粘度10200poiseのナイロン6を用いたこと以外、実施例4と同様の方法で複合繊維を得ようとしたが、導電ポリマーAの流動性が著しく低く、安定したポリマー吐出が成されず、製品採取することが出来なかった。
【0037】
比較例6
繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=40:60となるように変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で複合繊維を得た。得られた複合繊維の抵抗値は0.79×107Ω、すなわちLog(Ω)=6.9であったが、製品収率51.8%、カバーリング加工時の毛羽・糸切れ発生回数は18回となり、製糸操業性および加工安定性は生産可能なレベルではなかった。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、導電性カーボンブラックとエステル系化合物を熱可塑性ポリマーに含有せしめた導電ポリマーと主な繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルとを複合紡糸し、導電性カーボンブラック含有量、保護ポリマーの繊維表面周長占有率、繊維横断面積占有率、2成分の接合面距離および導電ポリマーの繊維横断面上の等配数を適正なものとすることにより、製糸・加工安定性を有し通常の非導電性繊維に当該複合繊維を0.01〜10重量%添加するだけで優れた除電性能を有する布帛が得られる導電性複合繊維を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明導電性複合繊維の糸横断面の一具体例
【図2】本発明導電性複合繊維の糸横断面の一具体例
【図3】本発明導電性複合繊維の糸横断面の一具体例
【図4】本発明導電性複合繊維の糸横断面の一具体例
【符号の説明】
A:導電性ポリマー
B:保護ポリマー
【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
【従来の技術】
従来から除電性能の優れた繊維としての導電性繊維については、種々の提案がなされており、例えば導電性を有さない繊維の表面に金属メッキして導電性を付与せんとしたものや、導電性カーボンブラックを樹脂やゴム類に分散させた後、これを繊維表面にコートすることによって導電性被覆層を形成せしめたもの等がある。しかし、これらは製造工程が複雑化して技術的に困難な方法によって得られたものであったり、導電性繊維を実用に供するため準備段階、例えば製織編のための精練工程での薬品処理や実際の使用における摩耗や繰り返し洗濯といった外的な作用によって導電性が容易に低下し、実用の域を脱してしまうという問題があった。
【0003】
他の導電性繊維として、スチール繊維の様な金属繊維が除電性能の優れたものとして知られているが、金属繊維はコストが高く、しかも一般の有機素材とはなじみ難く、紡績性不良となったり、製織・染色仕上げ工程でのトラブルの原因となったり、着用時の洗濯による断線・脱落が生じやすく、さらには通電性に基づく感電・スパークの問題、布帛の溶融トラブル等の原因となっていた。
【0004】
また、別のタイプの導電性繊維として、導電性カーボンブラックを均一分散させたポリマーを繊維化する方法が提案されているが、カーボンブラックを多量に含有するために繊維の製造が難しく、コスト高であり、且つ繊維物性が著しく低下し、特殊な工程を用いる以外に製品化が困難であるという問題があった。これらの問題を解決せんとする提案として、芯鞘複合タイプの芯成分ポリマーに導電性カーボンブラックを含有させ、それを通常の繊維形成性ポリマーからなる鞘で包み込もうという方法である(特許文献1参照)。この場合、繊維性能を保つため芯部を50%以下にする必要があり、そのため非導電性の鞘が厚く包囲しているため、低カーボン含有量では十分な性能が発揮されない。さらに、導電性カーボンを含む導電性ポリマー層とそれと同じポリマーで導電性カーボンを含まない非導電性ポリマー層とを多層状に張りあわせた繊維が、上記単一の芯鞘型導電性繊維の除電性能向上と成分層間の剥離紡防止を中心とした耐久性向上を目的として提案されている(特許文献2参照)。この場合もやはり導電性カーボンブラックを含む層が表面に露出しすぎているため、耐薬品性、耐久性の向上は認められない。
【0005】
