JP2005194650A - 導電性複合繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】 性能の劣化の少ないポリエステルを使用した導電性繊維であって、紡糸延伸がスムーズに行え、長さ方向に導電性能が均一となり、かつ優れた導電性能を有する導電性複合繊維を提供する。
【解決手段】 イソフタル酸(A)、アジピン酸(B)のうち少なくとも一方を共重合し、その共重合量が下記(1)式の範囲を満足する共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂中に導電性粒子を含有するものを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とする導電性複合繊維であって、横断面形状において、繊維表面から繊維中心部付近に連通した導電性成分部分が3〜20存在し、これらが繊維中心部付近で連結するとともに、導電性成分部分と非導電性成分部分との面積比(導電性成分部分/非導電性成分部分)が1/9〜5/5である。
(1)式:5≦Aの共重合量(モル%)+Bの共重合量(モル%)≦55
但し、Aの共重合量(モル%)≦45
【選択図】 図1
【解決手段】 イソフタル酸(A)、アジピン酸(B)のうち少なくとも一方を共重合し、その共重合量が下記(1)式の範囲を満足する共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂中に導電性粒子を含有するものを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とする導電性複合繊維であって、横断面形状において、繊維表面から繊維中心部付近に連通した導電性成分部分が3〜20存在し、これらが繊維中心部付近で連結するとともに、導電性成分部分と非導電性成分部分との面積比(導電性成分部分/非導電性成分部分)が1/9〜5/5である。
(1)式:5≦Aの共重合量(モル%)+Bの共重合量(モル%)≦55
但し、Aの共重合量(モル%)≦45
【選択図】 図1
Description
本発明は、ポリエステル系導電性繊維に関するものであり、さらに詳しくは、繊維の長さ方向に導電性能が均一な優れた性能を有する繊維に関するものである。具体的には、制電作業服、ユニホームなどの衣料、カーペット、カーテンなどのインテリア用途及び資材用途として用いられる導電性複合繊維に関するものである。
ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の疎水性ポリマーからなる繊維は機械特性、耐薬品性、耐候性等の多くの長所を有しており、衣料用のみならず、産業資材用途等にも広く用いられている。しかし、これらの繊維は摩擦等による静電気の発生が著しいため、空気中の塵埃を吸引して美観を低下させたり、人体に電撃を与えて不快感を与えたり、さらには、スパークによる電子機器への障害や、引火性物質への引火爆発等の問題を引き起こす場合があり、そのため、導電性を付与するための多くの研究がなされてきた。
まず、導電性カーボンブラックや金属粉等の導電性粒子を熱可塑性ポリマー全体に分散させた繊維が提案されているが、このような繊維は、導電性を満足する程度に導電性粒子を分散させると、曳糸性や強伸度の低下が著しく、実用性に乏しいものであった。
この問題を解決するものとして、特許文献1や特許文献2では、導電性成分を非導電性ポリマーで完全に包みこんだ芯鞘型複合繊維あるいは導電性成分が繊維表面に露出したタイプの複合繊維が開示されている。
しかしながら、これらの繊維においても導電性成分を含有することから紡糸延伸工程がスムーズに行えず、長さ方向に導電性能を均一とすることが困難な場合があった。
また、現代の高性能化のニーズに対応するために、導電性ポリマー層の配置を特定のものとすることで、優れた(除電性)導電性能を有するものが開示されているが(特許文献3、特許文献4参照)、これら導電性繊維はポリアミド繊維であり、クリーンルームなどの特殊用途においては、布帛に放射線(γ線)を照射することにより抗菌性を施す処理を行うため、γ線照射により性能が劣化するという問題があった。
以上のように、γ線を照射する用途においても性能の劣化がなく、かつ、紡糸延伸がスムーズに行え、長さ方向に導電性能が均一となる、高性能化のニーズに対応できるほどの優れた導電性能を有したものは未だ開発されていない。
特開平09−143821号公報
特開平09−279416号公報
特開2001−172825号公報
特開平11−65227号公報
