JP2007217356A - 海洋深層水濃縮物含有組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】細胞賦活化作用、特にサイトカインVEGF、KGF産生促進作用に優れた組成物(化粧品、皮膚外用剤、経口剤又は食品)および該組成物の製造方法の提供。
【解決手段】海洋深層水を、(1) 硫酸イオンを90%以上除去し得るナノフィルター膜(NF膜)で処理する工程、及び(2) 工程(1)で得たNF膜透過水を濃縮してNF膜透過水濃縮物を得る工程を含む製造方法であり、該濃縮物はMgイオン10,000〜100,000mg/L、Caイオン4,000〜40,000mg/L、硫酸イオン0〜1,000mg/Lを含有し、析出物がない組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、海洋深層水を濃縮した組成物に関し、特に海洋深層水をナノフィルターで処理したNF膜透過水をさらに濃縮したNF膜透過水濃縮物を含む組成物に関する。本発明の組成物は細胞賦活化作用、特にサイトカインVEGF及びKGF産生促進作用に優れ、化粧品、皮膚外用剤、経口剤又は食品として有用である。
わが国は海に囲まれた島国であり、海洋由来の資源は重要な開発対象である。特に近年、概ね200m以深の海水である海洋深層水が注目を集めている。海洋深層水は光の届かない深海の海水で、表層の海水よりも水温が低く、はるかに清浄で、1年を通じて水質が殆ど変動しないという特徴を有する。従って海洋深層水は清浄なうえ、安定してミネラル分を含むが、濃縮すると各種ミネラル分が析出してしまう。そこで、海洋深層水を含む海水について特殊な濃縮方法が編み出され、また、そのミネラル分の有効性についても研究がなされている。
特許文献1は、海水の濃縮物に木炭粉と酢酸を添加することを含む、結晶性固体粉末を得る方法、並びに該粉末を使用した肝炎、高血圧、腫瘍、アレルギー、アトピー、鼻炎等の治療剤及び/又は予防剤について記載する。
特許文献2は、アニオンリッチな膜及びカチオンリッチな膜を組み合わせて用い、かつ膜の使用順序を変化させることで処理水中の含有イオン種が変化することを記載する。
特許文献3は、海水に凝集剤(塩化第二鉄)を添加し、高圧ポンプ及び逆浸透膜分離装置で得た濃縮水を、圧力下ナノ濾過膜で数回濾過し、高ミネラル含有液(NaCl=12%、CaCl2=31%、MgCl2=55%)を得る方法及び装置について記載する。
特許文献4は、海洋深層水を電気透析し更にナノ濾過膜で処理して脱塩して二価の陽イオンに富んだ処理水を得る方法及び該処理水を配合した清涼飲料水について記載する。
特許文献5は、海洋水を透析及び分子篩にかけて塩分を完全に除去すること、及び該処理水のチロシナーゼ阻害作用及び育毛作用について記載する。
特許文献6は、RO膜とNF膜を組み合わせて用い、処理条件を変えたときの透過水及び濃縮水中のイオン濃度について記載し、該透過水中のMgイオンは大きく減少している。
特許文献7は、海水原液を、ナノ濾過膜、次いで逆浸透膜に通すことを特徴とする、海水の淡水化方法について記載する。
イオン交換膜法、天日法、塩田法又は蒸発法により、海水から食塩を晶出させた後の液である、ニガリを配合した化粧品等に関する記載もある(特許文献8〜10)。
特許3247620号 (特開平10−120578号公報) 特開2002−85944号公報 特開2002−172392号公報 特開2002−191331号公報 特開2003−12488号公報 特開2004−243262号公報 特開平9−141260号公報 特許3559507号公報 特開2004−51596号公報 特開2004−224745号公報
海洋深層水の濃縮方法及びその濃縮の程度によって、濃縮物中の成分比及び成分量には大きな差がでる。一方、老化肌や荒れ肌の修復には、サイトカインの分泌が密接な関わりをもっていることが知られている。
本発明者は、特定の方法で濃縮した海洋深層水にサイトカインの産生及び線維芽細胞の増殖を伴う細胞賦活作用を見出し、その濃縮の度合を変化させることにより該細胞賦活作用が変化することを見出し、さらに、その細胞賦活作用は濃縮した海洋深層水中の特定の主要成分のみを含有する組成物よりも高い作用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の工程(1)及び(2):
(1) 硫酸イオンを90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上除去し得るナノフィルター膜で海洋深層水を処理する工程;及び
(2) 工程(1)で得たNF膜透過水を濃縮してNF膜透過水濃縮物を得る工程;
を含む、皮膚細胞を賦活するための、好ましくはサイトカイン産生を促進することにより皮膚細胞を賦活するための、より好ましくはVEGF及び/若しくはKGF産生を促進することにより皮膚細胞を賦活するための、並びに/又は線維芽細胞の増殖を促進することにより皮膚細胞を賦活するための組成物の製造方法を提供する。
本明細書中において、「海洋深層水」とは、特別の場合を除き、太陽光の届かない水深200m以深にある海水を指す。海洋深層水は、富栄養性(表層の海水に比べて窒素、リン、珪酸などの無機栄養塩を豊富に含む)、ミネラル特性(Ca、Fe、Zn、Na、Mgなどの微量元素やミネラルをバランス良く含有する)、清浄性(地上の細菌、化学物質による汚染が少ない)、低温安定性(水温が表層よりかなり低く、通年にわたって温度変化が少ない)等の特徴を有し、これらの特徴は単なる海水と比べて本発明の組成物を不純物の混在が少なく安定した成分比で得るのに有益である。海洋深層水は、取水が地形上有利な、北海道、岩手県、宮城県、山形県、新潟県、富山県、石川県、福井県、千葉県、神奈川県、静岡県、三重県、和歌山県、兵庫県、高知県、鹿児島県、沖縄県等で得たものを利用することができる。表1に示すように、その成分は、採取場所により大きく異なることはないため、その採取場所は特に限定されないが、本明細書中では、特に言及のない限り、鹿児島県与論島沖で取水した海洋深層水を用いる。
