以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
≪偏光板≫
本発明の一形態によれば、ヨウ素を含有する偏光子と、前記偏光子の一方の面に配置された第1の偏光板保護フィルムと、前記偏光子の他方の面に配置された、セルロースエステルフィルムである第2の偏光板保護フィルムとを有する偏光板が提供される。以下、本形態に係る偏光板の各構成要素について、順を追って説明する。
[偏光子]
偏光子は、偏光板の主構成要素であり、一定方向の偏波面の光だけを通す素子である。
本形態の偏光板において、偏光子は、ヨウ素を含有するものである。本形態の偏光子は、ヨウ素を含有するものであればその他の形態については特に制限はない。ただし、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素を吸着・配向させたものが好ましく用いられる。このような偏光子は、PVA水溶液を製膜し、これを1軸延伸させてヨウ素で染色するか、ヨウ素で染色した後1軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられうる。なお、偏光子の全量(100質量%)に占めるヨウ素の含有量は、通常は1〜20質量%程度である。
[第1の偏光板保護フィルム]
本形態に係る偏光板において、上述した偏光子の一方の面には、第1の偏光板保護フィルムが配置されている。そして、当該第1の偏光板保護フィルムは、透湿度が300g/m2/24h以下である点に特徴を有する。このように、本形態の偏光板において、透湿度が小さい偏光板保護フィルムを偏光子の一方の面に配置することとしているのは、かような構成を有する偏光板において、上述したヨウ素の分解に起因する赤味の発生の問題が顕著に発現するためである。そして、本形態に係る偏光板では、もう一方の偏光板保護フィルム(第2の偏光板保護フィルム)の構成を後述するようなものとすることで、このような問題(赤味の発生)が生じるのを防止することとしたのである。
第1の偏光板保護フィルムの透湿度の値は、300g/m2/24h以下であればよいが、好ましくは1〜200g/m2/24hであり、より好ましくは1〜150g/m2/24hである。なお、透湿度の値としては、後述する実施例の欄に記載の測定方法により測定された値を採用するものとする。
第1の偏光板保護フィルムの構成材料についても特に制限はなく、上述した透湿度の要件を満たすものが適宜用いられうる。上述したような小さい透湿度を有する代表的な材料として、脂環式構造含有重合体樹脂が挙げられる。以下、第1の偏光板保護フィルムを構成しうる脂環式構造含有重合体樹脂について、簡単に説明する。
脂環式構造含有重合体樹脂は、重合体樹脂の繰り返し単位中に脂環式構造を有するものであり、主鎖中に脂環式構造を有する重合体樹脂および側鎖に脂環式構造を有する重合体樹脂のいずれであってもよい。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を構成する炭素数に特に制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にあると、耐熱性および柔軟性に優れたフィルムを得ることができる。
脂環式構造含有重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位が過度に少ないと耐熱性が低下するため、好ましくない。なお、脂環式構造含有重合体樹脂における脂環式構造を有する繰り返し単位以外の繰り返し単位は、使用目的に応じて適宜選択される。
脂環式構造含有重合体樹脂の具体例としては、(i)ノルボルネン系重合体、(ii)単環の環状オレフィン系重合体、(iii)環状共役ジエン系重合体、(iv)ビニル脂環式炭化水素重合体、およびこれらの水素化物等が挙げられる。なかでも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン系重合体が好ましい。
ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体との開環共重合体、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体と共重合可能なその他の単量体との付加共重合体およびこれらの水素化物が挙げられる。なかでも、透明性の観点から、ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物が特に好ましい。
ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)等が挙げられる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基等が挙げられる。また、これらの置換基は、同一または異なって複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン系単量体は1種単独で、または2種以上が組み合わせて用いられうる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状共役ジエンおよびその誘導体;等が挙げられる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体およびノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との開環共重合体は、単量体を開環重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。開環重合触媒としては、通常使用される公知のものが用いられうる。
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン等の炭素数2〜20のα-オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン等のシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4-ヘキサジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。これらの単量体は1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いられうる。なかでも、α-オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
ノルボルネン系単量体の付加重合体およびノルボルネン系単量体とこれと共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、単量体を付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。付加重合触媒としては、通常使用される公知のものが用いられうる。
ノルボルネン系重合体の水素化物は、公知の水素化触媒の存在下でノルボルネン系重合体の炭素−炭素不飽和結合を好ましくは90%以上水素化することによって得ることができる。
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の付加重合体が挙げられる。また、環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系単量体を1,2−付加重合または1,4−付加重合した重合体が挙げられる。
ビニル脂環式炭化水素重合体は、ビニルシクロアルカンまたはビニルシクロアルケン由来の繰り返し単位を有する重合体である。ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキサン等のビニルシクロアルカンや、ビニルシクロヘキセン等のビニルシクロアルケンなどのビニル脂環式炭化水素化合物の重合体およびその水素化物;スチレン、α-メチルスチレン等、ビニル芳香族炭化水素化合物を重合し、そして芳香環部分を水素化したものなどが挙げられる。
また、ビニル脂環式炭化水素重合体は、ビニル脂環式炭化水素化合物やビニル芳香族炭化水素化合物と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体およびその水素化物であってもよい。ブロック共重合としては、ジブロック、トリブロック、またはそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合等が挙げられるが、特に制限はない。
脂環式構造含有重合体樹脂は、溶媒としてシクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が、通常10000〜300000、好ましくは15000〜250000、より好ましくは20000〜200000の範囲である。この範囲の重量平均分子量を有する脂環式構造含有重合体樹脂は、基材フィルムの機械的強度および成形加工性を高度にバランスするので好適である。
なお、第1の偏光板保護フィルムとしては市販品を用いてもよく、かような市販品としては、例えば、ZEONORシリーズ(ノルボルネン系重合体からなるフィルム、日本ゼオン(株)製)が挙げられる。
[第2の偏光板保護フィルム]
本形態に係る偏光板において、上述した偏光子の他方の面には、第2の偏光板保護フィルムが配置されている。そして、当該第2の偏光板保護フィルムは、第1の特徴として、透湿度(40℃、90%RH、膜厚40μmあたり)が600g/m2/24h以上である。また、第2の特徴として、第2の偏光板保護フィルムは、吸湿量(25℃、80%RH)が0.1g/m2/μm以上の保湿層を有するものである。かような構成とすることにより、上述した第1の偏光板保護フィルムのように透湿度の小さい保護フィルムが偏光子の一方の面に配置されてなる偏光板において、ヨウ素の分解に起因する赤味の発生が効果的に抑制されうるのである。
第2の偏光板保護フィルムの透湿度の値は、40℃、90%RH、膜厚40μmあたりの値として、600g/m2/24h以上であればよいが、好ましくは600〜1050g/m2/24hであり、より好ましくは850〜1050g/m2/24hである。また、膜厚を規格化しない透湿度の値についても特に制限はないが、好ましくは700〜1050g/m2/24hであり、より好ましくは700〜950g/m2/24hである。なお、透湿度の値としては、後述する実施例の欄に記載の測定方法により測定された値を採用するものとする。
第1の偏光板保護フィルムの構成材料についても特に制限はなく、上述した透湿度の要件を満たすものが適宜用いられうる。上述したような大きい透湿度を有する代表的な材料として、セルロースエステルが挙げられる。セルロースエステルの詳細については、後述する。
ここで、第2の特徴として上述した「保湿層」について説明する。図1は、本発明の一実施形態である第2の偏光板保護フィルムの基本構成を示す模式断面図である。図1に示すように、第2の偏光板保護フィルム(以下、単に「フィルム」とも称する)1は、セルロースエステルを含むエステル層11の両表面に保湿層12を有する。
本実施形態における保湿層12は、例えば、セルロースエステルフィルムの製膜後に、セルロースエステル膜の表面を親水化処理することにより形成される。すなわち、セルロースエステル膜の表層の親水化処理された領域が保湿層12となり、親水化処理されていない内部領域がエステル層11となる。したがって、本実施形態の保湿層12およびエステル層11は一体的な膜として形成されている。このような一体膜構造は、加工時や経時の保湿層およびエステル層の層間剥離を防止でき、フィルムの白化や失透を防止できるため好ましい。
図1に示すフィルム1では、エステル層11の両表面に保湿層12が設けられているが、保湿層12は、エステル層11の少なくとも片面に設けられていればよく、エステル層11の片面のみに設けられていてもよい。また、保湿層12は、図1に示すようにエステル層11の表面全体に設けられることが好ましいが、エステル層11の表面(少なくとも片面)の一部のみに設けられていてももちろんよい。
本実施形態では、保湿層12の厚さd(C)と第2の偏光板保護フィルム1の厚さd(T)とが特定の関係にあることが好ましい。具体的には、第2の偏光板保護フィルム1は下記式(1)を満たす。
式中、d(T)は第2の偏光板保護フィルムの全膜厚(μm)であり、d(C)は保湿層(片側)の厚さ(μm)である。
本発明において、第2の偏光板保護フィルムの全膜厚d(T)および保湿層の厚さd(C)は、後述する実施例の欄に記載の手法により測定される。
