JP2013100401A - 薄膜防曇性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】高い防曇特性を維持しつつ、貼合後のしわ、剥がれが抑制され、作業性にも優れるセルロースエステルフィルムを提供する。
【解決手段】セルロースエステルフィルムの製膜後に、製膜されたフィルムの少なくとも片面をアルカリケン化処理されてなり、下記式(1)を満たす、防曇性セルロースエステルフィルムである。
Figure 2013100401

式中、S(t)は23℃相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化させた場合のフィルムの厚さ方向の寸法変化率(%)であり、S(r)は23℃相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化させた場合のフィルムの面方向の寸法変化率(%)である。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースエステルフィルムを用いた薄膜防曇性フィルムに関する。
浴室、洗面化粧台、自動車用の鏡、食品保冷ショーケース、建造物、車両の窓ガラス、冷蔵庫、冷凍庫のガラス扉、水槽、看板のガラス材には、降雨や空気中の湿分の結露により、表面に水滴が付着し、視認性が低下するという問題があるため、ガラスや鏡などの部材表面は、防曇性フィルムを貼着することにより防曇性が付与されている。
代表的な防曇性フィルムとしては、アルカリ処理したセルロース系合成樹脂シートやフィルムを利用したものがある。これらのセルロース系フィルムは、通常、片面に熱融着フィルムや硬化性樹脂などを含む粘着剤層が積層されており、これらを介して、ガラスや鏡などの基材へ接着一体化される。
しかし、このような積層タイプの防曇性フィルムは、高温多湿下や浸水条件下において長時間放置した場合に層間膜剥がれが発生しやすいという問題があった。
これに対して、特許文献1にはセルロースエステルフィルムをアルカリ処理した単一層のフィルムが開示されている。このような単一層の防曇性フィルムは、積層タイプの防曇性フィルムに比べて、経時での層間膜剥がれが抑制され、また繰返しの防曇適性が高く、安価に作成することができる。
国際公開第2008/029801号
上記のようなセルロースエステルフィルムを用いた防曇性フィルムは、吸湿に伴うフィルムの寸法変化が大きく、ガラスなどの基材に貼合後、経時的にフィルムが変形し、しわ、剥がれが発生するという問題がある。
これに対して、防曇性フィルムを薄膜にすることで、寸法変化に伴うフィルムへの応力を低減し、フィルムのしわ、剥がれの発生を抑制することが考えられる。しかし、かかる場合には、吸湿特性が不足し、十分な防曇特性が得られないおそれがある。さらに、薄膜化によりフィルムの腰が無くなり、防曇性フィルムを基材に貼り合せる際の作業性に劣るという問題もある。
したがって、防曇特性、経時的に発生するしわおよび剥がれの抑制、ならびに貼合時の作業性を両立することは困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、高い防曇特性を維持しつつ、貼合後のしわ、剥がれが抑制され、貼合時の作業性にも優れるセルロースエステルフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を積み重ねた。その結果、セルロースエステルフィルムの少なくとも片面をアルカリケン化処理し、かつ、フィルムの厚み方向の寸法変化率と面方向の寸法変化率とを特定の範囲に制御することによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.セルロースエステルフィルムの製膜後に、製膜されたフィルムの少なくとも片面をアルカリケン化処理されてなり、
下記式(1)を満たす、防曇性セルロースエステルフィルム。
Figure 2013100401
式中、S(t)は23℃相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化させた場合のフィルムの厚さ方向の寸法変化率(%)であり、S(r)は23℃湿度相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化させた場合のフィルムの面方向の寸法変化率(%)である。
2.下記式(2)を満たす、上記1に記載の防曇性セルロースエステルフィルム。
Figure 2013100401
式中、d(T)はセルロースエステルフィルムの全膜厚(μm)である。
3.下記一般式(1)で示される化合物を含む、上記1または2に記載の防曇性セルロースエステルフィルム
Figure 2013100401
式中、Bはヒドロキシ基、ベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基であり、Gは炭素数2〜18のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基であり、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜16のアリールジカルボン酸残基であり、nは1以上の整数である。
4.溶融流涎法により製膜されてなる、上記1〜3のいずれかに記載の防曇性セルロースエステルフィルム。
5.幅手方向に1.01〜3.50倍、長手方向に1.05〜4.00倍の延伸条件で延伸された二軸延伸フィルムである、上記4に記載の防曇性セルロースエステルフィルム。
6.溶液流涎法により製膜されてなり、幅手方向に1.01〜1.50倍、長手方向に1.01〜1.30倍の延伸条件で延伸された二軸延伸フィルムである、上記1〜3のいずれかに記載の防曇性セルロースエステルフィルム。
本発明により、高い防曇特性を維持しつつ、貼合後のしわ、剥がれが抑制され、貼合時の作業性にも優れる防曇性セルロースエステルフィルムが提供されうる。
本発明の一実施形態である防曇性セルロースエステルフィルムの基本構成を示す模式断面図である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本発明の一形態によれば、 セルロースエステルフィルムの製膜後に、製膜されたフィルムの少なくとも片面をアルカリケン化処理されてなり、
下記式(1)を満たす、防曇性セルロースエステルフィルムが提供される。
Figure 2013100401
式中、S(t)は23℃相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化させた場合のフィルムの厚さ方向の寸法変化率(%)であり、S(r)は23℃相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化させた場合のフィルムの面方向の寸法変化率(%)である。
図1は、本発明の一実施形態である防曇性セルロースエステルフィルムの基本構成を示す模式断面図である。図1に示すように、防曇性セルロースエステルフィルム(以下、単に「フィルム」とも称する)1は、表面に防曇領域12を有する。
防曇領域12は、セルロースエステルフィルムの製膜後に、セルロースエステル膜の表面をアルカリケン化処理することにより形成される。アルカリケン化処理は、セルロースエステル樹脂表面のアシルオキシ基(−O−アシル基)の一部または全部をアルカリで加水分解して水酸基に置換する処理をいう。アルカリケン化処理によって、セルロースエステル樹脂表面に水酸基が形成され、表面が親水化される。すなわち、セルロースエステル膜の表層の親水化処理された領域が防曇領域12となる。親水化処理されていない内部領域は主としてセルロースエステル樹脂から構成されている。以下の説明において、この親水化処理されていない内部領域をエステル領域11と称する。
本発明の防曇性セルロースエステルフィルムは、防曇領域12とエステル領域11とが一体的な膜として形成されている。このような一体膜構造は、セルロースエステルフィルムの表面に防曇層を積層させた積層構造のフィルムに比べて、加工時や経時の層間剥離を防止でき、フィルムの白化や失透を防止できるため好ましい。
図1に示すフィルム1では、両表面に防曇領域12が設けられているが、防曇領域12は、フィルム1の少なくとも片面に設けられていればよく、フィルム1の片面のみに設けられていてもよい。また、防曇領域12は、図1に示すようにフィルム1の表面全体に設けられることが好ましいが、フィルム1の表面(少なくとも片面)の一部のみに設けられていてももちろんよい。
本発明では、フィルムの厚み方向の寸法変化率S(t)と面方向の寸法変化率S(r)とが特定の関係にあることを特徴とする。
従来から使用される、セルロースエステルを用いた防曇性フィルムは、吸湿に伴うフィルムの寸法変化が大きく、基材に貼合した後に、経時的にフィルムが変形し、しわ、剥がれが発生するという問題がある。
寸法変化に伴うフィルムへの応力を低減し、フィルムのしわ、剥がれを抑制する目的で防曇性フィルムを薄膜化すると、フィルムの防曇特性の低下や貼合時の作業性の低下を招く。このため、防曇特性、経時的に発生するしわおよび剥がれの抑制、ならびに貼合時の作業性の全ての要件を満足する防曇性フィルムを得ることは困難であった。
これに対して、本発明者らは、フィルムの厚み方向の寸法変化率S(t)と面方向の寸法変化率S(r)とが特定の関係にある場合には、防曇特性、経時的に発生するしわおよび剥がれの抑制、ならびに貼合時の作業性の要件を満足する防曇性フィルムを得ることができることを見出した。
具体的には、防曇性セルロースエステルフィルム1は下記式(1)を満たす。
Figure 2013100401
式中、S(t)は23℃相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化させた場合のフィルムの厚さ方向の寸法変化率(%)であり、S(r)は23℃相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化させた場合のフィルムの面方向の寸法変化率(%)である。
フィルムの厚み方向の寸法変化率S(t)および面方向の寸法変化率S(r)は下記方法により測定される。
(S(t)およびS(t)の測定方法)
(測定方法)
まず、23℃相対湿度20%の雰囲気下にフィルムを24時間以上静置し、フィルム表面の離れた2点(A、B)の距離を寸法測定顕微鏡を用いて測定し、S(t)20%とする。
また、静置後のフィルムの厚みを膜厚計を用いて算出し、S(r)20%とする。
次いで、当該フィルムを23℃相対湿度80%雰囲気下に24時間以上静置し、フィルム表面の上記2点(A、B)の距離を寸法測定顕微鏡を用いて測定し、S(t)80%とする。
また、静置後のフィルムの厚みを膜厚計を用いて算出し、S(r)80%とする。
上記で測定したS(t)20%、S(t)80%、S(r)20%、S(r)80%から下記式に基づいて、面方向の寸法変化率S(r)、厚み方向の寸法変化率S(t)を算出する。
Figure 2013100401
上記方法で使用する膜厚計としては、接触式膜厚計や干渉式膜厚計などが好適に用いられる。
S(t)/S(r)が1.017未満である場合には、経時的にしわ・剥がれが発生するおそれがある。また、十分な防曇性能が発揮できないおそれがある。したがって、S(t)/S(r)は1.017以上であり、好ましくは1.025以上であり、より好ましくは1.030以上である。
一方、S(t)/S(r)が1.100を超える場合には、吸水時に防曇性エステルフィルムの表面が濁り、透明性が損なわれ好ましくない。したがって、S(t)/S(r)は1.100以下であり、好ましくは1.090以下であり、より好ましくは1.080以下である。
面方向の寸法変化率S(r)は、吸水時のフィルムの面方向の変動を示しており、経時的なしわ・剥がれの発生を抑制する観点から、小さいほどよい。かような観点から、S(r)は好ましくは1.0050以下であり、より好ましくは1.0040以下である。下限は特に限定されないが、吸水に対してフィルムが柔軟性を有すことが好ましいことから、S(r)は1.0010以上であることが好ましい。
一方、厚さ方向の寸法変化率S(t)は、吸水時のフィルムの厚さ方向の変動を示しており、十分な防曇性を発現させる観点から、大きいほどよい。かような観点から、S(t)は好ましくは1.0200以上であり、より好ましくは1.0300以上である。上限は特に限定されないが、吸水時に防曇性エステルフィルムの表面が膨張により歪み、透明性が損なわれ好ましくないことから、S(t)は1.100以下であることが好ましい。
上記寸法変化率S(r)、S(t)は、フィルムの膜厚、アルカリケン化条件、延伸条件、製膜方法、フィルムを構成するセルロースエステルの分子量や置換度、フィルムに添加される添加剤の種類(特に、可塑剤の種類)等によって変化する。したがって、これらの条件を制御することにより、S(r)/S(t)を所望の範囲に制御することができる。
表1に、これらの制御因子と寸法変化率S(r)、S(t)との関係を示す。
フィルムの膜厚d(T)を小さくするほど、S(r)は小さくなり、S(t)は大きくなる傾向がある。したがって、十分な防曇性を確保しつつ、吸湿時の面内方向の寸法変化を抑制し、経時的なしわ、剥がれの発生を抑制する観点から、セルロースエステルフィルムの膜厚d(T)は90μm以下であることが好ましい。
フィルムの膜厚d(T)は小さいほど防曇性の向上およびしわ・剥がれの抑制が図られるが、小さすぎる場合には、フィルムの腰がないために防曇性フィルムを基材に貼り合せる際の作業性が著しく悪化する。したがって、d(T)は10μm以上であることが好ましい。
すなわち、防曇性セルロースエステルフィルム1は下記式(2)を満たすことが好ましい。
Figure 2013100401
式中、d(T)はセルロースエステルフィルムの全膜厚(μm)である。
より一層の防曇性向上およびしわ・剥がれの抑制を図る観点から、d(T)は、より好ましくは15μm以上であり、さらに好ましくは20μm以上である。一方、フィルムに腰がでて、フィルムの貼合時の作業性に優れる観点から、d(T)はより好ましくは85μm以下であり、さらに好ましくは80μm以下である。
なお、セルロースエステルフィルムの膜厚d(T)は膜厚計を用いて測定することができる。セルロースエステルフィルムの断面が不定形状である場合には、5cm四方(25cm)あたり5箇所以上の点で膜厚を測定し、その平均値を膜厚d(T)とするものとする。
寸法変化率S(r)はフィルム表面のアルカリケン化条件によっても変化する。具体的には、アルカリケン化条件を強力な条件とするほど、すなわち、アルカリ剤の濃度を大きく、または、ケン化処理の時間を長く、または、ケン化処理の温度を高くするほど、セルロースエステル樹脂がケン化処理液に溶解し、S(r)は大きくなる。したがって、S(r)を小さくするためには、温和な条件でアルカリケン化処理を行うことが好ましい。
寸法変化率S(r)はフィルムの製膜条件によっても変化する。具体的には、溶融流涎法を用いて製膜する場合には、溶液流涎法を用いる場合に比べて、セルロースエステルフィルムにおいてフィルムを構成する材料、特に可塑剤が均一に分散し、可塑剤の局在化を抑制できるため、S(r)が小さくなる。また、フィルムを延伸フィルムとし、その延伸倍率を大きくするほど、S(r)が小さくなる。
セルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステル樹脂の分子量を小さくするほどセルロースエステル樹脂がケン化処理液に溶解する。このため、S(r)が小さくなり、S(t)が大きくなる傾向がある。また、セルロースエステルがアシル基としてプロピオニル基を含む場合には、アシル基としてアセチル基を含む場合に比べて、S(r)が小さくなり、S(t)が大きくなる傾向がある。さらに、セルロースエステルの置換度が低いほど、S(r)が大きくなる傾向がある。
さらに、セルロースエステルフィルムに添加する可塑剤として、後述するポリエステル化合物を使用する場合には、フィルム内に可塑剤が均一に分散し、可塑剤の局在化が抑制されるため、S(r)が小さくなる傾向がある
吸水時のしわ・剥がれを一層抑制する観点から、防曇性セルロースエステルフィルムは、下記式(3)を満たすことが好ましい。
Figure 2013100401
式中、d(T)はセルロースエステルフィルムの全膜厚(μm)であり、S(w)は23℃相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化させた場合のフィルムの吸湿膨張係数[g/%/10cm]である。
吸湿膨張係数S(w)は、環境が23℃相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化した時の、相対湿度1%あたりのフィルム重量の変化量(吸水しやすさ)を示し、吸湿膨張係数S(w)が大きいほど防曇性が高くなる。十分な防曇性を確保する上で、S(w)は1.1×10−4以上であることが好ましく、2.2×10−4以上であることがより好ましい。一方、吸水時に防曇性エステルフィルムの表面が濁り、透明性が損なわれ好ましくないことから、S(w)は6×10−3以下であることが好ましく、5×10−3以下であることがより好ましい。
吸湿膨張係数S(w)は下記方法により測定される。
(S(w)の測定方法)
まず、防曇性セルロースエステルフィルムを10cm四方に裁断し、その後23℃相対湿度20%の雰囲気下にフィルムを24時間以上静置し、フィルムの重量を計測し、b(g)とする。
次いで、当該フィルムを23℃相対湿度55%雰囲気下に24時間以上静置し、フィルムの重量を計測し、a(g)とする。
次いで、当該フィルムを23℃相対湿度80%雰囲気下に24時間以上静置し、フィルムの重量を計測し、c(g)とする。
上記で測定したa、b、cから下記式に基づいて、吸湿膨張係数S(w)を算出する。
Figure 2013100401
式中、aは23℃55%RHの環境下でのフィルム重量であり、 bは23℃相対湿度20%の環境下でのフィルム重量であり、cは23℃80%の環境下でのフィルム重量である。
d(T)・S(w)[g/%/10cm]は、上記吸湿膨張係数S(w)とフィルムの膜厚d(T)とを掛け合わせることにより算出され、吸水によりフィルムにかかる応力を示す。フィルムの剥がれはフィルム全体にかかる応力により発生すると考えられ、吸水量の指標であるS(w)とフィルムの膜厚d(T)との積に依存すると考えられる。
したがって、吸水時のフィルムの剥がれ・しわの発生を抑制する観点から、d(T)・S(w)が6×10−2以下であることが好ましい。すなわち、吸水効率が大きい場合であっても、膜厚d(T)が小さい場合には、フィルム自体にかかる力は小さく、剥がれ・しわの発生を抑制できる。
一方、十分な防曇特性を発現させるうえで、d(T)・S(w)が1×10−2以上であることが好ましい。
吸水時のしわ・剥がれを一層抑制し、かつ、防曇性を向上させる観点から、防曇性セルロースエステルフィルムはより好ましくは、下記式を満たす。
Figure 2013100401
上記吸湿膨張係数S(w)も、表1に示すように、フィルムの膜厚、アルカリケン化条件、延伸条件、製膜方法、フィルムを構成するセルロースエステルの分子量や置換度、フィルムに添加される添加剤の種類(特に、可塑剤の種類)等によって変化する。
具体的には、フィルムの膜厚d(T)が小さいほどS(w)は大きくなる。また、アルカリケン化条件を強力な条件とするほどS(w)は小さくなる。また、溶液流涎法により製膜する場合や、延伸倍率が大きい場合にS(w)は大きくなる。また、フィルムを構成するセルロースエステルがアシル基としてプロピオニル基を含む場合や可塑剤として、後述するポリエステル化合物を使用する場合にはS(w)が小さくなる。また、フィルムを構成するセルロースエステルの置換度が小さい場合にS(w)は大きくなる。
Figure 2013100401
以下、本実施形態のフィルム1の構成について説明する。
フィルム1は、セルロースエステル、および必要に応じて、後述する可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子、染料、糖エステル化合物、アクリル系共重合体などの添加剤を含んで構成される。
(1)セルロースエステル
本明細書において、セルロースエステルとは、セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位中の2位、3位および6位の水酸基(−OH)の水素原子の一部または全部がアシル基で置換されたセルロースアシレート樹脂をいう。
フィルム1に用いられうるセルロースエステルとしては、特に制限されない。例えば、セルロースの水酸基部分の水素原子が、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ラウロイル基、ステアロイル等の炭素数2〜20の脂肪族アシル基で置換されたセルロースエステル樹脂が挙げられる。これらのうち、炭素数2〜4のアシル基を有するものが好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基がより好ましい。なお、セルロースエステル中のアシル基は単一種であってもよいし、複数のアシル基の組み合わせであってもよい。
具体的な好ましいセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアシレート樹脂が挙げられ、より好ましくは、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースエステルプロピオネート等のセルロースアシレート樹脂を含む。これらのセルロースエステルは単一種を使用してもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明に係るセルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸など)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、触媒(硫酸など)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の三個のヒドロキシ基(水酸基)は、有機酸のアシル基で置換されている。同時に二種類の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースエステル、例えばセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル置換度を有するセルロースエステル樹脂を合成する。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥などの工程を経て、セルロースエステル樹脂ができあがる。
具体的には、特開平10−45804号、特開2005−281645、特開2003−270442号などに記載の方法を参考にして合成することができる。
市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60S等が挙げられる。
エステル領域11におけるセルロースエステルのアシル基の置換度はフィルムの面方向の寸法変化率S(r)を小さくし、経時的なしわの発生を防止する観点、さらには防曇性及び工程での生産安定性の観点から2.0以上であることが好ましい。一方、アシル基の置換度はフィルムの経時耐久性の点から3.0以下が好ましい。
「アシル基の置換度」とは、1グルコース単位あたりのアシル基の平均数を示し、1グルコース単位の2位、3位および6位の水酸基の水素原子のいずれかがアシル基に置換されている割合を示す。すなわち、2位、3位および6位の水酸基の水素原子がすべてアシル基で置換されたとき置換度(最大の置換度)は3.0となる。アシル基の置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)は、フィルムの耐熱性や強度(引っ張りや引裂きに対する耐性)を向上させ、またセルロースエステルをアルカリケン化処理する場合のアルカリ液への溶解性を低下させてS(t)およびS(r)を所望の範囲とする点から、75,000以上であることが好ましく、より好ましくは80,000以上であり、さらに好ましくは85,000以上である。一方、分子量が小さいほど、経時でのフィルムの変形力を樹脂分子間で吸収し、しわ、剥がれを抑制しうる。かかる観点から、重量平均分子量(Mw)は300,000以下であることが好ましく、より好ましくは200,000以下であり、さらに好ましくは150,000以下である。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、2.0〜3.5であることが好ましい。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記条件下で測定することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
(2)防曇領域
防曇領域12は高湿度環境や温度差の大きな環境において発生する水分を吸収して、または付着した水滴を膜状に広げて、曇りを防止する機能を有する。
防曇領域12は、セルロースエステルフィルムの表面をアルカリケン化処理することにより形成され、エステル領域11と一体的な膜として構成されている。したがって、防曇領域12は、セルロースエステル中のアシルオキシ基(−O−アシル基)の一部が水酸基で置換された親水性のセルロース誘導体および/またはセルロースエステル中のアシルオキシ基の全部が水酸基で置換されたセルロース、ならびに必要に応じて、後述する可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子、染料、糖エステル化合物、アクリル系共重合体などの添加剤を含んで構成される。
アルカリケン化処理は、セルロースエステル樹脂表面のアシルオキシ基の一部または全部をアルカリで加水分解して水酸基に置換する処理をいう。アルカリケン化処理によって、セルロースエステル樹脂表面に水酸基が形成され、表面が親水化される。アルカリケン化処理は、従来から使用される表面親水化手法であるプラズマ処理やコロナ処理に比べて、フィルムの内部(深さ方向)への親水化に優れ、十分な吸水性能を発揮しうる厚さの防曇層を簡便に得ることができる。
上記のアルカリケン化処理により、セルロースエステル膜の表層のアルカリケン化処理された領域が防曇領域12となる。一方、セルロースエステル膜のアルカリケン化処理されていない内部領域がエステル領域11となる。通常、防曇領域12とエステル領域11との界面は明確ではなく、セルロースエステルにおけるアシルオキシ基の置換度がフィルム表層からフィルム内層へと向かって次第に大きくなる構成を有する。すなわち、親水性がフィルム表層からフィルム内層へと向かって次第に低下する。本発明において、エステル領域11と防曇領域12との境界は、トリクロロメタン溶媒への溶解性(24時間浸漬したのちの溶解性)によって決定される。エステル領域11は主にセルロースエステルから構成される親水性の低い層であるため、クロロホルムに溶解する。本発明において、「防曇領域」とは、セルロースエステルフィルムを過剰量のトリクロロメタン(クロロホルム)溶媒に24時間浸漬した後に溶解せずに残存するフィルム部分である。
防曇領域12におけるセルロースエステルのアシル基の平均置換度は十分な防曇性能を発現させる観点および工程での生産安定性の観点から、0.0〜1.9が好ましく、0.1〜1.5がより好ましい。
アルカリケン化処理の方法は特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。具体的には、アルカリ水溶液に基材を浸漬する方法(浸漬法)、アルカリ水溶液を基材に塗布する方法(塗布法)、基材にアルカリ水溶液を吹き付ける方法があるが、生産性の観点から、浸漬法が好ましい。
アルカリ水溶液としては、アルカリ剤を水に溶解させたものが用いられる。アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物のような無機アルカリ剤;モノメチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ剤が好適に挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。これらのアルカリ剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ水溶液には、フィルム表面に対するアルカリ水溶液の濡れ性を向上させたり、塗膜の安定性を向上させる等の目的で、親水性溶媒を含有させてもよい。親水性溶媒としては、一価脂肪族アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等)、脂環式アルカノール類(例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、メトキシシクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、シクロヘキシルエタノール、シクロヘキシルプロパノール等)、フェニルアルカノール類(例えば、べンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェノキシエタノール、メトキシベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等)、複素環式アルカノール類(例えば、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等)、グリコール化合物のモノエーテル類(例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、メトキシメトキシエタノール、ブチルセルソルブ、ヘキシルセルソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)、および、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、トリオキサン、ジメチルセルソルブ、ジエチルセルソルブ、ジプロピルセルソルブ、メチルエチルセルソルブ、ジメチルカルビトール、ジメチルカルビトール、メチルエチルカルビトール等)が挙げられる。親水性溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アルカリケン化の条件は強力なほどケン化反応が十分に進行し、優れた防曇性を発現しうる。しかし、上述したように強力なアルカリケン化処理を実施すると、セルロースエステル樹脂がアルカリ水溶液に溶解し、耐久性の低下と面方向の寸法変化率S(r)の増大を招く。したがって、十分な防曇性を発現させつつ、面方向の寸法変化率S(r)の増大を抑制して経時でのしわ・剥離の発生を抑制する観点から、アルカリ水溶液中のアルカリ剤の濃度は、5〜30質量%が好ましく、8〜20質量%がより好ましい。アルカリ水溶液の液温は40〜90℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。浸漬法を用いる場合の浸漬時間はアルカリ水溶液の濃度や液温によっても異なるが、通常、2〜100分間であり、好ましくは15〜80分である。
