JP2011158839A - セルロースアシレート積層フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

セルロースアシレート積層フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2011158839A
JP2011158839A JP2010022434A JP2010022434A JP2011158839A JP 2011158839 A JP2011158839 A JP 2011158839A JP 2010022434 A JP2010022434 A JP 2010022434A JP 2010022434 A JP2010022434 A JP 2010022434A JP 2011158839 A JP2011158839 A JP 2011158839A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cellulose acylate
film
layer
group
laminated film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2010022434A
Other languages
English (en)
Inventor
Ryoko Watarino
亮子 渡野
Takumi Ando
工 安藤
Naoyuki Nishikawa
尚之 西川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2010022434A priority Critical patent/JP2011158839A/ja
Publication of JP2011158839A publication Critical patent/JP2011158839A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Polarising Elements (AREA)
  • Liquid Crystal (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

【課題】面内方向および膜厚方向のレターデーション値の発現性が高く、支持体からの剥離性が良好なセルロースアシレート積層フィルムの提供。
【解決手段】少なくとも1層の下記式(1)および(2)を満たすセルロースアシレートAを含むA層と、少なくとも1層の下記式(3)および(4)を満たすセルロースアシレートBを含むB層とを有し、少なくとも一方の表層が前記B層であるセルロースアシレート積層フィルム。
式(1) 0.5≦Z1
式(2) 2.9≦X1+Y1+Z1≦3.0
(式(1)および(2)中、X1はアセチル基の置換度を表し、Y1はプロピオニル基の置換度を表し、Z1は残水酸基の割合を表し、X1とY1はいずれも0ではない。)
式(3) Z2≦0.4
式(4) 2.9≦X2+Y2+Z2≦3.0
(式(3)および(4)中、X2はアセチル基の置換度を表し、Y2はプロピオニル基の置換度を表し、Z2は残水酸基の割合を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースアシレート積層フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置に関する。より詳しくは、低置換度のセルロースアセテート・プロピオネートと高置換度のセルロースアシレートを共流延した積層フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置に関する。
液晶表示装置の視野角や色味変化改良のために、特定のレターデーション値を有する位相差フィルムおよびその組み合わせが用いられている。また、近年用いられているVA方式の液晶表示装置では、高いレターデーション値位相差フィルムが要求されている。
セルロースアシレートは位相差フィルムに適した材料として用いられるが、高いレターデーション値を発現させるためには、アシル置換度を下げて、固有複屈折を高める必要がある。しかしながら、アシル置換度を低減するとセルロースアシレートフィルム製膜時に各種の問題が生じるため、従来広く実用に供することはできなかった。具体的には、例えばアシル置換度を低減したセルロースアセテートを溶液流延すると、支持体からの剥離性が悪化する傾向にあることが知られている。
一方、写真感光材料分野において、アシル置換度を低減したセルロースアシレートフィルムの剥離性を改良する方法として、共流延法により積層フィルムを製造することが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、綿花から調製した不純物が比較的少ないセルローストリアセテートを含むドープおよびパルプから調製したセルローストリアセテートを含むドープを、綿花から調製したセルローストリアセテートを含むドープが流延用支持体に直接接するように流延することを特徴とするセルローストリアセテート積層フィルムの製造方法が提案されている。特許文献1では共流延法を用いることで、支持体側に綿花から製造した剥離力の小さなセルローストリアセテート層を設けることにより、剥離性を改良できることを開示している。しかしながら、特許文献1ではコア層として不純物が比較的多いこと以外は特徴がないパルプから製造したセルローストリアセテートを用いており、低置換度のセルロースアシレートをコア層に用いることは示唆されていない。
さらに特許文献2では、置換度2.7以下のセルロースアセテートからなるコア部分を有し、該コア部分の少なくとも片面に、0.5μm〜15μmの膜厚で且つ置換度2.8以上のセルロースアセテートからなる表層を有することを特徴とするセルロースアセテート積層フィルムが提案されている。該文献は、このような置換度の異なるセルロースアシレートを共流延する構成とすることで、フィルム内に残留する溶剤成分を減少させることができることを開示している。しかしながら、位相差フィルムとして必要な光学特性を発現させるために前記積層フィルムを延伸することや、得られたフィルムの光学特性に関しては全く言及していない。
このようにセルロースアシレートの中で最も広く用いられていたのは、セルロースアセテート(特にセルローストリアセテート(以下、TACとも言う))であった。これに対し、セルロースアセテート・プロピオネート(以下、CAPとも言う)は、TACと比較して、湿度変化による光学特性の変動が小さいことや、有機溶媒への溶解性が高いことから近年では好適に用いられてきている。
例えば、特許文献3では、低アシル置換度のCAPを用いることで、高価な光学発現剤を用いずに、光学発現性の高い、単層の位相差フィルムを作製できることが開示されている。しかしながら、同文献では支持体からの剥離性については検討されていなかった。また、同文献には単層のフィルムを製造した態様しか開示されておらず、セルロースアシレートを積層させたフィルムは開示も示唆もされていなかった。
特開平6−134933号公報 特開平8−207210号公報 米国公開US 2009/0096962 A1号公報
本発明者らが特許文献3に記載の低アシル置換度のCAPを用いたフィルムを製造してみたところ、流延時における支持体からの剥離性が悪く、剥離が困難であり、アシル置換度を低減させた場合の剥離性の悪化がCAPの場合にも生じることがわかった。また、さらに詳細に検討したところ、剥離が可能な場合であっても、フィルム製膜方向と直交したスジ状のムラが支持体からの剥離に起因して発生したりすることがわかった。
本発明は上記の近年求められている要求を満たす位相差フィルムを提供することを目的とするものである。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、面内方向および膜厚方向のレターデーション値の発現性が高く、支持体との剥離性が良好なセルロースアシレート積層フィルムを提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アシル基置換度が高く水酸基が少ない高置換度セルロースアシレートを溶液流延により製膜する際の支持体側の外層とし、低置換度CAPを溶液流延のときに支持体に直接接しないようにすることで、流延フィルムと支持体との間の相互作用を抑えつつ、低置換度CAPの光学特性を利用できることを見出すに至った。すなわち、下記セルロースアシレート積層フィルムが上記課題を解決できることを見出し、以下に記載する本発明を完成するに至った。
[1] 少なくとも1層の下記式(1)および(2)を満たすセルロースアシレートAを含むA層と、少なくとも1層の下記式(3)および(4)を満たすセルロースアシレートBを含むB層とを有し、少なくとも一方の表層が前記B層であることを特徴とするセルロースアシレート積層フィルム。
式(1) 0.5≦Z1
式(2) 2.9≦X1+Y1+Z1≦3.0
(式(1)および(2)中、X1はアセチル基の置換度を表し、Y1はプロピオニル基の置換度を表し、Z1は残水酸基の割合を表し、X1とY1はいずれも0ではない。)
式(3) Z2≦0.4
式(4) 2.9≦X2+Y2+Z2≦3.0
(式(3)および(4)中、X2はアセチル基の置換度を表し、Y2はプロピオニル基の置換度を表し、Z2は残水酸基の割合を表す。)
[2] 前記A層または前記B層の少なくとも一層が可塑剤を含むことを特徴とする[1]に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
[3] 前記可塑剤が、芳香族ジカルボン酸残基または脂肪族ジカルボン酸残基の少なくとも一方と、ジオール残基とを含む重縮合エステルであることを特徴とする[2]に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
[4] 前記可塑剤が糖エステル化合物であることを特徴とする[2]に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
[5] 前記糖エステル化合物が、ヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を1個〜12個含むことを特徴とする[4]に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
[6] 両方の表層が前記B層であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
[7] 下記式(5)〜式(7)を満たすことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
式(5) 28μm≦dA≦98μm
式(6) 1μm≦dB≦10μm
式(7) 30μm≦ΣdA+ΣdB≦100μm
(式(5)〜(7)中、dAは前記A層の厚みを表し、dBは前記B層の厚みを表し、ΣdAは全ての前記A層の合計の厚みを表し、ΣdBは全ての前記A層の合計の厚みを表す。)
[8] 測定波長590nmにおいて、面内方向のレターデーションReが30nm≦Re≦100nmであり、かつ、膜厚方向のレターデーションRthが90nm≦Rth≦300nmであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
[9] 内部ヘイズが0.2%以下であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
[10] 下記式(1)および(2)を満たすセルロースアシレートAを含むセルロースアシレート溶液aと、下記式(3)および(4)を満たすセルロースアシレートBを含むセルロースアシレート溶液bとを、前記セルロースアシレート溶液bが支持体に接するように支持体上に少なくとも一層ずつ逐次流延または同時共流延して積層フィルムを製膜する工程と、製膜した前記積層フィルムを延伸する工程とを含むことを特徴とするセルロースアシレート積層フィルムの製造方法。
式(1) 0.5≦Z1
式(2) 2.9≦X1+Y1+Z1≦3.0
(式(1)および(2)中、X1はアセチル基の置換度を表し、Y1はプロピオニル基の置換度を表し、Z1は残水酸基の割合を表し、X1とY1はいずれも0ではない。)
式(3) Z2≦0.4
式(4) 2.9≦X2+Y2+Z2≦3.0
(式(3)および(4)中、X2はアセチル基の置換度を表し、Y2はプロピオニル基の置換度を表し、Z2は残水酸基の割合を表す。)
[11] 前記セルロースアシレート溶液aと、前記セルロースアシレート溶液bとを同時共流延することを特徴とする[10]に記載のセルロースアシレート積層フィルムの製造方法。
[12] 前記支持体側から順に、前記セルロースアシレート溶液bと、前記セルロースアシレート溶液aと、前記セルロースアシレート溶液bとを支持体上に同時共流延することを特徴とする[10]または[11]に記載のセルロースアシレート積層フィルムの製造方法。
[13] [10]〜[12]のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするセルロースアシレート積層フィルム。
[14] [1]〜[9]および[13]のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルムを少なくとも1つ有することを特徴とする偏光板。
[15] [1]〜[9]および[13]のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルムを少なくとも1つ有することを特徴とする液晶表示装置。
[16] 液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が[14]に記載の偏光板であることを特徴とするIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置。
