JP2004044035A - 導電性複合繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】導電性粒子の混入量が比較的少量でも優れた導電性能を有するポリエステル導電性繊維を提供するものである。
【解決手段】導電性粒子を含有する熱可塑性樹脂として、下記、式(1)、式(2)、式(3)の構造単位からなり、これらの共重合量が下記範囲式(A)、式(B)を満足するように共重合された液晶ポリエステル樹脂を用い、これを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とする導電性複合繊維。
−OC−R1−CO− (1)
−O−R2−O− (2)
−O−Ar−CO− (3)
5モル%≦((1)+(2))/2≦60モル% 式(A)
95モル%≧(3)≧40モル% 式(B)
ここで、R1は芳香族又は脂肪族基 、R2は脂肪族又は脂環族基、Arは芳香族基を示す。
【選択図】 図1
【解決手段】導電性粒子を含有する熱可塑性樹脂として、下記、式(1)、式(2)、式(3)の構造単位からなり、これらの共重合量が下記範囲式(A)、式(B)を満足するように共重合された液晶ポリエステル樹脂を用い、これを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とする導電性複合繊維。
−OC−R1−CO− (1)
−O−R2−O− (2)
−O−Ar−CO− (3)
5モル%≦((1)+(2))/2≦60モル% 式(A)
95モル%≧(3)≧40モル% 式(B)
ここで、R1は芳香族又は脂肪族基 、R2は脂肪族又は脂環族基、Arは芳香族基を示す。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、制電作業服、ユニホームなどの衣料、カーペット、カーテンなどのインテリア用途及び資材用途として用いられるポリエステル系導電性繊維に関するものであり、導電性成分に液晶ポリエステル樹脂を用いた導電性複合繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の疎水性ポリマーからなる繊維は機械特性、耐薬品性、耐候性等の多くの長所を有しており、衣料用のみならず、産業資材用途等にも広く用いられている。しかし、これらの繊維は摩擦等による静電気の発生が著しいため、空気中の塵埃を吸引して美観を低下させたり、人体に電撃を与えて不快感を与えたり、さらには、スパークによる電子機器への障害や、引火性物質への引火爆発等の問題を引き起こす場合があり、そのため、導電性を付与するための多くの研究がなされてきた。
【0003】
まず、導電性カーボンブラックや金属粉等の導電性粒子を熱可塑性ポリマー全体に分散させた繊維が提案されているが、このような繊維は、導電性を満足する程度に導電性粒子を分散させると、曳糸性や強伸度の低下が著しく、実用性に乏しいものであった。
この問題を解決するものとして、特開平09−143821号公報、特開平09−279416号公報などでは、導電性成分を非導電性ポリマーで完全に包みこんだ芯鞘型複合繊維あるいは導電性成分が繊維表面に露出したタイプの複合繊維が開示されている。
しかしながら、これらの繊維においても導電性成分を含有することから紡糸延伸工程がスムーズに行えず、長さ方向に導電性能を均一とすることが困難となり、優れた導電性能が得られないという問題があった。
【0004】
また、現代の高性能化のニーズに対応するために、特開2001−172825号公報には、導電性ポリマー層の配置を特定のものとすることで、優れた(除電性)導電性能を有するものが開示されているが、この導電性繊維はポリアミド繊維であり、クリーンルームなどの特殊用途においては、布帛に放射線(γ線)を照射することにより抗菌性を施す処理を行うため、γ線照射により性能が劣化するという問題があった。
【0005】
以上のように、γ線を照射する用途においても性能の劣化がなく、かつ、比較的少量の導電性粒子を混入量するだけで、優れた導電性能を有することができ、操業性よく得ることができる導電性複合繊維は未だ開発されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の問題点を解決し、γ線を照射する用途においても性能の劣化がないポリエステルを使用し、比較的少量の導電性粒子を混入量するだけで、優れた導電性能を有することができる導電性複合繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために検討した結果、導電性成分として、共重合された液晶ポリエステル樹脂を用い、この液晶ポリエステル樹脂の共重合量を特定のものとすることによって、導電性粒子の配列度を向上させることができ、これにより導電性粒子の混入量を減少させても十分な導電性能を発揮できる導電糸とすることができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、導電性粒子を含有する熱可塑性樹脂として、下記、式(1)、式(2)、式(3)の構造単位からなり、これらの共重合量が下記範囲式(A)、式(B)を満足するように共重合された液晶ポリエステル樹脂を用い、これを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とすることを特徴とする導電性複合繊維を要旨とするものである。
−OC−R1−CO− (1)
−O−R2−O− (2)
−O−Ar−CO− (3)
5モル%≦((1)+(2))/2≦60モル% 式(A)
95モル%≧(3)≧40モル% 式(B)