アルカリ水溶液に浸漬した後は、フィルム中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
なお、上記浸漬法を用いた場合には、セルロースエステル膜の両表面に防曇領域が形成される。片面のみに防曇領域を有する形態とする場合には、セルロースエステルの製膜後、防曇領域を形成しない表面に、アクリル等の粘着剤を介して、アルカリに溶解しない材料を貼着し、上記アルカリケン化処理を行った後に、粘着剤およびアルカリに溶解しない材料を除去すればよい。アルカリに溶解しない材料としては、例えば、PETフィルムやPO系フィルム(PE/PPフィルム)、EVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)等が挙げられる。
(3)添加剤
フィルム1は、防曇性フィルムの性能をさらに向上させる目的で、以下(a)可塑剤、(b)紫外線吸収剤、(c)微粒子、(d)染料、(e)糖エステル化合物、(f)アクリル系共重合体、(g)酸化防止剤、(h)滑剤等の添加剤の少なくとも一つを添加することが好ましい。中でも、(a)可塑剤、(b)紫外線吸収剤、(c)微粒子、(g)酸化防止剤、(h)滑剤のうち少なくとも1種以上を添加することが好ましい。より好ましくは、後述する溶液流涎法を用いる場合には、(a)可塑剤、(b)紫外線吸収剤、(c)微粒子のすべてを添加することが好ましい。また、溶融流涎法を用いる場合には、(a)可塑剤、(b)紫外線吸収剤、(c)微粒子、(g)酸化防止剤、(h)滑剤のうちの3つ以上、特に好ましくはこれらの全てを添加することが好ましい。
添加剤の添加量については、全ての添加剤を合計してセルロースエステルフィルム全体の2〜50質量%であることが好ましい。
(a)可塑剤
フィルム1は、機械強度や耐水特性を向上させる目的で、可塑剤を含有することが好ましい。
(ポリエステル化合物)
可塑剤としては、ポリエステル化合物を使用することが好ましい。ポリエステル化合物は、セルロースエステルフィルム内に均一に分散し、フィルム内での局在化が抑制されるため、吸水時のフィルムの面内方向の寸法変化が小さくなり、フィルムの経時的なしわの発生が顕著に抑制される。
ポリエステル化合物は特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体とグリコールとの縮合反応により得ることができる末端がヒドロキシ基(水酸基)となる重合体(以下、「ポリエステルポリオール」という)、または、当該ポリエステルポリオールの末端のヒドロキシ基がモノカルボン酸で封止された重合体(以下、「末端封止ポリエステル」という)を用いることができる。ここで言うエステル形成性誘導体とは、ジカルボン酸のエステル化物、ジカルボン酸クロライド、ジカルボン酸の無水物のことである。
上記ポリエステルポリオールや末端封止ポリエステルを用いることにより、フィルムの経時での剥がれ・しわ発生が一層抑制されうる。かような効果が得られる理由は明確ではないが、上記化合物は、セルロースエステルフィルム製膜時に面方向に配向し、吸湿時の変形応力が厚み方向へ分散されるため、フィルムの経時での剥がれ、しわが抑えられたと推定している。
具体的には、ポリエステル化合物として、下記一般式(1)で表されるエステル系化合物を好ましく用いることができる。
Figure 2013100401
(式中、Bはヒドロキシ基、ベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基であり、Gは炭素数2〜18のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基であり、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜16のアリールジカルボン酸残基であり、nは1以上の整数である。)
上記一般式(1)において、Bがヒドロキシ基である化合物がポリエステルポリオールに相当し、Bがベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基である化合物が末端封止ポリエステルに相当する。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物は、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られるものである。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の脂肪族モノカルボン酸成分としては、例えば、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸(酪酸)が挙げられ、これらはそれぞれ一種又は二種以上の混合物として使用することができる。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、脂肪族酸等があり、これらはそれぞれ一種又は二種以上の混合物として使用することができる。特に、安息香酸、またはパラトルイル酸を含むことが好ましい。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数2〜18のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール(1,2−プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール(1,3−プロピレングリコール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用される。なかでもエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル1,3−プロパンジオールが好ましく、更に好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールである。
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。より好ましくは炭素数2〜6のアルキレングリコールであり、さらに好ましくは炭素数2〜4のアルキレングリコールである。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数6〜12のアリールグリコールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、1,4-ベンゼンジメタノール等の環状グリコール類があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ一種又は二種以上の混合物として使用される。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数6〜16のアリールジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸等がある。上記アリールジカルボン酸は芳香族環に置換基を有していても良い。置換基としては、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
Bがヒドロキシ基である場合、すなわち、ポリエステル化合物がポリエステルポリオールである場合には、一般式(1)において、Aは炭素数10〜16のアリールジカルボン酸残基であることが好ましい。例えばベンゼン環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造等の芳香族環式構造を有するジカルボン酸を使用することができ、具体的なアリールジカルボン酸成分としては、例えばオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸を挙げることができる。好ましくは、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸であり、更に好ましくは、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、特に好ましくは、2,6−ナフタレンジカルボン酸である。これらは単独で使用又は二種以上併用できる。
上記ポリエステルポリオールは、原料として使用するジカルボン酸の炭素数の平均が10〜16の範囲であることが重要である。かかるジカルボン酸の炭素数の平均が10以上であれば、セルロースエステルフィルムの寸法安定性に優れ、炭素数の平均が16以下であれば、セルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの透明性が著しく優れる。ジカルボン酸として、好ましくは炭素数の平均が10〜14であり、更に好ましくは炭素数の平均が10〜12である。
前記ポリエステルポリオールのジカルボン酸の炭素数の平均とは、単一のジカルボン酸を用いてポリエステルポリオールを重合する場合は該ジカルボン酸の炭素数を意味するが、二種以上のジカルボン酸を用いてポリエステルポリオールを重合する場合、それぞれのジカルボン酸の炭素数とそのジカルボン酸のモル分率の積の合計を意味する。
前記炭素数の平均が10〜16であれば、前記10〜16個の炭素原子を有するアリールジカルボン酸とそれ以外のジカルボン酸を併用することができる。
併用できるジカルボン酸としては、4〜9個の炭素原子を有するジカルボン酸が好ましく、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸やこれらのエステル化物、酸塩化物、酸無水物を挙げることができる。
以下に、ポリエステルポリオールの炭素数が10〜16であるジカルボン酸の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
(1)2,6−ナフタレンジカルボン酸
(2)2,3−ナフタレンジカルボン酸
(3)2,6−アントラセンジカルボン酸
(4)2,6−ナフタレンジカルボン酸:コハク酸(75:25〜99:1 モル比)
(5)2,6−ナフタレンジカルボン酸:テレフタル酸(50:50〜99:1 モル比)
(6)2,3−ナフタレンジカルボン酸:コハク酸(75:25〜99:1 モル比)
(7)2,3−ナフタレンジカルボン酸:テレフタル酸(50:50〜99:1 モル比)
(8)2,6−アントラセンジカルボン酸:コハク酸(50:50〜99:1 モル比)(9)2,6−アントラセンジカルボン酸:テレフタル酸(25:75〜99:1 モル比)
(10)2,6−ナフタレンジカルボン酸:アジピン酸(67:33〜99:1 モル比)
(11)2,3−ナフタレンジカルボン酸:アジピン酸(67:33〜99:1 モル比)
(12)2,6−アントラセンジカルボン酸:アジピン酸(40:60〜99:1 モル比)
本発明において用いることができるポリエステル化合物としては、上記のポリエステルポリオール以外に、化合物の水溶性や配向性の観点から、オクタノール−水分配係数(logP(B))は0以上7未満の化合物を用いることも好ましい。
ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体(一般式(1)のAに相当する成分)とグリコール(一般式(1)のGに相当する成分)を必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば180〜250℃の温度範囲内で、10〜25時間、周知慣用の方法でエステル化反応させることによって製造することができる。
エステル化反応を行う際に、トルエン、キシレン等の溶媒を用いても良いが、無溶媒若しくは原料として使用するグリコールを溶媒として用いる方法が好ましい。
前記エステル化触媒としては、例えばテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、p−トルエンスルホン酸、ジブチル錫オキサイド等を使用することができる。前記エステル化触媒は、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体の全量100質量部に対して0.01〜0.5質量部使用することが好ましい。
ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体とグリコールを反応させる際のモル比は、ポリエステルの末端基がヒドロキシ基(水酸基)となるモル比でなければならず、そのためジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対してグリコールは1.1〜10モルである。好ましくは、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対して、グリコールが1.5〜7モルであり、更に好ましくは、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対して、グリコールが2〜5モルである。
上記ポリエステルポリオールの末端基はヒドロキシ基(水酸基)であるが、ポリエステルポリオール中には、副生成物としてカルボキシ基末端の化合物も含まれうる。ただし、ポリエステルポリオール中におけるカルボキシ基末端は、湿度安定性を低下させるため、その含有量は低い方が好ましい。具体的には、酸価5.0mgKOH/g以下が好ましく、更に好ましくは1.0mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0.5mgKOH/g以下である。
ここでいう「酸価」とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070:1992に準拠して測定したものである。
前記ポリエステルポリオールは、ヒドロキシ(水酸基)価(OHV)が35mg/g〜220mg/gの範囲であることが好ましい。ここで言うヒドロキシ(水酸基)価とは、試料1g中に含まれるOH基をアセチル化したときに、ヒドロキシ基(水酸基)と結合した酢酸を中和するために要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。無水酢酸を用いて試料中のOH基をアセチル化し、使われなかった酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定し、初期の無水酢酸の滴定値との差より求める。
