JP2007213936A - 固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プロトン酸基を含有する高分子電解質と、アルコール性水酸基を複数含有する化合物と、溶剤とを含む混合用液から得られ、且つ、架橋構造を有する重合体を含む固体高分子電解質膜を備えた固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体とする。
【選択図】なし
Description
本発明に係る混合溶液は、プロトン酸基を含有する高分子電解質と、アルコール性水酸基を複数含有する化合物と、溶剤とを含む。
本発明の混合溶液を構成するプロトン酸基を含有する高分子電解質は、分子鎖にプロトン酸基を有し、分子量が10,000以上のポリマーからなる。プロトン酸基としては、特に限定されず、たとえば、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基などが挙げられ、これらを複数有していてもよい。これらの中では、スルホン酸基およびホスホン酸基が好ましく、プロトン伝導性が高いという点で、スルホン酸基がより好ましい。
本発明で用いられるプロトン酸基を含有する高分子電解質としては、好ましくは、スルホン酸基などのイオン伝導成分を有するポリマーセグメントと、イオン伝導成分を有さないポリマーセグメントとが共有結合しているブロック共重合体である。より好ましくは、前記共重合体を形成する主鎖骨格が、芳香環を結合基で共有結合させた構造を有するポリアリーレンである。特に好ましくは、下記一般式(A)で表される構造単位(以下、「スルホン酸ユニット」または「構造単位(A)」ともいう。)と、下記一般式(B)で表される構造単位(以下、「疎水性ユニット」または「構造単位(B)」ともいう。)とを含む、下記一般式(C)で表されるスルホン酸基を有するポリアリーレン(以下「スルホン化ポリアリーレン」ともいう。)である。
(1)m=0、n=0であり、Yが−CO−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(2)m=1、n=0であり、Yが−CO−であり、Zが−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(3)m=1、n=1、k=1であり、Yが−CO−であり、Zが−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(4)m=1、n=0であり、Yが−CO−であり、Arが置換基として2個の−SO3Hを有するナフチル基である構造、
(5)m=1、n=0であり、Yが−CO−であり、Zが−O−であり、Arが置換基として−O(CH2)4SO3Hを有するフェニル基である構造、などを挙げることができる。
(1)s=1、t=1であり、Aが−CR’2−、シクロヘキシリデン基またはフルオレニリデン基であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または−SO2−であり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、
(2)s=1、t=0であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または−SO2−であり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、
(3)s=0、t=1であり、Aが−CR’2−、シクロヘキシリデン基またはフルオレニリデン基であり、Bが酸素原子であり、R1〜R16が水素原子、フッ素原子またはニトリル基である構造、などが挙げられる。
上記スルホン化ポリアリーレンの製造方法としては、たとえば、下記に示すA法、B法およびC法が挙げられる。
たとえば、特開2004−137444号公報に記載の方法で、上記構造単位(A)となりうるスルホン酸エステル基を有するモノマーと、上記構造単位(B)となりうるモノマーまたはオリゴマーとを共重合させ、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを製造し、このスルホン酸エステル基を脱エステル化してスルホン酸基に変換する方法である。
たとえば、特開2001−342241号公報に記載の方法で、上記式(A)で表される骨格を有するが、スルホン酸基およびスルホン酸エステル基を有しないモノマーと、上記構造単位(B)となりうるモノマーまたはオリゴマーとを共重合させ、得られた共重合体をスルホン化剤を用いてスルホン化する方法である。
上記式(A)中のArが、−O(CH2)pSO3Hまたは−O(CF2)pSO3Hで表される置換基を有する芳香族基である場合には、たとえば、特開2005−60625号公報に記載の方法で、上記構造単位(A)となりうる前駆体のモノマーと、上記構造単位(B)となりうるモノマーまたはオリゴマーとを共重合させ、次いで、アルキルスルホン酸またはフッ素置換されたアルキルスルホン酸を導入する方法である。
