JP5667493B2 - セルロースアシレートフィルムの製造方法、セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

セルロースアシレートフィルムの製造方法、セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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本発明は、セルロースアシレートフィルムの製造方法と、その製造方法によって得られるセルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置に関する。より詳しくは、湿熱による寸法変化の小さい、低置換度のセルロースアシレートを用いた光学フィルム用のセルロースアシレートフィルムの製造方法、セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置に関する。
液晶表示装置の視野角や色味変化改良のために、特定のレターデーション値を有する位相差フィルムおよびその組み合わせが用いられている。また、近年用いられているVA方式の液晶表示装置では、薄型化の要請から位相差フィルムについても薄膜化が求められてきており、高いフィルム膜厚方向のレターデーション値の位相差フィルムを、膜厚を上げることなく提供することが要求されている。
位相差フィルム用の素材としてセルロースアシレートは位相差フィルムに適した材料として好ましく用いられるが、これをフィルム化したセルロースアシレートフィルムを高温高湿下で経時させると、吸湿による寸法変化が起きる場合がある。従来、これを抑制するための原材料の処方(例えば、特許文献1には特定の繊維形状のセルロースナノファイバーを用いる方法が記載されている)や製造条件(例えば、特許文献2では所望の光学特性と寸法変化率を得るために、延伸後の緩和工程の時間、温度を変更する方法が記載されている)が検討されてきた。
しかし、これらの方法では液晶表示装置の薄型化傾向に伴って要求されている、膜厚当たりのフィルム膜厚方向のレターデーション値発現性の観点で不十分であった。
また、近年では液晶表示装置の低価格化が進むことに伴う位相差フィルムの製造コスト低減の要請から、高機能なセルロースアシレートフィルムを安価に製造することも求められている。しかしながら、特許文献2による方法では延伸・緩和を設備によって製造可能な態様が固定され、多品種を製造する場合においては設備の変更や改造もしくは複数台の保有が必要となり、稼働率など生産性が低くなってしまう。そのため、特許文献2に記載の製造方法とは異なる観点から膜厚当たりのフィルム膜厚方向のレターデーション値発現性が高いセルロースアシレートフィルムを安価に製造する方法が求められていた。
特許文献1および2とは異なる方法で膜厚当たりのフィルム膜厚方向のレターデーション値発現性を高く発現させる方法として、セルロースアシレートのアシル置換度を下げて、固有複屈折を高める方法が知られている(例えば、特許文献3)。
しかしながら、セルロースアシレートのアシル置換度を低減すると、アシル置換度が高いセルロースアシレートを用いた場合よりも製膜時の延伸による残留応力が大きくなり、得られるセルロースアシレートフィルムは寸法安定性に問題が生じることが知られていた。例えば、特許文献2の段落[0004]には「フィルムに水酸基が多く残留していると、製造時の延伸工程における延伸方向やそれに直交する方向の応力が、水酸基同士の強い化学的相互作用により、強く働く。このため、従来の光学フィルムの製造方法では、残留応力が原因となって、製造後にフィルムの寸法が大きく変化してしまう。」とあり、水酸基が多く残留している低いアシル置換度のセルロースアシレートでは製造時及び高温高湿環境下における寸法安定性を得ることは困難と考えられていた。
特開2008−209595号公報 特開2007−098690号公報 特表2010−529216号公報
そこで、実際に本発明者らが特許文献3に記載の低アシル置換度のセルロースアシレートフィルムを、従来の比較的アシル置換度の高いセルロースアシレートフィルムの製造方法にならって製造してみたところ、湿熱による寸法変化が大きいフィルムとなってしまうことが分かった。
すなわち、膜厚当たりのフィルム膜厚方向のレターデーション値の発現性と、湿熱による寸法変化を同時に改善したセルロースアシレートフィルムは従来知られておらず、またそのようなセルロースアシレートフィルムを生産性よく安価に製造する方法も知られていないのが実情であった。
本発明は上記の近年求められている要求を満たす位相差フィルムに好適に用いられるセルロースアシレートフィルムを提供することを目的とするものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、膜厚当たりのフィルム膜厚方向のレターデーション値の発現性が高く、湿熱の影響に対する寸法安定性が良好なセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、低アシル置換度のセルロースアシレートを用いた場合において、製膜時の残留応力を解消することができる特定の製造条件によって、膜厚当たりのフィルム膜厚方向のレターデーション値の発現性が大きいセルロースアシレーとフィルムの湿熱の影響による寸法安定性が良化することを見出すに至った。すなわち、下記セルロースアシレートフィルムが上記課題を解決できることを見出し、以下に記載する本発明を完成するに至った。
[1] 下記式(A)を満たすセルロースアシレートを含むドープを支持体上に流延してフィルムを形成する工程と、前記フィルムを前記支持体から剥離する工程と、剥離した前記フィルムを延伸する工程を含み、前記フィルムの前記支持体からの剥離時の残留溶媒量を70質量%以上110質量%以下に制御し、前記延伸工程を下記式(1)および(2)を満たすように制御することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
式(1) −0.4S+132℃≦T≦−0.4S+172℃
式(2) 30質量%≦S≦80質量%
(式(1)および(2)中、Sは延伸開始時の残留溶媒量(単位:質量%)を表し、Tは延伸雰囲気温度(単位:℃)を表す。)
式(A) Z>0.8
(式(A)中、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
[2] 前記セルロースアシレートが下記式(3)〜(6)を満たすことを特徴とする[1]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
式(3) 1.0≦X+Y≦2.0
式(4) 0≦X≦2.0
式(5) 0≦Y≦2.0
式(6) 2.9≦X+Y+Z≦3.0
(式(3)〜(6)中、Xは前記セルロースアシレートのアセチル基の置換度を表し、Yは前記セルロースアシレートのプロピオニル基またはブチリル基の置換度を表し、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
[3] 前記セルロースアシレートが下記式(7)および(8)を満たすことを特徴とする[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
式(7) 0.1≦X≦2.0
式(8) 0.1≦Y≦2.0
(式(7)および(8)中、Xは前記セルロースアシレートのアセチル基の置換度を表し、Yは前記セルロースアシレートのプロピオニル基またはブチリル基の置換度を表す。)
[4] 前記セルロースアシレートが下記式(9)〜(11)を満たすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
式(9) 1.0≦X+Y’≦2.0
式(10) 2.9≦X+Y’+Z≦3.0
式(11) 0.1≦Y’≦2.0
(式(9)〜(11)中、Xは前記セルロースアシレートのアセチル基の置換度を表し、Y’は前記セルロースアシレートのプロピオニル基の置換度を表し、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
[5] 前記ドープが、該ドープ中のセルロースアシレートに対して0.1質量%〜10質量%の下記一般式(15)で表される有機酸を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
一般式(15)
X−L−(R1n
(一般式(15)中、Xは酸解離定数が5.5以下の酸性基を表し、Lは単結合または2価以上の連結基を表し、R1は水素原子、炭素数6〜30のアルキル基、炭素数6〜30の
アルケニル基、炭素数6〜30のアルキニル基、炭素数6〜30のアリール基または炭素数6〜30の複素環基を表し、さらに置換基を有していてもよい。nはLが単結合の場合は1であり、Lが2価以上の連結基の場合は(Lの価数−1)である。)
[6] 前記一般式(15)におけるXが、カルボキシル基、スルフォン酸基、スルフィン酸基、リン酸基、スルフォンイミド基、アスコルビン酸基を有することを特徴とする[5]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[7] 前記一般式(15)におけるLが単結合、あるいは、下記群から得られるユニットまたはこれらのユニットを組み合わせて得られる2価以上の連結基であることを特徴とする[5]または[6]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
ユニット:−O−、−CO−、−N−(R2)−(但し、前記R2は炭素数1〜5のアルキル基)、−CH(OH)−、−CH2−、−CH=CH−、−SO2−。
[8] 前記一般式(15)で表される有機酸が、多価アルコール1分子に脂肪酸1分子と多価カルボン酸1分子がエステル結合した構造を有しており、多価カルボン酸由来の無置換のカルボキシル基を少なくとも1つ有することを特徴とする[5]〜[7]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[9] 前記ドープが、可塑剤を含むことを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[10] 前記可塑剤が、芳香族ジカルボン酸残基または脂肪族ジカルボン酸残基の少なくとも一方と、ジオール残基とを含む重縮合エステルであることを特徴とする[9]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[11] 前記可塑剤が糖エステル化合物であることを特徴とする[9]または[10]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[12] 前記糖エステル化合物が、ヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を1個〜12個含むことを特徴とする[11]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[13] [1]〜[12]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
[14] 60℃、相対湿度90%の環境下で24時間経時させた前後における、フィルム搬送方向およびそれに直交する方向の寸法変化率がいずれも−1.0%〜+0.5%であり、フィルム膜厚方向のレターデーションRth[nm]と膜厚d[μm]が下記式(12)を満たすことを特徴とする[13]に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(12) 2.5×10-3≦Rth/d
[15] 下記式(A)を満たすセルロースアシレートを含み、60℃、相対湿度90%の環境下で24時間経時させた前後における、フィルム搬送方向およびそれに直交する方向の寸法変化率がいずれも−1.0%〜+0.5%であり、フィルム膜厚方向のレターデーションRth[nm]と膜厚d[μm]が下記式(12)を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(12) 2.5×10-3≦Rth/d
式(A) Z>0.8
(式(A)中、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
[16] 測定波長590nmにおいて、フィルム面内方向のレターデーションReが30nm≦Re≦100nm、かつ、フィルム膜厚方向のレターデーションRthが90nm≦Rth≦300nmを満たすことを特徴とする[13]〜[15]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[17] フィルム膜厚方向のレターデーションRth[nm]と膜厚d[μm]が下記式(13)を満たすことを特徴とする[13]〜[16]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(13) 3.5×10-3<Rth/d<6×10-3
[18] 内部ヘイズが0.1%以下であることを特徴とする[13]〜[17]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[19] [13]〜[18]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1つ有することを特徴とする偏光板。
[20][13]〜[18]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1つ有することを特徴とする液晶表示装置。
[21] 液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有し、前記偏光板の少なくとも一方が[19]に記載の偏光板であり、前記液晶セルがIPS、OCBまたはVAモードであることを特徴とする液晶表示装置。
本発明によれば、膜厚当たりのフィルム膜厚方向のレターデーション値の発現性が高く、湿熱の影響に対する寸法安定性が良好なセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法を提供することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法を実施する製造装置の概略側面図である。 図1の製造装置の中の延伸装置(テンター)の概略平面図である。