前記ポリエステルポリオールのヒドロキシ基(水酸基)含有量は、70%以上であることが好ましい。ヒドロキシ基(水酸基)含有量が少ない場合、ポリエステルポリオールとセルロースエステルとの相溶性が低下する。このため、ヒドロキシ基(水酸基)含有量は、70%以上が好ましく、更に好ましくは90%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
本発明において、ヒドロキシ基(水酸基)含有量が50%以下の化合物は、末端基の一方がヒドロキシ基(水酸基)以外の基で置換されているためポリエステルポリオールには含まれない。
前記ヒドロキシ基(水酸基)含有量は、下記の式(A)により求めることができる。
Figure 2013100401
前記ポリエステルポリオールは、300〜3000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましく、350〜2000の数平均分子量を有することがより好ましい。
また、本発明に係るポリエステルポリオールの分子量の分散度は1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることが更に好ましい。分散度が上記範囲以内であれば、セルロースエステルとの相溶性に優れたポリエステルポリオールを得ることができる。
また、前記ポリエステルポリオールは、分子量が300〜1800の成分を50%以上含有することが好ましい。数平均分子量を前記範囲とすることにより、相溶性を大幅に向上させることができる。
数平均分子量、分散度及び成分含有率を上記の好ましい範囲に制御する方法として、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対してグリコールを2〜5モル使用し、未反応のグリコールを減圧留去する方法が好ましい。減圧留去する温度は、100〜200℃が好ましく、更に好ましくは120〜180℃であり、特に好ましくは130〜170℃が好ましい。減圧留去する際の減圧度は、0.1〜500Torrが好ましく、更に好ましくは0.5〜200Torrであり、最も好ましくは1〜100Torrである。
ポリエステル化合物(ポリエステルポリオール、末端封止ポリエステル)の数平均分子量(Mn)及び分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
測定条件の一例は以下の通りであるが、これに限られることはなく、同等の測定方法を用いることも可能である。
溶媒: テトラヒドロフラン(THF)
カラム: TSKgel G2000HXL(東ソー(株)製を2本接続して使用する)
カラム温度:40℃
試料濃度: 0.1質量%
装置: HLC−8220(東ソー(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: PStQuick F(東ソー(株)製)による校正曲線を使用する。
Bがベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基である場合、すなわち、ポリエステル化合物が末端封止ポリエステルである場合には、一般式(1)において、好ましいAとしては、アジピン酸残基、フタル酸残基等が挙げられる。
また、一般式(1)におけるAは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基と炭素数6〜16のアリールジカルボン酸残基との両方を含むことが好ましく、より好ましくは、アジピン酸残基とフタル酸残基との両方を含む。
末端封止ポリエステルは、2つの末端基Bのうちの少なくとも一方がモノカルボン酸残基であればよい。すなわち、2つの末端基Bのうちの一方がヒドロキシ基であり、他方がモノカルボン酸残基であってもよい。ただし、2つの末端基Bの両方がモノカルボン酸残基であることが好ましい。
末端基Bとしては、上述したベンゼンモノカルボン酸残基、脂肪族モノカルボン酸残基を使用することができるが、好ましくはベンゼンモノカルボン酸残基である。すなわち、芳香族末端ポリエステルであることが好ましい。
上記末端封止ポリエステルは、グリコール(一般式(1)のGに相当する成分)と、ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体(一般式(1)のAに相当する成分)およびモノカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体(一般式(1)のBに相当する成分)とエステル化反応させることにより得ることができ、例えば、特開2011−52205号公報、特開2008−69225号公報、特開2008−88292号公報、特開2008−115221号公報等を参考にして合成することができる。
本発明のエステル化合物は、その合成時点では分子量および分子構造に分布を有する混合物であるが、そのなかに本発明に好ましい成分、例えば、一般式(1)のAとしてフタル酸残基およびアジピン酸残基を有するポリエステル化合物を少なくとも1種類有していればよい。
末端封止ポリエステルは、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は15mgKOH/g以下のものである。
以下に、本発明に用いることのできる一般式(1)で表されるエステル系化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。また、下記実施例において、ポリエステル化合物を下記記号にて規定する。
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
フィルム1は、ポリエステル化合物を、フィルム全体(100質量%)に対して、0.1〜30質量%含むことが好ましく、特には、0.5〜10質量%含むことが好ましい。
(その他の可塑剤)
フィルム1は、上記ポリエステル化合物に代えてまたは加えて、他の可塑剤を含有することができる。好ましくは、(a−1)多価アルコールエステル系可塑剤、(a−2)多価カルボン酸エステル系可塑剤、(a−3)グリコレート系可塑剤、(a−4)フタル酸エステル系可塑剤、(a−5)脂肪酸エステル系可塑剤、(a−6)リン酸エステル系可塑剤等から選択される。
(a−1)多価アルコールエステル系可塑剤は下記一般式(3)で表される多価アルコールのエステル化合物である。
Figure 2013100401
(式中、Rはn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す)
好ましい多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に、安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
この他、トリメチロールプロパントリアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテートなども好ましく用いられる。特開2008−88292号に記載の一般式(I)で表されるエステル化合物(A)を使用することも好ましい。
(a−2)多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は2価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(4)で表される。
Figure 2013100401
(式中、Rは(m+n)価の有機基であり、mは2以上の正の整数であり、nは0以上の整数であり、COOH基はカルボキシル基であり、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基である。)
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような2価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマール酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。
多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールを好ましく用いることができる。
炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができ、フェノールとしては、フェノール、パラクレゾール、ジメチルフェノール等を単独または2種以上を併用して使用することができる。
特開2008−88292号に記載の一般式(II)で表されるエステル化合物(B)を使用することも好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることがさらに好ましい。
多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070:1992に準拠して測定したものである。
(a−3)グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート等が挙げられる。
(a−4)フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
(a−5)脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
(a−6)リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
これらの可塑剤は、セルロースエステル100質量部に対して1〜30質量部の範囲で使用されることが好ましい。
(b)紫外線吸収剤
フィルム1は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、よりさらに好ましくは5%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、市販品として、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類があり、これらはいずれもチバ・ジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
中でも好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
上記紫外線吸収剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースエステルフィルム全体(100質量%)に対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%がさらに好ましい。
(c)微粒子
フィルム1は、微粒子を含有することが滑り性、保管安定性の観点で好ましい。
微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
二酸化珪素については疎水化処理をされたものが滑り性とヘイズを両立する上で好ましい。4個のシラノール基のうち、2個以上が疎水性の置換基で置換わったものが好ましく、3個以上が置換わったものがより好ましい。疎水性の置換基はメチル基である事が好ましい。
二酸化珪素の一次粒径は20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。なお、微粒子の1次平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とした。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、日本アエロジル(株)製のアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600;日本触媒(株)製のKE−P10、KE−P30、KE−P100、KE−P150等の商品名の商品名で市販されており、使用することができる。
ポリマー微粒子の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR812、KE−P30がフィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく、アエロジルR812が最も好ましく用いられる。本発明の防曇性セルロースエステルフィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、微粒子は0.01質量部〜5.0質量部が好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方が、凝集物が少なくなる。
(d)染料
フィルム1には、本発明の効果を損なわない範囲内で、色味調整のため染料を添加することもできる。例えば、フィルムの黄色味を抑えるために青色染料を添加してもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。
(e)糖エステル化合物
フィルム1は、加水分解防止を目的として、下記糖エステル化合物を含有してもよい。
糖エステル化合物としては、例えば、ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下有しその構造のOH基の一部がエステル化されたエステル化合物の混合物を好ましく用いることができる。
ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物のエステル化の割合としては、ピラノース構造又はフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。
本発明においては、上記エステル化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
本発明に用いられるエステル化合物の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。
ピラノース構造又はフラノース構造中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、酢酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸、ナフチル酸が好ましい。
オリゴ糖のエステル化合物を、上記「ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1〜12個を有する化合物」として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
また、前記エステル化合物は、下記一般式(A)で表されるピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下縮合した化合物である。ただし、R11〜R15、R21〜R25は、炭素数2〜22のアシル基又は水素原子を、m、nはそれぞれ0〜12の整数、m+nは1〜12の整数を表す。
Figure 2013100401
11〜R15、R21〜R25は、ベンゾイル基、水素原子であることが好ましい。ベンゾイル基は更に置換基R26を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、更にこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。オリゴ糖もエステル化合物と同様な方法で製造することができる。
