JP2004044071A - 導電性複合繊維及び導電性織編物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】イソフタル酸(A)、アジピン酸(B)のうち少なくとも一方を共重合し、その共重合量が下記範囲を満足する共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂中に導電性粒子を含有するものを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とし、両成分からなることを特徴とする導電性複合繊維。
(Aの共重合量)+(Bの共重合量)=5〜55モル%
ただし、(Aの共重合量)≦45モル%
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル系導電性繊維に関するものであり、さらに詳しくは、繊維の長さ方向に導電性能が均一な優れた性能を有する繊維に関するものである。具体的には、制電作業服、ユニホームなどの衣料、カーペット、カーテンなどのインテリア用途及び資材用途として用いられる導電性複合繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の疎水性ポリマーからなる繊維は機械特性、耐薬品性、耐候性等の多くの長所を有しており、衣料用のみならず、産業資材用途等にも広く用いられている。しかし、これらの繊維は摩擦等による静電気の発生が著しいため、空気中の塵埃を吸引して美観を低下させたり、人体に電撃を与えて不快感を与えたり、さらには、スパークによる電子機器への障害や、引火性物質への引火爆発等の問題を引き起こす場合があり、そのため、導電性を付与するための多くの研究がなされてきた。
【0003】
まず、導電性カーボンブラックや金属粉等の導電性粒子を熱可塑性ポリマー全体に分散させた繊維が提案されているが、このような繊維は、導電性を満足する程度に導電性粒子を分散させると、曳糸性や強伸度の低下が著しく、実用性に乏しいものであった。
【0004】
この問題を解決するものとして、特許文献1や特許文献2では、導電性成分を非導電性ポリマーで完全に包みこんだ芯鞘型複合繊維あるいは導電性成分が繊維表面に露出したタイプの複合繊維が開示されている。
しかしながら、これらの繊維においても導電性成分を含有することから紡糸延伸工程がスムーズに行えず、長さ方向に導電性能を均一とすることが困難な場合があった。
【0005】
また、現代の高性能化のニーズに対応するために、導電性ポリマー層の配置を特定のものとすることで、優れた(除電性)導電性能を有するものが開示されているが(特許文献3、特許文献4参照)、これら導電性繊維はポリアミド繊維であり、クリーンルームなどの特殊用途においては、布帛に放射線(γ線)を照射することにより抗菌性を施す処理を行うため、γ線照射により性能が劣化するという問題があった。
【0006】
以上のように、γ線を照射する用途においても性能の劣化がなく、かつ、紡糸延伸がスムーズに行え、長さ方向に導電性能が均一となる、高性能化のニーズに対応できるほどの優れた導電性能を有したものは未だ開発されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平09−143821号公報
【特許文献2】
特開平09−279416号公報
【特許文献3】
特開2001−172825号公報
【特許文献4】
特開平11−65227号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の問題点を解決し、性能の劣化の少ないポリエステルを使用した導電性繊維であって、紡糸延伸がスムーズに行え、長さ方向に導電性能が均一となり、かつ優れた導電性能を有する導電性複合繊維及び導電性織編物を提供することを技術的な課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために検討した結果、ポリブチレンテレフタレートを導電性樹脂として用い、かつ特定の共重合成分を含有させることによって、導電性粒子の混入量を増加させるとともに、導電性粒子の配列状態を向上させることができ、優れた導電性能と長さ方向に均一な導電性能を有する繊維とすることができることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、イソフタル酸(A)、アジピン酸(B)のうち少なくとも一方を共重合し、その共重合量が下記範囲を満足する共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂中に導電性粒子を含有するものを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とし、両成分からなることを特徴とする導電性複合繊維を要旨とするものである。