海洋深層水の取水は、当業者によく知られた方法を用いて行うことが出来る。例えば各種の船舶を用いて取水ポイントまで移動し、取水管を海中に延伸させ、ポンプでくみ上げて船上のタンクへ貯水する洋上取水による方法、沿岸部に取水施設を設け、取水管を海底に沿って取水ポイントまで延伸させ、ポンプで直接海から連続的に取水する方法等を用いることが出来る。海洋深層水の濾過は、水温が0〜50℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20℃〜30℃で実施することができる。
本明細書中において、「ナノフィルター膜」(本明細書中において、NF膜、ナノ濾過膜ともいう)とは、細孔を有し、イオン、低分子、一価イオンを通すが、多価イオン、農薬、有機物、高分子、ウイルス、コロイド、粘土、大腸菌及びバクテリアを少なくとも一部は除去することができる膜を指す。本発明の製造方法には、孔径が0.1〜1nm、好ましくは0.2〜0.9nm、より好ましくは0.3〜0.8nmであるNF膜を用いることができる。孔径は、所望のイオン除去能が得られる範囲であることが好ましい。RO膜のようにNF膜より孔径が小さいと、水しか透過せず、透過水を濃縮しても所望の濃縮物が得られない。また、UF膜のようにNF膜より孔径が大きくなると、単独で存在するイオンは全て透過し、濃縮すると通常のニガリと塩が出来るため、NF膜を用いることが好ましい。
本発明の製造方法で用いるNF膜は、特に二価のイオンの分離能が高い膜であり、より好ましくは、二価イオンの分離率が一価イオンの分離率より高い膜である。この二価イオンの分離能は、ナノフィルターの細孔による分画性能と表面に荷電を有することによる電気的反発力との複合作用よると考えられる。
NF膜による処理条件は、濃縮水量、透過水量等から当業者であれば適宜条件を設定することができ、例えば、以下の実施例1中に記載した手法により設定することができる。通常、市販のNF膜には、運転条件の標準範囲が設定されており、これを目安として以下の点に特に留意しながら各運転条件を決定することができる。運転圧力は、濃縮水量と透過水量により必然的に決まり、本発明の製造方法においては、海洋深層水の塩濃度が高いために標準範囲よりも高い運転圧力となり得る。例えば、NF膜にかかる圧力が0.3〜2.0Mpaの条件下で本発明の製造方法を実施することができる。
また、濃縮水量を減らし透過水量を増やして透過水の回収率を上げるには、濃縮水量/透過水量比を小さくする必要があるため、濃縮水量/透過水量比を標準範囲より小さく設定する場合もある。このとき、一定流速を確保しなければ装置の連続的な稼動が困難であり、一定流速を確保できることで目的とする水質を得ることが出来るという観点から、膜面上の流速を低下させることが出来なければ、濃縮水の一部を海洋深層水(原水)に返送して流速を確保する必要がある。しかし原水の塩濃度が上昇するために透過水の塩除去率が低下する場合、目的とする一定の水質の透過水が得られないことがある。例えば、濃縮水量/透過水量比 = 5の条件下で本発明の製造方法を実施することができる。
NF膜は、平膜をメッシュスペーサー及び流路剤等と透過水流路用パイプの周囲に巻いてスパイラル型のエレメントとしたり、チューブラー型、プレートアンドフレーム型エレメントとしたりすることもできる。中空糸膜を様々な形状に束ねた型のエレメントとすることも出来る。このエレメントを圧力容器に収納し、例えば、水供給口、透過水出口、濃縮水出口等を備えたモジュールとして使用する。該モジュールを複数用いて2次元又は3次元のモジュールユニットを構成することも出来る。同一又は異なるフィルターを有するモジュールを並列に組み合わせて多段階濾過の出来るモジュール配列を構成することもできる。
「硫酸イオンを90%以上除去」(好ましくは92%以上除去、より好ましくは95%以上除去、さらにより好ましくは99%以上除去)するとは、NF膜透過水の含有する単位当たりの硫酸イオンの量を海洋深層水(原水)の含有する単位当たりの硫酸イオンの量から引いた値を、原水の含有する単位当たりの硫酸イオンの量で割った値に100をかけて算出した値が、90以上(好ましくは92以上、より好ましくは95以上、さらにより好ましくは99以上)であることをいう。または、市販のNF膜には基本仕様として、基本処理条件下における硫酸イオン除去率が記載されており、この記載値が90以上(好ましくは92以上、より好ましくは95以上、さらにより好ましくは99以上)であることをいう。一定の運転条件で使用する場合、一定の除去率が得られる。硫酸イオンを除去することにより、濃縮の際Mgイオン、Caイオン等のMgSO4、CaSO4等としての析出を防ぐことが出来る。
NF膜の材質は所望のイオン除去能を有する限り限定されず、例えば架橋ポリアミド系複合膜で出来た膜を用いることが出来る。
「ナノフィルター膜で海洋深層水を処理する」とは、海洋深層水をナノフィルター膜を透過させ、ナノフィルター膜を透過した水(本明細書中において、「NF膜透過水」という。)及びナノフィルター膜を透過しない水(本明細書中において、「NF膜濃縮水」という。)とに分離することをいう。NF膜透過水とNF膜濃縮水とでは、例えば、後述の表2-1及び表2-2に示すように、各種イオンの濃度が大きく異なる。一価のイオンであるNa、K及びClについては原水中の濃度と透過水中の濃度との差は10%未満で、一価のイオンはナノフィルター膜を透過する。一方、二価のイオンであるMg、Ca、SO4については原水中の濃度と透過水中の濃度との差は10%以上であり、特にMgイオンについては45%以上減、さらにSO4イオンについては92%以上減少していることから、二価イオンの除去率は高い。表2-4に示すように、電気伝導度にも差がある。
上記の処理に際し、水圧を変化させることもまた有用である。処理の際の水圧は、ナノフィルター膜の種類により異なるが、所望のイオン除去能を発揮できれば特に限定されない。例えば、18トンの海洋深層水をナノフィルター膜で処理した場合、NF膜透過水3トンとNF膜濃縮水15トンを得ることができる圧力(例えば12kg/cm3)をかけることが出来る。
