JP2007197563A - セルロースエステルおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】重合度が高くても不純物の少ないセルロースエステル(混合脂肪酸セルロースエステル)及びその製造方法を提供する。
【解決手段】重合度及び結晶性の高いセルロース(リンターパルプなど)を有機カルボン酸で構成された活性化剤で活性化処理し、アシル化触媒(硫酸)の存在下、少なくとも炭素数2以上のアシル化剤(特に炭素数3以上の有機カルボン酸無水物)でセルロースをエステル化し、生成したセルロースエステルをケン化熟成することによりセルロースエステルを製造する。エステル化工程の後、反応系に残存するアシル化剤1モルに対して、水、有機カルボン酸及び中和剤から選択されたエステル化反応停止剤を0.3〜10当量/分の速度で添加し、セルロースの解重合を抑制する。
【選択図】なし

Description

本発明は、分子量が高い(すなわち高重合度)にも拘わらず、不溶物および輝点異物(輝点の原因となる異物)の少ないセルロースエステル(混合脂肪酸セルロースエステルなど)及びその製造方法、並びに光学フィルム(偏光板の保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、カラーフィルタ、写真感光材料のフィルムなど)に関する。
セルロースアセテートは、光学的等方性が高く、しかも強靭性および難燃性に優れるため、各種の写真材料や光学材料、例えば、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルムなどの光学フィルムとして用いられている。特に、液晶表示装置などのように画素が微細化しかつ画素数(いわゆるドット数)の大きな表示装置にフィルムを用いると、新たな問題、例えば、異物による透過光の異常屈折により生じる輝点などの光学的な欠陥が問題となる。この輝点をもたらす異物は、エステル化の程度が異なるセルロースエステルに起因していると思われる。すなわち、セルロースエステルの製造のエステル化工程でエステル化度の低いセルロースエステル(低エステル化セルロースと称することがある)が副生し、エステル化度の高いセルロースとの屈折率の相違に基づいて、偏光板保護膜などの光学フィルムとして用いると、偏光を変化させるため輝点異物として認識される。
また、低エステル化セルロースは、セルロースエステルを溶解して溶液(ドープ)を調製すると不溶成分として残留する。そのため、低エステル化セルロースは濾過残渣となるし、低エステル化セルロースのサイズや形状などによっては濾過材を通り抜ける場合もある。従って、セルロースエステル溶液の濾過によって上記課題を解決できない。
特に、セルロースアセテートに比較して、混合脂肪酸エステル(セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど)では、無水酢酸よりも無水プロピオン酸や無水酪酸の反応性が劣るためより、輝点異物が生じ易い。
特開2001−188128号公報(特許文献1)には、アセチル基及びプロピオニル基を有する脂肪酸セルロースエステルを含み、厚み方向のリターデーション値が60〜300nmである光学フィルムが開示されている。この文献には、アセチル基置換度とプロピオニル基置換度の合計が2.1〜2.8である脂肪酸脂肪酸セルロースエステル、アセチル基置換度1.5〜2.3、プロピオニル基置換度0.6〜1.2の脂肪酸セルロースエステルが開示され、偏光クロスニコル状態で認識される大きさが5〜50μmの異物が250mm当たり200個以下、50μmを越える異物が0個であることも記載されている。しかし、この文献に記載の混合脂肪酸セルロースエステルは、アセチル基以外のアシル基の置換度が低い。また、エステル化反応では、無水酢酸に比べて無水プロピオン酸の反応性が低いため、低エステル化セルロースが生成しやすく、低エステル化セルロースの生成を十分に抑制できない。
特開2005−307055号公報(特許文献2)には、投入セルロースの10〜90質量%が未溶解状態にあり、溶解したセルロースおよび未溶解ではあるが溶液界面に存在するセルロースに第1段のアシル化反応を行い、次いで未溶解のセルロースを溶解し、第1段のアシル化剤(アセチル化剤)とは異なるアシル化剤(プロピオニル化剤又はブチリル化剤)により第二段のアシル化反応を行うセルロースアシレートの製造方法が開示されている。しかし、この方法でアセチル基を含む混合脂肪酸セルロースエステルを製造する場合、カルボン酸の反応性の違いから、第一段の反応にアセチル化剤を用いると、総置換度に占めるアセチル基置換度の割合が高くなり易く、アセチル基の置換度が低くしたまま、アセチル基以外のアシル基置換度を高くすることが困難である。一方、第一段の反応に無水酢酸以外の他の無水カルボン酸を用いると、第一段の反応に用いる無水カルボン酸の反応性が無水酢酸よりも劣るため、長時間の反応が必要となり高重合度の混合脂肪酸エステルを得にくくなる。 セルロースエステルの製造において、エステル化反応の後、水を急激に添加して有機カルボン酸無水物を失活させると、反応系の温度が急激に上昇し解重合が生じる。そのため、エステル化反応を徐々に停止させることが提案されている。例えば、特開平10−45804号公報(特許文献3)には、硫酸を触媒とし、無水酢酸と炭素数3以上の有機酸無水物とでセルロースをエステル化し、アセチル基の平均置換度が2.0〜2.95、炭素数3以上のアシル基の平均置換度が0.05〜0.8、総アシル基の平均置換度が2.6〜3.0であるセルロース混合脂肪酸エステルを製造する方法において、エステル化反応の最高温度を35〜50℃に調整する方法が開示されている。この文献には、重合度の高いセルロースエステルを得るため、エステル化反応の後、反応停止剤を4乃至30分かけて添加することが記載されている。しかし、この方法では、無水酢酸よりも反応性の低いアシル化剤を用いるため、低エステル化セルロースの生成を抑制できない。また、混合脂肪酸セルロースエステルはアセチル基以外のアシル基の置換度が低い。
なお、重合度の低下防止と不溶成分及び異物の低減とは、トレードオフの関係にあり、両者を両立させることは極めて困難である。すなわち、重合度の低下防止は、エステル化時間を短縮することにより実現できるが、必然的に不溶成分量が増加し、異物による輝点が増加する。一方、不溶成分量の低減は、エステル化時間を長くしたりエステル化温度を高くすることにより達成できるが、必然的にセルロースエステルの重合度(分子量)が低下する。そのため、流延法で製膜すると、ドープの粘度低下、フィルムの平滑性及び機械的強度の低下、および生産性の低下をもたらす。このような問題は、アシル基の置換度を高くすると生じやすく、特に、無水酢酸と無水酢酸よりも反応性の低いアシル化剤とを用いてアシル基の置換度の高い混合脂肪酸セルロースエステルを製造する場合に生じる。さらに、純度の高い高結晶性セルロース(例えば、リンターパルプ)を用いると、アセチル化剤がセルロースの結晶部の内部に進入しにくいためか、セルロース全体を均質にエステル化することが困難である。特に、混合脂肪酸セルロースエステルを製造する場合には、無水酢酸よりも反応性の低いアシル化剤を用いるため、低エステル化セルロースの生成を抑制できない。