以下において、本発明のセルロースアシレートフィルムとその製造方法、それに用いる添加剤などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書中、MD方向とはフィルム搬送方向を表し、TD方向とはMD方向に直交する方向を表す。
[セルロースアシレートフィルムの製造方法]
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、下記式(A)を満たすセルロースアシレートを含むドープを支持体上に流延してフィルムを形成する工程と、前記フィルムを前記支持体から剥離する工程と、剥離した前記フィルムを延伸する工程を含み、前記フィルムの前記支持体からの剥離時の残留溶媒量を70質量%以上110質量%以下に制御し、前記延伸工程を下記式(1)および(2)を満たすように制御することを特徴とする。
式(1) −0.4S+132℃≦T≦−0.4S+172℃
式(2) 30質量%≦S≦80質量%
(式(1)および(2)中、Sは延伸開始時の残留溶媒量(単位:質量%)を表し、Tは延伸雰囲気温度(単位:℃)を表す。)
式(A) Z>0.8
(式(A)中、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
以下、本発明の製造方法の各工程の好ましい態様について順に説明する。
〔流延工程〕
本発明の製造方法は、前記式(A)を満たすセルロースアシレートを含むドープを支持体上に流延してフィルムを形成する工程を含む。
詳しくは、本発明の製造方法では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて本発明のフィルムを製造する。以下、ドープ中に含まれる各成分について説明する。
{ドープ中の成分の調製}
(セルロースアシレート)
本発明に用いられるセルロースアシレートは、残水酸基の割合が前記式(A)を満たすものであれば特に定めるものではない。原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
まず、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がアシル化している割合(100%のアシル化は置換度3)を意味する。また、残水酸基の割合とは、アシル化されずに残っている水酸基の割合(未置換のセルロースは3)を意味する。
本発明の製造方法では、前記セルロースアシレートは、残水酸基の割合が前記式(A)を満たす。
式(A) Z>0.8
(式(A)中、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
前記Zは、Z>0.9を満たすことがより好ましく、Z>1.0を満たすことが特に好ましい。
本発明の製造方法では、前記セルロースアシレートは、アシル基の置換度が前記式(3)〜(5)を満たすことが好ましい。
式(3) 1.0≦X+Y≦2.0
式(4) 0≦X≦2.0
式(5) 0≦Y≦2.0
(式(3)〜(5)中、Xは前記セルロースアシレートのアセチル基の置換度を表し、Yは前記セルロースアシレートのプロピオニル基およびブチリル基の置換度の合計を表す。)
前記Xは、0<X≦2.0を満たすことが好ましい。また、場合により0≦X<2.0を満たすことも好ましい。
前記Yは、0<Y≦2.0を満たすことが好ましい。また、場合により0≦Y<2.0を満たすことも好ましい。
前記XとYの合計X+Yは、1.0<X+Y≦2.0を満たすことが好ましい。また、場合により1.0≦X+Y<2.0を満たすことも好ましい。
本発明の製造方法では、前記セルロースアシレートが下記式(7)および(8)を満たすことがより好ましい。
式(7) 0.1≦X≦2.0
式(8) 0.1≦Y≦2.0
(式(7)および(8)中、Xは前記セルロースアシレートのアセチル基の置換度を表し、Yは前記セルロースアシレートのプロピオニル基またはブチリル基の置換度を表す。)
本発明の製造方法では、前記セルロースアシレートが下記式(6)を満たすことが特に好ましい。
式(6) 2.9≦X+Y+Z≦3.0
(式(6)中、Xは前記セルロースアシレートのアセチル基の置換度を表し、Yは前記セルロースアシレートのプロピオニル基またはブチリル基の置換度を表し、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
また、X+Y+Zの合計は、2.95≦X+Y+Z≦3.0を満たすことがより好ましく、X+Y+Z=3.0を満たすことがより好ましい。すなわち、本発明では前記セルロースアシレートは、アセチル基とプロピオニル基とブチリル基と水酸基のみを有することが好ましい。
本発明の製造方法では、前記セルロースアシレートが下記式(9)〜(11)を満たすことがより特に好ましい。
式(9) 1.0≦X+Y’≦2.0
式(10) 2.9≦X+Y’+Z≦3.0
式(11) 0.1≦Y’≦2.0
(式(9)〜(11)中、Xは前記セルロースアシレートのアセチル基の置換度を表し、Y’は前記セルロースアシレートのプロピオニル基の置換度を表し、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
Y’の好ましい範囲は、Yの好ましい範囲と同様である。
X+Y’の好ましい範囲は、X+Yの好ましい範囲と同様である。
X+Y’+Zの好ましい範囲は、X+Y+Zの好ましい範囲と同様である。すなわち、本発明では前記セルロースアシレートは、アセチル基とプロピオニル基と水酸基のみを有することが好ましい。
本発明におけるセルロースアシレートは、アセチル基、プロピオニル基、水酸基以外に、炭素数2以上のアシル基を含んでもよい。炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、ブチリル基(以下、ブタノイル基とも言う)、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはブタノイル基である。アセチル基、プロピオニル基、水酸基以外のアシル基の置換度は0〜0.1が好ましく、置換度0〜0.05がより好ましく、置換度0、すなわちアセチル基、プロピオニル基、水酸基以外のアシル基を含まない場合が最も好ましい。
セルロ−スのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
本発明に用いるセルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
本発明に用いるセルロースアシレートとしてはセルロースアセテート・プロピオネートが最も好ましく用いられ、公知の方法にてセルロースをアシル化することにより製造することができる。セルロースには、例えば解砕パルプのような天然由来のセルロース原料を用いることができる。アシル化は、例えば、硫酸などの酸触媒下において、無水酢酸と無水プロピオン酸を混合または逐次添加により反応させる方法、酢酸とプロピオン酸の混合酸無水物を用いる方法、酢酸と無水プロピオン酸を原料として反応系内で混合酸無水物を生成させてセルロースと反応させる方法などを用いることができ、その組成比は目的とする混合エステルの置換比に応じて決定することができる。また、必要に応じて、さらに加水分解を施して目的とする置換度に調整することや、目的より低置換度のセルロースアセテート・プロピオネートを一旦合成し、さらに、酸無水物や酸ハライドを用いて残存する水酸基(残水酸基)をさらに置換度の調整を施して目的とする置換度に調整することが適用される。
ができる。
セルロースアセテート・プロピオネートの製造法の例としては、例えば、特許第3870944号、特開2007−138141号公報、米国特許公開2009/0096962A1などに記載がある。
(添加剤)
本発明のフィルム中には、重縮合エステル、糖エステル化合物、リン酸エステルなどの可塑剤;有機酸;レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤);マット剤などの添加剤を加えることもできる。また、紫外線吸収剤や酸化防止剤を加えることもできる。
「可塑剤」
本発明のフィルムは、可塑剤を含むことが好ましい。
(1)重縮合エステル系可塑剤
本発明のフィルムは、前記可塑剤が、重縮合エステル(以下、縮合エステル系可塑剤とも言う)であることが好ましい。前記重縮合エステルは、その化合物中に繰り返し単位を有するものである。前記重縮合エステル系可塑剤は、溶液流延法において、溶媒の揮発速度を速める機能や、残留溶媒量を低減する機能も有する。さらに、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点で、有用な効果を示す。
以下、本発明に用いられる重縮合エステル系可塑剤について、その具体例を挙げながら詳細に説明するが、本発明で用いられる重縮合エステル系可塑剤がこれらのものに限定されるわけでないことは言うまでもない。
前記重縮合エステル系可塑剤としては、前記重縮合エステルおよびその2以上の共重合体であることが好ましく、芳香族ジカルボン酸残基または脂肪族ジカルボン酸残基の少なくとも一方と、ジオール残基とを含む重縮合エステルであることがより好ましい。
前記重縮合エステル系可塑剤に含まれる芳香族ジカルボン酸残基は、炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましく、炭素数6〜16の芳香族ジカルボン酸残基であることがより好ましく、炭素数6〜12の芳香族ジカルボン酸残基であることが特に好ましい。
本明細書中、前記芳香族ジカルボン酸残基とは、少なくとも1つのアリーレン基を含むジカルボン酸残基のことを言う。すなわち、本明細書中における前記芳香族ジカルボン酸残基には、−OC−Ar−CO−残基の他に、例えば、−OC−Ar’−L−CO−や、−OC−L’−Ar’’−CO−や、−OC−L’’−Ar’’’−L’’−CO−等の構造を有するジカルボン酸残基(前記Ar、Ar’、Ar’’およびAr’’’はそれぞれ独立にアリーレン基を表し、前記L、L’およびL’’はそれぞれ独立にアリーレン基以外の2価の連結基を表す)も含まれる。前記アリーレン基以外の2価の連結基としては、例えば、脂肪族基や原子連結基などを挙げることができ、具体的にはアルキレン基、アルキレンオキシ基、酸素原子、硫黄原子などを挙げることができる。
その中でも、前記芳香族ジカルボン酸残基は、セルロースアシレートとの相溶性の観点から、−OC−Ar−CO−残基の構造であることが好ましい。
前記Arは、炭素数6〜16のアリーレン基であることが好ましく、炭素数6〜12のアリーレン基であることがより好ましく、フェニレン基またはナフチレン基であることが特に好ましく、フェニレン基であることがより特に好ましい。また、前記Arはさらに置換基を有していても、有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましく、該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、アシル基、カルボニル基などを挙げることができる。
前記芳香族ジカルボン酸残基の具体例としては、フタル酸残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基、1,5−ナフタレンジカルボン酸残基、1,4−ナフタレンジカルボン酸残基、1,8−ナフタレンジカルボン酸残基、2,8−ナフタレンジカルボン酸残基又は2,6−ナフタレンジカルボン酸残基等を挙げることができる。これらの例の中でもフタル酸残基、テレフタル酸残基、2,6−ナフタレンジカルボン酸残基が好ましく、フタル酸残基およびテレフタル酸残基がより好ましく、テレフタル酸残基がさらに好ましい。
前記重縮合エステルには、混合に用いた芳香族ジカルボン酸により芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
前記重縮合エステルが、芳香族ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含む場合、よりセルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいセルロースアシレートフィルムとすることができる。
また、前記重縮合エステル中には芳香族ジカルボン酸残基が1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。前記重縮合エステル中に、芳香族ジカルボン酸残基が2種含まれる場合は、フタル酸残基とテレフタル酸残基が含まれていることが好ましい。
前記ポリエステル系ポリマーに使用される脂肪族ジカルボン酸は、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基であることがより好ましい。
前記脂肪族ジカルボン酸残基の具体例としては、例えば、シュウ酸残基、マロン酸残基、コハク酸残基、マレイン酸残基、フマル酸残基、グルタル酸残基、アジピン酸残基、ピメリン酸残基、スベリン酸残基、アゼライン酸残基、セバシン酸残基、ドデカンジカルボン酸残基または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基等が挙げられる。
前記重縮合エステルには、混合に用いた脂肪族ジカルボン酸より脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
前記脂肪族ジカルボン酸残基は、平均炭素数が2.5〜10.0であることが好ましく、2.5〜8.0であることがより好ましく、2.5〜7.0であることがさらに好ましい。脂肪族ジオールの平均炭素数が7.0以下であれば化合物の加熱減量が低減でき、セルロースアシレートウェブ乾燥時のブリードアウトによる工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生を防ぐことができる。また、脂肪族ジオールの平均炭素数が2.5以上であれば相溶性に優れ、重縮合エステルの析出が起き難く好ましい。
具体的には、前記重縮合エステルは、前記脂肪族ジカルボン酸残基を含む場合はコハク酸残基またはアジピン酸残基を含むことが好ましく、コハク酸残基を有することがより好ましい。
