JP5325083B2 - 光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置に関する。
近年、液晶表示装置のTV用途が進行し、画面サイズの大型化に伴い高画質化と低価格化が益々求められている。また、同時に液晶表示装置の視野角特性を改善することが求められている。液晶表示装置の視野角特性の改善を目的としてレターデーションを制御された位相差フィルムが偏光板とともに液晶表示装置に組み込まれているが、正面コントラストを高めて高画質化を同時に達成するためには、位相差フィルムの遅相軸がパネルに搭載されたときの保証するため偏光板吸収軸に対して90°となるように制御されている必要がある。また、液晶表示装置の使用環境も多様化してきており、一般的な使用環境のみならず、高温多湿な環境でも安定した高画質が求められていることから、光学フィルムは偏光板や液晶表示装置に貼り合わせたときにその他の部材の使用環境に応じた寸度変化量にあわせ、ある程度光学フィルム自体も寸度変化することも求められている。
このような光学フィルムとして、特許文献1には面内方向のリレターデーションReが20〜70nm、膜厚方向のレターデーションRthが70〜400nmであって、遅相軸角度と延伸方向のなす軸ズレを5°以下に制御することで表示ムラ(色斑)を抑制した光学補償フィルムが開示されている。
しかしながら、遅相軸の分布が制御された光学フィルムを作製したとしても、その後の偏光板加工プロセスで光学フィルムの遅相軸の分布が変化してしまうと、液晶表示装置実装時の正面コントラストを高くすることができなくなってしまう。特許文献1には、このような偏光板加工プロセスでの遅相軸変化への言及はなく、光学補償フィルムを偏光膜(偏光子)と貼り合わせて偏光板を製造したところ、光学補償フィルムの遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度が0.5°となることが記載されている。そのため、液晶表示装置の正面コントラストを高めて高画質化する観点からは、特許文献1に記載の光学補償フィルムは十分満足いくものではなかった。
また、特許文献1の光学補償フィルムは、酢化度が59.0〜61.5%、すなわち全アシル置換度が2.72〜2.88のセルロースアセテートフィルムであり、膜厚を厚くすることによってレターデーションの発現量を調整していたものであった。近年の液晶表示装置の低価格化の求めに対し、光学フィルムの膜厚を薄くして使用する材料量を減らして製造コストを下げることが求められている。そのため、レターデーションを大きく発現した光学フィルムの製造コストの観点からも、特許文献1に記載の光学補償フィルムは十分満足いくものではなかった。
特開2003−66230号公報
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、偏光板加工プロセスを経て液晶表示装置に組み込んだときの正面コントラストが高く、視野角特性が改善され、他の部材と同程度に寸度変化し、製造コストが低い光学フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らが特許文献1に記載の光学補償フィルムについて詳細に検討をしたところ、確かに偏光板加工工程での遅相軸分布の変化が生じてしまうことがわかった。そこで、この遅相軸分布の変化の原因を検討したところ、いかなる理論に拘泥するものでもないが、偏光板加工時に光学補償フィルムが高湿度化高温処理され、その処理過程において光学補償フィルム作成時の延伸工程後にフィルムに残留していた応力が開放され、フィルム中の分子配向が変化することで起きていると予想された。
そこで、上記の遅相軸変化を抑止するためには、フィルム作製時にフィルム中に残留する応力を開放させる必要がある。残留応力開放の具体的な手法としては、製膜したフィルムを延伸した後に、後処理として熱を加えて緩和収縮させる方法(熱緩和処理)が特許文献1に記載されているが、熱緩和処理を行うと光学フィルムの寸度変化量が小さくなり過ぎてしまい、他の部材と貼り合わせて液晶表示装置に組み込んだときに逆に画質低下の原因となってしまう問題があることがわかった。また、熱緩和処理を行うことにより、延伸により発現させたレターデーションも小さくなってしまい、位相差発現性が低下してしまう問題があることもわかった。さらに、熱緩和処理を行うと光学フィルム製造時の製造負荷も高まり、製造コストの問題が依然として解決できていないことがわかった。
本発明者らが上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、驚くべきことに全アシル置換度2.45前後の低置換度のセルロースアシレート樹脂を含むフィルムを、溶媒が残留しているときに特定の温度範囲で延伸して光学フィルムを製造したとき、このような熱緩和処理を施さなくても、偏光板加工工程後における光学フィルムの遅相軸変化量が大幅に小さくなることが判明した。
さらに、このような低置換度のセルロースアシレート樹脂を含むフィルムは膜厚が薄い場合でも十分なレターデーションを発現することができることが判明した。そのため、熱緩和処理による製造コストの増加もなく、薄膜化できるため、位相差発現性の改善と同時に製造コストも下げることが可能となることが判明した。
また、延伸工程における延伸温度を低くし、かつ、熱緩和処理を省略できるため、使用環境に応じた寸度変化量が小さくなり過ぎることもなく、適切な寸度変化量を有する光学フィルムを得られることが判明した。
そこで、さらに本発明者らは鋭意研究をすすめ、全アシル置換度が特定の範囲にある低置換度のセルロースアシレート樹脂を含むフィルムを、特定の残留溶媒量の範囲において特定の温度範囲で延伸をすることによって、偏光板加工プロセスを経て液晶表示装置に組み込んだときの正面コントラストが高く、視野角特性が改善され、他の部材と同程度に寸度変化し、製造コストが低い光学フィルムが得られることを見出すに至った。すなわち、上記課題は、以下の手段によって解決される。
[1] 全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含み、80℃、相対湿度90%の条件下で1時間熱処理した場合の遅相軸変化が下記式(1)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
式(1) |ΔP1−ΔP0|<0.5°
(式(1)中、ΔP1は80℃、相対湿度90%の条件下で1時間熱処理した場合のフィルム幅方向において、フィルム搬送方向と遅相軸のなす角の最大値と最小値の差を表し、ΔP0は熱処理前のフィルム幅方向において、フィルム搬送方向と遅相軸のなす角の最大値と最小値の差を表す。)
[2] 60℃、相対湿度90%の条件下で24時間静置した場合のフィルム搬送方向の寸度変化率の絶対値とフィルム搬送方向に直交する方向の寸度変化率の絶対値のいずれか一方が0.5%以上であることを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
[3] 60℃、相対湿度90%の条件下で24時間静置した場合のフィルム搬送方向の寸度変化率の絶対値とフィルム搬送方向に直交する方向の寸度変化率の絶対値がともに0.5%以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の光学フィルム。
[4] 下記式(2)〜(4)を満たすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(2) 20nm≦Re(590)≦200nm
(式(2)中、Re(590)は波長590nmにおける正面レターデーション値を表す。)
式(3) 70nm≦Rth(590)≦400nm
(式(3)中、Rth(590)は波長590nmにおける膜厚方向のレターデーション値を表す。)
式(4) Re(630)>Re(450)
(式(4)中、Re(630)は波長630nmにおける正面レターデーション値を表し、Re(450)は波長450nmにおける正面レターデーション値を表す。)
[5] 膜厚が20〜50μmであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[6] 全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含む低置換度層と、
該低置換度層の両方の面上に全アシル置換度が2.70を超えるセルロースアシレート樹脂を含む高置換度層を少なくとも1層ずつ有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学フィルム(但し、各高置換度層の組成はそれぞれ独立であり、同一の組成であってもよい)。