また、セルロースエステルフィルムは、通常、セルロースエステル溶液(ドープ)を剥離性支持体(回転ドラムなどの金属支持体)に流延塗布し、部分乾燥した後、湿潤シートを支持体から剥離し、乾燥し、必要によりシートを延伸することにより調製される。そのため、セルロースエステルには、支持体に対する剥離性も要求される。
特開2001−188128号公報(特許請求の範囲) 特開2005−307055号公報(特許請求の範囲) 特開平10−45804号公報(特許請求の範囲、段落番号[0017])
従って、本発明の目的は、重合度が高くても不純物の少ないセルロースエステル(特に、混合脂肪酸セルロースエステル)及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、反応性の異なる複数のアシル化剤を用いても、重合度が高く不溶成分および輝点異物の少ないセルロースエステルを製造できる方法及びそのセルロースエステルを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、結晶化度の高いセルロース(特に、結晶化度及び重合度が大きなセルロース)を用いても、異物の少ない均質なセルロースエステル(特に、混合脂肪酸セルロースエステル)を製造できる方法及びそのセルロースエステルを提供することにある。
本発明の別の目的は、支持体(金属支持体など)に対する高い剥離性を示すセルロースエステル(特に、混合脂肪酸セルロースエステル)及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、延伸可能であり、かつ光学フィルム(位相差フィルム、光学補償フィルム、偏光板保護フィルムなど)を調製するのに有用なセルロースエステル(混合脂肪酸セルロースエステルなど)、及びこのセルロースエステルを迅速かつ効率よく製造できる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、湿度の変化に対して寸法変化が少なく、面内位相差及び面外位相差の変化が小さく、延伸されていてもよい光学フィルムを提供することにある。
本発明者らは、セルロースエステル(特に混合脂肪酸セルロースエステル)の製造において、従来全く着目されていなかった観点から、セルロースの解重合と、エステル化反応及び加水分解反応の反応様式との関係を解析したところ、エステル化反応の停止工程(クエンチング工程)での反応停止方法によりセルロースの解重合が大きく影響を受けるという知見を見いだした。本発明者らは、これらの知見に基づいて前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の反応停止方法を用いると、高いアシル基置換度の混合脂肪酸エステルであっても、高重合度を保ったまま低エステル化セルロースの生成を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の方法では、セルロースを活性化剤で活性化処理する工程、アシル化触媒の存在下、少なくとも炭素数2以上(特に少なくとも炭素数3以上)のアシル化剤でセルロースをエステル化する工程、および生成したセルロースエステルをケン化熟成する工程を含むセルロースエステルの製造方法であって、エステル化工程の後、反応系に残存するアシル化剤1モルに対して、エステル化反応停止剤を0.3〜10当量/分の速度で添加し、セルロースエステルを製造する。反応停止剤は、通常、少なくとも水を含む。反応停止剤は、水と、有機カルボン酸及びエステル化触媒を中和するための中和剤から選択された少なくとも1つの成分とを含んでいてもよい。反応系にエステル化反応停止剤は0.1〜3分程度で添加してもよい。また、反応系に対する反応停止剤の添加は100℃以下の温度で行う場合が多い。前記反応において、活性化処理する工程では、活性化剤でセルロースを活性化する工程と、硫酸と活性化剤とでセルロースを活性化する工程とで構成してもよい。また、通常、活性化剤は有機カルボン酸で構成され、アシル化剤は有機カルボン酸無水物で構成され、アシル化触媒は硫酸で構成されている。
より具体的には、C1−5アルカン酸から選択された少なくとも一種の活性化剤でセルロースを活性化させる第1の活性化工程と、硫酸とC1−5アルカン酸から選択された少なくとも一種の活性化剤とでセルロースを活性化させる第2の活性化工程と、硫酸の存在下、活性化されたセルロースを、C2−6アルカンカルボン酸に対応する酸無水物から選択され、かつ炭素数の異なる複数の酸無水物でエステル化し、混合脂肪酸セルロースエステルを生成させるエステル化工程と、反応系に残存する酸無水物1モルに対して、エステル化反応停止剤を0.5〜5当量/分の速度で添加して少なくとも前記酸無水物を失活させる工程と、硫酸又は残存硫酸の存在下、生成した混合脂肪酸セルロースエステルを熟成する熟成工程とを経てセルロースエステル(混合脂肪酸セルロースエステル)を製造できる。
このような方法により、セルロースの重合度の低下(解重合)を抑制しつつ、不純物(低エステル化セルロース)の生成を防止できる。そのため、本発明は、セルロースを活性化剤で活性化処理する工程、アシル化触媒の存在下、少なくとも炭素数2以上(特に少なくとも炭素数3以上)のアシル化剤でセルロースをエステル化する工程、および生成したセルロースエステルをケン化熟成する工程を含み、エステル化工程の後、反応系に残存するアシル化剤1モルに対して、エステル化反応停止剤を0.3〜10当量/分の速度で添加し、セルロースエステルの重合度の低下を抑制しつつ、不溶物の生成を低減する方法も含む。特に、結晶化度の高いセルロースを用いても、酢酸に比べて反応性の低い炭素数3以上のアルカンカルボン酸の酸無水物を結晶領域に浸透又は拡散でき、セルロースの重合度の低下(解重合)を抑制しつつ、不純物(低エステル化セルロース)の生成を防止できる。そのため、本発明は、α−セルロース含有量98%以上、平均重合度1000〜3000のセルロース(例えば、精製綿リンター、リンターパルプ)を用い、少なくともC3−6アルカンカルボン酸無水物で構成されたアシル化剤を用いてエステル化するのに適している。
本発明はセルロースエステル(特に混合脂肪酸セルロースエステル)、例えば、前記方法により得られたセルロースエステルも包含する。このセルロースエステル(特に混合脂肪酸セルロースエステル)は、少なくとも炭素数2以上(特に少なくとも炭素数3以上)のアシル基が置換し、アシル基全体の平均置換度が2.5〜3、グルコース単位の6位のアシル基の平均置換度が0.7〜1であるセルロースエステルであって、粘度平均重合度120〜400(例えば、190〜400)、塩化メチレン及びメタノールの混合溶液(塩化メチレン/メタノール=9/1(重量比))への不溶成分量が0.1重量%以下である。アシル基は、炭素数3〜6のアルキルカルボニル基であってもよい。さらに、アシル基は、アセチル基を含んでいてもよい。例えば、炭素数2以上のアルキルカルボニル基を有する混合脂肪酸セルロースエステルであって、アセチル基の置換度(A)と炭素原子数3以上のアルキルカルボニル基の置換度(B)とが下記式(I)〜(III)を満たす混合脂肪酸セルロースエステルであってもよい。より具体的には、混合脂肪酸セルロースエステルは、セルロースアセテートプロピオネート又はセルロースアセテートブチレートであってもよい。