本発明では、図1のように保湿層12がセルロースエステルフィルム1の両面に設けられている場合には、2つの保湿層12の両方がそれぞれ上記式(1)を満たすことが好ましいが、2つの保湿層12の少なくとも一方が上記式(1)の関係を満たしていればよく、2つの保湿層12の一方のみが上記式(1)を満たす形態であってもよい。
d(C)/d(T)が0.030以上であれば、保湿特性が十分に確保され、本発明の作用効果をより確実に奏することができる。なお、d(C)/d(T)は、好ましくは0.050以上であり、より好ましくは0.100以上である。
一方、d(C)/d(T)が0.250以下であれば、第2の偏光板保護フィルムの経時的なしわ・剥がれの発生が防止されうる。d(C)/d(T)は、好ましくは0.230以下であり、より好ましくは0.200以下である。
d(C)およびd(T)の具体的な値について特に制限はないが、保湿層の層厚(d(C))は、片側の層厚として、好ましくは0.4〜25μmであり、より好ましくは1〜10μmである。また、フィルムの全膜厚d(T)は、好ましくは15〜90μmであり、より好ましくは20〜80μmである。なお、セルロースエステルフィルムの全膜厚d(T)は、製膜時の支持体への流涎条件やセルロースエステルドープの固形分比率によって制御されうる。一方、保湿層の膜厚d(C)は、親水化処理の条件によって制御されうる。
以下、本実施形態のフィルム1の構成について説明する。
(1)エステル層
エステル層11は、セルロースエステル、および必要に応じて、後述する可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子、染料、糖エステル化合物、アクリル系共重合体などの添加剤を含んで構成される。
本明細書において、セルロースエステルとは、セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位中の2位、3位および6位の水酸基(−OH)の水素原子の一部または全部がアシル基で置換されたセルロースアシレート樹脂をいう。
フィルム1に用いられうるセルロースエステルとしては、特に制限されない。例えば、セルロースの水酸基部分の水素原子が、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ラウロイル基、ステアロイル等の炭素数2〜20の脂肪族アシル基で置換されたセルロースエステル樹脂が挙げられる。これらのうち、炭素数2〜4のアシル基を有するものが好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基がより好ましい。なお、セルロースエステル中のアシル基は単一種であってもよいし、複数のアシル基の組み合わせであってもよい。
具体的な好ましいセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアシレート樹脂が挙げられ、より好ましくは、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースエステルプロピオネート等のセルロースアシレート樹脂を含む。これらのセルロースエステルは単一種を使用してもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明に係るセルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸など)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、触媒(硫酸など)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の三個のヒドロキシ基(水酸基)は、有機酸のアシル酸で置換されている。同時に二種類の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースエステル、例えばセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル置換度を有するセルロースエステル樹脂を合成する。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥などの工程を経て、セルロースエステル樹脂ができあがる。
具体的には、特開平10−45804号、特開2005−281645、特開2003−270442号などに記載の方法を参考にして合成することができる。
市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60S等が挙げられる。
エステル層11におけるセルロースエステルのアシル基の置換度は保湿性および工程での生産安定性の観点から2.0以上であることが好ましい。一方、アシル基の置換度はフィルムの経時耐久性の点から3.0以下が好ましい。
「アシル基の置換度」とは、1グルコース単位あたりのアシル基の平均数を示し、1グルコース単位の2位、3位および6位の水酸基の水素原子のいずれかがアシル基に置換されている割合を示す。すなわち、2位、3位および6位の水酸基の水素原子がすべてアシル基で置換されたとき置換度(最大の置換度)は3.0となる。アシル基の置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)は、フィルムの耐熱性や強度(引っ張りや引裂きに対する耐性)を向上させ、またセルロースエステルをアルカリケン化処理する場合のアルカリ液への溶解性を低下させる点から、75000以上であることが好ましく、より好ましくは80000以上であり、さらに好ましくは85000以上である。一方、分子量が小さいほど、経時でのフィルムの変形力を樹脂分子間で吸収し、しわ、剥がれを抑制しうる。かかる観点から、重量平均分子量(Mw)は300000以下であることが好ましく、より好ましくは200000以下であり、さらに好ましくは150000以下である。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、2.0〜3.5であることが好ましい。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記条件下で測定することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
(2)保湿層
保湿層12は高湿度環境や温度差の大きな環境において発生する水分を吸収して、または付着した水滴を膜状に広げて、偏光子への水分の侵入を防止する機能を有している。
本実施形態の保湿層12は、セルロースエステルフィルムの表面を親水化処理することにより形成され、エステル層11と一体的な膜として構成されている。したがって、保湿層12は、セルロースエステル中のアシルオキシ基(−O−アシル基)の一部が水酸基、カルボニル基、カルボン酸基などの酸素含有極性基で置換された親水性のセルロース誘導体および/またはセルロースエステル中のアシルオキシ基の全部が水酸基で置換されたセルロース、ならびに必要に応じて、後述する可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子、染料、糖エステル化合物、アクリル系共重合体などの添加剤を含んで構成される。
「親水化処理」とは、セルロースエステル中のアシルオキシ基を水酸基、カルボニル基、カルボン酸基などの酸素含有極性基へと置換する処理をいう。親水化処理により、保湿層には多数の親水性基が導入され、親水性および吸水性に優れた層となり、保湿性能が発現する。このような親水化処理により、セルロースエステル膜の表層の親水化処理された領域が保湿層12となる。一方、セルロースエステル膜の親水化処理されていない内部領域がエステル層11となる。
保湿層12におけるセルロースエステルのアシル基の平均置換度は十分な保湿性能を発現させる観点および工程での生産安定性の観点から、0.0〜1.9が好ましく、0.1〜1.5がより好ましい。
親水化処理の方法は特に制限されず、プラズマ処理やコロナ処理等によってセルロースエステルの表面を物理的に改質する方法やアルカリケン化処理等で化学的に表面を改質する方法が挙げられる。これらのうち、フィルムの内部(深さ方向)への親水化に優れ、十分な吸水性能を発揮しうる厚さの保湿層を簡便に得ることができる観点から、アルカリケン化処理が好ましい。すなわち、本発明の好ましい一実施形態において、保湿層は、セルロースエステルフィルムの製膜後に、製膜されたフィルムの表面をアルカリケン化処理することにより形成される。
コロナ放電処理とは、大気圧下、電極間に1kV以上の高電圧を印加し、放電することで行う処理のことである。コロナ処理によって、セルロースエステル樹脂表面に酸素含有極性基(水酸基、カルボニル基、カルボン酸基等)が発生し、表面が親水化される。
コロナ処理は、春日電機(株)や(株)トーヨー電機などで市販されている装置を用いて行うことができる。コロナ放電処理の強度は、電極間距離、単位面積当たりの出力、ジェネレーターの周波数に依存する。コロナ放電処理装置の一方の電極(A電極)は、市販のものを用いることができるが、材質はアルミニウム、ステンレスなどから選択が出来る。もう一方はプラスチックフィルムを抱かせるための電極(B電極)であり、コロナ放電処理が、安定かつ均一に実施されるように、前記A電極に対して一定の距離に設置されるロール電極である。これも通常市販されているものを用いることが出来、材質は、アルミニウム、ステンレス、及びそれらの金属で出来たロールに、セラミック、シリコン、EPTゴム、ハイパロンゴムなどがライニングされているロールが好ましく用いられる。
本発明のコロナ放電処理に用いる周波数は、20kHz以上100kHz以下の周波数であり、30kHz〜60kHzの周波数が好ましい。周波数が低下するとコロナ放電処理の均一性が劣化し、コロナ放電処理のムラが発生する。また、周波数が大きくなると、高出力のコロナ放電処理を行う場合には、特に問題ないが、低出力のコロナ放電処理を実施する場合には、安定した処理を行うことが難しくなり、結果として、処理ムラが発生する。
本発明のコロナ放電処理の出力は、1〜5W・分/m2であるが、2〜4W・分/m2の出力が好ましい。また、好ましいコロナ処理時間は5秒〜300秒である。
上記処理密度および処理時間を調節することにより、保湿層の厚みd(C)を制御することができる。具体的には、処理密度を大きく、処理時間を長くするほど、保湿層の厚みd(C)が大きくなる。
プラズマ処理は、プラズマ化したガスを基材表面に照射し、基材表面を改質する処理であり、グロー放電処理、フレームプラズマ処理等が挙げられる。これらは、例えば、特開平6−123062号、特開平11−293011号、特開平11−005857号等に記載された方法を用いることができる。プラズマ処理によって、セルロースエステル樹脂表面に酸素含有極性基(水産基、カルボニル基、カルボン酸基等)が発生し、表面が親水化される。
例えば、グロー放電処理は、相対する電極の間に延伸フィルムを置き、装置中にプラズマ励起性気体を導入し、電極間に高周波電圧を印加することにより、該気体をプラズマ励起させ、電極間においてグロー放電を行うものである。これにより、セルロースエステルの表面が処理されて、親水性が高められる。
プラズマ励起性気体としては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物や、アルゴン、ネオン等の不活性ガスに、カルボキシル基や水酸基、カルボニル基等の極性官能基を付与しうる反応性ガスを加えたものなどが使用される。
高周波電圧の周波数は、1kHz〜100kHzの範囲が好ましく、電圧の大きさは、電極に印加した時の電界強度が1〜100kV/cmとなる範囲になるようにすることが好ましい。処理時間は5秒〜300秒が好ましい。
上記高周波電圧の大きさおよび処理時間を調節することにより、保湿層の厚みd(C)を制御することができる。具体的には、高周波電圧を大きく、処理時間を長くするほど、保湿層の厚みd(C)が大きくなる。
アルカリケン化処理は、セルロースエステル樹脂表面のアシルオキシ基の一部または全部をアルカリで加水分解して水酸基に置換する処理をいう。アルカリケン化処理によって、セルロースエステル樹脂表面に水酸基が形成され、表面が親水化される。
アルカリケン化処理の方法は特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。具体的には、アルカリ水溶液に基材を浸漬する方法(浸漬法)、アルカリ水溶液を基材に塗布する方法(塗布法)、基材にアルカリ水溶液を吹き付ける方法があるが、生産性の観点から、浸漬法が好ましい。
