JP2003105634A - 導電糸 - Google Patents

導電糸

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JP2003105634A
JP2003105634A JP2001301475A JP2001301475A JP2003105634A JP 2003105634 A JP2003105634 A JP 2003105634A JP 2001301475 A JP2001301475 A JP 2001301475A JP 2001301475 A JP2001301475 A JP 2001301475A JP 2003105634 A JP2003105634 A JP 2003105634A
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specific resistance
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fiber
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Shiro Murakami
志朗 村上
Takeshi Kitahara
武司 北原
Shiyuuji Arita
収次 有田
Seiji Abe
清二 阿部
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Unitika Fibers Ltd
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Unitika Fibers Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 接触帯電用等のブラシとして用いた場合に、
繊維表面の比抵抗値が均一であり、また、作成時の熱処
理工程等や長期間の使用における温湿度変化に対して安
定した比抵抗値を示し、安定、かつ良好な画像を得るこ
とができる導電糸を提供する。 【解決手段】 導電性微粒子を含有する熱可塑性重合体
成分Aと熱可塑性重合体成分Bとからなり、成分Aが複
数の領域に分割されて繊維表面に露出し、成分Bが繊維
横断面の中心部を含む連続した一つの領域を占める導電
糸であって、隣接する分割された成分A間の繊維横断面
上の距離が5μm以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性微粒子含有
成分が繊維表面に露出した導電糸であって、電子写真装
置(複写機、ファクシミリ、ブリンター等)に用いる現
像用ブラシ、接触帯電用ブラシ、クリーナー用ブラシ又
は除電ブラシに適した導電糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子写真装置等の静電潜像形式に重要な
要素の帯電については非接触型のコロナ帯電方式が採用
されている。しかしコロナ帯電方式はコロナ放電から発
生するオゾンが部品を劣化することや人体に対する有害
性、高電圧電源の危険性等の問題点がある。
【0003】この問題を解決するため、近年、オゾンレ
スで、低電圧印加のブラシ帯電やローラ帯電の接触帯電
方式が開発されてきた。
【0004】電子写真装置等に用いられる現像用ブラ
シ、接触帯電用ブラシ及び感光ドラムクリーナー用ブラ
シ用の繊維としては、感光体の寿命や感光体上のピンホ
ール対策のために比抵抗値が100〜108Ω・cmのも
のが要求されており、特に接触帯電用ブラシ用の繊維と
しては、比抵抗値が102〜107Ω・cm、さらに好ま
しくは103〜105Ω・cmのものが要求されている。
【0005】従来、このような用途にはセルロース系繊
維が多く用いられている。また、合成繊維として広く使
用されているポリエステルやポリアミド繊維において
も、導電性粒子を含有する繊維が多く提案されている。
【0006】例えば、特開昭54-134117号公報には、カ
ーボンブラックを分散せしめた熱可塑性重合体成分Aと
繊維形成性が良好な熱可塑性重合体成分Bとからなり、
A、Bのうち一方の成分が複数の領域に分割されて繊維
表面に露出または突出するように回転対称に配置され、
他方の成分が繊維断面の中心部を含む連続した一つの領
域を占め、かつ両成分が繊維の長手方向に連続している
制電性合成繊維が提案されている。しかしながら、この
制電性合成繊維の導電性は良好なものの、隣接する分割
された成分間の繊維表面上の距離が5μmを超えるた
め、接触帯電ブラシ等に用いた場合に、繊維表面の比抵
抗値が均一ではない。このため、感光ドラムと接触した