2.50≦A+B≦2.90 (I)
0.00≦ A ≦1.90 (II)
0.60≦ B ≦2.90 (III)
本発明は、さらに、前記セルロースエステルで構成された成形体も包含する。この成形体は、フィルムであってもよく、例えば、偏光板の保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムから選択された光学フィルムであってもよい。
なお、本明細書において、「不溶成分」とは、未反応セルロース及び溶媒に対して溶解性が劣る低置換度セルロースであって、光学的に微小異物として作用する成分を意味し、非溶解成分、不溶解物、低エステル化セルロースなどと同義に用いる。また、反応停止剤の当量の計算において、反応停止剤としての水は1価の化合物として計算するものとし、酸無水物の炭素数は、酸無水物に対応する遊離のカルボン酸の炭素数を意味する。
本発明では、エステル化反応の停止を迅速に行うため、重合度が高くても不純物の少ないセルロースエステル(特に、混合脂肪酸セルロースエステル)を得ることができる。特に、反応性の異なる複数のアシル化剤(特に無水酢酸および炭素数3以上の反応性の低いアシル化剤)を用いて、アシル基置換度を大きくしても、重合度が高く不溶成分および輝点異物の少ない混合脂肪酸セルロースエステルを製造できる。さらに、セルロースの結晶領域に対して拡散性又は浸透性の低いアシル化剤(特に炭素数3以上のアシル化剤)を用い、結晶化度の高いセルロース(特に、結晶化度及び重合度が大きなセルロース)をエステル化しても、異物の少ない均質なセルロースエステル(特に、混合脂肪酸セルロースエステル)を製造できる。また、結晶化度の高いセルロースをセルロース源として用いると、支持体(金属支持体など)に対するセルロースエステルの剥離性も向上できる。また、セルロースエステル(混合脂肪酸セルロースエステルなど)は、延伸可能であり、かつ光学フィルム(位相差フィルム、光学補償フィルム、偏光板保護フィルムなど)を調製するのに適している。さらに、セルロースエステル(混合脂肪酸セルロースエステルなど)は、湿度の変化に対して寸法変化が少なく、面内位相差及び面外位相差の変化が小さく、延伸されていてもよい光学フィルムを調製するのにも適している。
本発明の方法は、セルロースを活性化するための活性化工程と、活性化されたセルロースをアシル化剤でエステル化する工程と、生成したセルロースエステルをケン化又は加水分解して熟成する工程とで構成されている。また、混合脂肪酸セルロースエステルの一般的な製造方法は「繊維素系樹脂」(宇多和夫、丸澤廣著 日刊工業新聞社発行)」に記載されているが、以下に本発明を説明する。
[活性化工程]
活性化工程では、セルロースを活性化剤で処理し、セルロースを活性化させる。通常、原料セルロースはシート状の形態で供給される場合が多いため、セルロースを乾式で解砕処理し、活性化処理(又は前処理工程)する。
[セルロース]
原料セルロースとしては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、コットンリンターパルプなどの種々のセルロース源を用いることができる。これらのパルプは、通常、ヘミセルロースなどの異成分を含有している。従って、本願明細書において、用語「セルロース」は、ヘミセルロースなどの異成分も含有する意味で用いる。
木材パルプとしては、広葉樹パルプ及び針葉樹パルプから選択された少なくとも一種が使用でき、広葉樹パルプと針葉樹パルプとを併用してもよい。また、リンターパルプ(精製綿リンターなど)と木材パルプとを併用してもよい。本発明では重合度の高いセルロース、例えば、リンターパルプ、特にコットンリンターパルプが例示でき、セルロースは、少なくともリンターパルプで構成されたセルロースを使用するが好ましい。セルロースの結晶化度の指標となるα−セルロース含有量は、98%以上(例えば、98.5〜100%、好ましくは99〜100%、さらに好ましくは99.5〜100%程度)である。
セルロースの分子量及び重合度は高く、例えば、粘度平均分子量15×10〜50×10程度であり、平均重合度500〜3000、好ましくは600〜2500、さらに好ましくは700〜2000程度である。好ましいセルロースの平均重合度は、1000〜3000程度であり、平均重合度600〜1000程度のパルプも使用できる。セルロースの平均分子量、平均重合度はE.O.Kvaemer, W.D.Lansing, J.Phys.Chem.,39, 164 (1935)に記載されている。なお、前記リンターパルプと木材パルプとを併用して上記重合度範囲に調整してもよい。
なお、セルロースアセテートの合成にアシル化剤として使用される無水酢酸は、セルロースの結晶領域に対する浸透性又は拡散性が大きい。そのため、無水酢酸の場合にはさほど問題にはならないが、炭素数3以上のアシル化剤を用いると、セルロースの結晶領域に対する浸透性が低いため、均一なエステル化が困難となる。特に、炭素数3以上のアシル化剤の量的割合が多いと、均一な組成のセルロースエステルを得ることが困難となる。とりわけ、リンターパルプは結晶構造が緻密であり、アシル化剤としての無水カルボン酸が拡散又は浸透しにくい。そのため、リンターパルプと炭素数3以上のアシル化剤とを組み合わせてエステル化すると、組成が均一な混合脂肪酸エステルなどのセルロースエステルを得ることが困難となる。
セルロースは、通常、セルロース分子及び/又はヘミセルロース分子に結合した状態などで多少のカルボキシル基を含有していることが知られている。このカルボキシル基含量(濃度)は、TAPPI Standard T237 om-83などの種々の方法により定量できる。本発明で規定するパルプ(セルロース)中のカルボキシル基含量は、このTAPPI Standard T237 om-83により定量した値である。
セルロースのカルボキシル基含量に特に制限はないが、好ましい形態として、カルボキシル基含量の少ないセルロースを使用し、エステル化により生成するセルロースエステル中のカルボキシル基含量(濃度)を低減化することもできる。セルロースのカルボキシル基含量は、広葉樹パルプの場合、1meq/100g以下(例えば、0〜1meq/100g、特に0.001〜1meq/100g)、好ましくは0.8meq/100g以下(例えば、0.001〜0.8meq/100g)、さらに好ましくは0.6meq/100g以下(例えば、0.001〜0.6meq/100g)程度である。リンターパルプでは、カルボキシル基含量がさらに小さくなる。特に好適にはカルボキシル基含量は、好ましくは0.7meq/100g以下(例えば、0.001〜0.7meq/100g)、さらに好ましくは0.4meq/100g以下(例えば、0.001〜0.4meq/100g)程度である。
