JP2014224213A - 防曇性セルロースエステルフィルム、該防曇性セルロースエステルフィルムを用いた防曇ガラス - Google Patents

防曇性セルロースエステルフィルム、該防曇性セルロースエステルフィルムを用いた防曇ガラス Download PDF

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Abstract

【課題】高い防曇性を維持しつつ、水を用いた貼合時の作業性に優れ、シワ、剥がれ等が抑制された防曇性フィルムを提供する。【解決手段】メチレンクロライド可溶層と、該可溶層に形成されたメチレンクロライド不溶層とを有し、膜厚が65μm以下であり、前記不溶層の厚みd1と、前記可溶層の厚みd2とが、以下の下記式(1)および(2)を満たす防曇性セルロースエステルフィルム。0.005μm<d1<0.500μm ・・・ (1)0.0001μm<d1/d2<0.0200 ・・・ (2)【選択図】図1

Description

本発明は、防曇性セルロースエステルフィルム、該防曇性セルロースエステルフィルムを用いた防曇ガラスに関する。
従来、浴室、洗面化粧台、自動車用の鏡、食品保冷ショーケース、建造物、車両の窓ガラス、冷蔵庫、冷凍庫のガラス扉、水槽、看板等のガラス材は、降雨や空気中の湿分が結露することにより表面に水滴が付着し、視認性が低下するという問題がある。この問題を解決するために、これらの部材表面に防曇性フィルムを貼着される。
代表的な防曇性フィルムとして、アルカリ処理したセルロース系合成樹脂シートやフィルムを利用したものが知られている。特許文献1には、セルロースエステルフィルムのエステル部分をアルカリ処理によって水酸基にした単一層のフィルムが開示されている。このような、ほぼセルロースからなる単一層の防曇性フィルムは、積層タイプの防曇性フィルムに比べて、経時での層間膜剥がれが抑制され、また繰返しの防曇適性が高いとされている。また、特許文献2には、セルロースエステルフィルムをアルカリ鹸化処理することで表面付近のアセチル基を水酸基化して、防曇機能を持たせる方法が開示されている。
国際公開第2008/029801号 特開昭60−101042号公報
これら従来のセルロース系フィルムでは、充分な防曇性を持たせるために、セルロース系樹脂の鹸化層(つまり、ほとんどセルロースとなっている層)が充分に厚く形成されている。そのため、水を用いてガラスなどへ貼合した場合に、乾燥に長時間を要するという問題がある。また、これらのセルロース系フィルムでは、セルロース樹脂の含水寸法変動を抑制する疎水系の添加剤がほとんど使用されないため、含水による寸法変化が非常に大きくなる。そのため、これらのセルロース系フィルムは、水を用いてガラスなどへ貼合した場合に、乾燥過程や経時的なフィルムの変形、シワの発生等により、フィルムが剥がれやすいという問題がある。
さらに、近年では、冷凍機での氷点下の環境に曝された場合や、長時間水が付く条件においても優れた防曇性を示すことが要求されている。しかしながら、これらのセルロースエステルフィルムにおいて、たとえば冷凍機での氷点下の環境において使用できるよう鹸化処理で防曇性を付与する場合、フィルム内部にまで鹸化による脱エステル化が進行してしまう。また、疎水性の強い可塑剤を用いると、防曇機能発現に必要な表面鹸化が進行しにくく、非常に長時間の鹸化処理が必要となる。このようなことから、アルカリ水溶液による鹸化処理では、セルロースエステルフィルムで、種々の環境下において、防曇性と水を使用した貼合作業性や経時的に発生するシワおよび剥がれの抑制とを両立させることは困難である。
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、種々の環境下において高い防曇性を維持しつつ、水を用いた貼合時の作業性に優れ、シワ、剥がれ等が抑制された防曇性セルロースエステルフィルムおよび該防曇性セルロースエステルフィルムを用いた防曇ガラスを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、セルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面に防曇層(メチレンクロライド不溶層)を設け、該防曇層の厚みおよび厚みの割合が特定の範囲となるように制御することによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の一局面による防曇性セルロースエステルフィルムは、セルロースエステル樹脂組成物を含み、メチレンクロライド可溶層と、該メチレンクロライド可溶層の少なくとも一方の面に一体的に形成されたメチレンクロライド不溶層とを有し、膜厚が65μm以下であり、前記メチレンクロライド不溶層の厚みd1と、前記メチレンクロライド可溶層の厚みd2とが、以下の下記式(1)および(2)を満たすことを特徴とする。
0.005μm<d1<0.500μm ・・・ (1)
0.0001μm<d1/d2<0.0200 ・・・ (2)
本発明の防曇性セルロースエステルフィルムは、メチレンクロライド可溶層と、メチレンクロライド不溶層とが一体的に形成されているため、水を用いてガラスなどへ貼合した際に、乾燥過程や経時的なフィルムの変形、シワの発生等により層間の剥がれが発生することがない。また、d1およびd1/d2が上記範囲内に調整されているため、種々の環境下(たとえば冷凍庫内や高温高湿環境下)においても優れた防曇性を発揮するとともに、吸湿時の寸法安定性が優れる。
前記メチレンクロライド可溶層における前記セルロースエステル樹脂組成物の重量平均分子量が、75000以上300000以下であることが好ましい。この場合、防曇性セルロースエステルフィルムは、耐熱性や引張強度が低下することなく、シワや剥がれの発生が効果的に抑制される。
防曇性セルロースエステルフィルムは、幅手方向に1.05倍以上1.50倍以下で一軸延伸される工程を経て作製されることが好ましい。この場合、防曇性セルロースエステルフィルムは、優れた防曇性を維持したまま、経時的なシワの発生が抑制されるため、ガラス等に貼合する際に、作業性が優れる。
前記メチレンクロライド可溶層における前記セルロースエステル樹脂組成物のアシル基置換度が、2.0以上3.0以下であることが好ましい。この場合、防曇性セルロースエステルフィルムは、優れた防曇性を発揮する。また、このようなセルロースエステル樹脂組成物は、フィルム作製時に取り扱いやすく、生産安定性が優れる。
また、本発明の他の一局面による防曇ガラスは、上記防曇性セルロースエステルフィルムが貼合されていることを特徴とする。本発明の防曇ガラスは、上記防曇性セルロースエステルフィルムを貼合することにより容易に作製することができる。得られた防曇ガラスは、種々の環境下において優れた防曇性を示す。
本発明によれば、高い防曇性を維持しつつ、水を用いた貼合時の作業性に優れ、シワ、剥がれ等が抑制された防曇性セルロースエステルフィルムおよび該防曇性セルロースエステルフィルムを用いた防曇ガラスを提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態の防曇性セルロースエステルフィルムの基本構成を示す模式的な断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<防曇性セルロースエステルフィルム>
図1は、本発明の一実施形態の防曇性セルロースエステルフィルム1(以下、単にフィルム1ともいう)の基本構成を示す模式的な断面図である。フィルム1は、防曇保護層11と、防曇保護層11の一方の面に形成された防曇層12とを有する。なお、フィルム1では、防曇保護層11の片面に防曇層12が設けられているが、防曇層12は、防曇保護層11の少なくとも一方の面に形成されていればよく、両面に設けられていてもよい。また、防曇層12は、図1に示されるように、フィルム1の表面全体に設けられることが好ましいが、少なくとも一部にのみに設けられてもよい。
防曇保護層11は、親水化処理されていないセルロースエステルフィルムの内部領域である。また、防曇保護層11は、メチレンクロライドに可溶な層(メチレンクロライド可溶層11ともいう)である。防曇層12は、後述する製造方法によりセルロースエステルフィルムを製膜後に、セルロースエステルフィルムの表面を親水化処理することにより形成される。また、防曇層12は、メチレンクロライドに不溶な層(メチレンクロライド不溶層12ともいう)である。本実施形態のフィルム1では、メチレンクロライド可溶層11とメチレンクロライド不溶層12とは、一体的に形成されている。そのため、メチレンクロライド可溶層11とメチレンクロライド不溶層12とは、層間剥離しにくい。その結果、フィルムの白化や失透が防がれる。
なお、本実施形態では、防曇保護層11と防曇層12とが一体的に形成されており、セルロースエステルのアシルオキシ基の置換度がフィルム表層(防曇層12)からフィルム内層(防曇保護層11)へと向かって次第に大きくなる構成を有する。そこで、本明細書では、これらの層を、メチレンクロライドに対する溶解性に基づいて定義している。すなわち、所定のアシル基置換度を示すセルロースエステルフィルムがメチレンクロライドに可溶であり、親水化されたセルロースエステルフィルムがメチレンクロライドに不溶である性質を利用して、メチレンクロライドに可溶な領域をメチレンクロライド可溶層11(防曇保護層11)とし、メチレンクロライドに不溶な領域をメチレンクロライド不溶層12(防曇層12)と定義している。なお、これら防曇保護層11および防曇層12の詳細、および、メチレンクロライドを用いて層の厚みを算出する方法については後述することとし、まずはこれらの層の厚みの関係を詳述する。