アルカリ水溶液としては、アルカリ剤を水に溶解させたものが用いられる。アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物のような無機アルカリ剤;モノメチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ剤が好適に挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。これらのアルカリ剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ水溶液には、フィルム表面に対するアルカリ水溶液の濡れ性を向上させたり、塗膜の安定性を向上させる等の目的で、親水性溶媒を含有させてもよい。親水性溶媒としては、一価脂肪族アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等)、脂環式アルカノール類(例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、メトキシシクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、シクロヘキシルエタノール、シクロヘキシルプロパノール等)、フェニルアルカノール類(例えば、べンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェノキシエタノール、メトキシベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等)、複素環式アルカノール類(例えば、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等)、グリコール化合物のモノエーテル類(例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、メトキシメトキシエタノール、ブチルセルソルブ、ヘキシルセルソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)、および、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、トリオキサン、ジメチルセルソルブ、ジエチルセルソルブ、ジプロピルセルソルブ、メチルエチルセルソルブ、ジメチルカルビトール、ジメチルカルビトール、メチルエチルカルビトール等)が挙げられる。親水性溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アルカリ水溶液中のアルカリ剤の濃度は、ケン化反応を十分に進行させる観点で、5〜30質量%が好ましく、8〜20質量%がより好ましい。アルカリ水溶液の液温は40〜90℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
浸漬法を用いる場合、その浸漬時間はアルカリ水溶液の濃度や液温によっても異なるが、通常、2〜100分間であり、好ましくは15〜80分である。
保湿層の厚さd(C)はアルカリケン化処理の強度、すなわち、アルカリ水溶液中のアルカリ剤の濃度、ケン化処理の温度(アルカリ水溶液の液温)、処理時間(浸漬時間)を調節することにより制御することができる。具体的には、アルカリ剤の濃度が大きく、ケン化処理の温度が高く、処理時間を長くするほど、保湿層の厚みd(C)が大きくなる。
アルカリ水溶液に浸漬した後は、フィルム中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
なお、上記浸漬法を用いた場合には、セルロースエステル膜の両表面に保湿層が形成される。片面のみに保湿層を有する形態とする場合には、セルロースエステルの製膜後、保湿層を形成しない表面に、アクリル粘着剤等の粘着剤を介して、アルカリに溶解しない材料を貼着し、上記アルカリケン化処理を行った後に、粘着剤およびアルカリに溶解しない材料を除去すればよい。アルカリに溶解しない材料としては、例えば、PETフィルムやPO系フィルム(PE/PPフィルム)、EVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)等が挙げられる。あるいは、コロナ処理やプラズマ処理を用いて一方の表面のみに選択的に保湿層を形成することもできる。
(他の保湿層形成方法)
保湿層12は、上記のようにセルロースエステル膜を親水化処理する方法の他、親水性材料を塗布する方法によっても形成することができる。
親水性材料としては、親水性材料として従来から使用されている、水溶性高分子、界面活性剤、無機コロイドからなる群から選択される少なくとも1つを使用できる。
水溶性高分子としては、上述したセルロースおよび酸素含有極性基を有するセルロース誘導体に加えて、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、デンプン、変性デンプン、グアガムやカラギーナンなどの増粘多糖類、アルギン酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン、ポリビニルメチルエーテル、ポリオキサゾリン、ポリ(メタ)アクリル酸およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびその塩、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびその塩、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体およびその塩、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体およびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、ポリマレイン酸およびその塩、ポリアクリルアミド等のアミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、デキストリン、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、コラーゲン、親水性基またはユニット(水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、またはこれらの塩、アミド基、塩基性窒素原子含有基、ビニルエーテルユニット、オキシエチレンユニット)を有する熱可塑性樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂が挙げられる。これらの水溶性高分子はそれぞれ単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
なお、本発明において「水溶性」とは水中において1質量%以上(25℃)の溶解度をもつものをいう。
界面活性剤としては、親水性材料として従来公知のものを使用でき、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等の非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホカルボン酸塩、アルキル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等のカチオン性界面活性剤、アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルホベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられる。
なかでも良好な保湿性を発現する点から、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、および脂肪酸塩が好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、そのラウリン酸エステルが更に好ましく、特にジグリセリンラウリン酸エステルが好ましい。蔗糖脂肪酸エステルとしては、そのラウリン酸エステルがさらに好ましい。脂肪酸塩としては、混合脂肪酸塩が更に好ましく、特に炭素数が12〜18の脂肪酸を主成分とした混合脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩が好ましい。これらはそれぞれ単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
無機コロイドとしては、例えば、シリカ、アルミナ、サポナイトやヘクトライト等のスメクタイト、水不溶性リチウムシリケート、ケイ酸アルカリ金属塩、酸化スズ、酸化チタンなどの無機水性コロイド粒子を水または水性媒体中に分散させた水性ゾルが挙げられる。中でも、コロイド状シリカが好ましい。数平均粒子径としては、0.001〜10μmが好ましく、透明性を考慮した場合は、0.005〜1μmがより好ましく、0.01〜0.5μmが特に好ましい。これらはそれぞれ単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
親水性材料はそれぞれ単独でも2種以上を組み合わせてもよい。組み合わせて用いる場合、その好ましい組み合わせとしては、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を併用する形態が挙げられる。かかる形態において、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩はポリグリセリン脂肪酸エステル100質量部に対して、5〜30質量部の量で混合することが好ましい。
上述した親水性材料は、通常、塗布液や含浸液の形態で使用でき、親水性材料を溶媒に溶解または分散させた溶液として利用される。この溶液は有機溶媒を溶媒とする非水性溶液であってもよいが、水を溶媒とする水性溶液であることが好ましい。水性溶液とする場合、溶媒は水単独であってもよいし、水と親水性溶媒との混合溶媒であってもよい。親水性溶媒としては、アルカリ水溶液において例示した親水性溶媒を同様に好ましく使用できる。
親水性材料を塗布する方法は特に制限されず、例えば、グラビアコーターなどのロールコート法、バーコード法、ディップコート法、スプレー法、はけ塗り法などの慣用手段を使用できる。なお、必要に応じて、親水性材料は複数回にわたり塗布してもよい。
親水性材料をセルロースエステルフィルムの表面に塗布した後、通常、塗布層を乾燥することにより、保湿層を形成することができる。この際、塗膜の厚みを調整することで、保湿層の厚みd(C)を制御することができる。
(3)添加剤
フィルム1は、偏光板保護フィルムとしての性能をさらに向上させる目的で、エステル層および/または保湿層に、以下の(a)可塑剤、(b)紫外線吸収剤、(c)微粒子、(d)染料、(e)糖エステル化合物、(f)アクリル系共重合体等の添加剤を含有することが好ましい。なかでも、(a)可塑剤、(b)紫外線吸収剤、(c)微粒子のうち少なくとも1種以上を添加することが好ましく、特に好ましくは(a)可塑剤、(b)紫外線吸収剤、(c)微粒子のすべてを添加する。
(a)可塑剤
フィルム1は、機械強度や耐水特性を向上させる目的で、可塑剤を含有することが好ましい。
(ポリエステル化合物)
可塑剤としては、ポリエステル化合物(ポリエステル系可塑剤)を使用することが好ましい。
ポリエステル化合物は特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体とグリコールとの縮合反応により得ることができる末端がヒドロキシ基(水酸基)となる重合体(以下、「ポリエステルポリオール」という)、または、当該ポリエステルポリオールの末端のヒドロキシ基がモノカルボン酸で封止された重合体(以下、「末端封止ポリエステル」という)を用いることができる。ここで言うエステル形成性誘導体とは、ジカルボン酸のエステル化物、ジカルボン酸クロライド、ジカルボン酸の無水物のことである。
上記ポリエステルポリオールや末端封止ポリエステルを用いることにより、フィルムの経時での剥がれ・しわ発生が一層抑制されうる。かような効果が得られる理由は明確ではないが、上記化合物は、セルロースエステルフィルム製膜時に面方向に配向し、吸湿時の変形応力が厚み方向へ分散されるため、フィルムの経時での剥がれ、しわが抑えられたと推定している。
具体的には、ポリエステル化合物として、下記一般式(1)で表されるエステル系化合物を好ましく用いることができる。
(式中、Bはヒドロキシ基、ベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基であり、Gは炭素数2〜18のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基であり、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜16のアリールジカルボン酸残基であり、nは1以上の整数である。)