[7] 全ての層がセルロースアシレート樹脂を含むことを特徴とする[6]に記載の光学フィルム。
[8] 前記セルロースアシレート樹脂がセルロースアセテートであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[9] 全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含む未延伸フィルムをTg−50℃〜Tgの温度で延伸する工程を含み、前記延伸を開始するときの残留溶剤量が前記フィルム全体の質量に対して5質量%以上であることを特徴とする光学フィルムの製造方法(但し、Tgは光学フィルムのガラス転移温度(単位:℃)を表す。)
[10] 全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含むコア層用ドープと、全アシル置換度が2.70を超えるセルロースアシレート樹脂を含むスキン層用ドープを、前記コア層用ドープの両面に前記スキン層用ドープが積層されるように逐次流延または同時共流延して前記未延伸フィルムを形成することを特徴とする[9]に記載の光学フィルムの製造方法。
[11] 前記コア層用ドープの両面に前記スキン層用ドープが積層されるように同時共流延することを特徴とする[10]に記載の光学フィルムの製造方法。
[12] 全てのドープがセルロースアシレート樹脂を含むことを特徴とする[9]〜[11]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[13] 前記セルロースアシレート樹脂がセルロースアセテートであることを特徴とする[9]〜[12]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[14] [9]〜[13]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
[15] 偏光子と、[1]〜[8]および[14]のいずれか一項に記載の光学フィルムを少なくとも1枚有することを特徴とする偏光板。
[16] [1]〜[8]および[14]のいずれか一項に記載の光学フィルムあるいは[15]に記載の偏光板を少なくとも1枚有することを特徴とする液晶表示装置。
本発明によれば、偏光板加工プロセスを経て液晶表示装置に組み込んだときの正面コントラストが高く、視野角特性が改善され、他の部材と同程度に寸度変化し、製造コストが低い光学フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該フィルムを簡便で安定に製造でき、製造コストも低い。
本発明の液晶表示装置の一例の概略断面図である。 共流延用ダイを用いて同時共流延により3層構造の積層セルロースアシレートフィルムを流涎するときの一例を示す概略図である。
以下において、本発明の光学フィルムやその製造方法、それに用いる添加剤などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書中において、特に断りなくReとRthを用いている場合、これらReとRthは測定波長590nmにおける値をそれぞれ表す。
[光学フィルム]
本発明の光学フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含み、80℃、相対湿度90%の条件下で1時間熱処理した場合の遅相軸変化が下記式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1) |ΔP1−ΔP0|<0.5°
(式(1)中、ΔP1は80℃、相対湿度90%の条件下で1時間熱処理した場合のフィルム幅方向において、フィルム搬送方向と遅相軸のなす角の最大値と最小値の差を表し、ΔPOは熱処理前のフィルム幅方向において、フィルム搬送方向と遅相軸のなす角の最大値と最小値の差を表す。)
以下、本発明のフィルムの好ましい態様を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
(セルロースアシレート樹脂)
本発明に用いられるセルロースアシレートは、アシル基の全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレートを少なくとも含む以外は、特に制限はない。アシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
本発明のフィルムに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましく、炭素数2〜4のアシル基としてはプロピオニル基またはブチリル基が好ましい。これらのフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低くろ過性のよい溶液の作成が可能となる。
まず、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がアシル化している割合(各位における100%のアシル化は置換度1)の合計を意味する。
本発明におけるセルロースアシレートのアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)であり、より特に好ましくはアセチル基(セルロースアシレートが、セルロースアセテートである場合)である。
セルロ−スのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
本発明のフィルムは、全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含むが、その他の全アシル置換度の範囲のセルロースアシレート樹脂を含んでいてもよく、後述する本発明のフィルムの層構成の説明中において詳細は述べる。
本発明に用いるセルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
本発明の光学フィルムはセルロースアシレート樹脂の他にその他の樹脂を含んでいてもよいが、セルロースアシレート樹脂または環状オレフィン樹脂を含むことが好ましく、セルロースアシレート樹脂を含むことがより好ましい。
(寸度変化率)
本発明のフィルムは、60℃、相対湿度90%の条件下で24時間静置した場合のフィルム搬送方向の寸度変化率の絶対値とフィルム搬送方向に直交する方向の寸度変化率の絶対値のいずれか一方が0.5%以上であることが好ましい。前記寸法変化率の絶対値は0.5〜1.5%であることがより好ましく、0.5〜1.0%であることが特に好ましい。
本発明のフィルムは、60℃、相対湿度90%の条件下で24時間静置した場合のフィルム搬送方向の寸度変化率の絶対値とフィルム搬送方向に直交する方向の寸度変化率の絶対値がともに0.5%以上であることが好ましく、ともに0.5〜1.5%であることがより好ましく、ともに0.5〜1.0%であることが特に好ましい。
(遅相軸変化)
本発明のフィルムは、80℃、相対湿度90%の条件下で1時間熱処理した場合の遅相軸変化(以下、WET軸変化とも言う)が下記式(1)を満たす。
式(1) |ΔP1−ΔP0|<0.5°
(式(1)中、ΔP1は80℃、相対湿度90%の条件下で1時間熱処理した場合のフィルム幅方向において、フィルム搬送方向と遅相軸のなす角の最大値と最小値の差を表し、ΔPOは熱処理前のフィルム幅方向において、フィルム搬送方向と遅相軸のなす角の最大値と最小値の差を表す。)
なお、ここでいう熱処理とは、従来公知の製造方法における熱緩和処理を意味するものではない。
前記ΔP1とΔP0は、|ΔP1−ΔP0|<0.4°を満たすことが好ましく、|ΔP1−ΔP0|<0.3°を満たすことがより好ましい。
(Re、Rth)
本発明のフィルムは、下記式(2)〜(4)を満たすことが好ましい。
式(2) 20nm≦Re(590)≦200nm
(式(2)中、Re(590)は波長590nmにおける正面レターデーション値を表す。)
式(3) 70nm≦Rth(590)≦400nm
(式(3)中、Rth(590)は波長590nmにおける膜厚方向のレターデーション値を表す。)
式(4) Re(630)>Re(450)
(式(4)中、Re(630)は波長630nmにおける正面レターデーション値を表し、Re(450)は波長450nmにおける正面レターデーション値を表す。)
このような波長分散特性を有することで、本発明のフィルムを液晶表示装置に組み込んだときに、液晶表示画面を黒表示した時に斜めから観察した際のカラーシフトの問題を解決することができる。