本実施形態のフィルム1は、メチレンクロライド不溶層12の厚みd1と、メチレンクロライド可溶層11の厚みd2とが、以下の関係式を満たす。
0.005μm<d1<0.500μm ・・・ (1)
0.0001μm<d1/d2<0.0200 ・・・ (2)
式(1)に関して、d1が0.005μm未満の場合、防曇性が充分ではなく、種々の環境下(たとえば冷凍機内)で使用される場合に充分な防曇性が発現できない可能性がある。一方、d1が0.500μmを超える場合には、水を用いた貼合時にカールが大きくなり作業性を損なう傾向がある。また、d1は、0.01μm以上0.4μm以下であることが好ましい。d1は、セルロースエステルの成分と、照射する活性線やプラズマの種類や照射条件によって制御することができる。なお、これらの値と防曇性との関係は、セルロースエステルの種類や防曇処理方法によって多少の違いがあり、たとえば低圧水銀灯とエキシマUV照射でd1が同じ値でも、防曇性に差が出ることがある。
式(2)に関して、d1/d2が0.0001未満である場合には、水を用いた貼合で乾燥性(水抜け)が悪くなり、充分な作業性が確保できない可能性がある。一方、d1/d2が0.0200を超える場合には、水を用いた貼合時に変形が大きくなる傾向がある。また、d1/d2は、0.0004以上0.0200以下であることが好ましく、0.0005以上0.0200以下であることがより好ましい。
なお、メチレンクロライド不溶層12がフィルム1の両面に形成されている場合には、それぞれのメチレンクロライド不溶層12が上記式(1)および(2)を満たすことが好ましいが、少なくとも一方が上記式(1)および(2)を満たしていればよい。
フィルム1の膜厚(d1+d2)は、65μm以下であり、好ましくは20μm以上60μm以下であり、より好ましくは20μm以上45μm以下である。膜厚が65μmを超える場合、フィルム1の吸湿時の寸法変化が大きくなり、過酷な環境下において、シワ、剥がれが発生する傾向がある。また、水を用いた貼合の際に水抜けが悪くなり、乾燥に長時間を要する傾向がある。なお、膜厚は、セルロースエステル製膜時の支持体への流涎条件やセルロースエステルドープの固形分比率などを公知の方法で調整することにより制御することができる。
次に、メチレンクロライド可溶層およびメチレンクロライド不溶層の構成について詳述する。
(メチレンクロライド可溶層)
メチレンクロライド可溶層は、セルロースエステル樹脂組成物(以下、単にセルロースエステルともいう)、および必要に応じて、後述する可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子、染料、糖エステル化合物、アクリル系共重合体などの添加剤を含む。
本明細書において、セルロースエステルとは、セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位中の2位、3位および6位の水酸基(−OH)の水素原子の一部、または全部がアシル基で置換されたセルロースアシレート樹脂をいう。
セルロースエステルとしては特に限定されず、たとえば、セルロースの水酸基部分の水素原子が、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ラウロイル基、ステアロイル等の炭素数2〜20の脂肪族アシル基で置換されたセルロースエステル樹脂が挙げられる。これらのうち、炭素数2〜4のアシル基を有するものが好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基がより好ましい。なお、セルロースエステル中のアシル基は単一種であってもよいし、複数のアシル基の組み合わせであってもよい。
具体的な好ましいセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアシレート樹脂が挙げられ、より好ましくは、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースエステルプロピオネート等のセルロースアシレート樹脂が挙げられる。これらのセルロースエステルは単一種を使用してもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アセチルセルロースが好ましい。
セルロースエステルの原料のセルロースとしては特に限定されないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等が挙げられる。またこれらから得られたセルロースエステルは、それぞれ任意の割合で混合して使用することができる。
セルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸など)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、触媒(硫酸など)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の三個のヒドロキシ基(水酸基)は、有機酸のアシル基で置換されている。同時に2種類の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースエステル、たとえばセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル置換度を有するセルロースエステル樹脂を合成することができる。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥などの工程を経て、セルロースエステル樹脂が製造される。
具体的には、セルロースエステルは、特開平10−45804号公報、特開2005−281645号公報、特開2003−270442号公報などに記載の方法を参考にして合成することができる。市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60S等が挙げられる。
メチレンクロライド可溶層におけるセルロースエステルのアシル基の置換度は、防曇性および工程での生産安定性の観点から2.0以上であることが好ましい。一方、アシル基の置換度は、フィルムの経時耐久性の点から3.0以下が好ましい。なお、本明細書においてアシル基の置換度とは、1グルコース単位あたりのアシル基の平均数を示し、1グルコース単位の2位、3位および6位の水酸基の水素原子のいずれかがアシル基に置換されている割合を示す。すなわち、2位、3位および6位の水酸基の水素原子がすべてアシル基で置換されたとき置換度(最大の置換度)は3.0となる。アシル基の置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
メチレンクロライド可溶層におけるセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)は、フィルムの耐熱性や強度(引っ張りや引裂きに対する耐性)を向上させる点から、75,000以上であることが好ましく、より好ましくは80,000以上であり、さらに好ましくは85,000以上である。一方、分子量が小さいほど、経時でのフィルムの変形力を樹脂分子間で吸収し、シワ、剥がれを抑制しうるため、重量平均分子量(Mw)は、300,000以下であることが好ましく、より好ましくは200,000以下であり、さらに好ましくは150,000以下である。
メチレンクロライド可溶層におけるセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnの値は、2.0〜3.5であることが好ましい。これらセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記の条件により測定することができる。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000((株)日立製作所製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
(メチレンクロライド不溶層)
メチレンクロライド不溶層は、高湿度環境や温度差の大きな環境において発生する水分を吸収して、または付着した水滴を膜状に広げて、曇りを防止する機能(防曇性)を有する。
メチレンクロライド不溶層は、セルロースエステルフィルムの表面を親水化処理することにより防曇性が付与されており、メチレンクロライド可溶層と一体的に形成されている。メチレンクロライド不溶層は、セルロースエステル中のアシルオキシ基(−O−アシル基)の一部が水酸基、カルボニル基、カルボン酸基などの酸素含有極性基で置換された親水性のセルロース誘導体および/またはセルロースエステル中のアシルオキシ基の全部が水酸基で置換されたセルロース、ならびに必要に応じて、後述する可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子、染料、糖エステル化合物、アクリル系共重合体などの添加剤を含む。
メチレンクロライド不溶層におけるセルロースエステルのアシル基の平均置換度は、充分な防曇性能を発現させる観点および工程での生産安定性の観点から、0.0〜1.9が好ましく、0.0〜1.5がより好ましい。
本明細書において親水化処理とは、セルロースエステル中のアシルオキシ基を水酸基、カルボニル基、カルボン酸基などの酸素含有極性基へと置換する処理をいい、水酸基に置換することが特に好ましい。親水化処理により、防曇層には多数の親水性基が導入され、親水性および吸水性に優れた層となり、防曇性能が発現する。親水化処理により、セルロースエステルフィルムの表層の親水化処理された領域が防曇層(メチレンクロライド不溶層)となる。