上記のような低カルボキシル基含量のセルロースの製造方法は、特に限定されず、例えば、パルプ漂白工程における漂白剤による酸化を抑制する方法(例えば、マイルドな条件での漂白)、特定のリンターパルプを選択する方法、ヘミセルロースの含量を低減する方法、パルプ漂白工程においてカルボキシル基含有成分を抽出する方法、カルボキシル基の少ない原材料(木材樹種、リンター種など)を用いてパルプを製造する方法などにより得ることができる。
[活性化剤]
セルロースを活性化処理する活性化剤は、通常、アシル化反応の溶媒(アシル化溶媒)が使用され、アシル化溶媒としては、有機カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸等の脂肪族カルボン酸(直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルカン酸)で構成できる。これらの活性化剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの活性化剤(有機カルボン酸)のうち、分子が小さいほどセルロース内部に浸透又は拡散しやすく、より効果的にセルロースを活性化させることができるため、C1−4アルカン酸、特に入手容易性や回収性などの観点から、C1−2アルカン酸(ギ酸、酢酸)が好ましい。
活性化処理において、活性化剤としては水を含む水系媒質が使用される。この水系媒質は有機カルボン酸を含む水系媒質であってもよく、活性化処理に続く反応に先立ち反応で使用するカルボン酸を用いてセルロース原料から水系媒質を置換することを考慮すると、経済的には多くの有機カルボン酸を用いることが好ましい。一方、セルロースが絶乾状態である場合、有機カルボン酸濃度が90%を越えると活性化効果は急激に低下し、例えば、100%の有機カルボン酸を用いると、本発明の目的とするセルロースエステルが得られない場合が多い。そのため、活性化剤としては、通常、水と有機カルボン酸との混合液が使用される。活性化剤中の水含有量は、0〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは5〜25重量%程度である。なお、セルロースは実際には含水率3〜12重量%(例えば、5〜10重量%)程度の割合で水分を含んでいる場合が多い。
なお、活性化工程は単一の活性化工程に限らず複数の活性化工程で構成してもよい。単一の活性化工程では、少なくとも活性化剤でセルロースを処理すればよく、アシル化触媒(硫酸などの強酸)を含む活性化剤でセルロースを処理してもよい。複数の活性化工程は、活性化剤、アシル化触媒を含む活性化剤、アシル化触媒の濃度の異なる活性化剤を用いて行うことができる。例えば、活性化剤でセルロースを活性化させる第1の活性化工程と、アシル化触媒を含む活性化剤でセルロースを活性化させる第2の活性化工程とで構成してもよく、アシル化触媒の濃度が低濃度の活性化剤でセルロースを処理する第1の工程と、アシル化触媒の濃度が高い活性化剤でセルロースを処理する第2の工程とで構成してもよい。
活性化剤の使用量は、セルロース100重量部に対して、例えば、25〜150重量部、好ましくは30〜125重量部、さらに好ましくは50〜100重量部(例えば、70〜100重量部)程度であってもよい。
活性化処理は、セルロースを活性化剤で処理すればよく、セルロースに活性化剤を噴霧してもよく、活性化剤中にセルロースを浸漬してもよい。通常、活性化剤中に原料セルロースを添加しスラリー状にする場合が多い。活性化処理温度は、0℃〜100℃の範囲から選択でき、工業的な負荷をかけずに活性化処理を行うためには、通常、10℃〜40℃、好ましくは15℃〜35℃程度である。また、活性化処理時間は、0.1時間〜72時間の範囲で選択でき、通常、0.1時間〜3時間、好ましくは0.2時間〜2時間程度である。
[エステル化工程]
セルロースの活性化処理の後、エステル化工程は、アシル化触媒の存在下、少なくとも炭素数2以上のアシル化剤(例えば、アルキルカルボニル基を有するアシル化剤)でセルロースをエステル化することにより行うことができる。アシル化触媒は、強酸、特に硫酸で構成する場合が多い。アシル化触媒(特に、硫酸触媒)の使用量は、通常、セルロース100重量部に対して1〜15重量部(例えば、3〜14重量部、好ましくは5〜13重量部、さらに好ましくは7.5〜12.5重量部)程度の範囲から選択できるが、本発明の好ましい様態では、2〜20重量部、好ましくは4〜15重量部、より好ましくは5〜12重量部程度である。
アシル化剤としては、酢酸クロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライドなどの有機酸ハライドであってもよいが、通常、炭素数2以上のアルカンカルボン酸の酸無水物、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草酸などのC2−6アルカンカルボン酸無水物が使用できる。本発明では無水酢酸よりも反応性の低いアシル化剤を用いても効率よくアシル化できるため、アシル化剤としては、炭素数3以上のアルカンカルボン酸の酸無水物を単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
アシル化剤としては、少なくとも炭素数2以上のアルカンカルボン酸の酸無水物を用いればよく、C2−6アルカンカルボン酸に対応する酸無水物から選択され、かつ炭素数の異なる複数の酸無水物を用いてもよい。例えば、無水プロピオン酸と無水酪酸とを組み合わせて用いてもよい。好ましいアシル化剤は、C2−4アルカンカルボン酸無水物、例えば、無水酢酸単独、無水酢酸と無水プロピオン酸との組み合わせ、無水酢酸と無水酪酸との組み合わせ、無水酢酸と無水プロピオン酸と無水酪酸との組み合わせである。特に、無水酢酸単独、無水酢酸と無水プロピオン酸との組み合わせ、無水酢酸と無水酪酸との組み合わせが好ましい。
なお、複数のアシル化剤を用いて混合脂肪酸セルロースエステルを製造する場合、エステル化工程において、反応系には複数のアシル化剤を共存させてもよく、特定のアシル化剤でセルロースをエステル化した後、他のアシル化剤でセルロースをエステル化してもよい。なお、混合脂肪酸セルロースエステルの製造において、エステル化工程やその後の工程(熟成工程など)において、反応性の高いアシル化剤(特に無水酢酸)や有機カルボン酸(特に酢酸)を用いると、エステル交換反応により他のアシル基(C3−6アシル基)がアセチル基に置換される。そのため、アセチル基を導入するためには、必ずしも無水酢酸を使用する必要はなく、反応系に酢酸を共存させて反応させてもよい。
エステル化工程でのアシル化剤の使用量は、例えば、セルロースの水酸基に対して1.1〜4当量、好ましくは1.1〜2当量、さらに好ましくは1.3〜1.8当量程度である。
アシル化工程において、通常、溶媒又は希釈剤としてアシル化溶媒(酢酸、プロピオン酸、酪酸などの有機カルボン酸)が使用される。アシル化溶媒(有機カルボン酸)の使用量は、例えば、セルロース100重量部に対して50〜700重量部、好ましくは100〜600重量部、さらに好ましくは200〜500重量部程度である。なお、アシル化反応は、慣用の条件、例えば、0〜50℃、好ましくは5〜35℃、さらに好ましく10〜30℃程度の温度で行うことができる。