本発明によれば、従来のセルロースアシレート系フィルムでは実現できなかった広い光学特性を有するセルロースアシレート積層フィルムを提供することができる。また、低置換度のセルロースアシレートフィルムを溶液流延、延伸できるセルロースアシレート積層フィルムを提供することができる。剥離性を改良することにより、剥離工程に起因する製膜不良、特にフィルム製膜方向と直交したスジ状のムラを劇的に改良することができる。このようなフィルムや、該フィルムを用いた偏光板は液晶表示装置に好ましく用いることができ、特にVA用液晶表示装置に好ましく用いることができる。
本発明のVA型液晶表示装置の一例の断面模式図である。 本発明の作用を説明するために用いた模式図である。 流延ダイ近傍の一例を示す概略図である。 本発明に関わる共流延の一例を示す概略図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書中において、「コア層」とは最も膜厚が厚い層のことをいい、「表層」とは、コア層よりも膜厚が薄い層のことを言う。また、表層のうち、溶液流延時に支持体に接している側の層をバンド面側の表層と言い、支持体とは反対側の層をエア面側の表層と言う。
また、本明細書および図面において、「表層」と言う場合は、「バンド面側の表層」および「エア面側の表層」を共に指す。また、前記バンド面側という語句は、本発明の好ましい態様であるバンドを用いた溶液流延するときの態様を代表して説明するためのものであり、本発明の製造方法では、支持体としてバンドの他、ドラムやその他の支持体を用いることができる。
[セルロースアシレート積層フィルム]
本発明のセルロースアシレート積層フィルム(以下、本発明のフィルムともいう)は、少なくとも1層の下記式(1)および(2)を満たすセルロースアシレートAを含むA層と、少なくとも1層の下記式(3)および(4)を満たすセルロースアシレートBを含むB層とを有し、少なくとも一方の表層が前記B層であることを特徴とする。
式(1) 0.5≦Z1
式(2) 2.9≦X1+Y1+Z1≦3.0
(式(1)および(2)中、X1はアセチル基の置換度を表し、Y1はプロピオニル基の置換度を表し、Z1は残水酸基の割合を表し、X1とY1はいずれも0ではない。)
式(3) Z2≦0.4
式(4) 2.9≦X2+Y2+Z2≦3.0
(式(3)および(4)中、X2はアセチル基の置換度を表し、Y2はプロピオニル基の置換度を表し、Z2は残水酸基の割合を表す。)
以下、本発明のフィルムの特徴と好ましい態様について説明する。
(セルロースアシレート)
本発明に用いられるセルロースアシレート樹脂は、アシル基の総置換度が前記式(1)〜(4)を満たすものであれば特に定めるものではない。原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
まず、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がアシル化している割合(100%のアシル化は置換度3)を意味する。また、残水酸基の割合とは、アシル化されずに残っている水酸基の割合(未置換のセルロースは3)を意味する。
本発明のフィルムは、前記A層に用いる前記セルロースアシレートAが下記式(1)および(2)を満たす。
式(1) 0.5≦Z1
式(2) 2.9≦X1+Y1+Z1≦3.0
(式(1)および(2)中、X1はアセチル基の置換度を表し、Y1はプロピオニル基の置換度を表し、Z1は残水酸基の割合を表し、X1とY1はいずれも0ではない。)
前記Z1は、0.5≦Z1を満たすことが好ましく、0.8≦Z1を満たすことがより好ましく、1.05≦Z1を満たすことが特に好ましい。
また、式(2)中、X1+Y1+Z1の合計は、2.9≦X1+Y1+Z1≦3.0を満たすことが好ましく、2.95≦X1+Y1+Z1≦3.0を満たすことがより好ましく、X1+Y1+Z1=3.0を満たすことがより好ましい。すなわち、本発明のセルロースアシレートAは、アセチル基とプロピオニル基と水酸基のみを有することが好ましい。
前記X1は、0<X1≦1.5を満たすことが好ましく、0≦X1≦1.0を満たすことがより好ましく、0≦X1≦0.6を満たすことが特に好ましい。
前記Y1は、0<Y1≦2.5を満たすことが好ましく、1.0≦Y1≦2.5を満たすことがより好ましく、1.5≦Y1≦2.3を満たすことが特に好ましい。
本発明のフィルムは、前記B層に用いる前記セルロースアシレートBが下記式(3)および(4)を満たす。
式(3) Z2≦0.4
式(4) 2.9≦X2+Y2+Z2≦3.0
(式(3)および(4)中、X2はアセチル基の置換度を表し、Y2はプロピオニル基の置換度を表し、Z2は残水酸基の割合を表す。)
前記Z2は、Z2≦0.4を満たすことが好ましく、Z2≦0.3を満たすことがより好ましく、Z2≦0.2を満たすことが特に好ましい。
また、式(4)中、X2+Y2+Z2の合計は、2.9≦X2+Y2+Z2≦3.0を満たすことが好ましく、2.95≦X2+Y2+Z2≦3.0を満たすことがより好ましく、X2+Y2+Z2=3.0を満たすことがより好ましい。
前記X2は、0≦X2≦2.95を満たすことが好ましく、0.1≦X2≦2.9を満たすことがより好ましく、0.3≦X2≦2.85を満たすことが特に好ましい。
前記Y2は、0≦Y2≦2.95を満たすことが好ましく、0.1≦Y2≦2.8を満たすことがより好ましく、0.3≦Y2≦2.6を満たすことが特に好ましい。
本発明におけるセルロースアシレートは、アセチル基、プロピオニル基、水酸基以外に、炭素数2以上のアシル基を含んでもよい。炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、ブチリル基(以下、ブタノイル基とも言う)、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはブタノイル基である。アセチル基、プロピオニル基、以外のアシル基の置換度は0〜0.1が好ましく、置換度0〜0.05がより好ましく、置換度0、すなわちアセチル基、プロピオニル基、以外のアシル基を含まない場合が最も好ましい。
セルロ−スのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
本発明に用いるセルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
本発明のセルロースアシレートAとしてはセルロースアセテート・プロピオネートが最も好ましく用いられ、公知の方法にてセルロースをアシル化することにより製造することができる。セルロースには、例えば解砕パルプのような天然由来のセルロース原料を用いることができる。アシル化は、例えば、硫酸などの酸触媒下において、無水酢酸と無水プロピオン酸を混合または逐次添加により反応させる方法、酢酸とプロピオン酸の混合酸無水物を用いる方法、酢酸と無水プロピオン酸を原料として反応系内で混合酸無水物を生成させてセルロースと反応させる方法などを用いることができ、その組成比は目的とする混合エステルの置換比に応じて決定することができる。また、必要に応じて、さらに加水分解を施して目的とする置換度に調整することや、目的より低置換度のセルロースアセテート・プロピオネートを一旦合成し、さらに、酸無水物や酸ハライドを用いて残存する水酸基(残水酸基)をさらに置換度の調整を施して目的とする置換度に調整することが適用される。
ができる。
セルロースアセテート・プロピオネートの製造法の例としては、例えば、特許第3870944号、特開2007−138141号公報、米国特許公開2009/0096962A1などに記載がある。
<添加剤>
本発明のフィルム中には、重縮合エステル、糖エステル化合物、リン酸エステルなどの可塑剤;レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤);マット剤などの添加剤を加えることもできる。また、紫外線吸収剤や酸化防止剤を加えることもできる。
(可塑剤)
本発明のフィルムは、前記A層または前記B層の少なくとも一層が可塑剤を含むことが好ましい。
(1)重縮合エステル系可塑剤
本発明のフィルムは、前記可塑剤が、重縮合エステル(以下、縮合エステル系可塑剤とも言う)であることが好ましい。前記重縮合エステルは、その化合物中に繰り返し単位を有するものである。前記重縮合エステル系可塑剤は、溶液流延法において、溶媒の揮発速度を速める機能や、残留溶媒量を低減する機能も有する。さらに、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点で、有用な効果を示す。
以下、本発明に用いられる重縮合エステル系可塑剤について、その具体例を挙げながら詳細に説明するが、本発明で用いられる重縮合エステル系可塑剤がこれらのものに限定されるわけでないことは言うまでもない。
前記重縮合エステル系可塑剤としては、前記重縮合エステルおよびその2以上の共重合体であることが好ましく、芳香族ジカルボン酸残基または脂肪族ジカルボン酸残基の少なくとも一方と、ジオール残基とを含む重縮合エステルであることがより好ましい。
前記重縮合エステル系可塑剤に含まれる芳香族ジカルボン酸残基は、炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましく、炭素数6〜16の芳香族ジカルボン酸残基であることがより好ましく、炭素数6〜12の芳香族ジカルボン酸残基であることが特に好ましい。
本明細書中、前記芳香族ジカルボン酸残基とは、少なくとも1つのアリーレン基を含むジカルボン酸残基のことを言う。すなわち、本明細書中における前記芳香族ジカルボン酸残基には、−OC−Ar−CO−残基の他に、例えば、−OC−Ar’−L−CO−や、−OC−L’−Ar’’−CO−や、−OC−L’’−Ar’’’−L’’−CO−等の構造を有するジカルボン酸残基(前記Ar、Ar’、Ar’’およびAr’’’はそれぞれ独立にアリーレン基を表し、前記L、L’およびL’’はそれぞれ独立にアリーレン基以外の2価の連結基を表す)も含まれる。前記アリーレン基以外の2価の連結基としては、例えば、脂肪族基や原子連結基などを挙げることができ、具体的にはアルキレン基、アルキレンオキシ基、酸素原子、硫黄原子などを挙げることができる。
その中でも、前記芳香族ジカルボン酸残基は、セルロースアシレートとの相溶性の観点から、−OC−Ar−CO−残基の構造であることが好ましい。
前記Arは、炭素数6〜16のアリーレン基であることが好ましく、炭素数6〜12のアリーレン基であることがより好ましく、フェニレン基またはナフチレン基であることが特に好ましく、フェニレン基であることがより特に好ましい。また、前記Arはさらに置換基を有していても、有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましく、該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、アシル基、カルボニル基などを挙げることができる。
前記芳香族ジカルボン酸残基の具体例としては、フタル酸残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基、1,5−ナフタレンジカルボン酸残基、1,4−ナフタレンジカルボン酸残基、1,8−ナフタレンジカルボン酸残基、2,8−ナフタレンジカルボン酸残基又は2,6−ナフタレンジカルボン酸残基等を挙げることができる。これらの例の中でもフタル酸残基、テレフタル酸残基、2,6−ナフタレンジカルボン酸残基が好ましく、フタル酸残基およびテレフタル酸残基がより好ましく、テレフタル酸残基がさらに好ましい。
前記重縮合エステルには、混合に用いた芳香族ジカルボン酸により芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
前記重縮合エステルが、芳香族ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含む場合、よりセルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいセルロースアシレートフィルムとすることができる。
また、前記重縮合エステル中には芳香族ジカルボン酸残基が1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。前記重縮合エステル中に、芳香族ジカルボン酸残基が2種含まれる場合は、フタル酸残基とテレフタル酸残基が含まれていることが好ましい。
前記ポリエステル系ポリマーに使用される脂肪族ジカルボン酸は、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基であることがより好ましい。
前記脂肪族ジカルボン酸残基の具体例としては、例えば、シュウ酸残基、マロン酸残基、コハク酸残基、マレイン酸残基、フマル酸残基、グルタル酸残基、アジピン酸残基、ピメリン酸残基、スベリン酸残基、アゼライン酸残基、セバシン酸残基、ドデカンジカルボン酸残基または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基等が挙げられる。
前記重縮合エステルには、混合に用いた脂肪族ジカルボン酸より脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
前記脂肪族ジカルボン酸残基は、平均炭素数が2.5〜10.0であることが好ましく、2.5〜8.0であることがより好ましく、2.5〜7.0であることがさらに好ましい。脂肪族ジオールの平均炭素数が7.0以下であれば化合物の加熱減量が低減でき、セルロースアシレートウェブ乾燥時のブリードアウトによる工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生を防ぐことができる。また、脂肪族ジオールの平均炭素数が2.5以上であれば相溶性に優れ、重縮合エステルの析出が起き難く好ましい。