前記重縮合エステル中には、脂肪族ジカルボン酸残基が1種のみ含まれていても、2種以上を含まれていてもよい。前記重縮合エステル中に、脂肪族ジカルボン酸残基が2種含まれる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基が含まれていることが好ましい。前記重縮合エステル中に、脂肪族ジカルボン酸残基が1種含まれる場合は、コハク酸残基が含まれていることが好ましい。このような態様とすることで、ジオール残基の平均炭素数を前記好ましい範囲に調整することができ、セルロースアシレートとの相溶性が良好となる。
前記重縮合エステルには、ジオール残基として芳香族ジオール残基、脂肪族ジオール残基およびアルキルエーテルジオールを用いることができる。
前記重縮合エステルに利用されるジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれるものであることが好ましい。
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
前記重縮合エステルは、ジオール残基として、脂肪族ジオール残基の他に、芳香族ジオール残基を含んでいてもよい。
前記芳香族ジオール残基の具体例としては、例えば、ビスフェノールA残基、1,2−ヒドロキシベンゼン残基、1,3−ヒドロキシベンゼン残基、1,4−ヒドロキシベンゼン残基、1,4−ベンゼンジメタノール残基等が挙げられる。
前記重縮合エステル中には、脂肪族ジオール残基が1種のみ含まれていても、2種以上を含まれていてもよい。
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics)レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
本発明においては、特に前記重縮合エステル系可塑剤の末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止してもよい。末端を疎水性官能基(モノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類など)で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示す。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。
具体的には、前記重縮合エステル系可塑剤の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基またはモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
前記重縮合エステル系可塑剤の含量は、セルロースアシレート樹脂に対して、1〜35質量%であり、3〜30質量%であることが好ましく5〜20質量%であることがさらに好ましい。添加量を1質量%以下では、温度湿度変化に対応できず、添加量を30質量%以上ではフィルムが白化してしまう。さらに、物理的特性も劣るものとなってしまう。
前記重縮合エステルの数平均分子量は500〜2000であることが好ましく、700〜1500であることがより好ましく、700〜1200であることが特に好ましい。重縮合エステルの数平均分子量は500以上であることが、光学発現性向上の観点から好ましい。また、2000以下であればセルロースアシレートとの相溶性が高くなり、製膜時及び加熱延伸時のブリードアウトが生じにくくなる。
本発明の重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。また、末端が封止のないポリエステルポリオールの場合、重量あたりの水酸基の量(以下、水酸基価)により算出することもできる。水酸基価は、ポリエステルポリオールをアセチル化した後、過剰の酢酸の中和に必要な水酸化カリウムの量(mg)を測定する。
なお、本発明に係る重縮合エステルは、可塑剤として用いることができる。
本発明で使用される前記重縮合エステルに含まれるジカルボン酸残基、ジオール残基、各残基の種類及び比率はH−NMRを用いて通常の方法で測定することができる。通常、重クロロホルムを溶媒として用いることができる。
前記重縮合エステルの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができ、通常、ポリスチレンを標準資料として用いることができる。
前記重縮合エステルの水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K3342(廃止)に記載の無水酢酸法当を適用できる。重縮合体がポリエステルポリオールである場合は、水酸基価が50〜190であることが好ましく、50〜130であることがさらに好ましい。
かかる前記重縮合エステル系可塑剤の合成は、常法により上記ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらの重縮合エステル系可塑剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
以下の表1に本発明にかかる重縮合エステルの具体例を記すが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
Figure 0005667493
(2) 糖エステル化合物
前記可塑剤は、糖エステル化合物であることも好ましい。
前記糖エステル化合物をセルロースアシレートフィルムに添加することにより、光学特性の発現性を損なわず、かつ延伸工程前に熱処理を行わない場合でも全へイズおよび内部ヘイズを小さくすることができる。さらに、本発明のセルロースアシレートフィルムを液晶表示装置に用いることにより、正面コントラストを大幅に改良できる。
−糖残基−
前記糖エステル化合物とは、該化合物を構成する単糖または多糖中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基)の少なくとも1つと、少なくとも1種の置換基とがエステル結合されている化合物のことを言う。すなわち、ここで言う糖エステル化合物には広義の糖誘導体類も含まれ、例えばグルコン酸のような糖残基を構造として含む化合物も含まれる。すなわち、前記糖エステル化合物には、グルコースとカルボン酸のエステル体も、グルコン酸とアルコールのエステル体も含まれる。
前記糖エステル化合物を構成する単糖または多糖中の置換可能な基は、ヒドロキシル基であることが好ましい。
前記糖エステル化合物中には、糖エステル化合物を構成する単糖または多糖由来の構造(以下、糖残基とも言う)が含まれる。前記糖残基の単糖当たりの構造を、糖エステル化合物の構造単位と言う。前記糖エステル化合物の構造単位は、ピラノース構造単位またはフラノース構造単位を含むことが好ましく、全ての糖残基がピラノース構造単位またはフラノース構造単位であることがより好ましい。また、前記糖エステルが多糖から構成される場合は、ピラノース構造単位またはフラノース構造単位をともに含むことが好ましい。
前記糖エステル化合物の糖残基は、5単糖由来であっても6単糖由来であってもよいが、6単糖由来であることが好ましい。
前記糖エステル化合物中に含まれる構造単位の数は、1〜12であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1または2であることが特に好ましい。
本発明では、前記糖エステル化合物はヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を1個〜12個含む糖エステル化合物であることがより好ましく、ヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を1または2個含む糖エステル化合物であることがより好ましい。
前記単糖または2〜12個の単糖単位を含む糖類の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
−置換基の構造−
本発明に用いられる前記糖エステル化合物は、用いられる置換基を含め、下記一般式(16)で表される構造を有することがより好ましい。
一般式(16) (OH)h−G−(L1−R11j(O−R12k
一般式(16)中、Gは糖残基を表し、L1は−O−、−CO−、−NR13−のいずれか一つを表し、R11は水素原子または一価の置換基を表し、R12はエステル結合で結合した一価の置換基を表す。h、jおよびkはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、h+j+kは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシル基の数と等しい。
前記Gの好ましい範囲は、前記糖残基の好ましい範囲と同様である。
前記L1は、−O−または−CO−であることが好ましく、−O−であることがより好ましい。前記L1が−O−である場合は、エーテル結合またはエステル結合由来の連結基であることが特に好ましく、エステル結合由来の連結基であることがより特に好ましい。
また、前記L1が複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
11およびR12の少なくとも一方は芳香環を有することが好ましい。
特に、前記L1が−O−である場合(すなわち前記糖エステル化合物中のヒドロキシル基にR11、R12が置換している場合)、前記R11、R12およびR13は置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアリール基、あるいは、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアミノ基の中から選択されることが好ましく、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアルキル基、あるいは置換または無置換のアリール基であることがより好ましく、無置換のアシル基、置換または無置換のアルキル基、あるいは、無置換のアリール基であることが特に好ましい。
また、前記R11、R12およびR13がそれぞれ複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記hは0以上の整数を表し、好ましい範囲は後述する単糖ユニット当たりのヒドロキシル基の数の好ましい範囲と同様である。
前記jは前記Gに含まれるピラノース構造単位またはフラノース構造単位の数よりも大きい数を表すことが好ましい。
前記qは0であることが好ましい。
また、h+j+kは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシル基の数と等しいため、前記h、jおよびkの上限値は前記Gの構造に応じて一意に決定される。
前記糖エステル化合物の置換基の好ましい例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−シアノエチル基、ベンジル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアシル基、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、トルイル基、フタリル基など)、アミド基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアミド、例えばホルムアミド基、アセトアミド基など)、イミド基(好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは炭素数4〜8のアミド基、例えば、スクシイミド基、フタルイミド基など)を挙げることができる。その中でも、アルキル基またはアシル基がより好ましく、メチル基、アセチル基、ベンゾイル基がより好ましく、さらにその中でもベンゾイル基が特に好ましい。
また、前記糖エステル化合物中の構造単位当たりのヒドロキシル基の数(以下、ヒドロキシル基含率とも言う)は、3以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。ヒドロキシル基含率を前記範囲に制御することにより、高温高湿経時における糖エステル化合物の偏光子層への移動およびPVA−ヨウ素錯体の破壊を抑制でき、高温高湿経時における偏光子性能の劣化を抑制する点から好ましい。
前記糖エステル化合物の入手方法としては、市販品として(株)東京化成製、アルドリッチ製等から商業的に入手可能であり、もしくは市販の炭水化物に対して既知のエステル誘導体化法(例えば、特開平8−245678号公報に記載の方法)を行うことにより合成可能である。
前記糖エステル化合物は、数平均分子量が、好ましくは200〜3500、より好ましくは200〜3000、特に好ましくは250〜2000の範囲が好適である。
以下に、本発明で好ましく用いることができる前記糖エステル化合物の具体例を挙げるが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
糖エステル(1):
Figure 0005667493
糖エステル(2):Acはアセチル基を表す。
Figure 0005667493
糖エステル(3):
Figure 0005667493
糖エステル(4):Bzは、ベンゾイル基を表す。
Figure 0005667493
以下の構造式中、Rはそれぞれ独立に任意の置換基を表し、複数のRは同一であっても、異なっていてもよい。ClogP値とは、1−オクタノールと水への分配係数Pの常用対数logPを計算によって求めた値である。ClogP値の計算には、Daylight Chemical Information Systems社のシステム:PCModelsに組み込まれたCLOGPプログラムを用いた。
Figure 0005667493
Figure 0005667493
Figure 0005667493
Figure 0005667493
Figure 0005667493
Figure 0005667493
Figure 0005667493
Figure 0005667493
前記糖エステル化合物は、セルロースアシレートに対し2〜30質量%含有することが好ましく、5〜20質量%含有することがより好ましく、5〜15質量%含有することが特に好ましい。