一方、有機導電性物質を含有する線状重合体を繊維形成性重合体内に筋状分散せしめた導電性繊維が提案されている(特許文献3,4参照)。これらにおいては導電性成分が繊維表面ではなく、内部に入っているために剥離、表面摩擦、洗濯などの耐久性が向上するというものである。しかし、この場合、有機導電性物質を含有する線状重合体はそれと全く相溶性のない繊維形成性重合体に筋状分散つまり、長さ方向へは非連続状態で分散混合しているわけで、繊維強度には全く寄与しないため繊維強度の低下は避けることが出来ない。また、最も重要な繊維性能である導電性が筋状分散によって変化するため、製造条件、製品品質の管理が非常に難しい。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第3803453号公報
【0007】
【特許文献2】
特開昭52−152513号公報
【0008】
【特許文献3】
特開昭53−147865号公報
【0009】
【特許文献4】
特開昭54−34470号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決し、製糸性・加工性に優れ、複合繊維は全体としては導電性カーボンブラックの含有量が少量であるにも関わらず優れた除電性能を有する布帛が得られる導電性複合繊維を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明は、導電性カーボンブラックを15〜40重量%、エステル系化合物を0.5〜5.0重量%を含有する熱可塑性ポリマーからなり、ズリ速度60sec−1下での285℃溶融粘度が500〜9000poiseである導電ポリマーAと、主な繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルからなる保護ポリマーBとが複合されており、導電ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出し、保護ポリマーBが繊維横断面積の70〜90%を形成することを特徴とする導電性複合繊維である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明において、導電ポリマーAにおける導電性カーボンブラックの含有量は15〜40重量%であり、好ましくは20〜30重量%である。導電性カーボンブラックの含有量が15重量%より少ない場合には十分な除電性能は発揮されない。一方、40重量%を超える場合では、ポリマー流動性が著しく低下して製糸性が極端に悪化する。カーボンブラックは完全に粒子分散をしている場合は一般に導電性が不良であって、ストラクチャーと呼ばれる連鎖構造をとると導電性が向上して導電性カーボンブラックと言われるものになる。従って、導電性カーボンブラックによって、ポリマーを導電化するにあたっては、このストラクチャーを破壊しないでカーボンブラックを分散させることが肝要となる。そして、導電性カーボンブラック含有複合体の電気伝導メカニズムとしては、カーボンブラック連鎖の接触によるものとトンネル効果によるものが考えられるが、前者の方が主と考えられる。従って、カーボンブラックの連鎖が長く高密度ポリマー中に存在する方が接触確率大となり、高導電性となる。本発明者らの検討結果では、導電性カーボンブラック含有量15重量%未満では殆ど効果がなく、20重量%になると急激に導電性が向上し、30重量%を超えるとほぼ飽和する。
【0014】
ポリマーA中に含有せしめる導電性カーボンブラックとしては、10−3〜102Ω・cmの固有電気抵抗を有するものが好ましい。
【0015】
本発明における導電ポリマーAとして用いる熱可塑性ポリマーには、エステル系化合物を0.5〜5.0重量%、好ましくは1.0〜3.0重量%含有する。エステル系化合物を含有することで、カーボンブラックを含有せしめた後の溶融粘度が適正な範囲となる。本発明者らの検討結果では、エステル系化合物としては、モンタン酸エステル系化合物や亜リン酸エステル系化合物などが好ましく、これらエステル系化合物を1種、もしくは2種以上を併用しても構わないが、含有量は0.5重量%未満では殆ど効果がなく、5.0重量%を超えると耐熱性が低下してしまう。ここで言う導電ポリマーAの溶融粘度の適正な範囲とは、ズリ速度60sec−1における285℃溶融粘度が500〜9000poiseである。紡糸機ポリマー配管や紡糸口金での流動性や保護ポリマーBとの複合安定性を確保し、安定した生産を行うためのものであり、500poise未満では粘性が低すぎて、紡糸口金での計量性が低下し、各単糸間あるいは単糸内での複合ムラが発生する。また、9000poiseを上回ると、紡糸口金での流動性が低すぎて安定吐出することが出来ない。好ましくは800〜8000poiseであり、より好ましくは1000〜7000poiseである。
【0016】