具体的には、前記重縮合エステルは、前記脂肪族ジカルボン酸残基を含む場合はコハク酸残基またはアジピン酸残基を含むことが好ましく、コハク酸残基を有することがより好ましい。
前記重縮合エステル中には、脂肪族ジカルボン酸残基が1種のみ含まれていても、2種以上を含まれていてもよい。前記重縮合エステル中に、脂肪族ジカルボン酸残基が2種含まれる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基が含まれていることが好ましい。前記重縮合エステル中に、脂肪族ジカルボン酸残基が1種含まれる場合は、コハク酸残基が含まれていることが好ましい。このような態様とすることで、ジオール残基の平均炭素数を前記好ましい範囲に調整することができ、セルロースアシレートとの相溶性が良好となる。
前記重縮合エステルには、ジオール残基として芳香族ジオール残基、脂肪族ジオール残基およびアルキルエーテルジオールを用いることができる。
前記重縮合エステルに利用されるジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれるものであることが好ましい。
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
前記重縮合エステルは、ジオール残基として、脂肪族ジオール残基の他に、芳香族ジオール残基を含んでいてもよい。
前記芳香族ジオール残基の具体例としては、例えば、ビスフェノールA残基、1,2−ヒドロキシベンゼン残基、1,3−ヒドロキシベンゼン残基、1,4−ヒドロキシベンゼン残基、1,4−ベンゼンジメタノール残基等が挙げられる。
前記重縮合エステル中には、脂肪族ジオール残基が1種のみ含まれていても、2種以上を含まれていてもよい。
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics)レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
本発明においては、特に前記重縮合エステル系可塑剤の末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止してもよい。末端を疎水性官能基(モノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類など)で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示す。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。
具体的には、前記重縮合エステル系可塑剤の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基またはモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
前記重縮合エステル系可塑剤の含量は、セルロースアシレート樹脂に対して、1〜35質量%であり、3〜30質量%であることが好ましく5〜20質量%であることがさらに好ましい。添加量を1質量%以下では、温度湿度変化に対応できず、添加量を30質量%以上ではフィルムが白化してしまう。さらに、物理的特性も劣るものとなってしまう。
前記重縮合エステルの数平均分子量は500〜2000であることが好ましく、700〜1500であることがより好ましく、700〜1200であることが特に好ましい。重縮合エステルの数平均分子量は500以上であることが、光学発現性向上の観点から好ましい。また、2000以下であればセルロースアシレートとの相溶性が高くなり、製膜時及び加熱延伸時のブリードアウトが生じにくくなる。
本発明の重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。また、末端が封止のないポリエステルポリオールの場合、重量あたりの水酸基の量(以下、水酸基価)により算出することもできる。水酸基価は、ポリエステルポリオールをアセチル化した後、過剰の酢酸の中和に必要な水酸化カリウムの量(mg)を測定する。
なお、本発明に係る重縮合エステルは、可塑剤として用いることができる。
本発明で使用される前記重縮合エステルに含まれるジカルボン酸残基、ジオール残基、各残基の種類及び比率はH−NMRを用いて通常の方法で測定することができる。通常、重クロロホルムを溶媒として用いることができる。
前記重縮合エステルの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができ、通常、ポリスチレンを標準資料として用いることができる。
前記重縮合エステルの水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K3342(廃止)に記載の無水酢酸法当を適用できる。重縮合体がポリエステルポリオールである場合は、水酸基価が50〜190であることが好ましく、50〜130であることがさらに好ましい。
かかる前記重縮合エステル系可塑剤の合成は、常法により上記ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらの重縮合エステル系可塑剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
以下の表1に本発明にかかる重縮合エステルの具体例を記すが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
Figure 2011158839
(2) 糖エステル化合物
前記可塑剤は、糖エステル化合物であることも好ましい。
前記糖エステル化合物をセルロースアシレートフィルムに添加することにより、光学特性の発現性を損なわず、かつ延伸工程前に熱処理を行わない場合でも全へイズおよび内部ヘイズを小さくすることができる。さらに、本発明のセルロースアシレートフィルムを液晶表示装置に用いることにより、正面コントラストを大幅に改良できる。
−糖残基−
前記糖エステル化合物とは、該化合物を構成する単糖または多糖中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基)の少なくとも1つと、少なくとも1種の置換基とがエステル結合されている化合物のことを言う。すなわち、ここで言う糖エステル化合物には広義の糖誘導体類も含まれ、例えばグルコン酸のような糖残基を構造として含む化合物も含まれる。すなわち、前記糖エステル化合物には、グルコースとカルボン酸のエステル体も、グルコン酸とアルコールのエステル体も含まれる。
前記糖エステル化合物を構成する単糖または多糖中の置換可能な基は、ヒドロキシル基であることが好ましい。
前記糖エステル化合物中には、糖エステル化合物を構成する単糖または多糖由来の構造(以下、糖残基とも言う)が含まれる。前記糖残基の単糖当たりの構造を、糖エステル化合物の構造単位と言う。前記糖エステル化合物の構造単位は、ピラノース構造単位またはフラノース構造単位を含むことが好ましく、全ての糖残基がピラノース構造単位またはフラノース構造単位であることがより好ましい。また、前記糖エステルが多糖から構成される場合は、ピラノース構造単位またはフラノース構造単位をともに含むことが好ましい。
前記糖エステル化合物の糖残基は、5単糖由来であっても6単糖由来であってもよいが、6単糖由来であることが好ましい。
前記糖エステル化合物中に含まれる構造単位の数は、1〜12であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1または2であることが特に好ましい。
本発明では、前記糖エステル化合物はヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を1個〜12個含む糖エステル化合物であることがより好ましく、ヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を1または2個含む糖エステル化合物であることがより好ましい。
前記単糖または2〜12個の単糖単位を含む糖類の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
−置換基の構造−
本発明に用いられる前記糖エステル化合物は、用いられる置換基を含め、下記一般式(1)で表される構造を有することがより好ましい。
一般式(1) (OH)p−G−(L1−R11q(O−R12r
一般式(1)中、Gは糖残基を表し、L1は−O−、−CO−、−NR13−のいずれか一つを表し、R11は水素原子または一価の置換基を表し、R12はエステル結合で結合した一価の置換基を表す。p、qおよびrはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、p+q+rは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシル基の数と等しい。
前記Gの好ましい範囲は、前記糖残基の好ましい範囲と同様である。
前記L1は、−O−または−CO−であることが好ましく、−O−であることがより好ましい。前記L1が−O−である場合は、エーテル結合またはエステル結合由来の連結基であることが特に好ましく、エステル結合由来の連結基であることがより特に好ましい。
また、前記L1が複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
11およびR12の少なくとも一方は芳香環を有することが好ましい。
特に、前記L1が−O−である場合(すなわち前記糖エステル化合物中のヒドロキシル基にR11、R12が置換している場合)、前記R11、R12およびR13は置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアリール基、あるいは、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアミノ基の中から選択されることが好ましく、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアルキル基、あるいは置換または無置換のアリール基であることがより好ましく、無置換のアシル基、置換または無置換のアルキル基、あるいは、無置換のアリール基であることが特に好ましい。
また、前記R11、R12およびR13がそれぞれ複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記pは0以上の整数を表し、好ましい範囲は後述する単糖ユニット当たりのヒドロキシル基の数の好ましい範囲と同様である。
前記rは前記Gに含まれるピラノース構造単位またはフラノース構造単位の数よりも大きい数を表すことが好ましい。
前記qは0であることが好ましい。
また、p+q+rは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシル基の数と等しいため、前記p、qおよびrの上限値は前記Gの構造に応じて一意に決定される。
前記糖エステル化合物の置換基の好ましい例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−シアノエチル基、ベンジル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアシル基、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、トルイル基、フタリル基など)、アミド基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアミド、例えばホルムアミド基、アセトアミド基など)、イミド基(好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは炭素数4〜8のアミド基、例えば、スクシイミド基、フタルイミド基など)を挙げることができる。その中でも、アルキル基またはアシル基がより好ましく、メチル基、アセチル基、ベンゾイル基がより好ましく、さらにその中でもベンゾイル基が特に好ましい。
また、前記糖エステル化合物中の構造単位当たりのヒドロキシル基の数(以下、ヒドロキシル基含率とも言う)は、3以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。ヒドロキシル基含率を前記範囲に制御することにより、高温高湿経時における糖エステル化合物の偏光子層への移動およびPVA−ヨウ素錯体の破壊を抑制でき、高温高湿経時における偏光子性能の劣化を抑制する点から好ましい。
前記糖エステル化合物の入手方法としては、市販品として(株)東京化成製、アルドリッチ製等から商業的に入手可能であり、もしくは市販の炭水化物に対して既知のエステル誘導体化法(例えば、特開平8−245678号公報に記載の方法)を行うことにより合成可能である。
前記糖エステル化合物は、数平均分子量が、好ましくは200〜3500、より好ましくは200〜3000、特に好ましくは250〜2000の範囲が好適である。
以下に、本発明で好ましく用いることができる前記糖エステル化合物の具体例を挙げるが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
糖エステル(1):
Figure 2011158839
糖エステル(2):Acはアセチル基を表す。
Figure 2011158839
糖エステル(3):
Figure 2011158839
糖エステル(4):Bzは、ベンゾイル基を表す。
Figure 2011158839
以下の構造式中、Rはそれぞれ独立に任意の置換基を表し、複数のRは同一であっても、異なっていてもよい。ClogP値とは、1−オクタノールと水への分配係数Pの常用対数logPを計算によって求めた値である。ClogP値の計算には、Daylight Chemical Information Systems社のシステム:PCModelsに組み込まれたCLOGPプログラムを用いた。
Figure 2011158839