ここで、R1は芳香族又は脂肪族基 、R2は脂肪族又は脂環族基、Arは芳香族基を示す。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の複合繊維は、非導電性成分と導電性成分からなり、非導電性成分は、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂からなるものであり、導電性成分は、上記式(1)、式(2)、式(3)の構造単位からなり、これらが上記範囲式(A)、式(B)を満足するように共重合された液晶ポリエステル樹脂と導電性粒子からなるものである。このように、本発明の導電性複合繊維は、導電性成分と非導電性成分ともにポリエステル系樹脂を用い、これによりγ線を照射する用途においても性能の劣化がないものとすることができる。
【0009】
まず、導電性成分について説明する。
導電性成分となる共重合された液晶ポリエステル樹脂は、式(1)で示される芳香族または脂肪族ジカルボン酸成分と式(2)で示される脂肪族または脂環式ジオール成分と、式(3)で示される芳香族ヒドロキシカルボン酸成分からなるものである。
【0010】
本発明において、式(1)で示されるジカルボン酸成分の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。
また、式(2)で示されるジオール成分の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0011】
式(1)、(2)からなるポリエステルの中でも、最も好適なポリエステルは、ポリアルキレンエステルであり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等がある。
【0012】
さらに、式(3)で示される芳香族ヒドロキシカルボン酸成分を含むことにより、液晶ポリエステル樹脂となる。本発明において、式(3)で示される芳香族ヒドロキシカルボン酸成分としては、具体的には、パラヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0013】
このような本発明おける芳香族ヒドロキシカルボン酸成分を含む液晶ポリエステル樹脂は、溶融状態において異方性を示す、いわゆるサーモトロピック液晶ポリエステルであって、溶融紡糸可能なものを意味するものである。これは、非常に配向性の高い樹脂であることから、導電性粒子を効果的に配列させることができ、比較的少量の導電性粒子を混入するだけで、容易に優れた導電性能が得られるものである。
【0014】
そして、本発明における共重合された液晶ポリエステル樹脂は、上記範囲式(A)、式(B)を満足するように共重合されたものである。すなわち、式(3)の構造単位の共重合量が40モル%未満では、十分な液晶性を示さないため、導電性粒子の配列度を向上させることができず、導電性能の向上効果も不十分となる。一方、95モル%を超えると、導電性粒子の混入が困難になるばかりか、曳糸性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、式(A)で示す((1)+(2))/2の値が5モル%未満であると、式(1)、(2)からなるポリエステル量が少なくなるため、繊維形成性に乏しくなり、曳糸性に悪影響を及ぼす場合がある。一方、60モル%を超えるものであると、上記したように式(3)の構造単位の共重合量が40モル%未満となり、導電性能の向上効果が不十分となる。
【0015】
また、本発明の共重合された液晶ポリエステル樹脂中には、その特性を大きく損なわない範囲で、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカプロラクトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリメタクリル酸メチル、ポリプロピレン、ポリエチレン、フェノキシ樹脂、ゴム状高分子等の他の樹脂を含有させてもよい。
さらに、目的に応じて、ワックス類、ポリアルキレンオキシド類、各種界面活性剤、有機電解質等の分散剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、着色剤、顔料、流動性改善剤、その他の添加剤を加えることもできる。
【0016】
一方、非導電性成分を構成する繊維形成性ポリエステル系樹脂は、溶融紡糸可能なあらゆるポリマーが適用可能である。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンオキシベンゾエート、ポリプロピレンテレフタレート等が挙げられ、さらには、これらのポリマーの共重合体や変性体が特に好適である。そして、非導電性成分と導電性成分との剥離を防止するという点から、導電性成分との相溶性を考慮することが好ましい。
また、これらの繊維形成性ポリマーには、艶消剤、顔料、着色料、安定剤、制電剤等の添加剤を加えることができる。
【0017】
そして、本発明の複合繊維は電気抵抗値が107Ω/cm以下であることが好ましい。複合繊維の電気抵抗値が107Ω/cmを超えると、導電性能が不十分となりやすい。一方、電気抵抗値の下限については特に限定されるものではないが、一般に104Ω/cm以下にしようとすると、導電性粒子をポリマーに多量に含有させることが必要となり、繊維物性に悪影響を及ぼすばかりか、さらには曳糸性に問題を生じる可能性がある。
【0018】
そして、導電性成分に用いられる導電性粒子としては、導電性カーボンブラックや金属粉末(銀、ニッケル、銅、鉄、錫あるいはこれらの合金等)、硫化銅、沃化銅、硫化亜鉛、硫化カドミウム等の金属化合物が挙げられる。また、酸化錫に酸化アンチモンを少量添加したり、酸化亜鉛に酸化アルミニウムを少量添加して導電性粒子としたものも挙げられる。さらには、酸化チタンの表面に酸化錫をコーティングし、酸化アンチモンを混合焼成し、導電性粒子としたものも用いることができる。
【0019】