上記処理により得たNF膜透過水を更に濃縮する際には、当業者によく知られた濃縮方法を用いることが出来る。例えば、減圧濃縮、加熱濃縮等を用いることが出来る。常圧(1気圧、100℃以上で加熱)にてNF膜透過水を濃縮すると、水分蒸発効率が悪く作業効率が悪くなり、また、突沸による飛散で濃縮中の損失が多くなり、濃縮物の回収率が悪くなる。さらに、加熱により酸化物を形成してしまう鉄イオンや亜鉛イオン等の微量成分の沈殿を可能な限り防ぐため、好ましくは減圧濃縮を用いることができる。
NF膜透過水を濃縮した物を「NF膜透過水濃縮物」という。本明細書中における濃縮倍率は濃縮前の重量を濃縮後の重量で割った値である。
NF膜透過水の濃縮においては、組成物の用途によりその濃縮倍率を様々に変化させることが出来る。濃縮時に生じた沈殿物、結晶は、通常濾過により除去する。濃縮工程は、例えば、NF膜透過水を減圧濃縮し、濾過にて固液分離して液体を得る。この操作を1〜5回繰り返し、得られた液体をNF膜透過水濃縮物とする。
水溶液中で一価と二価の陽イオンが共存する場合、濃縮により水が少なくなると、水分子との結合力が大きい二価の陽イオンが優先的に水分子と結合し、一価の陽イオンが陰イオンと結合し、塩として析出してくる。従ってこのように析出した結晶を濾過する工程も濃縮に含まれ、濃縮物の濃縮倍率が大きくなるにつれて、例えば図2に示すようにNa、K等の一価の陽イオン濃度が低下する。透過水を濃縮する工程を経て本発明の組成物を得るという観点からは、透過水及び濃縮物中の主要分析値(例えば、Na、K、Mg、Caイオン、屈折率等)はロットぶれがないことが好ましい。
また、上記の皮膚細胞を賦活するための組成物は、好ましくはサイトカイン産生を促進することにより皮膚細胞を賦活するためのものであり、より好ましくはVEGF及び/若しくはKGF産生を促進することにより皮膚細胞を賦活するためのものであり、並びに/又は、線維芽細胞の増殖を促進することにより皮膚細胞を賦活するためのものである。
本発明はまた、上記のNF膜透過水のBrixが2.8〜3.6、好ましくは3.0〜3.4、Mgイオン濃度が300〜900mg/L、好ましくは400〜800mg/L、より好ましくは500〜700mg/L、Caイオン濃度が200〜600mg/L、好ましくは250〜500mg/L、より好ましくは300〜400mg/L、及びSO4イオン濃度が0〜300mg/L、好ましくは200mg/L以下、より好ましくは100mg/L以下であり、並びに、上記のNF膜透過水濃縮物のBrixが30.0〜55.0、好ましくは40.0〜50.0、Mgイオン濃度が10,000〜100,000mg/L、好ましくは12,000〜80,000mg/L、より好ましくは40,000〜80,000mg/L、さらにより好ましくは45,000〜75,000mg/L、Caイオン濃度が4,000〜40,000mg/L、好ましくは4,800〜35,000mg/L、より好ましくは20,000〜33,000mg/L、さらにより好ましくは23,000〜30,000mg/L、及びSO4イオン濃度が0〜1,000mg/L、好ましくは600mg/L以下、より好ましくは300mg/L以下、さらにより好ましくは100mg/L以下であり、Caイオン濃度:Mgイオン濃度 = 1:0.25〜1:4、好ましくは1:1〜1:3.5、より好ましくは1:2〜1:3、更に特定すれば1:2.5である、上記の製造方法を提供する。NF膜透過水濃縮物中において、Na:K:Mg:Ca = 0.7〜1.3:1.0〜1.3:2.4〜2.8:1.0、好ましくはNa:K:Mg:Ca = 0.8:1.1:2.5:1.0である上記の製造方法もまた提供する。このようなイオン組成の濃縮物は、皮膚細胞賦活作用に優れる。
例えば、NF膜透過水のBrixが2.8〜3.6であるとは、NF膜で海洋深層水を処理した際にNF膜透過水のBrixが2.8〜3.6の範囲になったことを指標に、続く濃縮工程にNF膜透過水を移すことをも意味する。同様に、NF膜透過水濃縮物のBrixが30.0〜55.0であるとは、NF膜透過水の濃縮に際してBrixが30.0〜55.0の範囲になったことを指標に濃縮工程を終了することを意味する。Brix以外の他のイオン濃度等についても同様に、NF膜処理、及び濃縮の際の終点の指標とすることをも意味している。
Brix及び各イオンの濃度は、当業者によく知られた手法で測定することが出来る。例えば、Brixは、手持屈折計(ATAGO社製、Brix 0〜30)を用いて測定することが出来る。各イオンの濃度はイオン分析計IA-200(東亜ディーケーケー社製、イオンクロマトグラフ法)にて10〜40000倍に適宜純水にて希釈して陽イオン及び陰イオンを測定することができる。各イオン濃度は、例えば、ICP発光分光分析法、JIS K 0102、吸光光度法等によって測定することもできる。
本発明はまた、上記のNF膜透過水の濃縮において、濃縮が14〜50倍、好ましくは25〜50倍、より好ましくは35〜45倍であり、かつNF膜透過水濃縮物が析出物のない水溶液状である、上記の製造方法を提供する。濃縮は、50倍以上にすることも可能だが、濃縮による効果と濃縮に要する費用とのバランスを考慮すれば、濃縮の上限は50倍程度であることが望ましい。
「析出物のない水溶液状」であるとは、沈殿物を除去した後のNF膜透過水濃縮物中に肉眼で浮遊物や沈殿物が確認できない状態、すなわち、水に物質が溶けて、透き通って、どこも一様な濃さになっている液体の状態である。本発明のNF膜透過水濃縮物は、水溶液状で多量のミネラルを常温(20〜25℃)で安定に含有することが特徴である。