Figure 2011158839
Figure 2011158839
Figure 2011158839
Figure 2011158839
Figure 2011158839
Figure 2011158839
Figure 2011158839
前記糖エステル化合物は、セルロースアシレートに対し2〜30質量%含有することが好ましく、5〜20質量%含有することがより好ましく、5〜15質量%含有することが特に好ましい。
また、前記縮合エステル系可塑剤を前記糖エステル化合物と併用する場合は、ポリエステル系可塑剤の添加量(質量部)に対する前記糖エステル化合物の添加量(質量部)は、1〜5倍(質量比)加えることが好ましく、2〜4倍(質量比)加えることがより好ましい。
(3)リン酸エステルまたはカルボン酸エステル
前記可塑剤として、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルも用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
(レターデーション発現剤)
本発明のフィルムは、レターデーション発現剤を含んでいても含んでいなくても所望の面内方向のレターデーションを発現させることができるが、さらにレターデーション発現剤を含んでいてもよい。レターデーション発現剤を採用することにより、低延伸倍率で高いRe発現性を得られる。レターデーション発現剤の種類としては、特に定めるものではないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、前記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。上記棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
レターデーション発現剤としては、例えば特開2004−50516号公報、特開2007−86748号公報に記載されている化合物を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
円盤状化合物としては、例えば欧州特許出願公開第0911656A2号明細書に記載の化合物、特開2003−344655号公報に記載のトリアジン化合物、特開2008−150592号公報[0097]〜[0108]に記載されるトリフェニレン化合物も好ましく用いることもできる。
円盤状化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法、特開2005−134884号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。
前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができ、例えば特開2008−150592号公報[0110]〜[0127]に記載される棒状化合物を好ましく用いることができる。
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより長波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J. Am. Chem. Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J. Org. Chem., 40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
(剥離促進剤)
本発明のフィルムには、剥離促進剤を用いてもよい。剥離促進剤は、例えば、0.001〜1重量%の割合で含めることができ、0.5重量%以下の添加であれば剥離剤のフィルムからの分離等が発生し難いため好ましく、0.005重量%以上であれば所望の剥離低減効果を得ることができるため好ましいため、0.005〜0.5重量%の割合で含めることが好ましく、0.01〜0.3重量%の割合で含めることがより好ましい。剥離促進剤としては、公知のものが採用でき、有機、無機の酸性化合物、界面活性剤、キレート剤等を使用することができる。中でも、多価カルボン酸およびそのエステルが効果的であり、特に、クエン酸のエチルエステル類が効果的に使用することができる。
剥離促進剤を用いる場合は、前記バンド面側のB層に剥離促進剤を含むことが好ましい。
(マット剤)
ハンドリングされる際に、傷が付いたり搬送性が悪化したりすることを防止するために、微粒子を添加することが一般に行われる。それらは、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて、従来から利用されている。それらは、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されず、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
前記無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。前記二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
前記有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
これらのマット剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されずいずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましく、また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。なお、インライン添加に関しては、濃度ムラ、粒子の凝集等をなくすために、特開2003−053752号には、セルロースアシレートフィルムの製造方法において、主原料ドープに異なる組成の添加液を混合する添加ノズル先端とインラインミキサーの始端部の距離Lが、主原料配管内径dの5倍以下とする事で、濃度ムラ、マット粒子等の凝集をなくす発明が記載されている。さらに好ましい態様として、主原料ドープと異なる組成の添加液供給ノズルの先端開口部とインラインミキサーの始端部との間の距離(L)が、供給ノズル先端開口部の内径(d)の10倍以下とし、インラインミキサーが、静的無攪拌型管内混合器または動的攪拌型管内混合器であることが記載されている。さらに具体的には、セルロースアシレートフィルム主原料ドープ/インライン添加液の流量比は、10/1〜500/1、好ましくは50/1〜200/1であることが開示されている。さらに、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で透明性に優れた位相差フィルムを目的とした発明の特開2003−014933号にも、添加剤を添加する方法として、溶解釜中に添加してもよいし、溶解釜〜共流延ダイまでの間で添加剤や添加剤を溶解または分散した溶液を、送液中のドープに添加してもよいが、後者の場合は混合性を高めるため、スタチックミキサー等の混合手段を設けることが好ましいことが記載されている。
(内部ヘイズ)
内部ヘイズを低くすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、液晶表示装置に組み込んだときの正面コントラストを高められ、光学フィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。ヘイズの測定は、ヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定することができる。本発明のフィルムの内部へイズは、0.2%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましく、0.07%以下であることが特に好ましく、0.05%以下であることがより特に好ましく、0.03%未満であることがさらにより特に好ましい。本発明において内部へイズの測定は、以下の方法を用いて行った。
フィルムの表面及び裏面に流動パラフィンを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S9111、MATAUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間に流動パラフィンのみを挟んで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hi)として算出した。
(Re、Rth)
本発明のフィルムのレターデーション値は、位相差フィルムに用いる場合等には、ReおよびRthは液晶セルおよび光学フィルムの設計により、適宜選択される。
セルロースアシレートフィルムのより好ましい光学特性は液晶モードによって異なる。
本発明のフィルムは、測定波長590nmにおいて、面内方向のレターデーションReが、Re≧30nm、Rth≧であることが、VAモードの液晶表示装置に好適に用いることができる観点から好ましい。
VAモード用としては590nmで測定したReは30nm≦Re≦100nmであることが好ましく、Rthは90nm≦Rth≦300nmであることが好ましい。その中でも、液晶表示装置に本発明のフィルムを2枚組み込んで光学特性を改善する2枚型のVAモード液晶表示装置に本発明のフィルムを応用する場合は、30nm≦Re≦80nmであることが特に好ましく、40nm≦Re≦60nmであることがより特に好ましい。2枚型のVAモードに応用する場合のRthは90≦Rth≦180nmのものが特に好ましく、100≦Rth≦140nmのものがより特に好ましい。一方で、液晶表示装置に本発明のフィルムを1枚組み込んで光学特性を改善する1枚型のVAモード液晶表示装置に本発明のフィルムを応用する場合は、40nm≦Re≦100nmであることが特に好ましく、45nm≦Re≦90nmであることがより特に好ましい。1枚型のVAモードに応用する場合のRthは、160nm≦Rth≦290nmであることが特に好ましく、180nm≦Re≦280nmであることがより特に好ましく、200nm≦Rth≦250nmであることがよりさらに特に好ましい。
本明細書におけるRe(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、590nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
Figure 2011158839
ここで、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。dはフィルム厚を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d −−− 式(B)
なおこの際、パラメータとして平均屈折率nが必要になるが、これはアッベ屈折計((株)アタゴ社製の「アッベ屈折計2−T」)により測定した値を用いた。
(セルロースアシレートフィルムの層構造)
本発明のフィルムは、少なくとも1層の前記A層と、少なくとも1層の前記B層が積層している。また、本発明のフィルムは、溶液製膜で製造する際に支持体と接する前記B層(以下、バンド面側のB層)に含まれる前記セルロースアシレートBが、前記A層に含まれる前記セルロースアシレートAよりも、全アシル置換度が高い。
また、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は均一であっても、複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよいが、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は全て一定であることが光学特性の調整の観点から好ましい。
本発明のフィルムは、3層以上の積層構造を有していることが、寸法安定性や環境湿熱変化に伴うカール量低減の観点から好ましい。
本発明のフィルムはB層/A層/B層の3層構造であることが好ましい。本発明のフィルムが3層構造の場合、バンド面側から順に高置換度層(バンド面側のB層)/低置換度層(A層)/高置換度層という構成であっても高置換度層(バンド面側のB層)/低置換度層(A層)/低置換度層という構成であってもよいが、高置換度層(バンド面側のB層)/低置換度層(A層)/高置換度層の構成であることが、溶液製膜時の支持体からの剥離性を改善する観点および寸法安定性の観点から好ましい。
本発明のフィルムが3層構造であるとき、両面の表面層に含まれるセルロースアシレートは同じアシル置換度のセルロースアシレートを用いることが、製造コスト、寸法安定性および環境湿熱変化に伴うカール量低減の観点から好ましい。
また、本発明のフィルムは、両方の表層が前記B層であることが、さらに好ましい。
(膜厚)
本発明のフィルムは、下記式(5)〜式(7)を満たすことが好ましい。
式(5) 28μm≦dA≦98μm
式(6) 1μm≦dB≦10μm
式(7) 30μm≦ΣdA+ΣdB≦100μm
(式(5)〜(7)中、dAは前記A層の厚みを表し、dBは前記B層の厚みを表し、ΣdAは全ての前記A層の合計の厚みを表し、ΣdBは全ての前記A層の合計の厚みを表す。)
なお、式(5)〜(7)中、dAおよびdBはそれぞれ、前記A層、前記B層の1層ごとの厚みを表し、ΣdA+ΣdBは本発明のフィルムの全膜厚を表す。
前記ΣdA+ΣdBは、30〜100μmであることが好ましく、30〜80μmであることがより好ましく、30〜70μmであることがさらに好ましい。30μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し好ましい。また、70μm以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性を維持しやすい。