本発明における導電ポリマーAとして用いる熱可塑性ポリマーは、特に限定するものではないが、保護ポリマーBとの複合安定性や製糸性を考慮した場合、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル、または、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/ナイロン66共重合体、あるいはポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0017】
本発明における保護ポリマーBは、主な繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルである。本発明における導電性複合繊維の繊維化の際の良好な複合安定性や製糸性、高次加工通過性を維持するために、ポリマーAと類似した熱特性や収縮特性を有する結晶性ポリエステルポリマーとするものである。また、これらにテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、フタール酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを本来ポリエステルホモポリマーの有する繊維形成性を損なわない程度に共重合させても良い。
【0018】
ポリマーAとポリマーBとの複合形態については、ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出するようにすることが重要である。そうすることで、導電成分であるポリマーAの存在による除電性能の実効を得ることができる。また、目的の除電性能を得るための複合繊維の抵抗値は1.58×106〜7.94×108Ω、すなわちLog(Ω)=6.2〜8.9の範囲にあることが好ましく、より好ましくはLog(Ω)が7.9以下である。
【0019】
複合形態としては、図1〜3に示すような、繊維表面に導電成分を配した海島型や偏心芯鞘型、さらには導電成分を鞘とした芯鞘型、サイドバイサイド型等を採用することができる。
【0020】
ポリマーAとポリマーBとの複合比率としては、ポリマーBが導電性繊維の繊維横断面積の70〜90%を占有することが重要である。
保護成分であるポリマーBが繊維横断面積の95%を超えて多くなり、導電成分であるポリマーAが5%未満になると、安定した複合構造として紡糸するのが困難になる。特に導電ポリマーを糸横断面方向に分散させて複合する場合には、繊維長さ方向に導電ポリマーの連続層を得るのが困難になる。一方、導電ポリマーAが繊維横断面積の30%を超えると、複合した系の紡糸性、延伸性、さらには繊維物性が極端に低下し、実用性は全く失われてしまう。従って、導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合面積比率A:Bは10:90〜30:70であり、好ましくは15:85〜25:75である。
【0021】
本発明の導電性複合繊維は、単糸繊度が4.0デシテックス以上であることが好ましい。単糸繊度を4.0デシテックス以上とすることで、通常の非導電性繊維に導電性複合繊維を少量混繊して布帛加工した場合でも導電性複合繊維の導電成分露出面積を確保でき、十分な徐電性能が得られる。
【0022】
本発明の導電性複合繊維は、通常の複合繊維の製造方法をそのまま用いることができ、特に限定するものではなく、複合紡糸した未延伸糸を一旦巻き取った後に加熱延伸する方法を採用しても良く、複合紡糸した未延伸糸を一旦巻き取ること無く、加熱延伸する直接紡糸延伸法を採用しても良い。
【0023】
【実施例】
以下本発明を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中における溶融粘度、複合繊維抵抗値、製糸安定性、加工安定性は以下の通りである。
【0024】
また、実施例中に示す導電ポリマーAに含有せしめるエステル化合物については、亜リン酸エステル化合物をα、モンタン酸エステル化合物をβと略す。
1.溶融粘度
東洋精機社製キャピロフローテスターを用い、直径1.0mm、深さ10mmのキャピラリーにて、溶融温度285℃で20分加温した後にズリ速度60sec−1下で溶融粘度(poise)を測定した。
2.複合繊維抵抗値
得られた複合繊維を小池機械社製筒編み機にて、ゲージ26、針数240本にて幅150mmの筒編み地を作成し、MEISEI社製SRM−100 SURFACE RESISTANCE CHECKERにて測定した表面抵抗値(Ω)より算出した。なお除電効果については、表面抵抗値の対数=Log(Ω)を求め、以下の通り判定した。
【0025】
6.0〜7.9:○、8.0〜8.9:△、9.0以上:×
3.通常の複合紡糸機にて、1,000kgの未延伸糸を巻き取った後に、通常の延伸機にてボビンに0.5kgの延伸糸を巻き取り、1,000kgの未延伸糸に対する製品収率で以下の通り判定し、○および△を合格とした。
【0026】