上記の導電性粒子は、比抵抗値が104Ω・cm以下のものが好ましく、さらに好ましくは、102Ω・cm以下のものである。比抵抗値が104Ω・cmを超えるものを用いると、目標とする導電性能を得るために、多量の導電性粒子をポリマー中に分散させることが必要になり、繊維物性に悪影響を及ぼすばかりか、さらには曳糸性に問題を生じる可能性がある。
【0020】
また、導電性粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径が1μm以下のものが好ましく、0.5μm以下のものがより好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、導電性粒子のポリマー中への分散性が悪くなりやすく、導電性能や強伸度特性の低下した繊維となりやすい。
【0021】
導電性成分における導電性粒子の混入率については、導電性粒子の種類、導電性能、粒子径、粒子の連鎖形成能及び用いるポリマーの性質等によって適宜選択すればよいが、上記のような導電性複合繊維の電気抵抗値のものとするには、5〜40質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは、10〜35質量%である。混入率が5質量%未満では、導電性能が不十分になる場合があり、また、40質量%を超えると、導電性粒子のポリマー中への分散が難しくなるので好ましくない。
【0022】
そして、本発明の複合繊維において、非導電性成分と導電性成分の複合比率は、非導電性成分が60〜90質量%、導電性成分が40〜10質量%とすることが好ましく、より好ましくは、非導電性成分が70〜85質量%、導電性成分が30〜15質量%である。導電性成分の複合比率が10質量%未満では、導電性能が十分でない場合があり、一方、導電性成分の複合比率が40質量%を超えると、強伸度特性等の糸質性能が劣ったり、曳糸性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0023】
次に、本発明の複合繊維における複合形態について図面を用いて説明する。複合形態については特に限定するものではないが、図1〜4に示すような断面形状のものとすることが好ましい。まず、図1は、導電性成分を非導電性成分で挟み込んだ並列型タイプ、図2は、導電性成分を非導電性成分で完全に包み込んだ芯鞘型タイプであり、芯部となる導電性成分は1つであっても複数であってもよく、(a)は芯部が1つのもの、(b)は芯部が3つのものを示す。図3は、非導電性成分を導電性成分で完全に包み込んだ導電性粒子が繊維表面に完全に露出した芯鞘型タイプ。図4は、導電性成分の一部が繊維表面に露出したタイプのものであり、露出する導電性成分は1つであっても複数であってもよく、(a)は導電性成分が1つのもの、(b)は導電性成分が2つのもの、(c)は導電性成分が3つのもの、(d)は導電性成分が4つのものである。
【0024】
次に、本発明の導電性複合繊維の製法例について説明する。まず、導電性成分を得る方法としては、ベースとなるポリマーの重合段階で導電性粒子を添加する方法や、導電性粒子を後工程で溶融混練する方法等があるが、用いるポリマーによっては重合段階での添加が困難なものもあるので、後工程で溶融混練する方法が好ましい。このようにして得られた導電性成分と非導電性成分とを用い、必要に応じて乾燥等の処理を行い、通常の二成分系の複合溶融紡糸装置を用いて複合紡糸する。そして、得られた糸条を延伸、熱処理することによって、本発明の複合繊維を得ることができる。
【0025】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、例中の導電性能の評価方法は次のとおりである。
〔複合繊維の電気抵抗値〕
長さ100cmのサンプルを採取し、10cmずつに等分して10サンプルを採取した。サンプルの両端の表面にケラチンクリームを塗布し、この表面部分を金属端子に接続し、50Vの直流電流を印加して電流値を測定し、下記式で電気抵抗値を算出した。
電気抵抗値=E/(I×L)
E:電圧(V) I:測定電流(A) L:試料長(cm)
そして、算出した10個のサンプルの電気抵抗値の相加平均値とした。
【0026】
実施例1
極限粘度(フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒とし、20℃で測定)0.80のエチレンテレフタレート55モル%(式(1):テレフタル酸55モル%、式(2):エチレングリコール55モル%)とパラヒドロキシ安息香酸45モル%(式(3))との共重合ポリエチレンテレフタレート80重量部と、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック20重量部を溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た。また、極限粘度0.61のイソフタル酸8モル%が共重合されたポリエチレンテレフタレートを用いて上記と同様に溶融混練し、常法によりチップ化して非導電性成分用のポリマーを得た。
次に、単糸の横断面形状が、図4(c)記載の導電性成分の一部が繊維表面に露出したタイプとするように設計された紡糸口金を用いて、通常の複合紡糸装置を用いて、紡糸温度250℃、導電性成分の複合比率20質量%で紡糸し、冷却、オイリングしながら1200m/分の速度で捲取った。そして、この未延伸糸を90℃の熱ローラを介して、残留伸度が60%になるように延伸し、さらに、150℃のヒートプレート上で熱処理を行って捲取り、図4(c)記載の断面形状を有する28dtex/2filの延伸糸を得た。
【0027】
実施例2