本発明は上記の問題点を解決し、性能の劣化の少ないポリエステルを使用した導電性繊維であって、紡糸延伸がスムーズに行え、かつ長さ方向に導電性能が均一となり、優れた導電性能を有する導電性複合繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者等は上記課題を解決するために検討した結果、ポリブチレンテレフタレートを導電性樹脂として用い、かつ特定の共重合成分を含有させることによって、導電性粒子の混入量を増加させるとともに、導電性粒子の配列状態を向上させることができ、さらに、導電性成分の配置を適切なものとすることにより、優れた導電性能と長さ方向に均一な導電性能を有する繊維とすることができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、イソフタル酸(A)、アジピン酸(B)のうち少なくとも一方を共重合し、その共重合量が下記(1)式の範囲を満足する共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂中に導電性粒子を含有するものを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とする導電性複合繊維であって、繊維軸に対して垂直方向に切断した断面形状(横断面形状)において、繊維表面から繊維中心部付近に連通した導電性成分部分が3〜20存在し、これらが繊維中心部付近で連結するとともに、導電性成分部分と非導電性成分部分との面積比(導電性成分部分/非導電性成分部分)が1/9〜5/5であることを特徴とする導電性複合繊維を要旨とするものである。
(1)式:5≦Aの共重合量(モル%)+Bの共重合量(モル%)≦55
但し、Aの共重合量(モル%)≦45
(1)式:5≦Aの共重合量(モル%)+Bの共重合量(モル%)≦55
但し、Aの共重合量(モル%)≦45
本発明の導電性複合繊維は、導電性粒子の混入量を増加させることができ、かつ、紡糸延伸がスムーズに行え、導電性粒子の配列状態を向上させることができるので、電気抵抗値が低く、かつ長さ方向に導電性能が均一な優れた導電性能を有している。そして、このような複合繊維を少なくとも一部に使用した布帛は導電性に優れたものとなり、制電作業服、ユニホームなどの衣料、カーペット、カーテンなどのインテリア用途及び産業資材用途等に広く用いることが可能である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の導電性複合繊維は、導電性成分と非導電性成分ともにポリエステル系樹脂を用いる。中でも、本発明においては導電性成分にポリブチレンテレフタレート(以下、PBTという)を主体とする樹脂を用いることが重要である。導電性成分に用いるPBT樹脂は、非常に結晶性の高い樹脂であることから、導電性粒子の配列欠陥を少なくさせるものであり、導電性粒子の性能を効率よく得ることができるものである。
本発明の導電性複合繊維は、導電性成分と非導電性成分ともにポリエステル系樹脂を用いる。中でも、本発明においては導電性成分にポリブチレンテレフタレート(以下、PBTという)を主体とする樹脂を用いることが重要である。導電性成分に用いるPBT樹脂は、非常に結晶性の高い樹脂であることから、導電性粒子の配列欠陥を少なくさせるものであり、導電性粒子の性能を効率よく得ることができるものである。
そして、導電性成分には、イソフタル酸とアジピン酸のどちらか一方、もしくは両者を共重合成分として共重合させる必要がある。これにより、導電性成分と導電性粒子との相溶性(表面濡れ性)を向上させ、導電性粒子の混入量を増加させることができ、優れた導電性能を有するもの(具体的には後述するような電気抵抗値の低いもの)とすることができる。さらには、ポリマーの柔軟性が向上し、紡糸延伸工程をスムーズに行うことができ、導電性粒子の配列状態を向上させることができ、長さ方向に均一な導電性能を有するもの(具体的には後述するようなバラツキの小さいもの)とすることができる。
また、その他の共重合成分を、PBTの結晶性を損なわない範囲で含有することができ、例えば、フタル酸、1.3−プロパンジオール、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカン二酸、キシリレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
導電性成分を形成する共重合PBTにおける共重合量としては、イソフタル酸とアジピン酸を併用する場合は、全体の共重合量を5〜55モル%とし、中でも、10〜50モル%とすることが好ましい。
両者の共重合量が5モル%未満では、導電性粒子との相溶性(表面濡れ性)の向上効果が得られず、導電性粒子の混入量の増加やポリマーの柔軟性が向上することによる導電性粒子の配列の向上効果を奏することができない。一方、55モル%を超えると、ポリマー自体が非晶性になるため、導電性粒子のポリマー中への分散が困難となる。