また、前記縮合エステル系可塑剤を前記糖エステル化合物と併用する場合は、ポリエステル系可塑剤の添加量(質量部)に対する前記糖エステル化合物の添加量(質量部)は、1〜5倍(質量比)加えることが好ましく、2〜4倍(質量比)加えることがより好ましい。
(3)リン酸エステルまたはカルボン酸エステル
前記可塑剤として、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルも用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
「有機酸」
本発明のフィルムは、有機酸を含むことが好ましい。前記有機酸としては、後述する剥離促進剤として用いられる有機酸の一部他、下記一般式(15)で表される有機酸などを挙げることができる。
本発明の製造方法は、下記記一般式(15)で表される有機酸を含むことがより好ましい。
一般式(15)
X−L−(R1n
(式中、Xは酸解離定数が5.5以下の酸性基を表し、Lは単結合または2価以上の連結基を表し、R1は炭素数6〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアルキニル基、炭素数6〜30のアリール基または炭素数6〜30の複素環基を表し、さらに置換基を有していてもよい。nはLが単結合の場合は1であり、Lが2価以上の連結基の場合は(Lの価数−1)である。)
いかなる理論に拘泥するものでもないが、セルロースアシレートの水酸基が溶媒・セルロースアシレート中の金属イオンを介して支持体と相互作用をすることで、本発明のように残水酸基の割合が0.8を超えるセルロースアシレートを用いると支持体からの剥離性が悪化するものと考えられる。前記一般式(15)で表される有機酸は親水部および疎水性部を有しており、界面活性剤のような効果をすることで剥離性を改善しているものと考えられる。
前記一般式(15)で表される有機酸において、酸性基である前記X部分により溶液製膜設備(ドープを流涎するときの金属支持体)からの剥離性を改善することができる。
さらに、酸性基である前記X部分が支持体の金属表面に付着し、特定の構造の疎水性基である前記R1部分が支持体の金属表面を酸素等の酸化剤からブロックすることにより、前記R1の範囲から外れる疎水性基を有する有機酸に比べて、金属の腐食を防止することができる。
以下、本発明のフィルムに用いることができる剥離促進剤について説明する。
一般式(15)中、Xは酸解離定数が5.5以下の酸を表し、カルボキシル基、スルフォン酸基、スルフィン酸基、リン酸基、スルフォンイミド基、アスコルビン酸基が好ましく、カルボキシル基、スルフォン酸基がさらに好ましく、カルボキシル基が最も好ましい。なお、Xがアスコルビン酸基を表す場合は、アスコルビン酸の水素原子のうち、5位、6位の位置の水素原子が外れてLと連結していることが好ましい。
本明細書中、酸解離定数としては、化学便覧、丸善株式会社刊に記載の値を採用する。
一般式(15)中、R1は水素原子、炭素数6〜30のアルキル基(置換基を有してもよい)、アルケニル基(置換基を有してもよい)、アルキニル基(置換基を有してもよい)、アリール基(置換基を有してもよい)、複素環基(置換基を有してもよい)を表す。置換基として、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、水酸基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルフォンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基等が挙げられる。
1はさらに好ましくは、炭素数8〜24のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基であり、最も好ましくは炭素数10〜24の直鎖のアルキル基、アルケニル基である。
一般式(15)におけるLは、単結合、あるいは、下記群から得られるユニットまたはこれらのユニットを組み合わせて得られる2価以上の連結基であることが好ましい。
ユニット:−O−、−CO−、−N(−R2)−(前記R2は炭素数1〜5のアルキル基)、−CH=CH−、−CH(OH)−、−CH2−、−SO2−。
一般式(15)におけるLは、単結合、エステル基由来の連結基(−COO−、−OCO−)、またはアミド基由来の連結基(−CONR2−、−NR2CO−)を部分構造として有することが特に好ましい。
また、前記Lは、さらに置換基を有していてもよく、該置換基としては特に制限はなく前記R1が有していてもよい置換基を挙げることができるが、その中でも−OH基が好ましい。
これらの中でも、前記Lはグリセリン由来の基を含む連結基であることがより好ましい。
前記Lとしては、具体的に以下の構造であることが好ましい。但し、以下においてp、q、rはそれぞれ1〜40の整数を表し、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜6であることが特に好ましい。また、qは2〜4であることがより特に好ましい。
−(CH2p−CO−O−(CH2q−O−;
−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OH))−(CH2r−O−;
−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OCO−R3))−(CH2r−O−;
−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OH))−(CH2r−O−CO−;
−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OCO−R3))−(CH2r−O−CO−。
なお、上記のLの具体例に含まれるR3は、前記一般式(15)における前記R1と同義である。すなわち、−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OCO−R3))−(CH2r−O−という連結基におけるR3は便宜上Lの内部に記載しているだけであり、連結基LはR3を除いた部分を意味する。つまり、この場合Lは3価である。一般式(15)で表すと、X−L−(R12、[但しLは−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OCO−))−(CH2r−O−を表す]と記載でき、すなわちこのときの連結基Lは3価の連結基となっている。
前記Lと前記Xはエステル結合またはアミド結合で結合していることが好ましく、エステル結合で結合していることがより好ましい。また、前記Xにはエステル結合やアミド結合が存在しない方が好ましい。
前記Lと前記R1はエステル結合、エーテル結合またはアミド結合で結合していることが好ましく、エステル結合またはアミド結合で結合していることがより好ましく、エステル結合で結合していることが特に好ましい。また、前記R1にはエステル結合やエーテル結合やアミド結合が存在しない方が好ましい。
以下に本発明の一般式(15)で表される有機酸の好ましい具体例を以下に挙げる。
《脂肪酸》
ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸、ウンデカン酸。
《アルキル硫酸》
ミリスチル硫酸、セチル硫酸、オレイル硫酸。
《アルキルベンゼンスルフォン酸》
ドデシルベンゼンスルフォン酸、ペンタデシルベンゼンスルフォン酸。
《アルキルナフタレンスルフォン酸》
セスキブチルナフタレンスルフォン酸、ジイソブチルナフタレンスルフォン酸。
《ジアルキルスルフォコハク酸》
ジオクチルスルフォコハク酸、ジヘキシルスルフォコハク酸、ジシクロヘキシルコハク酸、ジアミルスルフォコハク酸、ジトリデシルシクロコハク酸。
《多価有機酸の一部誘導体》
前記一般式(15)で表される有機酸は、多価有機酸の一部誘導体であることが好ましい。本明細書中、多価有機酸の一部誘導体とは、多価アルコール1分子に脂肪酸1分子と多価有機酸がエステル結合した構造を有しており、多価カルボン酸由来の無置換の酸性基を少なくとも1つ有する化合物のことを言う。なお、本明細書中、脂肪酸とは、脂肪族モノカルボン酸を意味する。すなわち、本明細書中における脂肪酸は、いわゆる高級脂肪酸に限定されるものではなく、酢酸やプロピオン酸などの炭素数12以下の低級脂肪酸も含まれる。
前記多価有機酸の一部誘導体は、多価カルボン酸の一部誘導体であることが好ましい。すなわち、前記一般式(15)で表される有機酸は、多価アルコール1分子に脂肪酸1分子と多価カルボン酸1分子がエステル結合した構造を有しており、多価カルボン酸由来の無置換のカルボキシル基を少なくとも1つ有することが好ましい。前記多価カルボン酸の一部誘導体に用いられる多価カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸が好ましい。
前記多価有機酸の一部誘導体に用いられる前記多価アルコールとしては、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール、グリセリン等を挙げることができる。その中でも、グリセリンが好ましく、本発明の一般式(15)で表される有機酸はいわゆる有機酸グリセリドであることが好ましい。
本発明の一般式(15)で表される有機酸としては、有機酸の酸性基Xが、グリセリン由来の基を含む連結基Lを介して、疎水性部R1と結合している有機酸グリセリド(グリセリン脂肪酸有機酸エステル)が好ましい。ここで、本明細書中における有機酸グリセリドとは、グリセリンの3個の水酸基のうち1個または2個が脂肪酸とエステル結合を作っており、残りの水酸基のうち1個または2個が多価有機酸とエステル結合を作っており、該多価有機酸由来の酸性基を有する構造の化合物のことを言う。
その中でも、有機酸モノグリセリドまたは有機酸ジグリセリドがより好ましく、有機酸モノグリセリドがより特に好ましい。本明細書中における有機酸モノグリセリドとは、グリセリンの3個の水酸基のうち1個が脂肪酸とエステル結合を作っており、残りの水酸基のうち1個または2個が多価有機酸とエステル結合を作っており、該多価有機酸由来の酸性基を有する構造の化合物のことを言う。本明細書中における有機酸ジグリセリドとは、グリセリンの3個の水酸基のうち2個が脂肪酸とエステル結合を作っており、残りの水酸基1個が多価有機酸とエステル結合を作っており、該多価有機酸由来の酸性基を有する構造の化合物のことを言う。
前記有機酸モノグリセリドの中でも、グリセリンの3個の水酸基のうち1個が脂肪酸とエステル結合を作っており、残りの水酸基のうち1個が無置換の水酸基であり、残りの水酸基1個が多価有機酸とエステル結合を作っており、該多価有機酸由来の酸性基を有する構造の化合物であることがより特に好ましい。前記有機酸モノグリセリドの脂肪酸とエステル結合している水酸基は非対称の位置(いわゆるαモノグリセリドの位置)であることが好ましく、前記有機酸モノグリセリドの多価有機酸とエステル結合している水酸基は同様に非対称の位置(いわゆるαモノグリセリドの位置)であることが好ましい。すなわち、前記有機酸モノグリセリドの中でも、無置換の水酸基を有し、かつ脂肪酸とエステル結合している水酸基の直結する炭素原子と、多価有機酸とエステル結合している水酸基の直結する炭素原子とが隣り合わない構造の化合物であることが好ましい。
前記有機酸モノグリセリドの中でも、多価カルボン酸のモノグリセリドがより特に好ましい。前記多価カルボン酸のモノグリセリドとは、多価カルボン酸のうち、少なくとも1つが無置換のカルボキシル基を有し、その他のカルボキシル基がモノグリセリドで置換されている有機酸のことを言う。すなわち、グリセリン1分子に脂肪酸1分子と多価カルボン酸1分子が結合したカルボキシル基含有有機酸モノグリセリドが特に好ましい。
前記多価カルボン酸のモノグリセリドに用いられる前記多価カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸が好ましい。
前記多価カルボン酸のモノグリセリドに用いられる前記脂肪酸は限定されないが、炭素数8〜22の飽和または不飽和の脂肪酸が好ましく、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等があげられる。
以下に、本発明の製造方法に使用することができるカルボキシル基含有有機酸モノグリセリドについて詳しく説明する。
本発明で使用することができるカルボキシル基含有有機酸モノグリセリドは、一般的には、特開平4−218597号公報、特許第3823524号公報等に記載されている方法に従って、多価有機酸の無水物と脂肪酸モノグリセリドを反応させることにより得られる。
反応は、通常、無溶媒条件下で行われ、例えば無水コハク酸と炭素数18の脂肪酸モノグリセリドの反応では、温度120℃前後においえて90分程度で反応が完了する。かくして得られた有機酸モノグリセリドは、通常、有機酸、未反応モノグリセリド、ジグリセリド、及びその他オリゴマーを含む混合物となっている。本発明においては、このような混合物のまま使用してもよい。
前記カルボキシル基含有有機酸モノグリセリドの純度を高めたい場合は、上記のような混合物中のカルボキシル基含有有機酸モノグリセリドを蒸留等により精製すればよく、また、純度の高いカルボキシル基含有有機酸モノグリセリドとしては、蒸留モノグリセリドとして市販されているものを使用できる。前記カルボキシル基含有有機酸モノグリセリドの市販品としては、例えば、理研ビタミン社製ポエムK−37V(グリセリンクエン酸オレイン酸エステル)、花王社製ステップSS(グリセリンステアリン酸/パルミチン酸コハク酸エステル)等があげられる。
本発明のフィルムに含まれる前記一般式(15)で表される有機酸の量は、前記セルロースアシレートに対して0.01質量%以上1質量%未満の割合であり、0.05質量%〜0.5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜0.3質量%であることがより好ましい。
本発明の製造方法では、前記ドープが、該ドープ中のセルロースアシレートに対して0.1質量%〜10質量%の前記一般式(15)で表される有機酸を含有することが、製膜時の剥離性改良効果が十分得られることから好ましく、0.1〜8質量%含有することがより好ましく、0.5〜5質量%含有することが特に好ましい。