本発明のフィルムは、前記B層の膜厚が前記A層の膜厚の0.2%以上25%未満であることが、0.2%以上であれば剥離性が十分となり、スジ状のムラ、フィルムの膜厚不均一あるいは光学特性不均一が抑制され、25%未満であればコア層の光学発現性を有効に利用することができ、積層フィルムが十分な光学特性を得ることができる観点から好ましく、0.5〜15%であることがより好ましく、1.0〜10%であることが特に好ましい。また、本発明のフィルムが前記B層を積層フィルムの両面に有している場合、前記B層の膜厚がともに前記A層の膜厚の0.2%以上25%未満であることが、より好ましい。
(フィルム幅)
本発明のフィルムは、フィルム幅が700〜3000mmであることが好ましく、1000〜2800mmであることがより好ましく、1500〜2500mmであることが特に好ましい。
[セルロースアシレート積層フィルムの製造方法]
本発明のセルロースアシレート積層フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、下記式(1)および(2)を満たすセルロースアシレートAを含むセルロースアシレート溶液aと、下記式(3)および(4)を満たすセルロースアシレートBを含むセルロースアシレート溶液bとを、前記セルロースアシレート溶液bが支持体に接するように支持体上に少なくとも一層ずつ逐次流延または同時共流延して積層フィルムを製膜する工程と、製膜した前記積層フィルムを延伸する工程とを含むことを特徴とする。
式(1) 0.5≦Z1
式(2) 2.9≦X1+Y1+Z1≦3.0
(式(1)および(2)中、X1はアセチル基の置換度を表し、Y1はプロピオニル基の置換度を表し、Z1は残水酸基の割合を表し、X1とY1はいずれも0ではない。)
式(3) Z2≦0.4
式(4) 2.9≦X2+Y2+Z2≦3.0
(式(3)および(4)中、X2はアセチル基の置換度を表し、Y2はプロピオニル基の置換度を表し、Z2は残水酸基の割合を表す。)
以下、本発明の製造方法について説明する。なお、前記支持体は金属支持体であることが好ましく、バンドまたはドラムであることがより好ましく、SUS製の無端金属バンドであることが特に好ましい。以下の本発明の好ましい態様の説明において、支持体を具体的に限定して説明している部分があるが、本発明はそれらの記載によって限定されるものではない。
(ドープの調製)
詳しくは、本発明の製造方法では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて本発明のフィルムを製造する。
前記有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルおよび炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
一般的な方法でセルロースアシレート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特に、メチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアシレートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアシレートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。セルロースアシレートの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアシレートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアシレートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアシレート(全アセチル置換度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保存する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアシレートの全アセチル置換度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
(共流延)
調製した2種以上のセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレテートフィルムを製造することができる。
本発明の製造方法は、前記式(1)および(2)を満たすセルロースアシレートAを含むセルロースアシレート溶液aと、前記式(3)および(4)を満たすセルロースアシレートBを含むセルロースアシレート溶液bとを、前記セルロースアシレート溶液bが支持体に接するように支持体上に少なくとも一層ずつ逐次流延または同時共流延して積層フィルムを製膜する工程を含むことを特徴とする。以下、このような共流延による積層フィルムの製膜工程について説明する。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
本発明では得られたセルロースアシレート溶液(ドープ)を、支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に前記2種以上の複数のセルロースアシレート液を流延して製膜する。本発明のフィルムの製造方法としては、上記以外に特に制限はなく公知の共流延方法を用いることができる。例えば、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。
あるいは、また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
本発明の製造方法は、前記セルロースアシレート溶液aと、前記セルロースアシレート溶液bとを同時共流延することが好ましい。
さらに、本発明の製造方法は、前記支持体側から順に、前記セルロースアシレート溶液bと、前記セルロースアシレート溶液aと、前記セルロースアシレート溶液bとを支持体上に同時共流延することが好ましい。
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。これに対し、本発明では複数のセルロースアシレート溶液を流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、バンド面側の表層/コア層/表層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることが出来る。例えば、マット剤は、バンド面側の表層に多く、又はバンド面側の表層のみに入れることが出来る。可塑剤、紫外線吸収剤は表層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。又、コア層と表層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば表層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離剤を支持体側のバンド面側の表層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、バンド面側の表層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。表層とコア層のTgが異なっていてもよく、表層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。また、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度も表層とコア層で異なっていても良く、表層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度が表層の粘度より小さくてもよい。
本発明では、多層流延したドープを乾燥させてから、支持体から剥離することが好ましい。
(乾燥工程)
ドラムやベルト上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムやベルトが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロ−ル群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエ−ブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量および乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
(延伸)
本発明の製造方法は、前記製膜工程のあとに、製膜した前記積層フィルムを延伸する工程を含む。
本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量のさらに好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に12質量%〜35質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
延伸倍率は、5%〜100%であることが好ましく、15%〜40%であることがより好ましく、
20%〜35%であることが特に好ましい。ここで、一方の方向に対して5%〜100%延伸するとは、フィルムを支持しているクリップやピンの間隔を延伸前の間隔に対して1.05〜2.00倍の範囲にすることを意味している。
また、延伸はフィルム搬送方向(縦方向)に行っても、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に行っても、両方向に行ってもよいが、本発明のセルロースアシレートフィルムはフィルム搬送方向に直交する方向に延伸されて得られたものであり、該延伸倍率が、搬送方向に対して直交する方向に5%〜100%であることが好ましい。前記搬送方向に直交する方向への延伸倍率のより好ましい範囲は上記範囲と同様である。延伸倍率を5%以上とすることにより、より適切にReを発現させることができ、ボーイングを良好なものとすることができる。また、延伸倍率を50%以下とすることにより、ヘイズを低下させることができる。
本発明では、溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。本発明では、前記延伸工程における延伸温度は、110〜190℃であることが好ましく、120〜150℃であることがより好ましい。延伸温度が120℃以上であることが低ヘイズ化の観点から好ましく、150℃以下であることが光学発現性を高める観点(薄膜化の観点)から好ましい。
一方、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、可塑剤として揮散しやすい低分子可塑剤を用いる場合は、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの光学発現性を高める観点、特にフィルムのRthの値を高める観点から、有効な方法である。本発明のセルロースアシレートフィルムは搬送方向に対して平行な方向と直交する方向への同時または逐次延伸されて得られたものであり、該搬送方向に対して平行な方向への延伸倍率は1%〜30%であることが好ましく、3%〜20%であることがより好ましく、5%〜10%であることが特に好ましい。一方、搬送方向に対して直交する方向への延伸倍率は5%〜100%であることが好ましく、20%〜50%がより好ましく、25%〜45%が特に好ましい。搬送方向に直交する方向への延伸倍率のより好ましい範囲は上記範囲と同様である。
一般に、2軸延伸テンターを用いてフィルム搬送方向に直交する方向(幅手方向)に5%〜100%延伸する場合、その直交方向であるフィルム搬送方向に平行な方向(長手方向)には縮まる力が働く。
したがって、一方向のみに力を与えて続けて延伸すると直角方向の幅は縮まってしまうが、これを幅規制せずに縮まる量に対して、縮まり量を抑制していることを意味しており、その幅規制するクリップやピンの間隔を延伸前に対して1.05〜2.00倍の範囲に規制していることを意味している。このとき、長手方向には、幅手方向への延伸によってフィルムが縮まろうとする力が働いている。長手方向のクリップあるいはピンの間隔をとることによって、長手方向に必要以上の張力がかからないようにしているのである。ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して長手方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて長手方向に延伸する方法、同様に幅手方向に広げて幅手方向に延伸する方法、あるいは長手幅手同時に広げて長手幅手両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
本発明では、延伸工程において同時に2軸方向に延伸してもよいし、逐次に2軸方向に延伸してもよい。逐次に2軸方向に延伸する場合は、それぞれの方向における延伸ごとに延伸温度を変更してもよい。
同時2軸延伸する場合、延伸温度は110℃〜190℃で行った場合でも本発明のフィルムを得ることができ、同時2軸延伸する場合の延伸温度は、120℃〜150℃であることがより好ましく、130℃〜 150℃であることが特に好ましい。また、同時2軸延伸することで、ヘイズはある程度高くなるものの、光学発現性をさらに高めることができる。
一方、逐次2軸延伸する場合、先にフィルム搬送方向に平行な方向に延伸し、その次にフィルム搬送方向に直交する方向に延伸することが好ましい。前記逐次延伸を行う延伸温度のより好ましい範囲は上記同時2軸延伸を行う延伸温度範囲と同様である。
(熱処理工程)
本発明のフィルムの製造方法は乾燥工程終了後に熱処理工程を設けることが好ましい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。本発明においては乾燥工程終了後に一旦、室温〜100℃以下まで冷却した後において改めて前記熱処理工程を設けることが好ましい。これは熱寸法安定性のより優れたフィルムを得られる点で有利であるからである。同様の理由で熱処理工程直前において残留溶媒量が2質量%未満、好ましくは0.4質量%未満まで乾燥されていることが好ましい。