[エステル化反応停止工程]
本発明ではエステル化反応の終了後、反応系に残存するアシル化剤を失活(クエンチ)するため、反応系に反応停止剤を特定の量的割合で添加する。なお、アシル化剤との反応によりセルローストリアシレートが生成すると反応系が均一となり、その後も均一系を維持するため、反応系が均一なドープ(溶液)を形成した時点でエステル化反応が終了したと判断することができる。より厳密には、エステル化反応系ではアシル化触媒が存在するため、エステル化反応系では、セルロースに対するアシル基の置換度が増大するエステル化反応とグリコシド結合が開裂する解重合反応とが競争するが、前記エステル化反応が優先的に生じる。そのため、均一な反応系が形成されると、エステル化反応が終了したと判断することができる。また、エステル化反応の完了(又は終点)は加水分解反応の開始(又は開始点)でもある。
前記反応停止剤は、アシル化剤を失活可能であればよく、少なくとも水を含んでいる。反応停止剤は、水と、アシル化溶媒(有機カルボン酸など)及び中和剤から選択された少なくとも一種とで構成してもよい。より具体的には、反応停止剤としては、例えば、水単独、水と有機カルボン酸との混合物、水と中和剤との混合物、水と有機カルボン酸と中和剤との混合物などが例示できる。
中和剤としては、アシル化触媒(特に硫酸)又はアシル化剤の一部を中和可能な塩基、例えば、アルカリ金属化合物(例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの炭酸塩、酢酸ナトリウムや酢酸カリウムなどの有機酸塩など)、アルカリ土類金属化合物(例えば、水酸化カルシウムなどの水酸化物、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、酢酸カルシウムなどの有機酸塩など)などが挙げられる。これらの塩基は単独で又は2種類以上組み合わせて使用してもよい。
好ましい様態では、反応停止剤は、アシル化触媒(特に硫酸)の一部(特に極一部)を中和する割合で中和剤を含んでいるか、又は中和剤を含まない。好ましい反応停止剤は、水単独であってもよいが、生成したセルロースエステルの析出を防止するため、水とアシル化溶媒(酢酸などの有機カルボン酸など)との混合液である。このような反応停止剤を用いると、アシル化触媒を比較的高い濃度で残存させることができる。
なお、従来、エステル化反応停止の際に無水酢酸などのアシル化剤の分解による温度上昇が著しいと、セルロースエステルの分子量の低下を招くと考えられており、アシル化剤の分解による発熱を除熱しながら徐々に反応停止剤を加えることが一般的とされていた。これに対して、本発明者らの検討によれば、エステル化から熟成への移行過程での低水分量の反応系において、解重合反応が著しく進行すること、アシル化剤(酸無水物)を短時間内に加水分解させて失活させると、系内の水分率を高めアシル化触媒(特に硫酸)の酸性度が速やかに低下することにより、重合度の低下を抑制することができることを見いだした。そして、このことを利用して適当にエステル化時間を調整することで、従来の方法と同程度の量の低エステル化セルロース(未反応セルロース及び溶解性の低いセルロースエステル)のときには高重合度のセルロースエステルを製造することができ、また、従来の方法と同程度の重合度のセルロースエステルを得るときには低エステル化セルロースの量を低減することができ、相反する特性を両立できる。本発明の反応停止剤の添加方法は、反応停止操作におけるセルロースエステルの重合度低下挙動を詳細に検討した結果見出されたものであり、解重合反応を抑制するため、エステル化反応の停止を短時間とするために設計されたものである。
なお、炭素数が大きなアシル化剤、特にアシル化剤中の炭素数の大きなアシル化剤の割合を大きくしてセルロースをエステル化すると、これらのアシル化剤は無水酢酸よりも拡散速度が小さく、セルロースの結晶領域が十分緩和されることなく反応が進行し、不溶解物が生成する。この問題を解決するため、エステル化工程で添加するアシル化触媒(特に硫酸触媒)の量を多くし、しかも反応停止工程で反応停止剤の添加速度を大きくすると、余剰のアシル化剤(無水カルボン酸など)を反応系から速やかに除去し、系内の水分率を高めアシル化触媒(特に硫酸)の酸性度を速やかに低下できることにより、低エステル化セルロースを低減しつつ、高い重合度を保ってセルロースエステル(混合脂肪酸エステルなど)を得ることができる。 アシル化触媒を部分中和するための中和剤の使用量は、アシル化触媒(特に、硫酸触媒)1当量に対して、0.1〜0.9当量、好ましくは0.2〜0.8当量、さらに好ましくは0.3〜0.7当量程度の範囲から選択できる。
エステル化反応停止剤の添加速度は、反応系に残存するアシル化剤(特に無水酢酸などの酸無水物)1モルに対して、0.3〜10当量/分(例えば、0.5〜9当量/分)、好ましくは0.7〜8当量/分(例えば、1〜7当量/分)、さらに好ましくは1.5〜6当量/分(例えば、1.7〜5当量/分)、特に2〜5当量/分程度であってもよい。エステル化反応停止剤は、少なくとも前記酸無水物を失活させるため、反応系に残存する酸無水物1モルに対して、0.5〜5当量/分(例えば、1.5〜4当量/分)程度の速度で添加する場合が多い。なお、反応系に残存するアシル化剤の量は、セルロースの使用量をグルコース単位に換算し、3つのヒドロキシル基を有するグルコース単位数(グルコース単位数×3モル)をアシル化剤の使用モル数から除算することにより残余モル数として算出できる。
なお、反応系に対するエステル化反応停止剤の添加時間は、反応容器の容量(反応混合物量)などに応じて選択でき、例えば、約0.1分(6秒程度)〜3分程度の範囲から選択できる。好ましい添加時間は、15秒〜2分30秒、さらに好ましくは30秒〜2分程度であり、通常、1分以内である。なお、反応停止剤を迅速に添加するため、補助タンクを設け、この補助タンクから反応系に多量にかつ短時間に添加することもできる。これらの添加時間は、工業的な製造装置においても適用でき、例えば、反応系の反応混合物1000重量部に対して反応停止剤5〜25重量部(例えば、7.5〜20重量部、好ましくは10〜15重量部)程度を添加する添加時間であってもよい。
さらに、反応停止剤の添加に伴って反応系が発熱すると、温度上昇に伴ってセルロース鎖が切断される可能性がある。そのため、反応系に対する反応停止剤の添加は、100℃以下(例えば、10〜75℃、好ましくは15〜60℃、さらに好ましくは20〜50℃)程度の温度で行うのが好適である。
[ケン化熟成工程]
前記エステル化反応を停止した後、生成したセルロースエステルをケン化熟成(脱アシル化または加水分解)することにより、アシル化度及び置換度分布を調整したセルロースエステルを得ることができる。この反応において、エステル化に利用したアシル化触媒(特に硫酸)の一部を中和し、残存するアシル化触媒(特に硫酸)を熟成触媒として利用してもよく、全てのアシル化触媒(特に硫酸)を中和させてもよい。前記ケン化熟成反応(脱アシル化反応)は、必要であれば、他の酸触媒(プロトン酸、ルイス酸)を使用してもよいし、また、アシル化触媒(特に硫酸)の一部を中和してケン化熟成してもよい。