上記一般式(1)において、Bがヒドロキシ基である化合物がポリエステルポリオールに相当し、Bがベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基である化合物が末端封止ポリエステルに相当する。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物は、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られるものである。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の脂肪族モノカルボン酸成分としては、例えば、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸(酪酸)が挙げられ、これらはそれぞれ一種又は二種以上の混合物として使用することができる。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、脂肪族酸等があり、これらはそれぞれ一種又は二種以上の混合物として使用することができる。特に、安息香酸、またはパラトルイル酸を含むことが好ましい。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数2〜18のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール(1,2−プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール(1,3−プロピレングリコール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用される。なかでもエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル1,3−プロパンジオールが好ましく、更に好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールである。
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。より好ましくは炭素数2〜6のアルキレングリコールであり、さらに好ましくは炭素数2〜4のアルキレングリコールである。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数6〜12のアリールグリコールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、1,4-ベンゼンジメタノール等の環状グリコール類があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ一種又は二種以上の混合物として使用される。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数6〜16のアリールジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸等がある。上記アリールジカルボン酸は芳香族環に置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
Bがヒドロキシ基である場合、すなわち、ポリエステル化合物がポリエステルポリオールである場合には、一般式(1)において、Aは炭素数10〜16のアリールジカルボン酸残基であることが好ましい。例えばベンゼン環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造等の芳香族環式構造を有するジカルボン酸を使用することができ、具体的なアリールジカルボン酸成分としては、例えばオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸を挙げることができる。好ましくは、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸であり、更に好ましくは、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、特に好ましくは、2,6−ナフタレンジカルボン酸である。これらは単独で使用又は二種以上併用できる。
上記ポリエステルポリオールは、原料として使用するジカルボン酸の炭素数の平均が10〜16の範囲であることが重要である。かかるジカルボン酸の炭素数の平均が10以上であれば、セルロースエステルフィルムの寸法安定性に優れ、炭素数の平均が16以下であれば、セルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの透明性が著しく優れる。ジカルボン酸として、好ましくは炭素数の平均が10〜14であり、更に好ましくは炭素数の平均が10〜12である。
前記ポリエステルポリオールのジカルボン酸の炭素数の平均とは、単一のジカルボン酸を用いてポリエステルポリオールを重合する場合は該ジカルボン酸の炭素数を意味するが、二種以上のジカルボン酸を用いてポリエステルポリオールを重合する場合、それぞれのジカルボン酸の炭素数とそのジカルボン酸のモル分率の積の合計を意味する。
前記炭素数の平均が10〜16であれば、前記10〜16個の炭素原子を有するアリールジカルボン酸とそれ以外のジカルボン酸を併用することができる。
併用できるジカルボン酸としては、4〜9個の炭素原子を有するジカルボン酸が好ましく、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸やこれらのエステル化物、酸塩化物、酸無水物を挙げることができる。
以下に、ポリエステルポリオールの炭素数が10〜16であるジカルボン酸の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
(1)2,6−ナフタレンジカルボン酸
(2)2,3−ナフタレンジカルボン酸
(3)2,6−アントラセンジカルボン酸
(4)2,6−ナフタレンジカルボン酸:コハク酸(75:25〜99:1 モル比)
(5)2,6−ナフタレンジカルボン酸:テレフタル酸(50:50〜99:1 モル比)
(6)2,3−ナフタレンジカルボン酸:コハク酸(75:25〜99:1 モル比)
(7)2,3−ナフタレンジカルボン酸:テレフタル酸(50:50〜99:1 モル比)
(8)2,6−アントラセンジカルボン酸:コハク酸(50:50〜99:1 モル比)(9)2,6−アントラセンジカルボン酸:テレフタル酸(25:75〜99:1 モル比)
(10)2,6−ナフタレンジカルボン酸:アジピン酸(67:33〜99:1 モル比)
(11)2,3−ナフタレンジカルボン酸:アジピン酸(67:33〜99:1 モル比)
(12)2,6−アントラセンジカルボン酸:アジピン酸(40:60〜99:1 モル比)
本発明において用いることができるポリエステル化合物としては、上記のポリエステルポリオール以外に、化合物の水溶性や配向性の観点から、オクタノール−水分配係数(logP(B))は0以上7未満の化合物を用いることも好ましい。
ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体(一般式(1)のAに相当する成分)とグリコール(一般式(1)のGに相当する成分)を必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば180〜250℃の温度範囲内で、10〜25時間、周知慣用の方法でエステル化反応させることによって製造することができる。
エステル化反応を行う際に、トルエン、キシレン等の溶媒を用いても良いが、無溶媒若しくは原料として使用するグリコールを溶媒として用いる方法が好ましい。
前記エステル化触媒としては、例えばテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、p−トルエンスルホン酸、ジブチル錫オキサイド等を使用することができる。前記エステル化触媒は、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体の全量100質量部に対して0.01〜0.5質量部使用することが好ましい。
ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体とグリコールを反応させる際のモル比は、ポリエステルの末端基がヒドロキシ基(水酸基)となるモル比でなければならず、そのためジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対してグリコールは1.1〜10モルである。好ましくは、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対して、グリコールが1.5〜7モルであり、更に好ましくは、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対して、グリコールが2〜5モルである。
上記ポリエステルポリオールの末端基はヒドロキシ基(水酸基)であるが、ポリエステルポリオール中には、副生成物としてカルボキシ基末端の化合物も含まれうる。ただし、ポリエステルポリオール中におけるカルボキシ基末端は、湿度安定性を低下させるため、その含有量は低い方が好ましい。具体的には、酸価5.0mgKOH/g以下が好ましく、更に好ましくは1.0mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0.5mgKOH/g以下である。
ここでいう「酸価」とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070:1992に準拠して測定したものである。
前記ポリエステルポリオールは、ヒドロキシ(水酸基)価(OHV)が35mg/g〜220mg/gの範囲であることが好ましい。ここで言うヒドロキシ(水酸基)価とは、試料1g中に含まれるOH基をアセチル化したときに、ヒドロキシ基(水酸基)と結合した酢酸を中和するために要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。無水酢酸を用いて試料中のOH基をアセチル化し、使われなかった酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定し、初期の無水酢酸の滴定値との差より求める。
前記ポリエステルポリオールのヒドロキシ基(水酸基)含有量は、70%以上であることが好ましい。ヒドロキシ基(水酸基)含有量が少ない場合、ポリエステルポリオールとセルロースエステルとの相溶性が低下する。このため、ヒドロキシ基(水酸基)含有量は、70%以上が好ましく、更に好ましくは90%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
本発明において、ヒドロキシ基(水酸基)含有量が50%以下の化合物は、末端基の一方がヒドロキシ基(水酸基)以外の基で置換されているためポリエステルポリオールには含まれない。
前記ヒドロキシ基(水酸基)含有量は、下記の式(A)により求めることができる。
前記ポリエステルポリオールは、300〜3000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましく、350〜2000の数平均分子量を有することがより好ましい。
また、本発明に係るポリエステルポリオールの分子量の分散度は1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることが更に好ましい。分散度が上記範囲以内であれば、セルロースエステルとの相溶性に優れたポリエステルポリオールを得ることができる。
また、前記ポリエステルポリオールは、分子量が300〜1800の成分を50%以上含有することが好ましい。数平均分子量を前記範囲とすることにより、相溶性を大幅に向上させることができる。
数平均分子量、分散度および成分含有率を上記の好ましい範囲に制御する方法として、ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体1モルに対してグリコールを2〜5モル使用し、未反応のグリコールを減圧留去する方法が好ましい。減圧留去する温度は、100〜200℃が好ましく、更に好ましくは120〜180℃であり、特に好ましくは130〜170℃が好ましい。減圧留去する際の減圧度は、0.1〜500Torrが好ましく、さらに好ましくは0.5〜200Torrであり、最も好ましくは1〜100Torrである。