次に、イソフタル酸のみを共重合成分とする場合は、5〜45モル%とし、さらに好ましくは、10〜40モル%である。イソフタル酸の共重合量がこの範囲以外である場合は、上記と同様に、導電性粒子の配列の向上効果が得られなかったり、導電性粒子のポリマー中への分散が困難となるため好ましくない。
また、アジピン酸のみを共重合成分とする場合は、5〜55モル%とし、さらに好ましくは、10〜50モル%である。アジピン酸の共重合量がこの範囲以外である場合は、上記と同様に、導電性粒子の配列の向上効果が得られなかったり、導電性粒子のポリマー中への分散が困難となるため好ましくない。
導電性成分を形成する共重合PBTの極限粘度は、0.5〜0.8とすることが好ましい。極限粘度が0.5未満であるとポリマーの流動性は上がり、ポリマー中への導電性粒子の分散性は向上するが、その後の造粒性が悪化し、ペレット化することが困難となりやすい。極限粘度が0.8を超えるとポリマーの流動性・結晶性が悪化して、導電性能が劣るものとなりやすく、具体的には繊維の電気抵抗値が高くなり、1×107Ω/cmを超えるものとなりやすい。
さらに、導電性成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、ワックス類、ポリアルキレンオキシド類、各種界面活性剤、有機電解質等の分散剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、着色剤、顔料、流動性改善剤、その他の添加剤を加えることもできる。
一方、非導電性成分を構成する繊維形成性ポリエステル系樹脂は、溶融紡糸可能なあらゆるポリエステルポリマーが適用可能である。中でも、非導電性成分と導電性成分との剥離を防止するという点から、導電性成分との相溶性を考慮して選択することが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、ポリエチレンオキシベンゾエート、PBT等が好ましい。
また、目的に応じてこれらのポリマーの共重合体や変性体としてもよい。また、これらの繊維形成性ポリマーには、艶消剤、顔料、着色料、安定剤、その他の添加剤を加えることもできる。
そして、本発明の導電性複合繊維は、導電性能として、電気抵抗値が1×104Ω/cm〜1×107Ω/cmであることが好ましい。複合繊維の電気抵抗値が107Ω/cmを超えると、導電性能が不十分となりやすい。1×104Ω/cm未満にしようとすると、導電性粒子をポリマーに多量に含有させることが必要となり、繊維物性に悪影響を及ぼすばかりか、更には曳糸性に問題を生じる可能性がある。
中でも、電気抵抗値は1×105Ω/cm〜1×106Ω/cmであることが好ましい。1×106Ω/cm以下とすることで、本発明の導電性繊維を用いた布帛を通常の環境で使用した場合に、布帛の帯電をほとんどなくすことが可能となる。また、1×105Ω/cm以上とすることで、繊維物性、曳糸性ともに問題を生じる可能性が少なくなる。
なお、本発明における電気抵抗値は、AATCC76法に準じて以下のようにして測定するものである。
1本の導電性複合繊維を長さ方向にカットして、10サンプルを採取する。このサンプルの両端の表面にケラチンクリームを塗布し、この表面部分を金属端子に接続し、50Vの直流電流を印加して電流値を測定し、下記式で電気抵抗値を算出する。
電気抵抗値(Ω/cm)=E/(I×L)
E:電圧(V) I:測定電流(A) L:測定長(cm)
算出した10個のサンプルの電気抵抗値の相加平均値とする。
1本の導電性複合繊維を長さ方向にカットして、10サンプルを採取する。このサンプルの両端の表面にケラチンクリームを塗布し、この表面部分を金属端子に接続し、50Vの直流電流を印加して電流値を測定し、下記式で電気抵抗値を算出する。
電気抵抗値(Ω/cm)=E/(I×L)
E:電圧(V) I:測定電流(A) L:測定長(cm)
算出した10個のサンプルの電気抵抗値の相加平均値とする。
そして、繊維の長さ方向に導電性能のバラツキがなく均一であることを示す指標として、上記のようにして算出する10個のサンプルの電気抵抗値の最大値と最小値との比(最大値/最小値)が4以下であることが好ましく、中でも3以下であることが好ましい。この比が4を超えると、繊維の長さ方向に導電性能のバラツキが生じ、この繊維を用いて得られる布帛の導電性能が不安定となるため、好ましくない。