(Aの共重合量)+(Bの共重合量)=5〜55モル%
ただし、(Aの共重合量)≦45モル%
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の導電性複合繊維は、導電性成分と非導電性成分ともにポリエステル系樹脂を用いる。中でも、本発明においては導電性成分にポリブチレンテレフタレート(以下、PBTという)樹脂を用いることが重要である。導電性成分のベースポリマーであるPBT樹脂は、非常に結晶性の高い樹脂であることから、導電性粒子の配列欠陥を少なくさせるものであり、導電性粒子の性能を効率よく得ることができるものである。
【0012】
そして、導電性成分には、イソフタル酸とアジピン酸のどちらか一方、もしくは両者を共重合成分として共重合させる必要がある。これにより、導電性成分と導電性粒子との相溶性(表面濡れ性)を向上させ、導電性粒子の混入量を増加させることができ、優れた導電性能を有するもの(具体的には後述するような電気抵抗値の低いもの)とすることができる。さらには、ポリマーの柔軟性が向上し、紡糸延伸工程をスムーズに行うことができ、導電性粒子の配列状態を向上させることができ、長さ方向に均一な導電性能を有するもの(具体的には後述するようなバラツキの小さいもの)とすることができる。
【0013】
また、その他の共重合成分を、PBTの結晶性を損なわない範囲で含有することができ、例えば、フタル酸、1.3−プロパンジオール、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカン二酸、キシリレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0014】
導電性成分を形成する共重合PBTにおける共重合量としては、イソフタル酸とアジピン酸を併用する場合は、全体の共重合量を5〜55モル%とし、中でも、10〜50モル%とすることが好ましい。
両者の共重合量が5モル%未満では、導電性粒子との相溶性(表面濡れ性)の向上効果が得られず、導電性粒子の混入量の増加やポリマーの柔軟性が向上することによる導電性粒子の配列の向上効果を奏することができない。一方、55モル%を超えると、ポリマー自体が完全に非晶性になるため、導電性粒子のポリマー中への分散が困難となる。
【0015】
次に、イソフタル酸のみを共重合成分とする場合は、5〜45モル%とし、さらに好ましくは、10〜40モル%である。イソフタル酸の共重合量がこの範囲以外である場合は、上記と同様に、導電性粒子の配列の向上効果が得られなかったり、導電性粒子のポリマー中への分散が困難となるため好ましくない。
【0016】
また、アジピン酸のみを共重合成分とする場合は、5〜55モル%とし、さらに好ましくは、10〜50モル%である。アジピン酸の共重合量がこの範囲以外である場合は、上記と同様に、導電性粒子の配列の向上効果が得られなかったり、導電性粒子のポリマー中への分散が困難となるため好ましくない。
【0017】
導電性成分を形成する共重合PBTの固有粘度(IV)は、0.5〜0.8とすることが好ましい。IVが0.5未満であるとポリマーの流動性は上がり、ポリマー中への導電性粒子の分散性は向上するが、その後の造粒性が悪化し、ペレット化することが困難となりやすい。IVが0.8を超えるとポリマーの流動性・結晶性が悪化して、導電性能が劣るものとなりやすく、具体的には電気抵抗値が高くなり、1×106Ω/cmを超えるものとなりやすい。
【0018】
さらに、導電性成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、ワックス類、ポリアルキレンオキシド類、各種界面活性剤、有機電解質等の分散剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、着色剤、顔料、流動性改善剤、その他の添加剤を加えることもできる。
【0019】
一方、非導電性成分を構成する繊維形成性ポリエステル系樹脂は、溶融紡糸可能なあらゆるポリエステルポリマーが適用可能である。中でも、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、ポリエチレンオキシベンゾエート、PBT等が挙げられる。そして、非導電性成分と導電性成分との剥離を防止するという点から、導電性成分との相溶性を考慮することが好ましい。
また、目的に応じてこれらのポリマーの共重合体や変性体としてもよい。また、これらの繊維形成性ポリマーには、艶消剤、顔料、着色料、安定剤、制電剤等の添加剤を加えることもできる。
【0020】