ポリエステル化合物(ポリエステルポリオール、末端封止ポリエステル)の数平均分子量(Mn)および分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
測定条件の一例は以下の通りであるが、これに限られることはなく、同等の測定方法を用いることも可能である。
溶媒: テトラヒドロフラン(THF)
カラム: TSKgel G2000HXL(東ソー(株)製を2本接続して使用する)
カラム温度:40℃
試料濃度: 0.1質量%
装置: HLC−8220(東ソー(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: PStQuick F(東ソー(株)製)による校正曲線を使用する。
Bがベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基である場合、すなわち、ポリエステル化合物が末端封止ポリエステルである場合には、一般式(1)において、好ましいAとしては、アジピン酸残基、フタル酸残基等が挙げられる。
また、一般式(1)におけるAは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基と炭素数6〜16のアリールジカルボン酸残基との両方を含むことが好ましく、より好ましくは、アジピン酸残基とフタル酸残基との両方を含む。
末端封止ポリエステルは、2つの末端基Bのうちの少なくとも一方がモノカルボン酸残基であればよい。すなわち、2つの末端基Bのうちの一方がヒドロキシ基であり、他方がモノカルボン酸残基であってもよい。ただし、2つの末端基Bの両方がモノカルボン酸残基であることが好ましい。
末端基Bとしては、上述したベンゼンモノカルボン酸残基、脂肪族モノカルボン酸残基を使用することができるが、好ましくはベンゼンモノカルボン酸残基である。すなわち、芳香族末端ポリエステルであることが好ましい。
上記末端封止ポリエステルは、グリコール(一般式(1)のGに相当する成分)と、ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体(一般式(1)のAに相当する成分)およびモノカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体(一般式(1)のBに相当する成分)とエステル化反応させることにより得ることができ、例えば、特開2011−52205号公報、特開2008−69225号公報、特開2008−88292号公報、特開2008−115221号公報等を参考にして合成することができる。
上述したエステル化合物は、その合成時点では分子量および分子構造に分布を有する混合物であるが、そのなかに本発明に好ましい成分、例えば、一般式(1)のAとしてフタル酸残基およびアジピン酸残基を有するポリエステル化合物を少なくとも1種類有していればよい。
末端封止ポリエステルは、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は15mgKOH/g以下のものである。
以下に、本発明に用いることのできる一般式(1)で表されるエステル系化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
フィルム1は、ポリエステル化合物を、フィルム全体(100質量%)に対して、0.1〜30質量%含むことが好ましく、特には、0.5〜10質量%含むことが好ましい。
(その他の可塑剤)
フィルム1は、上記ポリエステル化合物に代えてまたはこれに加えて、他の可塑剤を含有することができる。好ましくは、(a−1)多価アルコールエステル系可塑剤、(a−2)多価カルボン酸エステル系可塑剤、(a−3)グリコレート系可塑剤、(a−4)フタル酸エステル系可塑剤、(a−5)脂肪酸エステル系可塑剤、(a−6)リン酸エステル系可塑剤等から選択される。
(a−1)多価アルコールエステル系可塑剤は下記一般式(3)で表される多価アルコールのエステル化合物である。
(式中、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す)
好ましい多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に、安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
この他、トリメチロールプロパントリアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテートなども好ましく用いられる。特開2008−88292号に記載の一般式(I)で表されるエステル化合物(A)を使用することも好ましい。
(a−2)多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は2価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(4)で表される。
(式中、R2は(m+n)価の有機基であり、mは2以上の正の整数であり、nは0以上の整数であり、COOH基はカルボキシル基であり、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基である。)
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような2価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマール酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。
多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールを好ましく用いることができる。
炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができ、フェノールとしては、フェノール、パラクレゾール、ジメチルフェノール等を単独または2種以上を併用して使用することができる。
特開2008−88292号に記載の一般式(II)で表されるエステル化合物(B)を使用することも好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることがさらに好ましい。
多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070:1992に準拠して測定したものである。
(a−3)グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート等が挙げられる。
(a−4)フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
(a−5)脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
(a−6)リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
これらの可塑剤は、セルロースエステル100質量部に対して1〜30質量部の範囲で使用されることが好ましい。
(b)紫外線吸収剤
フィルム1は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、よりさらに好ましくは5%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、市販品として、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類があり、これらはいずれもチバ・ジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
中でも好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒とセルロースエステル中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
上記紫外線吸収剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースエステルフィルム全体(100質量%)に対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%がさらに好ましい。
(c)微粒子
フィルム1は、微粒子を含有することが滑り性、保管安定性の観点で好ましい。
微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
二酸化珪素については疎水化処理をされたものが滑り性とヘイズを両立する上で好ましい。4個のシラノール基のうち、2個以上が疎水性の置換基で置換わったものが好ましく、3個以上が置換わったものがより好ましい。疎水性の置換基はメチル基である事が好ましい。
二酸化珪素の一次粒径は20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。なお、微粒子の1次平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とした。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
ポリマー微粒子の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR812がフィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく、アエロジルR812が最も好ましく用いられる。本発明に係る第2の偏光板保護フィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、微粒子は0.01質量部〜5.0質量部が好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方が、凝集物が少なくなる。
(d)染料
フィルム1には、本発明の効果を損なわない範囲内で、色味調整のため染料を添加することもできる。例えば、フィルムの黄色味を抑えるために青色染料を添加してもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。
(e)糖エステル化合物
フィルム1は、加水分解防止を目的として、下記糖エステル化合物を含有してもよい。
糖エステル化合物としては、例えば、ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下有しその構造のOH基の一部がエステル化されたエステル化合物の混合物を好ましく用いることができる。
ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物のエステル化の割合としては、ピラノース構造又はフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。
本発明においては、上記エステル化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
本発明に用いられるエステル化合物の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。
ピラノース構造又はフラノース構造中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、酢酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸、ナフチル酸が好ましい。
オリゴ糖のエステル化合物を、上記「ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1〜12個を有する化合物」として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
また、前記エステル化合物は、下記一般式(A)で表されるピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下縮合した化合物である。ただし、R11〜R15、R21〜R25は、炭素数2〜22のアシル基又は水素原子を、m、nはそれぞれ0〜12の整数、m+nは1〜12の整数を表す。