ときの抵抗値が変動し、均一な画像を得ることができな
かった。
【0007】また、接触帯電ブラシ等は、温度や湿度の
変化の大きい環境で処理又は使用されるため、それら環
境の温湿度変化によって生じる繊維形態の変化が導電性
微粒子の連鎖状態の変化を引き起こし、比抵抗値の変化
として現れる。したがって、作成当初においては好適な
比抵抗値を有している導電糸であっても、接触帯電ブラ
シを作成する際の熱処理工程等や長期間の使用時にこれ
らの値が低下し、作成当初との値の差が大きくなり、画
像障害が生じるようになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な問題点を解決し、接触帯電用等のブラシとして用いた
場合に、繊維表面の比抵抗値が均一であり、また、作成
時の熱処理工程等や長期間の使用における温湿度変化に
対して安定した比抵抗値を示し、安定、かつ良好な画像
を得ることができる導電糸を提供することを技術的な課
題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達し
た。すなわち、本発明は、導電性微粒子を含有する熱可
塑性重合体成分Aと熱可塑性重合体成分Bとからなり、
成分Aが複数の領域に分割されて繊維表面に露出し、成
分Bが繊維横断面の中心部を含む連続した一つの領域を
占める導電糸であって、隣接する分割された成分A間の
繊維横断面上の距離が5μm以下であることを特徴とす
る導電糸を要旨とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。まず、本発明でいう熱可塑性重合体とは、繊維形
成性の熱可塑性重合体であれば特に限定されないが、例
えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリ
プロピレン等が挙げられる。中でも、ポリエステル、ポ
リアミドが好ましい。
【0011】ポリエステルをさらに具体的に述べると、
例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレ
フタレート、ポリプロピレンテレフタレートや、それら
にジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカル
ボン酸成分が共重合されたもの、あるいはそれらポリエ
ステルをブレンドしたものが挙げられる。さらには、生
分解性ポリエステルとして知られるポリ乳酸、ポリブチ
レンサクシネート、ポリε−カプロラクタム等の脂肪族
ポリエステルでもよい。
【0012】また、ポリアミドとは、例えばナイロン
6、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン46、ナイ
ロン610、ナイロン12、ポリメタキシレンアジパミ
ドやこれら各成分を共重合したものやブレンドしたもの
等が挙げられる。
【0013】本発明の導電糸の形状について図面を用い
て説明する。図1(a)、(b)は本発明の導電糸の実
施態様を示す断面模式図である。本発明の導電糸は、導
電性微粒子を含有する熱可塑性重合体成分Aと熱可塑性
重合体成分Bとからなり、成分Aが複数の領域に分割さ
れて繊維表面に露出している。そして、成分Bは繊維横
断面の中心部を含む連続した一つの領域を占めている。
さらに、隣接する分割された成分A間の繊維横断面上の
距離が5μm以下である。
【0014】本発明の導電糸においては、隣接する分割
された成分A間の繊維横断面上の距離が5μm以下であ
れば、分割数は2以上のもので特に限定されないが、ノ
ズル等の経済上の観点から2〜8程度が好ましい。図1
(a)は、成分Aが3つに分割されて表面に露出してい
るものであり、図1(b)は、成分Aが4つに分割され
て表面に露出しているものである。そして、本発明にお
いて、隣接する分割された熱可塑性重合体成分A間の繊
維断面上の距離Lとは、隣接する成分A間の繊維表面に
沿った最短距離をいう。この距離Lは5μm以下とし、
より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以
下とする。
【0015】従来より提案されている、導電性微粒子が
均一に分散している繊維については、感光ドラム等と均
一に接するという利点はあるものの、導電性微粒子の添
加量によっては、例えば接触帯電用ブラシを作成する際
の熱処理工程等や長期間の使用時に比抵抗値が低下し、
画像障害を生じるようになるという欠点を有する。
【0016】この理由を以下に示す。特開2000−1
60427号公報に記載されているように、例えば導電
性セルロース系繊維中の導電性カーボン粒子の添加率を