防曇性を付与するための親水化処理の方法としては特に限定されず、光照射などの活性線照射や、プラズマ処理による表面処理方法が利用することができる。具体的には、真空紫外線を用いた処理などがあり、たとえば、波長が230nm以下となる領域を含む光照射処理により、セルロースエステルフィルムの表面を親水化して防曇性を付与することができる。セルロースエステルフィルムの親水化処理は、230nm以下の波長を用いる方法としては、窒素環境下で、たとえばAr、Kr、Xe、KrCl、XeClなどを用いたエキシマUVランプによりエキシマUVを照射し、表面を親水化する方法がある。エキシマUV処理は、窒素パージや真空化により、酸素濃度を下げた状態(概ね1%より低くする)でエキシマUV光源により光照射する処理方法である。ウシオ電機(株)や(株)エム・ディ・エキシマより市販されているエキシマ光源ユニットを適宜用いることができる。あるいは、エキシマレーザなどでフィルム表面をスキャンし、表面を親水化する方法がある。エキシマ光源の種類については発光波長が230nm以下が含まれるものであればよい。
親水化処理として、低圧水銀灯を用いた表面処理を行ってもよい。これらのうち、フィルムの表面部(深さ方向)への親水化に優れ、充分な表面の吸水性能を発揮し、経時での性能変化が少ない防曇層を簡便に得ることができる観点から、エキシマUV処理が好ましい。低圧水銀灯としては、ウシオ電機(株)などから市販されている低圧水銀灯を用いる事ができる。これらの場合、波長230nm以下を有する光源であることから、エキシマ光源の方が好ましい。
ほかにも、コロナ放電処理により親水化処理を行ってもよい。コロナ放電処理とは、大気圧下、電極間に1kV以上の高電圧を印加し、放電することで行う処理である。コロナ放電処理によって、セルロースエステル樹脂表面に酸素含有極性基(水酸基、カルボニル基、カルボン酸基等)が発生し、表面が親水化される。コロナ放電処理は、春日電機(株)や(株)トーヨー電機などで市販されている装置を用いて行うことができる。
また、プラズマ処理により親水化処理を行ってもよい。プラズマ処理は、プラズマ化したガスを基材表面に照射し、基材表面を改質する処理であり、グロー放電処理、フレームプラズマ処理等が挙げられる。これらは、たとえば、特開平6−123062号公報、特開平11−293011号公報、特開平11−005857号公報等に記載された方法を用いることができる。プラズマ処理によって、セルロースエステル樹脂表面に酸素含有極性基(水酸基、カルボニル基、カルボン酸基等)が発生し、表面が親水化される。たとえば、グロー放電処理は、相対する電極の間にフィルムを置き、装置中にプラズマ励起性気体を導入し、電極間に高周波電圧を印加することにより、該気体をプラズマ励起させ、電極間においてグロー放電を行うものである。これにより、セルロースエステルの表面が処理されて、親水性が高められる。
上記処理の輝度および照射時間等の諸条件と、セルロースエステルフィルムの組成とを変化させることにより、メチレンクロライド不溶層の厚みd1を0.005μm以上0.500μm以下に制御することができる。
<厚みd1および厚みd2の測定方法>
次に、図1に示されるメチレンクロライド不溶層12の厚みd1と、メチレンクロライド可溶層11の厚みd2との測定方法について説明する。本実施形態では、メチレンクロライドを用いて以下の方法により所定の条件下でフィルムを溶解し、溶解したフィルム領域の厚みに基づいて、d1とd2とを算出している。
具体的には、まず、親水化処理(防曇処理)を行ったセルロースエステルの切片を樹脂包埋する。その際に用いる樹脂はフェノール樹脂などのメチレンクロライドに溶解しにくい樹脂を用いる。この際、セルロースエステルと包埋樹脂との境界を明確にする目的で、セルロースエステルの切片に白金などの金属を薄く蒸着するなどの方法を用いるのもよい。樹脂に包埋した前記セルロースエステルフィルムはミクロトームなどを用いて断裁しセルロースエステルフィルムの断面が見える状態で、電子顕微鏡観察し、全体の膜厚(d1+d2)を測定する。あるいは、精度が充分であれば膜厚計を用いた測定を行ってもよい。高い精度での測定を行う必要があるため、断面の電子顕微鏡観察による膜厚測定,算出が好ましい。
続いて、包埋されたフィルムをミクロトーム等で断裁し、フィルム断面が表に出ている状態で、メチレンクロライドに樹脂面を浸漬して、密閉した状態で23℃、24時間浸漬させて溶解処理を行う。その際の目安として、フィルム切片の100倍以上の容積のメチレンクロライドを用いて溶解処理を行う。この際にメチレンクロライドを激しく攪拌すると、セルロースエステルフィルムのメチレンクロライド不溶層が剥離したり、あるいはメチレンクロライドに分散してしまう恐れがあるため、数分〜数十分に一度程度、ゆっくりと攪拌する。また、セルロースエステルを溶解するメチレンクロライドは、塩化カルシウムなどを用いて、事前に脱水処理をしておく。脱水処理を行わないと、メチレンクロライド不溶層が水を吸って膨潤してしまい正しい膜厚測定ができないことがある。
なお、包埋したフィルムの本来の可溶部分のすべてが溶解する必要はなく、表面の不溶層が認められる程度の溶解処理で充分である。具体的には、表に出ている断面の、表層1〜100μm程度が溶解すれば充分である。溶解処理を行った後、フィルム切片を包埋した樹脂ごと、オーブンなどの乾燥装置を用いて乾燥させる。その際に、極力水を付けないように、たとえば圧縮空気を用いる、あるいは減圧乾燥器等を用いるのもよい。
これを透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡を用いて断面観察によりメチレンクロライド不溶層の厚みd1を測定する。この際、あらためて樹脂で包埋してからミクロトームなどで断裁して、その断面を観察してもよい。メチレンクロライド可溶層の厚みd2は、先に測定した全体の膜厚(d1+d2)からd1を差し引いて算出する。なお、断面が不定形状である場合には、5個のサンプルを用い、各2点以上の測定を行い各点の平均値を採用してもよい。
<フィルムに含まれるその他の添加剤>
フィルムは、防曇性フィルムの性能をさらに向上させる目的で、メチレンクロライド可溶層および/またはメチレンクロライド不溶層に、以下の(a)可塑剤、(b)紫外線吸収剤、(c)微粒子、(d)染料、(e)糖エステル化合物、(f)アクリル系共重合体等の添加剤を含んでもよい。中でも、(a)可塑剤、(b)紫外線吸収剤、(c)微粒子のうち少なくとも1種以上を含むことが好ましく、(a)可塑剤、(b)紫外線吸収剤および(c)微粒子のすべてを含むことがより好ましい。
(a)可塑剤
フィルムは、機械強度や耐水特性を向上させる目的で、可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤としては、ポリエステル化合物が好ましい。
ポリエステル化合物としては特に限定されないが、たとえば、ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体とグリコールとの縮合反応により得られる、末端がヒドロキシ基(水酸基)となる重合体(以下、「ポリエステルポリオール」という)、または、当該ポリエステルポリオールの末端のヒドロキシ基がモノカルボン酸で封止された重合体(以下、「末端封止ポリエステル」という)を用いることができる。なお、本明細書において、エステル形成性誘導体とは、ジカルボン酸のエステル化物、ジカルボン酸クロライド、ジカルボン酸の無水物のことである。
上記ポリエステルポリオールや末端封止ポリエステルを用いることにより、フィルムの経時での剥がれやシワ発生が、一層抑制される。このような効果が得られる理由は明確ではないが、上記化合物は、セルロースエステルフィルムの製膜時に面方向に配向し、吸湿時の変形応力が厚み方向へ分散されるため、フィルムの経時での剥がれ、シワが抑えられるものと推定される。
ポリエステル化合物の具体例としては、下記一般式(A)で表されるエステル系化合物が挙げられる。
B−(G−A)n−G−B ・・・ (A)
(式中、Bはヒドロキシ基、ベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基であり、Gは炭素数2〜18のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基であり、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜16のアリールジカルボン酸残基であり、nは1以上の整数である。)
上記一般式(A)において、Bがヒドロキシ基である化合物がポリエステルポリオールに相当し、Bがベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基である化合物が末端封止ポリエステルに相当する。一般式(A)で表されるポリエステル化合物は、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られるものである。
一般式(A)で表されるポリエステル化合物の脂肪族モノカルボン酸成分としては、たとえば、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸(酪酸)が挙げられ、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。
一般式(A)で表されるポリエステル化合物のベンゼンモノカルボン酸成分としては、たとえば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、脂肪族酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。特に、安息香酸、またはパラトルイル酸を含むことが好ましい。