そして、本発明の導電性複合繊維は、導電性能として、電気抵抗値が1×104Ω/cm〜1×107Ω/cmであることが好ましい。複合繊維の電気抵抗値が107Ω/cmを超えると、導電性能が不十分となりやすい。1×104Ω/cm未満にしようとすると、導電性粒子をポリマーに多量に含有させることが必要となり、繊維物性に悪影響を及ぼすばかりか、更には曳糸性に問題を生じる可能性がある。
【0021】
中でも、電気抵抗値は1×105Ω/cm〜1×106Ω/cmであることが好ましい。1×106Ω/cm以下とすることで、得られた織編物を通常の環境で使用した場合に、織編物の帯電をほとんどなくすことが可能となる。また、1×105Ω/cm以上とすることで、繊維物性、曳糸性ともに問題を生じる可能性が少なくなる。
【0022】
なお、本発明における電気抵抗値は、AATCC76法に準じて以下のようにして測定するものである。
1本の導電性複合繊維を長さ方向にカットして、10サンプルを採取する。このサンプルの両端の表面にケラチンクリームを塗布し、この表面部分を金属端子に接続し、50Vの直流電流を印加して電流値を測定し、下記式で電気抵抗値を算出する。
電気抵抗値=E/(I×L)
E:電圧(V) I:測定電流(A) L:測定長(cm)
算出した10個のサンプルの電気抵抗値の相加平均値とする。
【0023】
そして、上記のようにして算出する10個のサンプルの電気抵抗値の最大値と最小値と相加平均値から以下のようにして算出するバラツキにおいても、本発明の導電性複合繊維はバラツキが20%以下、さらには15%以下であることが好ましい。バラツキが20%以下であることにより、長さ方向に導電性能のバラツキがなく均一であることが示されている。
バラツキ:〔(最大値−最小値)/相加平均値〕×100(%)
【0024】
また、導電性成分に用いられる導電性粒子としては、導電性カーボンブラックや金属粉末(銀、ニッケル、銅、鉄、錫あるいはこれらの合金等)、硫化銅、沃化銅、硫化亜鉛、硫化カドミウム等の金属化合物が挙げられる。また、酸化錫に酸化アンチモンを少量添加したり、酸化亜鉛に酸化アルミニウムを少量添加して導電性粒子としたものも挙げられる。さらには、酸化チタンの表面に酸化錫をコーティングし、酸化アンチモンを混合焼成し、導電性粒子としたものも用いることができる。特に好ましくは、導電性繊維の性能向上として汎用的に使用され、他の金属粒子と比較し、ポリマーの流動性を阻害しにくい導電性カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)である。
【0025】
上記の導電性粒子は、比抵抗値が104Ω・cm以下のものが好ましく、さらには、102Ω・cm以下のものが好ましい。比抵抗値が104Ω・cmを超えるものを用いると、目標とする導電性能を得るために、多量の導電性粒子をポリマー中に分散させることが必要になり、繊維物性に悪影響を及ぼすばかりか、さらには曳糸性に問題を生じる可能性がある。
【0026】
また、導電性粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径が1μm以下のものが好ましく、0.5μm以下のものがより好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、導電性粒子のポリマー中への分散性が悪くなりやすく、導電性能や強伸度特性の低下した繊維となりやすい。
【0027】
導電性成分における導電性粒子の含有量については、導電性粒子の種類、導電性能、粒子径、粒子の連鎖形成能及び用いるポリマーの性質等によって適宜選択すればよいが、導電性成分中の5〜50質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは、10〜40質量%である。混入量が5質量%未満では、導電性能が不十分になる場合があり、また、50質量%を超えると、導電性粒子のポリマー中への分散が難しくなるので好ましくない。
【0028】
そして、本発明の複合繊維において、非導電性成分と導電性成分の複合比率は、非導電性成分が60〜90質量%、導電性成分が40〜10質量%とすることが好ましく、より好ましくは、非導電性成分が70〜85質量%、導電性成分が30〜15質量%である。導電性成分の複合比率が10質量%未満では、導電性能が十分でない場合があり、一方、導電性成分の複合比率が40質量%を超えると、強伸度特性等の糸質性能が劣ったり、曳糸性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0029】