0重量%から順次増加した場合、ある添加量近辺でセル
ロース系繊維の導電性が急激に増加し(比抵抗値が急激
に低下する)するという現象が生じる。このため、この
ような導電性が急激に変化する添加量付近での導電糸の
場合、温度や湿度の変化の大きい環境で処理又は使用さ
れた場合に繊維形態の変化(収縮等)が生じたりする
と、導電性微粒子の連鎖状態の変化を引き起こし易く、
そのため上記のような導電性能(比抵抗値など)の変動
が生じる。
【0017】一方、導電性微粒子の添加に伴い比抵抗値
が急激に減少した後は、さらに添加しても、導電性はあ
まり変化しないという現象が生じる。このため、比抵抗
値が変動しない導電糸を得るためには、導電性微粒子の
添加量を導電性能があまり変化しない範囲とすることが
よいが、このような場合は導電性能の変動が小さくなる
が、繊維全体の導電性能(比抵抗値)が限定されたもの
となり、特に接触帯電用ブラシが必要とする比抵抗値に
制御することは難しくなる。
【0018】このため本発明においては、導電性微粒子
を含有する熱可塑性重合体成分を一成分とし、その成分
が複数の領域に分割されて繊維表面に露出し、他方の成
分が繊維断面の中心部を含む連続した一つの領域を占め
る導電糸とし、かつ隣接する分割された導電性微粒子を
含有する熱可塑性重合体成分間の繊維断面上の距離を特
定範囲内に制御し、熱可塑性重合体成分中の導電性微粒
子の含有量を特定のものとすることによって、接触帯電
用ブラシとして用いたときには安定かつ良好な画像を得
るのに十分な比抵抗値の均一性を有し、温度や湿度の変
化の大きい環境で処理又は使用された場合に比抵抗値の
変動を生じることが少なくすることが可能となる。
【0019】これにより、感光ドラムと接触したときの
比抵抗値も均一かつ良好で、長期間にわたって画像障害
のない良好な画像を得ることができる。また、繊維全体
に導電性微粒子を含有するものと比較して導電性微粒子
の量が少なくてもよく、コストダウンを図ることができ
る。
【0020】また、本発明の導電糸は、成分Bは導電性
微粒子を含有しないことが好ましく、成分Bが繊維横断
面の中心部を含む連続した一つの領域を占ているため、
成分Bにより強度を保持することができ、繊維全体とし
て強度の高い繊維とすることが可能となる。なお、成分
A、B間の剥離を防ぎ、強度を高くするためにも、両成
分の熱可塑性重合体を同一とすることが好ましい。
【0021】そして、具体的には導電糸の強度は1.5
cN/dtex以上、2.5cN/dtex以上、さらには3.0
cN/dtex以上とすることが好ましい。1.5g/dtex以
上とすることで、得られる各種ブラシ等は耐久性が向上
し、また、他にも使用できる用途も増え好ましい。
【0022】さらに、このような強度及び導電性能を維
持するために、成分A、Bの複合割合は、質量比で成分
A/成分Bが1/9〜9/1が好ましく、さらに好まし
くは3/7〜7/3である。
【0023】本発明の導電糸に使用する導電性微粒子と
しては、例えばカーボンブラック、金属粉、金属酸化物
等が挙げられ、中でもカーボンブラックが好ましい。成
分A中の導電性微粒子の含有量としては18質量%以上
が好ましく、より好ましくは23質量%以上である。1
8質量%以上であれば、導電性微粒子の添加量を増加し
ても、また、接触帯電ブラシを作成する際の熱処理工程
や使用時において繊維が収縮したとしても繊維表面の比
抵抗値の変動が非常に少ない。より具体的には、例えば
ポリエステルでは18質量%以上が好ましく、より好ま
しくは23質量%以上であり、ポリアミドでは18質量
%以上が好ましく、より好ましくは23質量%以上、好
適には30質量%以上である。
【0024】そして、本発明の導電糸は、温湿度が20
℃、20%RHの雰囲気中での比抵抗値が100〜108
Ω・cmであることが好ましい。この範囲の比抵抗値と
することで、電子写真複写機、電子写真プリンター等に
用いられる各種ブラシにより適した繊維とすることがで
きる。特に温湿度が20℃、20%RHの雰囲気中での
比抵抗値が103〜107Ω・cmである場合は、接触帯
電ブラシにより適した繊維とすることができる。ここで
接触帯電ブラシの場合は、特に比抵抗値が10 8Ω・c
mを超えると、感光帯ドラムの表面の均一な帯電を得る
ことが困難となり、一方、100Ω・cm未満の低比抵
抗値の場合は感光帯層にピンホール等の欠陥があった
時、大電流が流入して帯電不良が発生しやすい。
【0025】さらに、本発明の導電糸は、熱水処理前後
の比抵抗値ρb、ρaの比(ρb/ρa)が102以下
であることが好ましい。これについて以下に詳述する。
熱可塑性重合体からなる導電糸は、環境湿度により0.