極限粘度0.85のエチレンテレフタレート35モル%(式(1):テレフタル酸35モル%、式(2):エチレングリコール35モル%)と2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸65モル%(式(3))との共重合ポリエチレンテレフタレート85重量部と、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック15重量部を溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た。また、極限粘度0.61のイソフタル酸8モル%が共重合されたポリエチレンテレフタレートを用いて上記と同様に溶融混練し、常法によりチップ化して非導電性成分用のポリマーを得た。
次に、単糸の横断面形状が、図2(a)記載の導電性成分を非導電性成分で完全に包み込んだ芯鞘型とするように設計された紡糸口金を用いて、通常の複合紡糸装置を用いて、紡糸温度265℃、導電性成分の複合比率30質量%で紡糸し、冷却、オイリングしながら1200m/分の速度で捲取った。そして、この未延伸糸を90℃の熱ローラを介して、残留伸度が60%になるように延伸し、更に150℃のヒートプレート上で熱処理を行って巻取り、図2(a)記載の断面形状を有する28dtex/2filの延伸糸を得た。
【0028】
実施例3
導電性成分用のポリマーを、極限粘度0.80のエチレンテレフタレート15モル%(式(1):テレフタル酸15モル%、式(2):エチレングリコール15モル%)とパラヒドロキシ安息香酸85モル%(式(3))との共重合ポリエチレンテレフタレート80重量部と、平均粒径0.2μmで比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック20重量部を溶融混練したものとした以外は、実施例1と同様にして行い、図4(c)記載の断面形状を有する28dtex/2filの延伸糸を得た。
【0029】
比較例1
導電性成分用のポリマーを、極限粘度0.80のエチレンテレフタレート70モル%(式(1):テレフタル酸70モル%、式(2):エチレングリコール70モル%)と2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸30モル%(式(3))との共重合ポリエチレンテレフタレート75重量部と、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック25重量部を溶融混練したものとした以外は、実施例1と同様にして行い、図4(c)記載の断面形状を有する28dtex/2filの延伸糸を得た。
【0030】
比較例2
極限粘度0.80のエチレンテレフタレート2モル%(式(1):テレフタル酸2モル%、式(2):エチレングリコール2モル%)とパラヒドロキシ安息香酸98モル%(式(3))との共重合ポリエチレンテレフタレート80重量部と、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック20重量部を溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た。また、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを用いて上記と同様に溶融混練し、常法によりチップ化して非導電性成分用のポリマーを得た。
次に、単糸の横断面形状が、図2(a)記載の導電性成分を非導電性成分で完全に包み込んだ芯鞘型とするように設計された紡糸口金を用いて、通常の複合紡糸装置を用いて、紡糸温度300℃、導電性成分の複合比率20質量%で紡糸を行った以外は実施例1と同様にして行った。
【0031】
比較例3
極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレート70重量部と、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック30重量部を溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た。また、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを用いて上記と同様に溶融混練し、常法によりチップ化して非導電性成分用のポリマーを得た。
次に、単糸の横断面形状が、図3(a)記載の非導電性成分を導電性成分で完全に包み込んだ導電性粒子が繊維表面に完全に露出した芯鞘型とするように設計された紡糸口金を用い、通常の複合紡糸装置を用いて、紡糸温度290℃、導電性成分の複合比率30質量%で紡糸し、冷却、オイリングしながら1200m/分の速度で捲取った。そして、この未延伸糸を90℃の熱ローラを介して、残留伸度が60%になるように延伸し、更に190℃のヒートプレート上で熱処理を行って巻取り、図3(a)記載の断面形状を有する28dtex/2filの延伸糸を得た。
【0032】
実施例1〜3、比較例1〜3で得られた複合繊維の電気抵抗値の測定結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1〜3の複合繊維は、曳糸性よく得ることができ、比較的少量の導電性粒子の含有量であっても良好な導電性能を示すものであった。
一方、比較例1の複合繊維は、導電性成分に芳香族ヒドロキシカルボン酸の共重合量が少ないために、導電性能の劣ったものとなった。比較例2では、導電性成分に芳香族ヒドロキシカルボン酸の共重合量が多いために、曳糸性が悪く、紡糸不可能であった。比較例3の複合繊維は、導電性成分の共重合成分が含まれていないため、導電性能の劣ったものとなった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の複合繊維によれば、共重合された液晶ポリエステルを導電性成分としているため、導電性粒子の配列状態を向上させることができ、導電性粒子の混入量が比較的少なくても優れた導電性能を有するものとなる。また、ポリエステルを使用しているので、γ線を照射する用途においても性能の劣化がなく、制電作業服、ユニホームなどの衣料、カーペット、カーテンなどのインテリア用途及び資材資材用途等に広く用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性複合繊維の一実施態様を示す断面図である。