このような処理によりフィルムの収縮率を小さくできる理由は明確ではないが、延伸工程にて延伸される処理を経たフィルムにおいては、延伸方向の残留応力が大きいため、熱処理によって前記残留応力が解消されることにより、熱処理温度以下の領域での収縮力が低減されるものと推定される。
熱処理は、搬送中のフィルムに所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法により行われる。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことがさらに好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことがさらに好ましい。
熱処理温度が200℃を超えて長時間加熱すると、フィルム中に含まれる可塑剤の飛散量が増大するため問題となる場合がある。
なお前記熱処理工程において、フィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。この収縮を可能な限り抑制しながら熱処理することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましく、幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンター方式)が好ましい。
前記熱処理工程において、前記延伸工程とは別に高温で延伸を行うことが出来る。延伸倍率は、5%〜100%であることが好ましく、15%〜40%であることがより好ましく、20%〜35%であることが特に好ましい。
また、延伸はフィルム搬送方向(縦方向)に行っても、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に行っても、両方向に行ってもよいが、本発明のセルロースアシレートフィルムはフィルム搬送方向に直交する方向に延伸されて得られたものであり、該延伸倍率が、搬送方向に対して直交する方向に5%〜100%であることが好ましい。前記搬送方向に直交する方向への延伸倍率のより好ましい範囲は上記範囲と同様である。延伸倍率を5%以上とすることにより、より適切にReを発現させることができ、ボーイングを良好なものとすることができる。また、延伸倍率を50%以下とすることにより、ヘイズを低下させることができる。
前記熱処理工程における延伸温度は、上記熱処理温度範囲と同様である。延伸温度が140℃以上であることが低ヘイズ化の観点から好ましく、190℃以下であることが光学発現性を高める観点(薄膜化の観点)から好ましい。
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの光学発現性を高める観点、特にフィルムのRthの値を高める観点から、有効な方法である。本発明のセルロースアシレートフィルムは搬送方向に対して平行な方向と直交する方向への同時または逐次延伸されて得られたものであり、該搬送方向に対して平行な方向への延伸倍率は1%〜30%であることが好ましく、3%〜20%であることがより好ましく、5%〜10%であることが特に好ましい。一方、搬送方向に対して直交する方向への延伸倍率は5%〜100%であることが好ましく、20%〜50%がより好ましく、25%〜45%が特に好ましい。
本発明では、延伸工程において同時に2軸方向に延伸してもよいし、逐次に2軸方向に延伸してもよい。逐次に2軸方向に延伸する場合は、それぞれの方向における延伸ごとに延伸温度を変更してもよい。
同時2軸延伸する場合、好ましい延伸温度範囲は、上記熱処理温度範囲と同様である。また、同時2軸延伸することで、ヘイズはある程度高くなるものの、光学発現性をさらに高めることができる。
一方、逐次2軸延伸する場合、先にフィルム搬送方向に平行な方向に延伸し、その次にフィルム搬送方向に直交する方向に延伸することが好ましい。前記逐次延伸を行う延伸温度のより好ましい範囲は上記熱処理温度範囲と同様である。
得られたフィルムを巻き取る巻き取り機には、一般的に使用されている巻き取り機が使用でき、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。以上の様にして得られた光学フィルムロールは、フィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±2度であることが好ましく、さらに±1度の範囲であることが好ましい。又は、巻き取り方向に対して直角方向(フィルムの幅方向)に対して、±2度であることが好ましく、さらに±1度の範囲にあることが好ましい。特にフィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±0.1度以内であることが好ましい。あるいはフィルムの幅手方向に対して±0.1度以内であることが好ましい。
(加熱水蒸気処理)
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造されるセルロースアシレートフィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に用いる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
(表面処理)
製造されたセルロースアシレートフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理又は紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましい。
フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアシレートフィルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光子との接着性の観点から、酸処理又はアルカリ処理、すなわちセルロースアシレートに対する鹸化処理を実施することが特に好ましい。
表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m〜75mN/mであることが更に好ましい。
以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
セルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオン濃度は0.1〜3.0モル/リットルの範囲にあることが好ましく、0.5〜2.0モル/リットルの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、及び吸着法により求めることができる。本発明のセルロースアシレートフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアシレートフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
[位相差フィルム]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、位相差フィルムとして用いることができる。なお、「位相差フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、位相差板、光学補償フィルム、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、位相差フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
本発明の透明セルロースアシレートフィルムを用いることで、Re値およびRth値を自在に制御した位相差フィルムを容易に作製することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを複数枚積層したり、本発明のセルロースアシレートフィルムと本発明外のフィルムとを積層したりしてReやRthを適宜調整して位相差フィルムとして用いることもできる。フィルムの積層は、粘着剤や接着剤を用いて実施することができる。
また、場合により、本発明のセルロースアシレートフィルムを位相差フィルムの支持体として用い、その上に液晶等からなる光学異方性層を設けて位相差フィルムとして使用することもできる。
[偏光板]
また、本発明は、本発明のフィルムを少なくとも一枚用いることを特徴とする偏光板にも関する。
本発明の偏光板は、偏光子と、該偏光子の片面に本発明のフィルムを有することが好ましい。本発明の光学補償フィルムと同様、本発明の偏光板の態様は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
本発明の偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。
本発明の光学フィルムは、光学発現性が高いため、位相差フィルムとして偏光板用保護フィルムに好ましく用いられる。偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼り合わせ積層することによって形成される。偏光子は従来から公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコールフィルムなどの親水性ポリマーフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸したものである。セルロースアシレートフィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行うことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコ−ル水溶液が好ましく用いられる。
本発明のフィルムは、偏光板用保護フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルム/液晶セル/本発明のフィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成、もしくは偏光板用保護フィルム/偏光子/本発明のフィルム/液晶セル/本発明のフィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成で好ましく用いることができる。特に、TN型、VA型、OCB型などの液晶セルに貼り合わせて用いることによって、さらに視野角に優れ、着色が少ない視認性に優れた表示装置を提供することができる。特に本発明の偏光板用保護フィルムを用いた偏光板は高温高湿条件下での劣化が少なく、長期間安定した性能を維持することができる。
[液晶表示装置]
本発明は本発明の偏光板を有する液晶表示装置にも関する。
本発明の液晶表示装置は液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が本発明の偏光板であることを特徴とするIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましく、特にVAモードの液晶表示装置であることが最も好ましい。
本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば図1に記載の構成とした例を採用することができる。また、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
本発明のVA型液晶表示装置のモードについてはいずれであってもよく、具体的にはMVA(Multi-domain Vertical Alignment)型、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
本発明のVA型液晶表示装置では、液晶セルと偏光子との間に配置される偏光板の透明保護フィルムとして、本発明のフィルムからなるセルロースアシレート積層フィルムが用いられる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)保護フィルムのみに上記のセルロースアシレート積層フィルムを用いてもよいし、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)二枚の保護フィルムに、上記のセルロースアシレート積層フィルムを用いてもよい。液晶セルへの張り合わせは、本発明のフィルムはVAセル側にすることが好ましい。保護フィルムは通常のセルロースアシレートフィルムでも良く、市販のKC4UX2M(コニカオプト株式会社製40μm)、KC5UX(コニカオプト株式会社製60μm)、TD80(富士フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(合成例1 CAP1の合成)
含有水分7%に調整した解砕パルプ100部に、氷酢酸22部を噴霧し60℃で2時間前処理活性化した。無水プロピオン酸260部とプロピオン酸56部と、硫酸2.6部の混合液を予め−10℃に調節して3L容ニーダーに準備しておき、この混合液に前記の前処理活性化セルロースを投入して攪拌混合した。反応系がシロップ状に変化し、偏光顕微鏡観察にてセルロースの結晶が完全に消失していることを確認した後、反応系に酢酸45.3部と水23.3部との混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を失活させた。反応液の温度を60℃に保ち、酢酸135.8部および水70部を加えて100分間熟成した。その後、酢酸マグネシウム15重量%水溶液32.3部を30分間かけて加え、系内の硫酸を連続的に中和した。続いて、酢酸180部を添加攪拌し、沈澱剤としての10重量%の酢酸水溶液に入れて激しく攪拌して沈殿させた。固液を分離し、脱イオン水で洗浄したのち、96〜97度の熱水で60分間洗浄し、その後さらに脱イオン水で120分間洗浄した後、安定化処理(耐熱処理)として0.002重量%水酸化カルシウム希薄溶液を添加した。その後30分放置した後、遠心脱液を行い、乾燥することでDS(Ac)=0.21、DS(Pr)=2.59のセルロースアセテート・プロピオネートを得た。