R11〜R15、R21〜R25は、ベンゾイル基、水素原子であることが好ましい。ベンゾイル基は更に置換基R26を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、更にこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。オリゴ糖もエステル化合物と同様な方法で製造することができる。
以下に、本発明に係るエステル化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
フィルム1は、糖エステル化合物をフィルム全体(100質量%)の0.5〜30質量%含むことが好ましく、特には、2〜15質量%含むことが好ましい。
(f)アクリル系共重合体
フィルム1は、経時耐候性の観点から、重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリルポリマーを含有することができる。なかでも分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーX、より好ましくは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーXと、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有することが好ましい。
アクリル系共重合体は、セルロースエステル100質量部に対して1〜30質量部の範囲で添加することができる。
図1に示す形態の第2の偏光板保護フィルム(セルロースエステルフィルム)1の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用して作製することができる。
例えば、フィルム1は(a)セルロースエステルを溶液流延法または溶融流延法により製膜する工程(製膜工程)と、(b)保湿層を形成する工程(保湿層形成工程)と、により製造されうる。
(a)製膜工程
まず、セルロースエステルを溶液流延法または溶融流延法により製膜する。以下、溶液流延法を用いた場合を例に挙げて製膜方法を説明するが、溶融流延法も従来公知の方法を参照して実施することができる。
溶液流延法により製膜する場合、上記製膜工程は、セルロースエステルおよび上述した添加剤を溶媒に溶解させてドープを調製する工程(ドープ調製工程)、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程(ドープ流延工程)、流延したドープをウェブとして乾燥する工程(乾燥工程1)、金属支持体から剥離する工程(剥離工程)、延伸する工程(延伸工程)、さらに乾燥する工程(乾燥工程2)、仕上がったフィルムを巻取る工程(フィルム巻き取り工程)を含むことが好ましい。
(i)ドープ調製工程
まず、セルロースエステルおよび上述した添加剤を溶媒に溶解させてドープを調製する。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、大きい方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が大きすぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。セルロースエステルを単独で溶解する溶媒(良溶媒)に、単独ではセルロースエステルを膨潤するかまたは溶解しない溶媒(貧溶媒)を混合して使用することが生産効率の点で好ましい。良溶媒としては好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられ、貧溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
また、ドープ中に水を0.01〜2質量%含有させる形態も好ましい。
セルロースエステルの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられうる。なお、回収溶媒中に、添加剤(例えば可塑剤、紫外線吸収剤等)が微量含有される場合もあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
溶媒の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
続いて、上記で得たドープを濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過することが好ましい。これにより、ドープ内の不純物を除去、低減することができる。
濾過材としては、絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
濾材について特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶媒の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
(ii)ドープ流延工程
続いて、ドープを金属支持体上に流延(キャスト)する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。
(iii)乾燥工程1
続いて、流延したドープをウェブとして乾燥させる。
流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶媒の沸点未満の温度で、好ましい支持
体温度は0〜40℃であり、5〜30℃がさらに好ましい。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化したりする場合がある。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
(iv)剥離工程
次いで、ウェブを金属支持体から剥離する。
製膜後のフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
式中、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量であり、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
(v)延伸工程
続いて、金属支持体より剥離した直後のウェブを少なくとも一方向に延伸処理することが好ましい。延伸処理することでフィルム内の分子の配向を制御することができる。延伸フィルムは、二軸延伸フィルムであってもよいが、一軸延伸フィルムであることが好ましい。ただし、延伸工程は必須ではなく、セルロースエステルフィルムは未延伸フィルムであってもよい。
好ましくは、幅手方向(TD方向)に1.05〜1.50倍の延伸条件、特に、1.08〜1.40倍とすることが望ましい。かような延伸処理によって樹脂分子が配向することにより、配向方向への経時での伸縮を抑制するとともに、フィルムに腰が発生する。したがって、薄膜フィルムにおいても、高い保湿特性を維持したまま、経時的なしわの発生を抑制しつつ、優れた作業性を付与することが可能となる。
これに加えてまたはこれに代えて、長手方向(MD方向)に1.01〜1.20倍の延伸倍率で延伸させてもよい。幅手方向(TD方向)および長手方向(MD方向)の延伸は、逐次または同時に行うことができる。MD方向およびTD方向の延伸を逐次行う場合には、MD方向の前にTD方向の延伸を行ってもよいし、TD方向の延伸の前にMD方向の延伸を行ってもよい。
延伸時のフィルム中の残留溶媒量は3〜50%%が好ましく、さらに好ましくは5〜45%で延伸するのが生産効率とフィルムの透明性を両立する点で好ましい。
ウェブを延伸する方法は特に制限されない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、MD/TD方向に同時に広げてMD/TD両方向に延伸する方法などが挙げられる。
製膜工程のこれらの幅保持または幅手方向の延伸はテンター装置によって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
テンター内などの製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120N/m〜200N/mが好ましく、140N/m〜200N/mがさらに好ましい。140N/m〜160N/mが最も好ましい。
延伸温度は、120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは150℃〜200℃であり、さらに好ましくは150℃を超えて190℃以下で延伸するのが好ましい。
フィルムは延伸後、熱固定されることが好ましいが、熱固定はその最終TD方向延伸温度より高温で、Tg−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定することが好ましい。この際、2つ以上に分割された領域で温度差が1〜100℃となる範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
なお、フィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御され、JIS K7121:1987に記載の方法などによって求めることができる。
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、TD方向及び/またはMD方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。
また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。
尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとした時、(T1−Tg)/tで求めた値である。
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するセルロースエステルや可塑剤等の添加剤種により異なるので、得られた延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
(vi)乾燥工程2
上記ウェブは延伸後さらに乾燥されて、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
当該乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は90℃〜200℃が好ましく、より好ましくは110℃〜190℃である。乾燥温度は段階的に高くしていくことが好ましい。
好ましい乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、5分〜60分が好ましく、10分〜30分がより好ましい。
(vii)フィルム巻き取り工程
最後に、得られたウェブ(仕上がったフィルム)を巻取ることにより、セルロースエステルフィルムが得られる。
(b)保湿層形成工程
次に、上記で得たセルロースエステルフィルムの一方または両方の表面に保湿層を形成する。
上述した親水化処理により保湿層を形成する場合には、上記で得たセルロースエステルフィルムの表面を親水化処理することにより、図1に示すような第2の偏光板保護フィルム(セルロースエステルフィルム)が得られる。本実施形態では、セルロースエステル膜の表層の親水化処理された領域が保湿層12となり、親水化処理されていない内部領域がエステル層11となる。
親水性材料を塗布する方法によって保湿層を形成する場合には、上記で得たエステル層11としてのセルロースエステルフィルム上に、親水性材料を含む保湿層12が形成される。
なお、偏光板の製造方法について特に制限はなく、従来公知の手法が適宜参照されうる。偏光子と第1および第2の偏光板保護フィルムとの貼合は、通常、接着剤を用いて行われる。この際に用いられうる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などが挙げられるが、なかでもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
≪液晶表示装置≫
上記形態により提供される偏光板は、液晶表示装置に用いることができる。すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、液晶セルと、上記の偏光板とを有する液晶表示装置が提供される。
上述したように、偏光子のPVA中に含まれる水分によるヨウ素の分解に起因する赤味の発生の問題は、液晶セルの背面側(バックライト側)に配置される偏光板において、顕著に発現しやすい。したがって、本発明の好ましい実施形態において、上述した液晶表示装置では、本発明により提供される偏光板が液晶セルの視認側とは反対の側に配置される。また、この際、本発明により提供される偏光板を構成する第1の偏光板保護フィルムが液晶セルに隣接するように、偏光板が配置されることがより好ましい。かような構成とすることで、本発明の作用効果がより顕著に発現しうるのである。