以下に、本発明に係るエステル化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
Figure 2013100401
フィルム1は、糖エステル化合物をフィルム全体(100質量%)の0.5〜30質量%含むことが好ましく、特には、2〜15質量%含むことが好ましい。
(f)アクリル系共重合体
フィルム1は、経時耐候性の観点から、重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリルポリマーを含有することができる。中でも分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーX、より好ましくは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーXと、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有することが好ましい。
アクリル系共重合体は、セルロースエステル100質量部に対して1〜30質量部の範囲で添加することができる。
(g)酸化防止剤
フィルム1は、酸化防止剤(熱劣化防止剤)を含有してもよい。特に、溶融製膜を行う場合には、押出成形時のセルロースエステル樹脂の劣化を防止する観点から、フィルム1は酸化防止剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤(熱劣化防止剤)としては、通常知られている劣化防止剤(酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミンなど)を使用することができる。特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。劣化防止剤については、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報に記載がある。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、チバ・ジャパン(株)から、Irganox1076、Irganox1010という商品名で市販されているものが好ましい。
上記リン系化合物は、例えば、住友化学(株)から、SumilizerGP、ADEKA(株)からADK STAB PEP−24G、ADK STAB PEP−36及びADK STAB 3010、チバ・ジャパン(株)からIRGAFOS P−EPQ、堺化学(株)からGSY−P101という商品名で市販されているものが好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、チバ・ジャパン(株)から、Tinuvin144及びTinuvin770、ADEKA(株)からADK STAB LA−52という商品名で市販されているものが好ましい。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学(株)から、Sumilizer TPLR及びSumilizer TP−Dという商品名で市販されているものが好ましい。
上記二重結合系化合物は、住友化学(株)から、Sumilizer GM及びSumilizer GSという商品名で市販されているものが好ましい。
さらに、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、フィルムの主原料であるセルロースエステル樹脂に対して、0.05〜5質量%の範囲で添加される。
これらの酸化防止剤、熱劣化防止剤は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系、リン系、フェノール系および二重結合系化合物の併用は好ましい。
(h)滑剤
フィルム1は、滑剤を含有してもよい。特に、溶融製膜を行う場合には、フィルム1は滑剤を含むことが好ましい。
滑剤としては、通常知られているものを使用することができるが、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルのうち少なくとも一種を含むことが好ましい。
グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの少なくとも一種を用いることで、溶融製膜フィルムの着色(黄変)、微小な表面欠陥を改善することができる。これは、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが滑剤として作用し、押出し機、流涎ダイ内などの滞留を改善し、また、金属と溶融樹脂の摩擦を減らして、摩擦熱による発熱や応力の発生を防いでいるためと考えられる。
さらに、これらの脂肪酸エステルは水に対する接触角も改善できるためフィルム1の防曇性の向上にも寄与しうる。この理由は分かっていないが、界面活性剤のような働きをして、溶融製膜したフィルムの表面状態を変化させていると考えられる。
グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルシン酸、12−ヒドロキシオレイン酸などの、炭素数が12〜22の脂肪族脂肪酸から選ばれた一種または二種以上の混合物を主成分とするものである。
本発明において、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノエステル及びジエステルを主成分とすることが好ましい。
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノエステル、ジエステル及びトリエステルを主成分とすることが好ましい。また、前記炭素数が12〜22の脂肪族脂肪酸でエステル化されていないヒドロキシル基はヒドロキシル基のままでも良いし、酢酸でエステル化しても良い。
加熱時の揮発性による製造加工装置の汚染或いは環境の汚染防止、セルロースエステルとの相溶性等の観点から、前記炭素数は、12〜22であることが好ましい。また、保存時の防臭、変色防止等の観点から、不飽和脂肪酸より飽和脂肪酸のエステルが好ましい。
グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの添加量は、セルロースエステルフィルム全体(100質量%)に対して、0.05質量%〜2.0質量%であることが好ましいが、0.1質量%〜1.5質量%であることがより好ましい。
グリセリン、ジグリセリン、ソルビトールと上記脂肪酸類とのエステル化反応は牛脂、豚脂、鶏脂、魚油、大豆油、コーン油、ナタネ油、パーム油、ヒマワリ油、サフラワー油、ヒマシ油或いはそれらの水素添加油の一種または二種以上の混合物とグリセリン、ジグリセリン、ソルビトールとのエステル交換反応によって得られた反応物を分子蒸留、溶剤分別、再結晶、カラムクロマトグラフィー、超臨界ガス抽出などの方法により分別して得られるが、一般的には分子蒸留が製造の簡便さ、品質および価格などの面から適当である。
(4)防曇性セルロースエステルフィルムの製造方法
本発明の防曇性セルロースエステルフィルム1の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用して作製することができる。
例えば、フィルム1は(a)セルロースエステルを溶液流涎法または溶融流延法により製膜する工程(製膜工程)と、(b)防曇領域を形成する工程(防曇領域形成工程)と、により製造されうる。
(a)製膜工程
まず、セルロースエステルを溶液流涎法または溶融流延法により製膜する。好ましくは溶融流涎法を用いる。すなわち、防曇性セルロースエステルフィルム1は溶融流涎法により製膜されてなることが好ましい。溶融流涎法を用いる場合には、セルロースエステルフィルムにおいてフィルムを構成する材料、特に可塑剤が均一に分散し、可塑剤の局在化を抑制できる。これにより、吸水時の面方向の変化、すなわち、面方向の変化率S(r)を小さくすることができる。特に、可塑剤としてポリエステル化合物を使用する場合に、当該効果が顕著に発揮されうる。
(a−1)溶液流涎法
溶液流涎法により製膜する場合、上記製膜工程は、セルロースエステルおよび上述した添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程(ドープ調製工程)、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程(ドープ流延工程)、流延したドープをウェブとして乾燥する工程(乾燥工程1)、金属支持体から剥離する工程(剥離工程)、延伸する工程(延伸工程)、さらに乾燥する工程(乾燥工程2)、仕上がったフィルムを巻取る工程(フィルム巻き取り工程)を含むことが好ましい。
(i)ドープ調製工程
まず、セルロースエステルおよび上述した添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、大きい方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が大きすぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。セルロースエステルを単独で溶解する溶剤(良溶剤)に、単独ではセルロースエステルを膨潤するかまたは溶解しない溶剤(貧溶剤)を混合して使用することが生産効率の点で好ましい。良溶剤としては好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられ、貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
また、ドープ中に水を0.01〜2質量%含有させる形態も好ましい。
セルロースエステルの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられうる。なお、回収溶剤中に、添加剤(例えば可塑剤、紫外線吸収剤等)が微量含有される場合もあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
続いて、上記で得たドープを濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過することが好ましい。これにより、ドープ内の不純物を除去、低減することができる。
濾過材としては、絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
濾材は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
(ii)ドープ流延工程
続いて、ドープを金属支持体上に流延(キャスト)する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。
(iii)乾燥工程1
続いて、流延したドープをウェブとして乾燥させる。
流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、好ましい支持
体温度は0〜40℃であり、5〜30℃がさらに好ましい。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化したりする場合がある。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
(iv)剥離工程
次いで、ウェブを金属支持体から剥離する。
製膜後のフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
Figure 2013100401
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量であり、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
(v)延伸工程
続いて、金属支持体より剥離した直後のウェブを少なくとも一方向に延伸処理することが好ましい。延伸処理することでフィルム内の分子の配向を制御することができる。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであってもよいが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。ただし、延伸工程は必須ではなく、セルロースエステルフィルムは未延伸フィルムであってもよい。
溶液流涎法により製膜したフィルムは、好ましくは、長手方向(MD方向)に1.01〜1.30倍の延伸倍率、特に、生産性の点から1.01〜1.15倍で延伸することが望ましい。また、これに加えてまたはこれに代えて、幅手方向(TD方向)に1.01〜1.50倍の延伸条件、さらに、生産性および表面品質(平面性)の点から1.05〜1.40倍、特に、生産性の点から1.08〜1.40倍で延伸することが望ましい。
かような延伸処理によって樹脂分子が配向することにより、配向方向への経時での伸縮を抑制するとともに、フィルムに腰が発生する。したがって、薄膜フィルムにおいても、高い防曇特性を維持したまま、経時的なしわの発生を抑制しつつ、優れた作業性を付与することが可能となる。
幅手方向(TD方向)および長手方向(MD方向)の延伸は、逐次または同時に行うことができる。MD方向およびTD方向の延伸を逐次行う場合には、MD方向の前にTD方向の延伸を行ってもよいし、TD方向の延伸の前にMD方向の延伸を行ってもよい。
延伸時のフィルム中の残留溶媒量は3〜50%%が好ましく、さらに好ましくは5〜45%で延伸するのが生産効率とフィルムの透明性を両立する点で好ましい。
ウェブを延伸する方法は特に制限されない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、MD/TD方向に同時に広げてMD/TD両方向に延伸する方法などが挙げられる。
製膜工程のこれらの幅保持または幅手方向の延伸はテンター装置によって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
テンター内などの製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120N/m〜200N/mが好ましく、140N/m〜200N/mがさらに好ましい。140N/m〜160N/mが最も好ましい。
延伸温度は、120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは150℃〜200℃であり、さらに好ましくは150℃を超えて190℃以下で延伸するのが好ましい。
フィルムは延伸後、熱固定されることが好ましいが、熱固定はその最終TD方向延伸温度より高温で、Tg−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定することが好ましい。この際、2つ以上に分割された領域で温度差が1〜100℃となる範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