91%以上:○、80〜90%:△、79%以下:×
4.加工安定性
得られた繊維をポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)/綿=65/35の混紡糸でカバーリングし、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)/綿=65/35、綿番手20S/2の経糸に80本に1本の割合で打ち込んでタテ80本/inヨコ50本/inの2/1ツイル織物とした。この際の、ポリエステル/綿混紡糸でのカバーリングを行う際の、導電繊維の給糸ガイドおよび糸道での毛羽・糸切れ発生頻度(導電繊維の給糸長100,000m当たり)で評価し、○および△を合格とした。
5回以下:○、6〜10回:△、11回以上:×
実施例1
導電ポリマーAは、カーボンブラックを15重量%、亜リン酸エステル化合物を0.5重量%含有した溶融粘度7800poiseのポリエチレンテレフタレートを用い、図1の如く複合形態を成し、且つ繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=30:70となるようポリエチレンテレフタレートである保護ポリマーBと複合紡糸した。その後延伸を実施し27デシテックス3フィラメントの導電性複合繊維を得た。製糸操業性としては、製品収率88.5%で生産可能なレベルであった。得られた複合繊維の抵抗値は25.12×107Ω、すなわちLog(Ω)=8.4であり、これを用いた織物における除電効果は問題なく、カバーリング加工時の毛羽・糸切れ発生回数は9回と生産可能なレベルであった。
【0027】
実施例2
導電ポリマーAに、カーボンブラックを40重量%、モンタン酸エステル化合物を3.0重量%含有した溶融粘度8100poiseのポリブチレンテレフタレートを用い、繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=10:90となるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合繊維を得た。製糸操業性としては、製品収率80.3%で生産可能なレベルであった。得られた複合繊維の抵抗値は0.16×107Ω、すなわちLog(Ω)=6.2であり、これを用いた織物は優れた除電効果を有し、カバーリング加工時の毛羽・糸切れ発生回数は10回と生産可能なレベルであった。
【0028】
実施例3
導電ポリマーAに、カーボンブラックを30重量%、モンタン酸エステル化合物を1.0重量%、亜リン酸エステル化合物を1.0%含有した溶融粘度1120poiseのナイロン6を用い、繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=15:85となるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合繊維を得た。製品収率92%で良好な製糸操業性であった。得られた複合繊維の抵抗値は1.99×107Ω、すなわちLog(Ω)=7.3であり、これを用いた織物は優れた除電効果を有し、カバーリング加工時の毛羽・糸切れ発生回数は6回と生産可能なレベルであった。
【0029】
実施例4
導電ポリマーAに、カーボンブラックを30重量%、モンタン酸エステル化合物を1.0重量%、亜リン酸エステル化合物を0.5%含有した溶融粘度5070poiseのポリブチレンテレフタレートを用い、繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=15:85となるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合繊維を得た。製品収率95%で良好な製糸操業性であった。得られた複合繊維の抵抗値は5.04×107Ω、すなわちLog(Ω)=7.7であり、これを用いた織物は優れた除電効果を有し、カバーリング加工時の毛羽・糸切れ発生回数は3回と加工安定性も良好であった。
【0030】
実施例5〜7
複合形態が図2〜4となるようにした事以外、実施例4と同様の方法で複合繊維を得た。いずれについても、優れた除電性能を有しており、製糸操業性・加工安定性も問題の無いものであった。
【0031】
実施例1〜7の結果をまとめて、表1に示す。
【0032】
比較例1
導電ポリマーAに、カーボンブラックを10重量%、亜リン酸エステル化合物を0.5重量%含有した溶融粘度5850poiseのポリエチレンテレフタレートを用いたこと以外、実施例1と同様の方法で複合繊維を得た。製糸操業性や加工安定性は問題なかったが、得られた複合繊維の抵抗値は1.25×1011Ω、すなわちLog(Ω)=11.2となり、これを用いた織物は優れた除電効果を有するものとは言えないものであった。