一方、いかなる理論に拘泥するモノでもないが、有機酸の含有量が多くなるとフィルムの白化が見られる傾向にあるが、これはフィルム内部での化合物同士の凝集が進むことで相分離したものと考えられる。前記ドープ中のセルロースアシレートに対する前記一般式(15)で表される有機酸の含有量が10質量%未満であれば、フィルムを薄膜化した場合に、有機酸濃度が十分低いためにセルロースアシレートによる光学発現性を十分発現させることができ、また有機酸に起因するフィルム白化を十分に抑制して低ヘイズ化することができる。
(レターデーション発現剤)
本発明のフィルムは、レターデーション発現剤を含んでいても含んでいなくても所望の面内方向のレターデーションを発現させることができるが、さらにレターデーション発現剤を含んでいてもよい。レターデーション発現剤を採用することにより、低延伸倍率で高いRe発現性を得られる。レターデーション発現剤の種類としては、特に定めるものではないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、前記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。上記棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
レターデーション発現剤としては、例えば特開2004−50516号公報、特開2007−86748号公報に記載されている化合物を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
円盤状化合物としては、例えば欧州特許出願公開第0911656A2号明細書に記載の化合物、特開2003−344655号公報に記載のトリアジン化合物、特開2008−150592号公報[0097]〜[0108]に記載されるトリフェニレン化合物も好ましく用いることもできる。
円盤状化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法、特開2005−134884号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。
前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができ、例えば特開2008−150592号公報[0110]〜[0127]に記載される棒状化合物を好ましく用いることができる。
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより長波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J. Am. Chem. Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J. Org. Chem., 40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
(剥離促進剤)
本発明のフィルムには、剥離促進剤を用いてもよい。剥離促進剤は、例えば、0.001〜1重量%の割合で含めることができ、0.5重量%以下の添加であれば剥離剤のフィルムからの分離等が発生し難いため好ましく、0.005重量%以上であれば所望の剥離低減効果を得ることができるため好ましいため、0.005〜0.5重量%の割合で含めることが好ましく、0.01〜0.3重量%の割合で含めることがより好ましい。剥離促進剤としては、公知のものが採用でき、有機、無機の酸性化合物、界面活性剤、キレート剤等を使用することができる。中でも、多価カルボン酸およびそのエステルが効果的であり、特に、クエン酸のエチルエステル類が効果的に使用することができる。
(マット剤)
ハンドリングされる際に、傷が付いたり搬送性が悪化したりすることを防止するために、微粒子を添加することが一般に行われる。それらは、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて、従来から利用されている。それらは、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されず、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
前記無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。前記二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
前記有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
これらのマット剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されずいずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましく、また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。なお、インライン添加に関しては、濃度ムラ、粒子の凝集等をなくすために、特開2003−053752号には、セルロースアシレートフィルムの製造方法において、主原料ドープに異なる組成の添加液を混合する添加ノズル先端とインラインミキサーの始端部の距離Lが、主原料配管内径dの5倍以下とする事で、濃度ムラ、マット粒子等の凝集をなくす発明が記載されている。さらに好ましい態様として、主原料ドープと異なる組成の添加液供給ノズルの先端開口部とインラインミキサーの始端部との間の距離(L)が、供給ノズル先端開口部の内径(d)の10倍以下とし、インラインミキサーが、静的無攪拌型管内混合器または動的攪拌型管内混合器であることが記載されている。さらに具体的には、セルロースアシレートフィルム主原料ドープ/インライン添加液の流量比は、10/1〜500/1、好ましくは50/1〜200/1であることが開示されている。さらに、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で透明性に優れた位相差フィルムを目的とした発明の特開2003−014933号にも、添加剤を添加する方法として、溶解釜中に添加してもよいし、溶解釜〜共流延ダイまでの間で添加剤や添加剤を溶解または分散した溶液を、送液中のドープに添加してもよいが、後者の場合は混合性を高めるため、スタチックミキサー等の混合手段を設けることが好ましいことが記載されている。
(有機溶媒)
前記有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルおよび炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
{ドープの調製}
一般的な方法でセルロースアシレート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特に、メチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアシレートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアシレートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。セルロースアシレートの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアシレートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアシレートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアシレート(全アセチル置換度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保存する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアシレートの全アセチル置換度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
{支持体上への流延}
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
本発明においては、セルロースアシレートを溶解して得られるドープを支持体上に流延(流延工程)した後、支持体から剥離し(剥離工程)、剥離したフィルムを延伸(延伸工程)し、その後必要に応じて緩和(緩和工程)および乾燥(後乾燥工程)をして、ロールに巻取り(巻取工程)、セルロースアシレートフィルムを得る。
本発明の製造方法の好ましい態様を、図面を参照して説明すると、まず図1に示すように、セルロースアシレートフィルムの原料溶液であるドープが、流延ダイ2によって回転金属製エンドレスベルトからなる支持体1上に流延される(上述の流延工程)。流延工程における支持体1は、図1に示すようなベルト状、もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が使用される。流延によって支持体1上に形成されたウェブWは、支持体1上を約一周したところで、剥離ロール3によって剥離される(剥離工程)。支持体1から剥離されたフィルムFは、テンター4での延伸工程及び必要に応じて緩和工程を経る。テンター4の通過後、フィルムFは乾燥装置5内に送り込まれる。乾燥装置5では、一般にロール懸垂方式によりハウジング内に千鳥状に配置されたすべての搬送ロール6を経由して搬送され、その搬送中に乾燥風吹き込み口7から吹き込まれる乾燥風により乾燥させられる。乾燥により得られたセルロースアシレートフィルムFは、巻取ロール8に巻き取られる。
フィルムの製造に際しては、以下の方法を用いることが寸法安定性を付与することと、面内方向のレターデーション(Re)および膜厚方向レターデーション(Rth)を得ることとを両立させる観点で好ましい。
<剥離工程>
本発明の製造方法は、前記フィルムを前記支持体から剥離する工程を含み、前記フィルムの前記支持体からの剥離時の残留溶媒量を70質量%以上110質量%以下に制御することを特徴とする。
フィルムFを支持体1から剥離する時の残留溶媒量が少なくすると、延伸開始時の残留溶媒量を一定に保てなくなるため、寸法変化が悪化し、多すぎると支持体上にドープが残り、面状の悪化を招く。好ましい剥離時の残留溶媒量は70%〜110%であり、より好ましくは80%〜100%であり、更に好ましくは85%〜95%である。前記フィルムの前記支持体からの剥離時の残留溶媒量をこの範囲に制御することで、膜厚当たりのフィルム膜厚方向のレターデーションの発現量を高めることができる。
フィルム中の残留溶媒量は次式で表される。
残留溶媒量=残存揮発分重量/加熱処理後フィルム重量×100%
なお残存揮発分重量はフィルムを115℃で1時間加熱処理したとき、加熱処理前のフィルム重量から加熱処理後のフィルム重量を引いた値である。
<乾燥工程>
ドラムやベルト上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムやベルトが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロ−ル群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエ−ブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量および乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
<延伸工程>
本発明の製造方法は、剥離した前記フィルムを延伸する工程を含み、前記延伸工程を下記式(1)および(2)を満たすように制御することを特徴とする。
式(1) −0.4S+132℃≦T≦−0.4S+172℃
式(2) 30質量%≦S≦80質量%
(式(1)および(2)中、Sは延伸開始時の残留溶媒量(単位:質量%)を表し、Tは延伸雰囲気温度(単位:℃)を表す。)。
テンター4でフィルムを延伸しながら乾燥する場合、延伸倍率(延伸前後の寸法の比)が大きくなると、面内方向のレターデーション(Re)および膜厚方向レターデーション(Rth)は増加し、小さくすると減少する。好ましい延伸倍率は2〜50%、より好ましくは5〜40%、更に好ましくは10〜30% である。
ここで、一方の方向に対して2%〜50%延伸するとは、フィルムを支持しているクリップやピンの間隔を延伸前の間隔に対して1.02〜1.05倍の範囲にすることを意味している。
図2は、テンター4の機構の例を示している。図2に示すように、テンター4は、ハウジング10の左右両側部において、多数のクリップ11がチェン状態につながれており、これらのクリップ11が1つの輪になってレール12上を走行することで、フィルムFが把持搬送されるようになっている。各クリップ11は、図示は省略したが、揺動自在な押えアームを備えていて、テンター4 の左右両側において、受け台上のフィルムFの幅手方向両端部が、テンター4の押えアームの曲面形先端部と受け台とで挟まれ(クリップされ)て、延伸させられながら一緒に搬送されると同時に、乾燥される。なお、幅手方向とは、フィルムFの面内において、フィルムFの搬送方向に直交する方向のことである。
テンター4内では、セルロースアシレートフィルムFは、これの幅手方向両端部を把持された状態で、フィルムFの幅保持ゾーンA、フィルム幅手方向延伸ゾーンB、延伸状態でのフィルム幅保持ゾーンC、及び緩和ゾーンDを順次通過して、フィルム幅手方向延伸処理が行なわれるものである。
ここで、テンター4におけるフィルムの幅保持ゾーンAとは、テンター4の入口から延伸開始点aまでのフィルム幅(ベース両端)の把持クリップ間距離が一定のゾーンをいう。また延伸ゾーンBとは、テンター4の延伸開始点aから延伸終了点bまでのフィルム幅(ベース両端)の把持クリップ間距離が進行方向(搬送方向)に広がるゾーンをいう。延伸状態でのフィルム幅保持ゾーンCとは、テンター4の延伸終了点b から緩和開始点cまでの延伸後のフィルム幅(ベース両端)の把持クリップ間距離が一定のゾーンをいう。
延伸ゾーンBにおける、テンター4の延伸開始点aでの残留溶媒量が高すぎると、フィルムに延伸の応力が伝わらず、面内方向のレターデーション(Re)および膜厚方向レターデーション(Rth)の発現性が不足する。残留溶媒量が低すぎると、フィルムに残留応力が残りやすくなるため、製膜後の寸法変化が大きくなる。