4〜5%程度の水分を吸着する。したがって、導電糸の
比抵抗値には、導電性微粒子の分散状態と吸着水の比抵
抗値の両者が関係するが、おおむね70%以下の湿度領
域では導電性微粒子の分散状態が主たる要因となる。
【0026】また、導電性微粒子の分散状態は、繊維の
形態が変化することによっても変化する。すなわち、作
成時の熱処理工程や使用環境の温湿度変化によって生じ
る繊維形態の変化が導電性微粒子の分散状態の変化を引
き起こし、比抵抗値の変化を生じさせる。これは、紡糸
時又は延伸時に受けた変形に基づく残留ひずみの開放や
配向分子が最小エネルギー状態に戻ろうとする形態変化
(熱収縮差)が、作成時の熱処理工程や使用環境の温湿
度変化によって誘発されるためだと考えられる。
【0027】一般に、帯電ブラシやクリーナーブラシ
は、導電糸をパイルとして製織した後、円筒面に螺旋状
に巻き付けてブラシとするが、パイルを整えるために、
熱水処理によるヒートセットを行っている。また、前記
のように複写機等に使用すると、使用環境が厳しく、大
きな温湿度変化を受ける。
【0028】通常の方法で紡糸された導電糸の熱水収縮
率は、10〜50%程度と高い。したがって、このよう
な繊維を用いると、たとえブラシにする前の繊維の導電
性微粒子の分散状態が安定していたとしても、ブラシに
してヒートセットした段階や、使用するうちに収縮して
形態が変化することにより、導電性微粒子の分散状態が
変化する。この導電性微粒子の分散状態の変化により、
比抵抗値のばらつきが生じることになる。
【0029】なお、本発明の導電糸の形状によれば、接
触帯電ブラシを作成する際の熱処理工程や使用時におい
て、繊維が収縮し、形態が変化したとしても、隣接する
分割された成分A間の繊維横断面上の距離が5μm以下
であり、かつ成分Aに高濃度に含有されているので、繊
維全体に導電性微粒子が低含有されているものに比べ
て、繊維表面の比抵抗値の変動が非常に少ないものとな
る。
【0030】なお、熱水収縮率は、試料長100cmと
し、JIS−L−1042熱水浸漬法に準じ、得られた
導電糸を80℃の熱水に30分間浸漬させた後、遠心脱水機
で脱水し、次に乾燥(105℃)し、そのときの試料長
L(cm)を測定して、次式にて計算する。 熱水収縮率(%)=〔(100−L)/100〕×10
【0031】また、本発明でいう熱水処理前後の比抵抗
値ρb、ρaの比(ρb/ρa)は次のようにして算出
する。まず、熱水処理は前記のJIS−L−1042熱
水浸漬法に準じ、得られた導電糸を80℃の熱水に30
分間浸漬させた後、遠心脱水機で脱水後乾燥(105
℃)を行う。熱水処理をした糸条と熱水処理をしなかっ
た糸条から、それぞれ長さ方向に沿って、100m毎に
長さ10cmの試験片を20個採取する。この10cm
の試験片の間(両端間)に500Vの電圧をかけて、測
定環境20℃、20%RHの条件下、東亜電波工業社製
の抵抗値測定機「SM−10E」を使用して、熱水処理
前の電気抵抗値Rb、熱水処理後の電気抵抗値Ra(Ω
/cm)を求める。なお、試料片20個の平均値とす
る。
【0032】次に、得られた電気抵抗値Rb、Ra(Ω
/cm)を以下に示す式(1)、(2)に代入し、比抵
抗値(ρb、ρa(Ω・cm))を求める。 比抵抗値(ρb)=Rb(Ω/cm)×S・・・(1) 比抵抗値(ρa)=Ra(Ω/cm)×S・・・(2) 式中、Sは試験片の断面積(cm2)を示す。ただし、
ここではS=Dtex/(1000000×d)であり、D
texとは導電糸の総デシテックス数をそのまま重量
(g)として読みかえた値を示し、dは繊維の密度を示
す。
【0033】また、本発明の導電糸は、糸長方向での比
抵抗値のばらつきが標準偏差0.3以下であることが好
ましい。この比抵抗値のばらつきは比抵抗値を対数値表
示した値の標準偏差であり、前記した条件で比抵抗値を
糸長方向に500ポイント測定し、各測定データを対数
変換し、これらの値の標準偏差を算出するものである。
【0034】標準偏差が0.3を超えると、糸長方向で
の比抵抗値のばらつきが大きくなり、画像障害の原因と
なりやすい。