一般式(A)で表されるポリエステル化合物の炭素数2〜18のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール(1,2−プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール(1,3−プロピレングリコール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。なかでもエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル1,3−プロパンジオールが好ましく、さらに好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールである。特に、炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため好ましい。より好ましくは炭素数2〜6のアルキレングリコールであり、さらに好ましくは炭素数2〜4のアルキレングリコールである。
一般式(A)で表されるポリエステル化合物の炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、たとえば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
一般式(A)で表されるポリエステル化合物の炭素数6〜12のアリールグリコールとしては、たとえば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、1,4−ベンゼンジメタノール等の環状グリコール類があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
一般式(A)で表されるポリエステル化合物の炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、たとえば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。
一般式(A)で表されるポリエステル化合物の炭素数6〜16のアリールジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸等がある。上記アリールジカルボン酸は芳香族環に置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
一般式(A)において、Bがヒドロキシ基である場合、すなわち、ポリエステル化合物がポリエステルポリオールである場合には、Aは炭素数10〜16のアリールジカルボン酸残基であることが好ましい。たとえばベンゼン環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造等の芳香族環式構造を有するジカルボン酸を使用することができ、具体的なアリールジカルボン酸成分としては、たとえばオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸を挙げることができる。好ましくは、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸であり、さらに好ましくは、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、特に好ましくは、2,6−ナフタレンジカルボン酸である。これらは1種または2種以上を併用することができる。
上記ポリエステルポリオールは、原料として使用するジカルボン酸の炭素数の平均が10〜16の範囲であることが好ましい。ジカルボン酸の炭素数の平均が10以上であれば、セルロースエステルフィルムの寸法安定性に優れ、炭素数の平均が16以下であれば、セルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの透明性が著しく優れる。ジカルボン酸として、好ましくは炭素数の平均が10〜14であり、さらに好ましくは炭素数の平均が10〜12である。
前記ポリエステルポリオールのジカルボン酸の炭素数の平均とは、単一のジカルボン酸を用いてポリエステルポリオールを重合する場合は該ジカルボン酸の炭素数を意味するが、2種以上のジカルボン酸を用いてポリエステルポリオールを重合する場合、それぞれのジカルボン酸の炭素数とそのジカルボン酸のモル分率の積の合計を意味する。
前記炭素数の平均が10〜16であれば、上記した10〜16個の炭素原子を有するアリールジカルボン酸とそれ以外のジカルボン酸を併用することができる。併用できるジカルボン酸としては、4〜9個の炭素原子を有するジカルボン酸が好ましく、たとえば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸やこれらのエステル化物、酸塩化物、酸無水物を挙げることができる。
以下に、ポリエステルポリオールの炭素数が10〜16であるジカルボン酸の具体例を示すが、本実施形態ではこれらに何ら限定されない。
(1)2,6−ナフタレンジカルボン酸
(2)2,3−ナフタレンジカルボン酸
(3)2,6−アントラセンジカルボン酸
(4)2,6−ナフタレンジカルボン酸:コハク酸(75:25〜99:1 モル比)
(5)2,6−ナフタレンジカルボン酸:テレフタル酸(50:50〜99:1 モル比)
(6)2,3−ナフタレンジカルボン酸:コハク酸(75:25〜99:1 モル比)
(7)2,3−ナフタレンジカルボン酸:テレフタル酸(50:50〜99:1 モル比)
(8)2,6−アントラセンジカルボン酸:コハク酸(50:50〜99:1 モル比)
(9)2,6−アントラセンジカルボン酸:テレフタル酸(25:75〜99:1 モル比)
(10)2,6−ナフタレンジカルボン酸:アジピン酸(67:33〜99:1 モル比)
(11)2,3−ナフタレンジカルボン酸:アジピン酸(67:33〜99:1 モル比)
(12)2,6−アントラセンジカルボン酸:アジピン酸(40:60〜99:1 モル比)
本実施形態において用いることができるポリエステル化合物としては、上記のポリエステルポリオール以外に、化合物の水溶性や配向性の観点から、オクタノール−水分配係数(logP(B))が0以上7未満の化合物を用いることも好ましい。
ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体(一般式(A)のAに相当する成分)とグリコール(一般式(A)のGに相当する成分)を必要に応じてエステル化触媒の存在下で、たとえば180〜250℃の温度範囲内で、10〜25時間、周知慣用の方法でエステル化反応させることによって製造することができる。
エステル化反応を行う際に、トルエン、キシレン等の溶媒を用いてもよいが、無溶媒もしくは原料として使用するグリコールを溶媒として用いる方法が好ましい。
前記エステル化触媒としては、たとえばテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、p−トルエンスルホン酸、ジブチル錫オキサイド等を使用することができる。前記エステル化触媒は、ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体の全量100質量部に対して0.01〜0.5質量部使用することが好ましい。
ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体とグリコールを反応させる際のモル比は、ポリエステルの末端基がヒドロキシ基(水酸基)となるモル比でなければならず、そのためジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体1モルに対してグリコールは1.1〜10モルである。好ましくは、ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体1モルに対して、グリコールが1.5〜7モルであり、より好ましくは、ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体1モルに対して、グリコールが2〜5モルである。
上記ポリエステルポリオールの末端基はヒドロキシ基(水酸基)であるが、ポリエステルポリオール中には、副生成物としてカルボキシ基末端の化合物も含まれうる。ただし、ポリエステルポリオール中におけるカルボキシ基末端は、湿度安定性を低下させるため、その含有量は低い方が好ましい。具体的には、酸価5.0mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは1.0mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0.5mgKOH/g以下である。なお、ここでいう「酸価」とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070:1992に準拠して測定することができる。
前記ポリエステルポリオールは、ヒドロキシ(水酸基)価(OHV)が35mg/g以上220mg/g以下の範囲であることが好ましい。ここで言うヒドロキシ(水酸基)価とは、試料1g中に含まれるOH基をアセチル化したときに、ヒドロキシ基(水酸基)と結合した酢酸を中和するために要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。ヒドロキシ(水酸基)価は、無水酢酸を用いて試料中のOH基をアセチル化し、使われなかった酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定し、初期の無水酢酸の滴定値との差より求められる。