なお、ケン化熟成触媒としての硫酸成分は、反応系に残存する残存硫酸、例えば、遊離の硫酸であってもよく、セルロースと接合した結合硫酸(硫酸エステルなどの形態で結合した硫酸)であってもよい。
脱アシル化反応(熟成または加水分解工程)は、例えば、20℃〜90℃の温度、好ましくは25℃〜80℃、さらに好ましくは30℃〜70℃程度で行うことができる。脱アシル化反応は、不活性ガス雰囲気中で行ってもよく、空気雰囲気中で行ってもよい。
[熟成反応の停止]
所定のセルロースエステルを生成させた後、熟成反応を停止させる。すなわち、前記脱アシル化反応の後、必要により前記塩基で構成された中和剤(好ましくは前記アルカリ金属化合物及び/又は前記アルカリ土類金属化合物、特に少なくともカルシウム化合物)を添加してもよい。
反応生成物(セルロースエステルを含むドープ)を析出溶媒(水、酢酸水溶液など)に投入して生成したセルロースエステルを分離し、水洗などにより遊離の金属成分や硫酸成分などを除去してもよい。なお、水洗の際に中和剤を使用することもできる。
このような方法により、セルロースエステルの重合度の低下を抑制しつつ、不溶物又は低溶解性成分(未反応セルロース、低エステル化セルロースなど)の生成を低減できる。
[セルロースエステル]
本発明のセルロースエステルは、少なくとも炭素数2以上のアシル基が置換しており、前記アシル化剤に対応したセルロースエステル、例えば、セルローストリアシレート(例えば、セルローストリアセテート、セルローストリプロピオネート、セルローストリブチレートなどのセルローストリC2−6アシレートなど)、混合脂肪酸セルロースエステル(例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートヘキサノエートなどのセルロースアセテート脂肪族C3−6アシレート、セルロースプロピオネートブチレートなどのセルロース混合C3−6アシレートなど)などであってもよい。混合脂肪酸セルロースエステルにおいて、アシル基はアセチル基と炭素数3以上のアシル基を有する場合が多い。このようなセルロースエステルは前記の方法などで得ることができる。
好ましい混合脂肪酸セルロースエステルには、少なくともアセチル基を有する混合脂肪酸セルロースエステル(例えば、前記セルロースアセテートC3−6アシレート)、特に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。このようなセルロースエステルは、流延法及び溶融押出成型法によるフィルム成形性が高いだけでなく、延伸性を向上できるため、フィルムに種々の特性を付与できる。
アシル基全体の総平均置換度(セルロースを構成するグルコース単位の2,3および6位に置換するアシル基の総平均置換度)は、高い耐湿性を付与できる範囲、例えば、2.5〜3(例えば、2.5〜2.9)程度の範囲から選択でき、2.6〜2.99、好ましくは2.65〜2.98、さらに好ましくは2.7〜2.97程度であってもよい。また、アシル基全体の総平均置換度は、2.60〜2.96(例えば、2.64〜2.95)程度であってもよい。
混合脂肪酸セルロースエステルにおいて、異なるアシル基(特に炭素数の異なるアシル基)の置換度割合は、用途などに応じて適宜選択でき、例えば、少なくともアセチル基を有するセルロース混酸エステル(セルロースアセテートアシレート)において、アセチル基の平均置換度は、0(0〜1.9程度)であってもよく、0.01〜1.9、好ましくは0.3〜1.5、さらに好ましくは0.5〜1.3、特に0.7〜1.2程度であってもよい。特に、セルロースアセテートアシレートにおいて、アセチル基の置換度を比較的大きくすると、未反応セルロースの低減に有効であるが延伸性が低下しやすい。また、アセチル基の平均置換度が小さいと、未反応セルロースの低減に不利であるが、延伸性は向上する。そのため、アセチル基と他のアシル基の平均置換度は、セルロースエステルの用途に応じて選択できる。
アセチル基以外のアシル基は、例えば、0.60〜2.90、好ましくは1.00〜2.5、さらに好ましくは1.30〜2.00、特に1.50〜1.90程度であってもよい。
すなわち、混合脂肪酸セルロースエステルにおいて、アセチル基の置換度(A)と炭素原子数3以上のアルキルカルボニル基の置換度(B)とは下記式(I)〜(III)を満たす場合が多い。
2.50≦A+B≦2.90 (I)
0.00≦ A ≦1.90 (II)
0.60≦ B ≦2.90 (III)
また、セルロースアセテートアシレートにおいて、アセチル基と炭素原子数3以上のアシル基との割合(モル比)は、前者/後者=50/50〜1/99(例えば、55/45〜2/98)、好ましくは30/70〜3/97、さらに好ましくは20/80〜5/95(例えば、25/75〜10/90)程度であってもよい。
平均置換度(アシル化度)は慣用の方法で測定でき、例えば、酢化度(アセチル化度)は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度に準じて単位重量あたりのアシル基のモル数を測定するとともに、さらに、ケン化によって遊離した各アシル基の比率を液体クロマトグラフィーで測定することにより算出できる。また、アシル化度は、H−NMR、13C−NMRで分析することもできる。
そして、本発明のセルロースエステルは重合度の低下が小さく不溶物の副生量も少ないという特色がある。すなわち、セルロースエステル(混合脂肪酸エステルを含む)の粘度平均重合度は、100以上(例えば、120〜800)の範囲から選択でき、例えば、150〜500(例えば、160〜400)、好ましくは190〜400(例えば、200〜400)、さらに好ましくは250〜350(例えば、270〜330)、特に290〜320程度であってもよい。特に、混合脂肪酸セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、粘度平均重合度120〜400、好ましくは130〜350(例えば、140〜300)、さらに好ましくは150〜250(例えば、170〜250)程度であってもよい。なお、混合脂肪酸セルロースエステルにおいて、比較的アセチル置換度を大きくすると、平均重合度が大きなセルロースエステルが得られる傾向がある。
粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。なお、溶媒はセルロースエステル(混合脂肪酸セルロースエステルを含む)の置換度などに応じて選択できる。例えば、塩化メチレン/メタノール=9/1(重量比)の混合溶液にセルロースエステルを溶解し、所定の濃度c(2.00g/L)の溶液を調製し、この溶液をオストワルド粘度計に注入し、25℃で粘度計の刻線間を溶液が通過する時間t(秒)を測定する。一方、前記混合溶媒単独についても上記と同様にして通過時間t(秒)を測定し、下記式に従って、粘度平均重合度を算出できる。
ηrel=t/t
[η]=(lnηrel)/c
DS=[η]/(6×10−4