【0035】さらに、本発明の導電糸は単糸繊度が1
0.0dtex以下であることが好ましく、より好ましくは
8.0dtex以下、さらに好ましくは5.0dtex以下であ
る。すなわち、本発明の導電糸を接触帯電ブラシ等に用
いる場合、単糸繊度が小さいほど感光体ドラム等との接
触状態が密で均一となり、これにより除電をより均一に
行うことができ、安定かつ良好な画像が得られる。単糸
繊度が10.0dtexを超える場合、この効果が得られ
ず、鮮明な画像が得られにくくなったり、複写回数が多
くなるにつれて複写物に筋状の汚れが生じやすくなる。
【0036】また、本発明の導電糸の横断面形状は特に
限定されるものではなく、丸断面形状のもののみなら
ず、四角や三角の多角形のものや中空のものでもよい。
【0037】次に、本発明の導電糸の製造方法を説明す
る。本発明の導電糸は、上記のようなカーボンブラック
等の導電性微粒子又は導電性微粒子を含むマスターチッ
プと熱可塑性重合体を、例えばエクストルーダーで混練
・溶融し、通常用いられる複合紡糸口金より押し出し、
冷却・延伸を行うなどの公知の方法で製造することがで
きる。
【0038】導電性微粒子と熱可塑性重合体との混練・
溶融方法としては、導電性微粒子を例えば、二軸エクス
トルーダー等を用いて直接混練することもできるが、一
旦導電性微粒子を高濃度に含有したマスターチップを作
製してから混練するほうが、より均一な混練ができるた
め好ましい。
【0039】また、マスターチップとして用いられる樹
脂は、導電糸(鞘部)と同じ物性(例えば分子量)を有
するものを用いることができるが、導電性微粒子の高濃
度化の観点から上記樹脂の共重合体や導電糸に用いられ
る樹脂よりも低分子量のものがより好ましい。例えば、
イソフタル酸、スルホイソフタル酸、ポリエチレングリ
コール等を0.3〜30モル%共重合したポリエステル
やポリアミド等が挙げられる。また、低分子量のものと
しては、主体樹脂の相対粘度比で40〜100%程度の
ものが好ましく、さらに好ましくは45〜80%程度の
ものである。
【0040】溶融紡糸の方法は特に限定するものではな
く、常法によって行うことができる。紡糸温度は用いる
樹脂の融点Tmに対して、Tm+10〜Tm+80℃の
範囲とすることが好ましい。紡糸温度が高ぎると熱可塑
性重合体が熱分解を起こし、円滑な紡糸が困難になると
ともに得られるフィラメントの物性が劣ったものとな
る。また紡糸温度が低すぎると未溶解物等が残るために
均一な混練ができなくなるため好ましくない。
【0041】紡出されたフィラメントは、0〜100℃、好
ましくは15〜40℃の冷却風により冷却される。冷却温度
をあまり低くすると温度管理及び作業性等に困難をきた
し、高すぎると冷却不足となり最終的に得られるフィラ
メントの糸質性能が劣ったものとなる。
【0042】冷却後の糸条に付与する紡糸油剤において
は、ポリアミン系カチオン界面活性剤〔例えば、「サフ
ァノール503−D(三洋化成株式会社製)」、「CA
−200(正研化工株式会社製)」、多価アルコール系
非イオン界面活性剤〔例えば、「サンソフターNP−2
5(日華化学株式会社製)」、「PS−9(松本油脂株
式会社製)」、「KT2A(松本油脂株式会社製)」、
ノニオン界面活性剤〔例えば「KE−4001(竹本油
脂株式会社製)」、「KE−4002(竹本油脂株式会
社製)」、「UTN−2631(竹本油脂株式会社
製)」〕等が好適に用いられる。
【0043】次いで、冷却固化したフィラメントは、50
0〜1500m/分で一旦巻き取った後に延伸される。延伸
は一段又は二段以上の多段で行うことができるが、延伸
倍率は、最大延伸倍率の50〜80%で延伸することが好ま
しい。延伸する際の延伸温度としては、延伸前ローラ温
度20〜100℃、ヒータープレート温度120〜18
0℃とすると好適に延伸することができる。
【0044】これらの紡糸・延伸方法で得られた導電糸
の熱水処理前後の比抵抗値の比が102を超えるとき
は、以下に示す加熱蒸気処理と乾燥熱処理を複数回繰り
返し行うことにより、本発明の導電糸を得ることができ
る。
【0045】加熱蒸気処理条件は特に限定されるもので