前記ポリエステルポリオールのヒドロキシ基(水酸基)含有量は、70%以上であることが好ましい。ヒドロキシ基(水酸基)含有量が少ない場合、ポリエステルポリオールとセルロースエステルとの相溶性が低下する傾向がある。このため、ヒドロキシ基(水酸基)含有量は、70%以上が好ましく、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは99%以上である。本実施形態において、ヒドロキシ基(水酸基)含有量が50%以下の化合物は、末端基の一方がヒドロキシ基(水酸基)以外の基で置換されているためポリエステルポリオールには含まれない。
前記ヒドロキシ基(水酸基)含有量は、下記の式(B)により求めることができる。
Y/X×100=ヒドロキシ基(水酸基)含有量(%) ・・・ (B)
X:前記ポリエステルポリオールのヒドロキシ基(水酸基)価(OHV)
Y:1/(数平均分子量(Mn))×56×2×1000
前記ポリエステルポリオールは、300〜3000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましく、350〜2000の数平均分子量を有することがより好ましい。
また、本実施形態のポリエステルポリオールの分子量の分散度は1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。分散度が上記範囲内であれば、セルロースエステルとの相溶性に優れたポリエステルポリオールが得られやすい。
また、前記ポリエステルポリオールは、分子量が300〜1800の成分を50%以上含有することが好ましい。数平均分子量を前記範囲とすることにより、相溶性を大幅に向上させることができる。
末端封止ポリエステルは、2つの末端基Bのうちの少なくとも一方がモノカルボン酸残基であればよい。すなわち、2つの末端基Bのうちの一方がヒドロキシ基であり、他方がモノカルボン酸残基であってもよい。ただし、2つの末端基Bの両方がモノカルボン酸残基であることが好ましい。
末端基Bとしては、上述したベンゼンモノカルボン酸残基、脂肪族モノカルボン酸残基を使用することができ、好ましくはベンゼンモノカルボン酸残基を使用することができる。すなわち、末端基Bは、芳香族末端ポリエステルであることが好ましい。
上記末端封止ポリエステルは、グリコール(一般式(A)のGに相当する成分)と、ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体(一般式(A)のAに相当する成分)およびモノカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体(一般式(A)のBに相当する成分)とエステル化反応させることにより得ることができ、たとえば、特開2011−52205号公報、特開2008−69225号公報、特開2008−88292号公報、特開2008−115221号公報等を参考にして合成することができる。
本実施形態のエステル化合物は、その合成時点では分子量および分子構造に分布を有する混合物であるが、そのなかに本実施形態に好ましい成分、たとえば、一般式(A)のAとしてフタル酸残基およびアジピン酸残基を有するポリエステル化合物を少なくとも1種含有していることが好ましい。
末端封止ポリエステルは、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000である。また、酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は15mgKOH/g以下である。
以下に、本発明に用いることのできる一般式(A)で表されるエステル系化合物の具体的化合物を示すが、本実施形態はこれに限定されない。
Figure 2014224213
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Figure 2014224213
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本実施形態のフィルムは、ポリエステル化合物を、フィルム全体(100質量%)に対して、0.1〜30質量%含むことが好ましく、特には、0.5〜10質量%含むことが好ましい。また、その他の可塑剤として、国際公開10/026832号の[0102]〜[0155]等に記載の材料などを適宜使用することができる。
(b)紫外線吸収剤
本実施形態のフィルムは、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、フィルムの耐久性を向上させることを目的として添加される。紫外線吸収剤は、波長370nmでの透過率が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下となるように添加される。
紫外線吸収剤としては特に限定されず、たとえば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましく使用され、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤がより好ましく使用される。具体的には、たとえば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等が挙げられ、市販品としてはチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類(以上、チバ・ジャパン社製)が好ましく使用される。この他、1,3,5−トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本実施形態におけるセルロースエステル溶液は紫外線吸収剤を2種以上含有することが好ましい。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号公報に記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、直接ドープ組成中に添加する方法を採用することができる。その際、無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加することが好ましい。
紫外線吸収剤の使用量としては、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、光学フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合には、偏光板保護フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%がより好ましい。
(c)微粒子
フィルムは、滑り性、保管安定性の観点から、微粒子を含有することが好ましい。微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
二酸化珪素については、疎水化処理をされたものが滑り性とヘイズを両立する上で好ましい。4個のシラノール基のうち、2個以上が疎水性の置換基で置換わったものが好ましく、3個以上が置換されたものがより好ましい。疎水性の置換基はメチル基であることが好ましい。
二酸化珪素の平均1次粒子径は20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。なお、微粒子の平均1次粒子径は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とすることができる。
二酸化珪素の微粒子は、たとえば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されているものを使用することができる。
ポリマー微粒子の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、たとえば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120および同240(以上、東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されているものを使用することができる。
これらの中でも、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR812がフィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため好ましく、アエロジルR812がより好ましく用いられる。
微粒子の添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01質量部〜5.0質量部が好ましい。添加量が多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方が、凝集物が少なくなる。
本実施形態のフィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
(d)染料
フィルムには、本実施形態の効果を損なわない範囲内で、色味調整のため染料を添加することもできる。フィルムには、たとえば、フィルムの黄色味を抑えるために青色染料を添加してもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。
(e)糖エステル化合物
本実施形態に用いられる糖エステル化合物としては、たとえば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。具体的には、スクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、より好ましくは、スクロースである。