次に、本発明の複合繊維における複合形態について図面を用いて説明する。複合形態については特に限定するものではないが、図1〜4に示すような断面形状のものとすることが好ましい。まず、図1は、非導電性成分を導電性成分で分割した形状となるタイプのもので、導電性成分の列数は1つであっても複数であってもよく、複数の導電性成分は並列又は交差していてもよい。(a)は列数が1つのもの、(b)は列数が2つでかつ十字型に交差しているもの、(c)は列数が3つでかつ交差しているものを示す。図2は、導電性成分を非導電性成分で完全に包み込んだ芯鞘型タイプであり、芯部となる導電性成分は1つであっても複数であってもよく、(a)は芯部が1つのもの、(b)は芯部が3つのものを示す。図3は、非導電性成分を導電性成分で完全に包み込んだ導電性粒子が繊維表面に完全に露出した芯鞘型タイプ。図4は、導電性成分の一部が繊維表面に露出したタイプのものであり、露出する導電性成分は1つであっても複数であってもよく、(a)は導電性成分が1つのもの、(b)は導電性成分が2つのもの、(c)は導電性成分が3つのもの、(d)は導電性成分が4つのものである。
【0030】
本発明の導電性複合繊維の製法例について説明する。まず、導電性成分を得る方法としては、ベースとなるポリマーの重合段階で導電性粒子を添加する方法や、導電性粒子を後工程でポリマーに添加して溶融混練する方法等があるが、用いるポリマーによっては重合段階での添加が困難なものもあるので、後工程で溶融混練する方法が好ましい。このようにして得られた導電性成分と非導電性成分とを用い、必要に応じて乾燥等の処理を行ってチップ化し、通常の二成分系の複合溶融紡糸装置を用いて複合紡糸する。そして、得られた糸条を延伸、熱処理することによって、本発明の複合繊維を得ることができる。
【0031】
次に、本発明の導電性織編物は、本発明の導電性複合繊維を少なくとも一部に用いたものであり、特に、電気抵抗値が1×105〜1×106Ω/cmである本発明の導電性複合繊維を少なくとも一部に用いたものとすることが好ましい。
【0032】
そして、本発明の導電性織編物は、初期摩擦帯電圧が1.0kV以下である。なお、初期摩擦帯電圧は、JIS−1094の摩擦帯電減衰法に従って初期帯電圧(最大帯電圧)を測定するものである。なお、摩擦布はウールとする。
【0033】
本発明の織編物中に占める本発明の導電性複合繊維の割合は0.1〜2.0質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、上記のような初期摩擦帯電圧を達成できなくなることがあり、一方、2.0質量%を超えても布帛としての風合い等に問題がなければ構わないが、帯電を低くする効果は飽和しやすく、コスト的に不利となる。
【0034】
また、本発明の導電性織編物は、織物の場合、経糸と緯糸のどちらか一方もしくは両方に本発明の導電性複合繊維を用い、織物中に導電性複合繊維を10mm以下の間隔で配置されるように用いるものが好ましい。より好ましくは5mm以下の間隔とする。織組織としては、特に限定されるものではなく、平織、綾織、朱子織、二重織、絡み織等を挙げることができる。
【0035】
編物の場合は、丸編、緯編、経編のいずれでもよく、丸編、緯編の場合は、10mm以下好ましくは5mm以下の間隔で本発明の導電性複合繊維をボーダー状に挿入することが好ましい。経編の場合も本発明の導電性複合繊維を10mm以下好ましくは5mm以下の間隔でストライプ状に挿入することにが好ましい。
【0036】
そして、本発明の導電性織編物においては、本発明の導電性複合繊維をそのまま用いてもよいが、導電性複合繊維を他の繊維と合撚、混繊したものを用いてもよい。他の繊維としては特に限定されるものではなく、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン等の合成繊維やレーヨン等の再生繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維等が挙げられ、中でも導電性複合繊維と同じであることからポリエステル繊維が好ましい。
【0037】
以上のようにして本発明の導電性複合繊維を用いることにより、本発明の導電性織編物は、布帛の電気抵抗値を示すものである表面漏洩抵抗値は、1×104〜1×107Ωとすることができ、さらには、1×105〜1×106Ωとすることが好ましい。なお、表面漏洩抵抗値は、JIS−1094に従い測定するものである。
【0038】
そして、本発明の導電性織編物は、初期摩擦帯電圧が1.0kV以下であり、好ましくは0.5kV〜0.1kVである。0.1kV未満にしようとすると、本発明の導電性複合繊維を織編物中に多く含む必要があり、風合い等が低下しやすい。
さらには、初期摩擦帯電圧を測定した60秒後の帯電圧が0.3kV以下であることが好ましく、より好ましく0.2kV以下である。なお、60秒後の帯電圧は初期摩擦帯電圧と同様にJIS−1094の摩擦帯電減衰法に従い、初期帯電圧(最大帯電圧)を測定した後、60秒後の帯電圧を測定するものである。
【0039】
