以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有するエチレン含有量5〜55モル%の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)1〜99重量%、及び(C)以外の熱可塑性樹脂(T1)1〜99重量%からなる樹脂組成物である。
(式中、R1、R2、R3及びR4は、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(アルキル基又はアルケニル基など)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基(フェニル基など)を表す。R1、R2、R3及びR4は同じ基でもよいし、異なっていても良い。また、R3とR4とは結合していてもよい(ただし、R3及びR4がともに水素原子の場合は除かれる)。また上記のR1、R2、R3及びR4は他の基、例えば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子などを有していてもよい。)
本発明で使用する変性EVOH(C)は、上記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有するエチレン含有量5〜55モル%の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)である。
より好適な実施態様では、前記R1及びR2がともに水素原子である。さらに好適な実施態様では、前記R1及びR2がともに水素原子であり、前記R3及びR4のうち、一方が炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であって、かつ他方が水素原子である。好適には、前記脂肪族炭化水素基がアルキル基又はアルケニル基である。変性EVOH(C)をバリア材として使用する際のガスバリア性を特に重視する観点からは、前記R3及びR4のうち、一方がメチル基又はエチル基であり、他方が水素原子であることがより好ましい。
また、変性EVOH(C)をバリア材として使用する際のガスバリア性の観点からは、前記R3及びR4のうち、一方が(CH2)iOHで表される置換基(ただし、i=1〜8の整数)であり、他方が水素原子であることも好ましい。バリア材としてのガスバリア性を特に重視する場合は、前記の(CH2)iOHで表される置換基において、i=1〜4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
変性EVOH(C)に含まれる上述の構造単位(I)の量は0.3〜40モル%の範囲内であることが必要である。構造単位(I)の量の下限は、0.5モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましく、2モル%以上であることがさらに好ましい。一方、構造単位(I)の量の上限は、35モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、25モル%以下であることがさらに好ましい。含まれる構造単位(I)の量が上記の範囲内にあることで、ガスバリア性、透明性、延伸性、柔軟性及び耐屈曲性を兼ね備えた変性EVOH(C)を得ることができる。
変性EVOH(C)のエチレン含有量は5〜55モル%であることが好ましい。変性EVOH(C)が、良好な延伸性、柔軟性及び耐屈曲性を得る観点からは、変性EVOH(C)のエチレン含有量の下限はより好適には10モル%以上であり、さらに好適には20モル%以上であり、特に好適には25モル%以上であり、さらに好適には31モル%以上である。一方、変性EVOH(C)のガスバリア性の観点からは、変性EVOH(C)のエチレン含有量の上限はより好適には50モル%以下であり、さらに好適には45モル%以下である。エチレン含有量が5モル%未満の場合は溶融成形性が悪化するおそれがあり、55モル%を超えるとガスバリア性が不足するおそれがある。
変性EVOH(C)を構成する、上記構造単位(I)及びエチレン単位以外の構成成分は、主としてビニルアルコール単位である。このビニルアルコール単位は、通常、原料のEVOH(A)に含まれるビニルアルコール単位のうち、一価エポキシ化合物(B)と反応しなかったビニルアルコール単位である。また、EVOH(A)に含まれることがある未ケン化の酢酸ビニル単位は、通常そのまま変性EVOH(C)に含有される。変性EVOH(C)は、これらの構成成分を含有するランダム共重合体であることが、NMRの測定や融点の測定結果からわかった。さらに、本発明の目的を阻害しない範囲内で、その他の構成成分を含むこともできる。
変性EVOH(C)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜30g/10分であり、より好適には0.3〜25g/10分、更に好適には0.5〜20g/10分である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
上記の変性EVOH(C)を製造する方法は特に限定されない。本発明者らが推奨する方法は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)とを反応させることにより、変性EVOH(C)を得る方法である。
また、本発明が解決しようとする課題は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)とを反応させて得られた変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)1〜99重量%、及び(C)以外の熱可塑性樹脂(T1)1〜99重量%からなる樹脂組成物を提供することによっても達成される。
本発明で、熱可塑性樹脂(T1)と混合される変性EVOH(C)の原料として用いられるEVOH(A)として好適なものは、以下に説明する通りである。本発明の別の実施態様である動的に架橋処理して得られる樹脂組成物を製造する際に使用される変性EVOH(C)の原料として好適に用いられるEVOH(A)については後述する。
変性EVOH(C)の原料として用いられるEVOH(A)としては、エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られるものが好ましい。EVOHの製造時に用いるビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、本発明の目的が阻害されない範囲であれば、他の共単量体、例えば、プロピレン、ブチレン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸又はそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸又はその塩;アルキルチオール類;N−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドン等を共重合することもできる。
EVOH(A)として、共重合成分としてビニルシラン化合物を共重合したEVOHを用いる場合、共重合量として0.0002〜0.2モル%を含有することが好ましい。かかる範囲でビニルシラン化合物を共重合成分として有することにより、共押出成形を行う際の、基材樹脂と変性EVOH(C)との溶融粘性の整合性が改善され、均質な共押出多層フィルム成形物の製造が可能となる場合がある。特に、溶融粘度の高い基材樹脂を用いる場合、均質な共押出多層フィルム成形物を得ることが容易となる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
本発明に用いられるEVOH(A)のエチレン含有量は5〜55モル%であることが好ましい。変性EVOH(C)が、良好な延伸性、柔軟性及び耐屈曲性を得る観点からは、EVOH(A)のエチレン含有量の下限はより好適には10モル%以上であり、さらに好適には20モル%以上であり、特に好適には25モル%以上であり、さらに好適には31モル%以上である。一方、変性EVOH(C)のガスバリア性の観点からは、EVOH(A)のエチレン含有量の上限はより好適には50モル%以下であり、さらに好適には45モル%以下である。エチレン含有量が5モル%未満の場合は溶融成形性が悪化するおそれがあり、55モル%を超えるとガスバリア性が不足するおそれがある。なおここで、EVOH(A)がエチレン含有量の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をエチレン含有量とする。
さらに、本発明に用いられるEVOH(A)のビニルエステル成分のケン化度は好ましくは90%以上である。ビニルエステル成分のケン化度は、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上であり、最適には99%以上である。ケン化度が90%未満では、ガスバリア性、特に高湿度時のガスバリア性が低下するおそれがあるだけでなく、熱安定性が不十分となり、成形物にゲル・ブツが発生しやすくなるおそれがある。なおここで、EVOH(A)がケン化度の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
なお、EVOH(A)のエチレン含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
さらに、EVOH(A)として、本発明の目的を阻害しない範囲内で、ホウ素化合物をブレンドしたEVOHを用いることもできる。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と表示する場合がある)が好ましい。
EVOH(A)として、ホウ素化合物をブレンドしたEVOH(A)を用いる場合、ホウ素化合物の含有量は好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。この範囲内でホウ素化合物をブレンドすることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOH(A)を得ることができる。20ppm未満ではそのような効果が小さく、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
また、EVOH(A)として、リン酸化合物を配合したEVOH(A)を用いてもよい。これにより樹脂の品質(着色等)を安定させることができる場合がある。本発明に用いられるリン酸化合物としては特に限定されず、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩のいずれの形で含まれていても良いが、第一リン酸塩が好ましい。そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。これらの中でもリン酸二水素ナトリウム及びリン酸二水素カリウムが好ましい。リン酸化合物を配合したEVOH(A)を用いる場合の、リン酸化合物の含有量は、好適にはリン酸根換算で200ppm以下であり、より好適には5〜100ppmであり、最適には5〜50ppmである。
ただし、後述のように周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)の存在下にEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させる場合には、リン酸塩が触媒を失活させるのでできるだけ少ないことが好ましい。その場合のEVOH(A)のリン酸化合物の含有量は、好適にはリン酸根換算で200ppm以下であり、より好適には100ppm以下であり、最適には50ppm以下である。
また、後述する通り、変性EVOH(C)は、好適にはEVOH(A)と分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)との反応を、押出機内で行わせることによって得られるが、その際に、EVOHは加熱条件下に晒される。この時に、EVOH(A)が過剰にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含有していると、得られる変性EVOH(C)に着色が生じるおそれがある。また、変性EVOH(C)の粘度低下等の問題が生じ、成形性が低下するおそれがある。また、後述のように触媒(D)を使用する場合には、触媒(D)を失活させるため、それらの添加量はできるだけ少ないことが好ましい。
上記の問題を回避するためには、EVOH(A)が含有するアルカリ金属塩が金属元素換算値で50ppm以下であることが好ましい。より好ましい実施態様では、EVOH(A)が含有するアルカリ金属塩が金属元素換算値で30ppm以下であり、さらに好ましくは20ppm以下である。また、同様な観点から、EVOH(A)が含有するアルカリ土類金属塩が金属元素換算値で20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましく、EVOH(A)にアルカリ土類金属塩が実質的に含まれていないことが最も好ましい。
また、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、EVOH(A)として、熱安定剤、酸化防止剤を配合したものを用いることもできる。
本発明に用いられるEVOH(A)の固有粘度は0.06L/g以上であることが好ましい。EVOH(A)の固有粘度はより好ましくは0.07〜0.2L/gの範囲内であり、さらに好ましくは0.075〜0.15L/gであり、特に好ましくは0.080〜0.12L/gである。EVOH(A)の固有粘度が0.06L/g未満の場合、延伸性、柔軟性及び耐屈曲性が低下するおそれがある。また、EVOH(A)の固有粘度が0.2L/gを超える場合、変性EVOH(C)を含む成形物においてゲル・ブツが発生しやすくなるおそれがある。
本発明に用いられるEVOH(A)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜30g/10分であり、より好適には0.3〜25g/10分、更に好適には0.5〜20g/10分である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。MFRの異なる2種以上のEVOHを混合して用いることもできる。
本発明に用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)は、一価のエポキシ化合物であることが必須である。すなわち、分子内にエポキシ基を一つだけ有するエポキシ化合物でなければならない。二価又はそれ以上の、多価のエポキシ化合物を用いた場合は、本発明の効果を奏することができない。ただし、一価エポキシ化合物の製造工程において、ごく微量に多価エポキシ化合物が含まれることがある。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ごく微量の多価エポキシ化合物が含まれる一価のエポキシ化合物を、本発明における分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)として使用することも可能である。
本発明に用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)は特に限定されない。具体的には、下記式(III)〜(IX)で示される化合物が、好適に用いられる。
(式中、R5、R6、R8及びR9は、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(アルキル基又はアルケニル基など)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基(フェニル基など)を表す。R7は水素原子を表す。また、i、l及びmは、1〜8の整数を表す。)
上記式(III)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、エポキシエタン(エチレンオキサイド)、エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、3−メチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、3−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−2,3−エポキシペンタン、3−エチル−1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘキサン、3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、3−エチル−1,2−エポキシヘキサン、3−プロピル−1,2−エポキシヘキサン、4−エチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−2,3−エポキシヘキサン、4−エチル−2,3−エポキシヘキサン、2−メチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−1,2−エポキシへプタン、5−メチル−1,2−エポキシへプタン、6−メチル−1,2−エポキシへプタン、3−エチル−1,2−エポキシへプタン、3−プロピル−1,2−エポキシへプタン、3−ブチル−1,2−エポキシへプタン、4−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−プロピル−1,2−エポキシへプタン、5−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−2,3−エポキシへプタン、4−エチル−2,3−エポキシへプタン、4−プロピル−2,3−エポキシへプタン、2−メチル−3,4−エポキシへプタン、5−メチル−3,4−エポキシへプタン、5−エチル−3,4−エポキシへプタン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシへプタン、2−メチル−5−エチル−3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシヘプタン、2,3−エポキシヘプタン、3,4−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、2,3−エポキシオクタン、3,4−エポキシオクタン、4,5−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、2,3−エポキシノナン、3,4−エポキシノナン、4,5−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、2,3−エポキシデカン、3,4−エポキシデカン、4,5−エポキシデカン、5,6−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、2,3−エポキシウンデカン、3,4−エポキシウンデカン、4,5−エポキシウンデカン、5,6−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、2,3−エポキシドデカン、3,4−エポキシドデカン、4,5−エポキシドデカン、5,6−エポキシドデカン、6,7−エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1−フェニル−1,2−エポキシプロパン、3−フェニル−1,2−エポキシプロパン、1−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシブタン、4−フェニル−1,2−エポキシブタン、1−フェニル−1,2−エポキシペンタン、3−フェニル−1,2−エポキシペンタン、4−フェニル−1,2−エポキシペンタン、5−フェニル−1,2−エポキシペンタン、1−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、3−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、4−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、5−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、6−フェニル−1,2−エポキシヘキサン等が挙げられる。
上記式(IV)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、グリシドール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール、6,7−エポキシ−1−へプタノール、7,8−エポキシ−1−オクタノール、8,9−エポキシ−1−ノナノール、9,10−エポキシ−1−デカノール、10,11−エポキシ−1−ウンデカノール等が挙げられる。
上記式(VII)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、3,4−エポキシ−2−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノール、1,2−エポキシ−3−ペンタノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘキサノール、4,5−エポキシ−3−ヘキサノール、1,2−エポキシ−3−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−エチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジエチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−4−エチル−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5−メチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5,5−ジメチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−ヘプタノール、4,5−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−4−ヘプタノール、1,2−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−オクタノール、3,4−エポキシ−2−オクタノール、4,5−エポキシ−3−オクタノール、5,6−エポキシ−4−オクタノール、2,3−エポキシ−4−オクタノール、1,2−エポキシ−3−オクタノール、2,3−エポキシ−1−ノナノール、3,4−エポキシ−2−ノナノール、4,5−エポキシ−3−ノナノール、5,6−エポキシ−4−ノナノール、3,4−エポキシ−5−ノナノール、2,3−エポキシ−4−ノナノール、1,2−エポキシ−3−ノナノール、2,3−エポキシ−1−デカノール、3,4−エポキシ−2−デカノール、4,5−エポキシ−3−デカノール、5,6−エポキシ−4−デカノール、6,7−エポキシ−5−デカノール、3,4−エポキシ−5−デカノール、2,3−エポキシ−4−デカノール、1,2−エポキシ−3−デカノール等が挙げられる。
上記式(VIII)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロウンデカン、1,2−エポキシシクロドデカン等が挙げられる。
上記式(IX)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、3,4−エポキシシクロペンテン、3,4−エポキシシクロヘキセン、3,4−エポキシシクロヘプテン、3,4−エポキシシクロオクテン、3,4−エポキシシクロノネン、1,2−エポキシシクロデセン、1,2−エポキシシクロウンデセン、1,2−エポキシシクロドデセン等が挙げられる。
本発明に用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、炭素数が2〜8のエポキシ化合物が特に好ましい。化合物の取り扱いの容易さ、及びEVOH(A)との反応性の観点からは、一価エポキシ化合物(B)の炭素数は好適には2〜6であり、より好適には2〜4である。また、一価エポキシ化合物(B)が、上記式(III)又は(IV)で表される化合物であることが好ましい。EVOH(A)との反応性、及び得られる変性EVOH(C)のガスバリア性の観点からは、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン、エポキシエタン及びグリシドールが特に好ましく、なかでもエポキシプロパン及びグリシドールが好ましい。食品包装用途、飲料包装用途、医薬品包装用途などの、衛生性を要求される用途では、エポキシ化合物(B)として1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン及びエポキシエタンを用いることが好ましく、特にエポキシプロパンを用いることが好ましい。
上記EVOH(A)と上記一価エポキシ化合物(B)とを反応させることにより変性EVOH(C)が得られる。このときの、EVOH(A)及び一価エポキシ化合物(B)の好適な混合比は、(A)100重量部に対して(B)1〜50重量部であり、さらに好適には(A)100重量部に対して(B)2〜40重量部であり、特に好適には(A)100重量部に対して(B)5〜35重量部である。
EVOH(A)と分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)とを反応させることにより、変性EVOH(C)を製造する方法は特に限定されないが、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを溶液で反応させる製造法、及びEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを押出機内で反応させる製造法などが好適な方法として挙げられる。
溶液反応による製造法では、EVOH(A)の溶液に酸触媒あるいはアルカリ触媒存在下で一価エポキシ化合物(B)を反応させることによって変性EVOH(C)が得られる。また、EVOH(A)及び一価エポキシ化合物(B)を反応溶媒に溶解させ、加熱処理を行うことによっても変性EVOH(C)を製造することができる。反応溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のEVOH(A)の良溶媒である極性非プロトン性溶媒が好ましい。
反応触媒としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸及び3フッ化ホウ素等の酸触媒や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキサイド等のアルカリ触媒が挙げられる。これらの内、酸触媒を用いることが好ましい。触媒量としては、EVOH(A)100重量部に対し、0.0001〜10重量部程度が適当である。反応温度としては室温から150℃の範囲が適当である。
EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを押出機内で反応させる製造法では、使用する押出機としては特に制限はないが、一軸押出機、二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を使用し、180〜300℃程度の温度でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させることが好ましい。後述のように、押出機内で反応させる際に触媒(D)を存在させる場合には、低めの溶融温度とすることが好ましいが、触媒(D)を使用しない場合の好適な温度は200〜300℃程度である。
二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を用いた場合、スクリュー構成の変更により、反応部の圧力を高めることが容易であり、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を効率的に行えるようになる。一軸押出機では2台以上の押出機を連結し、その間の樹脂流路にバルブを配置することにより、反応部の圧力を高めることが可能である。また同様に二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を2台以上連結して製造してもよい。
押出機内で反応させる製造法と、溶液反応による製造法を比較した場合、溶液反応の場合は、EVOH(A)を溶解させる溶媒が必要であり、反応終了後に該溶媒を反応系から回収・除去する必要があり、工程が煩雑なものとなる。また、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応性を高めるためには、反応系を加熱及び/又は加圧条件下に維持することが好ましいが、溶液反応の場合と比較して、押出機内での反応ではかかる反応系の加熱及び/又は加圧条件の維持が容易であり、その観点からも押出機内での反応のメリットは大きい。
さらに、溶液反応によってEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を行った場合、反応の制御が必ずしも容易ではなく、過剰に反応が進行してしまうおそれがある。すなわち、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応の結果、上述の構造単位(I)を有する変性EVOH(C)が得られるが、前記構造単位(I)に含まれる水酸基に、さらに一価エポキシ化合物(B)が反応することにより、本発明で特定する構造単位とは異なるものが得られるおそれがあった。具体的には、一価エポキシ化合物(B)がエチレンオキサイドである場合、上述した過剰な反応の進行により、下記に示す構造単位(II)を含有するEVOHが生じることになる。
(式中、nは1以上の自然数を表す。)
本発明者らが検討を行った結果、本発明で特定する構造単位(I)とは異なる、上記に示した構造単位(II)を含有する割合が多くなることにより、得られる変性EVOH(C)のガスバリア性が低下することが明らかになった。さらに、押出機内でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を行った場合は、このような副反応の発生を効果的に抑制可能であることを見出した。かかる観点からも、押出機内でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を行うことにより、変性EVOH(C)を製造する方法が好ましい。
また、本発明で用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)は、必ずしも沸点の高いものばかりではないため、溶液反応による製造法では、反応系を加熱した場合、系外に一価エポキシ化合物(B)が揮散するおそれがある。しかしながら、押出機内でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させることにより、一価エポキシ化合物(B)の系外への揮散を抑制することが可能である。特に、押出機内に一価エポキシ化合物(B)を添加する際に、加圧下で圧入することにより、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応性を高め、かつ一価エポキシ化合物(B)の系外への揮散を顕著に抑制することが可能である。