また、導電性成分に用いられる導電性粒子としては、導電性カーボンブラックや金属粉末(銀、ニッケル、銅、鉄、錫あるいはこれらの合金等)、硫化銅、沃化銅、硫化亜鉛、硫化カドミウム等の金属化合物が挙げられる。また、酸化錫に酸化アンチモンを少量添加したり、酸化亜鉛に酸化アルミニウムを少量添加して導電性粒子としたものも挙げられる。さらには、酸化チタンの表面に酸化錫をコーティングし、酸化アンチモンを混合焼成し、導電性粒子としたものも用いることができる。特に好ましくは、導電性繊維の性能向上として汎用的に使用され、他の金属粒子と比較し、ポリマーの流動性を阻害しにくい導電性カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)である。
上記の導電性粒子は、比抵抗値が1×104Ω・cm以下のものが好ましく、さらには、1×102Ω・cm以下のものが好ましい。比抵抗値が1×104Ω・cmを超えるものを用いると、目標とする導電性能を得るために、多量の導電性粒子をポリマー中に分散させることが必要になり、繊維物性に悪影響を及ぼすばかりか、さらには曳糸性に問題を生じる可能性がある。
また、導電性粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径が1μm以下のものが好ましく、0.5μm以下のものがより好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、導電性粒子のポリマー中への分散性が悪くなりやすく、導電性能や強伸度特性の低下した繊維となりやすい。
導電性成分における導電性粒子の含有量については、導電性粒子の種類、導電性能、粒子径、粒子の連鎖形成能及び用いるポリマーの性質等によって適宜選択すればよいが、導電性成分中の5〜50質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは、10〜40質量%である。含有量が5質量%未満では、導電性能が不十分になる場合があり、また、50質量%を超えると、導電性粒子のポリマー中への分散が難しくなるので好ましくない。
次に、本発明の導電性複合繊維の形状について図面を用いて説明する。図1〜4は本発明の導電性複合繊維の実施態様を示す横断面図である。図5〜7は本発明の範囲外の導電性複合繊維の実施態様を示す横断面図である。
本発明の導電性複合繊維は、繊維軸に対して垂直方向に切断した断面形状(横断面形状)において、繊維表面から繊維中心部付近に連通した導電性成分部分が3〜20存在し、これらが繊維中心部付近で連結している。このように、各導電性成分部分が繊維中心部付近で連結しており、かつ繊維表面に露出していることにより、繊維表面に多数の導電性の接点が存在し、かつそれらの接点間が中心部を介して導通することにより電気の流れが多方向で可能となるので、電気抵抗値の低い導電性の優れた繊維とすることができる。
図5や図7の繊維のように、導電性成分部分が中心部で連結していない形状のものでは、繊維表面に導電性成分の接点が存在しても、電気の流れが悪く、電気抵抗値の高い、導電性に劣った繊維となる。図6のように芯部にのみ導電性成分が配置されている繊維においては、繊維表面に導電性成分の接点もないので、さらに導電性に劣ったものとなる。
また、導電性成分部分の数が2以下であると、繊維表面に存在する接点の数が少なくなり、さらには、電気の流れが限定された方向のみとなるため、電気の流れが不十分となり、電気抵抗値の低い、導電性に優れた繊維とすることが困難となる。一方、導電性成分部分の数を21以上とするには、以下に示すような導電性成分と非導電性成分との複合比とするためにも、製造が困難となり、コスト的に不利となり好ましくない。
図1は導電性成分部分の数が3の例、図2は導電性成分部分の数が4の例、図3は導電性成分部分の数が6の例、図4は導電性成分部分の数が8の例である。導電性成分部分の数は、導電性性能の向上及び製造の容易さを考慮すると、中でも3〜6であることが好ましい。また、図1〜4に示すように、導電性成分部分は非導電性成分部分中にバランスよく配置されていることが好ましい。
そして、本発明の導電性複合繊維は、横断面形状における導電性成分部分と非導電性成分部分との面積比(導電性成分部分/非導電性成分部分)が1/9〜5/5であり、中でも2/8〜4/6が好ましい。導電性成分部分の割合がこれより少ないと、導電性性能を向上させることができず、電気抵抗値が不安定になるばかりか、上記したような目的とする電気抵抗値が得られなくなる。一方、導電性成分部分の割合がこれより多いと、導電性性能は向上するものの、製糸性や加工性が著しく悪化する。
また、本発明の導電性複合繊維においては、横断面形状において、全導電性成分部分の繊維表面に露出している導電性部分の長さの合計が繊維周長の30%以下であることが好ましい。この割合が30%を超えると、導電性成分にカーボンブラック等の着色のある成分を用いた場合に、繊維の色相が悪くなり、白度や染色性が要求される用途への使用が困難となりやすく、また、製造工程における工程通過性が悪くなり、操業性が悪化し、好ましくない。