なお、フィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御され、JIS K7121:1987に記載の方法などによって求めることができる。
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、TD方向及び/またはMD方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。
また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。
尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとした時、(T1−Tg)/tで求めた値である。
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するセルロースエステルや可塑剤等の添加剤種により異なるので、得られた延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
(vi)乾燥工程2
上記ウェブは延伸後さらに乾燥されて、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
当該乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は90℃〜200℃が好ましく、より好ましくは110℃〜190℃である。乾燥温度は段階的に高くしていくことが好ましい。
好ましい乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、5分〜60分が好ましく、10分〜30分がより好ましい。
(vii)フィルム巻き取り工程
最後に、得られたウェブ(仕上がったフィルム)を巻取ることにより、セルロースエステルフィルムが得られる。
(a−2)溶融流延法
「溶融流延」または「溶融製膜」とは、セルロースエステル及び可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延することと定義する。
溶液流延法において用いられる溶媒(例えば塩化メチレン等)を用いずに、加熱溶融する成形法は、溶融押出し成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れるセルロースエステルフィルムを得るためには、溶融押出し成形法が優れている。
以下、溶融押し出し成形法を例にとり、フィルム1の製造方法について説明する。フィルム1の製造方法において、溶融押し出しの条件は、他のポリエステル等の熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行うことができる。
本実施形態の製膜工程は、セルロースエステルと添加剤の溶融ペレット製造工程(溶融ペレット製造工程)、セルロースエステルと添加剤の溶融物をダイから押し出す工程(押し出し工程)、ダイから押し出された溶融物を冷却ロールと弾性タッチロールとの間に押圧しながら流延する工程(流涎工程)、延伸する工程(延伸工程)、仕上がったフィルムを巻取る工程(フィルム巻き取り工程)を含む。
(i)溶融ペレット製造工程
溶融押出に用いる複数の原材料は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し一軸や二軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
添加剤としての紫外線吸収剤や微粒子などは、高濃度のマスターペレットを作製して、フィルム製膜時に押出機中でメインのペレットと混合してもよい。
原材料は、押出する前に乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特にセルロースエステルは吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で3時間以上乾燥し、水分率を200質量ppm以下、更に100質量ppm以下にしておくことが好ましい。
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。添加量が少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
真空ナウターミキサーなどが乾燥と混合を同時にできるので好ましい。また、フィーダー部やダイからの出口など空気と触れる場合は、除湿空気や除湿した窒素ガスなどの雰囲気下にすることが好ましい。
また、押出機への供給ホッパー等は保温しておくことが吸湿防止できるので好ましい。
押出機は、せん断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、二軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
ニーダーディスクは混錬性を向上できるが、せん断発熱に注意が必要である。ニーダーディスクを用いなくても混合性は十分である。ベント孔からの吸引は必要に応じて行えばよい。低温であれば揮発成分はほとんど発生しないのでベント孔なしでもよい。
ペレットの色は、黄味の指標であるb*値が−5〜10の範囲にあることが好ましく、−1〜8の範囲にあることがさらに好ましく、−1〜5の範囲にあることがより好ましい。b*値は分光測色計CM−3700d(コニカミノルタセンシング(株)製)で、光源はD65(色温度6504K)を用い、視野角10°で測定することができる。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行うことが好ましい。ペレット化せずに、原材料の粉末をそのままフィーダーで押し出し機に供給してフィルム製膜することも可能である。
(ii)押し出し工程
ペレットなどの材料は予め乾燥させておくことが好ましい。真空または減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機等で水分を200ppm以下、好ましくは100ppm以下に乾燥させることが望ましい。
除湿熱風や真空または減圧下で乾燥したポリマーを一軸や二軸タイプの押し出し機を用いて溶融し、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過して異物を除去した後、流涎ダイからフィルム状に流延し、冷却ロール上で固化させる。
押出し機は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも二軸押出し機でもよい。
供給ホッパーから押し出し機へ導入する部位、および押出し機内は窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが酸化分解を抑制する点で好ましい。
押出し機内の光学フィルム構成材料の溶融温度は、光学フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、150〜300℃が好ましく、180〜270℃がより好ましく、200〜260℃がさらに好ましい。温度が低すぎると溶解不良や溶融粘度の上昇が発生し、温度が高すぎると材料の熱分解が起こる。
押出し時の溶融粘度は、10〜100000ポイズ、好ましくは100〜10000ポイズである。溶融粘度が高すぎると圧力の上昇によって、押出し機内での滞留時間が長くなる。押出し機内での光学フィルム構成材料の滞留時間は短い方が好ましく、5分以内、好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内である。
滞留時間は、押出し機の種類、押出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
押出し機のスクリューの形状や回転数等は、光学フィルム構成材料の粘度や吐出量等により適宜選択される。本発明において押出し機でのせん断速度は、1/秒〜10000/秒、好ましくは5/秒〜1000/秒、より好ましくは10/秒〜100/秒である。
押出し機から押し出された溶融樹脂は、流延ダイに送られ、流延ダイのスリットから光学フィルム状に押し出される。流延ダイはシートや光学フィルムを製造するために用いられるものであれば特に限定はされない。
流延ダイの材質としては、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)等を溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨等の加工を施したもの等が挙げられる。流延ダイのリップ部の好ましい材質は、流延ダイ4と同様である。またリップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
この流延ダイのスリットは、そのギャップが調整可能なように構成されている。
流延ダイのスリットを形成する一対のリップのうち、一方は剛性の低い変形しやすいフレキシブルリップであり、他方は固定リップである。
そして、多数のヒートボルトが流延ダイの幅方向に一定ピッチで配列されている。各ヒートボルトには、埋め込み電気ヒーターと冷却媒体通路とを具えたブロックが設けられ、各ヒートボルトが各ブロックを縦に貫通している。
ヒートボルトの基部はダイ本体に固定され、先端はフレキシブルリップの外面に当接している。そしてブロックを常時空冷しながら、埋め込み電気ヒーターの入力を増減してブロックの温度を上下させ、これによりヒートボルトを熱伸縮させて、フレキシブルリップを変位させて光学フィルムの厚さを調整する。
ダイ後流の所要箇所に厚さ計を設け、これによって検出されたウェブ厚さ情報を制御装置にフィードバックし、この厚さ情報を制御装置で設定厚み情報と比較し、同装置から来る補正制御量の信号によってヒートボルトの発熱体の電力またはオン率を制御するようにすることもできる。
ヒートボルトは、好ましくは、長さ20〜40cm、直径7〜14mmを有し、複数、例えば数十本のヒートボルトが、好ましくはピッチ20〜40mmで配列されている。
ヒートボルトの代わりに、手動で軸方向に前後動させることによりスリットギャップを調節するボルトを主体とするギャップ調節部材を設けてもよい。
ギャップ調節部材によって調節されたスリットギャップは、通常200〜2000μm、好ましくは300〜1000μm、より好ましくは400〜800μmである。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。
ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、ろ過精度を調整できる。
フィルターはろ過精度の異なるろ過材を組み合わせて多層体としたものが好ましい。また、ろ過精度を順次上げていく構成としたり、ろ過精度の粗、密を繰り返す方法をとることで、フィルターのろ過寿命が延び、異物やゲルなどの補足精度も向上できるので好ましい。
ダイに傷や異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインと呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押し出し機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
押し出し機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押し出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用い
ることが好ましい。
《冷却ロール》
冷却ロールには特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体または冷媒体が流れるような構造を備えるロールであり、大きさは限定されないが、溶融押出されたフィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常冷却ロールの直径は100mmから1m程度である。
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。更に表面の硬度を上昇させたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
冷却ロールは、肉厚が20〜30mm程度のシームレスな鋼管製で、表面が鏡面に仕上げられている。
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面は更に研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
冷却ロールは少なくとも一つであり、二つ以上有しているのが好ましい。一つしかない場合、冷却ロールの表面温度Trは、Tg−50≦Tr≦Tgに設定される。二つ以上の場合、第1冷却ロールと第2冷却ロールの表面温度は、Tg−50≦Tr1≦Tg、Tg−50≦Tr2≦Tgに設定される。好ましくは、Tr2>Tr1であり、0<Tr2−Tr1<50である。このことにより、冷却ロール上への添加剤の凝結量がコントロールされ、さらにセルロースフィルムに再溶融されることになる。
セルロースエステルフィルムと第1および第2冷却ロールとの接触時間によっても再溶解を促進することができるが、1.0秒以上、3.0秒以下が好ましい。
なお、接触時間は、フィルムとローラとが接しはじめる接点と剥離されはじめる接点との円周の距離と、フィルムの搬送速度から算出した秒数で表した。
第2冷却ロールの周速度R2は第1冷却ロールの周速度R1よりも大きいことが好ましい。つまりこの2つのロール間のフィルムに張力が働き、フィルムと第1ロールとの密着性が高まる。この周速度の比は1.00〜1.05の範囲が好ましく、1.05を超えるとフィルムが破断する危険性がある。同様に、第3以降のロール周速度がその直前の冷却ロールの周速度より大きいことが好ましい。
《弾性タッチロール》
冷却ロールに当接するタッチロールは、表面が弾性を有し、冷却ロールへの押圧力によって冷却ロールの表面に沿って変形し、冷却ロールとの間にニップを形成することができる、弾性タッチロールであることが好ましい。
弾性タッチロールとしては、特許第3194904号、特許第3422798号、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号公報、WO97−028950号明細書、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2002−36333号、特開2005−172940号や特開2005−280217号公報に記載されているような弾性タッチロールを使用することができる。
弾性タッチロールは、金属製外筒と内筒との2重構造になっており、その間に冷却流体を流せるように空間を有しているものである。
更に、金属製外筒は弾性を有していることにより、タッチロール表面の温度を精度よく制御でき、かつ適度に弾性変形する性質を利用して、長手方向にフィルムを押圧する距離が稼げるとの効果を有する。
金属製外筒の肉厚の範囲は、0.003≦(金属製外筒の肉厚)/(タッチロール半径)≦0.03であれば、適度な弾性となり好ましい。タッチロールの半径が大きければ金属外筒の肉厚が厚くても適度に撓むことが出来る。金属製外筒の肉厚があまり薄すぎると強度が不足し、破損の懸念がある。一方、厚すぎると、ロール質量が重くなりすぎ、回転むらの懸念がある。従って、金属外筒の肉厚は、0.1〜5mmであることが好ましい。