【図2】本発明の導電性複合繊維の他の実施態様を示す断面図である。
【図3】本発明の導電性複合繊維の他の実施態様を示す断面図である。
【図4】本発明の導電性複合繊維の他の実施態様を示す断面図である。
【符号の説明】
1 導電性成分
2 非導電性成分
【発明の属する技術分野】
本発明は、制電作業服、ユニホームなどの衣料、カーペット、カーテンなどのインテリア用途及び資材用途として用いられるポリエステル系導電性繊維に関するものであり、導電性成分に液晶ポリエステル樹脂を用いた導電性複合繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の疎水性ポリマーからなる繊維は機械特性、耐薬品性、耐候性等の多くの長所を有しており、衣料用のみならず、産業資材用途等にも広く用いられている。しかし、これらの繊維は摩擦等による静電気の発生が著しいため、空気中の塵埃を吸引して美観を低下させたり、人体に電撃を与えて不快感を与えたり、さらには、スパークによる電子機器への障害や、引火性物質への引火爆発等の問題を引き起こす場合があり、そのため、導電性を付与するための多くの研究がなされてきた。
【0003】
まず、導電性カーボンブラックや金属粉等の導電性粒子を熱可塑性ポリマー全体に分散させた繊維が提案されているが、このような繊維は、導電性を満足する程度に導電性粒子を分散させると、曳糸性や強伸度の低下が著しく、実用性に乏しいものであった。
この問題を解決するものとして、特開平09−143821号公報、特開平09−279416号公報などでは、導電性成分を非導電性ポリマーで完全に包みこんだ芯鞘型複合繊維あるいは導電性成分が繊維表面に露出したタイプの複合繊維が開示されている。
しかしながら、これらの繊維においても導電性成分を含有することから紡糸延伸工程がスムーズに行えず、長さ方向に導電性能を均一とすることが困難となり、優れた導電性能が得られないという問題があった。
【0004】
また、現代の高性能化のニーズに対応するために、特開2001−172825号公報には、導電性ポリマー層の配置を特定のものとすることで、優れた(除電性)導電性能を有するものが開示されているが、この導電性繊維はポリアミド繊維であり、クリーンルームなどの特殊用途においては、布帛に放射線(γ線)を照射することにより抗菌性を施す処理を行うため、γ線照射により性能が劣化するという問題があった。
【0005】
以上のように、γ線を照射する用途においても性能の劣化がなく、かつ、比較的少量の導電性粒子を混入量するだけで、優れた導電性能を有することができ、操業性よく得ることができる導電性複合繊維は未だ開発されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の問題点を解決し、γ線を照射する用途においても性能の劣化がないポリエステルを使用し、比較的少量の導電性粒子を混入量するだけで、優れた導電性能を有することができる導電性複合繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために検討した結果、導電性成分として、共重合された液晶ポリエステル樹脂を用い、この液晶ポリエステル樹脂の共重合量を特定のものとすることによって、導電性粒子の配列度を向上させることができ、これにより導電性粒子の混入量を減少させても十分な導電性能を発揮できる導電糸とすることができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、導電性粒子を含有する熱可塑性樹脂として、下記、式(1)、式(2)、式(3)の構造単位からなり、これらの共重合量が下記範囲式(A)、式(B)を満足するように共重合された液晶ポリエステル樹脂を用い、これを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とすることを特徴とする導電性複合繊維を要旨とするものである。
−OC−R1−CO− (1)
−O−R2−O− (2)
−O−Ar−CO− (3)
5モル%≦((1)+(2))/2≦60モル% 式(A)
95モル%≧(3)≧40モル% 式(B)
ここで、R1は芳香族又は脂肪族基 、R2は脂肪族又は脂環族基、Arは芳香族基を示す。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の複合繊維は、非導電性成分と導電性成分からなり、非導電性成分は、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂からなるものであり、導電性成分は、上記式(1)、式(2)、式(3)の構造単位からなり、これらが上記範囲式(A)、式(B)を満足するように共重合された液晶ポリエステル樹脂と導電性粒子からなるものである。このように、本発明の導電性複合繊維は、導電性成分と非導電性成分ともにポリエステル系樹脂を用い、これによりγ線を照射する用途においても性能の劣化がないものとすることができる。
【0009】
まず、導電性成分について説明する。
導電性成分となる共重合された液晶ポリエステル樹脂は、式(1)で示される芳香族または脂肪族ジカルボン酸成分と式(2)で示される脂肪族または脂環式ジオール成分と、式(3)で示される芳香族ヒドロキシカルボン酸成分からなるものである。
【0010】
本発明において、式(1)で示されるジカルボン酸成分の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。
また、式(2)で示されるジオール成分の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0011】