押出機内での反応の際の、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)の混合方法は特に限定されず、押出機にフィードする前のEVOH(A)に一価エポキシ化合物(B)をスプレー等行う方法や、押出機にEVOH(A)をフィードし、押出機内で一価エポキシ化合物(B)と接触させる方法などが好適なものとして例示される。この中でも、一価エポキシ化合物(B)の系外への揮散を抑制できる観点から、押出機にEVOH(A)をフィードした後、押出機内で一価エポキシ化合物(B)と接触させる方法が好ましい。また、押出機内への一価エポキシ化合物(B)の添加位置も任意であるが、EVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応性の観点からは、溶融したEVOH(A)に対して一価エポキシ化合物(B)を添加することが好ましい。
本発明者が推奨する、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との、押出機内での反応による製造法は、(1)EVOH(A)の溶融工程、(2)一価エポキシ化合物(B)の添加工程及び(3)ベント等による、未反応の一価エポキシ化合物(B)の除去工程からなる。反応を円滑に行う観点からは、系内から水分及び酸素を除去することが好適である。このため、押出機内へ一価エポキシ化合物(B)を添加するより前に、ベント等を用いて水分及び酸素を除去してもよい。
また、前述の通り、一価エポキシ化合物(B)の添加工程においては、一価エポキシ化合物(B)を加圧下で圧入することが好ましい。この際に、この圧力が不十分な場合、反応率が下がり、吐出量が変動する等の問題が発生する。必要な圧力は一価エポキシ化合物(B)の沸点や押出温度によって大きく異なるが、通常0.5〜30MPaの範囲が好ましく、1〜20MPaの範囲がより好ましい。
本発明の製造方法では、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)の存在下に押出機中で溶融混練することが好適である。周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)を存在させることによって、より低い温度で溶融混練しても効率良くEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させることができる。すなわち、比較的低温での溶融混練によっても、変性量の大きい変性EVOH(C)を容易に得ることができる。EVOHは高温での溶融安定性が必ずしも良好な樹脂ではないことから、このように低温で溶融混練できることは、樹脂の劣化を防止できる点から好ましい。触媒(D)を使用せずにEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させた場合には、得られる変性EVOH(C)のMFRが原料のEVOH(A)のMFRよりも低下する傾向があるが、触媒(D)を使用した場合には、MFRはほとんど変化しない。
本発明で使用される触媒(D)は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含むものである。触媒(D)に使用される金属イオンとして最も重要なことは適度のルイス酸性を有することであり、この点から周期律表第3〜12族に属する金属のイオンが使用される。これらの中でも、周期律表第3族又は第12族に属する金属のイオンが適度なルイス酸性を有していて好適であり、亜鉛、イットリウム及びガドリニウムのイオンがより好適なものとして挙げられる。なかでも、亜鉛のイオンを含む触媒(D)が、触媒活性が極めて高く、かつ得られる変性EVOH(C)の熱安定性が優れていて、最適である。
周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの添加量はEVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で0.1〜20μmol/gであることが好適である。多すぎる場合には、溶融混練中にEVOHがゲル化するおそれがあり、より好適には10μmol/g以下である。一方、少なすぎる場合には、触媒(D)の添加効果が十分に奏されないおそれがあり、より好適には0.5μmol/g以上である。なお、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの好適な添加量は、使用する金属の種類や後述のアニオンの種類によっても変動するので、それらの点も考慮した上で、適宜調整されるべきものである。
周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)のアニオン種は特に限定されるものではないが、その共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含むことが好ましい。共役酸が強酸であるアニオンは、通常求核性が低いので一価エポキシ化合物(B)と反応しにくく、求核反応によってアニオン種が消費されて、触媒活性が失われることを防止できるからである。また、そのようなアニオンを対イオンに有することで、触媒(D)のルイス酸性が向上して触媒活性が向上するからである。
共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンとしては、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン;過塩素酸イオン;テトラフルオロボレートイオン(BF4 −)、ヘキサフルオロホスフェートイオン(PF6 −)、ヘキサフルオロアルシネートイオン(AsF6 −)、ヘキサフルオロアンチモネートイオン等の4個以上のフッ素原子を持つアニオン;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等のテトラフェニルボレート誘導体イオン;テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、ビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト(III)イオン、ビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄(III)イオン等のカルボラン誘導体イオンなどが例示される。
上記例示したアニオン種のうち、ヘキサフルオロホスフェートやテトラフルオロボレート等のアニオン種を含む触媒(D)を使用した場合には、アニオン種そのものは熱的に安定で求核性も非常に低いものの、当該アニオン種がEVOH中の水酸基と反応してフッ化水素が発生し、樹脂の熱安定性に悪影響を与えるおそれがある。また、コバルトのカルボラン誘導体イオン等はEVOHと反応することがなく、アニオン種自体も熱的に安定ではあるが、非常に高価である。
EVOHと反応することがなく、アニオン種自体も熱的に安定であり、かつ価格も適切なものであることから、触媒(D)のアニオン種としてはスルホン酸イオンが好ましい。好適なスルホン酸イオンとしては、メタンスルホン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオンが例示され、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが最適である。
触媒(D)のカチオン種として亜鉛イオンを、アニオン種としてトリフルオロメタンスルホン酸イオンをそれぞれ使用した場合の、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応の推定メカニズムを下記式(X)に示す。
すなわち、EVOHの水酸基と金属アルコキシドの形で結合した亜鉛イオンに一価エポキシ化合物(B)のエポキシ基の酸素原子が配位し、6員環遷移状態を経て、エポキシ基が開環すると推定している。ここで、遷移状態における亜鉛イオンの対イオンであるトリフルオロメタンスルホン酸イオンの共役酸が強酸であることによって、亜鉛イオンのルイス酸性が大きくなり、触媒活性が向上する。一方、対イオンとして存在するトリフルオロメタンスルホン酸イオン自体は、EVOHの水酸基あるいは一価エポキシ化合物(B)のエポキシ基と反応することがなく、それ自体熱的に安定であるから、副反応を生じることなく円滑に開環反応が進行する。
上述のように、本発明で使用される触媒(D)はその共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含むものであることが好適であるが、触媒(D)中の全てのアニオン種が同一のアニオン種である必要はない。むしろ、その共役酸が弱酸であるアニオンを同時に含有するものであることが好ましい。前記式(X)で示されたような反応メカニズムであれば、EVOHが触媒(D)と反応して金属アルコキシドを形成する際にアニオンの一つが共役酸として系内に遊離する。これが強酸であった場合には、一価エポキシ化合物(B)と反応するおそれがあるとともに、EVOHの溶融安定性にも悪影響を及ぼすおそれがある。
共役酸が弱酸であるアニオンの例としては、アルキルアニオン、アリールアニオン、アルコキシド、アリールオキシアニオン、カルボキシレート並びにアセチルアセトナート及びその誘導体が例示される。なかでもアルコキシド、カルボキシレート並びにアセチルアセトナート及びその誘導体が好適に使用される。
触媒(D)中の金属イオンのモル数に対する、共役酸が硫酸と同等以上の強酸であるアニオンのモル数は、0.2〜1.5倍であることが好ましい。上記モル比が0.2倍未満である場合には触媒活性が不十分となるおそれがあり、より好適には0.3倍以上であり、さらに好適には0.4倍以上である。一方、上記モル比が1.5倍を超えるとEVOHがゲル化するおそれがあり、より好適には1.2倍以下である。前記モル比は最適には1倍である。なお、原料のEVOH(A)が酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩を含む場合には、それと中和されて消費される分だけ、共役酸が硫酸と同等以上の強酸であるアニオンのモル数を増やしておくことができる。
触媒(D)の調製方法は特に限定されるものではないが、好適な方法として、周期律表第3〜12族に属する金属の化合物を溶媒に溶解又は分散させ、得られた溶液又は懸濁液に、共役酸が硫酸と同等以上の強酸(スルホン酸等)を添加する方法が挙げられる。原料として用いる周期律表第3〜12族に属する金属の化合物としては、アルキル金属、アリール金属、金属アルコキシド、金属アリールオキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセトナート等が挙げられる。ここで、周期律表第3〜12族に属する金属の化合物の溶液又は懸濁液に、強酸を加える際には、少量ずつ添加することが好ましい。こうして得られた触媒(D)を含有する溶液は押出機に直接導入することができる。
周期律表第3〜12族に属する金属の化合物を溶解又は分散させる溶媒としては有機溶媒、特にエーテル系溶媒が好ましい。押出機内の温度でも反応しにくく、金属化合物の溶解性も良好だからである。エーテル系溶媒の例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が例示される。使用される溶媒としては、金属化合物の溶解性に優れ、沸点が比較的低くて押出機のベントでほぼ完全に除去可能なものが好ましい。その点においてジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランが特に好ましい。
また、上述の触媒(D)の調整方法において、添加する強酸の代わりに強酸のエステル(スルホン酸エステル等)を用いても良い。強酸のエステルは、通常強酸そのものより反応性が低いために、常温では金属化合物と反応しないことがあるが、200℃前後に保った高温の押出機内に投入することにより、押出機内において活性を有する触媒(D)を生成することができる。
触媒(D)の調製方法としては、以下に説明する別法も採用可能である。まず、水溶性の周期律表第3〜12族に属する金属の化合物と、共役酸が硫酸と同等以上の強酸(スルホン酸等)とを、水溶液中で混合して触媒水溶液を調製する。なおこのとき、当該水溶液が適量のアルコールを含んでいても構わない。得られた触媒水溶液をEVOH(A)と接触させた後、乾燥することによって触媒(D)が配合されたEVOH(A)を得ることができる。具体的には、EVOH(A)ペレット、特に多孔質の含水ペレットを前記触媒水溶液に浸漬する方法が好適なものとして挙げられる。この場合には、このようにして得られた乾燥ペレットを押出機に導入することができる。
触媒(D)を使用する場合には、押出機内の温度は180〜250℃とすることが好ましい。この場合、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)を反応させる際に触媒(D)が存在するために、比較的低温で溶融混練しても、効率良くEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)の反応を進行させることができる。温度が250℃を超える場合にはEVOHが劣化するおそれがあり、より好適には240℃以下である。一方、温度が180℃未満の場合にはEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)の反応が十分に進行しないおそれがあり、より好適には190℃以上である。
EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)を反応させる際に触媒(D)を存在させる方法は特に限定されない。好適な方法として、触媒(D)の溶液を調製し、その溶液を押出機内に添加する方法が挙げられる。触媒(D)の溶液の調製方法は前述したとおりである。この方法によれば、後述の別法に比べて生産性が高く、触媒(D)を安定的に供給できるために製品の品質を安定化することもできる。触媒(D)の溶液を押出機に導入する位置は特に限定されないが、EVOH(A)が完全に溶融している場所で添加することが、均一に配合できて好ましい。特に、一価エポキシ化合物(B)を添加する場所と同じ場所又はその近傍で添加することが好ましい。触媒(D)と一価エポキシ化合物(B)をほぼ同時に配合することにより、ルイス酸である触媒(D)の影響によるEVOH(A)の劣化を最小限に抑制することができるとともに、十分な反応時間を確保できるからである。したがって、触媒(D)の溶液と一価エポキシ化合物(B)とを混合した液を予め作製しておいて、それを一箇所から押出機中に添加することが最適である。
溶融混練時に触媒(D)を存在させる別の方法として、EVOH(A)の含水ペレットを触媒(D)の溶液に浸漬した後、乾燥させる方法が挙げられる。この方法については、触媒(D)の調製方法の別法として前述したとおりである。この場合には、得られた乾燥ペレットがホッパーから押出機内に導入されることになる。但し、高価な触媒が廃液として処理されることになりコストアップに繋がりやすい点が問題である。また更に別の方法としては、乾燥後のペレットに、液体状態の触媒を含浸させるか、固体状態の触媒を混合するかした後、必要に応じて乾燥させる方法が挙げられる。この方法においては、工程数が増えることからコストアップに繋がりやすい点が問題であるとともに、触媒を均一に配合することも必ずしも容易ではない。また、上記いずれの別法においても、一価エポキシ化合物(B)が存在せず、ルイス酸である触媒(D)のみが存在する状態で溶融混練される際に、EVOH(A)が劣化するおそれがある。
上述のように、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、触媒(D)の存在下に押出機中で溶融混練することが好適であるが、その後で触媒失活剤(E)を添加して更に溶融混練することがより好ましい。触媒(D)を失活させなかった場合には、得られる変性EVOH(C)の熱安定性が悪くなるおそれがあり、用途によっては使用に問題をきたす可能性がある。
使用される触媒失活剤(E)は、触媒(D)のルイス酸としての働きを低下させるものであればよく、その種類は特に限定されない。好適にはアルカリ金属塩が使用される。その共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含む触媒(D)を失活させるには、当該アニオンの共役酸よりも弱い酸のアニオンのアルカリ金属塩を使用することが必要である。こうすることによって、触媒(D)を構成する周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの対イオンが弱い酸のアニオンに交換され、結果として触媒(D)のルイス酸性が低下するからである。触媒失活剤(E)に使用されるアルカリ金属塩のカチオン種は特に限定されず、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩が好適なものとして例示される。またアニオン種も特に限定されず、カルボン酸塩、リン酸塩及びホスホン酸塩が好適なものとして例示される。
触媒失活剤(E)として、例えば酢酸ナトリウムやリン酸一水素二カリウムのような塩を使用しても熱安定性はかなり改善されるが、用途によっては未だ不十分である場合がある。この原因は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンにルイス酸としての働きがある程度残存しているため、変性EVOH(C)の分解及びゲル化に対して触媒として働くためであると考えられる。この点をさらに改善する方法として、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンに強く配位するキレート化剤を添加することが好ましい。このようなキレート化剤は当該金属のイオンに強く配位できる結果、そのルイス酸性をほぼ完全に失わせることができ、熱安定性に優れた変性EVOH(C)を与えることができる。また、当該キレート化剤がアルカリ金属塩であることによって、前述のように触媒(D)に含まれるアニオンの共役酸である強酸を中和することもできる。
触媒失活剤(E)として使用されるキレート化剤として、好適なものとしては、オキシカルボン酸塩、アミノカルボン酸塩、アミノホスホン酸塩などが挙げられる。具体的には、オキシカルボン酸塩としては、クエン酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、リンゴ酸二ナトリウム等が例示される。アミノカルボン酸塩としては、ニトリロ三酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン二酢酸一ナトリウム、N−(ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸一ナトリウム等が例示される。アミノホスホン酸塩としては、ニトリロトリスメチレンホスホン酸六ナトリウム、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)八ナトリウム等が例示される。なかでもポリアミノポリカルボン酸が好適であり、性能やコストの面からエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩が最適である。エチレンジアミン四酢酸三ナトリウムを使用した場合の推定反応メカニズムを下記式(XI)に示す。
触媒失活剤(E)の添加量は特に限定されず、触媒(D)に含まれる金属イオンの種類や、キレート剤の配位座の数等により適宜調整されるが、触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)が0.2〜10となるようにすることが好適である。比(E/D)が0.2未満の場合には、触媒(D)が十分に失活されないおそれがあり、より好適には0.5以上、さらに好適には1以上である。一方、比(E/D)が10を超える場合には、得られる変性EVOH(C)が着色するおそれがあるとともに、製造コストが上昇するおそれがあり、より好適には5以下であり、さらに好適には3以下である。
触媒失活剤(E)を押出機へ導入する方法は特に限定されないが、均一に分散させるためには、溶融状態の変性EVOH(C)に対して、触媒失活剤(E)の溶液として導入することが好ましい。触媒失活剤(E)の溶解性や、周辺環境への影響などを考慮すれば、水溶液として添加することが好ましい。
触媒失活剤(E)の押出機への添加位置は、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、触媒(D)の存在下に溶融混練した後であればよい。しかしながら、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、触媒(D)の存在下に溶融混練し、未反応の一価エポキシ化合物(B)を除去した後に触媒失活剤(E)を添加することが好ましい。前述のように、触媒失活剤(E)を水溶液として添加する場合には、未反応の一価エポキシ化合物(B)を除去する前に触媒失活剤(E)を添加したのでは、ベント等で除去して回収使用する一価エポキシ化合物(B)の中に水が混入することになり、分離操作に手間がかかるからである。なお、触媒失活剤(E)の水溶液を添加した後で、ベント等によって水分を除去することも好ましい。
本発明の製造方法において、触媒失活剤(E)を使用する場合の好適な製造プロセスとしては、
(1)EVOH(A)の溶融工程;
(2)一価エポキシ化合物(B)と触媒(D)の混合物の添加工程;
(3)未反応の一価エポキシ化合物(B)の除去工程;
(4)触媒失活剤(E)水溶液の添加工程;
(5)水分の減圧除去工程;
の各工程からなるものが例示される。
変性EVOH(C)は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを0.1〜20μmol/g含有することが好ましい。かかる金属のイオンは、前述の製造方法において触媒(D)を使用した際の触媒残渣として含有され得るものであり、その好適な金属のイオンの種類については、前述の触媒(D)の説明のところで述べたとおりである。より好適には0.5μmol/g以上である。また、より好適には10μmol/g以下である。
また、変性EVOH(C)は、スルホン酸イオンを含有することが好適である。かかるスルホン酸イオンは、前述の製造方法において触媒(D)を使用した際の触媒残渣として含有され得るものであり、その好適なスルホン酸イオンの種類については、前述の触媒(D)の説明のところで述べたとおりである。スルホン酸イオンの含有量は0.1〜20μmol/gであることが好適である。より好適には0.5μmol/g以上である。また、より好適には10μmol/g以下である。
さらに、変性EVOH(C)中のアルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の1〜50倍(モル比)であることが好適である。アルカリ金属イオンは、前述の製造方法において触媒失活剤(E)を使用した際の残渣として含有され得るとともに、原料のEVOH(A)に由来して含有され得るものである。当該アルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の1倍未満である場合には、製造工程において、触媒(D)の失活が十分に行われておらず、変性EVOH(C)の熱安定性に問題を生じる場合があり、より好適には2倍以上である。一方、アルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の50倍を超える場合には、変性EVOH(C)が着色するおそれがあり、好適には30倍以下である。
変性EVOH(C)には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を、EVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応によって変性EVOH(C)が得られた後に添加することもできる。一般に、接着性の改善や着色の抑制など、EVOHの各種物性を改善するために、EVOHには必要に応じてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種が添加されることが多い。しかしながら、上記に示した各種化合物の添加は、前述の通り、押出機によるEVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応の際に、着色や粘度低下等の原因となるおそれがある。このため、EVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応後に、残存するエポキシ化合物(B)をベントで除去した後、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を、得られた変性EVOH(C)に添加することが好ましい。この添加方法を採用することにより、着色や粘度低下等の問題を生じることなく、変性EVOH(C)が得られる。
こうして得られた変性EVOH(C)の融点は160℃以下であることが好ましい。これによって、ポリオレフィン(G)など融点の低い樹脂との融点の差を小さくすることができ、樹脂組成物を溶融成形する際の成形温度を低くすることができる。より好適には150℃以下であり、さらに好適には140℃以下である。
本発明の樹脂組成物は、前記変性EVOH(C)1〜99重量%、及び(C)以外の熱可塑性樹脂(T1)1〜99重量%からなる樹脂組成物である。
変性EVOH(C)と配合される熱可塑性樹脂(T1)は特に限定されず、前記構造単位(I)を含有しないEVOH、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。また、各種の共重合体を使用することもできる。具体的には、後述する、本発明の樹脂組成物と積層される熱可塑性樹脂(T2)として例示されている各種の熱可塑性樹脂を使用することができる。
熱可塑性樹脂(T1)の20℃、65%RHにおける酸素透過速度が1000cc・20μm/m2・day・atm以下であることが好ましい。これは、20℃、相対湿度65%の環境下で測定したときに、1気圧の酸素の差圧がある状態で、面積1m2、20μm厚のフィルムを1日に透過する酸素の体積が、1000ml以下であることを意味する。変性EVOH(C)を配合することで、本来バリア性の良好な熱可塑性樹脂(T1)の二次加工性、耐疲労性、層間接着性を改善できる。20℃、65%RHにおける酸素透過速度が1000cc・20μm/m2・day・atm以下である熱可塑性樹脂(T1)としては、前記構造単位(I)を含有しないEVOH、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。より好適な酸素透過速度は100cc・20μm/m2・day・atm以下であり、さらに好適な酸素透過速度は10cc・20μm/m2・day・atm以下である。
なかでも、熱可塑性樹脂(T1)として、前記構造単位(I)を含有しないエチレン含有量5〜55モル%のEVOH(F)を使用することが好ましい。EVOH(F)が有するバリア性や透明性を大きく低下させることなく、二次加工性、耐疲労性、延伸性あるいは層間接着性を大きく改善することが可能だからである。EVOH(F)としては、変性EVOH(C)の原料として使用される前述のEVOH(A)と同じものが使用できるが、配合する変性EVOH(C)の組成や、樹脂組成物の用途によって適宜選択される。
例えば、熱安定性の観点からはEVOH(F)のエチレン含有量は20モル%以上であることが好ましく、25モル%以上であることがより好ましく、27モル%以上であることがさらに好ましい。ガスバリア性の観点からは、50モル%以下であることが好ましく、45モル%以下であることがより好ましく、38モル%以下であることがさらに好ましい。また、EVOH(F)のケン化度は99%以上であることが好ましく、99.5%以上であることがより好ましい。
変性EVOH(C)とEVOH(F)のそれぞれのエチレン含有量の組み合わせは、樹脂組成物の用途と目的に対応して調整される。例えば、変性EVOH(C)のエチレン含有量とEVOH(F)のエチレン含有量との差が2〜30モル%であることが好ましい。その差は、より好適には5モル%以上であり、20モル%以下である。
このように、変性EVOH(C)とEVOH(F)の両者のエチレン含有量に差がある場合において、変性EVOH(C)のエチレン含有量がEVOH(F)のエチレン含有量より大きい場合には、ガスバリア性の良好なEVOH(F)の特性を維持しながら、極めて柔軟性に優れた変性EVOH(C)をその中に配合することができる。その結果、熱成形性や延伸性などの二次加工性、あるいは柔軟性や耐屈曲性に優れ、しかもガスバリア性にも優れた樹脂組成物を提供することができる。この実施態様は特に有用な実施態様の一つである。また、逆に変性EVOH(C)のエチレン含有量がEVOH(F)のエチレン含有量より小さい方が好ましい場合もある。この場合には、両者の融点が近くなるので、低温で成形したい場合などに有利である。
一方、変性EVOH(C)とEVOH(F)の両者のエチレン含有量の差が小さい方が好ましい場合もあり、その場合には、その差が2モル%以下であることが好適である。このとき実質的に同じエチレン含有量の変性EVOH(C)とEVOH(F)を使用することがより好適である。このように、変性EVOH(C)とEVOH(F)の両者のエチレン含有量の差を小さくすることで、柔軟性、二次加工性、耐疲労性あるいは層間接着性を改善しながら、バリア性や透明性に特に優れた樹脂組成物を得ることができる。
変性EVOH(C)とEVOH(F)とからなる樹脂組成物は、変性EVOH(C)1〜99重量%とEVOH(F)1〜99重量%とからなるものである。このとき、当該樹脂組成物が変性EVOH(C)1〜50重量%とEVOH(F)50〜99重量%とからなることが好ましい。すなわち、未変性のEVOH(F)が主たる成分であって、変性EVOH(C)が従たる成分であることが好ましい。こうすることによって、EVOH(F)が本来有するガスバリア性を大きく損なうことなく、樹脂組成物に柔軟性や二次加工性を付与することができる。また、変性EVOH(C)は未変性のEVOH(F)に比べて製造コストが高いことから、経済的にも有利である。より好適な変性EVOH(C)の含有量は5重量%以上であり、さらに好適には10重量%以上である。このとき、より好適なEVOH(F)の含有量は95重量%以下であり、さらに好適には90重量%以下である。一方、より好適な変性EVOH(C)の含有量は40重量%以下であり、さらに好適には30重量%以下である。このとき、より好適なEVOH(F)の含有量は60重量%以上であり、さらに好適には70重量%以上である。
また、熱可塑性樹脂(T1)として、ポリオレフィン(G)を使用することも好ましい。ポリオレフィン(G)は力学特性や加工性に優れ、コストも低いことからその有用性が大きいものであるが、バリア性は低い。これに、変性EVOH(C)を配合することによって、耐衝撃性、耐疲労性、加工性などを大きく損なうことなく、バリア性を向上させることができる。
ここで使用されるポリオレフィン(G)は特に限定されるものではない。具体的には、後述する、本発明の樹脂組成物と積層される熱可塑性樹脂(T2)として例示されている各種のポリオレフィンを使用することができる。これらのポリオレフィン(G)はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。なかでも、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく用いられ、ポリエチレン及びポリプロピレンが特に好ましく用いられる。