ピラノース構造またはフラノース構造中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては特に限定されず、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよく、2種以上を混合してもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
好ましい脂環族モノカルボン酸としては、たとえば、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸としては、たとえば、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体が挙げられる。具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸が挙げられる。中でも、特に安息香酸、ナフチル酸が好ましい。
オリゴ糖のエステル化合物は、後述の「ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1〜12個を有する化合物」として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるものであり、本実施形態に適用できるオリゴ糖としては、たとえば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
また、前記エステル化合物は、下記一般式(B)で表されるピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下縮合した化合物である。一般式(B)において、R11〜R15、R21〜R25は、炭素数2〜22のアシル基または水素原子を、m、nはそれぞれ0〜12の整数、m+nは1〜12の整数を表す。
Figure 2014224213
11〜R15、R21〜R25は、ベンゾイル基、水素原子であることが好ましい。ベンゾイル基はさらに置換基R26を有していてもよく、R26としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、さらにこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。オリゴ糖もエステル化合物と同様の方法で製造することができる。
(f)アクリル系共重合体
本実施形態のフィルムは、重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリル系重合体を含有することができる。中でも分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーX、より好ましくは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーXと、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有することが好ましい。
アクリル系共重合体は、セルロースエステル100質量部に対して1〜30質量部の範囲で添加することができる。
<防曇性セルロースエステルフィルムの製造方法>
次に、上記した実施形態の防曇性セルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。防曇性セルロースエステルフィルムの製造方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。フィルムは、(a)セルロースエステルを溶液流涎法または溶融流延法により製膜する工程(製膜工程)と、(b)製膜されたフィルムの表面に防曇層を形成する工程(防曇層形成工程)とにより製造されうる。
(a)製膜工程
まず、セルロースエステルを溶液流涎法または溶融流延法により製膜する。以下、溶液流涎法を用いた場合を例に挙げて製膜方法を説明するが、溶融流涎法も従来公知の方法を参照して実施することができる。溶液流涎法により製膜する場合、製膜工程は、好ましくは、(i)ドープ調製工程、(ii)ドープ流延工程、(iii)乾燥工程1、(iv)剥離工程、(v)延伸工程、(vi)乾燥工程2、および(vii)フィルム巻取工程を含む。
(i)ドープ調製工程
ドープ調整工程は、セルロースエステルおよび上記した添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程である。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高すぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%であり、好ましくは、15〜25質量%である。
ドープ調整時に用いられる溶剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。セルロースエステルを単独で溶解する溶剤(良溶剤)に、単独ではセルロースエステルを膨潤するかまたは溶解しない溶剤(貧溶剤)を混合して使用することが生産効率の点で好ましい。良溶剤としては、好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられ、貧溶剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中に水を0.01〜2質量%含有させる形態も好ましい。
セルロースエステルの溶解に用いられる溶媒は、製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒が回収され、これが再利用されたものが用いられうる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせることにより、常圧における沸点以上に加熱することができる。
続いて、上記で得たドープを濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過することが好ましい。
これにより、ドープ内の不純物を除去、低減することができる。濾過材としては、絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。濾材としては特に限定されず、公知の濾材を使用することができる。
(ii)ドープ流延工程
ドープ流延工程は、ドープを無端の金属支持体上に流延(キャスト)する工程である。金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は、1〜4mとすることができる。金属支持体の表面温度は、−50℃〜溶剤の沸点未満の温度とすることができ、好ましくは0〜40℃とすることができ、より好ましくは5〜30℃とすることができる。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
(iii)乾燥工程1
乾燥工程1は、流延したドープをウェブとして乾燥する工程である。金属支持体の表面温度は、ドープ流延工程と同様である。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化したりする場合がある。
(iv)剥離工程
剥離工程は、ウェブを金属支持体から剥離する工程である。製膜後のフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は、10〜150質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、さらに好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本明細書において、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
(式中、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量であり、Nはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料を115℃で1時間の加熱した後の質量である)
(v)延伸工程
延伸工程は、金属支持体より剥離した直後のウェブを少なくとも一方向に延伸処理する工程である。延伸処理を行うことにより、フィルム内の分子の配向を制御することができる。延伸フィルムは、二軸延伸フィルムであってもよいが、一軸延伸フィルムであることが好ましい。ただし、延伸工程は必須ではなく、セルロースエステルフィルムは未延伸フィルムであってもよい。
延伸を行う場合において、幅手方向(TD方向)に1.05〜1.50倍延伸することが好ましい。このような延伸倍率に基づいて延伸処理を行うことにより、樹脂分子が配向し、配向方向への経時での伸縮が抑制されるとともに、フィルムに弾性が付与される。したがって、フィルムの厚みが小さい場合であっても、高い防曇特性を維持したまま、経時的なシワの発生を抑制しつつ、優れた作業性を付与することが可能となる。
これに加えて、またはこれに代えて、長手方向(MD方向)に1.01〜1.50倍の延伸倍率で延伸させてもよい。幅手方向(TD方向)および長手方向(MD方向)の延伸は、逐次または同時に行うことができる。
延伸時のフィルム中の残留溶媒量は1〜50%であることが好ましく、より好ましくは3〜45%である。このような残留溶媒量の場合、生産効率とフィルムの透明性とが両立されやすい。
延伸方法は特に限定されない。延伸方法としては、たとえば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、MD/TD方向に同時に広げてMD/TD両方向に延伸する方法などが挙げられる。
延伸温度は、120℃以上200℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以上200℃以下であり、さらに好ましくは150℃を超えて190℃以下である。