本発明のフィルムは、位相差フィルムに用いる場合等には、ReおよびRthは液晶セルおよび光学フィルムの設計により適宜選択されるが、位相差フィルムとして液晶表示装置用の光学補償に用いる観点から、測定波長590nmにおいて面内方向のレターデーションReが30nm≦Re≦150nmであることがより好ましく、35nm≦Re≦90nmであることが特に好ましい。
本発明のフィルムは、膜厚方向のレターデーションRthが100nm≦Rth≦300nmであることがより好ましく、100nm≦Rth≦250nmであることが特に好ましい。
また本発明のフィルムは2軸性の光学補償フィルムであることが好ましい。
ここで光学補償フィルムが2軸性であるとは光学補償フィルムのnx、nyおよびnz(nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。)がそれぞれ全て異なる場合であり、本発明の場合にはnx>ny>nzであることがさらに好ましい。
本発明のフィルムが2軸性の光学特性を示すということは液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置における斜め方向から観察した場合のカラーシフトの問題を低減する上で好ましい特性である。
本明細書におけるRe(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、590nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
Figure 0005325083
ここで、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表し、nx、ny、nzは、屈折率楕円体の各主軸方位の屈折率を表し、dはフィルム厚を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d 式(B)
なおこの際、パラメータとして平均屈折率nが必要になるが、これはアッベ屈折計((株)アタゴ社製の「アッベ屈折計2−T」)により測定した値を用いた。
(光学フィルムの層構造)
本発明のフィルムは単層フィルムであっても、2層以上の積層構造を有していてもよいが、2層以上の積層構造を有していることが好ましい。
また、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は均一であっても、複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよいが、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は全て一定であることが光学特性の調整の観点から好ましい。
本発明のフィルムは3層以上の積層構造を有していることが好ましく、本発明のフィルムは全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含む低置換度層と、該低置換度層の両方の面上に全アシル置換度が2.70を超えるセルロースアシレート樹脂を含む高置換度層を少なくとも1層ずつ有することが光学補償フィルムとして所望の光学特性を実現させる工程における自由度向上の観点から好ましい(但し、各高置換度層の組成はそれぞれ独立であり、同一の組成であってもよい)。
前記高置換度層に用いられるセルロースアシレートの総アシル置換度は、2.70を超え2.95以下であることが好ましく、2.73〜2.95であることがより好ましく、2.75〜2.95であることが特に好ましい。
また、本発明のフィルムは、溶液製膜で製造する際に支持体と接する層(以下、スキンB層とも言う)が前記高置換度層であり、その他の層が前記低置換度層であることが溶液製膜時の支持体からの剥離性をさらに改善する観点から好ましい。なお、本発明のフィルムが3層以上の積層構造を有している場合に限り、フィルム製膜時に支持体と接していない側の表面層のことをスキンA層とも言う。
本発明のフィルムはスキンB層/コア層/スキンA層の3層構造であることが好ましい。本発明のフィルムが3層構造の場合、高置換度層/低置換度層/高置換度層という構成であっても低置換度層/高置換度層/低置換度層という構成であってもよいが、高置換度層/低置換度層/高置換度層の構成であることが、溶液製膜時の支持体からの剥離性を改善する観点および寸法安定性の観点から好ましい。
本発明のフィルムが3層構造であるとき、両面の表面層に含まれるセルロースアシレートは同じアシル置換度のセルロースアシレートを用いることが、製造コストの観点から好ましい。
本発明のフィルムは、全ての層がセルロースアシレート樹脂を含むことが、環状オレフィン系樹脂のみを含む層が形成されている態様と比較して、フィルムのヘイズの観点から好ましい。
本発明のフィルムが2層以上からなる場合、各層の間に接着剤または粘着剤を含まないことが、製造プロセスの削減の観点から好ましく、このような層構造の光学フィルムは後述する積層流延法によって製造することができる。
なお、接着剤または粘着剤を介して接着された複層構造のフィルムを製造するときに用いられる接着剤や粘着剤としては、例えば特開平11?295527号公報に記載がある。
(膜厚)
本発明のフィルムは膜厚が20〜50μmであることが、製造コストを低減する観点から好ましく、30〜50μmであることがより好ましく、35〜50μmであることが特に好ましい。本発明のフィルムが積層フィルムである場合、フィルムの合計膜厚の範囲が上記好ましい範囲であることが好ましい。
前記低置換度層の平均膜厚は30〜50μmであることが好ましく、30〜48μmであることがより好ましく、30〜45μmであることが特に好ましい。
本発明のフィルムは、前記高置換度層の少なくとも一方の平均膜厚が前記低置換度層平均膜厚の0.2%以上25%未満であることが、0.2%以上であれば剥離性が十分となり、スジ状のムラ、フィルムの膜厚不均一あるいは光学特性不均一が抑制され、25%未満であればコア層の光学発現性を有効に利用することができ、積層フィルムが十分な光学特性を得ることができる観点から好ましい。前記高置換度層の少なくとも一方の平均膜厚が前記低置換度層平均膜厚の0.5〜15%であることがより好ましく、1.0〜10%であることが特に好ましい。また、前記スキンA層および前記スキンB層の平均膜厚がともに前記コア層平均膜厚の0.2%以上25%未満であることが、より好ましい。
(フィルム幅)
本発明のフィルムは、フィルム幅が700〜3000mmであることが好ましく、1000〜2800mmであることがより好ましく、1500〜2500mmであることが特に好ましい。
<添加剤>
本発明のフィルム中には、添加剤として、非リン酸エステル系の化合物;レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤);フタル酸エステル、リン酸エステル系の化合物などの可塑剤;炭水化物誘導体;紫外線吸収剤;酸化防止剤;無機微粒子(マット剤)などの添加剤を加えることもできる。以下、本発明のフィルムに用いることができる添加剤について詳細に説明する。
(非リン酸エステル系の化合物)
前記フィルムは、非リン酸エステル系の化合物の化合物を含むことが、湿熱耐久性時にフィルムから添加剤が泣き出す現象を抑えるため好ましい。
前記フィルムは、前記低置換度層中に、非リン酸エステル系の化合物を含むことが好ましい。このような非リン酸エステル系の化合物を含むことにより、フィルムは白化しにくくなるという効果を奏する。
また、本明細書中、「非リン酸エステル系の化合物」とは、「エステル結合を有する化合物であって、該エステル結合に寄与する酸がリン酸以外である化合物」のことを言う。すなわち、「非リン酸エステル系の化合物」は、リン酸を含まず、エステル系である、化合物を意味する。
また、前記非リン酸エステル系の化合物は、低分子化合物であっても、ポリマー(高分子化合物)であってもよい。以下、ポリマー(高分子化合物)である非リン酸エステル系の化合物のことを、非リン酸エステル系ポリマーとも言う。
前記非リン酸エステル系の化合物としては、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の高分子量添加剤および低分子量添加剤を広く採用することができる。添加剤の含量は、セルロース系樹脂に対して、1〜35質量%であることが好ましく、4〜30質量%であることがより好ましく10〜25質量%であることがさらに好ましい。