上記工程を経て得られたNF膜透過水濃縮物は、後述の表2-2及び表5に記載の通り、単に海水(海洋深層水を含む)を濃縮したニガリとは、その成分が大きく異なる。特に、Caイオンは、ニガリ中には実質的に含まれないが、NF膜透過水濃縮物中には非常に高い濃度で含まれる。K、Clイオン濃度も増加し、Mgイオンについてはニガリとほぼ同濃度で含まれる。一方、Naイオン濃度は減少し、また、ニガリには多量に含まれるSO4イオンを実質的に含まないことが大きな特徴である。
本発明はまた、上記に定義した工程(1)及び(2)を含む、海洋深層水の濃縮方法を提供する。
本発明はまた、上記に定義した工程(2)により得られるNF膜透過水濃縮物を含む、皮膚細胞を賦活するための、好ましくはサイトカイン産生を促進することにより皮膚細胞を賦活するための、より好ましくはVEGF及び/若しくはKGF産生を促進することにより皮膚細胞を賦活するための、並びに/又は線維芽細胞の増殖を促進することにより皮膚細胞を賦活するための組成物を提供する。
本発明はまた、海洋深層水由来であって、Brixが30.0〜55.0、好ましくは40.0〜50.0、Mgイオン濃度が10,000〜100,000mg/L、好ましくは12,000〜80,000mg/L、より好ましくは40,000〜80,000mg/L、さらにより好ましくは45,000〜75,000mg/L、Caイオン濃度が4,000〜40,000mg/L、好ましくは4,800〜35,000mg/L、より好ましくは20,000〜33,000mg/L、さらにより好ましくは23,000〜30,000mg/L、及びSO4イオン濃度が0〜1,000mg/L、好ましくは600mg/L以下、より好ましくは300mg/L以下、さらにより好ましくは100mg/L以下であり、Caイオン濃度:Mgイオン濃度 = 1:0.25〜1:4、好ましくは1:1〜1:3.5、より好ましくは1:2〜1:3、更に特定すれば1:2.5である濃縮物を含む、皮膚細胞を賦活するための、好ましくはサイトカイン産生を促進することにより皮膚細胞を賦活するための、より好ましくはVEGF及び/若しくはKGF産生を促進することにより皮膚細胞を賦活するための、並びに/又は線維芽細胞の増殖を促進することにより皮膚細胞を賦活するための、組成物を提供する。
上記のような本発明の皮膚細胞を賦活するための組成物(特別な場合を除き、「本発明の組成物」という。)はさらに、硫酸イオンを実質的に含まないものとすることが出来る。なお、「実質的に含まない」とは、濃度が100mg/L以下であること、又は適切な測定方法で測定したときに測定限界以下であることをいう。
このような組成物における、各イオン濃度の上限値は、安全性、安定性、製造性等を考慮し、また、所望の効果を著しく損なわず、かつ所望の効果を無意味にするほどには他の効果を生じさせない範囲で適宜設定することができる。
本発明の組成物により活性化され得るサイトカインとしては、上皮細胞増殖因子(Epidermal Growth Factor:EGF)、血小板由来増殖因子(Platelet-Derived Growth Factor:PDGF)、肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor:HGF)、線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor:FGF)、血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endotherial Growth Factor、VEGF)、各種形質転換因子(Transforming Growth Factor:TGF)、角化細胞増殖因子(Keratinocyte Growth Factor:KGF)、インシュリン様成長因子(Insulin-like Growth Factor:IGF)、各種インターロイキン(Interleukine:IL)等が挙げられる。ある種のサイトカイン産生量増加により、皮膚の老化防止、老化予防、改善が期待できる。また、それに伴い、例えば、線維芽細胞から産生されるコラーゲンやヒアルロン酸の量が増加すれば、皮膚の柔軟性、保湿性が向上し、はりやしわの改善が期待できる。
VEGFは、ヒト下垂体前葉由来細胞株の培養上清から発見された血管内皮細胞に特異性の高い増殖因子であり、培養血管内皮細胞の増殖、遊走、プロテアーゼ活性の亢進、コラーゲンゲル内での血管様構造の形成など血管新生の為のすべてのステップを促進し、in vivoでも血管新生や血管透過性を促進する。多方面にわたる研究から、VEGFは胚における血管形成や成体組織における血管新生の重要な調節因子として知られている。VEGF産生促進により、例えば、火傷のような創傷に対し、VEGFによる血管形成促進作用に基づく治癒の促進が期待できる。
KGFは、線維芽細胞増殖因子ファミリーの1つで、上皮細胞に特異的な細胞分裂誘起物質である。細胞培養においては皮膚及び胃腸等の主要な上皮器官由来の間質線維芽細胞により分泌され、ヒト上皮細胞の正常な増殖及び分化に関与する。また、in vivoでは、表皮ではなく真皮で発現する。
本発明において、VEGFに関連する疾患又は状態とは、VEGFの量又はVEGFの応答性の変化により、予防、治療、改善又は進行の抑制が期待される疾患又は状態を意味する。KGFについても同様である。また、真皮細胞の賦活化に関連する疾患又は状態とは、真皮細胞の賦活化により予防、治療、改善又は進行の抑制が期待される疾患又は状態を意味する。具体的には、創傷、火傷、褥そう、潰瘍、外傷、老化、しわ、しみ、くすみ、乾燥、紫外線による損傷が挙げられる。一方、上皮細胞の賦活化に関連する疾患又は状態とは、上皮細胞の賦活化により予防、治療、改善又は進行の抑制が期待される疾患又は状態を意味する。具体的には、粘膜炎、創傷、火傷、褥そう、潰瘍、外傷、老化、しわ、しみ、くすみ、乾燥、紫外線による損傷が挙げられる。老化やくすみが改善したか否かは、例えば後述の実施例12に記載のように、水分量の測定、角層細胞状態の観察、肌のキメの観察等により、評価することができる。従って、本発明は、肌の水分量を増加する、肌のキメを改善する及び/又は肌の角層細胞の状態を改善する、上記の組成物をも提供する。