はないが、加熱飽和蒸気で80℃〜180℃で処理する
ことが好ましい。乾燥方法も特に限定されるものではな
く、熱風乾燥機や真空乾燥機などの通常の乾燥機を用
い、60〜110℃で乾燥することが好ましい。
【0046】これら加熱蒸気処理及び乾燥熱処理するこ
とによって収縮が生じ、多数の新接合点あるいは部分的
な再結晶が生じる。この熱処理によって収縮率が低下
し、寸法安定性が付与される。
【0047】なお、導電糸に架橋結合や樹脂処理を施す
ことによって、寸法安定性を付与し、本発明の導電糸を
得ることもできる。しかしながら、帯電ドラムの汚染の
問題があるため、前記のような熱水処理と乾燥を複数回
繰り返す方法を採用することが好ましい。
【0048】以上のように、本発明の導電糸は、導電性
微粒子を含有する複数の成分Aが繊維表面部分に存在す
るので導電性能を十分に高くすることができ、かつその
成分間の距離が短いので、繊維表面の比抵抗値が均一と
なり、感光ドラムと接触したときの比抵抗値も均一とな
り、前記したような溶融紡糸後の糸条に加熱蒸気処理や
乾燥熱処理を施さなくても、接触帯電ブラシ用途に用い
ることができる。すなわち、ブラシにする際の熱処理工
程や長期間の使用における繊維形態の変化が生じても繊
維表面の比抵抗値の変化が小さいので、画像障害のない
良好な画像を得ることができる。なお、本発明の導電糸
においても溶融紡糸後の糸条に、例えば加熱蒸気処理や
乾燥熱処理を施すことによって、熱水処理前後の比抵抗
値ρb、ρaの比(ρb/ρa)が102以下とし、ま
た、熱水収縮率を10%以下とすることによって、さら
に繊維表面の比抵抗値のばらつきが小さい繊維とするこ
とができ、ブラシ用繊維としてより好ましいものとな
る。
【0049】
【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明す
る。実施例中の導電糸の比抵抗値、比抵抗値の比、比抵
抗値の糸長方向のばらつき、隣接した成分A間の距離は
前記の方法で測定したものであり、ばらつき以外はn数
20の平均値とした。なお、比抵抗値、比抵抗値の比は
対数値で示した。また、画像評価は次のように行ったも
のである。得られた導電糸をパイル密度を1000本/
2.54cm、パイル長7mm、生地幅15mmのパイルテー
プとして製織した後、直径6mmの円筒面に螺旋状に巻
き付けてブラシを作成した。その後、飽和蒸気で5分間
起毛の熱処理をした。このブラシを25℃、20%RH
の雰囲気中に1時間放置後、80℃、60%RHの雰囲
気中に30分放置する。これを1処理として5回繰り返
し、処理前とそれぞれの処理後のブラシを電子複写機に
使用して1000枚の複写を行い、その画像の鮮明さを
5を最も優れているものとして5段階で評価した。
【0050】実施例1 熱可塑性重合体成分Aとして相対粘度2.50(96質量%硫
酸を溶媒として、濃度1g/dl、温度25℃で測定)のナイロ
ン6チップに、カーボンブラック濃度が30質量%となる
ようにマスターチップ(カーホ゛ンフ゛ラックを35質量%含有するナイ
ロン6(相対粘度1.95))をブレンドしたものを用い、熱可塑
性重合体成分Bには相対粘度2.50(96質量%硫酸を溶媒
として、濃度1g/dl、温度25℃で測定)のナイロン6チッ
プを用い、A/B質量比が50/50となるように図1
(a)の繊維断面をもつ複合糸を、紡糸温度255℃、孔
径0.35mmの紡糸孔を48個有する複合紡糸口金より吐
出させて、捲取速度600m/分で未延伸糸を巻取っ
た。次いで得られた未延伸糸を延伸機に供給し、表面温
度30℃のローラと150℃のホットプレートを介し
て、最大延伸倍率の60%(延伸倍率2.4倍)で延伸
後、170℃のサドル型ヒーターにて弛緩熱処理を行
い、220dtex/48fのナイロン導電糸を得た。
【0051】実施例2〜6、比較例1〜4 熱可塑性重合体成分A中の導電性微粒子含有量、成分A
/B質量比、断面形状を表1に示すように変更した以外
は、実施例1と同様にして、紡糸・延伸・弛緩熱処理を
行って導電糸を得、ブラシを作成した。