前記非リン酸エステル系の化合物として用いられる高分子量添加剤は、その化合物中に繰り返し単位を有するものであり、数平均分子量が700〜10000のものが好ましい。高分子量添加剤は、溶液流延法において、溶媒の揮発速度を速める機能や、残留溶媒量を低減する機能も有する。さらに、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点で、有用な効果を示す。
ここで、前記非リン酸エステル系の化合物である高分子量添加剤の数平均分子量は、より好ましくは数平均分子量700〜8000であり、さらに好ましくは数平均分子量700〜5000であり、特に好ましくは数平均分子量1000〜5000である。
以下、本発明に用いられる非リン酸エステル系の化合物である高分子量添加剤について、その具体例を挙げながら詳細に説明するが、本発明で用いられる非リン酸エステル系の化合物である高分子量添加剤がこれらのものに限定されるわけでないことは言うまでもない。
前記非リン酸エステル系の化合物である高分子系添加剤としては、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)、ポリエステル系成分と他の成分の共重合体などが挙げられ、脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とアクリル系ポリマーの共重合体およびポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とスチレン系ポリマーの共重合体が好ましく、少なくとも共重合成分の1つとして芳香族環を含有するポリエステル化合物であることがより好ましい。
前記脂肪族ポリエステル系ポリマーとしては、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明のポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
前記炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸である。
前記高分子量添加剤に利用されるジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれるものである。
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics)レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
本発明においては、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された高分子量添加剤であることも好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
本発明のポリエステル添加剤の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
かかる前記高分子量添加剤の合成は、常法により上記脂肪族ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
前記芳香族ポリエステル系ポリマーは、前記ポリエステルポリマーに芳香環を有するモノマーを共重合することによって得られる。芳香環を有するモノマーとしては、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のモノマーである。
炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。これらの中でも好ましい芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、である。
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールである。
前記芳香族ポリエステル系ポリマーは前述のポリエステルに芳香族ジカルボン酸または芳香族ジオールのそれぞれの少なくとも一種類を組み合わせて用いられるが、その組み合わせは特に限定されるものではなく、それぞれの成分を数種類組み合わせても問題ない。前述のように、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された高分子量添加剤であることが好ましく、封止には前述の方法を使用することができる。
前記非リン酸エステル系の化合物以外のレターデーション低減剤として、例えば、リン酸エステル系の化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知のエステル系以外の化合物を広く採用することができる。
高分子系レターデーション低減剤としては、リン酸ポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーおよびこれら等の共重合体から選択され、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含まれることが好ましい。
非リン酸エステル系以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
非リン酸エステル系以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、特に限定されないが、詳細は特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に記載されている。
特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に一般式(1)として記載される化合物は、以下の方法にて作成することができる。
該公報一般式(1)の化合物は、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。
特開2007−272177号公報一般式(2)に記載の化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、またはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
前記レターデーション低減剤は、Rth低減剤であることが好適なNzファクターを実現する観点からより好ましい。前記レターデーション低減剤のうち、Rth低減剤としては、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマー、特開2007−272177号公報一般式(3)〜(7)の低分子化合物などを挙げることができ、その中でもアクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーがより好ましい。
レターデーション低減剤は、セルロース系樹脂に対し、0.01〜30質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜20質量%の割合で添加することがより好ましく、0.1〜10質量%の割合で添加することが特に好ましい。
上記添加量を30質量%以下とすることにより、セルロース系樹脂との相溶性を向上させることができ、白化を抑制させることができる。2種類以上のレターデーション低減剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
(可塑剤)
前記可塑剤としては、セルロースアシレートの可塑剤として知られる多くの化合物も有用に使用することができる。可塑剤としては、リン酸エステル系化合物またはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステル系化合物の例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
(レターデーション発現剤)
本発明のフィルムは、レターデーション発現剤を含んでいてもよい。レターデーション発現剤を採用することにより、低延伸倍率で高いRe発現性を得られる。レターデーション発現剤の種類としては、特に定めるものではないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、前記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。上記棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
レターデーション発現材としては、例えば特開2004−50516号公報、特開2007−86748号公報に記載されている化合物を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