本発明はまた、化粧品、皮膚外用剤、経口剤又は食品である、上記の組成物を提供する。
このような本発明の組成物は医薬品の形態とすることができ、その投与経路、投与回数は、当業者であれば適宜設計することができる。また、従来技術に基づき、投与経路等に応じた剤形に適宜製剤化することができる。
本発明の組成物には、所望の効果を損なわない範囲で、通常の外用剤に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、抗炎症剤、抗しわ剤、肌荒れ改善剤、ニキビ用薬剤、アルカリ類、キレート剤、金属封鎖剤、海泥等の成分を配合することもできる。通常の経口剤に用いられる着色剤、防腐剤、希釈剤、甘味剤、風味剤、充填剤、被覆剤等の成分を配合することもできる。さらに、通常の浴用添加剤に用いられる成分である硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、塩化カリウム、油性成分、乳化剤、コハク酸、生薬、無機顔料、香料、及び色素等の成分を配合することもできる。
本発明の組成物はまた、その使用目的に応じて、固形剤、半固形剤、液剤等の各種剤形の組成物に調製することが可能である。
本発明の組成物はまた、スキンケア化粧品として洗顔石鹸、洗顔クリーム、洗顔フォーム、化粧水、パック、マッサージクリーム、乳液、モイスチャークリーム、リップクリーム等、メーキャップ化粧品としてファンデーション、白粉、口紅、ほほ紅、アイシャドウ等、ボディケア化粧品として石鹸、液体洗浄料、日焼け止めクリーム、入浴剤等、ヘアケア化粧品としてシャンプー、リンス、ヘアトリートメント、整髪料、ヘアトニック、育毛剤、スキャルプトリートメント等とすることができる。また、医薬品である場合、硬膏剤、軟膏剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤等の外用剤及び、飲料剤、シロップ剤、ゲル剤、錠剤、カプセル剤、散剤等の経口剤とすることができる。上記のうち、特に、ローション、石鹸、クリーム及び健康食品とすることができる。
本発明の組成物を化粧品として用いることにより、例えば、皮膚の保湿、キメ及び角質状態を改善させることができる。
本明細書でいう食品には、調味料、栄養補助食品、健康食品、総合健康食品、サプリメント及び飲料が含まれる。本発明の食品には、通常の食品に用いられる成分である糖類、酸化防止剤、凝固剤、pH調整剤、増粘剤、エキス粉末、生薬、無機塩等の成分を配合することができる。本発明の食品は、固形状(例えば、結晶、カプセル、タブレット、粉末)、半固形状(例えば、ゲル、ペースト)、液状(例えばミネラルウォーター、清涼飲料水、果実飲料、スポーツドリンク、酒類)とすることができる。また、本発明は氷果、冷凍食品等、凍結食品の製造に用いることも出来る。
本発明の食品は、海洋深層水のNF膜透過水濃縮物を原料とするので、細胞賦活化作用、特にVEGF及び/又はKGF等のサイトカインの産生促進作用等を期待し得るほか、必要なミネラル成分をバランス良く含み、また味、香りに優れたものであり得る。
化粧品、皮膚外用剤、経口剤及び食品を含む本発明の組成物の製造工程において、NF膜透過水濃縮物の配合の方法は、その特性を著しく損なわない限り特に制限されない。例えば、水溶液状のまま他の原料と混合することにより配合しても良い。又は定法により凍結乾燥して得られた凍結乾燥物を、そのまま用いても良いし、他の粉末原料と混合することにより配合しても良い。配合量は、最終製品に含ませたい目的の成分の含量を、その食品を摂取する対象者、目的とする効果(例えば、健康維持、特定の成分の補給等)、その食品が摂取される回数等を考慮して決定し、適宜設計することができる。
なお、本発明の組成物又は食品には、その具体的な用途(例えば保湿用、細胞賦活化のため、美白のため、サイトカイン産生促進のため、VEGF産生促進のため、KGF産生促進のため、栄養補助のため、健康維持のため)及び/又はその具体的な用い方(例えば、摂取量、摂取回数、摂取方法)を表示することができる。
本発明はまた、湯の花及び/又はその抽出物を更に含む、上記の組成物を提供する。
湯の花及び/又はその抽出物の配合量は、組成物の安全性、安定性等を考慮し、所望の効果を著しく損なわない範囲で適宜設定することができ、例えば組成物全重量の0.005〜2重量%、好ましくは0.01〜1重量%とすることが出来る。湯の花は、地下から温泉水や温泉ガスが噴出したときに岩石や粘土表面に析出するもの、又は水中に沈殿する固体状のものであり、場合によっては水に不溶の成分を含有する場合もある。本発明の組成物に含まれる湯の花としては、温泉の噴気を例えば青粘土上で結晶化させて得られたものもまた好ましい。本発明の組成物に含まれ得る湯の花の抽出物とは、上記の湯の花を例えば、水、鉱泉水(日本温泉協会による鉱泉の規定に該当するもの)、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の溶媒で抽出したものをいう。これらの溶媒は、単独で用いても二種以上を混合して用いても良い。
上記の湯の花及び/又はその抽出物をそのまま使用してもよく、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行って用いてもよい。湯の花及び鉱泉水は、源泉から採取しても、市販されているものを使用しても良い。湯の花の溶媒抽出物をオゾン酸化処理してもよい。
次に本発明を詳細に説明するため、実験例を挙げるが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
実施例4〜11に示す表中の配合量は重量%示し、FDとはフリーズドライ加工を示す。実施例4〜11(表6〜13)中の「NF膜透過水濃縮物」は、実施例2で得た液状の41倍濃縮物を使用し、「湯の花」は湯の花(製造元:(有)脇屋商会)を10%溶液にして使用し、「湯の花FD品」は該10%溶液の凍結乾燥品を使用した。