初期摩擦帯電圧が1.0kV以下であることは、織編物自体の帯電が極端に低くなることを示している。このため、半導体や各種IT関連機器や精密部品を製造するクリーンルーム内で使用する際に適したものとなる。
さらに、60秒後の帯電圧が0.3kV以下であることで、帯電後、速やかに除電されるので、各種組立工場等において、作業時の帯電性能が重視される分野で使用される際にも適したものとなる。
【0040】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、例中の導電性能の評価方法は次のとおりである。
〔導電性複合繊維の電気抵抗値、電気抵抗値のバラツキ〕
前記と同様に測定した。
〔導電性織編物の初期摩擦帯電圧、60秒後の帯電圧、表面漏洩抵抗値〕
前記と同様に測定した。
〔固有粘度〕
フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒とし、20℃で測定した。
【0041】
実施例1
イソフタル酸30モル%が共重合された共重合PBT(固有粘度0.75)が70質量%、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラックが30質量%となるように溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た。
また、固有粘度0.61のイソフタル酸8モル%が共重合された共重合PETを用いて上記と同様に溶融混練し、常法によりチップ化して非導電性成分用のポリマーを得た。
次に、単糸の横断面形状が図4(c)となるように設計された紡糸口金を用いて、通常の複合紡糸装置より紡糸温度260℃、導電性成分の複合比率20質量%で紡糸し、冷却、オイリングしながら3000m/分の速度で捲取り、45dtex/2fの未延伸糸を得た。そして、この未延伸糸を90℃の熱ローラを介して1.60倍に延伸し、さらに、190℃のヒートプレート上で熱処理を行って巻取り、図4(c)記載の断面形状を有する28dtex/2fの延伸糸を得た。
【0042】
実施例2〜9、比較例1〜7
導電性成分のイソフタル酸、アジピン酸の共重合量、導電性粒子の混入量、複合比率、断面形状(用いる紡糸口金の形状を変更した)を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0043】
比較例8
固有粘度(フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒とし、20℃で測定)0.69のPET75質量%、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック25質量%を溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た以外は実施例7と同様に行った。
【0044】
実施例1〜9、比較例1〜8で得られた複合繊維の電気抵抗値と電気抵抗値のバラツキの評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例10〜12、比較例9
通常のPETからなる84dtex/36fのマルチフィラメント(糸条B)と、実施例5、7、8、比較例1で得られた複合繊維をそれぞれ用い、合撚機を使用してS方向に300T/Mの合撚を施して糸条Aとした。糸条Aと糸条Bを1:29の比率で経糸を準備した。緯糸には経糸と同様の糸条Aと糸条Bを用いてウォータージェットルームにて製織し、糸条Aと糸条Bの比率が1:19の平織物を得た。このときの生機密度は経糸150本/2.54cm、緯糸95本/2.54cmであった。
さらに、上記の平織物に公知の方法で精錬、プレセット、染色を行い、導電性繊維を含む糸条Aが経、緯糸ともに約5mm間隔に1本ずつ配列するように仕上げセットを行って、導電性織物(目付け100g/cm2)を製造した。このときの仕上げ密度は、経糸165本/2.54cm、緯糸は105本/2.54cmであった。
得られた織物の初期摩擦帯電圧、60秒後の帯電圧、表面漏洩抵抗値の測定結果を表2に示す。
【0047】
実施例13
実施例7で得られた導電性繊維と通常のPETからなる84dtex/36fのマルチフィラメント(糸条B)を用い、釜径30インチ・28ゲージの天竺組織で1/10給糸口部に2穴給糸口を用い、導電性繊維と糸条Bを別々の穴に給糸した添え糸編み法にて編成し、それ以外の9/10給糸口部は糸条Bのみで編成を行ない、以下このレピートを6回繰り返した編成条件にて編地を編成した。このとき、生機の密度は43コース/2.54cm、38ウエー
ル/2.54cmであった。
得られた編地を常法にて精錬と染色を行い、導電性繊維を含む糸条が約5mm間隔に1本ずつの配列となるように仕上げセットを行い、導電性編物を得た。この導電性編物の仕上げ密度は、51コース/2.54cm、42ウエール/2.54cmであり、目付けは150g/m2であった。