上記A法で得られた、前駆体のスルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを、特開2004−137444号公報に記載の方法で脱エステル化する方法である。
上記B法で得られた前駆体のポリアリーレンを、特開2001−342241号公報に記載の方法でスルホン化する方法である。
上記C法で得られた前駆体のポリアリーレンに、特開2005−60625号公報に記載の方法で、アルキルスルホン酸基を導入する方法である。
本発明の混合溶液を構成するアルコール性水酸基を複数含有する化合物(以下「水酸基含有化合物」ともいう。)は、溶剤に可溶であり、一分子内にアルコール性の水酸基を二つ以上有する化合物であり、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、架橋剤として用いられる。
本発明の混合溶液において、上記高分子電解質と水酸基含有化合物の組成比は、特に限定されるものではないが、水酸基含有化合物の含有量が高くなりすぎると、後述する高分子電解質膜の寸法安定性は改善するが、電解質膜中のプロトン酸基濃度が低下するため、プロトン伝導性が低下する。一方、水酸基含有化合物の含有量が低くなりすぎると、電解質膜中のプロトン酸基濃度は大きく変化せず、プロトン伝導性は維持されるが、充分な架橋が進行せず、寸法安定性の改良効果が充分に現れないことがある。そのため、高分子電解質と水酸基含有化合物の組成比(高分子電解質:水酸基含有化合物)は、好ましくは70:30〜99.99:0.01、より好ましくは80:20〜99.9:0.1、さらに好ましくは85:15〜99:1である。
本発明の混合溶液は、上記プロトン酸基を含有する高分子電解質とアルコール性水酸基を複数含有する化合物とを同時に溶解させる溶剤を含む。このような溶剤は、高分子電解質と水酸基含有化合物の組合せで異なるが、両者を溶解可能であり、その後に除去し得るものであれば特に制限されるものではない。
本発明の混合溶液には、前述した高分子電解質、水酸基含有化合物および溶剤以外にも、必要に応じて、老化防止剤などの添加剤を含有させてもよい。
本発明の高分子電解質組成物は、前述した本発明の混合溶液を用いて調製され、該混合溶液を構成する水酸基含有化合物を熱により架橋反応させることにより得られる、架橋構造を有する重合体を含む。このような架橋構造を有する重合体を含有することにより、高分子電解質膜を不溶化させることができる。
本発明の高分子電解質膜は上記高分子電解質組成物からなり、上記混合溶液を基材上に塗布し、乾燥して塗膜を形成した後、該塗膜を構成する水酸基含有化合物を架橋反応させることにより得ることができる。
本発明において使用される触媒としては、細孔の発達したカーボン材料に白金又は白金合金を担持させた担持触媒が好ましい。細孔の発達したカーボン材料としては、カーボンブラックや活性炭などが好ましく使用できる。カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどが挙げられ、また活性炭は、種々の炭素原子を含む材料を炭化、賦活処理して得られる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、スルホン酸当量および分子量は以下のようにして求めた。
得られたスルホン酸基を有する重合体の水洗水が中性になるまで充分に洗浄し、フリーに残存している酸を除去して乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解したフェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点からスルホン酸当量を求めた。
スルホン酸基を有しないポリアリーレンの分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、GPCによってポリスチレン換算の分子量を求めた。スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、臭化リチウムと燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用い、GPCによってポリスチレン換算の分子量を求めた。
(1)疎水性ユニットの合成