次に、得られたセルロースアセテート・プロピオネートを米国特許公開2009/0096962A1に記載の方法に準じて加水分解し、DS(Ac)=0.17、DS(Pr)=1.54のセルロースアセテートプロピオネート(CAP1)を得た。
CAP1、CAP3、CAP5、CAP6、およびCAP7は、合成例1の方法に準じ、用いる氷酢酸、無水プロピオン酸、およびプロピオン酸の量の比を換えて合成した。
(合成例2 CAP2の合成)
含有水分7%に調整した解砕パルプ100部に、氷酢酸5.5部を噴霧し60℃で2時間前処理活性化した。無水プロピオン酸280部とプロピオン酸56部と、硫酸2.6部の混合液を予め−10℃に調節して3L容ニーダーに準備しておき、この混合液に前記の前処理活性化セルロースを投入して攪拌混合した。反応系がシロップ状に変化し、偏光顕微鏡観察にてセルロースの結晶が完全に消失していることを確認した後、反応系に酢酸45.3部と水23.3部との混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を失活させた。反応液の温度を60℃に保ち、酢酸135.8部および水70部を加えて100分間熟成した。その後、酢酸マグネシウム15重量%水溶液32.3部を、30分間かけて加え、系内の硫酸を連続的に中和した。続いて、酢酸180部を添加攪拌し、沈澱剤としての10重量%の酢酸水溶液に入れて激しく攪拌して沈殿させた。固液を分離し、脱イオン水で洗浄したのち、96〜97度の熱水で60分間洗浄し、その後さらに脱イオン水で120分間洗浄した後、安定化処理(耐熱処理)として0.002重量%水酸化カルシウム希薄溶液を添加した。その後30分放置した後、遠心脱液を行い、乾燥することでDS(Ac)=0.06、DS(Pr)=2.42のセルロースアセテートプロピオネート(CAP2)を得た。
CAP4、CAP8、CAP9、CAP10およびはCAP11、合成例2の方法に準じ、用いる氷酢酸、無水プロピオン酸、およびプロピオン酸の量の比を換えて合成した。
(TAC1〜4の調製)
特開平10−45804号公報、同08−231761号公報に記載の方法で、セルロースアシレートを合成し、その置換度を測定した。具体的には、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
[実施例1〜24]
以下に示すセルロースアシレートドープを作製し、コア層用ドープとした。
(コア層用セルロースアシレートドープの調整)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート樹脂:表6および表8に記載のもの
表8に記載の量(単位:質量部)
可塑剤:表8に記載のもの 表8に記載の量(単位:質量部)
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(表層(バンド面側、エア面側共通)用セルロースアシレートドープの調整)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート樹脂:表6および表8に記載のもの
表8に記載の量(単位:質量部)
可塑剤:表8に記載のもの 表8に記載の量(単位:質量部)
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
マット剤 0.15質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 2011158839
(可塑剤)
Figure 2011158839
Figure 2011158839
(マット剤)
日本エアロジル(株)社製、アエロジルR972(商品名、二酸化ケイ素微粒子(平均粒径15nm、モース硬度 約7)。
(溶液流延法)
上記のセルロースアシレートドープをミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、セルロースアシレートドープを調製した。
次に、上記により調製したコア層用ドープ、スキンA層用ドープ、スキンB層用ドープを製膜化して各実施例のフィルムを製造した。
ドープを流延する際には、図3に示すように、走行する流延バンド85の上に流延ダイ89から上記3種類のドープを共に流延した。ここで、各ドープの流延量を調整することによりコア層を最も厚くし、結果的に延伸後のフィルムの膜厚が下記表8に記載の値となるように同時多層流延を行い、流延膜70を形成させた。フィルムの幅を下記表8に示す。
次に、この流延膜70を流延バンド85から剥ぎ取り湿潤フィルム75とした後、渡り部77及びテンター78で乾燥させてフィルム76とした。フィルム76を乾燥室80に送り、多数のローラ105に巻き掛けながら搬送する間に乾燥を十分に促進させた。最後に、巻取室82の巻取ローラ110で巻取りフィルム76製品とした。ドープを剥ぎ取った直後の残留溶剤量は約30質量%であった。
(延伸)
テンターを用いて表8に記載の倍率まで170℃で拡幅した後、140℃で60秒間緩和させ、130℃で20分間乾燥させてフィルムを得た。このときフィルムの膜厚は下記表8に示した。
[物性評価]
以下、フィルムの諸特性は以下の方法で測定して実施した。これらの結果を下記表8に示す。
(剥離性)
下記の評価方法に基づいて得られた各実施例のフィルムの剥離性を評価した。
5:剥離性が非常に良く、剥離後にフィルムに光学的なムラが全く視認できなかった
4:剥離性が良く、剥離後にフィルムに光学的なムラわずかに視認できた。
3:剥離でき、剥離後にフィルムにスジ状の膜厚ムラは無いが、光学的なムラが視認できた。
2:剥離性が悪く、剥離後にフィルムにスジ状の膜厚ムラが視認できた。
1:剥離性が非常に悪く、剥離時にフィルムが部分的に伸張された。
(レターデーション)
上記に記載したとおり、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)で計測した。
(内部ヘイズ)
まず本発明のフィルム試料40mm×80mmの屈折率をアッベ屈折計((株)アタゴ社製の『アッベ屈折計2−T』)により測定した。
次に、フィルム試料の表面及び裏面に、フィルム中に最も多く含まれる熱可塑性樹脂の屈折率±0.02以内の屈折率を有するオイルを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATAUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、全ヘイズを除去した状態でヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)によってJIS K−6714に従ってヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にオイルのみを挟んで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズとして算出した。
実施例および比較例で得られたセルロースアシレート樹脂を用いたフィルム試料は屈折率が1.48〜1.49であったため、屈折率1.48の流動パラフィンを用いて測定した。
また、本発明では上記方法で30回測定を行い、その平均値を内部へイズとした。その結果を下記表8に示す。
[比較例1〜8]
各比較例について、ドープおよび製膜条件を下記表8に記載のとおりとした以外は実施例と同様にしてフィルムを得た。また、フィルムの諸特性も実施例と同様にして評価した。これらの結果を下記表8に示す。

Figure 2011158839
表8の結果から明らかなとおり、本発明の実施例1〜24のフィルムはいずれも高いRe、Rthを示し、支持体との剥離性が良好なセルロースアシレート積層フィルムであった。
一方、比較例1および3のフィルムは低置換度セルロースアセテート・プロピオネートCAP1を単独で単層流延製膜したものであり、いずれも剥離性が悪かった。比較例2のフィルムは低置換度セルロースアセテート・プロピオネートCAP1をコア層、残水酸基の割合が式(3)を満たさないセルロースアシレートTAC2が両側の表層となるように同時多層流延したものであり、剥離性が悪かった。比較例4および5のフィルムはプロピロニル基をアシル置換基として有さないセルロースアセテートであるTAC1をコア層としたものを流延製膜したものであり、ReおよびRthのうち少なくとも一方の発現が不十分であった。比較例6〜8のフィルムは、残水酸基の割合が式(3)を満たさないセルロースアセテート・プロピオネートCAP8〜10をそれぞれコア層に用いた態様であり、いずれもReおよびRthのうち少なくとも一方の発現が不十分であった。
なお、図4に示すように、走行する流延バンド85の上に流延ダイ89から上記3種類のドープを共に流延し、各ドープの流延量を調整することによりコア層を最も厚くし、結果的に延伸後のフィルムの膜厚が表8に記載の値となるように逐次多層流延にて流延膜70を形成させたフィルムについても同様にして評価したが、評価の傾向は同様であった。
<偏光板試料の作製1>
上記で作製した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムの表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムと、同様のアルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士写真フイルム社製)を用意し、偏光子を間に挟んで貼り合わせ、各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム、偏光子、TD80ULがこの順に貼り合わせてある偏光板をそれぞれ得た。この際、各セルロースアシレートフィルムのMD方向およびTD80ULの遅相軸が、偏光子の吸収軸と平行になるように貼り付けた。
<偏光板試料の作製2>
偏光板試料の作製1と同様に、ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士写真フイルム社製)を2枚用意し、偏光子を間に挟んで貼り合わせ、TD80UL、偏光子、TD80ULがこの順に貼り合わせてある偏光板を得た。この際、TD80ULの遅相軸が、偏光子の吸収軸と平行になるように貼り付けた。
<偏光板試料の作製3>
偏光板試料の作製1と同様に、ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士写真フイルム社製)を1枚用意し、偏光子の片面に貼り合わせ、偏光板を得た。この際、TD80ULの遅相軸が、偏光子の吸収軸と平行になるように貼り付けた。
[実施例101、比較例101]
<液晶表示装置の作製1>
VAモードの液晶TV(LCD−40MZW100、三菱(株)製)の表裏の偏光板および位相差板を剥がして、液晶セルとして用いた。
これに対し、<偏光板試料の作製2>で作製した偏光板をフロント側(視認側)に、<偏光板試料の作製1>で作製した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板をリア側(バックライト側)に用いて、下記図1の構成の液晶表示装置を製造した。
具体的には、図1の構成のように、フロント側(視認側)から順に、外側保護フィルム(フジタックTD80UL)22;視認側の偏光子14;フジタックTD80UL18、;液晶セルLC(上記のVA液晶セル);表8に記載の実施例13および比較例4のセルロースアシレートフィルム16;バックライト側の偏光子12;および外側保護フィルム(フジタックTD80UL)20をこの順に粘着剤を用いて貼り合わせ、各実施例および比較例の液晶表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の吸収軸が直交するように貼り合わせた。
[実施例102、比較例102]
<液晶表示装置の作製2>
VAモードの液晶TV(LCD−40MZW100、三菱(株)製)の表裏の偏光板および位相差板を剥がして、液晶セルとして用いた。
これに対し、<偏光板試料の作製1>で作製した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板をフロント側(視認側)に、<偏光板試料の作製3>で作製した偏光板をリア側(バックライト側)に用いて、下記図1の構成の液晶表示装置を製造した。
具体的には、図1の構成のように、フロント側(視認側)から順に、外側保護フィルム(フジタックTD80UL)22;視認側の偏光子14;表8に記載の実施例7および比較例6のセルロースアシレートフィルム16;液晶セルLC(上記のVA液晶セル);バックライト側の偏光子12;および外側保護フィルム(フジタックTD80UL)をこの順に粘着剤を用いて貼り合わせ、各実施例および比較例の液晶表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の吸収軸が直交するように貼り合わせた。
[実施例103、比較例103]
<液晶表示装置の作製3>
VAモードの液晶TV(LCD−40MZW100、三菱(株)製)の表裏の偏光板および位相差板を剥がして、液晶セルとして用いた。
これに対し、<偏光板試料の作製1>で作製した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板をフロント側(視認側)、リア側(バックライト側)の双方に用いて、下記図1の構成の液晶表示装置を製造した。