実施例1:海洋深層水の濾過
鹿児島県与論島太平洋側沖5〜6kmの海上から船上に設置したポンプにて、約500mの深さの部分の海水を採取した。これを、ナノフィルター膜(東レ社製、ROMEMBRA SU-610、膜材質:架橋全芳香族ポリアミド系複合膜、エレメント形式:スパイラル型、海水試験前NaCl標準性能(500ppm、3.5kg/cm2):脱塩率52.7%及び造水量4.9t/日)(給水圧力0.35MPa、給水温度25℃、給水濃度500mg/L(NaCl)、濃縮水量20L/分でのNa2SO4除去率99.6%、MgSO4除去率99.2%)を備えた装置(水道機工株式会社製、処理能力(25℃、24時間運転/日、12kg/cm2):原水18m3/日から透過水3m3/日及び濃縮水15m3/日を生産)を用いて24時間処理し(25℃、12kg/cm2)、18m3の海洋深層水原水からNF膜透過水3m3及びNF膜濃縮水15m3を得た。
この処理で用いた、NF膜を備えた装置の概略図を図1に示す。図1中、左に記載した矢印の部分から、原水が矢印に沿って流れ、中央に記載したNF膜を通過した後、NF膜透過水(処理水)とNF膜濃縮水とに分かれ、それぞれのタンクに導かれる。
NF膜による処理条件は、以下のように、東レ株式会社における委託試験にて運転条件を決定した。東レ社製のNF膜であるSU-610の標準運転範囲は、給水圧力 < 1.0MPa、濃縮水量/透過水量比 > 6、供給水量 < 50L/分、濃縮水量 > 10L/分となっている。この標準運転範囲から、濃縮水量 > 10L/分より濃縮水量を10.5L/分と設定した。標準運転範囲は濃縮水量/透過水量比 > 6となっているが、海洋深層水では5と設定し、透過水量を10.5/5 = 2.1L/分と設定した。運転圧力は、濃縮水量と透過水量により必然的に決まり、海洋深層水(原水)の塩濃度(電気伝導度52,200μs /cm, 24.8℃)が高いので標準運転範囲よりも高い運転圧力とした。
海洋深層水原水、NF膜透過水及びNF膜濃縮水の主要成分組成を表2-1に示す。さらに、微量成分組成については、表2-2にその分析値を表2-3に分析方法を示す。後述の実施例3で得たニガリ1(表5に記載のものと異なるロット)の微量成分組成についても、比較のために併記した。また、pH、電気伝導度及び水量について表2-4に示す。
表2-1中の値は、それぞれ、イオン分析計で分析した値である。NF膜透過水のSO4イオン濃度は原水と比べ大きく減少していることがわかる。表2-2中の値は、株式会社サニックスに委託分析をし、海水で1時間、加圧循環運転(透過水及び濃縮水を原水に戻して循環運転)後、1パスにて出口側にて採水して表2-3に記載の方法で各々測定して得た値である。表2-4中のpHはガラス電極法、電気伝導率は電極式、水温は電気抵抗(サーミスタ)式にて、それぞれ一般的な方法で測定して得た値であり、また、水量は付属の流量計にて測定して得た値である。表2-4中の水量は、東レにおけるサンプル試験の運転条件と一致する。
実施例2:NF膜透過水の濃縮
実施例1で得られたNF膜透過水を、ロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製)を用いた減圧濃縮(50〜60℃、10〜50mmHg)により濃縮し、濾過にて固液分離して液体(水溶液)を得た。さらに得られた液体を同様に減圧濃縮し、濾過にて固液分離して液体(水溶液)を得た。この操作を1〜3回繰り返し、14倍、30倍、41倍、50倍に濃縮したNF膜透過水濃縮物(水溶液)を得た。濃縮前の全体量を14分の1にしたものが、14倍濃縮物である。濃縮前のNF膜透過水及び濃縮後の各種濃度のNF膜透過水濃縮物中のNa、K、Mg及びCaイオンの含有量並びに屈折率を表3に示す。
なお、屈折率の測定は、手持屈折計(ATAGO社製、Brix0〜30)を用いて25℃の条件で行った。各イオンの濃度は、イオン分析計(イオンクロマトグラフ法)を用いて測定した。図2は、屈折率(濃縮倍率)を横軸に、Na、K、Mg、Caの各イオンの含有量を縦軸にとったグラフである。濃縮倍率では、濃縮の際に取り残し等の人為的なぶれの影響があり基準としにくいため、屈折率(水溶性固形分割合の目安)を横軸にとることで、得られる濃縮物の各イオン量との相関のぶれを少なくした。表3から、濃縮倍率が高くなるにつれ、Mg及びCa濃度は増加し、一方Na濃度は減少し、さらに、K濃度は41倍濃縮付近をピークに減少する傾向にあることがわかる。
また、膜処理時期、各処理ごとのNF膜透過水及びNF膜透過水濃縮物の成分の差(ロットぶれ)を調べるため、3ヶ月あけて2回の膜処理及び濃縮を実施例1及び2の手法で行った結果を表4に示す。表4から、NF膜透過水及びNF膜透過水濃縮物の水質は、ロットが異なってもほぼ同等であり、ロットぶれが少なく、再現性があることがわかる。
実施例3:比較例(ニガリ1)の製造及びNF膜濃縮水の濃縮物との比較
実施例2で得たNF膜透過水濃縮物の比較例として、ニガリ1を製造した。与論島にて取水した海洋深層水を平釜製法にて常圧濃縮し、遠心脱水機により固液分離してニガリ1を得て、その各イオンの濃度を測定した。また、実施例1で得たNF膜濃縮水を実施例2と同様の手法を用いて濃縮したNF膜濃縮水濃縮物を製造した。ニガリ1、実施例2で得たNF膜透過水濃縮物(41倍)及びNF膜濃縮水濃縮物中の各種イオンの含有量並びに屈折率を表5に示す。なお、屈折率及び各イオンの濃度は、実施例2と同様の手法を用いて測定した。表5から、新規濃縮物であるNF膜透過水濃縮物は、膜処理により硫酸イオンを90%以上除去することで濃縮時にCaイオンが硫酸カルシウムとして析出しないため、ニガリ1及びNF膜濃縮水濃縮物と比べてCa量が非常に多いことがわかる。また、NF膜透過水濃縮物のCaイオン濃度:Mgイオン濃度 = 1:2.5となった。この濃度比が皮膚細胞を賦活するのに適したイオンバランスであることを、他の細胞試験によっても確認した。
実施例4:化粧水の製造
製造方法:全て75℃に加熱し、攪拌溶解する。35℃まで冷却し、化粧水を得た。