円盤状化合物としては、例えば欧州特許出願公開第0911656A2号明細書に記載の化合物、特開2003−344655号公報に記載のトリアジン化合物、特開2008−150592号公報[0097]〜[0108]に記載されるトリフェニレン化合物も好ましく用いることもできる。
円盤状化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法、特開2005−134884号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。
前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができ、例えば特開2008−150592号公報[0110]〜[0127]に記載される棒状化合物を好ましく用いることができる。
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより長波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J. Am. Chem. Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J. Org. Chem., 40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
(炭水化物誘導体)
本発明のフィルムは、炭水化物誘導体を含んでいてもよい。炭水化物誘導体をセルロースアシレートフィルムに添加することにより、光学特性の発現性を損なわず、かつヘイズを上昇させることなく、フィルムの含水率を大幅に低減できる。
さらに、該セルロースアシレートフィルムを偏光板保護フィルムとして用いることにより、高温高湿下での偏光子の性能劣化を大幅に改良できる。
本発明に用いられる炭水化物誘導体は、用いられる置換基を含め、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(1)
(OH)p−G−(L1−R1q(L2−R2r
一般式(1)中、Gは単糖残基または、多糖類残基を表し、L1およびL2はそれぞれ独立に−O−、−CO−、−NR3−のいずれか一つを表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または一価の置換基を表し、R1およびR2の少なくとも一方は芳香環を有することが好ましい。p、qおよびrはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、qおよびrの少なくとも一方は1以上の整数であり、p+q+rは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシル基の数と等しい。
前記Gの好ましい範囲は、後述する構成糖の好ましい範囲と同様である。
前記L1およびL2は、−O−または−CO−であることが好ましく、−O−であることがより好ましい。前記L1およびL2が−O−である場合は、エーテル結合またはエステル結合由来の連結基であることが特に好ましく、エステル結合由来の連結基であることがより特に好ましい。
また、前記L1およびL2がそれぞれ複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記R1、R2およびR3は、一価の置換基であることが好ましい。特に、前記L1およびL2が−O−である場合(すなわち前記炭水化物誘導体中のヒドロキシル基にR1、R2およびR3が置換している場合)、前記R1、R2およびR3は置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアリール基、あるいは、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアミノ基の中から選択されることが好ましく、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアルキル基、あるいは置換または無置換のアリール基であることがより好ましく、無置換のアシル基、置換または無置換のアルキル基、あるいは、無置換のアリール基であることが特に好ましい。
また、前記R1、R2およびR3がそれぞれ複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記pは0以上の整数を表し、好ましい範囲は後述する単糖ユニット当たりのヒドロキシル基の数の好ましい範囲と同様である。
前記qおよび前記rはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、少なくとも一方は1以上の整数を表す。前記qおよびrの一方が0であることが好ましい。
また、p+q+rは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシル基の数と等しいため、前記p、qおよびrの上限値は前記Gの構造に応じて一意に決定される。
前記炭水化物誘導体の置換基の好ましい例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−シアノエチル基、ベンジル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアシル基、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、トルイル基、フタリル基など)、アミド基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアミド、例えばホルムアミド基、アセトアミド基など)、イミド基(好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは炭素数4〜8のアミド基、例えば、スクシイミド基、フタルイミド基など)を挙げることができる。その中でも、アシル基がより好ましく、アセチル基が特に好ましい。
−単糖ユニット当たりのヒドロキシル基の数−
また、前記炭水化物誘導体中の単糖ユニット当たりのヒドロキシル基の数(以下、ヒドロキシル基含率とも言う)は、1以下であることが好ましい。ヒドロキシル基含率を前記範囲に制御することにより、高温高湿経時における炭水化物誘導体の偏光子層への移動およびPVA-ヨウ素錯体の破壊を抑制でき、高温高湿経時における偏光子性能の劣化を抑制する点から好ましい。
−構成糖−
前記炭水化物誘導体は、単糖または2〜5個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体であることが好ましく、単糖または2個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体であることがより好ましい。
前記炭水化物誘導体を好ましく構成する単糖または多糖は、分子中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基など)が少なくとも2種の置換基で置換されており、かつ前記置換基のうち少なくとも1種が少なくとも一つの芳香環を有する置換基で置換されていることが好ましい。
前記単糖または2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
前記炭水化物誘導体の入手方法としては、市販品として(株)東京化成製、アルドリッチ製等から入手可能であり、もしくは市販の炭水化物に対して既知のエステル誘導体化法(例えば、特開平8−245678号公報に記載の方法)を行うことにより合成可能である。
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含む未延伸フィルムをTg−50℃〜Tgの温度で延伸する工程を含み、前記延伸を開始するときの残留溶剤量が前記フィルム全体の質量に対して5質量%以上であることを特徴とする(但し、Tgは光学フィルムのガラス転移温度を表す。)。
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
前記光学フィルムは、ソルベントキャスト法により製造されるのが好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートを含有する光学フィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の公報を参考にすることができる。また、前記光学フィルムは、Tg−50℃〜Tgの延伸温度において、延伸を開始するときの残留溶剤量が前記フィルム全体の質量に対して5質量%以上の条件で延伸処理を施されており、その他の延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