(式中、tは溶液の通過時間(秒)、tは溶媒の通過時間(秒)、cは溶液のセルローストリアセテート濃度(g/L)、ηrelは相対粘度、[η]は極限粘度、DSは平均重合度を示す)。
本発明のセルロースエステルは、異物(非溶解性成分)の含有量が著しく少ない。本願明細書では、このような非溶解性成分又は不溶成分(微小な異物)を、塩化メチレン/メタノール(重量比)=9/1の混合溶媒に対して溶解しない成分であると定義する。このような非溶解性成分の詳細は明確ではなく、前記混合溶媒に溶解しなければ特に限定されないが、通常、原料のセルロース又はセルロース由来の副生物、主に、セルロースエステルの合成において反応しなかった未反応セルロース、低置換度のセルロースエステル、セルロースエステル同士が結合硫酸および金属成分(カルシウムなど)を介して結合した結合形成物、これらの混合物などが挙げられる。
塩化メチレン及びメタノールの混合溶液(塩化メチレン/メタノール=9/1(重量比))に対する不溶成分量(不溶解物量)は0.1重量%以下(例えば、0〜0.09重量%、好ましくは0.0001〜0.07重量%、さらに好ましくは0.0005〜0.05重量%、特に0.001〜0.01重量%程度)である。なお、セルロースエステル中の不溶解物量は、次のようにして測定できる。
硫酸を触媒としてセルロースエステルを合成すると、「酢酸繊維」(和田野基著 丸善株式会社発行)などにも記載されているように、セルロースエステルは、通常、残存する硫酸成分を含有する。この残存硫酸成分の大部分は、洗浄処理されたセルロースエステルにおいて、セルロースに結合した結合硫酸である。この結合硫酸は、金属成分とのイオン的な結合によりセルロースエステルの結合物を副生して、微小異物となり得るので、可能な限り少ないのが好ましい。しかし、触媒硫酸の使用量を単に低減しても、未反応セルロースや低置換度のセルロースエステルなどが生成しやすくなるため、非溶解性成分の量を低減できない。そのため、本発明では、製造条件を調整することにより非溶解性成分を著しく低減する。
[耐熱処理]
セルロースエステルの製造工程(例えば、製造工程の最終段階)においては、耐熱処理を行うのが望ましい。すなわち、セルロースエステルは、通常、熱が作用し水分が存在している環境下では加水分解を起こす。そのため、熱安定性や湿熱安定性を向上させるため、安定剤、例えば、アルカリ金属(リチウム,カリウム,ナトリウムなど)又はその塩やその化合物、アルカリ土類金属(カルシウム,マグネシウム,ストロンチウム,バリウムなど)又はその塩やその化合物を含有させることにより、硫酸基を不活性化し、耐熱安定性を付与してもよい。安定剤の含有量は残存硫酸成分に対して大過剰であってもよい。
[セルロースエステル溶液(ドープ)]
セルロースエステルは、溶媒に溶解してセルロースエステル溶液(ドープ)を調製してもよい。溶媒としては、有機溶媒、例えば、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレンなど)、ケトン類(アセトンなど)、エステル類(酢酸メチルなど)などが例示できる。本発明のセルロースエステルは、塩化メチレンなどのハロゲン含有溶媒への溶解性に優れるのみならず、非ハロゲン系溶媒を用いてもドープの調製が可能である。
本発明のセルロースエステル溶液は、一般的なソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて調製することができる。比較的低濃度の溶液は常温で攪拌することにより得ることができる。高濃度の溶液では、加圧および加熱条件下で攪拌して調製することが好ましい。具体的には、セルロースエステルと溶媒を加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常、60℃以上、好ましくは80℃乃至110℃である。
セルロースエステル溶液には、その用途に応じて、添加剤を添加してもよい。添加剤としては、可塑剤、紫外線防止剤や劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン類)などが例示できる。
可塑剤としては、トリフェニルフォスフェート(TPP)、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)などのリン酸エステル系可塑剤、ジオクチルフタレート(DOP)などのフタル酸系可塑剤、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)およびクエン酸アセチルトリエチルなどのクエン酸系可塑剤などが含まれる。本発明のセルロースエステルは、従来のセルロースエステルと比較して、可塑剤の添加量が少なくても済むという利点がある。このため、可塑剤の量が15重量%以下でも、可塑効果が得られる。
[剥離剤]
本発明の光学フィルムは水溶液中での酸解離指数pkaが1.93〜4.50である少なくとも一種類の酸(クエン酸など)、この酸のアルカリ金属塩、および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を剥離剤として含むことができる。剥離剤はセルロースエステル溶液を流延する前に添加することができ、セルロースエステルに含有されていてもよい。
[セルロースエステルフィルムの製造]
セルロースエステルフィルムを製造する方法および設備は、従来のセルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法と溶液流延製膜装置が使用できる。例えば、セルロースエステル溶液を、支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に流延する。複数のセルロースエステル液を、逐次流延あるいは共流延して二層以上のセルロースエステルフィルムを製造してもよい。
なお、混合脂肪酸セルロースエステルは溶融成形性にも優れる。そのため、上記溶液流延法に限らず、溶融流延法、押出成形法なども利用でき、環境上有用である。
[光学フィルムの延伸]
本発明のセルロースエステルフィルムは延伸されていてもよい。延伸方法は特に制限されず、フィルムの延伸には、一軸延伸又は二軸延伸が採用できる。フィルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比率)は、10〜600%であってもよく、好ましくは10〜300%(例えば、15〜100%)、さらに好ましくは10〜70%(例えば、20〜50%)、特に10〜30%程度である。なお、延伸倍率は、フィルムの特性(光学的特性など)を考慮して選択できる。一般的な光学フィルムでは延伸倍率20〜40%(例えば、25〜35%)程度であってもよい。
[成形体]
セルロースエステルで構成された成形体は、繊維状などの二次元状形態、フィルムやシートなどの二次元状形態、湾曲又は立体形状の三次元形態であってもよい。成形体は、通常、フィルム又はシートである場合が多い。このような成形体(特にフィルム)では、従来は実現が困難であった広い範囲の面内位相差及び面外位相差を発現させながら、寸法及び光学特性が湿度に依存して変化することがない。