本発明の導電性複合繊維の製法例について説明する。まず、導電性成分を得る方法としては、共重合PBTの重合段階で導電性粒子を添加する方法や、導電性粒子を後工程でポリマーに添加して溶融混練する方法等があるが、用いるポリマーによっては重合段階での添加が困難なものもあるので、後工程で溶融混練する方法が好ましい。このようにして得られた導電性成分と非導電性成分とを用い、必要に応じて乾燥等の処理を行ってチップ化し、通常の二成分系の複合溶融紡糸装置を用いて複合紡糸する。このとき、繊維の横断面形状における導電性成分の配置を特定のものとするには、紡糸口金の形状を種々選択して複合紡糸を行う。そして、得られた糸条を延伸、熱処理することによって、本発明の複合繊維を得ることができる。
本発明の導電性複合繊維は、織編物や不織布等の布帛にして各種の導電性能を要求される用途に用いることができる。そして、本発明の導電性複合繊維は、以上のように長さ方向に導電性能が均一で、かつ優れた導電性能を有しているので、少なくとも布帛の一部に用いることで導電性能を付与することが可能である。したがって、導電性複合繊維を混合する割合は各種用途に応じて調整すればよい。
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、例中の導電性能の評価方法は次のとおりである。
〔電気抵抗値、電気抵抗値の比(最大値/最小値)〕
前記と同様に測定した。
〔導電性成分部分の露出割合〕
走査型顕微鏡で横断面形状の写真を撮影し、断面写真から算出した。
〔極限粘度〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒とし、20℃で測定した。
〔電気抵抗値、電気抵抗値の比(最大値/最小値)〕
前記と同様に測定した。
〔導電性成分部分の露出割合〕
走査型顕微鏡で横断面形状の写真を撮影し、断面写真から算出した。
〔極限粘度〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒とし、20℃で測定した。
実施例1
イソフタル酸30モル%が共重合された共重合PBT(極限粘度0.70)が70質量%、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラックが30質量%となるように溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た。
また、イソフタル酸8モル%が共重合された共重合PET(極限粘度0.61)を用いて上記と同様に溶融混練し、常法によりチップ化して非導電性成分用のポリマーを得た。
次に、単糸の横断面形状が図1となるように設計された紡糸口金を用いて、通常の複合紡糸装置より紡糸温度260℃、複合比率を導電性成分部分と非導電性成分部分との断面積比(導電性成分部分/非導電性成分部分)が2/8となるようにして紡糸し、冷却、オイリングしながら3000m/分の速度で捲取り、45dtex/2fの未延伸糸を得た。そして、この未延伸糸を90℃の熱ローラを介して1.60倍に延伸し、さらに、130℃のヒートプレート上で熱処理を行って巻取り、図1に示すような断面形状(導電性成分部分の繊維表面の露出割合7%)を有する28dtex/2fの延伸糸を得た。
イソフタル酸30モル%が共重合された共重合PBT(極限粘度0.70)が70質量%、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラックが30質量%となるように溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た。
また、イソフタル酸8モル%が共重合された共重合PET(極限粘度0.61)を用いて上記と同様に溶融混練し、常法によりチップ化して非導電性成分用のポリマーを得た。
次に、単糸の横断面形状が図1となるように設計された紡糸口金を用いて、通常の複合紡糸装置より紡糸温度260℃、複合比率を導電性成分部分と非導電性成分部分との断面積比(導電性成分部分/非導電性成分部分)が2/8となるようにして紡糸し、冷却、オイリングしながら3000m/分の速度で捲取り、45dtex/2fの未延伸糸を得た。そして、この未延伸糸を90℃の熱ローラを介して1.60倍に延伸し、さらに、130℃のヒートプレート上で熱処理を行って巻取り、図1に示すような断面形状(導電性成分部分の繊維表面の露出割合7%)を有する28dtex/2fの延伸糸を得た。
実施例2〜6、比較例1〜11
