JP2007217806A - インクジェットパイル捺染法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】パイル長3mm以上、パイル層の繊維嵩密度0.05g/cm3 以上のパイル布帛に呼び水11を付与して保水状態にあるパイル面にインクジェット方式によってインク12を印捺すると共に、その呼び水11による保水状態においてインク12の印捺面に追い水13を付与し、その追い水13によってパイル層のパイル繊維間14・14に飛着したインク12を稀釈して呼び水11と追い水13との混合インクとし、加熱してインク12の着色成分をパイル繊維14に固定する。
【選択図】図1
Description
このようにパイルとパイルの間の隙間から未着色のパイル繊維が現れる現象は、「グリンニング」と称される。
呼び水に配合される界面活性剤には、脂肪酸ナトリウム塩、アルキル硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等が使用される。
呼び水に配合される水溶性有機溶剤には、メタノール、エタノール、イソブチレンアルコール、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、チオグリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等が使用される。
呼び水に配合される水溶性高分子には、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、多糖類、澱粉等が使用される。
呼び水は、パッド法、スプレー法、コーティング法、スクリーン(ロータリー・フラット)プリント法によってパイル布帛に付与され、その付与量はニップ法、バキューム法等によって調整される。
インクジェット方式としては、静電容量方式、超音波振動方式、サーマルインクジェット方式、ピエゾ方式が知られている。
しかし、呼び水を付与したからと言って飛着したインクが即座にパイル層に奥深く浸透する訳ではなく、その吐出量を多くすれば飛着したインクがパイル面で流動し、それが滲み出て印捺型際が不鮮明になる。
そして水溶性高分子を配合することによって呼び水によるパイル層の保湿性を高めることが出来るとしても、水溶性高分子によって付粘された呼び水がパイル層内部に防水層を構成することになるので、却ってインクがパイル層に奥深く浸透し難くなる。
パイル布帛の裏面にバキュームを当てて印捺したインクをパイル層に奥深く吸い込む方法(例えば、特許文献5参照)は、パイル層の繊維嵩密度が0.05g/cm3 未満の簡易敷物用パイル布帛には有効であるとしても、パイル層の繊維嵩密度が0.05g/cm3 を超える重厚なパイル布帛には殆ど効果がなく、塩化ビニル樹脂等による重厚な裏打層が裏打ちされたタイルカーペットでは裏打層に遮られるので、バキュームによってインクをパイル層に吸い込むことは出来ない。
又、捺染パイル布帛におけるグリンニングを解消する方法として、パイル布帛の裏面から地染め液を付与してパイル層の底部を構成しているパイルの根元を濃色に染色し、グリンニングを目立ち難いようにする方法もあるが、染色工程がパイルの根元の染色とパイル面の捺染との二工程になるのでコスト高になるし、グリンニングを根本的に解消することにはならない。
そこで本発明は、グリンニングを解消し、インクジェット捺染によって重厚なパイル布帛に柄際が鮮鋭で複雑繊細な図柄を描出することを目的とする。
従って、従来技術に従って含水率が50%になる程度に呼び水の付与された繊維嵩密度0.20g/cm3 のパイル層の呼び水を含む嵩密度は0.30g/cm3 となり、その微細な繊維間隙間のパイル層に占める比率は70容積%になる。
インクジェット方式におけるインクの噴出量は、柄際の周囲にインクが滲み出ない程度に抑えられており、又、飛着したインクが直ちにパイル層に奥深く浸透して70容積%を占めるパイル繊維間の隙間を充填する訳ではなく、それ故にグリンニングの問題が発生するのであるから、インク12は、パイル層の上層のパイル繊維間14・14の隙間に突き刺さるように飛着する(図1−a)。
従って、その飛着時にはインクに充填されないパイル繊維間の隙間がパイル層内部に残り、その後、予め付与された呼び水11に導かれるようにインクがパイル層内部のパイル繊維間の隙間へと浸透し、インクが内部に浸透するにつれて隙間15がパイル層の上層のパイル繊維間14・14に現れ、パイル面は粗面となる(図1−b)。