偏光板と液晶セルの表面との貼合は、従来公知の手法により行われうる。場合によっては、接着層を介して貼合されてもよい。
液晶表示装置のモード(駆動方式)についても特に制限はなく、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種モード(駆動方式)の液晶表示装置が用いられうる。好ましくは、VA(MVA,PVA)型液晶表示装置である。これらの液晶表示装置に本発明により提供される偏光板を用いることで、特に30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、環境変動が少なく、赤味の低減など視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。また、本発明に係る液晶表示装置は、特に環境の影響を受けやすいデジタルサイネージなどの用途に用いられることもまた、好ましい一実施形態である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪第2の偏光板保護フィルム1の作製≫
〈セルロースエステルフィルム1の作製〉
(ドープ液1の調製)
セルロースエステル(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1、アセチル基置換度2.92) 100質量部
トリフェニルフォスフェート(TPP) 9.5質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2.2質量部
メチレンクロライド 440質量部
エタノール 40質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液1を調製した。製膜ライン中で日本精線(株)製のファインメットNFでドープ液1を濾過した。なお、ドープ液1の一部は下記のインライン添加液の作製にも使用した。
(二酸化珪素分散液)
アエロジル200V(日本アエロジル(株)製、一次粒子の平均径12nm、見掛け比重100g/リットル) 2質量部
エタノール 18質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は100ppmであった。二酸化珪素分散液に18質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。
(インライン添加液1の調製)
メチレンクロライド 100質量部
ドープ液1 34質量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 5質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 5質量部
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 3質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。
これに二酸化珪素分散希釈液20質量部を撹拌しながら加えて、さらに60分間撹拌した後、アドバンテック東洋(株)のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1Nで濾過し、インライン添加液1を調製した。インライン添加液1のライン中で、日本精線(株)製のファインメットNFでインライン添加液1を濾過した。濾過したドープ液1 100質量部に対し、濾過したインライン添加液1を2.5質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、1800mm幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。
ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1650mm幅にスリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に1.1倍に延伸しながら、130℃の乾燥温度で、乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶媒量は20%であった。その後、120℃、110℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1400mm幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、平均高さ10μmのナーリング加工を施し、巻き取り初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、セルロースエステルフィルム1を得た。得られたセルロースエステルフィルム1の残留溶媒量は0.2%であり、平均膜厚は80μm、巻数は4000mであった。
〈保湿層の作製〉
上記で作製したセルロースエステルフィルム1の片面に、下記処方の保湿層塗布液aを乾燥後の膜厚が2.0μmになるように塗布、乾燥し、次いで超高圧水銀灯により紫外線を照射して保湿層を形成した。さらに、保湿層上に、下記の処方の表面保護層塗布液bを18g/m2塗布、乾燥して表面保護層を形成して、第2の偏光板保護フィルム1を作製した。
(保湿層塗布液a)
エチレンオキサイドを13分子付加してなるエチレンオキサイド変性ジアクリレート(ニューフロンティアPE−600:第一工業製薬(株)製) 20質量部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:日本チバガイギー(株)製) 1質量部
エタノール 4質量部
(表面保護層塗布液b)
テトラエトキシシラン(オルトケイ酸テトラエチル:和光純薬工業(株)製)
20質量部
エチレンオキサイドを10分子付加してなるアセチレングリコール(サーフィノール465:エアープロダクツ社製) 3質量部
エタノール 20質量部
0.01N塩酸 5質量部
以上を混合して室温で10時間攪拌反応させた後、塗布液とした。
≪第2の偏光板保護フィルム2の作製≫
表面保護層塗布液bの塗布量を80g/m2としたこと以外は、上述した第2の偏光板フィルム1の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム2を作製した。
≪第2の偏光板保護フィルム3の作製≫
まず、日産化学工業(株)製、IPA−ST(L)、平均粒径44nm、コロイダルシリカ、固形分30%液を、ロータリーエバポレーターを用いてイソプロピルアルコール(IPA)からメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶媒置換を行い、シリカ粒子30質量%のMIBK分散液を得た。このMIBK分散液100質量部に3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを5質量部添加し、50℃で1時間加熱処理することにより、表面処理された平均粒径44nmの反応性シリカ微粒子の固形分30質量%MIBK分散液を得た。
次いで、下記処方の硬化性樹脂組成物を調製した。
(硬化性樹脂組成物)
反応性シリカ微粒子 133質量部(固形分:40質量部)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 60質量部
イルガキュア184 4質量部
MIBK 57質量部
続いて、上記で作製したセルロースエステルフィルム1の片面に、上述した硬化性樹脂組成物を塗布し、温度70℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶媒を蒸発させ、紫外線を積算光量が200mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚2.0μm(乾燥時)のハードコート層を形成して、第2の偏光板保護フィルム3を作製した。
≪第2の偏光板保護フィルム4の作製≫
上記で作製したセルロースエステルフィルム1の両面に、下記方法により保湿層を形成
した。
(アルカリケン化処理A)
70℃に加温された16質量%水酸化ナトリウムケン化溶液に60分間浸漬し、次いで90秒間水洗し、80℃の温風にて乾燥した。
これにより、フィルムの両表面の表層部分に保湿層が形成された、第2の偏光板保護フィルム4を作製した。
≪第2の偏光板保護フィルム5≫
上記で作製したセルロースエステルフィルム1をそのまま、第2の偏光板保護フィルム5として用いた。
≪第2の偏光板保護フィルム6の作製≫
以下の手法により、保湿剤を調製した。
まず、容量3,000mLの真空反応器に、ジメチルフマレート144g(1モル)およびオクチルアルコール130g(1モル)を仕込み、120℃に加熱した。生成するメタノールを留去しながら、徐々に減圧にするとともに温度を上げ、3時間で10−3Pa、220℃とし、フマル酸モノオクチルエステルを得た。反応器を室温まで冷却し、常圧に戻して、エリスリトールのエチレンオキシド2モル付加物210g(1モル)を加え、再び減圧と加熱を始め、生成する水を留去しながら8時間で10−4Pa、220℃とし、目的とするやや粘稠な淡黄色の液状物(保湿剤)を得た。
続いて、セルロースエステル樹脂100質量部に対して、上記で調製した保湿剤を5.5質量部添加したこと以外は、上述したセルロースエステルフィルム1の作製と同様の手法によりセルロースエステルフィルムを作製し、第2の偏光板保護フィルム6とした。この際、保湿剤は両表面付近に分布し、保湿層を形成した。
≪第2の偏光板保護フィルム7の作製≫
保湿層の乾燥後の膜厚が3.0μmになるように調整したこと以外は、上述した第2の偏光板保護フィルム1の作製と同様の手法により、第2の偏光板保護フィルム7を作製した。
≪第2の偏光板保護フィルム8の作製≫
浸漬時間を120分間にしたこと以外は、上述した第2の偏光板保護フィルム4の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム8を作製した。
≪第2の偏光板保護フィルム9の作製≫
浸漬時間を10時間にしたこと以外は、上述した第2の偏光板保護フィルム4の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム9を作製した。
≪第2の偏光板保護フィルム10の作製≫
〈セルロースエステルフィルム2の作製〉
(二酸化珪素分散液)
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製、一次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル) 12質量部
エタノール 88質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。
(インライン添加液2の調製)
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 11質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 5質量部
メチレンクロライド 100質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。
これに二酸化珪素分散希釈液を36質量部、撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8)6質量部を撹拌しながら加えて、さらに60分間撹拌した後、アドバンテック東洋(株)のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1Nで濾過し、インライン添加液2を調製した。
(ドープ液2の調製)
セルロースエステル(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1、アセチル基置換度2.92) 100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート(PX861) 5.0質量部
エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG) 5.5質量部
メチレンクロライド 440質量部
エタノール 40質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液2を調製した。