攪拌機、温度計、Dean−stark管、窒素導入管および冷却管をとりつけた1Lの三口フラスコに、2,6−ジクロロベンゾニトリル48.8g(284mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン89.5g(266mmol)および炭酸カリウム47.8g(346mmol)をはかりとった。フラスコ内を窒素置換した後、スルホラン346mLおよびトルエン173mLを加えて攪拌し、オイルバスを用いて反応液を150℃で加熱還流させた。反応によって生成した水はDean−stark管にトラップした。3時間後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをDean−stark管から系外に除去した。徐々に反応温度を200℃に上げ、3時間攪拌を続けた後、2,6−ジクロロベンゾニトリル9.2g(53mmol)を加え、さらに5時間反応させた。反応液を放冷後、トルエン100mLを加えて希釈した。反応液に不溶の無機塩を濾過し、濾液をメタノール2Lに注いで生成物を沈殿させた。沈殿した生成物を濾過して乾燥後、テトラヒドロフラン250mLに溶解し、これをメタノール2Lに注いで再沈殿させた。沈殿物を濾過して乾燥することにより、白色粉末の目的物109gを得た。得られた化合物は、GPCによる数平均分子量(Mn)が9,500であった。得られた化合物は下記式(I)で表されるオリゴマーであることを確認した。
攪拌機、温度計および窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル135.2g(337mmol)、(1)で得られたMn9,500の疎水性ユニット48.7g(5.1mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド6.71g(10.3mmol)、ヨウ化ナトリウム1.54g(10.3mmol)、トリフェニルホスフィン35.9g(137mmol)および亜鉛53.7g(821mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。ここにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)430mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc730mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
〈プロトン伝導膜の作製〉
上記合成例で得たスルホン化ポリアリーレン2.00gと、ペンタエリスリトール0.20gとを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)12.50gに溶解して混合溶液を得た。これをPETフィルム上にアプリケーターを用いてキャスト塗工し、100℃で30分間乾燥し、さらに150℃で30分間乾燥して架橋反応させることにより電解質膜を得た。得られた電解質膜の膜厚は40μmであった。
1)触媒ペースト
平均径50nmのカーボンブラック(ファーネスブラック)に白金粒子を、カーボンブラック:白金=1:1の重量比で担持させ、触媒粒子を作製した。次に、イオン伝導性バインダーとしてのパーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(Dupont社製Nafion(登録商標))溶液に、前記触媒粒子を、イオン伝導性バインダー:触媒粒子=8:5の重量比で均一に分散させ、触媒ペーストを調製した。
カーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子とを、カーボンブラック:PTFE粒子=4:6の重量比で混合し、得られた混合物をエチレングリコールに均一に分散させたスラリーをカーボンペーパーの片面に塗布、乾燥させて下地層とし、該下地層とカーボンペーパーとからなるガス拡散層を2つ作製した。
本実施例で得られたプロトン伝導膜の両面に、前記触媒ペーストを、白金含有量が0.5mg/cm2となるようにバーコーター塗布し、乾燥させることにより電極塗布膜(CCM)を得た。前記乾燥は、100℃で15分間の乾燥を行った後、140℃で10分間の二次乾燥を行った。
前記CCMを前記ガス拡散層の下地層側で狭持し、ホットプレスを行なって膜−電極構造体を得た。前記ホットプレスは、80℃、5MPaで2分間の一次ホットプレスの後、160℃、4MPaで1分間の二次ホットプレスを行った。
実施例1において、ペンタエリスリトールの代わりに、ジペンタエリスリトールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして電解質膜を得た。得られた電解質膜の膜厚は40μmであった。
実施例1において、ペンタエリスリトールの代わりに、レゾール樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして電解質膜を得た。得られた電解質膜の膜厚は40μmであった。
上記合成例で得たスルホン化ポリアリーレンの固形分15重量%NMP溶液をPETフィルム上にキャスト法により塗布し、120℃で60分間乾燥することにより膜厚40μmの高分子電解質膜を得た。
上記実施例および比較例で得られた電解質膜について、NMP溶解性試験、メタノール水溶液浸漬試験、熱水浸漬試験および電気抵抗の測定を以下のようにして行った。結果を表1に示す。
実施例および比較例で得られた電解質膜を3cm四方にカットした。これを80℃に加熱した50mLのNMPに24時間浸漬した後、膜が形状を保持し不溶化しているか、あるいは、溶解しているか観察した。