本発明のセルロースエステルは光学的特性に優れるため、光学フィルム、例えば、偏光板の保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、カラーフィルタ、視野角拡大フィルム、反射防止フィルム、写真感光材料のフィルムなどとして使用できる。特に、偏光板の保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムから選択された光学フィルムとして有用である。光学補償フィルムについて言及すると、本発明のセルロースエステルフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として好ましく用いられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、各実施例において、セルロースエステル、その溶液およびフィルムの化学的性質および物理的性質は、以下のように測定および計算した。
(1)セルロースエステルの置換度
セルロースエステルのDSester(アシル置換度)は、測定溶媒として重クロロホルム(CDCl)を用いH−NMR(核磁気共鳴)法により測定することができる。
(2)不溶解物量
[不溶解物量]
塩化メチレン:メタノール=9:1(重量比)の混合溶媒に、セルロースエステルを2重量%固形分濃度に溶解し、得られた溶液を、ガラスフィルター(孔径5〜10μm)を使用して濾過する。ガラスフィルターとしては相互理化学硝子製作所製の「G―4」を使用できる。フィルターに付着している残渣及びドープを塩化メチレン:メタノール=9:1(重量比)の混合溶媒で洗浄する。濾過残渣をガラスフィルターごと恒量になるまで乾燥する。濾過前後でのガラスフィルター重量を測定し、次式より不溶解物量を算出する(式中、W1は濾過前ガラスフィルター重量(g)、W2は濾過後ガラスフィルター重量(g)を示し、Sはセルロースエーテルアセテート重量(g)を示す)。
不溶解物量(重量%)=[(W2−W1)/S]×100
(3)重合度
塩化メチレン/メタノール=9/1(重量比)の混合溶液を用い、前記極限粘度法により粘度平均重合度を測定した。
実施例1〜3及び比較例1〜3
表1に示す条件でセルロースを2段階で活性化処理し、硫酸触媒の存在下、無水酢酸、無水酪酸及び/又は無水プロピオン酸を用いてエステル化した後、酢酸/水混合液を反応系に添加してエステル化反応を停止し、ケン化熟成し、酢酸マグネシウム/酢酸/水混合液を添加して反応を停止し、生成した反応混合液を水/酢酸溶液に注入してセルロースエステルを沈殿させ、洗浄することによりセルロースエステルを得た。
結果を表1に示す。
Figure 2007197563
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例ではブチリル基又はプロピオニル基の置換度が大きくても重合度の高いセルロースエステルを得ることができる。

Claims (15)

  1. セルロースを活性化剤で活性化処理する工程、アシル化触媒の存在下、少なくとも炭素数2以上のアシル化剤でセルロースをエステル化する工程、および生成したセルロースエステルをケン化熟成する工程を含むセルロースエステルの製造方法であって、エステル化工程の後、反応系に残存するアシル化剤1モルに対して、エステル化反応停止剤を0.3〜10当量/分の速度で添加するセルロースエステルの製造方法。
  2. 反応停止剤が、少なくとも水を含む請求項1記載の方法。
  3. 反応系にエステル化反応停止剤を0.1〜3分で添加する請求項1記載の方法。
  4. 100℃以下の温度で反応停止剤を反応系に添加する請求項1記載の方法。
  5. 活性化剤が有機カルボン酸で構成され、アシル化剤が有機カルボン酸無水物で構成され、アシル化触媒が硫酸で構成されている請求項1記載の方法。
  6. α−セルロース含有量98%以上、平均重合度1000〜3000のセルロースを用い、少なくともC3−6アルカンカルボン酸無水物で構成されたアシル化剤を用いる請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. セルロースが精製綿リンターである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 1−5アルカン酸から選択された少なくとも一種の活性化剤でセルロースを活性化させる第1の活性化工程と、硫酸とC1−5アルカン酸から選択された少なくとも一種の活性化剤とでセルロースを活性化させる第2の活性化工程と、硫酸の存在下、活性化されたセルロースを、C2−6アルカンカルボン酸に対応する酸無水物から選択され、かつ炭素数の異なる複数の酸無水物でエステル化し、混合脂肪酸セルロースエステルを生成させるエステル化工程と、反応系に残存する酸無水物1モルに対して、エステル化反応停止剤を0.5〜5当量/分の速度で添加して少なくとも前記酸無水物を失活させる工程と、硫酸又は残存硫酸の存在下、生成した混合脂肪酸セルロースエステルを熟成する熟成工程とを含む請求項1記載の方法。
  9. セルロースを活性化剤で活性化処理する工程、アシル化触媒の存在下、少なくとも炭素数2以上のアシル化剤でセルロースをエステル化する工程、および生成したセルロースエステルをケン化熟成する工程を含み、エステル化工程の後、反応系に残存するアシル化剤1モルに対して、エステル化反応停止剤を0.3〜10当量/分の速度で添加し、セルロースエステルの重合度の低下を抑制しつつ、不溶物の生成を低減する方法。
  10. 少なくとも炭素数2以上のアシル基が置換し、アシル基全体の平均置換度が2.5〜3、グルコース単位の6位のアシル基の平均置換度が0.7〜1であるセルロースエステルであって、粘度平均重合度120〜400、塩化メチレン及びメタノールの混合溶液(塩化メチレン/メタノール=9/1(重量比))への不溶成分量が0.1重量%以下であるセルロースエステル。
  11. アセチル基と、炭素数3〜6のアルキルカルボニル基とを有する請求項10記載のセルロースエステル。
  12. 炭素数2以上のアルキルカルボニル基を有する混合脂肪酸セルロースエステルであって、アセチル基の平均置換度(A)と炭素原子数3以上のアルキルカルボニル基の平均置換度(B)とが下記式(I)〜(III)を満たす混合脂肪酸セルロースエステルである請求項10記載のセルロースエステル。
    2.50≦A+B≦2.90 (I)
    0.00≦ A ≦1.90 (II)
    0.60≦ B ≦2.90 (III)
  13. セルロースエステルが、セルロースアセテートプロピオネート又はセルロースアセテートブチレートである請求項10記載のセルロースエステル。
  14. 請求項10〜13のいずれかに記載のセルロースエステルで構成された成形体。
  15. 偏光板の保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムから選択された光学フィルムである請求項14記載の成形体。
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