導電性成分のイソフタル酸、アジピン酸の共重合量、極限粘度、導電性粒子の含有量、導電性成分の複合比率、断面形状(用いる紡糸口金の形状を変更した)を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行った。
導電性成分のイソフタル酸、アジピン酸の共重合量、極限粘度、導電性粒子の含有量、導電性成分の複合比率、断面形状(用いる紡糸口金の形状を変更した)を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1〜6、比較例1〜11で得られた複合繊維の電気抵抗値と電気抵抗値の比の測定結果、断面形状を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜6では、曳糸性よく複合繊維を得ることができ、電気抵抗値も良好な値を示し、繊維の長さ方向の電気抵抗値のバラツキも小さいものであり、導電性能に優れたものであった。
一方、比較例1の複合繊維は、導電性成分のポリマー中に共重合成分が含まれていないため、比較例5、6の複合繊維は、導電性成分の共重合量が少なすぎたため、いずれもポリマーの柔軟性が向上することによる導電性の向上の効果がなく、繊維長さ方向の電気抵抗値のバラツキも大きかった。比較例2、3の複合繊維は、導電性成分のポリマー中の共重合成分の量が多すぎたため、得られたポリマーが非晶性になり、導電性粒子の混入が不可能となり、導電性複合繊維を得ることができなかった。比較例4の複合繊維も導電性成分のポリマー中に共重合成分の量が多すぎたため、導電性粒子の混入が少量となり、チップ化はできたものの、導電性粒子のポリマー中への分散も不十分で、電気抵抗値が高く、繊維長さ方向の電気抵抗値のバラツキも大きいものとなった。比較例7の複合繊維は、導電性成分の複合比率が低すぎたため、電気抵抗値が高く、繊維の長さ方向の電気抵抗値のバラツキも大きいものであった。比較例8の複合繊維は、導電性成分の複合比率が高すぎたために、紡糸段階での製糸性が悪く、繊維を得ることができなかった。比較例9〜11の複合繊維は、繊維の横断面形状が本発明を満足しないものであったため、いずれも電気抵抗値が高く、繊維の長さ方向の電気抵抗値のバラツキも大きいものであった。
一方、比較例1の複合繊維は、導電性成分のポリマー中に共重合成分が含まれていないため、比較例5、6の複合繊維は、導電性成分の共重合量が少なすぎたため、いずれもポリマーの柔軟性が向上することによる導電性の向上の効果がなく、繊維長さ方向の電気抵抗値のバラツキも大きかった。比較例2、3の複合繊維は、導電性成分のポリマー中の共重合成分の量が多すぎたため、得られたポリマーが非晶性になり、導電性粒子の混入が不可能となり、導電性複合繊維を得ることができなかった。比較例4の複合繊維も導電性成分のポリマー中に共重合成分の量が多すぎたため、導電性粒子の混入が少量となり、チップ化はできたものの、導電性粒子のポリマー中への分散も不十分で、電気抵抗値が高く、繊維長さ方向の電気抵抗値のバラツキも大きいものとなった。比較例7の複合繊維は、導電性成分の複合比率が低すぎたため、電気抵抗値が高く、繊維の長さ方向の電気抵抗値のバラツキも大きいものであった。比較例8の複合繊維は、導電性成分の複合比率が高すぎたために、紡糸段階での製糸性が悪く、繊維を得ることができなかった。比較例9〜11の複合繊維は、繊維の横断面形状が本発明を満足しないものであったため、いずれも電気抵抗値が高く、繊維の長さ方向の電気抵抗値のバラツキも大きいものであった。
1 導電性成分
2 非導電性成分
2 非導電性成分
Claims (2)
- イソフタル酸(A)、アジピン酸(B)のうち少なくとも一方を共重合し、その共重合量が下記(1)式の範囲を満足する共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂中に導電性粒子を含有するものを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とする導電性複合繊維であって、繊維軸に対して垂直方向に切断した断面形状(横断面形状)において、繊維表面から繊維中心部付近に連通した導電性成分部分が3〜20存在し、これらが繊維中心部付近で連結するとともに、導電性成分部分と非導電性成分部分との面積比(導電性成分部分/非導電性成分部分)が1/9〜5/5であることを特徴とする導電性複合繊維。
(1)式:5≦Aの共重合量(モル%)+Bの共重合量(モル%)≦55
但し、Aの共重合量(モル%)≦45 - 電気抵抗値が1×105〜1×106Ω/cmであることを特徴とする請求項1記載の導電性複合繊維。
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