式(1)、(2)からなるポリエステルの中でも、最も好適なポリエステルは、ポリアルキレンエステルであり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等がある。
【0012】
さらに、式(3)で示される芳香族ヒドロキシカルボン酸成分を含むことにより、液晶ポリエステル樹脂となる。本発明において、式(3)で示される芳香族ヒドロキシカルボン酸成分としては、具体的には、パラヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0013】
このような本発明おける芳香族ヒドロキシカルボン酸成分を含む液晶ポリエステル樹脂は、溶融状態において異方性を示す、いわゆるサーモトロピック液晶ポリエステルであって、溶融紡糸可能なものを意味するものである。これは、非常に配向性の高い樹脂であることから、導電性粒子を効果的に配列させることができ、比較的少量の導電性粒子を混入するだけで、容易に優れた導電性能が得られるものである。
【0014】
そして、本発明における共重合された液晶ポリエステル樹脂は、上記範囲式(A)、式(B)を満足するように共重合されたものである。すなわち、式(3)の構造単位の共重合量が40モル%未満では、十分な液晶性を示さないため、導電性粒子の配列度を向上させることができず、導電性能の向上効果も不十分となる。一方、95モル%を超えると、導電性粒子の混入が困難になるばかりか、曳糸性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、式(A)で示す((1)+(2))/2の値が5モル%未満であると、式(1)、(2)からなるポリエステル量が少なくなるため、繊維形成性に乏しくなり、曳糸性に悪影響を及ぼす場合がある。一方、60モル%を超えるものであると、上記したように式(3)の構造単位の共重合量が40モル%未満となり、導電性能の向上効果が不十分となる。
【0015】
また、本発明の共重合された液晶ポリエステル樹脂中には、その特性を大きく損なわない範囲で、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカプロラクトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリメタクリル酸メチル、ポリプロピレン、ポリエチレン、フェノキシ樹脂、ゴム状高分子等の他の樹脂を含有させてもよい。
さらに、目的に応じて、ワックス類、ポリアルキレンオキシド類、各種界面活性剤、有機電解質等の分散剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、着色剤、顔料、流動性改善剤、その他の添加剤を加えることもできる。
【0016】
一方、非導電性成分を構成する繊維形成性ポリエステル系樹脂は、溶融紡糸可能なあらゆるポリマーが適用可能である。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンオキシベンゾエート、ポリプロピレンテレフタレート等が挙げられ、さらには、これらのポリマーの共重合体や変性体が特に好適である。そして、非導電性成分と導電性成分との剥離を防止するという点から、導電性成分との相溶性を考慮することが好ましい。
また、これらの繊維形成性ポリマーには、艶消剤、顔料、着色料、安定剤、制電剤等の添加剤を加えることができる。
【0017】
そして、本発明の複合繊維は電気抵抗値が107Ω/cm以下であることが好ましい。複合繊維の電気抵抗値が107Ω/cmを超えると、導電性能が不十分となりやすい。一方、電気抵抗値の下限については特に限定されるものではないが、一般に104Ω/cm以下にしようとすると、導電性粒子をポリマーに多量に含有させることが必要となり、繊維物性に悪影響を及ぼすばかりか、さらには曳糸性に問題を生じる可能性がある。
【0018】
そして、導電性成分に用いられる導電性粒子としては、導電性カーボンブラックや金属粉末(銀、ニッケル、銅、鉄、錫あるいはこれらの合金等)、硫化銅、沃化銅、硫化亜鉛、硫化カドミウム等の金属化合物が挙げられる。また、酸化錫に酸化アンチモンを少量添加したり、酸化亜鉛に酸化アルミニウムを少量添加して導電性粒子としたものも挙げられる。さらには、酸化チタンの表面に酸化錫をコーティングし、酸化アンチモンを混合焼成し、導電性粒子としたものも用いることができる。
【0019】
上記の導電性粒子は、比抵抗値が104Ω・cm以下のものが好ましく、さらに好ましくは、102Ω・cm以下のものである。比抵抗値が104Ω・cmを超えるものを用いると、目標とする導電性能を得るために、多量の導電性粒子をポリマー中に分散させることが必要になり、繊維物性に悪影響を及ぼすばかりか、さらには曳糸性に問題を生じる可能性がある。
【0020】
また、導電性粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径が1μm以下のものが好ましく、0.5μm以下のものがより好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、導電性粒子のポリマー中への分散性が悪くなりやすく、導電性能や強伸度特性の低下した繊維となりやすい。
【0021】
導電性成分における導電性粒子の混入率については、導電性粒子の種類、導電性能、粒子径、粒子の連鎖形成能及び用いるポリマーの性質等によって適宜選択すればよいが、上記のような導電性複合繊維の電気抵抗値のものとするには、5〜40質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは、10〜35質量%である。混入率が5質量%未満では、導電性能が不十分になる場合があり、また、40質量%を超えると、導電性粒子のポリマー中への分散が難しくなるので好ましくない。