実施例5:高圧処理化粧水の製造
製造方法:水相Aと油相Bをそれぞれ80℃に加熱し、溶解する。BをAに加え、乳化機で乳化する。乳化物を高圧処理(25℃、200Mpa、1Pass)にかける。35℃まで冷却し、高圧処理化粧水を得た。
実施例6:石鹸の製造
製造方法:全成分を均一になるまで加熱攪拌溶解する。濾過、冷却固化、切断、乾燥を経て石鹸を得た。
実施例7:乳液の製造
製造方法:水相Aと油相Bをそれぞれ80℃に加熱し、溶解する。BをAに加え、乳化機で乳化する。35℃まで冷却し、乳液を得た。
実施例8:クリームの製造
製造方法:水相Aと油相Bをそれぞれ80℃に加熱し、溶解する。BをAに加え、乳化機で乳化する。35℃まで冷却し、クリームを得た。
実施例9:多層クリームの製造
製造方法
工程(a):表11-1中の水相Aと油相Bをそれぞれ80℃に加熱し、溶解する。BをAに加え、乳化機で乳化する。乳化物を高圧処理(25℃、220Mpa、5Pass)にかけ、多層クリーム前処理物を得た。
工程(b):表11-2中の水相Aと油相Bをそれぞれ80℃に加熱し、溶解する。BをAに加え、乳化機で乳化する。乳化物にC(上記工程(a)で得た多層クリーム前処理物)を加え、攪拌し、Dを加えさらに攪拌する。35℃まで冷却し、クリームを得た。
実施例10:美容液の製造
製造方法:水相Aと油相Bをそれぞれ80℃に加熱し、溶解する。BをAに加え、乳化機で可溶化する。35℃に冷却し、美容液を得た。
実施例11:健康食品の製造
製造方法:各成分をフリーズドライしたものを混合し、食品を得た。
実施例12:使用評価
実験方法:肌のくすみ、老化に悩む女性17人を対象に、上記の実施例9で製造した多層クリームの連用試験(朝晩2回、顔面)を1ヶ月間実施した。連用前、連用1ヵ月後、それぞれにおいて以下の測定を行った。
測定項目:角層水分量測定装置(SKICON-200EX)により角層水分量を測定した。粘着テープで皮膚表面の角層細胞を採取し、角層の剥離状態と形状を観察した。シリコーンレプリカ剤で頬のレプリカを採取し、キメの状態を観察した。各項目は連用前の状態と比較した。
結果:水分量の測定結果を表14-1に示す。14名に水分量の増加が認められた(平均33%増)。キメ、角層の状態の測定結果を表14-2及び図3に示す。角層細胞状態では14名に重層剥離、細胞形状の改善が認められた。キメ観察では9名に皮溝の鮮明度、皮丘の形に改善が認められた(図3)。
実施例13:各種濃度のNF膜透過水濃縮物による線維芽細胞賦活試験
(a) 正常ヒト新生児由来の線維芽細胞(クラボウNHDF)を1×104cell/cm2の密度で48穴プレートに播種し、培地として10%牛胎児血清含有D-MEM(GIBCO社)を使用して、CO2インキュベーター(5%CO2、37℃)内で24時間培養した。
(b) 24時間後、実施例2で得られたNF膜透過水濃縮物(14倍、25倍、41倍、50倍)を 0.1%になるよう1%牛胎児血清含有D-MEMで調整した培地に置換し、2日間培養した。
(c) 2日後、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を1.0mg/ml添加したD-MEM培地に交換し、4時間培養した。生成したホルマザンを酸性イソプロパノール(0.04N塩酸になるようにイソプロパノールで調製した溶液)により抽出し、波長570nm、630nmの吸光度をプレートリーダー(BIO-TEC INSTRUMENTS, INC, EL808)で測定した。両測定値の差(570nmの吸光度−630nmの吸光度)により細胞賦活効果を評価した。コントロールとして、NF膜透過水濃縮物非添加の場合の値を100%とし、得られた結果を図4に示した(n=3)。MTT法の詳細は「分子生物学研究のための新培養細胞実験法」黒木登志夫・許南浩・千田和広編(羊土社)を参照されたい。
図4から明らかなごとく、NF膜透過水濃縮物を培地に添加した場合、全ての濃度においてコントロールよりも線維芽細胞の賦活効果が認められ、特に、NF膜透過水濃縮物の14、25、41倍の各濃度においては、濃度依存的に賦活作用が高まった。50倍NF膜透過水濃縮物においては、41倍NF膜透過水濃縮物より賦活作用が低かった。
実施例14:NF膜透過水濃縮物とニガリによる線維芽細胞賦活作用の比較試験
実施例13の工程(b)において、実施例2で得たNF膜透過水濃縮物(30倍、35倍、41倍、45倍)、実施例3で得たニガリ1及び市販のニガリ2(取水地:高知県室戸市)を0.1%になるよう1%牛胎児血清含有D-MEMで調整した培地に置換して、実施例13と同様の手法により線維芽細胞賦活作用を測定した。コントロールとして、NF膜透過水濃縮物非添加の場合の値を100%とし、得られた結果を図5に示した(n=4)。
図5から明らかなごとく、海水から食塩を晶出させた後の液であるニガリよりも、本発明のNF膜透過水35〜45倍濃縮物を培地に添加した場合の方が線維芽細胞の賦活効果が高かった。ニガリは、取水地、製法(イオン交換膜法、天日法、塩田法、蒸発法等)等の違いによりその含有成分が異なると考えられるため、2種類のニガリを用いて比較実験を行ったが、共に本発明のNF膜透過水濃縮物35〜45倍より賦活作用が低かった。
実施例15:試薬調整物とNF膜透過水濃縮物による線維芽細胞賦活作用の比較試験
実施例13の工程(b)において、実施例2で得たNF膜透過水濃縮物(41倍)並びに試薬を用いて調整したCa水溶液、Mg水溶液、Na水溶液、K水溶液及びCaMgNaK水溶液を、0.1%になるよう1%牛胎児血清含有D-MEMで調整した培地に置換して、実施例13と同様の手法により線維芽細胞賦活作用を測定した。コントロールとして、NF膜透過水濃縮物等非添加の場合の値を100%とし、得られた結果を図6に示した(n=4)。なお、Ca水溶液はCa=25.3g/L、Mg水溶液はMg=63.9g/L、Na水溶液はNa=19.7g/L、K水溶液はK=28.3g/L及びCaMgNaKイオン水溶液はCa=25.3g/L、Mg=63.9g/L、Na=19.7g/L、K=28.3g/Lの濃度の溶液を、それぞれ、試薬を用いて調整し、使用した。試薬は、MgCl2(和光純薬工業株式会社)、CaCl2(特級:和光純薬工業株式会社)、KCl(特級:関東化学株式会社)及び/又はNaCl(特級:和光純薬工業株式会社)を用いた。