【0033】
比較例2
導電ポリマーAに、カーボンブラックを30重量%含有した溶融粘度9700poiseのナイロン6を用いたこと以外、実施例3と同様の方法で複合繊維を得た。得られた繊維は、抵抗値は1.58×107Ω〜79.43×107Ω、すなわちLog(Ω)=7.2〜8.9のレベルでバラツキがあり、製品収率74.2%と製糸操業性が生産可能なレベルになく、複合繊維断面を観察すると各単繊維間に導電ポリマーAの流動性不足によると思われる複合ムラがあることが判明した。
【0034】
比較例3
繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=5:95となるように変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で複合繊維を得た。製糸操業性および加工安定性には問題なかったが、得られた複合繊維の抵抗値は2.51×1010Ω、すなわちLog(Ω)=10.4であり、これを用いた織物は優れた除電効果を有しているとは言えないものとなった。
【0035】
比較例4
導電ポリマーAに、カーボンブラックを30重量%、モンタン酸エステルを5.5重量%、亜リン酸エステルを2.0重量%含有した溶融粘度410poiseのポリブチレンテレフタレートを用いたこと以外、実施例4と同様の方法で複合繊維を得ようとしたが、導電ポリマーAの熱劣化によると思われる単糸切れや複合ムラによる糸切れが頻発し、採取した複合糸の抵抗値は、3.98×107Ω、すなわちLog(Ω)=7.9であり、除電性能は良好であったが、製糸操業性が生産可能なレベルではなかった。。
【0036】
比較例5
導電ポリマーAに、カーボンブラックを50重量%、モンタン酸エステルを3.0重量%、亜リン酸エステルを2.0重量%含有した溶融粘度10200poiseのナイロン6を用いたこと以外、実施例4と同様の方法で複合繊維を得ようとしたが、導電ポリマーAの流動性が著しく低く、安定したポリマー吐出が成されず、製品採取することが出来なかった。
【0037】
比較例6
繊維横断面積における導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合比率がA:B=40:60となるように変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で複合繊維を得た。得られた複合繊維の抵抗値は0.79×107Ω、すなわちLog(Ω)=6.9であったが、製品収率51.8%、カバーリング加工時の毛羽・糸切れ発生回数は18回となり、製糸操業性および加工安定性は生産可能なレベルではなかった。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、導電性カーボンブラックとエステル系化合物を熱可塑性ポリマーに含有せしめた導電ポリマーと主な繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルとを複合紡糸し、導電性カーボンブラック含有量、保護ポリマーの繊維表面周長占有率、繊維横断面積占有率、2成分の接合面距離および導電ポリマーの繊維横断面上の等配数を適正なものとすることにより、製糸・加工安定性を有し通常の非導電性繊維に当該複合繊維を0.01〜10重量%添加するだけで優れた除電性能を有する布帛が得られる導電性複合繊維を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明導電性複合繊維の糸横断面の一具体例
【図2】本発明導電性複合繊維の糸横断面の一具体例
【図3】本発明導電性複合繊維の糸横断面の一具体例
【図4】本発明導電性複合繊維の糸横断面の一具体例
【符号の説明】
A:導電性ポリマー
B:保護ポリマー
Claims (2)
- 導電性カーボンブラックを15〜40重量%、エステル系化合物を0.5〜5.0重量%を含有する熱可塑性ポリマーからなり、ズリ速度60sec−1下での285℃溶融粘度が500〜9000poise以下である導電ポリマーAと、主な繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルからなる保護ポリマーBとが複合されており、導電ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出し、保護ポリマーBが繊維横断面積の70〜90%を形成することを特徴とする導電性複合繊維。
- 単糸繊度が4.0デシテックス以上であることを特徴とする請求項1記載の導電性複合繊維。
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