変性EVOH(C)とポリオレフィン(G)とからなる樹脂組成物は、変性EVOH(C)1〜99重量%とポリオレフィン(G)1〜99重量%とからなるものである。このとき、当該樹脂組成物が変性EVOH(C)10〜60重量%とポリオレフィン(G)40〜90重量%とからなることが好ましい。すなわち、ポリオレフィン(G)が半量程度以上含まれた樹脂組成物であることが好ましい。こうすることによって、ポリオレフィン(G)が本来有する力学性能や加工性を大きく損なうことなく、樹脂組成物にバリア性を付与することができるからである。また、変性EVOH(C)はポリオレフィン(G)に比べて格段に製造コストが高いことから、経済的にも有利な配合比率である。より好適な変性EVOH(C)の含有量は20重量%以上であり、このときポリオレフィン(G)の含有量は80重量%以下である。一方、より好適な変性EVOH(C)の含有量は50重量%以下であり、このときより好適なポリオレフィン(G)の含有量は50重量%以上である。
また、熱可塑性樹脂(T1)として、相容化剤(H)を使用することも好ましい。この場合には、変性EVOH(C)及び相容化剤(H)以外の熱可塑性樹脂をも同時に含有して、その熱可塑性樹脂と変性EVOH(C)との相容性を相容化剤(H)が改善することになる。相容化剤(H)によってEVOH(C)との相容性が改善される熱可塑性樹脂は特に限定されないが、ポリオレフィン(G)、ポリスチレンなどが好適である。特に好適なのは、相容性が改善される熱可塑性樹脂がポリオレフィン(G)である場合である。すなわち、熱可塑性樹脂(T1)がポリオレフィン(G)及び相容化剤(H)からなる樹脂組成物が好適である。
好適に使用される相容化剤(H)は、カルボキシル基(酸無水物基を含む)、ホウ素含有置換基、エポキシ基、アミノ基などを有する、ポリオレフィン、ポリスチレン、ジエン重合体あるいはこれらの共重合体である。なかでもカルボキシル基やホウ素含有置換基を有するものが好適であり、無水マレイン酸で変性したもの、(メタ)アクリル酸を共重合したもの、ボロン酸(エステル)基を導入したものなどが例示される。また、これらの置換基が導入されるベースポリマーとしてはポリオレフィンが好適であり、ポリエチレンやポリプロピレンが特に好ましい。また、スチレンとジエンとのブロック共重合体やその水添物も好適なベースポリマーとして挙げられる。具体的にはカルボン酸変性ポリオレフィンやボロン酸変性ポリオレフィンなどが例示される。
配合される相容化剤(H)の量は、好適には1〜20重量%である。より好適には2重量%以上であり、10重量%以下である。
また、熱可塑性樹脂(T1)として使用する好適な樹脂を、複数種類併用した場合には、その相乗効果が得られる場合がある。例えば、変性EVOH(C)とEVOH(F)とポリオレフィン(G)とからなる樹脂組成物は、前述の変性EVOH(C)とポリオレフィン(G)とからなる樹脂組成物に類似した性能を有するが、製造コストがより低くなる点で有利である。また、それら3種類の樹脂に加えてさらに相容化剤(H)を配合することも好ましい。
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて各種の添加剤を配合することもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、あるいは他の高分子化合物を挙げることができ、これらを本発明の作用効果が阻害されない範囲でブレンドすることができる。添加剤の具体的な例としては次のようなものが挙げられる。
酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等。
紫外線吸収剤:エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等。
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等。
帯電防止剤:ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等。
滑剤:エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等。
着色剤:カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等。
充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウム等。
また、本発明の樹脂組成物には、溶融安定性等を改善するために、本発明の作用効果が阻害されない程度に、ハイドロタルサイト化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩(たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)の一種又は二種以上を樹脂組成物に対し本発明の作用効果が阻害されない程度(0.01〜1重量%)添加することもできる。
本発明の樹脂組成物を得るために、変性EVOH(C)と熱可塑性樹脂(T1)とをブレンドする方法は、特に限定されるものではない。樹脂ペレットをドライブレンドしてそのまま溶融成形に供することもできるし、より好適にはバンバリーミキサー、単軸又は二軸押出機などで溶融混練し、ペレット化してから溶融成形に供することもできる。ブレンド操作時に樹脂の劣化が進行するのを防止するためには、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが望ましい。また、混練度の高い押出機を使用し、分散状態を細かく均一なものとすることが、バリア性、透明性を良好にすると共に、ゲル、ブツの発生や混入を防止できる点で好ましい。
樹脂組成物中の各樹脂成分が良好に分散されるために、本発明における混練操作は重要である。高度な分散を有する組成物を得るための混練機としては、連続式インテンシブミキサー、ニーディングタイプ二軸押出機(同方向、あるいは異方向)などの連続型混練機が最適であるが、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダーなどのバッチ型混練機を用いることもできる。また別の連続混練装置としては石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用したもの、たとえば(株)KCK製のKCK混練押出機を用いることもできる。混練機として通常に使用されるもののなかには、一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTM等)を設けたもの、あるいはブラベンダーミキサーなどの簡易型の混練機もあげることができる。
この中で、本発明の目的に最も好ましいものとしては連続式インテンシブミキサーを挙げることができる。市販されている機種としてはFarrel社製FCM、(株)日本製鋼所製CIMあるいは(株)神戸製鋼所製KCM、LCMあるいはACM等がある。実際にはこれらの混練機の下に一軸押出機を有する、混練と押出ペレット化を同時に実施する装置を採用するのが好ましい。また、ニーディングディスクあるいは混練用ローターを有する二軸混練押出機、例えば(株)日本製鋼所製のTEX、Werner&Pfleiderer社のZSK、東芝機械(株)製のTEM、池貝鉄工(株)製のPCM等も本発明の混練の目的に用いられる。
これらの連続型混練機を用いるにあたっては、ローター、ディスクの形状が重要な役割を果たす。特にミキシングチャンバとローターチップあるいはディスクチップとの隙間(チップクリアランス)は重要で狭すぎても広すぎても良好な分散性を有する樹脂組成物は得られない。チップクリアランスとしては1〜5mmが最適である。
また、混練機のローターの回転数は100〜1200rpm、望ましくは150〜1000rpm、さらに望ましくは200〜800rpmの範囲が採用される。混練機チャンバー内径(D)は30mm以上、望ましくは50〜400mmの範囲のものが挙げられる。混練機のチャンバー長さ(L)との比L/Dは4〜30が好適である。また混練機はひとつでもよいし、また2以上を連結して用いることもできる。混練時間は長い方が良い結果を得られるが、樹脂の劣化防止あるいは経済性の点から10〜600秒、好適には15〜200秒の範囲であり、最適には15〜150秒である。
本発明の樹脂組成物は、20℃、65%RHにおける酸素透過速度が100cc・20μm/m2・day・atm以下であることが好ましい。酸素透過速度は、50cc・20μm/m2・day・atm以下であることがより好ましく、20cc・20μm/m2・day・atm以下であることがさらに好ましく、10cc・20μm/m2・day・atm以下であることが特に好ましい。このような低い酸素透過速度を有する樹脂組成物であることから、本発明の樹脂組成物はバリア材として好適に使用され、食品包装用の容器として特に好適に使用される。
また、本発明の樹脂組成物は、20℃、65%RHにおける炭酸ガス透過速度が500cc・20μm/m2・day・atm以下であることが好ましい。炭酸ガス透過速度は、200cc・20μm/m2・day・atm以下であることがより好ましく、100cc・20μm/m2・day・atm以下であることがさらに好ましく、50cc・20μm/m2・day・atm以下であることが特に好ましい。このような低い炭酸ガス透過速度を有する樹脂組成物であることから、本発明の樹脂組成物はバリア材として好適に使用され、炭酸飲料の容器として特に好適に使用される。
本発明の樹脂組成物、特に変性EVOH(C)と未変性のEVOH(F)とからなる樹脂組成物は、23℃、50%RHにおける引張強伸度測定におけるヤング率が200kgf/mm2以下であることが好ましく、180kgf/mm2以下であることがより好ましい。かかる樹脂組成物を用いることによりシートやフィルムなど得られる成形物が柔軟になり、またこれらを延伸又は熱成形する際に良好に二次加工することができる。通常、前記ヤング率は50kgf/mm2以上である。
本発明の樹脂組成物、特に変性EVOH(C)と未変性のEVOH(F)とからなる樹脂組成物は、23℃、50%RHでの引張強伸度測定における引張降伏点強度が4.0〜10.0kgf/mm2であり、かつ引張破断伸度が200%以上であることが、シートやフィルムなどの成形物を、延伸又は熱成形する際に良好な成形性を示すため好ましい。通常、前記引張破断伸度は500%以下である。
以上、変性EVOH(C)と熱可塑性樹脂(T1)からなる樹脂組成物について説明した。以降、本発明のもう一つの実施態様である、動的に架橋処理して得られる樹脂組成物について説明する。その中で特に説明していない部分については、上記の変性EVOH(C)と熱可塑性樹脂(T1)からなる樹脂組成物についての説明と同様である。
本発明のもう一つの実施態様である、動的に架橋処理して得られる樹脂組成物は、架橋した粒子が分散していながら熱可塑性を有しているので、熱可塑性重合体組成物ともいえるものである。すなわち、下記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有する変性EVOH(C)100質量部、下記架橋剤(K)と反応し得る官能基を有するエラストマー(J)5〜900質量部、及び該エラストマー(J)100質量部に対して架橋剤(K)0.05〜30質量部を、溶融条件下で混合し動的に架橋処理することにより得られる樹脂組成物である。以下、この樹脂組成物を動的架橋樹脂組成物と言うことがある。
[式中、R1、R2、R3およびR4は、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(アルキル基またはアルケニル基など)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基(フェニル基など)を表す。R1、R2、R3およびR4は同じ基でもよいし、異なっていても良い。また、R3とR4とは結合していてもよい(ただし、R3およびR4がともに水素原子の場合は除かれる)。また上記のR1、R2、R3およびR4は他の基、例えば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子などを有していてもよい。]
動的架橋樹脂組成物で使用される変性EVOH(C)としては、上記の熱可塑性樹脂(T1)との樹脂組成物と概ね同様のものが使用可能であるが、変性EVOH(C)の原料として好適に使用されるEVOH(A)が異なっている。これは、樹脂組成物の製造方法や用途が異なることに対応するものである。したがって、原料のEVOH(A)の相違に由来して、好適な変性EVOH(C)の組成も異なっている。
動的架橋樹脂組成物で使用される変性EVOH(C)の原料であるEVOH(A)は、主としてエチレン単位(−CH2CH2−)とビニルアルコール単位(−CH2−CH(OH)−)とからなる共重合体であり、例えば、成形用途で使用されるような公知のものを挙げることができる。ただし、EVOH(A)のエチレン単位の含有量は、気体、有機液体等に対する遮断性の高さと成形加工性の良好さの点から、10〜99モル%であることが好ましく、20〜75モル%であることがより好ましく、25〜60モル%であることがさらに好ましく、25〜50モル%であることが特に好ましい。EVOH(A)は、後述するように、代表的にはエチレン−脂肪酸ビニルエステル共重合体ケン化物であるが、エチレン−脂肪酸ビニルエステル共重合体ケン化物の場合、脂肪酸ビニルエステル単位のケン化度は、得られるEVOH(A)の遮断性と熱安定性の高さの点から、50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、98モル%以上であることが特に好ましい。EVOH(A)のメルトフローレート(温度210℃、荷重2.16kgの条件下に、ASTM D1238に記載の方法で測定)は、成形加工性の良好さの点から、0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.5〜50g/10分であることがより好ましく、1〜20g/10分であることが特に好ましい。また、EVOH(A)の極限粘度は、フェノール85質量%および水15質量%の混合溶媒中、30℃の温度において、0.1〜5dl/gであることが好ましく、0.2〜2dl/gであることがより好ましい。
上記のEVOH(A)には、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、少量(好ましくは、全構成単位に対して10モル%以下)であれば、他の構成単位を有していてもよい。他の構成単位としては、プロピレン、イソブチレン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、バーサチック酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニルエステル、バレリン酸ビニルエステル、カプリン酸ビニルエステル、安息香酸ビニルエステル等のカルボン酸ビニルエステル;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸またはその誘導体(例:塩、エステル、ニトリル、アミド、無水物など);ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;N−メチルピロリドン;等から誘導される単位を挙げることができる。またEVOH(A)は、アルキルチオ基などの官能基を末端に有していてもよい。
また、上記のEVOH(A)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の方法に従って、エチレン−脂肪酸ビニルエステル共重合体を製造し、次いで、これをケン化することによってEVOH(A)を製造することができる。エチレン−脂肪酸ビニルエステル共重合体は、例えば、主としてエチレンと脂肪酸ビニルエステルとからなるモノマーを、メタノール、t−ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒中、加圧下に、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を用いて重合させることによって得られる。該脂肪酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、バーサチック酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニルエステル、バレリン酸ビニルエステル、カプリン酸ビニルエステルなどを使用することができるが、これら中でも酢酸ビニルエステルが好ましい。エチレン−脂肪酸ビニルエステル共重合体のケン化には、酸触媒またはアルカリ触媒を使用することができる。
動的架橋樹脂組成物で用いられる架橋剤(K)と反応し得る官能基を有するエラストマー(J)は、分子中に架橋剤(K)と反応し得る官能基を有するものであれば特に制限されず、スチレン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、オレフィン系エラストマー、合成ゴム、天然ゴム等を用いることができる。
これらのうち、スチレン系エラストマーとしては、ビニル芳香族重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなるブロック共重合体を挙げることができる。該ブロック共重合体を構成するビニル芳香族重合体ブロックの形成に用いられるビニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−、m−、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセトナフチレンなどのビニル芳香族化合物を挙げることができる。ビニル芳香族重合体ブロックは、前記したビニル芳香族化合物の1種のみからなる構造単位を有していても、または2種以上からなる構造単位を有していてもよい。そのうちでも、ビニル芳香族重合体ブロックはスチレンに由来する構造単位から主としてなっていることが好ましい。
ビニル芳香族重合体ブロックは、ビニル芳香族化合物からなる構造単位と共に必要に応じて他の共重合性単量体からなる構造単位を少量有していてもよく、その場合の他の共重合性単量体からなる構造単位の割合は、ビニル芳香族重合体ブロックの質量に基づいて30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
その場合の他の共重合性単量体単位としては、例えば1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどの単量体単位を挙げることができる。
ビニル芳香族重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなるブロック共重合体における共役ジエン重合体ブロックの形成に用いられる共役ジエン化合物としては、イソプレン、ブタジエン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどを挙げることができる。共役ジエン重合体ブロックは、これらの共役ジエン化合物の1種から構成されていてもまたは2種以上から構成されていてもよい。共役ジエン重合体ブロックが2種以上の共役ジエン化合物に由来する構造単位を有している場合は、それらの結合形態はランダム、テーパー、一部ブロック状、またはそれらの2種以上の組み合わせなどのいずれであってもよい。
そのうちでも、共役ジエン重合体ブロックは、イソプレン単位とする主体とするモノマー単位からなるポリイソプレンブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添ポリイソプレンブロック;ブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるポリブタジエンブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添ポリブタジエンブロック;或いはイソプレン単位とブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるイソプレン/ブタジエン共重合体ブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロックであることが好ましい。
共役ジエン重合体ブロックの構成ブロックとなり得る上記したポリイソプレンブロックでは、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH2−C(CH3)=CH−CH2−;1,4−結合のイソプレン単位]、イソプロペニルエチレン基[−CH(C(CH3)=CH2)−CH2−;3,4−結合のイソプレン単位]および1−メチル−1−ビニルエチレン基[−C(CH3)(CH=CH2)−CH2−;1,2−結合のイソプレン単位]からなる群から選ばれる少なくとも1種の基からなっており、各単位の割合は特に限定されない。
共役ジエン重合体ブロックの構成ブロックとなり得る上記したポリブタジエンブロックでは、その水素添加前には、そのブタジエン単位の70〜20モル%、特に65〜40モル%が2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH2−CH=CH−CH2−;1,4−結合ブタジエン単位)であり、30〜80モル%、特に35〜60モル%がビニルエチレン基[−CH(CH=CH2)−CH2−;1,2−結合ブタジエン単位]であることが好ましい。
共役ジエン重合体ブロックの構成ブロックとなり得る上記したイソプレン/ブタジエン共重合体ブロックでは、その水素添加前に、イソプレンに由来する単位は2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基からなっており、またブタジエンに由来する単位は2−ブテン−1,4−ジイル基および/またはビニルエチレン基からなっており、各単位の割合は特に制限されない。イソプレン/ブタジエン共重合体ブロックでは、イソプレン単位とブタジエン単位の配置は、ランダム状、ブロック状、テーパーブロック状のいずれの形態になっていてもよい。そして、イソプレン/ブタジエン共重合体ブロックでは、イソプレン単位:ブタジエン単位のモル比が1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜7:3であることがより好ましい。
ビニル芳香族重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなるブロック共重合体は、樹脂組成物の耐熱性および耐候性が良好なものとなる点から、その共役ジエン重合体ブロックにおける不飽和二重結合の一部または全部が水素添加(以下「水添」ということがある)されていることが好ましい。その際の共役ジエン重合体ブロックの水添率は50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
該ブロック共重合体において、ビニル芳香族重合体ブロックの分子量および共役ジエン重合体ブロックの分子量は特に制限されないが、水素添加前の状態で、ビニル芳香族重合体ブロックの数平均分子量が2,500〜75,000の範囲内にあり、共役ジエン重合体ブロックの数平均分子量が10,000〜150,000の範囲内にあることが、樹脂組成物の力学的特性、成形加工性などの点から好ましい。なお、本明細書でいうエラストマー(J)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めた値をいう。
何ら限定されるものではないが、該ブロック共重合体は、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、シングルサイト重合法、ラジカル重合法などにより製造することができる。
アニオン重合法による場合は、例えば、アルキルリチウム化合物などを重合開始剤として用いて、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、ビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体などを逐次重合させ、所望の分子構造および分子量を有するジブロック共重合体またはトリブロック共重合体を製造した後、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加して重合を停止させることにより製造することができる。
本発明において架橋剤(K)と反応し得る官能基を有するエラストマー(J)として用いることのできるオレフィン系エラストマーとしては、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)、メタロセン系重合触媒を用いたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
エラストマー(J)として用いることのできる合成ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン等が挙げられる。さらに、エラストマー(J)としては、天然ゴムを用いてもよく、上記の合成ゴムまたは天然ゴムに含まれる二重結合は、水素添加されていてもよい。
エラストマー(J)としては、得られる樹脂組成物が柔軟性に優れ、架橋剤(K)と反応し得る官能基の導入が容易であること等から、上記した中でもスチレン系エラストマーが好ましく、ビニル芳香族重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなるブロック共重合体がより好ましい。
エラストマー(J)の有する架橋剤(K)と反応し得る官能基としては、水酸基(例:1級水酸基(−CH2OH))、アミノ基、アルキルアミノ基、エポキシ基、エーテル基(例:アルコキシル基)、カルボキシル基、エステル基(例:アルコキシカルボニル基、アシロキシル基)、アミド基(例:カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アシルアミノ基)、ブロモ基、ジカルボン酸無水物の構造を有する基(例:無水マレイン酸基)、ボロン酸基、水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基、二重結合(例:ビニル基)等が挙げられる。架橋剤(K)と反応し得る官能基は、変性EVOH(C)の有する2級水酸基(>CH−OH)または変性に用いる一価エポキシ化合物の構造により生じる1級水酸基(−CH2OH)に比べて、用いる架橋剤(K)との反応性が高くなるように、架橋剤(K)との組合せにおいて適宜選択することが好ましい。
なお、本発明においてエラストマー(J)が含有することのできる上記のボロン酸基とは下記式(a)で示されるものである。
また、エラストマー(J)が含有することのできる水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基(以下ホウ素含有基と略記する)としては、エラストマー(J)を水、水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトンなど)との混合液体、または5%ホウ酸水溶液と前記有機溶媒との混合液体中で、反応時間10分〜2時間、反応温度室温〜150℃の条件下に加水分解した場合に、ボロン酸基に転化しうるホウ素含有基であればどのようなものでもよいが、代表例として下記一般式(b)で示されるボロン酸エステル基、下記一般式(c)で示されるボロン酸無水物基、下記一般式(d)で示されるボロン酸塩からなる基が挙げられる。
[式中、X、Yは水素原子、脂肪族炭化水素基(炭素数1〜20の直鎖状、または分岐状アルキル基、またはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など)を表わし、XとYとは同じ基でもよいし、異なっていてもよい。また、XとYは結合していてもよい。ただし、XおよびYがともに水素原子の場合は除かれる。]
[式中、R1、R2、R3は上記X、Yと同様の水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基を表わし、R1、R2、R3はそれぞれ同じ基でもよいし、異なっていてもよい。またMはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わす。]
[また、上記のX、Y、およびR1、R2、R3には他の基、例えば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子などを有していてもよい。]
一般式(b)〜(d)で示される、ボロン酸エステル基、ボロン酸無水物基、ボロン酸塩基の具体例としてはボロン酸ジメチルエステル基、ボロン酸ジエチルエステル基、ボロン酸ジブチルエステル基、ボロン酸ジシクロヘキシル基、ボロン酸エチレングリコールエステル、ボロン酸プロピレングリコールエステル基(ボロン酸1,2−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基)、ボロン酸ネオペンチルエステル基、ボロン酸カテコールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基、ボロン酸ジエタノールアミンエステル基等のボロン酸エステル基;ボロン酸無水物基;ボロン酸のアルカリ金属塩基、ボロン酸のアルカリ土類金属塩基等が挙げられる。
上記の官能基の中では、反応性に富み、エラストマー(J)の架橋度の調節が容易であることから、無水マレイン酸基などのジカルボン酸無水物の構造を有する基、またはボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基、ボロン酸トリメチレングリコールエステル基、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基などのボロン酸エステル基が好ましい。
上記の官能基の含有量は、エラストマー(J)1分子あたり平均0.5個以上であるのが好ましく、1〜50個であるのがより好ましく、3〜30個の範囲内であるのがさらに好ましい。官能基のエラストマー(J)への導入方法は特に制限されないが、例えば、(1)エラストマー(J)を形成する単量体の重合時に、架橋剤(K)と反応し得る官能基を有する共重合性単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、停止剤等を併用させる方法;(2)エラストマー(J)を形成する単量体の重合時に、保護基の離脱、加水分解等の反応により架橋剤(K)と反応し得る官能基を生成する共重合性単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、停止剤等を併用し、重合後に、官能基を生成させる反応を行う方法;(3)官能基を有しない重合体に溶融条件下等で酸化剤等を反応させて官能基を導入する高分子反応による方法;などを挙げることができる。なお、エラストマー(J)の有する官能基が例えばジカルボン酸無水物の構造を有する基またはボロン酸エステル基である場合は、上記した(3)の方法で官能基に対応する構造を有する化合物(酸化剤)を適宜選択することにより、官能基を導入することができる。
エラストマー(J)への官能基の導入位置は、分子鎖の主鎖上、短鎖分岐上、末端などいずれであってもよい。