図6から明らかなごとく、NF膜透過水濃縮物の細胞賦活率は、試薬で調製したいずれの水溶液よりも高く、NF膜透過水濃縮物中の主要な陽イオン以外の成分も細胞賦活に必要であることがわかった。
実施例16:培養真皮VEGFおよびKGF産生実験
24穴プレートにヒアルロン酸(株式会社 資生堂製)より作成したヒアルロン酸スポンジを敷き、該ディッシュに10%牛胎児血清含有D-MEMを0.5mlを加え、30分間インキュベートした。その後余分な培地を抜き取り、コラーゲン(ブタ脚由来、タイプI、3mg/ml、pH3.0)を0.25ml滴下し、1時間インキュベーションした。1時間後、余分な培地を抜き取り、正常ヒト新生児由来の線維芽細胞を5×104cell/cm2の密度で播種し、24時間培養した。24時間後、実施例2で得られたNF膜透過水濃縮物(41倍)を0.01、0.05、0.1%になるよう1%牛胎児血清含有D-MEMで調製した培地を添加し、7日間培養した。7日後、培地を抜き取りエライサ法(ELISA法)により線維芽細胞から放出されたVEGF及びKGFを定量した。サイトカインの測定にはQuantikine Human ELISA Kit (R&D System社)を使用した。コントロールとして、NF膜透過水濃縮物非添加の場合の値を100%とし、得られた結果を図7に示す(n=3)。図7から明らかなごとく、NF膜透過水濃縮物(41倍)のVEGF産生増加率は、試験した全ての濃度においてコントロールよりも高いことがわかった。KGF産生増加率は、0.1%の濃度の時にコントロールよりも高くなることがわかった。
実施例17:培養真皮線維芽細胞賦活試験
実施例16で作製した培養真皮にMTTを1.0mg/ml添加したD-MEM培地を加え、4時間培養した。産生したホルマザンを酸性イソプロパノールにより抽出し、波長570nm、630nmの吸光度を測定した。両測定値の差により、培養真皮中の線維芽細胞賦活効果を評価した。コントロールとしてNF膜透過水濃縮物非添加物の場合の値を100%とし、得られた結果を図8に示した。図8から明らかなごとく、培養皮膚における線維芽細胞賦活効果は、試験した濃度範囲では、NF膜透過水濃縮物と濃度依存的に高まった。
図1は、実施例1で用いた、NF膜を備えた濾過装置の概略図である。 図2は、実施例2で得たNF膜透過水濃縮物の、各濃縮倍率におけるNa、K、Mg、Caの含有量の変化を示すグラフである。 図3は、実施例12における、本発明の組成物の使用前及び1ヶ月使用後の、頬のキメの状態を示す図である。 図4は、実施例13における、各種濃度のNF膜透過水濃縮物の、培養線維芽細胞に対する細胞賦活試験の結果を示すグラフである。 図5は、実施例14における、ニガリとNF膜透過水濃縮物の、培養線維芽細胞に対する細胞賦活試験の結果を示すグラフである。 図6は、実施例15における、試薬調整水溶液とNF膜透過水濃縮物(41倍)の、培養線維芽細胞に対する細胞賦活試験の結果を示すグラフである。 図7は、実施例16における、各種濃度(0.01、0.05、0.1%)のNF膜透過水濃縮物(41倍)の培養真皮でのVEGF及びKGF産生試験の結果を示すグラフである。 図8は、実施例17における、各種濃度(0.01、0.05、0.1%)のNF膜透過水濃縮物(41倍)の培養真皮での細胞賦活試験の結果を示すグラフである。

Claims (9)

  1. 以下の工程(1)及び(2):
    (1) 硫酸イオンを90%以上除去し得るナノフィルター膜で海洋深層水を処理する工程;及び
    (2) 工程(1)で得たNF膜透過水を濃縮してNF膜透過水濃縮物を得る工程;
    を含む、皮膚細胞を賦活するための組成物の製造方法。
  2. 該NF膜透過水のBrixが2.8〜3.6、Mgイオン濃度が300〜900mg/L、Caイオン濃度が200〜600mg/L、及びSO4イオン濃度が0〜300mg/Lであり、並びに
    該NF膜透過水濃縮物のBrixが30.0〜55.0、Mgイオン濃度が10,000〜100,000mg/L、Caイオン濃度が4,000〜40,000mg/L、及びSO4イオン濃度が0〜1,000mg/Lである、
    請求項1に記載の製造方法。
  3. 該NF膜透過水の濃縮において、濃縮が14〜50倍であり、かつ、NF膜透過水濃縮物が析出物のない水溶液状である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. ナノフィルター膜の孔径が0.1〜1 nmであり、かつ膜にかかる圧力が0.3〜2.0 MPaである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 請求項1に定義した工程(1)及び(2)を含む、海洋深層水の濃縮方法。
  6. 請求項1に定義した工程(2)により得られるNF膜透過水濃縮物を含む、皮膚細胞を賦活するための組成物。
  7. 海洋深層水由来であって、Brixが30.0〜55.0、Mgイオン濃度が10,000〜100,000mg/L、Caイオン濃度が4,000〜40,000mg/L、及びSO4イオン濃度が0〜1,000mg/Lであり、Caイオン濃度:Mgイオン濃度 = 1:0.25〜1:4である濃縮物を含む、皮膚細胞を賦活するための組成物。
  8. 化粧品、皮膚外用剤、経口剤又は食品である、請求項6又は7に記載の組成物。
  9. 湯の花及び/又はその抽出物を更に含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の組成物。
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