【0022】
そして、本発明の複合繊維において、非導電性成分と導電性成分の複合比率は、非導電性成分が60〜90質量%、導電性成分が40〜10質量%とすることが好ましく、より好ましくは、非導電性成分が70〜85質量%、導電性成分が30〜15質量%である。導電性成分の複合比率が10質量%未満では、導電性能が十分でない場合があり、一方、導電性成分の複合比率が40質量%を超えると、強伸度特性等の糸質性能が劣ったり、曳糸性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0023】
次に、本発明の複合繊維における複合形態について図面を用いて説明する。複合形態については特に限定するものではないが、図1〜4に示すような断面形状のものとすることが好ましい。まず、図1は、導電性成分を非導電性成分で挟み込んだ並列型タイプ、図2は、導電性成分を非導電性成分で完全に包み込んだ芯鞘型タイプであり、芯部となる導電性成分は1つであっても複数であってもよく、(a)は芯部が1つのもの、(b)は芯部が3つのものを示す。図3は、非導電性成分を導電性成分で完全に包み込んだ導電性粒子が繊維表面に完全に露出した芯鞘型タイプ。図4は、導電性成分の一部が繊維表面に露出したタイプのものであり、露出する導電性成分は1つであっても複数であってもよく、(a)は導電性成分が1つのもの、(b)は導電性成分が2つのもの、(c)は導電性成分が3つのもの、(d)は導電性成分が4つのものである。
【0024】
次に、本発明の導電性複合繊維の製法例について説明する。まず、導電性成分を得る方法としては、ベースとなるポリマーの重合段階で導電性粒子を添加する方法や、導電性粒子を後工程で溶融混練する方法等があるが、用いるポリマーによっては重合段階での添加が困難なものもあるので、後工程で溶融混練する方法が好ましい。このようにして得られた導電性成分と非導電性成分とを用い、必要に応じて乾燥等の処理を行い、通常の二成分系の複合溶融紡糸装置を用いて複合紡糸する。そして、得られた糸条を延伸、熱処理することによって、本発明の複合繊維を得ることができる。
【0025】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、例中の導電性能の評価方法は次のとおりである。
〔複合繊維の電気抵抗値〕
長さ100cmのサンプルを採取し、10cmずつに等分して10サンプルを採取した。サンプルの両端の表面にケラチンクリームを塗布し、この表面部分を金属端子に接続し、50Vの直流電流を印加して電流値を測定し、下記式で電気抵抗値を算出した。
電気抵抗値=E/(I×L)
E:電圧(V) I:測定電流(A) L:試料長(cm)
そして、算出した10個のサンプルの電気抵抗値の相加平均値とした。
【0026】
実施例1
極限粘度(フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒とし、20℃で測定)0.80のエチレンテレフタレート55モル%(式(1):テレフタル酸55モル%、式(2):エチレングリコール55モル%)とパラヒドロキシ安息香酸45モル%(式(3))との共重合ポリエチレンテレフタレート80重量部と、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック20重量部を溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た。また、極限粘度0.61のイソフタル酸8モル%が共重合されたポリエチレンテレフタレートを用いて上記と同様に溶融混練し、常法によりチップ化して非導電性成分用のポリマーを得た。
次に、単糸の横断面形状が、図4(c)記載の導電性成分の一部が繊維表面に露出したタイプとするように設計された紡糸口金を用いて、通常の複合紡糸装置を用いて、紡糸温度250℃、導電性成分の複合比率20質量%で紡糸し、冷却、オイリングしながら1200m/分の速度で捲取った。そして、この未延伸糸を90℃の熱ローラを介して、残留伸度が60%になるように延伸し、さらに、150℃のヒートプレート上で熱処理を行って捲取り、図4(c)記載の断面形状を有する28dtex/2filの延伸糸を得た。
【0027】
実施例2
極限粘度0.85のエチレンテレフタレート35モル%(式(1):テレフタル酸35モル%、式(2):エチレングリコール35モル%)と2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸65モル%(式(3))との共重合ポリエチレンテレフタレート85重量部と、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック15重量部を溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た。また、極限粘度0.61のイソフタル酸8モル%が共重合されたポリエチレンテレフタレートを用いて上記と同様に溶融混練し、常法によりチップ化して非導電性成分用のポリマーを得た。
次に、単糸の横断面形状が、図2(a)記載の導電性成分を非導電性成分で完全に包み込んだ芯鞘型とするように設計された紡糸口金を用いて、通常の複合紡糸装置を用いて、紡糸温度265℃、導電性成分の複合比率30質量%で紡糸し、冷却、オイリングしながら1200m/分の速度で捲取った。そして、この未延伸糸を90℃の熱ローラを介して、残留伸度が60%になるように延伸し、更に150℃のヒートプレート上で熱処理を行って巻取り、図2(a)記載の断面形状を有する28dtex/2filの延伸糸を得た。
【0028】
実施例3