フィルムは、延伸後に熱固定されることが好ましい。熱固定は、その最終TD方向延伸温度より高温で、Tg−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間行うことが好ましい。この際、2つ以上に分割された領域で温度差が1〜100℃となる範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。なお、フィルムのTgは、フィルムを構成する材料種および構成する材料の比率によって制御され、JIS K7121:1987に記載の方法などによって求めることができる。
(vi)乾燥工程2
乾燥工程2は、延伸後のフィルムをさらに乾燥する工程である。乾燥工程2では、フィルムは、残留溶媒量が1質量%以下になるように乾燥されることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0〜0.01質量%以下である。
(vii)フィルム巻取工程
フィルム巻取工程は、乾燥後のウェブ(仕上がったセルロースエステルフィルム)を巻き取る工程である。フィルムの巻き取りは、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
(b)防曇層形成工程
次に、セルロースエステルフィルムを巻き出して、防曇性セルロースエステルフィルムの説明において上記した防曇性を付与する親水化処理により、フィルムの少なくとも一方の面に防曇層を形成する。
以上の方法により、本実施形態の防曇性セルロースエステルフィルムが製造される。
<防曇ガラス>
次に、上記した防曇性セルロースエステルフィルムを用いた防曇ガラスについて説明する。本実施形態の防曇ガラスは、上記したフィルムが貼合されたガラスである。具体的には、たとえば、防曇ガラスは、フィルムを適当な大きさに裁断し、粘着層を介してガラスに貼合させることができる。
粘着層としては特に限定されず、フィルムに両面接着テープを貼り付けて粘着層としてもよく、光学弾性樹脂などを用いて粘着層を形成してもよい。
ガラスとしては特に限定することなく使用することができる。ガラスにフィルムを貼合する際、ガラス表面を、中性洗剤、アルカリ水溶液、オゾン、紫外線照射などにより洗浄することが好ましい。
本実施形態の防曇ガラスは、上記した防曇性セルロースエステルフィルムを貼合することにより容易に作製される。得られた防曇ガラスは、種々の環境下において優れた防曇性を示す。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表すものとする。なお、実施例において、水酸基残度(DR)は、セルロースを構成するグルコース単位の有する3個の水酸基のうち、エステル化していない水酸基の数(平均値)を示す。つまり、セルロースのアシル基置換度を用いて、水酸基残度(DR)=3−アシル基置換度と表される。また、重量平均分子量は、上述した方法に従って求めることができる。
(セルロースエステルの製造)
[セルロースエステルCE−1の作製]
セルロース(綿花リンター由来)100質量部に、硫酸16質量部、無水酢酸260質量部、酢酸420質量部をそれぞれ添加し、攪拌しながら室温から60℃まで60分かけて昇温し、15分間その温度を保持しながら酢化反応を行った。次に、酢酸マグネシウムおよび酢酸カルシウムの酢酸−水混合溶液を添加して硫酸を中和した後、反応系内に水蒸気を導入して、60℃で120分間維持して鹸化処理を行った。その後、多量の水により洗浄を行い、さらに乾燥し、セルロースエステルCE−1を得た。セルロースエステルCE−1は、アセチル基置換度が2.9であり、重量平均分子量Mwが270000であった。
[セルロースエステルCE−2の作製]
重量平均分子量Mwが表1に記載の値となるように、硫酸量を適宜変更したこと以外はセルロースエステルCE−1の作製と同様にして、セルロースエステルCE−2を作製した。
[セルロースエステルCE−3、CE−4の作製]
セルロースエステルの置換度および重量平均分子量Mwが表1に記載の置換度、分子量となるように、セルロースエステルの水酸基残度(DR)、カルシウム量、マグネシウム量、酢酸量およびプロピオン酸量を変更したこと以外は、セルロースエステルCE−1の作製と同様にして、セルロースエステルCE−3、CE−4を作製した。
セルロースエステルCE−1〜CE−4の置換度および重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
Figure 2014224213
(防曇性フィルムの製造)
<実施例1:フィルム101の製造>
(1)ドープ組成物の調製
下記のドープ組成物を調製した。
(ドープ組成物)
下記(a)〜(f)を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ組成物を調製した。
(a)セルロースエステルCE−1:90質量部
(b)ポリエステルA:10質量部
(c)紫外線吸収剤 チヌビン928(チバ・ジャパン(株)製):2.5質量部
(d)微粒子分散液 二酸化ケイ素分散希釈液:4質量部
(e)良溶剤 メチレンクロライド:432質量部
(f)貧溶剤 エタノール:38質量部
なお、ポリエステルAは芳香族末端ポリエステルであり、下記方法により合成した。
<ポリエステルAの合成>
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温した。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、エステル化合物Aを得た。エステル化合物Aは、酸価0.10、数平均分子量450であった。
上記(d)微粒子分散液としての二酸化ケイ素分散希釈液は下記手順で調製した。
(二酸化ケイ素分散希釈液)
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製;一次粒子の平均径7nm)10質量部、およびエタノール90質量部をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。これにメチレンクロライド88質量部を撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合した。混合液を微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過し、二酸化ケイ素分散希釈液を調製した。
(2)ドープ流延・乾燥・剥離
上記で得たドープ組成物を、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体(温度:35℃)に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。
(3)延伸・乾燥・熱固定
支持体からウェブを剥離後、テンターでウェブ両端部を把持し、160℃で幅手(TD)方向の延伸倍率が1.2倍となるように延伸し、その幅を維持したまま数秒間保持し(熱固定)、幅方向の張力を緩和させた後、幅保持を解放し、さらに125℃に設定された乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行った。なお、延伸開始時の残留溶媒量は10%であった。
(4)フィルム巻き取り
その後、セルロースエステルフィルムを1.65m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取った。得られたセルロースエステルフィルムの残留溶媒量は0.2%であり、膜厚は60μmであり、巻数は6000mであった。
(5)防曇処理
フィルムを巻き出し、以下の方法により、防曇処理を施した。
(株)GSユアサ製低圧水銀ランプ(DUV−25)を用いて、作製したセルロースエステルフィルムに、ランプとフィルムの距離を10mmにして、裏面から冷却しながら600秒間、光照射し、フィルム101を得た。
<実施例2〜6、比較例1〜5:フィルム102〜111の製造>
フィルム101と同じドープを用い、流延膜厚を調製して、膜厚が40μmのフィルム原反を作製した。このフィルム原反に、(株)エム・ディ・エキシマ社製 高照度エキシマUV照射ユニット(高出力タイプ140mW/m)を用いて、窒素パージ下、酸素濃度を0.5%以下として、180秒間エキシマUVを照射し、フィルム102を作製した。
エキシマUVによる光照射時間を70秒間とした以外はフィルム102と同様にして、フィルム103を作製した。
エキシマUVによる光照射時間を40秒間とした以外はフィルム102と同様にして、フィルム104を作製した。
膜厚が21μmの原反を用い、エキシマUVによる光照射時間を15秒間とした以外はフィルム102と同様にして、フィルム105を作製した。
膜厚が21μmの原反を用い、低圧水銀ランプによる光照射を550秒にした以外はフィルム101と同様にして、フィルム106を作製した。
膜厚が10μmの原反を用い、低圧水銀ランプによる光照射を300秒とした以外はフィルム101と同様にして、フィルム107を作製した。
膜厚が70μmの原反を用い、エキシマUVによる光照射時間を75秒間とした以外はフィルム102と同様にして、フィルム108を作製した。
膜厚が45μmの原反を用い、低圧水銀ランプによる光照射を15秒とした以外はフィルム101と同様にして、フィルム109を作製した。
膜厚が60μmの原反を用い、50℃に加温された16重量%の水酸化ナトリウム鹸化溶液に30秒間浸漬し、次いで90秒間水洗し、80℃の温風にて乾燥した以外はフィルム101と同様にして、フィルム110を作製した。
膜厚が60μmの原反を用い、70℃に加温された16重量%の水酸化ナトリウム鹸化溶液に80分間浸漬し、次いで90秒間水洗し、80℃の温風にて乾燥した以外はフィルム101と同様にして、フィルムの両面に防曇処理が施されたフィルム111を得た。