本発明に用いられる架橋剤(K)は、エラストマー(J)の有する官能基と反応する2官能以上の化合物であり、樹脂組成物を製造する溶融混練温度において液体または固体であり、変性EVOH(C)を分解しないものであれば何ら制限されない。
例えば、エラストマー(J)の有する官能基がジカルボン酸無水物の構造を有する基である場合、架橋剤(K)には、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン等のジアミン類;1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール等のジオール類などが好適に用いられる。
また、エラストマー(J)の有する官能基がボロン酸エステルである場合、架橋剤(K)には、ペンタエリスリトール、イノシトール、グルコース、ヘプトース、ラクトース等の分子中に4個以上の水酸基を有する化合物などが好適に用いられる。
本発明の動的架橋樹脂組成物における上記の成分(C)、(J)及び(K)の配合割合は、変性EVOH(C)100質量部、変性EVOH(C)100質量部に対して架橋剤(K)と反応し得る官能基を有するエラストマー(J)5〜900質量部、好ましくは40〜800質量部、およびエラストマー(J)100質量部に対して架橋剤(K)0.05〜30質量部、好ましくは0.2〜20質量部の範囲内である。
変性EVOH(C)100質量部に対して、エラストマー(J)の配合量が5質量部未満であると、得られる樹脂組成物の柔軟性が劣ったものとなり、900質量部を超えると、ガスバリア性が劣ったものとなる。
また、エラストマー(J)100質量部に対して、架橋剤(K)の配合量が0.05質量部未満であると、得られる樹脂組成物のガスバリア性が劣ったものとなり、30質量部を超えると、該組成物からなる成形品の表面外観が劣ったものとなる。
本発明の動的架橋樹脂組成物は、上記した成分(C)、(J)及び(K)を、溶融条件下で動的に架橋処理することにより得られる。この工程は、変性EVOH(C)とエラストマー(J)とを溶融混練して微細かつ均一に分散させ、さらに架橋剤(K)によりエラストマー(J)の有する官能基相互間に架橋結合を生じせしめることからなる。
溶融混練には、各成分を均一に混合し得る溶融混練装置であればいずれの装置を使用してもよく、そのような溶融混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを挙げることができ、中でも混練中の剪断力が大きく連続的に運転できる二軸押出機を使用するのが好ましい。
本発明の動的架橋樹脂組成物は、具体例として次のような加工工程を経由して製造することが出来る。すなわち、変性EVOH(C)およびエラストマー(J)を混合し、押出機のホッパーに投入する。変性EVOH(C)は、一部を押出機の途中から添加してもよい。架橋剤(K)は、変性EVOH(C)およびエラストマー(J)とともに当初から添加してもよいし、押出機の途中から添加してもよい。さらに、2台以上の押出機を使用し、段階的に順次溶融混練してもよい。
溶融混練温度は約160〜280℃であるのが好ましく、200℃〜240℃であるのがより好ましい。溶融混練時間は約30秒〜5分間であるのが好ましい。
上記のようにして得られる樹脂組成物は、変性EVOH(C)のマトリックス中に、架橋剤(K)により架橋されたエラストマー(J)が分散した構造を有するものであり、架橋されたエラストマー(J)の分散粒子径は、直径0.1〜30μmであるのが好ましく、0.1〜20μmであるのがより好ましい。
さらに、本発明の動的架橋樹脂組成物は、より柔軟化を図るためにパラフィン系オイルを含有させてもよい。一般に、プロセスオイルなどとして用いられるオイルは、ベンゼン環やナフテン環などの芳香族環を有する成分、パラフィン成分(鎖状炭化水素)などが混合したものであり、パラフィン鎖を構成する炭素数が、オイルの全炭素数の50質量%以上を占めるものを「パラフィンオイル」と称している。本発明の動的架橋樹脂組成物で用いるパラフィン系オイルとしては、パラフィンオイルと称されているものであればいずれも使用可能であるが、芳香族環を有する成分の含有量が5質量%以下のものが好ましく用いられる。
パラフィン系オイルの配合量は、エラストマー(J)100質量部に対して200質量部以下であるのが好ましい。パラフィン系オイルの40℃における動粘度は、20×10−6〜800×10−6m2/秒であるのが好ましく、50×10−6〜600×10−6m2/秒であるのがより好ましい。また、流動点は、−40〜0℃であるのが好ましく、−30〜0℃であるのがより好ましい。さらに、引火点は、200〜400℃であるのが好ましく、250〜350℃であるのがより好ましい。パラフィン系オイルは、樹脂組成物の製造の際に、エラストマー(J)に含浸させてから溶融混練してもよいし、溶融混練の途中から添加してもよいし、含浸と途中添加を併用してもよい。
本発明の動的架橋樹脂組成物は、上記した成分の他に、必要に応じて、本発明の効果を実質的に損なわない範囲で、他の重合体を含有していてもよい。配合し得る他の重合体の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル等の樹脂が挙げられる。
さらに、本発明の動的架橋樹脂組成物は、補強、増量、着色などの目的で、必要に応じて無機充填剤や染顔料などを含有することができる。無機充填剤や染顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、合成珪素、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウムなどを挙げることができる。無機充填剤や染顔料の配合量は、樹脂組成物の気体、有機液体等への遮断性が損なわれない範囲であることが好ましく、一般には変性EVOH(C)とエラストマー(J)の合計100質量部に対して50質量部以下であるのが好ましい。
また、本発明の動的架橋樹脂組成物は、上記した成分以外に、必要に応じて架橋助剤、滑剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、シリコーンオイル、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、発泡剤、香料などの他の成分の1種または2種以上を含有していてもよい。
以下、本発明の樹脂組成物の用途について説明する。当該用途の説明において、樹脂組成物とは、変性EVOH(C)と熱可塑性樹脂(T1)からなる樹脂組成物と、動的に架橋処理して得られる樹脂組成物の両方実施態様を包含するものである。しかしながら、特に断らない限り、変性EVOH(C)と熱可塑性樹脂(T1)からなる樹脂組成物の用途として、好適なものである。
本発明の樹脂組成物は、好適には溶融成形によりフィルム、シート、容器、パイプ、ホース、繊維等、各種の成形体に成形される。これらの成形物は再使用の目的で粉砕し再度成形することも可能である。また、フィルム、シート、繊維等を一軸又は二軸延伸することも可能である。溶融成形法としては押出成形、溶融紡糸、射出成形、射出ブロー成形等が可能である。溶融温度は熱可塑性樹脂(T1)及び変性EVOH(C)の融点等により異なるが120〜270℃程度が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、好適には押出成形品として用いられる。押出成形品の製造方法は特に限定されないが、フィルム押出キャスト成形、シート押出キャスト成形、パイプ押出成形、ホース押出成形、異形押出成形、押出ブロー成形、インフレーション押出成形等が好適なものとして例示される。また、これらの成形方法によって得られた押出成形品を、一軸又は二軸延伸、若しくは熱成形などの二次加工に供することも可能である。
上述の通り、従来のEVOHは透明性及びガスバリア性に優れているが、延伸性、柔軟性及び耐屈曲性に欠ける欠点があった。このため、耐衝撃性を要求されるボトルなどの用途や、柔軟性及び耐屈曲性を要求されるフィルム又はフレキシブル包装容器などの用途にEVOHを用いる場合は、EVOHと他の樹脂とを積層する必要があることが多かった。しかしながら、本発明の樹脂組成物は、バリア性、透明性、延伸性、柔軟性及び耐屈曲性のいずれにおいても優れた性能を有するため、耐衝撃性及び/又は耐屈曲性を要求されるような用途においても、単層の成形品として用いることが可能である。かかる実施形態の拡大をもたらした観点からも、本発明の意義は大きい。
バリア性、耐衝撃性、柔軟性及び耐屈曲性に優れる本発明の樹脂組成物を効果的に活用する観点からは、樹脂組成物からなる単層成形品としては、フィルム、押出ブロー成形品(好適にはボトルなど)、フレキシブル包装容器(好適には、フレキシブルチューブ又はフレキシブルパウチなど)、パイプ、ホース及び異形成形品などが好ましい。また、前記フィルムとしては、延伸性に優れるという本発明の樹脂組成物の特性を生かせる観点から、特に延伸フィルムが好ましい。なかでも、少なくとも一軸方向に2倍以上延伸されてなる延伸フィルムが好ましい。さらに、前記延伸フィルムを、熱収縮フィルムとして用いることも好ましい。
これらの単層成形品のうち、肉厚が薄くても高度なバリア性が要求される用途や、透明性が要求される用途では、変性EVOH(C)と配合する熱可塑性樹脂(T1)として、前記構造単位(I)を含有しないEVOH(F)を使用することが好ましい。そのような用途としては、例えば、延伸フィルム、熱成形フィルム、熱収縮フィルム、フレキシブル包装容器などが例示される。
逆に、透明性が要求されない成形品、肉厚の成形品、あるいは高度なバリア性が要求されない成形品などでは、変性EVOH(C)と配合する熱可塑性樹脂(T1)として、他の熱可塑性樹脂、特にポリオレフィン(G)を使用することが好ましい。そのような用途としては、例えば、肉厚の射出成形品、形状の複雑な射出成形品、単層のパイプやホース、単層の押出ブロー成形容器などが例示される。肉厚の射出成形品としては、食品包装容器などのキャップ、燃料タンクの給油口やジョイントなどが例示される。形状の複雑な射出成形品としては、プルリング付きの注ぎ口などが例示される。また、樹脂組成物が成形品から回収されて得られたものである場合にも、熱可塑性樹脂(T1)としてポリオレフィン(G)を使用することが好ましい。変性EVOH(C)を使用することでリサイクル性が向上するからである。
本発明の樹脂組成物には、高温高湿下でのバリア性、形態保持性を向上させるため、あるいは熱収縮フィルムなどの用途に用いた際に、収縮性を向上させるために、架橋構造を本発明の作用効果が阻害されない程度に施すことができる。架橋構造を形成させる方法に関しては特に限定されないが、好ましい方法としてエネルギー線を照射する方法が挙げられる。エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、α線、γ線等の電離放射線が挙げられ、好ましくは電子線が挙げられる。
電子線の照射方法に関しては、押出成形による一次加工の後、電子線照射装置に成形体を導入し、電子線を照射する方法が挙げられる。電子線の線量に関しては特に限定されないが、好ましくは1〜40Mradの範囲内である。照射する電子線量が1Mradより低いと、架橋が進み難くなる。一方、照射する電子線量が40Mradを超えると成形体の劣化が進行しやすくなる。より好適には電子線量の範囲は2〜30Mradである。
一次成形の後、(一軸あるいは/又は二軸)延伸、熱成形等の二次成形を必要とする成形体に関しては、一次成形と二次成形との間に電子線照射を行うことが好適である。上記の架橋処理において、用いることができる電子線としては、一般的にコツクロフト−ワトソン型、バンデグラーフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、線形加速器、ダイナミトロン型、高周波サイクロトロン等の各種電子線加速器から放出される150〜10000KeVのエネルギーをもつものが用いられるが、その限りではない。
また、上記の架橋処理を施すにあたり、架橋助剤を配合した樹脂組成物を用いることが好ましい。架橋助剤としては、多官能アリル系化合物、多官能(メタ)アクリル系化合物としては官能基を少なくとも2個以上有するアリル系化合物及び(メタ)アクリル系化合物等が好適なものとして例示される。具体的にはトリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(PETMA)、グルタルアルデヒド(GA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジアリルマレエート(DAM)、ジプロパジルマレエート(DPM)、ジプロパジルモノアリルシアヌレート(DPMAC)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTAT)、テトラエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)、1,6ヘキサグリコールジアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジプロパジルサクシネート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレートなどが例示され、これらの中でも、トリアリルシアネート及びトリアリルイソシアネートが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上述の通り、単層の成形物としても実用に供せられるが、樹脂組成物と、熱可塑性樹脂(T2)とを積層してなる多層構造体として用いることも好ましい。該多層構造体の層構成としては、バリア材として使用されることの多い本発明の樹脂組成物をBarrier、接着性樹脂をAd、前記バリア材以外の樹脂をR、スクラップ回収層をRegで表わすと、Barrier/R、R/Barrier/R、Barrier/Ad/R、Reg/Barrier/R、R/Ad/Barrier/Ad/R、R/Reg/Ad/Barrier/Ad/Reg/R等が挙げられるが、これに限定されない。また、本発明の樹脂組成物からなる層の両面に、熱可塑性樹脂(T2)からなる層を設ける場合は、異なった種類のものでもよいし、同じものでもよい。さらに、回収樹脂を本発明の樹脂組成物以外の樹脂にブレンドしてもよい。それぞれの層は単層であってもよいし、場合によっては多層であってもよい。
上記に示す多層構造体を製造する方法は特に限定されない。例えば、本発明の樹脂組成物からなる成形物(フィルム、シート等)上に熱可塑性樹脂(T2)を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂(T2)の基材上に本発明の樹脂組成物を溶融押出する方法、本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂(T2)とを共押出成形する方法、更には本発明の樹脂組成物からなる成形物と熱可塑性樹脂(T2)のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。これらの中でも本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂(T2)とを共押出成形する方法が好ましく用いられる。
本発明の樹脂組成物と積層される熱可塑性樹脂(T2)としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、熱可塑性ポリウレタン及びポリカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましい。これらの中でも、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル及び熱可塑性ポリウレタンが好ましく用いられる。
本発明で熱可塑性樹脂(T2)として用いられるポリオレフィンは特に限定されるものではない。例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体(炭素数4〜20のα−オレフィン)、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又はその共重合体が挙げられる。これらα−オレフィン以外の共重合成分としては、ジオレフィン、N−ビニルカルバゾール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテル、などのビニル化合物、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物あるいはこれらにヒドロキシル基又はエポキシ基を付加したものなどがあげられる。例えばグラフト可能なモノマーとポリオレフィンとの共重合体やα−オレフィン/α,β−不飽和カルボン酸共重合体とイオン性金属化合物との反応物であるアイオノマー樹脂などの各種の共重合体などを用いることもできる。また、ポリオレフィンとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどを使用することもできる。これらのポリオレフィン系樹脂はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。また、上記に例示した中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましく用いられる。
本発明で熱可塑性樹脂(T2)として用いられるポリアミドとしては、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンアジパミド(ナイロン−2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10,6)、ポリドデカメチレンセバカミド(ナイロン−12,10)、あるいは、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン−6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン−12/6,6)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ナイロン−6,6/6,10)、エチレンアジパミド/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン−2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体などが挙げられる。これらのポリアミドは、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。これらのポリアミドのうち、カプロアミド成分を含むポリアミド(例えば、ナイロン−6、ナイロン−6,12、ナイロン−6/12、ナイロン−6/6,6等)が好ましい。
本発明で熱可塑性樹脂(T2)として用いられるポリエステルとしては、特に限定されない。例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート/イソフタレート)、ポリ(エチレングリコール/シクロヘキサンジメタノール/テレフタレート)などが好適なものとして例示される。これらの中でも、ポリ(エチレンテレフタレート)が特に好ましい。なお、前記ポリエステルとして、共重合成分としてエチレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオールなどのジオール類、あるいはイソフタル酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、プロピレンビス(フェニルカルボン酸)、ジフェニルオキサイドジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ジエチルコハク酸などのジカルボン酸を含有せしめたポリエステルを用いることも可能である。
また、本発明の樹脂組成物と積層される熱可塑性樹脂(T2)として、エラストマーを用いることも好ましい。本発明に用いられるエラストマーとしては、特に限定されない。例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の共重合体からなるエラストマーなどが好適なものとして例示される。
本発明の熱可塑性樹脂(T2)として用いられるポリウレタン系エラストマーとしては、通常高分子ジオール及び有機ジイソシアネート、及び/又は低分子ジオールなどの2又は3成分よりなるものが挙げられるが、特に限定されない。以下に各成分の具体例を述べる。
高分子ジオールは、重縮合、付加重合(例えば、開環重合)又は重付加などによって得られる高分子化合物のジオールであり、代表的なものとしてはポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール又はこれらの共縮合物(例えば、ポリエステル、エーテルジオール)が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
上記ポリエステルジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオールなどの脂肪族ジオール又はこれらの混合物と、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸などの脂肪族もしくは芳香族ジカルボン酸又はこれらの混合物とから得られるポリエステルジオールが使用できる。あるいはポリカプロラクトングリコール、ポリプロピオラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどのポリラクトンジオールが好ましく使用される。また上記ポリエーテルジオールとしてはポリエチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールなどのポリアルキレンエーテルジオールが好ましく使用される。 さらに上記ポリカーボネートジオールとしては1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの炭素数2〜12の脂肪族ジオール又はこれらの混合物に炭酸ジフェニルもしくはホスゲンを作用させて縮重合して得られるポリカーボネートジオールが好ましく使用される。
これらの高分子ジオールの平均分子量は500〜3000、好ましくは、500〜2500の範囲内にあるのが好ましい。平均分子量が小さすぎると有機ジイソシアネートとの相容性が良すぎて生成ポリウレタンの弾性が乏しくなり、一方平均分子量が大きすぎると有機ジイソシアネートとの相容性が悪くなり重合過程での混合がうまくゆかず、ゲル状物の塊が生じたり安定したポリウレタンが得られない。
第2の原料である低分子ジオールとしては、分子量が500未満の低分子ジオール、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチルペンタングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼンなどが脂肪族、脂環族又は芳香族ジオールが挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上組み合わせて使用してもよい。
有機ジイソシアネートとしては4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂環族又は脂肪族ジイソシアネートがあげられる。これらの有機ジイソシアネートは単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で熱可塑性樹脂(T2)として用いられるポリウレタン系エラストマーの窒素含有量は、高分子ジオール、低分子及び有機ジイソシアネートの使用割合を適宜選択することにより決定されるが、実用的には1〜7%の範囲で好適に使用される。また熱可塑性ポリウレタンを使用する場合、必要に応じて有機ジイソシアネートとジオールとの反応を促進する適当な触媒を用いてもよい。また、目的に応じて着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤又は潤滑剤を加えることもできる。
本発明で熱可塑性樹脂(T2)として用いられるポリオレフィン系エラストマーとしては特に限定されないが、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー(EPR)が好適なものとして例示される。エチレン−プロピレン共重合体としては、特に限定されるものではなく、エチレンとプロピレンのランダム共重合体、ブロック共重合体を例示することができる。また、各組成の含有量は柔軟性を十分持つ点より、片方の成分が少なくとも10重量%以上存在することが好ましく、20重量%以上存在することがさらに好ましい。
また、本発明で熱可塑性樹脂(T2)として用いられるビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の共重合体からなるエラストマーも特に限定されない。このようなビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、t−ブトキシスチレン等のスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類などのビニル基含有芳香族化合物;インデン、アセナフチレン等のビニレン基含有芳香族化合物などを挙げることが出来る。ビニル芳香族モノマー単位は1種のみでも良く、2種以上であっても良い。但し、スチレンから誘導される単位であることが好ましい。
また、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなる共重合体に使用される共役ジエン化合物も特に限定されるものではない。該共役ジエン化合物としてはブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等を挙げることが出来る。このとき、該共役ジエン化合物が部分的又は完全に水素添加されていても良い。部分的に水素添加されたビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなる共重合体の例としては、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレントリブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレントリブロック共重合体(SEPS)、スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物等が挙げられる。
以上に例示した各種エラストマーの中でも、ポリウレタン系エラストマーを用いることが、本発明の樹脂組成物、特に変性EVOH(C)とEVOH(F)からなる樹脂組成物層と、エラストマー層との層間接着性に優れる観点から好ましい。
上述の通り、本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂(T2)とを積層してなる多層構造体は、好適には樹脂組成物と熱可塑性樹脂(T2)との共押出成形によって製造される。この際、樹脂組成物と積層される樹脂の種類によっては、樹脂組成物と熱可塑性樹脂(T2)とを、接着性樹脂を介して積層することがある。この場合の接着性樹脂としてはカルボン酸変性ポリオレフィンからなる接着性樹脂が好ましい。ここでカルボン酸変性ポリオレフィンとは、オレフィン系重合体にエチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物を化学的(たとえば付加反応、グラフト反応により)に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体のことをいう。また、ここでオレフィン系重合体とはポリエチレン(低圧、中圧、高圧)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリブテンなどのポリオレフィン、オレフィンと該オレフィンとを共重合し得るコモノマー(ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステルなど)との共重合体、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体などを意味する。このうち直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの含有量5〜55重量%)、エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体(アクリル酸エチルエステルの含有量8〜35重量%)が好適であり、直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好適である。エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物とはエチレン性不飽和モノカルボン酸、そのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸、そのモノ又はジエステル、その無水物があげられ、このうちエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が好適である。具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステルなどが挙げられ、なかんずく、無水マレイン酸が好適である。
エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物のオレフィン系重合体への付加量又はグラフト量(変性度)はオレフィン系重合体に対し0.0001〜15重量%、好ましくは0.001〜10重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物のオレフィン系重合体への付加反応、グラフト反応は、たとえば溶媒(キシレンなど)、触媒(過酸化物など)の存在下でラジカル重合法などにより得られる。このようにして得られたカルボン酸変性ポリオレフィンの190℃、2160g荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)は0.2〜30g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10g/10 分である。これらの接着性樹脂は単独で用いてもよいし、また二種以上を混合して用いることもできる。
本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂(T2)とを共押出成形する場合、通常のEVOHと比較して、以下に示すようなメリットがある。メリットの一つは、本発明の樹脂組成物が優れたバリア性、透明性、延伸性、柔軟性及び耐屈曲性を有するため、樹脂組成物からなる層を含む多層成形物にも、かかる優れた物性を付与できることである。
もう一つのメリットは、本発明で使用する変性EVOH(C)が、通常のEVOHと比較して、低融点であることに起因するメリットである。変性EVOH(C)の融点は、上述の構造単位(I)の含有量によって異なるが、通常の未変性EVOHよりも、前記構造単位(I)を含有する変性EVOH(C)の融点は低くなる。このメリットは、変性EVOH(C)とポリオレフィン(G)とからなる樹脂組成物の場合に顕著である。
EVOHは、しばしばポリオレフィンとの積層体として用いられるが、この積層体は、共押出成形によって製造されることが多い。しかしながら、一般に、エチレン含有量5〜55モル%のEVOHは、ポリオレフィンなどよりも高融点の樹脂であるため、EVOH及びポリオレフィンを共押出成形によって溶融成形する際には、EVOHの融点より高い温度で成形する必要があった。すなわち、ポリオレフィンの成形温度としては、必ずしも最適ではない成形温度で共押出成形が行われていた。