製膜ライン中で日本精線(株)製のファインメットNFでドープ液2を濾過した。インライン添加液2のライン中で、日本精線(株)製のファインメットNFでインライン添加液2を濾過した。
濾過したドープ液2 100質量部に対し、濾過したインライン添加液2を2質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、1800mm幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が120%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1650mm幅にスリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で、乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶媒量は30%であった。
その後、110℃、120℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1400mm幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、平均高さ10μmのナーリング加工を施し、巻き取り初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、セルロースエステルフィルム2を得た。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される剥離直後のMD方向(フィルムの搬送方向と同一方向)の延伸倍率は1.07倍であった。セルロースエステルフィルム2の残留溶媒量は0.2%であり、平均膜厚は80μm、巻数は4000mであった。
上記で作製したセルロースエステルフィルム2を用い、偏光板保護フィルム8と同様の手法により保湿層を形成して、第2の偏光板保護フィルム10を作製した。
≪第2の偏光板保護フィルム11の作製≫
〈セルロースエステルフィルム3の作製〉
製膜ライン中で日本精線(株)製のファインメットNFでドープ液2を濾過した。インライン添加液ライン中で、日本精線(株)製のファインメットNFでインライン添加液2を濾過した。
濾過したドープ液2 100質量部に対し、濾過したインライン添加液2を3質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いで、ベルト流延装置を用い、温度32℃、1800mm幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1650mm幅にスリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に1.05倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で、乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶媒量は20%であった。
その後、120℃、110℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1400mm幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、平均高さ10μmのナーリング加工を施し、巻き取り初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、セルロースエステルフィルム3を得た。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される剥離直後のMD方向(フィルムの搬送方向と同一方向)の延伸倍率は1.07倍であった。セルロースエステルフィルム3の残留溶媒量は0.2%であり、平均膜厚は40μm、巻数は4000mであった。
上記で作製したセルロースエステルフィルム3を用い、偏光板保護フィルム8と同様の手法により保湿層を形成して、第2の偏光板保護フィルム11を作製した。
≪第2の偏光板保護フィルム12の作製≫
〈セルロースエステルフィルム4の作製〉
(二酸化珪素分散液)
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製、一次粒子の平均径7nm) 10質量部
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液100質量部に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液を濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
(ドープ液3の調製)
セルロースエステル(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基置換度2.88、Mn=140000) 90質量部
エステル化合物1 10質量部
チヌビン928(チバ・ジャパン(株)製) 2.5質量部
二酸化珪素分散希釈液 4質量部
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液3を調製した。
次に、ベルト流延装置を用い、温度35℃、1800mm幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1700mm幅にスリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に1.3倍に延伸しながら、160℃の乾燥温度で、乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶媒量は20%であった。
その後、120℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、2200mm幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、平均高さ10μmのナーリング加工を施し、巻き取り初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、セルロースエステルフィルム4を得た。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される剥離直後のMD方向(フィルムの搬送方向と同一方向)の延伸倍率は1.01倍であった。セルロースエステルフィルム4の残留溶媒量は0.2%であり、平均膜厚は40μm、巻数は4000mであった。
上記で作製したセルロースエステルフィルム4を用い、偏光板保護フィルム8と同様の手法により保湿層を形成して、第2の偏光板保護フィルム12を作製した。
≪第2の偏光板保護フィルム13の作製≫
富士フイルム株式会社製のトリアセチルセルロースフィルム(商品名「TD40UL」)を用い、偏光板保護フィルム8と同様の手法により保湿層を形成して、第2の偏光板保護フィルム13を作製した。なお、上記トリアセチルセルロースフィルムは、可塑剤として下記の構造を有する重縮合体1を含有するものである。
≪物性の評価≫
上記で作製した第2の偏光板保護フィルムについて、以下の物性・性能を評価した。結果を下記の表1に示す。
(透湿度)
透湿度は、JIS Z 0208記載の塩化カルシウム−カップ法に基づき、測定対象のフィルムを温度40℃、湿度90%RHの条件下で24時間放置して測定した。
(吸湿度)
サンプルを10cm四方に裁断し、120℃にて24時間放置して内部の溶媒および水分を揮発させた後、23℃80%RHの状態に置き、重量の変化を測定した。10分間隔で重量を測定し、直前の値と同じかまたは減少が見られた点を0分として60分後の重量を単位面積で割った値をトータルの吸湿量として算出した。
そして、未処理品の結果から未処理部(非保湿層)の単位膜厚あたりの吸湿量を求め、その後、保湿層を設けたフィルムの吸湿量と保湿層の膜厚を求め、トータルから未処理分の吸湿量を引いた値を保湿層の吸湿量として算出した。
(保湿層の膜厚)
第2の偏光板保護フィルム1〜3、7の保湿層の膜厚は、FE3000(大塚電子株式会社製)を用いて測定した。
また、第2の偏光板保護フィルム4、6、8〜11の保湿層の膜厚は、フィルムサンプルをトリクロロメタン溶媒に24時間浸漬し、溶け残ったフィルムを溶媒の外へ取り出し、これを、80℃の温風にて乾燥後、23℃55%雰囲気下にて4時間以上放置した後、膜厚を膜厚計(Code.No.547−401、 Mitutoyo株式会社製)を用いて測定した。なお、これらのフィルムは、フィルムの両面に保湿層が設けられているため、上記トリクロロメタン溶媒への浸漬処理後には、2つの保湿層に対応する2枚のフィルムが得られた。2枚のフィルムはほぼ同一の厚さを有しており、その一方のフィルムの厚さを採用した。
(フィルム、ハードコート層の膜厚)
フィルムの膜厚、ハードコート層の膜厚は、膜厚計(Code.No.547−401、 Mitutoyo(株)製)を用いて測定した。
≪偏光板の作製≫
上記で作製した第2の偏光板保護フィルム1〜13を用いて、それぞれ対応する偏光板1〜13を作製した。
〈偏光子の作製〉
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に搬送方向に延伸して偏光子を作製した。
〈偏光板保護フィルムの貼合〉
上記で作製した偏光子の一方の面に、上記で作製した第2の偏光板保護フィルムのいずれかを、ポリビニルアルコール(商品名「ポバールPVA203」、株式会社クラレ製)5質量%水溶液を接着剤として、偏光子の透過軸と偏光板保護フィルムの面内遅相軸とが平行になるように貼り合わせ、乾燥した。なお、偏光板保護フィルム1〜3、7は、塗布形成層と反対側の面が偏光子側にくるようにして貼り合わせた。
また、偏光子の他方の面には、第1の偏光板保護フィルムとして、ノルボルネン系重合体からなるフィルム(ZEONOR、日本ゼオン(株)製、膜厚50μm)の片面を濡れ指数が56mN/mとなるようにコロナ放電処理し、ポリビニルアルコール5質量%水溶液を接着剤として貼り合わせて、偏光板を作製した。
≪偏光板としての赤味変色の評価≫
上記で作製した偏光板を、20℃、95%RHの環境下に60時間放置した後、シャーカステン上に置いて赤味変色の有無を目視で観察し、下記の基準に従って評価した。結果を下記の表1に示す。
◎:10人中0人が赤味があると評価した
○:10人中1〜3人が赤味があると評価した
△:10人中4〜6人が赤味があると評価した
×:10人中7人以上が赤味があると評価した
≪液晶表示装置の作製≫
上記で作製した偏光板1〜13のそれぞれについて、SONY社製BRAVIA KDL-46HX800を用いて、以下のように液晶表示装置1〜13を作製した。
具体的には、SONY社製BRAVIA KDL-46HX800の液晶パネルの背面側偏光板を剥離した。次いで、予め当該液晶パネルのサイズに裁断した偏光板を視認側偏光板とクロスニコル状態になり、かつ、液晶セルとは反対側に第2の偏光板保護フィルムがくるように液晶パネルの背面側に貼りつけ、液晶表示装置を作製した。
≪液晶表示装置としての表示ムラの評価≫
上記で作製した液晶表示装置の液晶パネルを点灯させて、23℃、23%RHの環境下に24時間放置した後、23℃、80%RHの環境下に24時間放置し、暗室中で黒表示させた際の表示ムラの有無を目視で観察し、下記の基準に従って評価した。結果を下記の表1に示す。
◎:10人中0人がムラがあると評価した
○○:10人中1〜2人がムラがあると評価した
○:10人中3〜4人がムラがあると評価した
△:10人中5〜7人がムラがあると評価した
×:10人中8人以上がムラがあると評価した
表1に示す結果から、透湿度および吸湿量がともに所定値以上の偏光板保護フィルム(第2の偏光板保護フィルム)を備える本発明の偏光板によれば、一方の偏光板保護フィルム(第1の偏光板保護フィルム)として透湿度の小さいものを用いた場合であっても、ヨウ素の分解に起因する赤味の発生が抑制されることがわかる。
また、第2の偏光板保護フィルムにおける保湿層の層厚(d(C))が、当該フィルムの全膜厚(d(T))との間で0.030≦d(C)/d(T)≦0.250の関係を満たすことで、偏光板の赤味変色の発生がより効果的に抑制されることがわかる(フィルム8〜13)。
さらに、TPP以外のエステル化合物を可塑剤として含有する場合には、赤味変色がほとんど発生しない偏光板が提供されることがわかる(フィルム10〜13)。特に、エステル化合物1や重縮合体1を可塑剤として含有すると、赤味変色が抑えられるだけでなく、液晶表示装置とした際の表示ムラも発生しない偏光板が提供されうる(フィルム12〜13)。