得られた編物の初期摩擦帯電圧、60秒後の帯電圧、表面漏洩抵抗値の測定結果を表2に示す。
【0048】
実施例14
28ゲージトリコット編機を用い、ハーフ組織にてフロント部に通常のPETからなる44dtex/18fのマルチフィラメントを用い、バックには通常のPETからなる20dtex/1fを7本と、実施例7で得られた導電性繊維を1本の計8本の経糸リピートにて編成した。このとき、生機の密度は56コース/2.54cm、28ウエール/2.54cmであった。
得られた編地を実施例13と同様にして、精錬と染色、仕上げセットを行い、導電性編物を得た。得られた編地の仕上げ密度は、76コース/2.54cm、36ウエール/2.54cmであり、目付けは73g/m2であった。
得られた編物の初期摩擦帯電圧、60秒後の帯電圧、表面漏洩抵抗値の測定結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表1、2から明らかなように、実施例1〜9では、曳糸性よく複合繊維を得ることができ、電気抵抗値も良好な値を示し、繊維の長さ方向の電気抵抗値のバラツキも少ないものであった。また、実施例5、7、8の導電性複合繊維を一部に使用した実施例10〜12の織物及び実施例13〜14の編物は、表面漏洩抵抗値が低く、初期摩擦耐電圧、60秒後の帯電圧ともに低く、導電性及び除電性ともに良好であった。
一方、比較例1の複合繊維は、導電性成分のポリマーに共重合成分が含まれていないため、比較例5、6の複合繊維は、導電性成分の共重合量が少ないため、また、比較例8の複合繊維は導電性成分のポリマーがPETを主成分とするものであったため、いずれもポリマーの柔軟性が向上することによる導電性粒子の配列の向上効果がなく、電気抵抗値、そのバラツキともに大きいものとなった。比較例2、3の複合繊維は、導電性成分の共重合量が多いため、得られたポリマーが完全に非晶性になり、導電性粒子の混入が不可能となり、導電性繊維を得ることができなかった。比較例4の複合繊維も導電性成分の共重合量が多く、チップ化できたものの、導電性粒子の混入が困難で、混入量を増やすことができず、電気抵抗値が高く、電気抵抗値のバラツキが大きい繊維となった。比較例7は、導電性成分中の共重合成分(アジピン酸)の共重合率が少なく、導電性粒子を多くしたため、導電性粒子の分散性が悪く、練り込みができなかった。
また、比較例1の導電複合繊維を一部に使用した比較例9の織物は、表面漏洩抵抗値が高く、初期摩擦耐電圧、60秒後の帯電圧ともに高く、導電性及び除電性ともに劣るものであった。
【0051】
【発明の効果】
本発明の導電性複合繊維は、導電性粒子の混入量を増加させることができ、かつ、紡糸延伸がスムーズに行え、導電性粒子の配列状態を向上させることができるので、電気抵抗値が低く、かつ長さ方向に導電性能が均一な優れた導電性能を有している。そして、本発明の導電性織編物は、このような複合繊維を少なくとも一部に使用し、初期摩擦帯電圧が小さいので、織編物自体の帯電を極端に低くすることが可能であり、導電性と除電性ともに優れたものとなる。このため、本発明の導電性複合繊維及び導電性織編物は、制電作業服、ユニホームなどの衣料、カーペット、カーテンなどのインテリア用途及び産業資材用途等に広く用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性複合繊維の一実施態様を示す断面図である。
【図2】本発明の導電性複合繊維の他の実施態様を示す断面図である。
【図3】本発明の導電性複合繊維の他の実施態様を示す断面図である。
【図4】本発明の導電性複合繊維の他の実施態様を示す断面図である。
【符号の説明】
1 導電性成分
2 非導電性成分
Claims (3)
- イソフタル酸(A)、アジピン酸(B)のうち少なくとも一方を共重合し、その共重合量が下記範囲を満足する共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂中に導電性粒子を含有するものを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とし、両成分からなることを特徴とする導電性複合繊維。
(Aの共重合量)+(Bの共重合量)=5〜55モル%
ただし、(Aの共重合量)≦45モル% - 電気抵抗値が1×105〜1×106Ω/cmであることを特徴とする請求項1記載の導電性複合繊維。
- 請求項1又は2記載の導電性複合繊維を少なくとも一部に使用した織編物であって、初期摩擦帯電圧が1.0kV以下であることを特徴とする導電性織編物。
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