ところが、本発明の樹脂組成物を用いることにより、ポリオレフィンの最適成形温度により近い成形温度で共押出成形が行うことが容易になった。このように、共押出成形を行う際の成形温度の幅が広がったことにより、ポリオレフィンと本発明の樹脂組成物との粘度マッチングの調整を行うことがより容易になり、より好ましい運転条件で共押出成形物を得られるようになった。かかる観点からも、本発明の意義は大きい。
本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂(T2)とを共押出成形する方法は特に限定されない。例えば、マルチマニホールド法、フィードブロック法、マルチスロットダイ法などが好適なものとして例示される。このような成形法により、多層フィルム、多層シート、多層パイプ、多層ホース、多層異形成形品などが成形される。また、共押出インフレーション成形法、共押出ブロー成形法などからも、多層フィルムや多層ボトルを得ることができる。
このようにして得られた共押出多層構造体を二次加工することにより、各種成形品(フィルム、シート、チューブ、ボトルなど)を得ることができ、たとえば以下のようなものが挙げられる。
(1)多層構造体(シート又はフィルムなど)を一軸又は二軸方向に延伸、又は二軸方向に延伸、熱処理することによる多層共延伸シート又はフィルム
(2)多層構造体(シート又はフィルムなど)を圧延することによる多層圧延シート又はフィルム
(3)多層構造体(シート又はフィルムなど)真空成形、圧空成形、真空圧空成形、等熱成形加工することによる多層トレーカップ状容器
(4)多層構造体(パイプなど)からのストレッチブロー成形等によるボトル、カップ状容器
このような二次加工法には特に制限はなく、上記以外の公知の二次加工法(ブロー成形など)も採用できる。
本発明の樹脂組成物は、バリア性、透明性、延伸性、柔軟性及び耐屈曲性に優れているため、本発明の樹脂組成物からなる層を含む多層構造体は、さまざまな用途に用いることができる。例えば、フレキシブルフィルム、フレキシブル包装材、熱成形容器、ブロー成形物(多層共押出ブロー成形容器、多層共射出ブロー成形容器など)、熱収縮性フィルム(スキンパックフィルムなど)、ホース又はバルーンなどに用いることが好ましい。上記の中でも、耐屈曲性の効果を十分に奏することができる用途としては、フレキシブル包装材(フレキシブルパウチ、チューブなど)及びフレキシブルフィルムなどが好適なものとして例示される。
これらの多層成形品のうち、樹脂組成物層の厚みが薄くても高度なバリア性が要求される用途や、透明性が要求される用途では、変性EVOH(C)と配合する熱可塑性樹脂(T1)として、未変性のEVOH(F)を使用することが好ましい。そのような用途としては、例えば、延伸フィルム、熱成形フィルム、熱成形シート、熱収縮フィルム、フレキシブル包装容器、ブロー成形容器、パイプ、ホース、バルーンなどが例示される。なかでも、延伸フィルム、熱成形フィルム、熱成形シート、熱収縮フィルム、ブロー成形容器のように、二次加工性が要求される場合には、変性EVOH(C)とEVOH(F)のエチレン含有量との差が2〜30モル%であることが好ましい。特に、変性EVOH(C)のエチレン含有量がEVOH(F)のエチレン含有量より大きいことが、ガスバリア性の良好なEVOH(F)の特性を維持しながら、二次加工性に特に優れていて好ましい。
逆に、透明性が要求されない成形品、肉厚の成形品あるいは高度なバリア性が要求されない成形品などでは、変性EVOH(C)と配合する熱可塑性樹脂(T1)として、他の熱可塑性樹脂、特にポリオレフィン(G)を使用することが好ましい。そのような用途としては、例えば、二色成形品や、インサート成形品、共射出成形品、肉厚の多層パイプやホース、肉厚の多層ブロー成形容器などが例示される。
また、本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂(T2)とを積層してなる多層構造体は、壁紙又は化粧版として用いることも好ましい。EVOHは優れた防汚性及び可塑剤に対するバリア性を有するため、EVOH層を含む多層構造体は、壁紙として好適に用いられる。しかしながら壁紙は、輸送中や倉庫内での保管時など、しばしばロール状に巻かれた状態で保存される。輸送を何度も繰り返す場合など、折り曲げの頻度が増えることにより、該EVOH層に折り皺が生じたり、程度が酷い場合は白化が生じたりすることがあり、外観が不良になることがあった。ところが、本発明の樹脂組成物は、優れた可塑剤に対するバリア性を維持しながらも、優れた柔軟性及び耐屈曲性を有するため、かかる用途に非常に適している。この用途では、変性EVOH(C)と配合する熱可塑性樹脂(T1)として、EVOH(F)を使用することが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物からなるフレキシブルフィルムは、上述の通り、防汚性、柔軟性及び対屈曲性に優れているため、例えば人工皮革などと積層することにより、ブックカバーなどに用いることも好ましい。書籍の表紙や、手帳などのカバーなどに用いることも好ましい。この用途でも、変性EVOH(C)と配合する熱可塑性樹脂(T1)として、EVOH(F)を使用することが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物層と熱可塑性樹脂(T2)層を有する多層構造体を多層パイプとして用いることにより、耐クラック性に優れた多層パイプが得られる。好適な実施態様では、多層パイプが、本発明の樹脂組成物からなる中間層と、ポリオレフィンからなる内外層を有する積層体でなる多層パイプである。多層パイプとしては、特に燃料パイプ又は温水循環用パイプとして用いることが好ましい。燃料パイプは、自動車用の燃料パイプなどの他、油田などから燃料を輸送する、いわゆるフューエルラインとしても使用可能である。これらの多層パイプは、通常、パイプ同士を接合具を用いて接合して用いられる。このような多層パイプ同士を接合具を用いて接合するにあたっては、パイプを特殊な拡大治具にてまずパイプ端部の径を数回に分けてゆっくりと拡大することが多い。
かかる工程において、通常のEVOHを中間層とする従来の多層パイプでは、前記多層パイプの径が拡大された部分において、EVOHにクラックが生じることがあった。特に、床暖房パイプが敷設される地域など、外気温が非常に低い環境下での作業の際には、EVOHからなる層に大きなクラックが生じるケースがある。このクラックにより、多層パイプの接合部分における酸素バリア性が低下することがあった。しかしながら、本発明の樹脂組成物は柔軟性に優れているため、このようなパイプ同士の接合工程においても、樹脂組成物からなる層のクラックの発生を、効果的に抑制可能である。
一方、多層パイプは燃料パイプとしても好適に用いられる。この場合、前記燃料パイプは特に好適には自動車用の燃料パイプとして用いられ、燃料タンクからエンジンへ燃料を供給する燃料パイプとして用いられる。このような実施形態では、エンジンによる振動や、自動車の走行時における振動などが燃料パイプに負荷を与え続けるため、バリア層にクラック等が生じやすくなる。しかしながら、本発明の樹脂組成物は柔軟性に優れているため、燃料パイプとして用いた場合も、樹脂組成物からなる層のクラックの発生を、効果的に抑制可能である。
以上のような観点から、本発明の樹脂組成物からなる層を含む多層構造体を、多層パイプとして用いることは非常に有益であり、特に、燃料パイプ又は温水循環用パイプとして用いることが好ましい。この用途では、変性EVOH(C)と配合する熱可塑性樹脂(T1)として、EVOH(F)を使用することが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物からなる層を含む多層構造体を、多層ホースとして用いることも好ましい。ホースはパイプよりも柔軟なものであるために、柔軟性に優れた本発明の樹脂組成物を使用することのメリットが大きい。特に好適には燃料ホースとして使用される。この用途でも、変性EVOH(C)と配合する熱可塑性樹脂(T1)として、EVOH(F)を使用することが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物からなる層を含む多層構造体を、多層ブロー成形物として用いることにより、耐衝撃性に優れた多層ブロー成形物が得られる。多層ブロー成形物としては、多層共押出ブロー成形容器が好ましい。多層ブロー成形容器としては、樹脂組成物を中間層とし、ポリオレフィンを内外層とするものが好ましい。特に、ポリオレフィンとして、ポリエチレン又はポリプロピレンを用いることが好ましい。この用途でも、変性EVOH(C)と配合する熱可塑性樹脂(T1)として、EVOH(F)を使用することが好ましい。
また、前記多層ブロー成形容器は、自動車用燃料容器又はオートバイ用燃料容器として用いることが好ましい。多層共押出ブロー成形容器を燃料容器として用いる場合は、ポリオレフィンとして、高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。高密度ポリエチレンは通常市販品の中から適宜選択して使用することができるが、なかでも剛性、耐衝撃性、成形性、耐ドローダウン性、耐ガソリン性等の観点から、高密度ポリエチレンの密度は0.95〜0.98g/cm3であることが好ましく、さらに好ましくは0.96〜0.98g/cm3である。また、多層燃料容器の内外層として用いられる高密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、0.01〜0.5g/10分(190℃−2160g荷重下)であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.1g/10分(190℃−2160g荷重下)である。
本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂(T2)とを積層してなる多層ブロー成形容器の別の好ましい実施態様として、共射出延伸ブロー成形容器が挙げられる。
延伸ブロー成形法による熱可塑性ポリエステル(以下、PESと略記することがある)容器は、透明性、力学的特性、フレーバーバリヤー性などの種々の性質に優れ、しかも成形品にした際に残留モノマーや有害添加物の溶出の心配が少なく、衛生性及び安全性に優れていることから、幅広い分野で使用されている。しかし、ガスバリア性に関しては必ずしも十分でないために飲料、食品などの保存は比較的短期間に限られていた。
この欠点を改善するため、熱可塑性ポリエステルにガスバリア性が良好なEVOHを組み合わせ、多層構造にする方法が種々提案されている。延伸ブローするに先立ちまずパリソンを形成するが、かかるパリソンを製造する手法としては共射出成形法、共押出成形法、多段射出成形法等が採用される。これらの中で共射出成形法は装置が簡単であり、トリムなどのスクラップの発生も少なく、さらにEVOH層がPES層などで完全に覆われる構造とできることより、EVOH層とPES層などとの間に接着性樹脂(以下、Adと略記することがある)層がなくても大気圧による密着効果により外見上良好な多層容器になるなどの特長がある。
しかしながら、容器に飲料、食品などを充填し落下させるなどの衝撃を与えると、PES層とEVOH層との間に剥離(デラミネーション;以下デラミと略することがある)が生じやすく、外観上大きな問題点であった。この問題を解決するために、いくつかの技術が開発されている。例えば、特開平11−348194号公報(EP0949056)には、熱可塑性ポリエステル層(a層)及びエチレン−ビニルアルコール共重合体層(b層)からなり、a層がb層の両面に直接接触するように配置されてなり、エチレン−ビニルアルコール共重合体の示差走査熱量計(DSC)での結晶融解ピークが単一ピークであり、かつ下記式(1)及び(2)を満足する共射出延伸ブロー成形容器が開示されている。
25≦ETb≦48 (1)
92≦SDb≦99 (2)
但し、
ETb;エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量(モル%)
SDb;エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度(%)
また、特開2001−277341号公報(EP1120223)には、熱可塑性ポリエステル層(a層)及びエチレン−ビニルアルコール共重合体層(b層)からなり、a層がb層の両面に直接接触するように配置されてなり、前記エチレン−ビニルアルコール共重合体が、2種類のエチレン−ビニルアルコール共重合体(b1、b2)の配合物からなり、その配合重量比(b1/b2)が50/50〜90/10であり、かつ下記式(3)〜(8)を満足する共射出延伸ブロー成形容器が記載されている。
25≦ETb1≦40 (3)
99≦SDb1 (4)
35≦ETb2≦48 (5)
92≦SDb2≦99 (6)
4≦ETb2−ETb1≦23 (7)
1≦SDb1−SDb2≦8 (8)
但し、
ETb1;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b1)のエチレン含有量(モル%)
SDb1;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b1)のケン化度(%)
ETb2;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b2)のエチレン含有量(モル%)
SDb2;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b2)のケン化度(%)
以上に例示した技術により、EVOH層とPES層からなる共射出延伸ブロー成形容器の耐デラミ性は従来に比して大幅に改善された。しかしながら、現在では従来以上に前記ブロー成形容器の市場が拡大し、さまざまな用途に使用されるようになっている。かかる用途の拡大の結果、前記ブロー成形容器の、さらなる耐デラミ性の向上及び容器の透明性の向上の要求が高まっていた。
本発明の共射出延伸ブロー成形容器は、本発明の樹脂組成物からなる層と熱可塑性樹脂(T2)からなる層を有する多層容器である。これにより、共射出延伸ブロー成形容器が衝撃等を受けた場合においても、本発明の樹脂組成物からなる層と、熱可塑性樹脂(T2)からなる層との層間剥離の発生を効果的に抑制できる。このような構成にすることで、耐デラミ性に優れるだけでなく、透明性及びガスバリア性にも優れた共射出延伸ブロー成形容器を提供することができる。
共射出延伸ブロー成形容器に使用される樹脂組成物としては、前述のものを使用することができる。このとき、樹脂組成物が変性EVOH(C)と配合する熱可塑性樹脂(T1)として、EVOH(F)を使用することが好ましい。本用途では特に透明性が重要であり、なおかつ高度なバリア性も要求されることから、変性EVOH(C)とEVOH(F)の両者のエチレン含有量の差が小さい方が好ましく、具体的には、その差が2モル%以下であることが好適である。
また、本発明の樹脂組成物を使用することによって成形性も改善される。なお成形性は有底パリソンの外観の着色、ゲル、スジの発生状況及び容器口部の樹脂組成物層の端部(以降リーディングエッジと称することがある)の状態から判断できる。図10に、良好なリーディングエッジを有する有底パリソンの一部を表す概略図を、図11に、不良なリーディングエッジを有する有底パリソンの一部を表す概略図をそれぞれ示す。容器口部11において、PES/EVOH多層部分12とPES単層部分13との境界がリーディングエッジ14である。リーディングエッジの好ましい状態とは、有底パリソンの底の部分を下にしたときに、リーディングエッジのラインがほぼ水平になっている状態である。
本発明の共射出延伸ブロー成形容器において、本発明の樹脂組成物と積層される熱可塑性樹脂(T2)は特に限定されないが、ポリエステル、ポリプロピレン及びポリエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレンを用いることがより好ましい。
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記熱可塑性樹脂(T2)層は複層構成であってもよく、また、回収層を含んでいてもよいが、本発明の樹脂組成物層と熱可塑性樹脂(T2)層のみからなる層構成が好ましく、樹脂組成物層の両側に熱可塑性樹脂(T2)層を有する層構成がより好ましい。具体的には、本発明の樹脂組成物からなる層をC、熱可塑性樹脂層をTと表したとき、(外)T/C/T(内)、(外)T/C/T/C/T(内)等が好適な層構成として例示される。なお、ここで(内)は内層側、すなわち内容物と接触する側の層を示す。
上記熱可塑性樹脂(T2)として用いられるポリエステル(PES)としては、芳香族ジカルボン酸又はそれらのアルキルエステルと、ジオールとを主成分とする縮合重合体が用いられる。特に本発明の目的を達成するには、エチレンテレフタレート成分を主とするPESが好ましい。具体的には、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位との合計割合(モル%)が、PESを構成する全構造単位の合計モル数に対して、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上がより好ましい。テレフタル酸単位とエチレングリコール単位の合計割合が70モル%未満であると、得られるPESが非晶性となり、機械的強度が不足する上に、延伸して容器とした後に内容物を加熱充填(ホットフィル)すると、熱収縮が大きく使用に耐えないおそれがある。また、樹脂内に含有されるオリゴマーを低減するために固相重合を行うと、樹脂の軟化による膠着が生じやすく、生産が困難になるおそれがある。
上記PESは、必要に応じてテレフタル酸単位及びエチレングリコール単位以外の二官能化合物単位を、上記の問題が発生しない範囲において含有することができる。その割合(モル%)としては、PESを構成する全構造単位の合計モル数に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。このような二官能化合物単位としては、ジカルボン酸単位、ジオール単位、ヒドロキシカルボン酸単位等が挙げられ、脂肪族、脂環式、芳香族のいずれでもよい。具体的には、ネオペンチルグリコール単位、シクロヘキサンジメタノール単位、シクロヘキサンジカルボン酸単位、イソフタル酸単位、ナフタレンジカルボン酸単位等が挙げられる。
これらの中でも、イソフタル酸単位は、得られたPESを用いた場合、良好な成形物を得ることのできる製造条件が広く、成形性に優れるため、不良品率が低いという利点を有する。結晶化速度の抑制により、成形品の白化を防止できる点からも好ましい。また、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位は、得られる成形物の落下時の強度が一層優れるという点から好ましい。さらに、ナフタレンジカルボン酸単位は、得られるPESのガラス転移温度が上昇し、耐熱性が向上する上に、紫外線を吸収する能力が付与されるので好ましく、内容物が紫外線による劣化を生じやすい場合に特に有用である。例えば、ビールのように内容物が酸化によっても、紫外線によっても劣化しやすいものである場合に特に有用である。
PESの製造に際して重縮合触媒を使用する場合は、PESの製造に通常用いられている触媒を使用することができる。例えば、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等のゲルマニウム化合物;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のチタン化合物;ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート等の錫化合物等を使用することができる。これらの触媒は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。重縮合触媒の使用量としては、ジカルボン酸成分の重量に基づいて0.002〜0.8重量%の範囲が好ましい。
これらの中でも、触媒コストの面からはアンチモン化合物が好ましく、三酸化アンチモンが特に好ましい。一方、得られるPESの色調が良好となるという面からはゲルマニウム化合物が好ましく、二酸化ゲルマニウムが特に好ましい。また、成形性の観点からは、ゲルマニウム化合物がアンチモン化合物よりも好ましい。アンチモン化合物を触媒とした重合反応により得られるPESは、ゲルマニウム化合物を触媒として重合したPESよりも結晶化速度が速く、射出成形時又はブロー成形時に、加熱による結晶化が進行しやすく、結果として得られたボトルに白化が生じて透明性が損なわれる場合がある。また、延伸配向性が低下して、賦形性が悪化する場合もある。このように、良好な成形物を得ることのできる製造条件の範囲が狭くなり、不良品率が上昇しやすくなる傾向にある。
特に、本発明に使用されるPESとして、副生するジエチレングリコール単位以外の共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートを使用する場合には、該PESを製造する際に、結晶化速度を抑えるためにゲルマニウム化合物を触媒として用いることが好ましい。
上記樹脂組成物からなる層及びPES層をそれぞれ少なくとも1層含む、本発明の共射出ブロー成形容器の製造方法は特に限定されるものではない。共射出ブロー成形においては、共射出成形によって得られた容器前駆体(パリソン)を延伸ブロー成形することにより容器が製造される。
共射出成形においては、通常、多層構造体の各層を構成すべき樹脂を2台又はそれ以上の射出シリンダーより同心円状のノズル内に導き、同時に又はタイミングをずらして交互に、単一の金型内に射出し、1回の型締め操作を行うことにより成形が行われる。例えば(1)先に内外層用のPES層を射出し、次いで、中間層となる樹脂組成物を射出して、PES/樹脂組成物/PESの3層構成の成形容器を得る方法、(2)先に内外層用のPES層を射出し、次いで樹脂組成物を射出して、それと同時に又はその後にPES層を再度射出し、PES/樹脂組成物/PES/樹脂組成物/PESの5層構成の成形容器を得る方法等によりパリソンが製造されるが、これらの製造方法に限定されるものではない。また、上記層構成において、樹脂組成物からなる層とPES層との間に、必要に応じて接着性樹脂層を配置してもよい。
本発明の好適な実施態様の一つである、樹脂組成物からなる層及びPES層をそれぞれ少なくとも1層含む多層容器は、高い透明性を得ることが可能であり、内容物の品質の保持性能が極めて優れているので、食品包装用途等に最適である。多層容器の層構成としては、上述の通り樹脂組成物からなる層とPES層との間に接着性樹脂層を配置してもよいが、PES層が樹脂組成物からなる層の両面に直接接触するように配置されてなる多層容器は、より高い透明性を得ることが可能であり、かつ樹脂組成物からなる層とPES層との間の耐衝撃剥離性に優れるという本発明の効果を十分に奏し得る観点から、特に好ましい。
射出成形の条件としては、PESは250〜330℃の温度範囲で射出することが好ましく、270〜320℃がより好ましく、280〜310℃がさらに好ましい。PESの射出温度が250℃未満である場合、PESが十分に溶融せず、成形物に未溶融物(フィッシュアイ)が混入し外観不良を生じ、同時に成形物の機械的強度の低下の原因となるおそれがある。また、極端な場合はスクリュートルクが上昇し、成形機の故障を引き起こすおそれがある。一方、PESの射出温度が330℃を超える場合、PESの分解が著しくなり、分子量低下による成形物の機械的強度の低下を引き起こすおそれがある。また、分解時に生じるアセトアルデヒド等のガスにより成形物に充填する物質の性質を損なうだけでなく、分解時に生じるオリゴマーにより金型の汚れが激しくなり成形物の外観を損なうおそれがある。
本発明の樹脂組成物は160〜240℃の温度範囲で射出することが好ましく、175〜230℃がより好ましく、185〜225℃がさらに好ましい。樹脂組成物の射出温度が160℃未満である場合、樹脂組成物が十分に溶融せず、成形物に未溶融物(フィッシュアイ)が混入し外観不良を生じるおそれがある。また、極端な場合はスクリュートルクが上昇し、成形機の故障を引き起こすおそれがある。一方、樹脂組成物の射出温度が250℃を超える場合、樹脂組成物の劣化が進行し、樹脂組成物のガスバリア性が低下するおそれがある。同時に、着色やゲル化物による成形物の外観不良が生じ、あるいは分解ガスやゲル化物により流動性が不均一となりもしくは阻害されて、樹脂組成物からなる層の欠落部分を生じることもある。極端な場合には、ゲル化物の発生により、射出成形が不可能となる。溶融時の劣化の進行を抑制するためには、原料供給ホッパーを窒素でシールすることも好ましい。
PES及び樹脂組成物が流入するホットランナー部分の温度は220〜300℃の範囲が好ましく、240〜280℃がより好ましく、250〜270℃がさらに好ましい。ホットランナー部分の温度が220℃未満である場合、PESが結晶化してホットランナー部分で固化するため、成形が困難となる場合がある。一方、ホットランナー部分の温度が300℃を超える場合、樹脂組成物の劣化が進行し、樹脂組成物のガスバリア性が低下するおそれがある。同時に、着色やゲル化物による成形物の外観不良が生じ、あるいは分解ガスやゲル化物により流動性が不均一となりもしくは阻害されて、樹脂組成物からなる層の欠落部分を生じることもある。極端な場合には、ゲル化物の発生により、射出成形が不可能となる。
金型温度としては、0〜70℃の範囲が好ましく、5〜50℃がより好ましく、10〜30℃がさらに好ましい。これにより、パリソンのPES、変性EVOH(C)又は熱可塑性樹脂(T1)の結晶化が抑制され、均一な延伸性が確保されて、得られる多層容器の耐層間剥離性及び透明性が向上し、形状の安定した成形物を得ることができる。金型温度が0℃未満である場合、金型の結露によりパリソンの外観が損なわれ、良好な成形物が得られないおそれがある。また、金型温度が70℃を超える場合、パリソンを構成するPES、変性EVOH(C)又は熱可塑性樹脂(T1)の結晶化が抑制されず、延伸性が不均一となり、得られる成形物の耐層間剥離性及び透明性が低下する上、意図した形に賦形された成形物を得ることが困難となる。
こうして得られたパリソンにおいては、総厚みが2〜5mm、本発明の樹脂組成物からなる層の厚みが合計で10〜500μmであることが好ましい。
上記のパリソンは、高温の状態で直接、又はブロックヒーター、赤外線ヒーター等の発熱体を用いて再加熱された後、延伸ブロー工程に送られる。加熱されたパリソンを、延伸ブロー工程において縦方向に1〜5倍に延伸した後、圧縮空気等で1〜4倍に延伸ブロー成形することにより、本発明の多層射出ブロー成形容器を製造することができる。パリソンの温度は、75〜150℃が好ましく、85〜140℃がより好ましく、90〜130℃がさらにより好ましく、95〜120℃が最も好ましい。パリソンの温度が150℃を超えると、PESが結晶化しやすくなり、得られる容器が白化して外観が損なわれたり、容器の層間剥離が増加する場合がある。一方、パリソンの温度が75℃未満であると、PESにクレーズが生じ、パール調になって透明性が損なわれる場合がある。
こうして得られる多層容器の胴部の総厚みは、一般的には100〜2000μm、好適には150〜1000μmであり、用途に応じて使い分けられる。このときの本発明の樹脂組成物からなる層の合計厚みは、2〜200μmの範囲であることが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
以上のようにして本発明の好適な実施態様の一つである、本発明の樹脂組成物からなる層及びPES層からなる多層容器が得られる。この容器は高い透明性を得ることが可能であり、かつガスバリア性に極めて優れる。従って、酸素の存在により劣化しやすい内容物、例えば、食品、医薬品等の容器として有用である。特にビール等の飲料の容器として極めて有用である。
また、本発明の別の好適な実施態様の一つは、本発明の樹脂組成物からなる層及びポリプロピレン層をそれぞれ少なくとも1層含む多層容器である。本発明に用いられるポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレンの他に、エチレン等の他のオレフィン化合物とのランダム又はブロック共重合体等が使用できる。これらの中でも、成形品の透明性、外観という観点からはエチレン系との共重合体が好ましい。また、ポリプロピレンのメルトインデックスは0.1〜100g/10分(230℃、2160g荷重下)が好ましく、0.2〜50g/10分がより好ましく、0.5〜20g/10分がさらにより好ましい。
射出成形の条件としては、ポリプロピレンの溶融時の流動性、得られる容器の外観及び強度の観点から、ポリプロピレンの成形温度は180〜250℃の範囲内であることが好ましく、200〜250℃であることがより好ましい。上記ポリプロピレンからなる層及び本発明の樹脂組成物からなる層を有する多層パリソンを製造する製造条件、及び当該多層パリソンを延伸ブロー成形する際の製造条件は、上述の、PESからなる層及び本発明の樹脂組成物からなる層を有する共射出成形ブロー成形容器を製造する場合と同様である。
上記のようにして得られる、ポリプロピレンからなる層及び本発明の樹脂組成物からなる層を有する本発明の共射出延伸ブロー成形容器は、保香性、耐有機溶剤性及び耐デラミ性に優れる。かかる多層容器は各種内容物を長期間にわたって保存するのに適しており、ホット充填が行われる紅茶等の各種飲料、食品、化粧品、血液サンプル等を保存する容器等として有用である。
また、本発明の別の実施態様である、動的に架橋処理して得られる樹脂組成物(動的架橋樹脂組成物)の場合にも、ペレット、粉末などの任意の形態にしておいて、成形材料として使用することができる。さらに本発明の動的架橋樹脂組成物は、熱可塑性を有するので、一般の熱可塑性樹脂に対して用いられている通常の成形加工方法や成形加工装置を用いて成形加工することができる。成形加工法としては、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの任意の方法を採用することができる。このような方法で製造される本発明の動的架橋樹脂組成物からなる成形品にはパイプ、シート、フィルム、円板、リング、袋状物、びん状物、紐状物、繊維状物などの多種多様の形状のものが包含され、また、他の素材との積層構造体または複合構造体も包含される。他の素材との積層構造を採用することによって、成形品に、耐湿性、機械的特性など、他の素材の有する特性を導入することが可能である。
本発明の動的架橋樹脂組成物からなる少なくとも1つの層と他の素材からなる少なくとも1つの層との積層構造を有する成形品において、該他の素材は、要求される特性、予定される用途などに応じて適切なものを選択すればよい。該他の素材としては、例えば、ポリオレフィン(例:高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン等)、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(EEA)、ポリスチレン(PS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)などの熱可塑性樹脂などを挙げることができる。