本発明のフィルムの製造方法では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が上記式(1)および(2)を満たす条件で延伸する。すなわち、延伸ゾーンBにおける、テンター4の延伸開始点aでの残留溶媒量S[%]と延伸ゾーンBの雰囲気温度T[℃]は下記式の関係を満たす。
式(1) −0.4S+132℃≦T≦−0.4S+172℃
式(2) 30質量%≦S≦80質量%
(式(1)および(2)中、Sは延伸開始時の残留溶媒量(単位:質量%)を表し、Tは延伸雰囲気温度(単位:℃)を表す。)。
延伸開始点aでの残留溶媒量Sは、30質量%〜80質量%を満たし、より好ましくは35質量%〜75質量%であり、更に好ましくは40質量%〜65質量%である。
延伸ゾーンBの雰囲気温度が高すぎると、フィルムに延伸の応力が伝わらず、面内方向のレターデーション(Re)および膜厚方向レターデーション(Rth)の発現性が不足する。残留溶媒量が低すぎると、フィルムに残留応力が残りやすくなるため、製膜後の寸法変化が大きくなる。
一定の残留溶媒量のフィルムでも延伸温度が低いと製膜後の寸法変化が大きくなり、温度が高いと面内方向のレターデーション(Re)および膜厚方向レターデーション(Rth)の発現性が不足するため、式(1)を満たすことが好ましい。延伸温度を−0.4S+132℃以上に制御することにより、湿熱の影響に対する寸法安定性を高め、フィルムを偏光板に貼り合わせたときのシワを抑制することができる。−0.4S+172℃以下に制御することにより膜厚当たりのRth発現性を高め、フィルム発泡を抑制することができる。
前記延伸温度Tは、−0.4S+137℃≦T≦−0.4S+167℃であることがより好ましく、−0.4S+142℃≦T≦−0.4S+162℃であることが特に好ましい。
<緩和工程>
本発明の製造方法では、緩和処理は必須ではないが、必要に応じて行ってもよい。
緩和ゾーンDとは、テンター4の緩和開始点cから緩和終了点dまでのフィルム幅(ベース両端)の把持クリップ間距離が進行方向(搬送方向)に狭まるゾーンをいう。この場合、緩和処理とは、上述のように、フィルム幅を進行方向(搬送方向)に狭めるような把持のパターンを指し、フィルムFが幅手方向にピンと張らない、すなわちフィルム幅手方向に応力を与えないようなプロセスを緩和処理といい、この緩和処理は、フィルム端部の把持中に行なわれるものである。
緩和ゾーンDにおいて、寸法変化を抑えるために、フィルム搬送方向に対して垂直な方向に緩和してもよい。具体的には、前工程のフィルム幅に対して95〜99.5%の範囲になるようにフィルム幅を調整することが好ましい。
テンター4におけるレール12は、通常、屈曲可能なレールとなっており、このレール12が曲がることで、左右両端クリップ間距離が変わり、幅保持ゾーンA、延伸ゾーンB、幅保持ゾーンC、及び緩和ゾーンDを構成することができる。延伸ゾーンBが本発明の延伸工程に相当し、緩和ゾーンDが緩和工程に相当する。なお、これらのゾーンの組み合わせは、図示のものにかぎらず、どのような順序に組み合わせられていてもよい。
また、図示のテンター4は、クリップテンター方式であるが、これはその他、ピンテンター方式であってもよく、いずれにしても、テンター方式でフィルムFの幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。
(表面処理)
製造されたセルロースアシレートフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理又は紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましい。
偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光子との接着性の観点から、酸処理又はアルカリ処理、すなわちセルロースアシレートに対する鹸化処理を実施することが特に好ましい。
表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m〜75mN/mであることが更に好ましい。
以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
セルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオン濃度は0.1〜3.0モル/リットルの範囲にあることが好ましく、0.5〜2.0モル/リットルの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至50℃の範囲にあることが好ましく、25〜45℃の範囲にあることがさらに好ましい。
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、及び吸着法により求めることができる。本発明のセルロースアシレートフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアシレートフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
[セルロースアシレートフィルム]
本発明のセルロースアシレートフィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする。また、60℃、相対湿度90%の環境下で24時間経時させた前後における、フィルム搬送方向およびそれに直交する方向の寸法変化率がいずれも−1.0%〜+0.5%であり、フィルム膜厚方向のレターデーションRth[nm]と膜厚d[μm]が下記式(12)を満たす。
すなわち、本発明のセルロースアシレートフィルムは、下記式(A)を満たすセルロースアシレートを含み、60℃、相対湿度90%の環境下で24時間経時させた前後における、フィルム搬送方向およびそれに直交する方向の寸法変化率がいずれも−1.0%〜+0.5%であり、フィルム膜厚方向のレターデーションRth[nm]と膜厚d[μm]が下記式(12)を満たすことを特徴とする。
式(12) 1.9×10-3≦Rth/d
式(A) Z>0.8
(式(A)中、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
以下、本発明のセルロースアシレートフィルムの特性について説明する。
(寸法変化率)
本発明のフィルムは、60℃相対湿度90%で24時間経過前後の寸法変化率がフィルム搬送方向およびそれに直交する方向において下記式(17)を満たすことがより好ましい。
−1.0%≦{(L'−L0)/L0}×100≦0.5% (17)
前記L0は25℃、相対湿度60%の雰囲気下で2時間以上調湿後のフィルム長さを表し、L’は60℃相対湿度90%で24時間経過させ、さらに2時間調湿した後のフィルム長さを表す。 前記寸法変化率が前記式(17)の範囲であると、前記アルカリ鹸化処理において、フィルムの寸法変化が生じにくいため、偏光板貼り合わせ過程でシワや空気の混入を抑制することができる。前記寸度変化率は、−0.8〜0.4%であることがより好ましく、−0.7〜0.3%であることが特に好ましい。
(Re、Rth)
本発明のフィルムのレターデーション値は、位相差フィルムに用いる場合等には、ReおよびRthは液晶セルおよび光学フィルムの設計により、適宜選択される。
セルロースアシレートフィルムのより好ましい光学特性は液晶モードによって異なる。
本発明のフィルムは、VAモード用としては波長590nmで測定したReは30nm≦Re≦100nmであることが好ましく、Rthは90nm≦Rth≦300nmであることが好ましい。その中でも、液晶表示装置に本発明のフィルムを2枚組み込んで光学特性を改善する2枚型のVAモード液晶表示装置に本発明のフィルムを応用する場合は、30nm≦Re≦80nmであることが特に好ましく、40nm≦Re≦60nmであることがより特に好ましい。2枚型のVAモードに応用する場合のRthは90≦Rth≦180nmのものが特に好ましく、100≦Rth≦140nmのものがより特に好ましい。一方で、液晶表示装置に本発明のフィルムを1枚組み込んで光学特性を改善する1枚型のVAモード液晶表示装置に本発明のフィルムを応用する場合は、40nm≦Re≦100nmであることが特に好ましく、45nm≦Re≦90nmであることがより特に好ましい。1枚型のVAモードに応用する場合のRthは、160nm≦Rth≦290nmであることが特に好ましく、180nm≦Re≦280nmであることがより特に好ましく、200nm≦Rth≦250nmであることがよりさらに特に好ましい。
本明細書におけるRe(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、590nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
Figure 0005667493
ここで、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。dはフィルム厚を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d ・・・ 式(B)
なおこの際、パラメータとして平均屈折率nが必要になるが、これはアッベ屈折計((株)アタゴ社製の「アッベ屈折計2−T」)により測定した値を用いた。
本発明のフィルムは、フィルム膜厚方向のレターデーションRth[nm]と膜厚d[μm]が下記式(12)を満たすことを特徴とする。
式(12) 2.5×10-3≦Rth/d
本発明のフィルムは、3.5×10-3<Rth/d<6×10-3であることが好ましく、4.0×10-3<Rth/d<5.3×10-3であることがより好ましい。
(内部ヘイズ)
内部ヘイズを低くすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、液晶表示装置に組み込んだときの正面コントラストを高められ、光学フィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。ヘイズの測定は、ヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定することができる。本発明のフィルムの内部へイズは、0.1%以下であることが好ましく、0.07%以下であることが特に好ましく、0.05%以下であることがより特に好ましく、0.03%未満であることがさらにより特に好ましい。本発明において内部へイズの測定は、以下の方法を用いて行った。
フィルムの表面及び裏面に流動パラフィンを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S9111、MATAUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間に流動パラフィンのみを挟んで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hi)として算出した。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、位相差フィルムとして用いることができる。なお、「位相差フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、位相差板、光学補償フィルム、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、位相差フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
本発明の透明セルロースアシレートフィルムを用いることで、Re値およびRth値を自在に制御した位相差フィルムを容易に作製することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを複数枚積層したり、本発明のセルロースアシレートフィルムと本発明外のフィルムとを積層したりしてReやRthを適宜調整して位相差フィルムとして用いることもできる。フィルムの積層は、粘着剤や接着剤を用いて実施することができる。
また、場合により、本発明のセルロースアシレートフィルムを位相差フィルムの支持体として用い、その上に液晶等からなる光学異方性層を設けて位相差フィルムとして使用することもできる。
[偏光板]
また、本発明は、本発明のフィルムを少なくとも一枚用いることを特徴とする偏光板にも関する。
本発明の偏光板は、偏光子と、該偏光子の片面に本発明のフィルムを有することが好ましい。本発明の光学補償フィルムと同様、本発明の偏光板の態様は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
本発明の偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。
本発明のフィルムは、光学発現性が高いため、位相差フィルムとして偏光板用保護フィルムに好ましく用いられる。偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼り合わせ積層することによって形成される。偏光子は従来から公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコールフィルムなどの親水性ポリマーフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸したものである。セルロースアシレートフィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行うことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコ−ル水溶液が好ましく用いられる。
本発明のフィルムは、偏光板用保護フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルム/液晶セル/本発明のフィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成、もしくは偏光板用保護フィルム/偏光子/本発明のフィルム/液晶セル/本発明のフィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成で好ましく用いることができる。特に、TN型、VA型、OCB型などの液晶セルに貼り合わせて用いることによって、さらに視野角に優れ、着色が少ない視認性に優れた表示装置を提供することができる。特に本発明の偏光板用保護フィルムを用いた偏光板は高温高湿条件下での劣化が少なく、長期間安定した性能を維持することができる。