具体的には、図1の構成のように、フロント側(視認側)から順に、外側保護フィルム(フジタックTD80UL)22;視認側の偏光子14;表8に記載の実施例9および比較例5のセルロースアシレートフィルム16;液晶セルLC(上記のVA液晶セル);表8に記載の実施例9および比較例5のセルロースアシレートフィルム16;バックライト側の偏光子12;および外側保護フィルム(フジタックTD80UL)をこの順に粘着剤を用いて貼り合わせ、各実施例および比較例の液晶表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の吸収軸が直交するように貼り合わせた。
<液晶表示装置の評価>
(パネルの色味視野角評価)
上記作製したVAモードの液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast XL88、ELDIM社製)を用いて、暗室内で黒表示時および白表示時の輝度および色度を測定し、黒表示におけるカラーシフトおよびコントラスト比(CR)を算出した。
その結果、本発明の液晶表示装置は、コントラスト比および極角方向のカラーシフト(色味の視野角依存性)がともに良好であり、従来では達成しえなかったコントラスト比と視野角特性との両立ができており、表示特性が明らかに改善されていることが分かった。
10 バックライト
12、14 偏光子
16 第1の位相差フィルム(第1の位相差領域)
18 第2の位相差フィルム(第2の位相差領域)
20、22 外側保護フィルム
24 リア側基板
26 フロント側基板
28 カラーフィルター部材
29 液晶層
30 アレイ部材
LC VA型液晶セル
PL1 リア側偏光板
PL2 フロント側偏光板
70 流延膜
85 流延バンド
120 コア層用ドープ
121 表層用ドープ(エア面側)
122 表層用ドープ(バンド面側)
120a コア層
121a 表層(エア面側)
122a 表層(バンド面側)
150 表層(バンド面側)用ダイ
151 コア層用ダイ
152 表層(エア面側)用ダイ

Claims (16)

  1. 少なくとも1層の下記式(1)および(2)を満たすセルロースアシレートAを含むA層と、少なくとも1層の下記式(3)および(4)を満たすセルロースアシレートBを含むB層とを有し、少なくとも一方の表層が前記B層であることを特徴とするセルロースアシレート積層フィルム。
    式(1) 0.5≦Z1
    式(2) 2.9≦X1+Y1+Z1≦3.0
    (式(1)および(2)中、X1はアセチル基の置換度を表し、Y1はプロピオニル基の置換度を表し、Z1は残水酸基の割合を表し、X1とY1はいずれも0ではない。)
    式(3) Z2≦0.4
    式(4) 2.9≦X2+Y2+Z2≦3.0
    (式(3)および(4)中、X2はアセチル基の置換度を表し、Y2はプロピオニル基の置換度を表し、Z2は残水酸基の割合を表す。)
  2. 前記A層または前記B層の少なくとも一層が可塑剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
  3. 前記可塑剤が、芳香族ジカルボン酸残基または脂肪族ジカルボン酸残基の少なくとも一方と、ジオール残基とを含む重縮合エステルであることを特徴とする請求項2に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
  4. 前記可塑剤が糖エステル化合物であることを特徴とする請求項2に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
  5. 前記糖エステル化合物が、ヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル化されたピラノース構造単位またはフラノース構造単位を1個〜12個含むことを特徴とする請求項4に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
  6. 両方の表層が前記B層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
  7. 下記式(5)〜式(7)を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
    式(5) 28μm≦dA≦98μm
    式(6) 1μm≦dB≦10μm
    式(7) 30μm≦ΣdA+ΣdB≦100μm
    (式(5)〜(7)中、dAは前記A層の厚みを表し、dBは前記B層の厚みを表し、ΣdAは全ての前記A層の合計の厚みを表し、ΣdBは全ての前記A層の合計の厚みを表す。)
  8. 測定波長590nmにおいて、面内方向のレターデーションReが30nm≦Re≦100nmであり、かつ、膜厚方向のレターデーションRthが90nm≦Rth≦300nmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
  9. 内部ヘイズが0.2%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルム。
  10. 下記式(1)および(2)を満たすセルロースアシレートAを含むセルロースアシレート溶液aと、下記式(3)および(4)を満たすセルロースアシレートBを含むセルロースアシレート溶液bとを、前記セルロースアシレート溶液bが支持体に接するように支持体上に少なくとも一層ずつ逐次流延または同時共流延して積層フィルムを製膜する工程と、製膜した前記積層フィルムを延伸する工程とを含むことを特徴とするセルロースアシレート積層フィルムの製造方法。
    式(1) 0.5≦Z1
    式(2) 2.9≦X1+Y1+Z1≦3.0
    (式(1)および(2)中、X1はアセチル基の置換度を表し、Y1はプロピオニル基の置換度を表し、Z1は残水酸基の割合を表し、X1とY1はいずれも0ではない。)
    式(3) Z2≦0.4
    式(4) 2.9≦X2+Y2+Z2≦3.0
    (式(3)および(4)中、X2はアセチル基の置換度を表し、Y2はプロピオニル基の置換度を表し、Z2は残水酸基の割合を表す。)
  11. 前記セルロースアシレート溶液aと、セルロースアシレート溶液bとを同時共流延することを特徴とする請求項10に記載のセルロースアシレート積層フィルムの製造方法。
  12. 前記支持体側から順に、前記セルロースアシレート溶液bと、前記セルロースアシレート溶液aと、前記セルロースアシレート溶液bとを支持体上に同時共流延することを特徴とする請求項10または11に記載のセルロースアシレート積層フィルムの製造方法。
  13. 請求項10〜12のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするセルロースアシレート積層フィルム。
  14. 請求項1〜9および13のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルムを少なくとも1つ有することを特徴とする偏光板。
  15. 請求項1〜9および13のいずれか一項に記載のセルロースアシレート積層フィルムを少なくとも1つ有することを特徴とする液晶表示装置。
  16. 液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が請求項14に記載の偏光板であることを特徴とするIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置。
JP2010022434A 2010-02-03 2010-02-03 セルロースアシレート積層フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置 Pending JP2011158839A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010022434A JP2011158839A (ja) 2010-02-03 2010-02-03 セルロースアシレート積層フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010022434A JP2011158839A (ja) 2010-02-03 2010-02-03 セルロースアシレート積層フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2011158839A true JP2011158839A (ja) 2011-08-18

Family

ID=44590803

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010022434A Pending JP2011158839A (ja) 2010-02-03 2010-02-03 セルロースアシレート積層フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2011158839A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013076872A (ja) * 2011-09-30 2013-04-25 Fujifilm Corp セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP2013200333A (ja) * 2012-03-23 2013-10-03 Konica Minolta Inc セルロースアシレート積層フィルムおよびその製造方法、並びにそれを用いた偏光板および液晶表示装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013076872A (ja) * 2011-09-30 2013-04-25 Fujifilm Corp セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP2013200333A (ja) * 2012-03-23 2013-10-03 Konica Minolta Inc セルロースアシレート積層フィルムおよびその製造方法、並びにそれを用いた偏光板および液晶表示装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5422165B2 (ja) セルロースアシレートフィルム、光学フィルム、偏光板および液晶表示装置
JP5606302B2 (ja) セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP2011121327A (ja) セルロースアシレートフィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP5525464B2 (ja) セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP2012068611A (ja) セルロースアシレートフィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP4320933B2 (ja) 表示用偏光板保護フィルム、その製造方法、偏光板及び表示装置
JP5384314B2 (ja) セルロースアシレートフィルム、偏光板及び液晶表示装置
JP5926665B2 (ja) セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP2011118222A (ja) セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP5286114B2 (ja) セルロースアシレートフィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP5325083B2 (ja) 光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP2012025804A (ja) ポリマーフィルム、偏光板及び液晶表示装置
JP2013139541A (ja) セルロースアシレートフィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置
WO2013162018A1 (ja) セルロースアシレートフィルム、偏光板、偏光板の製造方法、及び液晶表示装置
JP5950781B2 (ja) セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP2012226276A (ja) セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP5667493B2 (ja) セルロースアシレートフィルムの製造方法、セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP2011158839A (ja) セルロースアシレート積層フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP2013225150A (ja) 光学フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP5878449B2 (ja) セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP5912073B2 (ja) セルロースアシレートフィルム、偏光板及び液晶表示装置
JP5837470B2 (ja) セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP6333301B2 (ja) セルロースアセテートフィルム、偏光板及び液晶表示装置
JP5476332B2 (ja) 光学フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP5779466B2 (ja) セルロースアシレートフィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置