<流延方法>
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
本発明の製造方法では、全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含むドープを流涎し、全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含む未延伸フィルムを製膜する。本発明の製造方法では、前記未延伸フィルムは、コア層用のセルロースアシレート溶液(コア層用ドープ)と、スキン層用ドープを支持体上に形成する工程を含むプロセスで製造されることが好ましい。
本発明のフィルムの形成においては共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、特に同時共流延法を用いることが、安定製造および生産コスト低減の観点から特に好ましい。
共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。
前記共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でも良い)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。図2に、共流延ギーサ3を用い、流延用支持体4の上に表層用ドープ1とコア層用ドープ2を3層同時に押出して流延する状態を断面図で示した。
前記逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
本発明の製造方法は、全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含むコア層用ドープと、全アシル置換度が2.70を超えるセルロースアシレート樹脂を含むスキン層用ドープを、前記コア層用ドープの両面に前記スキン層用ドープが積層されるように逐次流延または同時共流延して前記未延伸フィルムを形成することが好ましい。本発明の製造方法は、前記コア層用ドープの両面に前記スキン層用ドープが積層されるように同時共流延することがより好ましい。
本発明の製造方法は、全てのドープがセルロースアシレート樹脂を含むことが、環状オレフィン系樹脂のみを含むドープを用いる態様と比較して、フィルムのヘイズの観点から好ましい。
本発明のフィルムを製造するのに使用される支持体としては、エンドレスに走行する金属支持体として、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられることが好ましい。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基又は2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべての溶液温度が同一でもよく、又は工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
<延伸処理>
本発明の製造方法では、製膜された未延伸フィルムをTg−50℃〜Tgの温度で延伸する工程を含み、前記延伸を開始するときの残留溶剤量が前記フィルム全体の質量に対して5質量%以上である。前述の本発明のフィルムの特徴は、このような条件での延伸処理によって付与することが可能となり、さらに本発明のフィルムに所望のレターデーションを付与することが可能である。
(延伸温度)
前記延伸温度はTg−50℃〜Tgであり、Tg−40℃〜Tg−5℃であることが好ましく、Tg−40℃〜Tg−10℃であることが特に好ましい。
(残留溶媒量)
本発明のフィルムの製造方法では、延伸を開始するときの残留溶剤量は前記フィルム全体の質量に対して5質量%以上であり、5〜40質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが特に好ましい。
なお、残留溶媒量は下記の式にしたがって求めた。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを120℃で2時間乾燥させた時の質量である。
本発明の製造方法における延伸倍率は、5%〜200%が好ましく、10%〜100%がさらに好ましく、20%〜50%が特に好ましい。
セルロースアシレートフィルムの延伸方向はフィルム搬送方向と搬送方向に直交する方向(巾方向)のいずれでも好ましいが、フィルム搬送方向に直交する方向(幅方向)であることが、後に続く該フィルムを用いた偏光板加工プロセスにおける作業性の観点から特に好ましい。
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。長手方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
また、セルロースアシレートフィルムの延伸方向はフィルム搬送方向と搬送方向に直交する方向の両方に延伸してもよいが、光学フィルムを偏光子の保護膜として使用する場合には、偏光板を斜めから見たときの光漏れを抑制するため、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状の本発明の光学フィルムである保護膜とを連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよいが、本発明の製造方法では残留溶媒を含んだ状態で延伸を行うため、製膜工程の途中で延伸することが好ましい。
本発明のフィルムの製造方法では、前記延伸工程後に熱緩和処理する工程を含まないことが好ましい。すなわち、本発明のフィルムの製造方法では、前記延伸工程後にフィルムを加熱しながら延伸する工程を含まないことが好ましく、前記延伸工程後にフィルムを前記延伸温度よりも高温にする工程を含まないことが好ましい。
<乾燥>
本発明の製造方法では、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、得られた光学フィルムを乾燥する工程を含むことが好ましい。
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラム又はベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム又はベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム又はベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、本発明の趣旨に反しない限り、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよいが、前記延伸温度以下であることが好ましい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
以上のようにして得られた、セルロースアシレートフィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
本発明のフィルムは、特に大画面液晶表示装置に用いるのに適している。大画面用液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、本発明のフィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の光学フィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様の光学フィルムも含まれる。後者の態様の光学フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられた光学補償フィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
[偏光板]
また、本発明は、偏光子と、本発明のフィルムを少なくとも一枚用いることを特徴とする偏光板にも関する。
本発明の偏光板は、偏光子と、該偏光子の片面に本発明のフィルムを有することが好ましい。本発明の光学補償フィルムと同様、本発明の偏光板の態様は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