【0052】実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた
導電糸の物性値及び作成したブラシでの画像評価の結果
を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】表1から明らかなように、実施例1〜6で
得られた導電糸は、隣接する熱可塑性重合体A間の距離
が5μm以下であり、また熱可塑性重合体A中の導電性
微粒子含有量が18質量%以上であるため、熱水処理前
後の比抵抗値の比が小さく、糸長方向の比抵抗値のばら
つきも小さいので、特に接触帯電用ブラシとして用いた
場合に、感光ドラムを均一に帯電することができるため
に、鮮明な画像を得ることができ、さらに長期間の使用
においても安定した比抵抗値を示し、温湿度変化が大き
い条件下で長期間使用しても画像が良好であった。一
方、比較例1〜4で得られた導電糸は、隣接する成分A
間の距離が5μmを超えるため、感光ドラムに均一に帯
電することができず、鮮明な画像を得ることができなか
った。特に比較例4においては、成分A中の導電性微粒
子の含有量が少なすぎるため、熱水処理前後の比抵抗値
の比が大きくなり、長期間の使用においては安定した比
抵抗値を示めさず、画像評価が劣るものであった。
【0055】
【発明の効果】本発明の導電糸は、繊維表面に露出した
熱可塑性重合体成分の隣接間の距離が5μm以下である
ため、感光ドラムを均一に帯電又は除電することができ
鮮明な画像を得ることができる。さらには、熱水処理前
後の比抵抗値の比が小さく、糸長方向の比抵抗値のバラ
ツキが小さいものであるため、温湿度変化が大きい条件
下で長期間使用しても安定した比抵抗値を示し、良好な
画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)は、本発明の導電糸の断面形状
の一実施態様を示す断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G03G 21/06 G03G 21/00 314 4L041 21/10 340 (72)発明者 阿部 清二 京都府宇治市宇治戸ノ内5 ユニチカファ イバー株式会社宇治工場内 Fターム(参考) 2H035 AA14 2H077 AD05 DB14 EA18 FA13 2H134 GA01 GB01 HB01 HB19 KD04 KD12 KD14 2H200 FA16 HA02 HB07 HB45 HB46 MA02 MA17 MB01 MB06 3F101 AA02 AA04 LA01 LB01 4L041 AA07 BA04 BA05 BA12 BC09 CA21 CB02 DD01 DD21

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性微粒子を含有する熱可塑性重合体
    成分Aと熱可塑性重合体成分Bとからなり、成分Aが複
    数の領域に分割されて繊維表面に露出し、成分Bが繊維
    横断面の中心部を含む連続した一つの領域を占める導電
    糸であって、隣接する分割された成分A間の繊維横断面
    上の距離が5μm以下であることを特徴とする導電糸。
  2. 【請求項2】 温湿度が20℃、20%RHの雰囲気中
    での比抵抗値が10 0〜108Ω・cmである請求項1記
    載の導電糸。
  3. 【請求項3】 熱水処理前後の比抵抗値ρb、ρaの比
    (ρb/ρa)が10 2以下である請求項1又は2記載
    の導電糸。
  4. 【請求項4】 熱可塑性重合体成分A中の導電性微粒子
    の含有量が18質量%以上である請求項1、2又は3記
    載の導電糸。
  5. 【請求項5】 糸長方向の比抵抗値の対数値のばらつき
    が標準偏差0.3以下である請求項1、2、3又は4記
    載の導電糸。
  6. 【請求項6】 単糸繊度が10.0dtex以下である請求
    項1、2、3、4又は5記載の導電糸。
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