<実施例7および比較例6:フィルム201および202の製造>
セルロースエステルをCE−2に変更した以外はフィルム101と同様にドープを作製し、流延膜厚と延伸倍率を変更して膜厚40μmの原反フィルムを作製した。このフィルム原反を、エキシマUVによる光照射時間を60秒間とし、フィルム201を得た。
フィルム201の原反フィルムを用いて、70℃に加温された16重量%の水酸化ナトリウム鹸化溶液に45分間浸漬し、次いで90秒間水洗し、80℃の温風にて乾燥した。これにより、フィルムの両面に防曇処理が施されたフィルム202を作製した。
<実施例8〜10、比較例7:フィルム301〜304の製造>
セルロースエステルをCE−3に変更した以外は、フィルム101と同様にドープを作製し、流延膜厚と延伸倍率などの延伸条件を変更して膜厚40μmおよび20μmのフィルム原反を作製した。
膜厚40μmのフィルム原反を用い、照射時間を200秒とした以外はフィルム101と同様にして、低圧水銀ランプによる光照射を行い、フィルム301を作製した。
膜厚40μmのフィルム原反を用い、エキシマUVによる光照射時間を90秒間とした以外はフィルム101と同様にして、フィルム302を作製した。
膜厚20μmのフィルム原反を用い、エキシマUVによる光照射時間を200秒間とした以外はフィルム101と同様にして、フィルム303を作製した。
膜厚20μmのフィルム原反を用い、70℃に加温された16重量%の水酸化ナトリウム鹸化溶液に50分間浸漬し、次いで90秒間水洗し、80℃の温風にて乾燥した以外はフィルム101と同様にして、フィルムの両面に防曇処理が施されたフィルム304を作製した。
<実施例11〜13、比較例8:フィルム401〜404の製造>
セルロースエステルをCE−4に変更した以外はフィルム101と同様にドープを作製し、流延膜厚と延伸倍率などの延伸条件を変更して膜厚20μの原反フィルムを作製した。この原反を用い、照射時間を45秒とした以外はフィルム101と同様の方法で低圧水銀ランプによる光照射を行い、フィルム401を作製した。
照射時間を120秒とした以外はフィルム401と同様の方法により、低圧水銀ランプによる光照射を行い、フィルム402を作製した。
照射時間を360秒とした以外はフィルム401と同様の方法により、低圧水銀ランプによる光照射を行い、フィルム403を作製した。
フィルム401と同じ原反を用い、60℃に加温された16重量%の水酸化ナトリウム鹸化溶液に50秒間浸漬し、次いで90秒間水洗し、80℃の温風にて乾燥した以外はフィルム401と同様の方法により、フィルム404を作製した。
[d1およびd2の測定]
得られたフィルム101〜404を切片にして、さらにこの切片に白金を0.3nm程度の厚みで蒸着させ、フェノール樹脂で包埋し、ミクロトームによりフィルム断面が表面に現れるように切断した。この状態でTEMを用いてフィルムの膜厚を測定した(d1+d2)。
この面を、脱水したメチレンクロライドに浸し、23℃で24時間放置して、メチレンクロライド可溶層を溶解させたものを作製した。残った部分は、メチレンクロライドから取り出した直後に圧縮空気を繋いだ80℃のオーブンに入れ、水分が付かないようにして乾燥させた。この乾燥させたものをもう一度白金を蒸着させ、エポキシ樹脂で包埋しミクロトーンで断裁し、断面の切片を日本電子(株)製 透過電子顕微鏡JEM-2000FXにより観察し、メチレンクロライド不溶層の厚みを測定し、これをd1とした。メチレンクロライド不溶層が上下2層ある場合は、その内の小さい値をd1とした。前記のフィルムの膜厚からd1を差し引き、d2と、d1/d2を算出した。得られた結果を表2に示す。なお、測定値が0.000のフィルム110については、フィルムが全て溶解してしまいd1の部分は測定できなかった。
Figure 2014224213
[フィルムの評価]
得られたフィルム101〜404について、以下の評価を行った。
<防曇性1>
フィルム101〜404を10cm角サイズに裁断し、23℃55%雰囲気化で24時間放置し、その後、同雰囲気下にて未通電状態の冷凍ショーケース(ホシザキ電機(株)製 リーチイン冷凍ショーケース FS−120XT3−1)のガラス扉の内側に25μmの両面接着テープ(リンテック(株)製、基材レステープ MO−3005C)を介して貼り、庫内設定温度を−25℃となったのを確認した後、12時間以上放置し、扉を開けたときの防曇特性を下記の評価基準に基づいて評価した。なお、扉を開けた時の庫外設定温度は23℃、相対湿度70%であった。結果を表3に示す。
<防曇性2>
フィルム101〜404を10cm角サイズに裁断し、23℃55%雰囲気化で24時間放置し、その後、同雰囲気下にて70℃の水蒸気に3分間暴露して、防曇特性を下記の評価基準に基づいて評価した。結果を表3に示す。
(防曇性1および防曇性2の評価基準)
5:全く結露が見られなかった。
4:結露したが、数秒で消えた。
3:結露したが、10秒以内に消えた。
2:結露したが、30秒以内に消えた。
1:結露し、30秒以上消えなかった。
Figure 2014224213
<貼合時の作業性評価>
得られたフィルム101〜404をA3サイズ(297mm×420mm)に裁断し、23℃55%RH雰囲気下にて、24時間以上静置した。その後、裁断したフィルムに、25μmの両面接着テープ(リンテック(株)製 基材レステープ MO−3005C)を貼りつけた。続いて、中性洗剤で洗浄した2mm厚のガラスの表面と、フィルム101〜404の粘着層側とに霧吹きで水をかけてから変形とカール状態を確認し、次いで水をかけた面とを貼り合わせ、水切りをしてから放置した。カール状態を下記の評価基準に基づいて評価した。また、貼り付けの作業性の観点から、下記の評価基準に基づいて変形を評価した。さらに、端面が剥がせるかどうかを確認し、乾燥状態を下記の評価基準に基づいて評価した。結果を表4に示す。フィルム401とフィルム402との乾燥時間は、いずれも1時間以内であったが、フィルム402の方が5分程度、乾燥時間が短かった。
(カール評価基準)
大:カールが2cm以上であり、作業性が悪かった。
小:カールが2cm未満であり、作業性に問題がなかった。
(変形評価基準)
大:波打ちやシワの発生があり、貼り付け作業性が悪かった。
小:多少の変形はあったが、作業性には問題がなかった。
なし: 変形は認められず、作業性が良かった。
(乾燥評価基準)
3:1時間以内で剥がれなくなった。
2:3時間以内で剥がれなくなった。
1:剥がれなくなるまで3時間よりも長い時間がかかった。
Figure 2014224213
フィルム101〜404をA4サイズに断裁し、透明粘着層を用いて、ガラスに貼合し恒温恒湿槽(日立アプライアンス(株)製 EC−25EXH)を用い、温度30℃、相対湿度90%雰囲気下に24時間静置し、続いて−25℃雰囲気下に24時間静置する環境変化を3回繰り返した。その後、このガラスに貼合したサンプルを装置より取り出し、フィルムのシワ、剥がれを下記評価基準に基づいて評価した。結果を表5に示す。
(シワ、剥がれの評価基準)
5:シワ、剥がれが全くなかった。
4:四隅に剥がれが発生し始めていたが、許容できる程度であった。
3:わずかにシワ、剥がれが発生していたが、許容できる程度であった。
2:シワ、剥がれがはっきりと判った。
1:フィルムが前面に波打ち、シワ、剥がれが発生した。
Figure 2014224213
表2〜表5に示されるように、メチレンクロライド不溶層およびメチレンクロライド可溶層の厚さが式(1)および式(2)を満たし、膜厚が65μm以下であった実施例1〜13の防曇性セルロースエステルフィルムは、優れた防曇性を有し、水を使用した貼合時の作業性が良好であり、経時によるシワ、剥がれの発生が抑制された。
本発明によれば、高い防曇性を維持しつつ、水を用いた貼合時の作業性に優れ、シワ、剥がれ等が抑制された防曇性セルロースエステルフィルムが得られる。そのため、本発明の防曇性セルロースエステルフィルムは、曇りによる視認性の低下が問題となる種々の部材(たとえばガラス)に適用できる。
1 セルロースエステルフィルム
11 防曇保護層(メチレンクロライド可溶層)
12 防曇層(メチレンクロライド不溶層)

Claims (5)

  1. セルロースエステル樹脂組成物を含み、
    メチレンクロライド可溶層と、該メチレンクロライド可溶層の少なくとも一方の面に一体的に形成されたメチレンクロライド不溶層とを有し、
    膜厚が65μm以下であり、
    前記メチレンクロライド不溶層の厚みd1と、前記メチレンクロライド可溶層の厚みd2とが、以下の下記式(1)および(2)を満たす、防曇性セルロースエステルフィルム。
    0.005μm<d1<0.500μm ・・・ (1)
    0.0001μm<d1/d2<0.0200 ・・・ (2)
  2. 前記メチレンクロライド可溶層における前記セルロースエステル樹脂組成物の重量平均分子量が、75000以上300000以下である、請求項1記載の防曇性セルロースエステルフィルム。
  3. 幅手方向に1.05倍以上1.50倍以下で一軸延伸される工程を経て作製される、請求項1または2記載の防曇性セルロースエステルフィルム。
  4. 前記メチレンクロライド可溶層における前記セルロースエステル樹脂組成物のアシル基置換度が、2.0以上3.0以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防曇性セルロースエステルフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の防曇性セルロースエステルフィルムが貼合された防曇ガラス。
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