該積層構造を有する成形品においては、本発明の動的架橋樹脂組成物からなる層と他の素材からなる基材層との間に接着剤層を介在させてもよい。接着剤層を介在させることによって、その両側の本発明の動的架橋樹脂組成物からなる層と他の素材からなる基材層とを強固に接合一体化させることができる。接着剤層において使用される接着剤としては、ジエン系重合体の酸無水物変性物;ポリオレフィンの酸無水物変性物;高分子ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール化合物とアジピン酸等の二塩基酸とを重縮合して得られるポリエステルポリオール;酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体の部分ケン化物など)とポリイソシアネート化合物(例えば、1,6−ヘキサメチレングリコール等のグリコール化合物と2,4−トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とのモル比1対2の反応生成物;トリメチロールプロパン等のトリオール化合物と2,4−トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とのモル比1対3の反応生成物など)との混合物等を使用することができる。なお、積層構造形成のために、共押出、共射出、押出コーティング等の公知の方法を使用することもできる。
本発明の動的架橋樹脂組成物からなる成形品は、多くの気体、有機液体等に対する優れた遮断性と優れた柔軟性とを兼備しているので、これらの性質が要求される日用品、包装材、機械部品などとして使用することができる。本発明の動的架橋樹脂組成物の特長が特に効果的に発揮される用途の例としては、飲食品用包装材、容器、容器用パッキングなどが挙げられる。これらの用途に供するための成形品においては、該樹脂組成物は少なくとも1つの層を形成していればよく、該樹脂組成物からなる単層構造のもの、および該樹脂組成物からなる少なくとも1つの層と他の素材からなる少なくとも1つの層との積層構造のものの中から適宜選ぶことができる。上記の飲食品用包装材、容器、および容器用パッキングでは、大気中の酸素ガスの透過と内容物の揮発性成分の透過を阻止できることから、内容物の長期保存性に優れる。
なお、本発明の動的架橋樹脂組成物からなる成形品は、廃棄の際に、溶融させて再使用することができる。
以下、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。EVOH(A)、変性EVOH(C)、EVOH(F)、及び樹脂組成物に関する分析は以下の方法に従って行った。
(1)EVOH(A)及びEVOH(F)のエチレン含有量及びケン化度
重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒とした1H−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)により得られたスペクトルから算出した。
(2)EVOH(A)の固有粘度
試料とする乾燥EVOH(A)からなる乾燥ペレット0.20gを精秤し、これを含水フェノール(水/フェノール=15/85:重量比)40mlに60℃にて3〜4時間加熱溶解させ、温度30℃にて、オストワルド型粘度計にて測定し(t0=90秒)、下式により固有粘度[η]を求めた。
[η]=(2×(ηsp−lnηrel))1/2/C (L/g)
ηsp= t/ t0−1 (specific viscosity)
ηrel= t/ t0 (relative viscosity)
C ;EVOH濃度(g/L)
t0:ブランク(含水フェノール)が粘度計を通過する時間
t:サンプルを溶解させた含水フェノール溶液が粘度計を通過する時間
(3)EVOH(A)及びEVOH(F)中の酢酸の含有量の定量
試料とするEVOH(A)の乾燥ペレット20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液をフェノールフタレインを指示薬として、1/50規定のNaOHで中和滴定し、酢酸の含有量を定量した。
(4)EVOH(A)、変性EVOH(C)及びEVOH(F)中のNaイオン、Kイオン、Mgイオン及びCaイオンの定量
試料とするEVOH(A)又は変性EVOH(C)の乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、Na、K、Mg、Caイオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。なお、定量に際してはそれぞれ塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液及び塩化カルシウム水溶液で作製した検量線を用いた。
(5)EVOH(A)、変性EVOH(C)及びEVOH(F)中のリン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンの定量
試料とするEVOH(A)又は変性EVOH(C)の乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸二水素ナトリウム水溶液及びトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム水溶液で作製した検量線を用いた。
(6)変性EVOH(C)中の亜鉛イオン及びイットリウムイオンの定量
試料とする変性EVOH(C)乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をICP発光分析により分析した。装置はパーキンエルマー社のOptima4300DVを用いた。測定波長は亜鉛イオンの測定においては206.20nmを、イットリウムイオンの測定においては360.07nmをそれぞれ用いた。なお、定量に際しては市販の亜鉛標準液及びイットリウム標準液をそれぞれ使用して作製した検量線を用いた。
(7)EVOH(A)、変性EVOH(C)及びEVOH(F)の融点
EVOH(A)及び変性EVOH(C)の融点は、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DSC)RDC220/SSC5200H型を用い、JIS K7121に基づいて測定した。但し、温度の校正にはインジウムと鉛を用いた。
(8)EVOH(A)、変性EVOH(C)、EVOH(F)、及び樹脂組成物のメルトフローレート(MFR):
メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)を用いて測定した。具体的には、測定する樹脂{EVOH(A)、変性EVOH(C)、EVOH(F)、あるいは樹脂組成物}のチップを、内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、190℃で溶融した後(実施例10は210℃で溶融)、溶融した樹脂に対して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーによって均等に荷重をかけ、シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより押出された樹脂の流出速度(g/10分)を測定し、これをメルトフローレート(MFR)とした。
合成例1
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.6%、固有粘度0.0882L/gのエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる含水ペレット(含水率:130%(ドライベース))100重量部を、酢酸0.1g/L、リン酸二水素カリウム0.044g/Lを含有する水溶液370重量部に、25℃で6時間浸漬・攪拌した。得られたペレットを105℃で20時間乾燥し、乾燥EVOHペレットを得た。前記乾燥EVOHペレットのカリウム含有量は8ppm(金属元素換算)、酢酸含有量は53ppm、リン酸化合物含有量は20ppm(リン酸根換算値)であり、アルカリ土類金属塩含有量は0ppmであった。また、前記乾燥ぺレットのMFRは8g/10分(190℃、2160g荷重下)であった。このようにして得られたEVOHを、EVOH(A)として用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、1,2−エポキシブタンを使用した。
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図1に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C3を200℃、バレルC4〜C15を240℃に設定し、スクリュー回転数400rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から上記EVOH(A)を11kg/hrの割合でフィードし、溶融した後、ベント1から水及び酸素を除去し、C9の圧入口から1,2−エポキシブタンを2.5kg/hrの割合でフィードした(フィード時の圧力:6MPa)。その後、ベント2から未反応の1,2−エポキシブタンを除去し、変性EVOH(C)を得た。得られた変性EVOH(C)のMFRは、2.5g/10分(190℃、2160g荷重下)で、融点は141℃であった。
こうして得られた、1,2−エポキシブタンで変性された変性EVOH(C)の化学構造については、以下の手順に従って変性EVOH(C)をトリフルオロアセチル化した後にNMR測定を行うことによって求めた。このとき、下記のモデル化合物を合成し、それらモデル化合物のNMR測定チャートと対比することによって、変性EVOH(C)中のNMR測定チャート中のピークを帰属した。
(1)変性EVOH(C)のトリフルオロアセチル化及びNMR測定
上記作製した変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)を粒子径0.2mm以下に粉砕後、この粉末1gを100mlナスフラスコに入れ、塩化メチレン20g及び無水トリフルオロ酢酸10gを添加し、室温で攪拌した。攪拌開始から1時間後、ポリマーは完全に溶解した。ポリマーが完全に溶解してからさらに1時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られたトリフルオロアセチル化された変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)を2g/Lの濃度で重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))に溶解し、テトラメチルシランを内部標準として500MHz1H-NMRを測定した。得られたNMR測定チャートを図3に示す。
(2)1−イソプロポキシ−2−ブタノール及び1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−ブタノールの合成
攪拌機及び冷却器を備えた1Lセパラブルフラスコにイソプロパノール180g及びエポキシブタン216g仕込み、窒素置換後、ナトリウム1.6gを添加し、16時間還流を行った。これにリン酸5gを添加後、減圧蒸留により、1−イソプロポキシ−2−ブタノール(沸点:100℃/120mmHg)及び1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−ブタノール(沸点:105℃/50mmHg)を分留して得た。こうして得られた1−イソプロポキシ−2−ブタノールは、EVOHの水酸基に1,2−エポキシブタンが1分子反応した時のモデル化合物であり、1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−ブタノールは、EVOHの水酸基に1,2−エポキシブタンが2分子以上反応した時のモデル化合物である。
(3)1−イソプロポキシ−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンの合成及びNMR測定
上記作製した1−イソプロポキシ−2−ブタノール530mg及び塩化メチレン5gを20mlナスフラスコに仕込んだ後、無水トリフルオロ酢酸1.7gを添加した。室温で1時間攪拌後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られた1−イソプロポキシ−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンについて重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))を溶媒とし、500MHz1H-NMRを測定した。得られたNMR測定チャートを図4に示す。
(4)1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンの合成及びNMR測定
上記作製した1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−ブタノール820mg及び塩化メチレン5gを20mlナスフラスコに仕込んだ後、無水トリフルオロ酢酸1.7gを添加した。室温で1時間攪拌後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られた、1−イソプロポキシ−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンについて重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))を溶媒とし、500MHz1H-NMRを測定した。得られたNMR測定チャートを図5に示す。
(5)NMR測定チャートの解析
図4から明らかなように、1−イソプロポキシ−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンの1H-NMRでは、δ0.8〜1.1ppmにメチルプロトンに由来するシグナルが1つ存在していた。そして、図5から明らかなように、1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンの1H-NMRでは、δ0.8〜1.1ppmにメチルプロトンに由来するシグナルが2つ存在していた。一方、図3に示すように、本合成例1で作製された変性EVOH(C)は、δ0.8〜1.1ppmにメチルプロトンに由来するシグナルが1つ存在しており、本合成例1で得られた変性EVOH(C)は、下記構造単位(XII)を有していることが明らかであった。
1,2−エポキシブタンで変性された変性EVOH(C)中の化学構造について、以下の各構造単位の含有量を求めた。
w:エチレン含有量(モル%)
x:未変性のビニルアルコール単位の含有量(モル%)
y:上記式(XII)で表される構造単位(モル%)
z:下記式(XIII)で表される構造単位(モル%)
上記w〜zの間で、下記式(1)〜(4)で示される関係が成り立つ。
4w+2x+4y+4z=A (1)
3y+2z=B (2)
2z=C (3)
x+y=D (4)
ただし、上記式(1)〜(4)中、A〜Dは、それぞれ変性EVOH(C)の1H-NMR測定における下記範囲のシグナルの積分値である。
A:δ1.1〜2.4ppmのシグナルの積分値
B:δ3.1〜3.8ppmのシグナルの積分値
C:δ4.1〜4.5ppmのシグナルの積分値
D:δ4.8〜5.5ppmのシグナルの積分値
上記式(1)〜(4)から、変性EVOH(C)のエチレン含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)のエチレン含有量(モル%)
={w/(w+x+y+z)}×100
={(3A−2B−4C−6D)/(3A−2B+2C+6D)}×100
同様に、変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量(モル%)
={(y+z)/(w+x+y+z)}×100
={(4B+2C)/(3A−2B+2C+6D)}×100
合成例1で作製した変性EVOH(C)のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は4.8モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表1にまとめて示す。
合成例2
エチレン含量44モル%、ケン化度99.8%、固有粘度0.096L/g、MFR=5g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、ナトリウム含有量1ppm(金属元素換算)、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のペレット5kgをポリエチレン製袋に入れた。そして、酢酸亜鉛二水和物27.44g(0.125mol)及びトリフルオロメタンスルホン酸15g(0.1mol)を水500gに溶解させて水溶液を調製し、前記水溶液を袋の中のEVOHに添加した。以上のようにして触媒溶液が添加されたEVOHを、時々、振り混ぜながら袋の口を閉じた状態で90℃で5時間加熱し、EVOHに触媒溶液を含浸させた。得られたEVOHを、90℃で真空乾燥することにより、亜鉛イオンを含む触媒(D)を含有するEVOHを得た。
EVOH(A)として、エチレン含量44モル%、ケン化度99.8%、MFR=5g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、ナトリウム含有量1ppm(金属元素換算)、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のEVOH90重量部に、前記亜鉛イオンを含む触媒(D)を含有するEVOH10重量部をドライブレンドしたものを用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)として1,2−エポキシブタンを用いた。
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図2に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C3を200℃、C4〜C15を220℃に設定し、スクリュー回転数200rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から、ドライブレンドされた混合物からなり触媒(D)を含有する上記EVOH(A)を11kg/hrの割合でフィードし、ベント1を内圧60mmHgに減圧し、C8の圧入口1からエポキシブタンを2.5kg/hrの割合でフィードした(フィード時の圧力:3.5MPa)。ベント2を内圧200mmHgに減圧し、未反応のエポキシブタンを除去し、C13の圧入口2から0.14kg/hrの割合でエチレンジアミン四酢酸三ナトリウム三水和物8.2重量%水溶液を添加した。
上記溶融混練操作における、一価エポキシ化合物(B)の混合割合は、EVOH(A)100重量部に対して22.7重量部であった。EVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で2.5μmol/gの触媒(D)が添加された。触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)は1であった。
ベント3を内圧20mmHgに減圧し、水分を除去して、変性EVOH(C)を得た。前記変性EVOH(C)のMFRは5g/10分(190℃、2160g荷重下)であり、融点は109℃であった。また、亜鉛イオン含有量は150ppm(2.3μmol/g)であり、アルカリ金属塩含有量は金属元素換算で168ppm(7.1μmol/g)[ナトリウム:160ppm(6.9μmol/g)、カリウム:8ppm(0.2μmol/g)]であり、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量は270ppm(1.8μmol/g)であった。アルカリ金属イオンの含有量は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量の3.9倍(モル比)であった。
こうして得られた変性EVOH(C)のエチレン含有量は44モル%であり、構造単位(I)の含有量は7モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表1にまとめて示す。
合成例3
亜鉛アセチルアセトナート一水和物28重量部を、1,2−ジメトキシエタン957重量部と混合し、混合溶液を得た。得られた前記混合液に、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸15重量部を添加し、触媒(D)を含む溶液を得た。すなわち、亜鉛アセチルアセトナート一水和物1モルに対して、トリフルオロメタンスルホン酸1モルを混合した溶液を調製した。
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.6%、固有粘度0.0882L/gのエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる含水ペレット(含水率:130%(ドライベース))100重量部を、酢酸0.1g/L、リン酸二水素カリウム0.044g/Lを含有する水溶液370重量部に、25℃で6時間浸漬・攪拌した。得られたペレットを105℃で20時間乾燥し、乾燥EVOHペレットを得た。前記乾燥EVOHペレットのカリウム含有量は8ppm(金属元素換算)、酢酸含有量は53ppm、リン酸化合物含有量は20ppm(リン酸根換算値)であり、アルカリ土類金属塩(Mg塩又はCa塩)含有量は0ppmであった。また、前記乾燥ぺレットのMFRは8g/10分(190℃、2160g荷重下)であった。このようにして得られたEVOHを、EVOH(A)として用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としてエポキシプロパンを用いた。
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図2に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C15を200℃に設定し、スクリュー回転数250rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から上記EVOH(A)を11kg/hrの割合で添加し、ベント1を内圧60mmHgに減圧し、C8の圧入口1からエポキシプロパンが1.5kg/hrの割合で、また上記の方法で作製した触媒(D)溶液が0.22kg/hrの割合で添加されるように、両者を混合してからフィードした(フィード時の圧力:3MPa)。次いで、ベント2から、常圧で未反応のエポキシプロパンを除去した後、触媒失活剤(E)として、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム三水和物8.2重量%水溶液を、C13の圧入口2から0.11kg/hrの割合で添加した。
上記溶融混練操作における、一価エポキシ化合物(B)の混合割合は、EVOH(A)100重量部に対して13.6重量部であった。EVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で2μmol/gの触媒(D)が添加された。触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)は1であった。
ベント3を内圧20mmHgに減圧し、水分を除去して、変性EVOH(C)を得た。得られた変性EVOH(C)のMFRは7g/10分(190℃、2160g荷重下)であり、融点は132℃であった。また、亜鉛イオン含有量は120ppm(1.9μmol/g)であり、アルカリ金属塩含有量は金属元素換算で138ppm(5.9μmol/g)[ナトリウム:130ppm(5.7μmol/g)、カリウム:8ppm(0.2μmol/g)]であり、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量は280ppm(1.9μmol/g)であった。アルカリ金属イオンの含有量は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量の3.1倍(モル比)であった。
こうして得られた、エポキシプロパンで変性された変性EVOH(C)の化学構造については、以下の手順に従って変性EVOH(C)をトリフルオロアセチル化した後にNMR測定を行うことによって求めた。
上記作製した変性EVOH(C)を粒子径0.2mm以下に粉砕した後、この粉末1gを100mlナスフラスコに入れ、塩化メチレン20g及び無水トリフルオロ酢酸10gを添加し、室温で攪拌した。攪拌開始から1時間後、前記変性EVOH(C)は完全に溶解した。前記変性EVOH(C)が完全に溶解してからさらに1時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られたトリフルオロアセチル化された変性EVOH(C)を2g/Lの濃度で重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))に溶解し、テトラメチルシランを内部標準として500MHz1H-NMRを測定した。NMR測定チャートを図8に示す。
エポキシプロパン変性された変性EVOH(C)中の化学構造について、以下の各構造単位の含有量を求めた。
w:エチレン含有量(モル%)
x:未変性のビニルアルコール単位の含有量(モル%)
y:下記式(XVI)で表される構造単位(モル%)
z:下記式(XVII)で表される構造単位(モル%)
上記w〜zの間で、下記式(9)〜(12)で示される関係が成り立つ。
4w+2x+5y+5z=A (9)
3y+2z=B (10)
2z=C (11)
x+y=D (12)
ただし、上記式(9)〜(12)中、A〜Dは、それぞれ変性EVOH(C)の1H-NMR測定における下記範囲のシグナルの積分値である。
A:δ1.1〜2.5ppmのシグナルの積分値
B:δ3.1〜4ppmのシグナルの積分値
C:δ4.1〜4.6ppmのシグナルの積分値
D:δ4.8〜5.6ppmのシグナルの積分値
上記式(9)〜(12)から、変性EVOH(C)のエチレン含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)のエチレン含有量(モル%)
={w/(w+x+y+z)}×100
={(2A−2B−3C−4D)/(2A−2B+C+4D)}×100
同様に、変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量(モル%)
={(y+z)/(w+x+y+z)}×100
={(8B+4C)/(6A−6B+3C+12D)}×100
本合成例3で作製した変性EVOH(C)のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は5.5モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表1にまとめて示す。
合成例4
エチレン含量44モル%、ケン化度99.8%、固有粘度0.096L/g、MFR=5g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、ナトリウム含有量1ppm(金属元素換算)、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のペレットを、EVOH(A)として用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としてエポキシプロパンを用いた。
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図2に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C15を220℃に設定し、スクリュー回転数250rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から上記EVOH(A)を11kg/hrの割合で添加し、ベント1を内圧60mmHgに減圧し、C8の圧入口1からエポキシプロパンが2.0kg/hrの割合で、また合成例3と同様の方法で作製した触媒(D)溶液が0.22kg/hrの割合で添加されるように、両者を混合してからフィードした(フィード時の圧力:3MPa)。次いで、ベント2から、常圧で未反応のエポキシプロパンを除去した後、触媒失活剤(E)として、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム三水和物8.2重量%水溶液を、C13の圧入口2から0.11kg/hrの割合で添加した。
上記溶融混練操作における、一価エポキシ化合物(B)の混合割合は、EVOH(A)100重量部に対して18.3重量部であった。EVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で2μmol/gの触媒(D)が添加された。触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)は1であった。
ベント3を内圧20mmHgに減圧し、水分を除去して、変性EVOH(C)を得た。得られた変性EVOH(C)のMFRは5g/10分(190℃、2160g荷重下)であり、融点は105℃であった。また、亜鉛イオン含有量は120ppm(1.9μmol/g)であり、アルカリ金属塩含有量は金属元素換算で138ppm(5.9μmol/g)[ナトリウム:130ppm(5.7μmol/g)、カリウム:8ppm(0.2μmol/g)]であり、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量は280ppm(1.9μmol/g)であった。アルカリ金属イオンの含有量は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量の3.1倍(モル比)であった。こうして得られた変性EVOH(C)のエチレン含有量は44モル%であり、構造単位(I)の含有量は8モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表1にまとめて示す。
合成例5
実施例1において、C1の樹脂フィード口からのEVOH(A)のフィード量を15kg/hrとし、C9の圧入口から1,2−エポキシブタンの代わりに分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としてグリシドールを2.5kg/hrの割合でフィードした以外は実施例1と同様な条件で押出を行い、MFR=1.8g/10分(190℃、2160g荷重下)、融点135℃の変性EVOH(C)を得た。
こうして得られた、グリシドールで変性された変性EVOH(C)の化学構造については、以下の手順に従って変性EVOH(C)をトリフルオロアセチル化した後にNMR測定を行うことによって求めた。このとき、下記のモデル化合物を合成し、それらモデル化合物のNMR測定チャートと対比することによって、変性EVOH(C)中のNMR測定チャート中のピークを帰属した。
(1)変性EVOH(C)のトリフルオロアセチル化及びNMR測定