実施例および比較例で得られた電解質膜を3cm四方にカットした。これを50℃の30wt%メタノール水溶液50mLに24時間浸漬した。浸漬処理後、膜を取り出し、表面の液滴を拭き取った後、含液状態での膜厚および面方向寸法を測定し、浸漬前の体積と比較して増加率を求めた。
実施例および比較例で得られた電解質膜を3cm四方にカットした。これを95℃の蒸留水50mLに24時間浸漬した。浸漬処理後、膜を取り出し、表面の液滴を拭き取った後、含液状態での膜厚および面方向寸法を測定し、浸漬前の体積と比較して増加率を求めた。
短冊状にカットした電解質膜(40mm×5mm)の表面に、白金線(φ=0.5mm)を5mm間隔に5本押し当て、恒温恒湿装置((株)ヤマト科学製「JW241」)中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定により交流抵抗を求めた。測定は、抵抗測定装置として(株)エヌエフ回路設計ブロック製のケミカルインピーダンス測定システムを用いて、85℃、相対湿度90%の環境下、交流10kHzの条件で、線間距離を5〜20mmに変化させて行った。次いで、線間距離と抵抗の勾配から膜の比抵抗Rを下記数式(1)に従って算出し、比抵抗Rからプロトン伝導度を下記数式(2)に従って算出した。
本発明の高分子電解質膜の両面に電極を塗布した電極塗布膜(以下、Catalyst Coated Membrane:CCMともいう。)を、結露サイクル試験機(エスペック社製:DCTH−200)に投入し、85℃95%RH⇔−20℃の冷熱サイクルテストを100回実施した。試験後のCCMを1.0cm×5.0cmの短冊状にカットし、アルミ板に両面で固定しテストピースとした。さらに、電極面にテープを貼り付け、テープを180℃方向に50mm/minの速さで引っ張り、CCM上の電極を剥離させた。テープの剥離は、豊光エンジニアリング製SPG荷重測定機HPC.A50.500を用いて行った。剥離試験後のサンプルについて、画像処理にて電極が残存した面積を算出し、下記数式(3)により電極接着率を求めた。画像処理は、エプソン社製スキャナGT−8200UFを用いて画像を取り込み、二値化することにより行った。
本発明の膜−電極構造体を用いて、温度70℃、燃料極側/酸素極側の相対湿度を60%/70%、電流密度を1A/cm2とした発電条件により、発電性能を評価した。燃料極側には純水素を、酸素極側には空気をそれぞれ供給した。さらに、低温始動性の評価として、該膜−電極構造体を用い、−30℃の条件下で起動を50回繰り返し行った場合に、0.8A/cm2での性能低下量が20mV以下だった場合を良として「○」で表示し、20mV以上だった場合には不良として「×」で表示した。
Claims (6)
- 固体高分子電解質膜の一方の面にアノード電極、他方の面にカソード電極を設けた固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体において、
前記固体高分子電解質膜は、プロトン酸基を含有する高分子電解質と、アルコール性水酸基を複数含有する化合物と、溶剤とを含む混合溶液から得られ、且つ、架橋構造を有する重合体を含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。 - 前記アルコール性水酸基を複数含有する化合物が、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールフェノール、2,6−ジメチロール−p−クレゾールおよび3,3’,5,5’−テトラメチロール−4,4’−ビフェニルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
- 前記アルコール性水酸基を複数含有する化合物が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシプロピルアクリレート、レゾール樹脂およびノボラック樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
- 前記プロトン酸基を含有する高分子電解質が、下記一般式(A)で表される構造単位と、下記一般式(B)で表される構造単位を含むスルホン化ポリアリーレンであることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
- 前記架橋構造を有する重合体が、前記混合溶液を構成するアルコール性水酸基を複数含有する化合物を、熱により架橋反応させることにより得られることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
- 請求項1から5いずれかに記載の混合溶液を基材上に塗布し、乾燥して塗膜を形成した後、該塗膜を構成するアルコール性水酸基を複数含有する化合物を、熱により架橋反応させる工程を含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体の製造方法。
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