[液晶表示装置]
本発明は本発明の偏光板を有する液晶表示装置にも関する。
本発明の液晶表示装置は液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が本発明の偏光板であることを特徴とするIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましく、特にVAモードの液晶表示装置であることが最も好ましい。
本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
本発明のVA型液晶表示装置のモードについてはいずれであってもよく、具体的にはMVA(Multi−domain Vertical Alignment)型、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer−Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
本発明のVA型液晶表示装置では、液晶セルと偏光子との間に配置される偏光板の透明保護フィルムとして、本発明のフィルムからなるセルロースアシレート積層フィルムが用いられる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)保護フィルムのみに上記のセルロースアシレート積層フィルムを用いてもよいし、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)二枚の保護フィルムに、上記のセルロースアシレート積層フィルムを用いてもよい。液晶セルへの張り合わせは、本発明のフィルムはVAセル側にすることが好ましい。保護フィルムは通常のセルロースアシレートフィルムでも良く、市販のKC4UX2M(コニカオプト株式会社製40μm)、KC5UX(コニカオプト株式会社製60μm)、TD80(富士フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(合成例1 CAP1の合成)
含有水分7%に調整した解砕パルプ100部に、氷酢酸22部を噴霧し60℃で2時間前処理活性化した。無水プロピオン酸260部とプロピオン酸56部と、硫酸2.6部の混合液を予め−10℃に調節して3L容ニーダーに準備しておき、この混合液に前記の前処理活性化セルロースを投入して攪拌混合した。反応系がシロップ状に変化し、偏光顕微鏡観察にてセルロースの結晶が完全に消失していることを確認した後、反応系に酢酸45.3部と水23.3部との混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を失活させた。反応液の温度を60℃に保ち、酢酸135.8部および水70部を加えて100分間熟成した。その後、酢酸マグネシウム15重量%水溶液32.3部を30分間かけて加え、系内の硫酸を連続的に中和した。続いて、酢酸180部を添加攪拌し、沈澱剤としての10重量%の酢酸水溶液に入れて激しく攪拌して沈殿させた。固液を分離し、脱イオン水で洗浄したのち、96〜97度の熱水で60分間洗浄し、その後さらに脱イオン水で120分間洗浄した後、安定化処理(耐熱処理)として0.002重量%水酸化カルシウム希薄溶液を添加した。その後30分放置した後、遠心脱液を行い、乾燥することでDS(Ac)=0.21、DS(Pr)=2.59のセルロースアセテート・プロピオネートを得た。
次に、得られたセルロースアセテート・プロピオネートを米国特許公開2009/0096962A1に記載の方法に準じて加水分解し、DS(Ac)=0.17、DS(Pr)=1.54のセルロースアセテートプロピオネート(CAP1)を得た。
CAP2〜4は、合成例1の方法に準じ、用いる氷酢酸、無水プロピオン酸、およびプロピオン酸の量の比を換えて合成した。
CAP5および6は、米国特許公開2009/0096962A1に記載の方法に準じて加水分解しない以外は合成例1の方法に準じ、用いる氷酢酸、無水プロピオン酸、およびプロピオン酸の量の比を換えて合成した。
(TAC1の調製)
特開平10−45804号公報、同08−231761号公報に記載の方法で、セルロースアシレートを合成し、その置換度を測定した。具体的には、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去し、TAC1を得た。
(CAB1の調製)
CABは、用いる無水プロピオン酸、およびプロピオン酸の代わりにブチリル基を導入するために無水酪酸を用いた以外は合成例1の方法に準じ、用いる無水酪酸の量の比を換えて合成した。
[実施例1〜30および比較例1〜9]
以下に示すセルロースアシレートドープを作製し、製膜用ドープとした。
(製膜用セルロースアシレートドープの調整)
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セルロースアシレート樹脂:表6および表9に記載のもの
表9に記載の量(単位:質量部)
可塑剤:表7および表9に記載のもの
表9に記載の量(単位:質量部)
有機酸:表8および表9に記載のもの
表9に記載の量(単位:質量部)
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
マット剤 0.15質量部
────────────────────────────────────────

ただし、有機酸は、予め下記の有機酸溶液を作製したのち、上記組成になるように
量を調整して添加した。
────────────────────────────────────────
有機酸:表8および表9に記載のもの 20質量部
ジクロロメタン 70質量部
メタノール 10質量部
────────────────────────────────────────
Figure 0005667493
Figure 0005667493
Figure 0005667493
Figure 0005667493
(マット剤)
日本エアロジル(株)社製、アエロジルR972(商品名、二酸化ケイ素微粒子(平均粒径15nm、モース硬度 約7)。
(溶液流延法)
上記のセルロースアシレートドープをミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、セルロースアシレートドープを調製した。
次に、上記により調製した製膜用ドープを製膜化して各実施例のフィルムを製造した。
ドープを流延する際には、走行する流延バンドの上に流延ダイから上記のドープを流延し、流延膜(フィルム、ウェブ)を形成させた。
(剥ぎ取り)
次に、この流延膜を流延バンドから剥ぎ取り湿潤フィルムとした。ドープを剥ぎ取った直後の残留溶剤量を、下記表9に剥ぎ取り時揮発分として記載した。
(延伸、緩和、乾燥)
表9に記載の温度に雰囲気温度を設定したテンターを用いて表9に記載の倍率までフィルムを延伸した。延伸開始時の残留揮発分は表9に示した。その後、140℃で15秒間、2%緩和させ、130℃で20分間乾燥させてフィルムを得た。このときフィルムの膜厚は下記表9に示した。
[評価]
(有機酸のSUS腐食性評価)
オートクレーブ中に、各実施例および比較例で作製した有機酸溶液20gを秤量し、そのなかに幅2cm×長さ3cm切り出した厚み0.5cmのSUS316の試験片を浸漬した。オートクレーブを密閉し、90℃で72時間経時させたのちに、オートクレーブのふたを開け、SUS316の試験片の腐食およびこれに起因する有機酸溶液の変化を観察し、以下の基準により評価した。
3:試験片表面の平滑性に変化がなく、有機酸溶液は無色透明。
2:試験片表面の平滑性の変化は小さいが、有機酸溶液は黄色に着色。
1:試験片表面がざらざらしており、有機酸溶液は茶褐色で濁りあり。
得られた結果を下記表9に示した。
(剥離性の評価)
下記の評価方法に基づいて、各実施例および比較例のフィルムの支持体からの剥離性を評価した。
5:剥離性が非常に良く、剥離後にフィルムに光学的なムラが全く視認できなかった
4:剥離性が良く、剥離後にフィルムに光学的なムラわずかに視認できた。
3:剥離でき、剥離後にフィルムにスジ状の膜厚ムラは無いが、光学的なムラが視認できた。
2:剥離性が悪く、剥離後にフィルムにスジ状の膜厚ムラが視認できた。
1:剥離性が非常に悪く、剥離時にフィルムが部分的に伸張されたり、フィルムが部分的にバンド上に残ったりした。
得られた結果を下記表9に示した。
(延伸後の面状(発泡)評価)
下記の評価方法に基づいて得られた各実施例のフィルムの面状を評価した。
3:フィルムに発泡が全く見られない。
2:フィルムの端部に部分的に発泡が見られる。
1:フィルムの全面に発泡が見られる。
得られた結果を下記表9に示した。
(寸法変化率)
各実施例および比較例のフィルムの、60℃相対湿度90%で24時間経過前後の寸法変化率、すなわち(L'−L0)/L0}×100%の値を、フィルム搬送方向およびそれに直交する方向において求めた。ここで、前記L0は60℃相対湿度90%で24時間経過させる前のフィルム長さ(単位:mm)を表し、前記L’は60℃相対湿度90%で24時間経過させた後さらに2時間調湿した後のフィルム長さ(単位:mm)を表す。また、用いたサンプルフィルムは30mm×120mmのものを用い、その他の条件は以下のとおりとした。
25℃、相対湿度60%の雰囲気下で2時間以上調湿後、自動ピンゲージ(新束科学(株)製)にて、フィルムの120mm辺に平行になるように6mmφの穴を100mm間隔に開け、間隔の原寸(L0)を最小目盛り1/1000mmまで測定する。そして60℃相対湿度90%で24時間経過した後に、25℃、相対湿度60%の雰囲気下で2時間調湿後、パンチの間隔の寸法L’を測定する。
得られた結果を下記表9に示した。
(光学発現性)
上記に記載したとおり、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)で各実施例および比較例のフィルムのReとRthを計測した。得られたRthを膜厚dで割り、Rth/dを求めた。
得られた結果を下記表9に記載した。
(内部ヘイズ)
まず各実施例および比較例のフィルム試料40mm×80mmの屈折率をアッベ屈折計((株)アタゴ社製の『アッベ屈折計2−T』)により測定した。
次に、フィルム試料の表面及び裏面に、フィルム中に最も多く含まれる熱可塑性樹脂の屈折率±0.02以内の屈折率を有するオイルを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATAUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、全ヘイズを除去した状態でヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)によってJIS K−6714に従ってヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にオイルのみを挟んで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズとして算出した。
各実施例および比較例で得られたセルロースアシレート樹脂を用いたフィルム試料は屈折率が1.48〜1.49であったため、屈折率1.48の流動パラフィンを用いて測定した。
また、本発明では上記方法で30回測定を行い、その平均値を内部へイズとした。その結果を下記表9に示す。
(偏光板貼り合わせ適性の評価)
《偏光板試料の作製1》
上記で作製した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムの表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、温度を30〜45℃、時間を1〜2分の間でヘイズが上昇しない条件に調整して浸漬した。その後、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムと、同様のアルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士フイルム社製)を用意し、偏光子を間に挟んで貼り合わせ、各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム、偏光子、TD80ULがこの順に貼り合わせてある偏光板をそれぞれ得た。この際、各セルロースアシレートフィルムのMD方向およびTD80ULの遅相軸が、偏光子の吸収軸と平行になるように貼り付けた。
各実施例のフィルムの偏光板貼り合わせ適性を、以下の基準にしたがって評価した
3:偏光板を目視で観察してシワや偏光子とセルロースアシレートフィルムとの間への空気の混入が見られない。
2:偏光板の端の一部にシワや偏光子とセルロースアシレートフィルムとの間への空気の混入が見られる。
1:偏光板の全面にシワや偏光子とセルロースアシレートフィルムとの間への空気の混入が見られる。
フィルム発泡とシワについて、それぞれ得られた結果を下記表9に記載した。
Figure 0005667493
上記表9より、実施例1〜30のフィルムはいずれも膜厚当たりのRth発現量が大きく、湿熱経時後の寸法変化が小さいセルロースアシレートフィルムであった。
一方、比較例1および2のフィルムは剥ぎ取り時揮発分と延伸開始時揮発分が本発明の製造方法で規定する範囲を下回る態様で製造したものであり、湿熱経時後のMD方向の寸法変化が大きく、偏光板への貼り合わせ時にシワや空気の混入が発生した。比較例3のフィルムは剥ぎ取り時揮発分、延伸開始時揮発分および延伸温度が本発明の製造方法で規定する範囲を上回る態様で製造したものであり、膜厚当たりのRth発現量が小さかった。比較例4のフィルムは延伸温度が本発明の製造方法で規定する範囲を下回る態様で製造したものであり、湿熱経時後のMD方向の寸法変化が大きく、偏光板への貼り合わせ時にシワや空気の混入が発生した。比較例5のフィルムは延伸温度が本発明の製造方法で規定する範囲を上回る態様で製造したものであり、フィルムに発泡が見られた。比較例6のフィルムは、剥ぎ取り時揮発分および延伸温度が本発明の製造方法で規定する範囲を上回る態様(但し、延伸開始時揮発分は本発明の製造方法で規定する範囲内とした)で製造したものであり、膜厚当たりのRth発現量が小さく、フィルムに発泡が見られた。比較例7〜9のフィルムは、用いたセルロースアシレートのアセチル置換度、プロピオニル置換度およびブチリル置換度の合計が本発明の製造方法で規定する範囲を超える態様で製造したものであり、膜厚当たりのRth発現量が小さかった。