本発明の偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。
[液晶表示装置]
本発明は本発明の偏光板を有する液晶表示装置にも関する。
本発明の液晶表示装置は液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が本発明の偏光板であることを特徴とするIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。
本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば図1に記載の構成とした例を採用することができる。また、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
[実施例1〜13、比較例1〜5]
(セルロースアシレートの調製)
特開平10−45804号公報、同08−231761号公報に記載の方法で、セルロースアシレートを合成し、その置換度を測定した。具体的には、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
(コア層用セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、実施例1のコア層用セルロースアシレート溶液を調製した。
・セルロースアセテート(置換度2.45) 100.0質量部
・化合物A 15.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
(スキン層用セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、実施例1のスキン層用セルロースアシレート溶液を調製した。
・セルロースアセテート(置換度2.79) 100.0質量部
・化合物A 15.0質量部
・メチレンクロライド 395.0質量部
・メタノール 59.0質量部
添加剤として用いた化合物Aの組成について、その他の実施例および比較例で用いたその他の添加剤の構造とあわせて下記に示す。
Figure 0005325083
上記表1中、TPAはテレフタル酸を、PAはフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸を、EGはエチレングリコールを、PGはプロピレングリコールをそれぞれ示している。なお、化合物A〜Cはいずれも非リン酸エステル系の化合物であり、かつ、レターデーション発現剤でもある。化合物Fは、特開2008−262161号公報に記載の化合物であるレターデーション発現剤の構造の例として挙げられている下記の構造の化合物を表す。
化合物D
Figure 0005325083
化合物E
Figure 0005325083
化合物F
Figure 0005325083
下記表2に示したようにセルロースアシレートのアシル基の種類と置換度、添加剤量や添加剤種を変更した以外は実施例1と同様にしてその他のセルロースアシレート溶液を調製した。
実施例13で用いたCAP2.50はセルロースアセテートプロピオネートを表す。
また、実施例13、比較例1および5はコア層用ドープのみを単層にて流涎したものである。
(光学フィルムの作成)
前記コア層用セルロースアシレート溶液を下記表2に記載の膜厚のコア層になるように、前記スキン層用セルロースアシレート溶液を下記表3に記載の膜厚のスキン層になるように、それぞれ流延した。得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、クリップに挟み、その後フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が15〜30%の状態のときに下記表2に示した条件でテンターを用いて横延伸を開始した。その後にフィルムからクリップを外して下記表2に記載の乾燥温度で20分間乾燥させた。
また、得られたフィルムのTg(ガラス転移温度)を以下の方法から求めた。5mm×30mmのサンプルを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置DVA−225(アイティー計測制御(株)社製)を用いて、つかみ間距離20mm、周波数1Hzで測定することによって得られる貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)が入れ替わるtanδの温度を求め、これをTgとした。得られた結果を下記表2に記載した。
<フィルム特性の評価>
実施例および比較例のフィルムの特性について、以下の測定および評価を実施した。
(フィルムのレターデーション)
前述の方法により自動複屈折計KOBRA−WR(王子計測器(株)製)を用いて波長590nmにおいて3次元複屈折測定を行い、面内のレターデーションRe(590)、および傾斜角を変えてReを測定することで得られる膜厚方向のレターデーションRth(590)を求めた。ReおよびRthの値を下記表2に示した。
(寸度変化量)
60℃相対湿度90%で24時間経過前後の寸度変化率、すなわち(L'−L0)/L0}×100%の値を、フィルム搬送方向およびそれに直交する方向において求めた。ここで、前記L0は60℃相対湿度90%で24時間経過させる前のフィルム長さ(単位:mm)を表し、前記L’は60℃相対湿度90%で24時間経過させ、さらに2時間調湿した後のフィルム長さ(単位:mm)を表す。また、用いたサンプルフィルムは30mm×120mmのものを用い、その他の条件は以下のとおりとした。
25℃、相対湿度60%の雰囲気下で2時間以上調湿後、自動ピンゲージ(新束科学(株)製)にて、フィルムの120mm辺に平行になるように6mmφの穴を100mm間隔に開け、間隔の原寸(L0)を最小目盛り1/1000mmまで測定する。そして上記条件で湿熱処理した後に、25℃、相対湿度60%の雰囲気下で2時間調湿後、パンチの間隔の寸法L’を測定する。
得られた結果を下記表2に示した。
(WET軸変化量)
下記式(1)で表される60℃相対湿度90%で24時間経過前後の遅相軸の変化量をフィルム搬送方向に直交する方向において求めた。
式(1) |ΔP1−ΔP0|<0.5°
(式(1)中、ΔP1は80℃、相対湿度90%の条件下で1時間熱処理した場合のフィルム幅方向において、フィルム搬送方向と遅相軸のなす角の最大値と最小値の差を表し、ΔP0は熱処理前のフィルム幅方向において、フィルム搬送方向と遅相軸のなす角の最大値と最小値の差を表す。)
前記ΔP1および前記ΔP0は、70mm×110mmのサンプルフィルムをフィルム搬送方向に直交する方向においてフィルム中央から1点、中央から端に向かって600mm間隔を開けた箇所で両端それぞれ1点ずつ、合計幅方向で3点切り出し、各サンプルフィルムの遅相軸のズレ量の最大値と、最小値の差を計算した。また、遅相軸の測定は、複屈折計(KOBRA DH、王子計測機器(株)製)を用いて行った。
得られた結果を下記表2に示した。なお、比較例1では初期遅相軸ズレが非常に大きく、液晶表示装置に組み込んだときの表示性能が悪かったため、WET軸変化量については評価を行わなかった。
Figure 0005325083
上記表2より、本発明の製造方法で得られた本発明のフィルムは、膜厚が薄いにも関わらずレターデーション発現量が十分発現されており、寸度変化量の絶対値がある程度高く、湿熱環境下での遅相軸変化量が小さいことがわかった。
一方、比較例1のフィルムは延伸温度を、本発明の範囲を超える温度として製造したものであり、得られるフィルムの寸度変化量が小さくなり過ぎてしまうことがわかった。比較例2のフィルムはセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を、本発明の範囲を超える値として製造したものであり、比較例2のフィルムでは得られるフィルムの遅相軸の変化量が大きくなってしまうことがわかった。比較例3および4のフィルムは延伸温度を、本発明の範囲を下回る温度として製造したものであり、得られるフィルムは遅相軸の変化量が大きくなってしまうことがわかった。比較例5のフィルムはセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を、本発明の範囲を下回る値としたものであり、得られるフィルムは光学フィルムの体をなさなかった。
(偏光板試料の作製)