導電性成分用のポリマーを、極限粘度0.80のエチレンテレフタレート15モル%(式(1):テレフタル酸15モル%、式(2):エチレングリコール15モル%)とパラヒドロキシ安息香酸85モル%(式(3))との共重合ポリエチレンテレフタレート80重量部と、平均粒径0.2μmで比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック20重量部を溶融混練したものとした以外は、実施例1と同様にして行い、図4(c)記載の断面形状を有する28dtex/2filの延伸糸を得た。
【0029】
比較例1
導電性成分用のポリマーを、極限粘度0.80のエチレンテレフタレート70モル%(式(1):テレフタル酸70モル%、式(2):エチレングリコール70モル%)と2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸30モル%(式(3))との共重合ポリエチレンテレフタレート75重量部と、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック25重量部を溶融混練したものとした以外は、実施例1と同様にして行い、図4(c)記載の断面形状を有する28dtex/2filの延伸糸を得た。
【0030】
比較例2
極限粘度0.80のエチレンテレフタレート2モル%(式(1):テレフタル酸2モル%、式(2):エチレングリコール2モル%)とパラヒドロキシ安息香酸98モル%(式(3))との共重合ポリエチレンテレフタレート80重量部と、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック20重量部を溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た。また、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを用いて上記と同様に溶融混練し、常法によりチップ化して非導電性成分用のポリマーを得た。
次に、単糸の横断面形状が、図2(a)記載の導電性成分を非導電性成分で完全に包み込んだ芯鞘型とするように設計された紡糸口金を用いて、通常の複合紡糸装置を用いて、紡糸温度300℃、導電性成分の複合比率20質量%で紡糸を行った以外は実施例1と同様にして行った。
【0031】
比較例3
極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレート70重量部と、平均粒径0.2μm で比抵抗値が0.5Ω・cmの導電性カーボンブラック30重量部を溶融混練し、常法によりチップ化して導電性成分用のポリマーを得た。また、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを用いて上記と同様に溶融混練し、常法によりチップ化して非導電性成分用のポリマーを得た。
次に、単糸の横断面形状が、図3(a)記載の非導電性成分を導電性成分で完全に包み込んだ導電性粒子が繊維表面に完全に露出した芯鞘型とするように設計された紡糸口金を用い、通常の複合紡糸装置を用いて、紡糸温度290℃、導電性成分の複合比率30質量%で紡糸し、冷却、オイリングしながら1200m/分の速度で捲取った。そして、この未延伸糸を90℃の熱ローラを介して、残留伸度が60%になるように延伸し、更に190℃のヒートプレート上で熱処理を行って巻取り、図3(a)記載の断面形状を有する28dtex/2filの延伸糸を得た。
【0032】
実施例1〜3、比較例1〜3で得られた複合繊維の電気抵抗値の測定結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1〜3の複合繊維は、曳糸性よく得ることができ、比較的少量の導電性粒子の含有量であっても良好な導電性能を示すものであった。
一方、比較例1の複合繊維は、導電性成分に芳香族ヒドロキシカルボン酸の共重合量が少ないために、導電性能の劣ったものとなった。比較例2では、導電性成分に芳香族ヒドロキシカルボン酸の共重合量が多いために、曳糸性が悪く、紡糸不可能であった。比較例3の複合繊維は、導電性成分の共重合成分が含まれていないため、導電性能の劣ったものとなった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の複合繊維によれば、共重合された液晶ポリエステルを導電性成分としているため、導電性粒子の配列状態を向上させることができ、導電性粒子の混入量が比較的少なくても優れた導電性能を有するものとなる。また、ポリエステルを使用しているので、γ線を照射する用途においても性能の劣化がなく、制電作業服、ユニホームなどの衣料、カーペット、カーテンなどのインテリア用途及び資材資材用途等に広く用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性複合繊維の一実施態様を示す断面図である。
【図2】本発明の導電性複合繊維の他の実施態様を示す断面図である。
【図3】本発明の導電性複合繊維の他の実施態様を示す断面図である。
【図4】本発明の導電性複合繊維の他の実施態様を示す断面図である。
【符号の説明】
1 導電性成分
2 非導電性成分
Claims (1)
- 導電性粒子を含有する熱可塑性樹脂として、下記、式(1)、式(2)、式(3)の構造単位からなり、これらの共重合量が下記範囲式(A)、式(B)を満足するように共重合された液晶ポリエステル樹脂を用い、これを導電性成分とし、繊維形成性を有するポリエステル系樹脂を非導電性成分とすることを特徴とする導電性複合繊維。
−OC−R1−CO− (1)
−O−R2−O− (2)
−O−Ar−CO− (3)
5モル%≦((1)+(2))/2≦60モル% 式(A)
95モル%≧(3)≧40モル% 式(B)
ここで、R1は芳香族又は脂肪族基、R2は脂肪族又は脂環族基、Arは芳香族基を示す。
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