<偏光板試料の作製2>
偏光板試料の作製1と同様に、ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士フイルム社製)を2枚用意し、偏光子を間に挟んで貼り合わせ、TD80UL、偏光子、TD80ULがこの順に貼り合わせてある偏光板を得た。この際、TD80ULの遅相軸が、偏光子の吸収軸と平行になるように貼り付けた。
<偏光板試料の作製3>
偏光板試料の作製1と同様に、ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士フイルム社製)を1枚用意し、偏光子の片面に貼り合わせ、偏光板を得た。この際、TD80ULの遅相軸が、偏光子の吸収軸と平行になるように貼り付けた。
[実施例101、比較例101]
<液晶表示装置の作製1>
VAモードの液晶TV(LCD−40MZW100、三菱(株)製)の表裏の偏光板および位相差板を剥がして、液晶セルとして用いた。
これに対し、<偏光板試料の作製2>で作製した偏光板をフロント側(視認側)に、<偏光板試料の作製1>で作製した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板をリア側(バックライト側)に用いて、下記構成の液晶表示装置を製造した。
具体的には、フロント側(視認側)から順に、外側保護フィルム(フジタックTD80UL);視認側の偏光子;フジタックTD80UL18;液晶セルLC(上記のVA液晶セル);各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム;バックライト側の偏光子;および外側保護フィルム(フジタックTD80UL)をこの順に粘着剤を用いて貼り合わせ、各実施例および比較例の液晶表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の吸収軸が直交するように貼り合わせた。
[実施例102、比較例102]
<液晶表示装置の作製2>
VAモードの液晶TV(LCD−40MZW100、三菱(株)製)の表裏の偏光板および位相差板を剥がして、液晶セルとして用いた。
これに対し、<偏光板試料の作製1>で作製した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板をフロント側(視認側)に、<偏光板試料の作製3>で作製した偏光板をリア側(バックライト側)に用いて、下記構成の液晶表示装置を製造した。
具体的には、フロント側(視認側)から順に、外側保護フィルム(フジタックTD80UL);視認側の偏光子;各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム;液晶セルLC(上記のVA液晶セル);バックライト側の偏光子;および外側保護フィルム(フジタックTD80UL)をこの順に粘着剤を用いて貼り合わせ、各実施例および比較例の液晶表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の吸収軸が直交するように貼り合わせた。
[実施例103、比較例103]
<液晶表示装置の作製3>
VAモードの液晶TV(LCD−40MZW100、三菱(株)製)の表裏の偏光板および位相差板を剥がして、液晶セルとして用いた。
これに対し、<偏光板試料の作製1>で作製した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板をフロント側(視認側)、リア側(バックライト側)の双方に用いて、下記構成の液晶表示装置を製造した。
具体的には、フロント側(視認側)から順に、外側保護フィルム(フジタックTD80UL);視認側の偏光子;各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム;液晶セルLC(上記のVA液晶セル);各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム;バックライト側の偏光子;および外側保護フィルム(フジタックTD80UL)をこの順に粘着剤を用いて貼り合わせ、各実施例および比較例の液晶表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の吸収軸が直交するように貼り合わせた。
<液晶表示装置の評価>
(パネルの色味視野角評価)
上記作製したVAモードの液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast XL88、ELDIM社製)を用いて、暗室内で黒表示時および白表示時の輝度および色度を測定し、黒表示におけるカラーシフトおよびコントラスト比(CR)を算出した。
その結果、本発明の液晶表示装置は、コントラスト比および極角方向のカラーシフト(色味の視野角依存性)がともに良好であり、従来では達成しえなかったコントラスト比と視野角特性との両立ができており、表示特性が明らかに改善されていることが分かった。
1:ステンレス鋼製エンドレスベルト(支持体)
3:剥離ロール
4:テンター
5:乾燥装置
6:搬送ロール
8:巻取ロール
10:ハウジング
11:クリップ
12:レール
A:フィルムの幅保持ゾーン
B:延伸ゾーン
C:延伸状態でのフィルム幅保持ゾーン
D:緩和ゾーン
a:延伸開始点
b:延伸終了点
c:緩和開始点
d:緩和終了点
F:セルロースエステルフィルム
W:ウェブ

Claims (21)

  1. 下記式(A)を満たすセルロースアシレートを含むドープを支持体上に流延してフィルムを形成する工程と、
    前記フィルムを前記支持体から剥離する工程と、
    剥離した前記フィルムを延伸する工程を含み、
    前記フィルムの前記支持体からの剥離時の残留溶媒量を70質量%以上110質量%以下に制御し、
    前記延伸工程を下記式(1)および(2)を満たすように制御することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
    式(1) −0.4S+132℃≦T≦−0.4S+172℃
    式(2) 30質量%≦S≦80質量%
    (式(1)および(2)中、Sは延伸開始時の残留溶媒量(単位:質量%)を表し、Tは延伸雰囲気温度(単位:℃)を表す。)
    式(A) Z>0.8
    (式(A)中、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
  2. 前記セルロースアシレートが下記式(3)〜(6)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
    式(3) 1.0≦X+Y≦2.0
    式(4) 0≦X≦2.0
    式(5) 0≦Y≦2.0
    式(6) 2.9≦X+Y+Z≦3.0
    (式(3)〜(6)中、Xは前記セルロースアシレートのアセチル基の置換度を表し、Yは前記セルロースアシレートのプロピオニル基またはブチリル基の置換度を表し、Zは残水酸基の割合を表す。)
  3. 前記セルロースアシレートが下記式(7)および(8)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
    式(7) 0.1≦X≦2.0
    式(8) 0.1≦Y≦2.0
    (式(7)および(8)中、Xは前記セルロースアシレートのアセチル基の置換度を表し、Yは前記セルロースアシレートのプロピオニル基またはブチリル基の置換度を表す。)
  4. 前記セルロースアシレートが下記式(9)〜(11)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
    式(9) 1.0≦X+Y’≦2.0
    式(10) 2.9≦X+Y’+Z≦3.0
    式(11) 0.1≦Y’≦2.0
    (式(9)〜(11)中、Xは前記セルロースアシレートのアセチル基の置換度を表し、Y’は前記セルロースアシレートのプロピオニル基の置換度を表し、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
  5. 前記ドープが、該ドープ中のセルロースアシレートに対して0.1質量%〜10質量%の下記一般式(15)で表される有機酸を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
    一般式(15)
    X−L−(R1n
    (一般式(15)中、Xは酸解離定数が5.5以下の酸性基を表し、Lは単結合または2価以上の連結基を表し、R1は水素原子、炭素数6〜30のアルキル基、炭素数6〜30の
    アルケニル基、炭素数6〜30のアルキニル基、炭素数6〜30のアリール基または炭素数6〜30の複素環基を表し、さらに置換基を有していてもよい。nはLが単結合の場合は1であり、Lが2価以上の連結基の場合は(Lの価数−1)である。)
  6. 前記一般式(15)におけるXが、カルボキシル基、スルフォン酸基、スルフィン酸基、リン酸基、スルフォンイミド基、アスコルビン酸基を有することを特徴とする請求項5に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  7. 前記一般式(15)におけるLが単結合、あるいは、下記群から得られるユニットまたはこれらのユニットを組み合わせて得られる2価以上の連結基であることを特徴とする請求項5または6に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
    ユニット:−O−、−CO−、−N−(R2)−(但し、前記R2は炭素数1〜5のアルキル基)、−CH(OH)−、−CH2−、−CH=CH−、−SO2−。
  8. 前記一般式(15)で表される有機酸が、多価アルコール1分子に脂肪酸1分子と多価カルボン酸1分子がエステル結合した構造を有しており、多価カルボン酸由来の無置換のカルボキシル基を少なくとも1つ有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  9. 前記ドープが、可塑剤を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  10. 前記可塑剤が、芳香族ジカルボン酸残基または脂肪族ジカルボン酸残基の少なくとも一方と、ジオール残基とを含む重縮合エステルであることを特徴とする請求項9に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  11. 前記可塑剤が糖エステル化合物であることを特徴とする請求項9または10に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  12. 前記糖エステル化合物が、ヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を1個〜12個含むことを特徴とする請求項11に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
  14. 60℃、相対湿度90%の環境下で24時間経時させた前後における、フィルム搬送方向およびそれに直交する方向の寸法変化率がいずれも−1.0%〜+0.5%であり、
    フィルム膜厚方向のレターデーションRth[nm]と膜厚d[μm]が下記式(12)を満たすことを特徴とする請求項13に記載のセルロースアシレートフィルム。
    式(12) 2.5×10-3≦Rth/d
  15. 下記式(A)を満たすセルロースアシレートを含み、
    60℃、相対湿度90%の環境下で24時間経時させた前後における、フィルム搬送方向およびそれに直交する方向の寸法変化率がいずれも−1.0%〜+0.5%であり、
    フィルム膜厚方向のレターデーションRth[nm]と膜厚d[μm]が下記式(12)を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
    式(12) 2.5×10-3≦Rth/d
    式(A) Z>0.8
    (式(A)中、Zは前記セルロースアシレートの残水酸基の割合を表す。)
  16. 測定波長590nmにおいて、フィルム面内方向のレターデーションReが30nm≦Re≦100nm、かつ、フィルム膜厚方向のレターデーションRthが90nm≦Rth≦300nmを満たすことを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  17. フィルム膜厚方向のレターデーションRth[nm]と膜厚d[μm]が下記式(13)を満たすことを特徴とする請求項13〜16のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
    式(13) 3.5×10-3<Rth/d<6×10-3
  18. 内部ヘイズが0.1%以下であることを特徴とする請求項13〜17のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  19. 請求項13〜18のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1つ有することを特徴とする偏光板。
  20. 請求項13〜18のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1つ有することを特徴とする液晶表示装置。
  21. 液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有し、
    前記偏光板の少なくとも一方が請求項19に記載の偏光板であり、
    前記液晶セルがIPS、OCBまたはVAモードであることを特徴とする液晶表示装置。
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