追い水13が呼び水11による保水状態においてインク12の印捺面に付与されるので、インク12は、パイル繊維間14・14の隙間15において呼び水11と追い水13に挟まれてパイル層の表面側と内部側との両側で溶け出して稀釈され(図1−d)、追い水13と呼び水11との混合溶液となり、その着色成分は、呼び水の一成分としてパイルの根元へと移行し付着することになり、その結果、グリンニングが解消される。
この呼び水11とインク12と追い水13との混合溶液は、パイル層内部において生成されるので、その混合過程において混合溶液が印捺形際の周囲に滲み出すことがなく、インクの印捺型際が鮮鋭な図柄が描出される。
しかし、パイル層の繊維嵩密度が緻密でも、1000dtexを超える人工芝生用パイル布帛のパイルのようにパイル繊維の繊度が太ければ、パイル繊維間14・14の隙間15も粗くなり、インクがパイル層内部に浸透し易くなるので、捺染パイル面でのグリンニングが格別問題視されない。従って、本発明は、パイル繊維の繊度が22dtex以下であり、パイル層の繊維嵩密度が緻密でパイル繊維間14・14の隙間15が微細となるパイル層の繊維嵩密度が0.08g/cm3 以上となり、パイル長が5mm以上で概して10mm前後となるカーペット用パイル布帛のインクジェット捺染に有効である。
特に、羊毛繊維は、吸水性と保湿性に富む繊維であるが、その吸水速度が遅く、インクが付着し難くパイル繊維間14・14に浸透し難い。従って、本発明は、羊毛繊維に成るパイル布帛のインクジェット捺染に特に有効である。
従って、本発明は、パイルを係止するベース層16が分厚い地組織で構成されたウイルトンカーペットや塩化ビニル樹脂等による重厚な裏打層が裏打ちされたタフテッドカーペット等のタイルカーペット用パイル布帛のインクジェット捺染に特に有効である。
従って、本発明の適用されるパイル層は、羊毛繊維だけで構成されたものに限定されるものではなく、パイル繊維は、ナイロンやアクリル繊維、ポリエステル繊維、レーヨンその他の化学繊維や木綿繊維、絹繊維等、羊毛繊維以外の繊維によって構成されたものであってもよく、又、それらの繊維を混用することも出来る。
本発明において、「パイル層の繊維嵩密度0.05g/cm3 以上」或いは「パイル層の繊維嵩密度が0.08g/cm3 以上」と言う「繊維嵩密度」は、実際にパイル層を構成しているパイル繊維14の比重を「1」として換算された繊維嵩密度を意味する。
具体的に説明すると、比重1.32の羊毛繊維に成るパイル層の実測した嵩密度が0.106g/cm3 であれば、そのパイル層の本発明に言う「繊維嵩密度」は0.08g/cm3 となり、又、比重1.17のアクリル繊維に成るパイル層の実測した嵩密度が0.094g/cm3 であれば、そのパイル層の本発明に言う「繊維嵩密度」は0.08g/cm3 となる。
追い水13は、インク12と同様にインクジェット方式によってパイル面に付与するとよい。追い水13によってインク12が流動して印捺形際の周囲に滲み出さないようにするためには、追い水13のパイル層への付与量を100g/m2 前後とし、追い水13によってパイル層の嵩密度が0.02g/cm3 前後増えるようにするとよい。
特に、これらの機能性成分をインク12にではなく追い水13に配合するときは、これらの機能性成分によってインク12の粘度や延粘性(チクソトロピカル性)が損なわれたり、インク吐出ノズルの目詰まり等の不都合が回避されるだけではなく、その有効成分がパイル層の表層に付与されるので効果的である。
追い水13の付与後の加熱処理は、インクジェット方式の常法に従って行われ、適宜洗浄処理と乾燥処理が行われる。
こうして捺染されたタフテッドパイル布帛のパイル層では、インク12はベース層16(パイルの根元)に至るまで浸透しており、グリンニングは認められなかった。
12:インク
13:追い水
14:パイル繊維
15:パイル繊維間の隙間
16:ベース層
Claims (3)
- パイル長3mm以上、パイル層の繊維嵩密度0.05g/cm3 以上のパイル布帛に呼び水(11)を付与して保水状態にあるパイル面にインクジェット方式によってインク(12)を印捺すると共に、その呼び水(11)による保水状態においてインク(12)の印捺面に追い水(13)を付与し、その追い水(13)によってパイル層のパイル繊維間(14・14)に飛着したインク(12)を稀釈して呼び水(11)と追い水(13)との混合インクとし、加熱してインク(12)の着色成分をパイル繊維(14)に固定するインクジェットパイル捺染法。
- パイル繊維(14)の繊度が22dtex以下、パイル層の繊維嵩密度が0.08g/cm3 以上である前掲請求項1に記載のインクジェットパイル捺染法。
- パイル繊維(14)が羊毛繊維である前掲請求項1と2の何れかに記載のインクジェットパイル捺染法。
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