弾性タッチロールの直径は100mm〜600mm、ロール有効幅L=500〜1600mmで、r/L<1で横長の形状が好ましい。
金属外筒表面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。
金属外筒の材質は、平滑で、適度な弾性があり、耐久性があることが求められる。炭素鋼、ステンレス、チタン、電鋳法で製造されたニッケルなどが好ましく用いることができる。更にその表面の硬度をあげたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。表面加工した表面は更に研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
内筒は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの軽量で剛性のある金属製内筒であることが好ましい。内筒に剛性をもたせることで、ロールの回転ぶれを抑えることができる。内筒の肉厚は、外筒の2〜10倍とすることで十分な剛性が得られる。
内筒には更にシリコーン、フッ素ゴムなどの樹脂製弾性材料が被覆されていてもよい。
冷却流体を流す空間の構造は、ロール表面の温度を均一に制御できるものであればよく、例えば、巾方向に行きと戻りが交互に流れるようにしたり、スパイラル状に流れるようにすることでロール表面の温度分布の小さい温度制御ができる。
冷却流体は、特に制限はなく、使用する温度域に合わせて、水やオイルを使用できる。
弾性タッチロールの表面温度Tr0は、フィルムのガラス転移温度(Tg)より低いことが好ましい。Tgより高いと、フィルムとロールとの剥離性が劣る場合がある。Tg−50℃〜Tgであることが更に好ましい。
弾性タッチロールは、巾方向の中央部が端部より径が大きいいわゆるクラウンロールの形状とすることが好ましい。
タッチロールは、その両端部を加圧手段でフィルムに押圧するのが一般的であるが、この場合、タッチロールが撓むため、端部にいくほど強く押圧されてしまう現象がある。ロールをクラウン形状にすることで高度に均一な押圧が可能となるのである。
弾性タッチロールの幅は、フィルム幅よりも広くすることで、フィルム全体を冷却ロールに密着できるので好ましい。また、ドロー比が大きくなると、フィルムの両端部がネックイン現象により耳高(端部の膜厚が厚くなる)になる場合がある。
この場合は、耳高部を逃げるように、金属製外筒の幅をフィルム幅より狭くしてもよい。あるいは、金属製外筒の外径を小さくして耳高部を逃げてもよい。
弾性タッチロールの撓みを防止するため、冷却ロールに対してタッチロールの反対側にサポートロールを配してもよい。
弾性タッチロールの汚れを清掃する装置を配してもよい。清掃装置としては、例えば、ロール表面を必要により溶剤を浸透させた不織布などの部材をロールに押し当てる方法、液体中にロールを接触させる方法、コロナ放電やグロー放電などのプラズマ放電によりロール表面の汚れを揮発させる方法などが好ましく用いることができる。
弾性タッチロールの表面温度Tr0を更に均一にするため、タッチロールに温調ロールを接触させたり、温度制御された空気を吹き付けたり、液体などの熱媒体を接触させてもよい。
更に弾性タッチロール押圧時のタッチロール線圧を9.8N/cm以上、147N/cm以下にすることが好ましい。線圧がこの範囲よりも小さいと、ダイラインを十分に解消することができなくなる。
線圧とは、弾性タッチロールがフィルムを押圧する力を押圧時のフィルム幅で除した値である。線圧を上記の範囲にする方法は、特に限定はなく、例えば、エアーシリンダーや油圧シリンダーなどでロール両端を押圧することができる。
サポートロールにより弾性タッチロールを押圧することで、間接的にフィルムを押圧してもよい。
タッチロールによってダイラインを良好に解消するためには、タッチロールがフィルムを挟圧するときの光学フィルムの粘度が適切な範囲であることが重要となる。
また、セルロースエステルは温度による粘度の変化が比較的大きいことが知られている。
フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、押出されたフィルムがタッチロールに挟圧される直前のタッチロール側フィルム表面温度Ttを、Tg<Tt<Tg+110℃とすることが好ましい。
即ち、タッチロールに挟圧される直前のフィルムの温度Ttが上記の範囲にすると、フィルムを挟圧するときのフィルムの粘度を適切な範囲に設定することができ、ダイラインの矯正が可能となり、また、フィルム表面とロールが均一に接着し、ダイラインの矯正が可能となる。
好ましくはTg+10℃<Tt<Tg+90℃、さらに好ましくはTg+20℃<Tt<Tg+70℃である。
押圧時のフィルム温度を上記範囲にする方法は特に限定はないが、例えば、ダイと冷却ロール間の距離を近づけて、ダイと冷却ロール間での冷却を抑制する方法やダイと冷却ロール間を断熱材で囲って保温したり、あるいは熱風や赤外線ヒーターやマイクロ波加熱等により加温する方法が挙げられる。
フィルム表面温度およびロール表面温度は非接触式の赤外温度計で測定できる。具体的には、非接触ハンディ温度計(IT2−80、(株)キーエンス製)を用いてフィルムの幅手方向に10箇所を被測定物から0.5mの距離で測定する。
弾性タッチロール側フィルム表面温度Ttは、搬送されているフィルムをタッチロールをはずした状態でタッチロール側から非接触式の赤外温度計で測定したフィルム表面温度のことをさす。
セルロースエステルフィルムの写像性C値はクシ歯0.125mmの透過測定において90以上100以下であることを特徴としている。この写像性C値は、最後の冷却ロールを通過した時点での写像性である。
冷却ロール通過後の写像性は、凝結物がフィルム表面に再溶融したセルロースエステルフィルムの状態を表す指標として相関のあるものである。C値が大きいほど、再溶融の進んでいることが実験的に確認されている。
なお、写像性C値は、スガ試験機株式会社の写像性測定器ICM−IDPで透過(0度)測定、光学クシ歯0.125mmで測定した写像性(光沢値C値%)を表す。
(iii)流涎工程
次いで、ダイから押し出された溶融物を冷却ロールと弾性タッチロールとの間に押圧しながら流延する。
流延ダイの開口部(リップ)から冷却ロールまでの部分を減圧することが好ましい。好ましくは減圧は50〜70kPaである。流延ダイの開口部(リップ)から冷却ロールまでの部分の圧力を70kPa以下に保つ方法としては、特に制限はないが、流延ダイからロール周辺を耐圧部材で覆い、減圧する等の方法がある。
このとき、吸引装置は、装置自体が昇華物の付着場所にならないようヒーターで加熱する等の処置を施すことが好ましい。吸引圧が小さすぎると昇華物を効果的に吸引できないため、適当な吸引圧とする必要がある。
セルロースエステルを含む溶融物は他の熱可塑性樹脂と比較して、溶融粘度が高く、延伸もしにくい。
そのため、ドロー比が大きいと搬送方向で膜厚変動が生じやすく、又、テンター工程で延伸する際にも破断しやすくなるという問題があり、せいぜいドロー比7〜8程度で実施していたのであるが、本発明では、セルロースエステルを含む溶融物をダイからフィルム状に押出し、ドロー比10以上30以下として得られたフィルムを、弾性タッチロールで冷却ロールに押圧しながら搬送する。
ドロー比とは、ダイのリップクリアランスを冷却ロール上で固化したフィルムの平均膜厚で除した値である。
ドロー比は、ダイリップクリアランスと冷却ロールの引き取り速度により調整できる。ダイリップクリアランスは、900μm以上が好ましく、更に1mm以上2mm以下が好ましい。
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度をフィルムのTg以上Tg+110℃以下にすることは、フィルム表面の写像性を調整するために好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
(iv)延伸工程
上記のようにして得られたフィルムは冷却ロールに接する工程を通過後、少なくとも一方向に延伸処理することが好ましい。延伸処理することでフィルム内の分子の配向を制御することができる。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであってもよいが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。ただし、延伸工程は必須ではなく、セルロースエステルフィルムは未延伸フィルムであってもよい。
延伸方法や延伸条件(延伸温度、搬送張力など)としては、溶液流涎法において例示した方法、条件を同様に好ましく使用できる。ただし、溶融流涎法を用いて製膜した場合には、幅手方向(TD方向)の延伸倍率を1.01〜3.50倍、さらに、フィルムの表面品質(平面性)及び生産性の点から1.10〜3.00倍、特に、表面品質(平面性)の点から1.25〜2.50倍とすることが好ましい。また、これに加えてまたはこれに代えて、長手方向(MD方向)の延伸倍率を1.05〜4.00倍、さらに、フィルムの表面品質(スジムラ)及び生産性の点から1.20〜3.50倍、特に、表面品質(スジムラ)の点から1.50〜3.00倍とすることが好ましい。溶融流涎法を用いる場合には、製膜時のスジを改良する目的により、溶液流涎法の場合に比べて延伸倍率を大きくすることが好ましい。
また、溶液流涎法の場合と同様に、延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、目的とするフィルムに要求される特性を有するように適宜調整することができる。
(v)フィルム巻き取り工程
最後に、得られたフィルムを巻取ることにより、セルロースエステルフィルムが得られる。
(b)防曇層形成工程
次に、上記で得たセルロースエステルフィルムにアルカリケン化処理を施すことにより防曇領域を形成する。アルカリケン化処理については上述の通りである。これにより、図1に示すような防曇性セルロースエステルフィルムが得られる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例において、水酸基残度(DR)は、セルロースを構成するグルコース単位の有する3個の水酸基のうち、エステル化していない水酸基の数(平均値)を示す。つまり、セルロースのアシル基置換度を用いて、水酸基残度(DR)=3−アシル基置換度と表される。また、重量平均分子量は、上述した方法に従って求めた。
1.セルロースエステルの製造
[セルロースエステルCE−1の作製]
セルロース100質量部(綿花リンター由来のセルロース)に、硫酸16質量部、無水酢酸260質量部、酢酸420質量部をそれぞれ添加し、攪拌しながら室温から60℃まで60分かけて昇温し、15分間その温度を保持しながら酢化反応を行った。
次に、酢酸マグネシウム及び酢酸カルシウムの酢酸−水混合溶液を添加して硫酸を中和した後、反応系内に水蒸気を導入して、60℃で120分間維持して鹸化熟成処理を行った。
その後、多量の水により洗浄を行い、更に乾燥し、セルロースエステルCE−1を得た。
セルロースエステルCE−1は、アセチル基置換度が2.9であり、重量平均分子量がMw=270000であった。
[セルロースエステルCE−2の作製]
セルロースエステルの置換度及び重量平均分子量Mwが表1に記載の置換度、分子量となるように、セルロースエステルの水酸基残度(DR)、カルシウム量、マグネシウム量、酢酸量及びプロピオン酸量を変更したこと以外は、セルロースエステルCE−1の作製と同様にして、セルロースエステルCE−2を作製した。
表2に得られたセルロースエステルCE−1およびCE−2の置換度および重量平均分子量(Mw)を示す。
Figure 2013100401
2.防曇性フィルムの製造
2−A.溶液流涎法
[防曇性フィルム101の製造]
(1)ドープ組成物の調製
下記のドープ組成物を調製した。
(ドープ組成物1)
下記(a)〜(f)を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ組成物1を調製した。
(a)セルロースエステルCE−1:90質量部
(b)可塑剤 トリフェニルホスフェート(TPP)(大八化学工業株式会社製):10質量部
(c)紫外線吸収剤 チヌビン928(チバ・ジャパン株式会社製):2.5質量部
(d)微粒子分散液 二酸化ケイ素分散希釈液:4質量部
(e)良溶剤 メチレンクロライド:432質量部
(f)貧溶剤 エタノール:38質量部
なお、上記(d)微粒子分散液としての二酸化ケイ素分散希釈液は下記手順で調製した。
(二酸化ケイ素分散希釈液)
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製;一次粒子の平均径7nm) 10質量部、および、エタノール 90質量部をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。これにメチレンクロライド 88質量部を撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合した。混合液を微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過し、二酸化ケイ素分散希釈液を調製した。
(2)ドープ流延・乾燥・剥離
上記で得たドープ組成物1を、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体(温度:35℃)に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。
(3)延伸・乾燥・熱固定
剥離後、ロール周速差を利用した延伸機によって160℃で長手方向(MD方向;搬送方向)に1.01倍(1%)に延伸した。次いで、テンターでウェブ両端部を把持し、160℃で幅手(TD)方向の延伸倍率が1.01倍(1%)となるように延伸し、その幅を維持したまま数秒間保持し(熱固定)、幅方向の張力を緩和させた後、幅保持を解放し、更に125℃に設定された第3乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行った。なお、延伸開始時の残留溶媒量は30%であった。
(4)フィルム巻き取り
その後、セルロースエステルフィルムを1.65m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取った。得られたセルロースエステルフィルムの残留溶媒量は0.2%であり、膜厚は181μmであり、巻数は6000mであった。
(5)防曇処理
得られたフィルムに下記方法により、防曇処理を施した。
(アルカリケン化処理A)
70℃に加温された16重量%の水酸化ナトリウムケン化溶液に60分間浸漬し、次いで90秒間水洗し、80℃の温風にて乾燥した。
これにより、フィルムの両面に防曇処理が施された、防曇性フィルム101を得た。
[防曇性フィルム102〜106の製造]
セルロースエステルフィルムが表3に記載の膜厚となるようにドープ組成物1をステンレスバンド支持体上に流延したこと以外は、防曇性フィルム101の製造と同様にして、防曇性フィルム102〜106を製造した。