上記で作製した各実施例および比較例の光学フィルムの表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理した各実施例および比較例の光学フィルムと、同様のアルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士フイルム社製)を用意し、これらの鹸化した面が偏光子側となるようにして偏光子を間に挟んで貼り合わせ、各実施例および比較例の光学フィルム、偏光子、TD80ULがこの順に貼り合わせてある偏光板をそれぞれ得た。この際、各光学フィルムのMD方向およびTD80ULの遅相軸が、偏光子の吸収軸と平行になるように貼り付けた。
(液晶表示装置の作製)
VAモードの液晶TV(LCD−40MZW100、三菱(株)製)の表裏の偏光板および位相差板を剥がして、液晶セルとして用いた。図1(上方がフロント側)の構成のように、外側保護フィルム(不図示)、偏光子11、下記表に記載の各実施例および比較例の光学フィルム14(リア側のセルロースアシレートフィルム)、液晶セル13(上記のVA液晶セル)、下記表に記載の各実施例および比較例のフィルム15(フロント側のセルロースアシレートフィルム)、偏光子12および外側保護フィルム(不図示)をこの順に粘着剤を用いて貼り合わせ、各実施例および比較例(実施例5、比較例2以外)の液晶表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の吸収軸が直交するように貼り合わせた。実施例5、比較例2では、フロント側(視認側)のセルロースアシレートフィルム15は富士フイルム製の“フジタックTD80UF”を、リア側には本発明の光学フィルムまたは比較例の光学フィルム14をそれぞれ使用した以外は同様にして、液晶表示装置を作成した。
<液晶表示装置の評価>
作製した液晶表示装置の透過率の視野角依存性を測定した。あおり角は正面から斜め方向へ10°ごとに80°まで、方位角は水平右方向(0°)を基準として10°ごとに360°まで測定した。
その結果、黒表示時の輝度は正面方向からあおり角が増すにつれ、漏れ光透過率も上昇し、あおり角70°近傍でコントラストが悪化することもわかった。
(正面コントラスト評価)
正面の黒表示透過率を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:良好。
△:わずかに低下。
×:低下。
××:著しく低下。
得られた結果を下記表3に記載した。
(WETでの視野角変化)
また、WET環境での表示性能評価として、60℃相対湿度90%で100時間静置したパネルの視野角コントラストの評価を行った。
○:視野角コントラストの変化がわずかであり、良好。
△:視野角コントラストの変化が大きい。
×:視野角コントラストの変化が非常に大きい。
得られた結果を下記表3に記載した。
Figure 0005325083
表3より本発明の液晶表示装置は、偏光板加工プロセスを経て液晶表示装置に組み込んだときの正面コントラストが高く、視野角特性が改善されていることがわかった。一方、比較例の液晶表示装置は、正面コントラストと視野角特性の改善を両立することができていないことがわかった。
1 スキン層用ドープ
2 コア層用ドープ
3 共流延ギーサ
4 流延用支持体
11 偏光子
12 偏光子
13 液晶セル
14 各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム(但し、実施例5、比較例2では光学異方性フィルム(フジタックTD80UF)を使用)
15 各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム

Claims (16)

  1. 全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含み、
    80℃、相対湿度90%の条件下で1時間熱処理した場合の遅相軸変化が下記式(1)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
    式(1) |ΔP1−ΔP0|<0.5°
    (式(1)中、ΔP1は80℃、相対湿度90%の条件下で1時間熱処理した場合のフィルム幅方向において、フィルム搬送方向と遅相軸のなす角の最大値と最小値の差を表し、ΔP0は熱処理前のフィルム幅方向において、フィルム搬送方向と遅相軸のなす角の最大値と最小値の差を表す。)
  2. 60℃、相対湿度90%の条件下で24時間静置した場合のフィルム搬送方向の寸度変化率の絶対値とフィルム搬送方向に直交する方向の寸度変化率の絶対値のいずれか一方が0.5%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 60℃、相対湿度90%の条件下で24時間静置した場合のフィルム搬送方向の寸度変化率の絶対値とフィルム搬送方向に直交する方向の寸度変化率の絶対値がともに0.5%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
  4. 下記式(2)〜(4)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
    式(2) 20nm≦Re(590)≦200nm
    (式(2)中、Re(590)は波長590nmにおける正面レターデーション値を表す。)
    式(3) 70nm≦Rth(590)≦400nm
    (式(3)中、Rth(590)は波長590nmにおける膜厚方向のレターデーション値を表す。)
    式(4) Re(630)>Re(450)
    (式(4)中、Re(630)は波長630nmにおける正面レターデーション値を表し、Re(450)は波長450nmにおける正面レターデーション値を表す。)
  5. 膜厚が20〜50μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  6. 全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含む低置換度層と、
    該低置換度層の両方の面上に全アシル置換度が2.70を超えるセルロースアシレート樹脂を含む高置換度層を少なくとも1層ずつ有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルム(但し、各高置換度層の組成はそれぞれ独立であり、同一の組成であってもよい)。
  7. 全ての層がセルロースアシレート樹脂を含むことを特徴とする請求項6に記載の光学フィルム。
  8. 前記セルロースアシレート樹脂がセルロースアセテートであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  9. 全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含む未延伸フィルムをTg−50℃〜Tgの温度で延伸する工程を含み、
    前記延伸を開始するときの残留溶剤量が前記フィルム全体の質量に対して5質量%以上であることを特徴とする光学フィルムの製造方法(但し、Tgは光学フィルムのガラス転移温度(単位:℃)を表す。)
  10. 全アシル置換度が2.30〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含むコア層用ドープと、全アシル置換度が2.70を超えるセルロースアシレート樹脂を含むスキン層用ドープを、前記コア層用ドープの両面に前記スキン層用ドープが積層されるように逐次流延または同時共流延して前記未延伸フィルムを形成することを特徴とする請求項9に記載の光学フィルムの製造方法。
  11. 前記コア層用ドープの両面に前記スキン層用ドープが積層されるように同時共流延することを特徴とする請求項10に記載の光学フィルムの製造方法。
  12. 全てのドープがセルロースアシレート樹脂を含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  13. 前記セルロースアシレート樹脂がセルロースアセテートであることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  14. 請求項9〜13のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
  15. 偏光子と、請求項1〜8および14のいずれか一項に記載の光学フィルムを少なくとも1枚有することを特徴とする偏光板。
  16. 請求項1〜8および14のいずれか一項に記載の光学フィルムあるいは請求項15に記載の偏光板を少なくとも1枚有することを特徴とする液晶表示装置。
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