[防曇性フィルム107〜109の製造]
ドープ組成物の調製の際に可塑剤としてのトリフェニルホスフェートを、表3記載のポリエステルA(PS−A)、B−18、またはB−14に変更したこと以外は、防曇性フィルム106の製造と同様にして、防曇性フィルム107〜109を製造した。
なお、ポリエステルAは芳香族末端ポリエステルであり、下記方法により合成した。
<ポリエステルAの合成>
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、本発明のエステル化合物Aを得た。酸価0.10、数平均分子量450であった。
[防曇性フィルム110〜111の製造]
セルロースエステルフィルムが表2に記載の膜厚となるようにドープ組成物1をステンレスバンド支持体上に流延し、かつ、長手(MD)方向の延伸倍率を表3に記載の倍率としたこと以外は、防曇性フィルム108の製造と同様にして、防曇性フィルム111〜112を製造した。
[防曇性フィルム112の製造]
アルカリケン化処理Aに代えて下記の防曇処理を施したこと以外は、防曇性フィルム104の製造と同様にして、防曇性フィルム112を製造した。
(アルカリケン化処理B)
85℃に加温された25重量%の水酸化ナトリウムケン化溶液に95分間浸漬し、次いで90秒間水洗し、80℃の温風にて乾燥した。
これにより、フィルムの両面に防曇処理が施された、防曇性フィルム112を得た。
[防曇性フィルム201の製造]
ドープ組成物の調製の際にドープ組成物の組成を下記組成に変更したこと以外は、防曇性フィルム106の製造と同様にして、防曇性フィルム201を製造した。
(ドープ組成物2)
下記(a)〜(f)を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ組成物2を調製した。
(a)セルロースエステルCE−8:100質量部
(b)可塑剤 トリメチロールプロパン・トリベンゾエート:10質量部
(c)酸化防止剤
(c−1)IRGANOX−1010(チバ・ジャパン株式会社製):0.5質量部
(c−2)PEP−36(ADEKA(株)製):0.1質量部
(c−3)Sumilizer−GS(住友化学社株式会社製):0.3質量部
(d)滑剤 グリセリン・モノステアレート:0.5質量部
(e)紫外線吸収剤 チヌビン928(チバ・ジャパン株式会社製):1.5質量部
(f)微粒子 シーホスターKEP−30(株式会社日本触媒製):0.1質量部
(g)良溶剤 メチレンクロライド:395質量部
(h)貧溶剤 エタノール:75質量部
2−B.溶融流延法
[防曇性フィルム202の製造]
(1)セルロースエステル組成物の調製
下記のセルロースエステル組成物1を調製した。
(セルロースエステル組成物1)
(a)セルロースエステルCE−2:100質量部
(b)可塑剤 トリメチロールプロパン・トリベンゾエート:10質量部
(c)酸化防止剤
(c−1)IRGANOX−1010(チバ・ジャパン株式会社製):0.5質量部
(c−2)PEP−36(ADEKA(株)製):0.1質量部
(c−3)Sumilizer−GS(住友化学社株式会社製):0.3質量部
(d)滑剤 グリセリン・モノステアレート:0.5質量部
(e)紫外線吸収剤 チヌビン928(チバ・ジャパン株式会社製):1.5質量部
(f)微粒子 シーホスターKEP−30(株式会社日本触媒製):0.1質量部
上記組成物を80℃で6時間乾燥して水分率200ppm以下にし、真空ナウターミキサーで80℃、1Torrで3時間混合しながら更に乾燥して水分率50質量ppmにした。
(2)ペレット化
得られた混合物を二軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。この際、混錬時のせん断による発熱を抑えるためニーディングディスクは用いずオールスクリュータイプのスクリューを用いた。
また、ベント孔から真空引きを行い、混錬中に発生する揮発成分を吸引除去した。なお、押出機に供給するフィーダーやホッパー、押出機ダイから冷却槽間は、乾燥窒素ガス雰囲気として、樹脂への水分の吸湿の防止や酸素の除去を行った。
第1冷却ロール及び第2冷却ロールは直径40cmのステンレス製とし、表面にハードクロムメッキを施した。又、内部には温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて、ロール表面温度を130℃に制御した。
弾性タッチロールは、直径20cmとし、内筒と外筒はステンレス製とし、外筒の表面にはハードクロムメッキを施した。外筒の肉厚は2mmとし、内筒と外筒との間の空間に温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて弾性タッチロールの表面温度を130℃に制御した。
(3)溶融押し出し・流涎
上記ペレットを用いて窒素雰囲気下、250℃にて溶融して流延ダイから第1冷却ロール上に押し出し、第1冷却ロールと弾性タッチロールとの間に押出した溶融物を挟圧して成形し、セルロースエステルフィルムを得た。膜厚は押出量と引取り速度を調整することによって制御した。
この際、Tダイのリップクリアランス1.5mm、リップ部平均表面粗さRa0.01μmのTダイを用いた。また、第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールを線圧10kg/cm(98N/cm)で押圧した。
押圧時のタッチロール側のフィルム温度は、180℃±1℃であった(ここでいう押圧時のタッチロール側のフィルム温度は、第1ロール(冷却ロール)上のタッチロールが接する位置のフィルムの温度を、非接触温度計を用いて、タッチロールを後退させてタッチロールがない状態で50cm離れた位置から幅方向に10点測定したフィルム表面温度の平均値を指す。)。
(4)延伸処理
次いでロール周速差を利用した延伸機によって155℃で長手方向(MD方向;搬送方向)に1.03倍に延伸した。次に予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、幅手方向(TD方向;巾方向)に155℃で1.05倍延伸した後、巾方向に2%緩和しながら30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、膜厚60μmのセルロースエステルフィルムを得た。
(5)防曇処理
得られたフィルムに、防曇性フィルム101の製造と同様にして、アルカリケン化処理を施した。
これにより、フィルムの両面に防曇処理が施された、防曇性フィルム202を得た。
[防曇性フィルム203〜205の製造]
長手(MD)方向の延伸倍率および幅手(TD)方向の延伸倍率を表4のように変更したこと以外は、防曇性フィルム202の製造と同様にして、防曇性フィルム203〜205を製造した。
[フィルム評価]
得られた防曇性フィルムを下記方法により評価した。
(1)防曇性フィルムの膜厚d(T)の測定
得られた防曇性フィルムを30mm×30mmのサイズに裁断し、23℃55%RH雰囲気下にて、24時間以上静置した。このフィルムサンプルの厚さを膜厚計(ニコン製接触式膜厚計「DIGIMICRO MH−15M」)にて測定し、防曇性セルロースエステルフィルムの膜厚d(T)を得た。
上記方法で測定した膜厚d(T)を表3〜4に示す。
(2)防曇性フィルムの面方向の寸法変化率S(r)、厚み方向の寸法変化率S(t)の測定
得られた防曇性フィルムを120mm×120mmのサイズに裁断し、フィルムの流延長手方向、幅手方向にそれぞれ100mm間隔に剃刀の刃で十字のスジを入れ、23℃相対湿度20%雰囲気下にて、24時間以上静置した。
このサンプルの長手方向、幅手方向について、十字の交差点の距離を、寸法測定顕微鏡(オリンパス 測定顕微鏡 STM6)を用いて測定し、その平均の値をS(r)20%とした。また、このフィルムサンプルの厚さを膜厚計(ニコン製接触式膜厚計「DIGIMICRO MH−15M」)にて測定し、S(t)20%とした。
続けて、このサンプルを23℃相対湿度80%雰囲気下にて、24時間以上静置した。
このサンプルの長手方向、幅手方向について、十字の交差点の距離を、寸法測定顕微鏡(オリンパス社製 測定顕微鏡 STM6)を用いて測定し、その平均の値をS(r)80%とした。また、このフィルムサンプルの厚さを膜厚計(ニコン製接触式膜厚計「DIGIMICRO MH−15M」)にて測定し、S(t)80%とした。
得られたS(r)20%、S(t)20%、S(r)80%、S(t)80%を下記式に当てはめ、面方向の寸法変化率S(r)、厚み方向の寸法変化率S(t)を得た。
Figure 2013100401
式中、S(r)は防曇フィルムを23℃環境下において、相対湿度20%から80%へ変化したときの面方向の寸法変化率を表し、S(t)は防曇フィルムを23℃環境下において、相対湿度20%から80%へ変化したときの厚み方向の寸法変化率を表す。
(3)防曇性フィルムの吸湿膨張係数S(w)の測定
得られた防曇性フィルムを120mm×120mmのサイズに裁断し、23℃55%RH雰囲気下にて、24時間以上静置した。このサンプルの重さを、分析用電子天秤(A&D社製 GH−252)を用いて測定し、a(g)とした。
続けて、このサンプルを23℃20%RH雰囲気下にて、24時間以上静置した。このサンプルの重さを、分析用電子天秤(A&D社製 GH−252)を用いて測定し、b(g)とした。
続けて、このサンプルを23℃相対湿度80%雰囲気下にて、24時間以上静置した。このサンプルの重さを、分析用電子天秤(A&D社製 GH−252)を用いて測定し、c(g)とした。
得られたa、b、cを下記式に当てはめ、吸湿膨張係数S(w)[g/%/10cm]を得た。
Figure 2013100401
式中、S(w)は防曇フィルムを23℃環境下において、相対湿度20%から80%へ変化したときの、相対湿度1%あたりの平均重量変化量を表す。
(4)防曇性能評価
得られた防曇性フィルムをA3サイズ(297mm×420mm)に裁断し、23℃55%RH雰囲気下にて、24時間以上静置した。その後、同雰囲気下にて未通電状態の冷凍ショーケース(ホシザキ電機製 リーチイン冷凍ショーケース FS−120XT3−1)のガラス扉の内側に25μmの両面接着テープ(リンテック社製 基材レステープ MO−3005C)を介して貼り、庫内設定温度を−25℃となったのを確認した後、60分以上放置したのち、扉を開けたときの防曇特性を下記の評価基準に基づいて評価した。なお、扉を開けた時の庫外設定温度は23℃、相対湿度55%であった。
(防曇性評価基準)
5:全く結露が見られない
4:結露するが、数秒で消える
3:結露が消えるまで10秒以内
2:結露が消えるまで30秒以内
1:30秒以上、結露が消えない
結果を表3〜4に示す。
(3)しわ、剥がれ特性評価
得られた防曇性フィルムをA3サイズ(297mm×420mm)に裁断し、23℃55%RH雰囲気下にて、24時間以上静置した。その後、裁断したフィルムを、25μmの両面接着テープ(リンテック社製 基材レステープ MO−3005C)を介し、表面を予めエタノールで洗浄したガラス板(厚さ1.2mm)の片面に貼合し、サンプルを作製した。
上記で得たサンプルを恒温恒湿槽(日立アプライアンス製 EC−25EXH)を用い、温度30℃、相対湿度90%雰囲気下に24時間静置し、続いて−25℃雰囲気下に24時間静置する環境変化を3回繰り返した。その後、サンプルを装置より取り出し、フィルムのしわ、剥がれを下記評価基準に基づいて評価した。
(しわ、剥がれの評価基準)
5:しわ、剥がれが全くない
4:四隅に剥がれが発生し始めているが、許容できる
3:僅かにしわ、剥がれが発生しているが、許容できる
2:しわ、剥がれがはっきりと分かる
1:フィルムが前面に波打ち、しわ、剥がれが発生している
結果を表3〜4に示す。
Figure 2013100401
Figure 2013100401
表3〜表4の結果から、フィルムの厚み方向の寸法変化率と面方向の寸法変化率が式(1)を満たす実施例の防曇性フィルムは、経時によるしわ、剥がれの発生が抑制され、かつ高い防曇性を維持し、取扱性と防曇性を両立できることが明白である。
また、溶融流涎法で製膜し、延伸倍率をTD方向に1.50〜2.50倍、MD方向に1.30〜2.50倍とした防曇性フィルム203〜205、溶液流涎法で製膜し、延伸倍率をTD方向に1.20〜1.30倍、(MD方向に1.10倍)とした防曇性フィルム110〜111では、しわ特性が一層することが確認される。
さらに、可塑剤としてポリエステル化合物を用いた場合(防曇性フィルム108〜112)には、防曇性およびしわ・剥がれ特性が一層向上することが確認される。
これに対して、式(1)を満たさない比較例の防曇性フィルムは、しわ・剥がれ特性が顕著に劣っている。
1 防曇性セルロースエステルフィルム、
11 エステル領域、
12 防曇領域。

Claims (6)

  1. セルロースエステルフィルムの製膜後に、製膜されたフィルムの少なくとも片面をアルカリケン化処理されてなり、
    下記式(1)を満たす、防曇性セルロースエステルフィルム。
    Figure 2013100401
    式中、S(t)は23℃相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化させた場合のフィルムの厚さ方向の寸法変化率(%)であり、S(r)は23℃相対湿度20%から23℃相対湿度80%に変化させた場合のフィルムの面方向の寸法変化率(%)である。
  2. 下記式(2)を満たす、請求項1に記載の防曇性セルロースエステルフィルム。
    Figure 2013100401
    式中、d(T)はセルロースエステルフィルムの全膜厚(μm)である。
  3. 下記一般式(1)で示される化合物を含む、請求項1または2に記載の防曇性セルロースエステルフィルム
    Figure 2013100401
    式中、Bはヒドロキシ基、ベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基であり、Gは炭素数2〜18のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基であり、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜16のアリールジカルボン酸残基であり、nは1以上の整数である。
  4. 溶融流涎法により製膜されてなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防曇性セルロースエステルフィルム。
  5. 幅手方向に1.01〜3.50倍、長手方向に1.05〜4.00倍の延伸条件で延伸された二軸延伸フィルムである、請求項4に記載の防曇性セルロースエステルフィルム。
  6. 溶液流涎法により製膜されてなり、幅手方向に1.01〜1.50倍、長手方向に1.01〜1.30倍の延伸条件で延伸された二軸延伸フィルムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防曇性セルロースエステルフィルム。
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