上記作製した変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)を粒子径0.2mm以下に粉砕後、この粉末1gを100mlナスフラスコに入れ、塩化メチレン20g及び無水トリフルオロ酢酸10gを添加し、室温で攪拌した。攪拌開始から1時間後、ポリマーは完全に溶解した。ポリマーが完全に溶解してからさらに1時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られたトリフルオロアセチル化された変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)を2g/Lの濃度で重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))に溶解し、テトラメチルシランを内部標準として500MHz1H-NMRを測定した。得られたNMR測定チャートを図6に示す。
(2)3−イソプロポキシ−1,2−プロパンジオールの合成
攪拌機及び冷却器付き3Lセパラブルにイソプロパノール1200gを仕込み、ナトリウム4.6gを添加し、80℃に加熱して溶解させた。ナトリウムを完全に溶解させた後、80℃でグリシドール300gを1時間かけて滴下した。滴下が終了してから、3時間攪拌を行った後、攪拌を止め室温に冷却した。この際、上層と下層に分離した。上層を分離し、エバポレーターにより濃縮した。さらに、減圧蒸留により3−イソプロポキシ−1,2−プロパンジオールを得た(沸点60℃/2mmHg)。こうして得られた3−イソプロポキシ−1,2−プロパンジオールは、EVOHの水酸基にグリシドールが1分子反応した時のモデル化合物である。
(3)1−イソプロポキシ−2,3−ジトリフルオロアセトキシ−プロパンの合成及びNMR測定
上記作製した3−イソプロポキシ−1,2−プロパンジオール270mg及び塩化メチレン5gを20mlナスフラスコに仕込んだ後、無水トリフルオロ酢酸1.7gを添加した。室温で1時間攪拌後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られた、1−イソプロポキシ−2,3−ジトリフルオロアセトキシ−プロパンについて重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))を溶媒とし、500MHz1H-NMRを測定した。得られたNMR測定チャートを図7に示す。
(4)NMR測定チャートの解析
図6及び図7を対比すれば明らかなように、モデル化合物である1−イソプロポキシ−2,3−ジトリフルオロアセトキシ−プロパンと、本合成例5で作製した変性EVOH(C)の1H-NMRは、いずれもδ3.5〜3.9ppm、4.5〜4.8ppm及び5.3〜5.5ppmに共通する特徴的なシグナルを有していた。また、δ3.5〜3.9ppmのシグナルの積分値と、δ4.5〜4.8ppmのシグナルの積分値との比は、モデル化合物である1−イソプロポキシ−2,3−ジトリフルオロアセトキシ−プロパンと、本合成例5で作製した変性EVOH(C)とを比較した場合、いずれも約3:2であり、極めて良い一致を示した。以上のことから、本合成例5で得られた変性EVOH(C)は、下記構造単位(XIV)を有していることが明らかであった。
グリシドールで変性された変性EVOH(C)中の化学構造について、以下の各構造単位の含有量を求めた。
w:エチレン含有量(モル%)
x:未変性のビニルアルコール単位の含有量(モル%)
y:上記式(XIV)で表される構造単位(モル%)
z:下記式(XV)で表される構造単位(モル%)
上記w〜zの間で、下記式(5)〜(8)で示される関係が成り立つ。
4w+2x+2y+2z=A (5)
4z=B (6)
2y=C (7)
x+y=D (8)
ただし、上記式(5)〜(8)中、A〜Dは、それぞれ変性EVOH(C)の1H-NMR測定における下記範囲のシグナルの積分値である。
A:δ1.1〜2.4ppmのシグナルの積分値
B:δ4.2〜4.5ppmのシグナルの積分値
C:δ4.5〜4.8ppmのシグナルの積分値
D:δ4.8〜5.6ppmのシグナルの積分値
上記式(5)〜(8)から、変性EVOH(C)のエチレン含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)のエチレン含有量(モル%)
={w/(w+x+y+z)}×100
={(2A−B−4D)/(2A+B+4D)}×100
同様に、変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量(モル%)
={(y+z)/(w+x+y+z)}×100
={(2B+4C)/(2A+B+4D)}×100
本合成例5で作製した変性EVOH(C)のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は5モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表1にまとめて示す。
合成例6
エチレン含有量44モル%、ケン化度99.6%、固有粘度0.0855L/gのエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる含水ペレット(含水率:130%(ドライベース))100重量部を、酢酸0.12g/L、リン酸二水素カリウム0.044g/Lを含有する水溶液370重量部に、25℃で6時間浸漬・攪拌した。得られたペレットを105℃で20時間乾燥し、乾燥EVOHペレットを得た。前記乾燥EVOHペレットのカリウム含有量は8ppm(金属元素換算)、酢酸含有量は62ppm、リン酸化合物含有量は20ppm(リン酸根換算値)であり、アルカリ土類金属塩含有量は0ppmであった。また、前記乾燥ぺレットのMFRは12g/10分(190℃、2160g荷重下)であった。このようにして得られたEVOHを、EVOH(A)として用いた。また、エポキシ化合物(B)としてグリシドールを用いた。
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図1に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C3を200℃、バレルC4〜C15を240℃に設定し、スクリュー回転数400rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から上記EVOH(A)を15kg/hrの割合でフィードし、溶融した後、ベント1から水及び酸素を除去し、C9の圧入口からグリシドールを2.5kg/hrの割合でフィードした(フィード時の圧力:7MPa)。その後、ベント2から未反応のグリシドールを除去し、MFR=1.6g/10分(190℃、2160g荷重下)、構造単位(I)の含有量が6モル%、融点127℃の変性EVOH(C)からなる変性EVOH(C)を得た。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表1にまとめて示す。
合成例7
合成例1において、C1の樹脂フィード口からのEVOH(A)のフィード量を15kg/hrとし、C9の圧入口からエポキシブタンの代わりにビスフェノールAジグリシジルエーテル(東京化成製)を120g/hrの割合でフィードした以外は合成例1と同様な条件で押出を行い、MFR=2.5g/10分(190℃、2160g荷重下)の、ビスフェノールAジグリシジルエーテルによって変性されたEVOHからなる変性EVOHを得た。得られた変性EVOHの製造方法及び性質について、表1にまとめて示す。
実施例1
(1)樹脂組成物の製造
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.9%、メルトフローレート(190℃−2160g荷重)1.6g/10分、融点183℃のEVOH(F)80重量部、及び合成例1で得られた変性EVOH(C)20重量部をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度200℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行い樹脂組成物を得た。EVOH(F)のリン酸化合物含有量(リン酸根換算値)、酢酸含有量及びNaイオン含有量(金属元素換算)を測定したところ、それぞれ50ppm,300ppm,200ppmであった。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は1.9g/10分であった。
(2)単層フィルムの作製
こうして得られた樹脂組成物を用いて、40φ押出機(プラスチック工学研究所製PLABOR GT−40−A)とTダイからなる製膜機を用いて、下記押出条件で製膜し、厚み25μmの単層フィルムを得た。
形式: 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D: 24
口径: 40mmφ
スクリュー: 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼
スクリュー回転数:40rpm
ダイス: 550mm幅コートハンガーダイ
リップ間隙: 0.3mm
シリンダー、ダイ温度設定:
C1/C2/C3/アダプター/ダイ
=180/200/210/210/210(℃)
上記作製した単層フィルムを用いて、以下に示す方法に従って、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度、ヤング率、引張降伏点強度、引張破断伸度及びヘイズを測定し、耐屈曲性試験を行った。
(2−1)酸素透過速度の測定
上記作製した単層フィルムを、20℃−65%RHで5日間調湿した。前記の調湿済みの単層フィルムのサンプルを2枚使用して、モダンコントロール社製 MOCON OX−TRAN2/20型を用い、20℃−65%RH条件下でJIS K7126(等圧法)に記載の方法に準じて、酸素透過速度を測定し、その平均値を求めた。酸素透過速度は0.5cc・20μm/m2・day・atmであり、良好なガスバリア性を示した。
(2−2)炭酸ガス透過速度の測定
上記作製した単層フィルムを、20℃−65%RHで5日間調湿した。上記の調湿済みの2枚のサンプルを使用して、モダンコントロール社製 MOCON PERMA−TRAN C−IV型を用い、20℃−65%RH条件下でJIS K7126(等圧法)に記載の方法に準じて、炭酸ガス透過速度を測定し、その平均値を求めた。炭酸ガス透過速度は2.2cc・20μm/m2・day・atmであり、良好なガスバリア性を示した。
(2−3)ヤング率の測定
上記作製した単層フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下で7日間調湿したのち、15mm巾の短冊状の切片を作製した。該フィルムサンプルを用い、島津製作所製オートグラフAGS−H型にて、チャック間隔50mm、引張速度5mm/minの条件でヤング率の測定を行った。測定は各10サンプルについて行い、その平均値を求めた。ヤング率は176kgf/mm2であった。
(2−4)引張降伏点強度及び引張破断伸度の測定
上記作製した単層フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下で7日間調湿したのち、15mm巾の短冊状の切片を作製した。該フィルムサンプルを用い、島津製作所製オートグラフAGS−H型にて、チャック間隔50mm、引張速度500mm/minの条件で引張降伏点強度及び引張破断伸度の測定を行った。測定は各10サンプルについて行い、その平均値を求めた。引張降伏点強度及び引張破断伸度はそれぞれ、6.4kgf/mm2及び306%であった。
(2−5)ヘイズの測定
上記作製した単層フィルムを用いて、日本精密光学(株)製積分式H.T.Rメーターを使用し、JIS D8741に準じてヘイズの測定を行った。ヘイズは0.1%であり、極めて良好な透明性を示した。
(2−6)耐屈曲性の評価
21cm×30cmにカットされた、上記作製した単層フィルムを50枚作製し、それぞれのフィルムを20℃−65%RHで5日間調湿した後、ASTM F 392−74に準じて、理学工業(株)製ゲルボフレックステスターを使用し、屈曲回数50回、75回、100回、125回、150回、175回、200回、225回、250回、300回屈曲させた後、ピンホールの数を測定した。それぞれの屈曲回数において、測定を5回行い、その平均値をピンホール個数とした。屈曲回数(P)を横軸に、ピンホール数(N)を縦軸に取り、上記測定結果をプロットし、ピンホール数が1個の時の屈曲回数(Np1)を外挿により求め、有効数字2桁とした。その結果Np1は90回であり、極めて優れた耐屈曲性を示した。
(3)単層シートの作製
得られた樹脂組成物を用いて、40φ押出機(プラスチック工学研究所製PLABOR GT−40−A)とTダイからなる製膜機を用いて、下記押出条件で製膜し、厚み150μmの単層シートを得た。
形式: 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D: 24
口径: 40mmφ
スクリュー: 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼
スクリュー回転数:100rpm
ダイス: 550mm幅コートハンガーダイ
リップ間隙: 0.3mm
シリンダー、ダイ温度設定:
C1/C2/C3/アダプター/ダイ
=180/200/210/210/210(℃)
(3−1)単層シートの延伸性の評価
上記作製した単層シートを東洋精機製パンタグラフ式二軸延伸装置にかけ、100℃で2.0×2.0倍〜5.0×5.0倍の延伸倍率の範囲において0.25×0.25倍毎に同時二軸延伸を行った。延伸されたシートに破れが生じず良好な延伸が可能であった最高延伸倍率は4.0×4.0倍であった。
(4)多層シートの作製
次に、得られた樹脂組成物を用いて、下記3種5層共押出装置を用いて、下記共押出成形条件で多層シート(ポリスチレン樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリスチレン樹脂層)を作製した。シートの構成は、両最外層のポリスチレン樹脂(出光化学製「出光スチロールET−61」)層が各425μm、また接着性樹脂(三井化学製「アドマーSF600」)層が各50μm、さらに樹脂組成物層が50μmである。
層構成:
ポリスチレン樹脂/接着性樹脂/樹脂組成物/接着性樹脂
/ポリスチレン樹脂
(厚み425/50/50/50/425:単位はμm)
各樹脂の押出機仕様及び押出温度:
ポリスチレン樹脂;
65φ押出機 20VSE−65−22型(大阪精機工作株式会社製)
C1/C2/C3/C4/AD
=150/180/210/210/220℃
接着性樹脂;
40φ押出機 10VSE−40−22型(大阪精機工作株式会社製)
C1/C2/C3/C4/AD
=130/180/210/210/220℃
樹脂組成物;
40φ押出機 VSVE−40−24型(大阪精機工作株式会社製)
C1/C2/C3/C4/AD
=175/210/210/210/210℃
Tダイ仕様:
600mm幅3種5層用 (株式会社プラスチック工学研究所製)
AD/Die=220/220℃
冷却ロールの温度:80℃
引き取り速度:1.2m/分
(4−1)多層シートの延伸性の評価
上記作製した多層シートを東洋精機製パンタグラフ式二軸延伸装置にかけ、120℃で4×4倍の延伸倍率において同時二軸延伸を行った。延伸後のフィルム外観を以下の評価基準により評価した。
判定:基準
A:ムラ及び局部的偏肉なし。
B:微少なムラはあるが局部的偏肉なし。
C:微少なムラ及び微少な局部的偏肉があるが、実用には耐えうる。
D:大きなムラ及び大きな局部的偏肉あり。
E:フィルムに破れが生じた。
本実施例の延伸後のフィルムにはムラ及び局部的偏肉はなく、判定はAであった。
以上、樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルム及びシートの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例2
実施例1で用いたのと同じEVOH(F)80重量部、及び合成例2で得られた変性EVOH(C)20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は2.2g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例3
実施例1で用いたのと同じEVOH(F)80重量部、及び合成例3で得られた変性EVOH(C)20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は2.3g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例4
実施例1で用いたのと同じEVOH(F)50重量部、及び合成例3で得られた変性EVOH(C)50重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は3.5g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例5
エチレン含有量44モル%、ケン化度99.9%、メルトフローレート(190℃−2160g荷重)5.5g/10分、融点165℃のEVOH(F)80重量部、及び合成例3で得られた変性EVOH(C)20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。EVOH(F)のリン酸化合物含有量(リン酸根換算値)、酢酸含有量及びNaイオン含有量(金属元素換算)を測定したところ、それぞれ50ppm,200ppm,120ppmであった。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は6.0g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例6
実施例1で用いたのと同じEVOH(F)90重量部、及び合成例4で得られた変性EVOH(C)10重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は2.0g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例7
実施例1で用いたのと同じEVOH(F)80重量部、及び合成例4で得られた変性EVOH(C)20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は2.2g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例8
実施例1で用いたのと同じEVOH(F)50重量部、及び合成例4で得られた変性EVOH(C)50重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は3.0g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例9
実施例5で用いたのと同じEVOH(F)80重量部、及び合成例4で得られた変性EVOH(C)20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は5.6g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例10
エチレン含有量27モル%、ケン化度99.9%、メルトフローレート(210℃−2160g荷重)3.9g/10分、融点191℃のEVOH(F)80重量部、及び合成例4で得られた変性EVOH(C)20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。EVOH(F)のリン酸化合物含有量(リン酸根換算値)、酢酸含有量及びNaイオン含有量(金属元素換算)を測定したところ、それぞれ50ppm,300ppm,200ppmであった。該樹脂組成物のメルトフローレート(210℃−2160g荷重)は5.1g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例11
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.9%、メルトフローレート(190℃−2160g荷重)1.6g/10分、融点183℃のEVOH(F)80重量部、及び合成例4で得られた変性EVOH(C)20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。EVOH(F)のリン酸化合物含有量(リン酸根換算値)、酢酸含有量及びNaイオン含有量(金属元素換算)を測定したところ、それぞれ50ppm,300ppm,200ppmであった。また、ホウ素含有量は180ppmであった。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は2.2g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例12
実施例1で用いたのと同じEVOH(F)80重量部、及び合成例5で得られた変性EVOH(C)20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は1.8g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
実施例13
実施例5で用いたのと同じEVOH(F)80重量部、及び合成例6で得られた変性EVOH(C)20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は4.5g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
比較例1
実施例1で用いたEVOH(F)のみを、樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、延伸性を評価した。EVOH(F)の物性等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
また、耐屈曲性については以下のようにして評価した。実施例1で用いたEVOH(F)ペレットを使い、40φ押出機とTダイからなる製膜機を用いて、押出温度180〜210℃、Tダイ温度210℃で製膜し、厚み25μmのフィルムを得た。続いて、21cm×30cmにカットされた、上記作製したEVOHからなる単層フィルムを40枚作製し、それぞれのフィルムを20℃−65%RHで5日間調湿した後、ASTM F 392−74に準じて、理学工業(株)製ゲルボフレックステスターを使用し、屈曲回数25回、30回、35回、40回、50回、60回、80回及び100回屈曲させた後、ピンホールの数を測定した。それぞれの屈曲回数において、測定を5回行い、その平均値をピンホール個数とした。屈曲回数(P)を横軸に、ピンホール数(N)を縦軸に取り、上記測定結果をプロットし、ピンホール数が1個の時の屈曲回数(Np1)を外挿により求めた。本比較例のフィルムのNp1は34回であった。
比較例2
実施例5で用いたEVOH(F)を樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、延伸性を評価した。また、比較例1と同様にして耐屈曲性を評価した。EVOH(F)の物性等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
比較例3
実施例1で用いたのと同じEVOH(F)80重量部、及び合成例7で得られた変性EVOH20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は1.9g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、延伸性を評価した。また、比較例1と同様にして耐屈曲性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
比較例4
合成例1で得られた変性EVOH(C)のみを樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、延伸性及び耐屈曲性を評価した。変性EVOH(C)の物性等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
比較例5
合成例2で得られた変性EVOH(C)のみを樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、延伸性及び耐屈曲性を評価した。変性EVOH(C)の物性等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
比較例6
合成例3で得られた変性EVOH(C)のみを樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、延伸性及び耐屈曲性を評価した。変性EVOH(C)の物性等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
比較例7
合成例5で得られた変性EVOH(C)のみを樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、延伸性及び耐屈曲性を評価した。変性EVOH(C)の物性等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
比較例8
合成例6で得られた変性EVOH(C)のみを樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、延伸性及び耐屈曲性を評価した。変性EVOH(C)の物性等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
比較例9
実施例1で用いたEVOH(F)80重量部、及びエチレン含有量32モル%、ケン化度97.0%、MFR=1.2g/10分(190℃、2160g荷重下)、融点171℃の低ケン化度EVOH20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。用いた低ケン化度EVOHのリン酸化合物含有量(リン酸根換算値)、酢酸含有量及びNaイオン含有量(金属元素換算)を測定したところ、それぞれ50ppm,300ppm,200ppmであった。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は1.7g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、延伸性を評価した。また、比較例1と同様にして耐屈曲性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
比較例10
実施例1で用いたEVOH(F)50重量部、及び比較例9で用いた低ケン化度EVOH50重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は1.6g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、延伸性を評価した。また、比較例1と同様にして耐屈曲性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
比較例11
実施例1で用いたEVOH(F)80重量部、及びエチレン含有量44モル%、ケン化度96.5%、MFR=5.0g/10分(190℃、2160g荷重下)、融点157℃の低ケン化度EVOH20重量部をドライブレンドし、実施例1と同様に、二軸押出を用い、ペレット化した後、熱風乾燥し樹脂組成物を得た。用いた低ケン化度EVOHのリン酸化合物含有量(リン酸根換算値)、酢酸含有量及びNaイオン含有量(金属元素換算)を測定したところ、それぞれ50ppm,200ppm,120ppmであった。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は2.2g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、延伸性を評価した。また、比較例1と同様にして耐屈曲性を評価した。樹脂組成物の組成等に関しては表2に、フィルムの評価結果等については表3にそれぞれまとめて示した。
以上示したように、未変性のEVOH(F)及び構造単位(I)を含有する変性EVOH(C)からなる樹脂組成物(実施例1〜13)は、未変性のEVOH(F)のみを使用した場合(比較例1、2)に比べて、酸素透過速度はある程度増加するものの、柔軟性、耐屈曲性及び延伸性が大きく改善されている。一方、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)の代わりに、多官能エポキシ化合物であるビスフェノールAジグリシジルエーテルを用いた比較例3では、上述の柔軟性、耐屈曲性及び延伸性の改善効果が得られなかった。
また、EVOH(F)及び構造単位(I)を含有する変性EVOH(C)からなる樹脂組成物(実施例1〜13)は、変性EVOH(C)のみを使用した場合(比較例4〜8)に比べて、変性EVOH(C)が保有する優れた柔軟性、耐屈曲性及び延伸性を保ったままで、酸素バリア性が大きく改善されている。一方、EVOH(F)及び低ケン化度のEVOHを配合した樹脂組成物(比較例9〜11)を用いた場合は、上述の柔軟性、耐屈曲性及び延伸性の改善効果が得られなかった。
実施例14
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)として日本ポリケム製「UE320」(190℃−2160gにおけるMFR=0.7g/10分)、接着性樹脂として三井化学製「アドマーNF500」(230℃−2160gにおけるMFR=1.8g/10分)を、バリア材として実施例1で作製した樹脂組成物を用いた。鈴木製工所製ブロー成形機TB−ST−6Pにて各樹脂の押出温度及びダイス温度を210℃に設定し、LLDPE/接着性樹脂/バリア材/接着性樹脂/LLDPEの層構成を有する3種5層パリソンを押し出し、15℃の金型内でブローし、20秒冷却して、多層ブロー成形物からなる500mLボトルを得た。前記ボトルの全層厚みは500μmであり、その層構成は、(内側)LLDPE/接着性樹脂/バリア材/接着性樹脂/LLDPE(外側)=210/20/30/20/220μmであった。ボトルは特に問題なく成形できた。また、ボトルの外観は良好であった。
実施例15
バリア材として実施例11で作製した樹脂組成物を用い、4種4層共押出装置を用いて、下記条件で多層フィルム(ナイロン6樹脂/バリア材/接着性樹脂/LLDPE樹脂)を作製した。フィルムの構成は、ナイロン6樹脂(宇部興産製「宇部ナイロン1022B」)が10μm、バリア材が20μm、接着性樹脂(三井化学製「アドマーNF500」)が10μm、LLDPE樹脂(三井化学製「ウルトゼックス3520L」)が60μmである。
共押出成形条件は以下のとおりである。
層構成:ナイロン6樹脂/バリア材/接着性樹脂/LLDPE樹脂
(厚み10/20/10/60:単位はμm)
ナイロン6樹脂の押出温度:
C1/C2/C3/C4=230/240/250/250℃
接着性樹脂の押出温度:
C1/C2/C3=170/170/220/220℃
バリア材の押出温度:
C1/C2/C3/C4=175/210/230/230℃
LLDPE樹脂の押出温度:
C1/C2/C3=170/170/220/220℃
アダプターの温度:250℃
ダイの温度:250℃
各樹脂の押出機、Tダイ仕様:
ナイロン6樹脂:
40φ押出機 UT−40−H型(株式会社プラスチック工学研究所製)
接着性樹脂:
40φ押出機 10VSE−40−22型(大阪精機工作株式会社製)
バリア材:
40φ押出機 VSVE−40−24型(大阪精機工作株式会社製)
LLDPE樹脂:
65φ押出機 20VS−65−22型(大阪精機工作株式会社製)
Tダイ:
650mm幅4種4層用 (プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:30℃
引き取り速度 :8m/分
熱成形機(ムルチバック社製R530)を用いて、LLDPE樹脂が容器の内層側となるように、得られた多層フィルムを熱成形することにより熱成形容器を得た。すなわち、金型温度100℃にて2秒間加熱し、金型形状(タテ:130mm、ヨコ:110mm、深さ:60mmの直方体形状)に圧縮空気(気圧5kgf/cm2)を用いて多層フィルムを成形し、熱成形容器を得た。得られた熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。
実施例16
バリア材として実施例10で作製した樹脂組成物を用い、3種5層共押出装置を用いて、多層シート(ポリプロピレン樹脂/接着性樹脂/バリア材/接着性樹脂/ポリプロピレン樹脂)を作製した。フィルムの層構成は、内外層のポリプロピレン樹脂(出光石油化学(株)製「出光ポリプロピレンE−203G」)が420μm、接着性樹脂(三井化学製「アドマーQF551」)が各40μm、中間層のバリア材が80μmであった。
得られた多層シートを熱成形機(浅野製作所製:真空圧空深絞り成形機FX−0431−3型)にて、シート温度を160℃にして、圧縮空気(気圧5kgf/cm2)により丸カップ形状(金型形状:上部75mmφ、下部60mmφ、深さ75mm、絞り比S=1.0)に熱成形することにより、熱成形容器を得た。成形条件を以下に示す。
ヒーター温度:400℃
プラグ :45φ×65mm
プラグ温度 :150℃
金型温度 :70℃
得られたカップ形状の熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。
実施例17
バリア材として実施例7で作製した樹脂組成物を用い、3種5層共押出装置を用いて、多層シート(ポリスチレン樹脂/接着性樹脂/バリア材/接着性樹脂/ポリスチレン樹脂)を作製した。フィルムの層構成は、内外層のポリスチレン樹脂層(出光石油化学株式会社製HIPS「出光スチロールET−61」)が425μm、接着性樹脂(東ソー(株)製「メルセンM−5420」)が各50μm、中間層のバリア材が50μmであった。
得られた多層シートを熱成形機(浅野製作所製:真空圧空深絞り成形機FX−0431−3型)にて、シート温度を150℃にして、圧縮空気(気圧5kgf/cm2)により丸カップ形状(金型形状:上部75mmφ、下部60mmφ、深さ75mm、絞り比S=1.0)に熱成形することにより、熱成形容器を得た。成形条件を以下に示す。
ヒーター温度:400℃
プラグ :45φ×65mm
プラグ温度 :120℃
金型温度 :70℃
得られた熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、クラック、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。
実施例18
バリア材として実施例11で作製した樹脂組成物を、接着性樹脂として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学製「アドマーNF500」)を、架橋性ポリオレフィンとして水架橋性ポリエチレン(住友ベークライト社製「モルデークスS−141」)をそれぞれ用いた。上記の樹脂をそれぞれ、多層パイプ製造用の共押出成形機(Leonard社製「M50/28D型」)に供給して、(外層)バリア材/接着性樹脂層/架橋性ポリオレフィン(内層)からなる外径20mmの多層パイプを製造した。得られた多層パイプにおける、外層/接着性樹脂層/内層の厚みはそれぞれ、100μm/50μm/1850μmであった。得られた多層パイプの内側に水蒸気(温度150℃;圧力4kg/cm2)を3分間通して内層を水架橋した後、この多層パイプの酸素バリア性を下記方法にて測定した。酸素バリア性は、溶存酸素の増加速度で評価した。溶存酸素の増加速度が小さい方が、酸素バリア性は良好である。
得られたパイプに、金属スズを充填した充填塔を用いて溶存酸素を除去した水を循環し、温度70℃で水中の溶存酸素の増加速度を20℃、65%RHの条件下にて測定した。ここで、増加速度μg/リットル・hrとは、パイプ中の水1リットル当たりμg/hrの速度で溶存酸素の増加があることを示す。即ち、パイプを含む装置全系の水の体積をV1cc、上記パイプ内の水の体積をV2ccとし、単位時間当たりの装置内循環水の酸素濃度増加量をBμg/リットル・hrとした場合、上記の溶存酸素増加速度(Aμg/リットル・hr)とは、A=B(V1/V2)で計算される値を示す。得られた多層パイプの、溶存酸素の増加速度は、5μg/リットル・hrであり、良好な酸素バリア性を示した。
実施例19
熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしてポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(株式会社クラレ製「クラミロンU−2190」)を、バリア材として実施例11で作製した樹脂組成物を、シーラント層としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル製「エバフレックスEV−460」)70重量部及び無水マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体系接着性樹脂(三井化学製「アドマーVF500」)30重量部からなる樹脂組成物をそれぞれ用いた。
上記樹脂及び樹脂組成物をそれぞれ用いて、下記条件で共押出成形を行い、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(50μm)/バリア材(10μm)/シーラント材(30μm)の層構成を有する多層フィルムを得た。
共押出成形条件は以下のとおりである。
層構成:
熱可塑性ポリウレタンエラストマー/バリア材/シーラント層
(厚み50/10/30:単位はμm)
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの押出温度:
C1/C2/C3=195/200/200℃
バリア材の押出温度:
C1/C2/C3=175/210/210℃
シーラント材の押出温度:
C1/C2/C3=150/200/210℃
ダイの温度:210℃
各樹脂の押出機、Tダイ仕様:
熱可塑性ポリウレタンエラストマー:
20φ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(株式会社東洋精機製)
バリア材:
25φ押出機 P25−18AC(大阪精機工作株式会社製)
シーラント材:
32φ押出機 GT−32−A型(株式会社プラスチック工学研究所製)
Tダイ:
300mm幅3種3層用 (株式会社プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:50℃
引き取り速度:4m/分
上記作製した多層フィルムを、20℃−65%RHで5日間調湿した。上記の調湿済みの2枚のサンプルを使用して、モダンコントロール社製 MOCON OX−TRAN2/20型を用い、20℃−65%RH条件下でJIS K7126(等圧法)に記載の方法に準じて、酸素透過速度を測定し、その平均値を求めた。本実施例の多層フィルムの酸素透過速度は、0.8cc/m2・day・atmだった。
次に該多層フィルムを用い、スキンパック包装適性を評価した。フタ材4として厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラー#100」)に厚さ40μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(積水フィルム西日本株式会社製「ラミロンSR−L10」)をドライラミネート法により張り合わせた2層フィルムの上に内容物(スライスハム)5を載置し、(エチレン−酢酸ビニル共重合体層をスライスハム側にする)、スキンパック包装テスト機(浅野製作所製:真空圧空深絞り成形機FX−0431−3型)を用いて、評価対象フィルムのスキンパック包装を行った(図9参照)。
100℃に設定された予熱ヒーター1を用いてフィルムを予熱し、ついで90℃に保たれた上金型2(温調機材)にて前記多層フィルム3を真空成形した。つづいて上金型2及び下金型7を接合させ、真空用管8及び9から排気して金型内部を真空状態にした。金型内部が真空になった後、ヒートシーラーの置台10の上に設置されたヒートシーラー6を作動させ、スライスハムの周囲を円形にヒートシールする。この後、金型内部を大気圧に戻し、該評価対象フィルムが内容物であるスライスハムの表面に密着賦型されたスキンパックを得た。
成形されたスキンパック包装体について内容物の型添い性(内容物の潰れの度合い)と、しわの発生状況の2点について包装外観の評価を行なった。その結果、本実施例の多層フィルムからなるスキンパック包装体は、内容物の形状がほとんど変化しておらず、良好な型添い状態であった。また、しわもまったく発生しておらず良好な密着性を示した。
実施例20
バリア材として実施例11で作製した樹脂組成物を用い、EVA樹脂として三井デュポンポリケミカル製「エバフレックスEV−340」を用い、接着性樹脂として三井化学製「アドマーVF−600」を用いた。上記のそれぞれの樹脂を用いて、下記条件で3種5層共押出装置を使用してEVA樹脂/接着性樹脂/バリア材/接着性樹脂/EVA樹脂(=300/50/50/50/300μm)の層構成を有する多層シートを作製した。
共押出成形条件は以下のとおりである。
層構成:
EVA樹脂/接着性樹脂/バリア材/接着性樹脂/EVA樹脂
(厚み300/50/50/50/300:単位はμm)
各樹脂の押出温度:
C1/C2/C3/ダイ=170/170/220/220℃
各樹脂の押出機、Tダイ仕様:
EVA樹脂:
32φ押出機 GT−32−A型(株式会社プラスチック工学研究所製)
接着性樹脂:
25φ押出機 P25−18AC(大阪精機工作株式会社製)
バリア材:
20φ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(株式会社東洋精機製)
Tダイ:
300mm幅3種5層用 (株式会社プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:50℃
引き取り速度:4m/分
上記作製した多層シートを東洋精機製パンタグラフ式二軸延伸機にかけ、70℃、延伸倍率3×3倍で同時二軸延伸を行い、多層延伸フィルムを得た。上記の多層シートは良好な延伸性を示し、延伸後、得られた多層延伸フィルムはクラック、ムラ、偏肉も少なく、外観(透明性、ゲル・ブツ)も良好であった。
上記作製した多層延伸フィルムを、20℃−100%RHで5日間調湿した。上記の調湿済みの2枚のサンプルを使用して、モダンコントロール社製 MOCON OX−TRAN2/20型を用い、20℃−100%RH条件下でJIS K7126(等圧法)に記載の方法に準じて、酸素透過速度を測定し、その平均値を求めた。本実施例の多層延伸フィルムの酸素透過速度は、1.3cc/m2・day・atmであり、良好なガスバリア性を示した。
また上記作製した多層延伸フィルムを、熱収縮フィルムとして用いた場合の熱収縮性について、以下の方法にしたがって評価を行った。すなわち、上記多層延伸フィルムを、90℃の熱水中に1分間浸漬し、その面積収縮率を求めた。本実施例の多層延伸フィルムの面積収縮率は57%であり、良好な熱収縮性を示した。
実施例21
以下の方法にしたがって、熱可塑性ポリエステル樹脂を製造した。
テレフタル酸100.000重量部及びエチレングリコール44.830重量部とからなるスラリーをつくり、これに二酸化ゲルマニウム0.010重量部、亜リン酸0.010重量部及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド0.010重量部を加えた。このスラリーを加圧下(絶対圧2.5Kg/cm2)で250℃の温度に加熱して、エステル化率が95%になるまでエステル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、得られた低重合体を、1mmHgの減圧下に、270℃の温度で前記の低重合体を溶融重縮合させて、極限粘度0.50dl/gのポリエステルを生成させた。得られたポリエステルをノズルからストランド状に押出し、水冷した後、切断し、円柱状ペレット(直径約2.5mm、長さ 約2.5mm)にした。次いで、得られたポリエステルのペレットを160℃で5時間予備乾燥を行なって結晶化し、ポリエステルプレポリマーを得た。
得られたポリエステルプレポリマーの各構造単位の含有率をNMRで測定したところ、ポリエステルにおけるテレフタル酸単位、エチレングリコール単位、及び副生したジエチレングリコール単位の含有率はそれぞれ50.0モル%、48.9モル%、1.1モル%であった。また、末端カルボキシル基濃度及び融点を上記方法で測定したところ、それぞれ38μ当量/g及び253℃であった。次いで、得られたポリエステルプレポリマーを160℃で5時間予備乾燥を行って結晶化した。
結晶化したポリエステルプレポリマーを、転動式真空固相重合装置を用い、0.1mmHgの減圧下に、220℃で固相重合を10時間行って、高分子量化された熱可塑性ポリエステル樹脂を得た。得られた熱可塑性ポリエステル樹脂の特性値は、以下の方法にしたがって測定した。
(1)ポリエステルにおける各構造単位の含有率
ポリエステルにおける各構造単位の含有率は、重水素化トリフルオロ酢酸を溶媒としたポリエステルの1H−NMR(核磁気共鳴)スペクトル(日本電子社製「JNM−GX−500型」により測定)により測定した。
(2)ポリエステルの極限粘度
多層容器胴部のポリエステル層からサンプルを切り出し、フェノールとテトラクロルエタンの等重量混合溶媒中、30℃で、ウベローデ型粘度計(林製作所製「HRK−3型」)を用いて測定した。
(3)ポリエステルのガラス転移温度及び融点
多層容器胴部のポリエステル層からサンプルを切り出し、JIS K7121に準じて、示差熱分析法(DSC)により、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DSC)RDC220/SSC5200H型を用いて、280℃の温度に試料を5分間保持した後、降温速度100℃/分の条件で30℃の温度にし、さらに5分間保持した後、昇温速度10℃/分の条件で測定した。但し、温度の校正にはインジウムと鉛を用いた。また、本発明でいうガラス転移温度は、前記JISでいう中間点ガラス転移温度(Tmg)をいい、さらに、本発明でいう融点は、前記JISでいう融解ピーク温度(Tpm)をいう。
得られた熱可塑性ポリエステル樹脂におけるテレフタル酸単位、エチレングリコール単位、及びジエチレングリコール単位の含有率はそれぞれ50.0モル%、48.9モル%、1.1モル%であった。また、極限粘度、融点、ガラス転移温度はそれぞれ0.83dl/g、252℃、80℃であった。
実施例1で作製した樹脂組成物及び上記製法によって作製した熱可塑性ポリエステル(PES)を用いてKORTEC/HUSKY製共射出成形機(SL160型4個取り)を使用し、PES側射出機温度280℃、樹脂組成物側射出機温度210℃、PESと樹脂組成物とが合流するホットランナーブロック部270℃、射出金型コア温度10℃、射出金型キャビティー温度10℃で共射出成形を行い、PES/樹脂組成物/PESの2種3層のパリソンを成形した。パリソンを目視で観察したところ、ストリークは認められず、パリソン口部における樹脂組成物層のリーディングエッジは良好な状態であった。
種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。該ブロー成形容器を目視で観察したところ、ストリーク、気泡あるいはゲル物が認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を以下の方法に従って測定した。
(1)多層容器のデラミ発生率:
成形で得られたボトル100本を、各々1本ごとに内容物として水を充填し、常圧下で密栓した後、60cmの高さからボトル胴部を水平にし、90°の角度を持った長さ20cm三角形の台の上に、台の角部がボトル胴部の中央に当たるように一回のみ自然落下させた。デラミを生じたボトルの本数から、下記式にしたがってデラミ発生率を算出した。
デラミ発生率=[(デラミを生じたボトルの本数)/100]×100 (%)
(2)多層容器のヘイズ(曇価):
得られたボトル胴部中央を円周上に4分割した4箇所について、ASTM D1003−61に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(村上色彩技術研究所製「HR−100型」)を用いて各箇所における内部ヘイズを測定し、その平均値を採ってボトルのヘイズ(曇価)とした。
(3)多層容器の酸素透過速度:
得られたボトルの形態のままで、20℃−65%RHに温湿度調整した後、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN−10/50A)にて、容器1個当たりの酸素透過速度(cc/container・day・atm)を測定した。
上記評価結果を表4にまとめて示す。また、本パリソンを延伸ブロー成形して作製した容器について外観を観察したところ、ストリーク、気泡あるいはゲル物が認められず、良好な外観を有していた。
実施例22
樹脂組成物として、実施例4で作製した樹脂組成物を用いた以外は、実施例21と同様にして評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例23
樹脂組成物として、実施例5で作製した樹脂組成物を用いた以外は、実施例21と同様にして評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例24
樹脂組成物として、実施例11で作製した樹脂組成物を用いた以外は、実施例21と同様にして評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例25
樹脂組成物として、実施例12で作製した樹脂組成物を用いた以外は、実施例21と同様にして評価を行った。評価結果を表4に示す。
比較例12
実施例1で用いたEVOH(F)のみを、樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例21と同様にしてパリソンの成形性、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度の評価を行なった。評価結果を表4に示す。
比較例13
実施例5で用いたEVOH(F)のみを、樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例21と同様にしてパリソンの成形性、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度の評価を行なった。評価結果を表4に示す。
比較例14
合成例1で得られた変性EVOH(C)のみを樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例21と同様にしてパリソンの成形性、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度の評価を行なった。評価結果を表4に示す。
比較例15
比較例9で用いた組成物を樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例21と同様にしてパリソンの成形性、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度の評価を行なった。評価結果を表4に示す。
比較例16
比較例10で用いた組成物を樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例21と同様にしてパリソンの成形性、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度の評価を行なった。評価結果を表4に示す。
比較例17
比較例11で用いた組成物を樹脂組成物の代わりに使用した以外は、実施例21と同様にしてパリソンの成形性、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度の評価を行なった。評価結果を表4に示す。
実施例21〜25に示されるように、本発明の樹脂組成物を使用した共射出延伸ブロー成形容器は、パリソンの成形性、耐デラミ性、透明性及び酸素ガスバリア性に優れている。これに対し、未変性のEVOH(F)のみを使用した比較例12及び13では、パリソンの成形性及び耐デラミ性が大きく劣る。また、変性EVOH(C)のみを使用した比較例14では、耐デラミ性は優れるものの、酸素透過速度が増加する。さらに、低ケン化度のEVOHを配合した比較例15〜17では、デラミ発生率及び酸素透過速度が増加する。
すなわち、本発明の共射出延伸ブロー成形容器は、接着性樹脂層を有せずとも、衝撃による層間のデラミを防止することができ、透明性、ガスバリア性に優れたものである。かかる容器は各種内容物を長期間にわたって保存するのに適しており、炭酸飲料、ビール、ワイン等の各種飲料、食品、化粧品等の容器として有用である。
実施例26
変性EVOH(C)として合成例1で用いた変性EVOH(C)を30重量部、ポリオレフィン(G)として直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製ウルトゼックス2022L)70重量部をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度210℃でスクリュー回転数400rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行い樹脂組成物を得た。
次に、図12に示すような成形品を作製するための金型を備えた射出成形機に上記樹脂組成物ペレットを供給し、射出成形法によりヒンジ付きキャップのついたプルリング付き注ぎ口を作製した。このとき射出成形機のシリンダー温度は230℃、ノズル温度は220℃とした。
このようにして成形したプルリング付き注ぎ口の一部を切断し、小片を得た。小片の切断面の変性EVOH(C)をヨウ素で染色し、小片の切断面を光学顕微鏡で観察することにより、変性EVOH(C)が連続相であるか、分散相であるかを判別した。連続相は直鎖状低密度ポリエチレンであり、変性EVOH(C)が分散相として存在していた。成形したプルリング付き注ぎ口の評価は以下のように行った。樹脂組成物の組成等に関しては表5に、成形品の評価結果等については表6にそれぞれまとめて示した。
(1)バリア性(酸素透過速度)
樹脂組成物をTダイにより240℃にて溶融押出して厚み100μmのフィルムを作製した後、温度20℃、65%RHの条件で2週間調湿し、モダン・コントロール社(米国)製Ox−Tran10/50型酸素透過率測定装置を用いて温度20℃、65%RHの条件下でJISK7126に準じて酸素透過速度(cc・20μm/m2・day・atm)を求めた。
(2)キャップ強度
成形したプルリング付き注ぎ口部を温度20℃、65%RHの条件で2週間調湿後、5mの高さから5回落下させて損傷をチェックし、以下の基準で判定した。
判定基準;
◎:5回落下後において変形なし。
○:3回落下後において変形はなかったが、5回落下においてひび割れ、もしくは破損が発生。
△:1回落下後において変形はなかったが、2回落下においてひび割れ、もしくは破損が発生。
×:2回落下においてひび割れ、もしくは破損が発生。
(3)易開封性
100個のプルリング付き注ぎ口について、プルリングを指で引っ張り開封した。開封時にかかった力による薄膜部分の切れ方について、以下の基準で判定した。
判定基準;
◎:薄膜部が切れ、容易に開封できる。
○:比較的容易に開封できる。
×:開封困難、薄膜部からは切れない。
(4)プルリング強度
100個のプルリング付き注ぎ口について、プルリングを指で引っ張り開封した。開封時にリングが切れずに、容易に開封できるかどうかを評価し、以下の基準で判定した。
判定基準;
◎:切れたプルリングの個数が10個以下。
○:切れたプルリングの個数が10個を超え30個以下。
△:切れたプルリングの個数が30個を超え50個以下。
×:切れたプルリングの個数が50個を超える。
(5)ヒンジ強度
100個のプルリング付き注ぎ口を温度20℃、65%RHの条件で2週間調湿後、キャップの開閉を200回繰り返し、ヒンジ部の強度を、以下の基準で判定した。
判定基準;
◎:ヒンジ部が切断したものの個数が10個以下。
○:ヒンジ部が切断したものの個数が10個を超え30個以下。
△:ヒンジ部が切断したものの個数が30個を超え50個以下。
×:ヒンジ部が切断したものの個数が50個を超える。
(6)リサイクル性
プルリング付き注ぎ口の射出成形時に生じたライナー部分などのバリを粉砕後、再度射出成形機に仕込み、同条件でプルリング付き注ぎ口を再度成形した。成形品について、バリア性の評価を除き、上記の項目を評価した。
実施例27
変性EVOH(C)として合成例3で得られた変性EVOH(C)を30重量部、ポリオレフィン(G)として直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製ウルトゼックス2022L)65重量部、相容化剤(H)としてエチレン−メタクリル酸ランダム共重合体金属塩(共重合中のメタクリル酸含有量7.5モル%、カウンターイオンZn、中和度40%、メルトフローレート(190℃、2160g荷重下)1.1g/10分)5重量部をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度210℃でスクリュー回転数400rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行い樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用い、実施例26と同様に評価を行った。樹脂組成物の組成等に関しては表5に、成形品の評価結果等については表6にそれぞれまとめて示した。
実施例28
実施例5で用いたEVOH(F)20重量部、及び合成例4で得られた変性EVOH(C)15重量部をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度200℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行いEVOH(F)と変性EVOH(C)とからなる樹脂組成物を得た。続いて、得られたEVOH(F)と変性EVOH(C)とからなる樹脂組成物を35重量部、ポリオレフィン(G)として直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製ウルトゼックス2022L)65重量部をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度210℃でスクリュー回転数400rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行い樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用い、実施例26と同様に評価を行った。樹脂組成物の組成等に関しては表5に、成形品の評価結果等については表6にそれぞれまとめて示した。
実施例29
実施例1で用いたEVOH(F)20重量部、及び合成例4で得られた変性EVOH(C)15重量部をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度200℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行いEVOH(F)と変性EVOH(C)とからなる樹脂組成物を得た。続いて、得られたEVOH(F)と変性EVOH(C)とからなる樹脂組成物を35重量部、ポリオレフィン(G)として直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製ウルトゼックス2022L)60重量部、相容化剤(H)として下記の要領にて製造したものを5重量部ドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度210℃でスクリュー回転数400rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行い樹脂組成物を得た。
相容化剤(H)の製造方法:
下記の、樹脂フィーダー(押出機の入口部)、液体フィーダー(押出機の中間部)およびベント(液体フィーダーの手前および押出機出口の手前の2箇所)を有する37φ二軸押出機に超低密度ポリエチレン(住友化学製「エクセレン」(商品名)EUL430){メルトインデックス(MI)4g/10分(190℃、2160g荷重)、二重結合量4.7×10−2meq/g、密度0.89g/cm3}を8kg/時間の割合で供給し、一方、液体フィーダーからはトリエチルアミンボランとホウ酸1,3−ブタンジオールエステルの重量比29:71混合溶液を0.2kg/時間(トリエチルアミンボランは0.058kg/時間、ホウ酸1,3−ブタンジオールエステルは0.142kg/時間)の割合で添加を行った。これによりメルトインデックス(MI)4g/10分(190℃、2160g荷重)の、末端にボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を0.03meq/g有する超低密度ポリエチレンを得た。このボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を有する超低密度ポリエチレンを相容化剤(H)として用いた。
押出機:TEM−35B(東芝機械)
D=37mm、L/D=53.8
液体フィーダー位置:C8
ベント位置 :C6およびC14
温度設定 C1〜C6 :240℃
C7〜C15 :260℃
Die :250℃スクリュー
回転数:100rpm
得られた樹脂組成物を用い、実施例26と同様に評価を行った。樹脂組成物の組成等に関しては表5に、成形品の評価結果等については表6にそれぞれまとめて示した。
比較例18
実施例26で用いた直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製ウルトゼックス2022L)のみを使用し、実施例26と同様に評価を行った。樹脂組成物の組成等に関しては表5に、成形品の評価結果等については表6にそれぞれまとめて示した。
比較例19
実施例5で用いたEVOH(F)のみを使用し、実施例26と同様に評価を行った。樹脂組成物の組成等に関しては表5に、成形品の評価結果等については表6にそれぞれまとめて示した。
比較例20
実施例1で用いたEVOH(F)を30重量部、ポリオレフィン(G)として直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製ウルトゼックス2022L)70重量部を使用し、実施例26と同様に二軸押出を行い樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用い、実施例26と同様に評価を行った。樹脂組成物の組成等に関しては表5に、成形品の評価結果等については表6にそれぞれまとめて示した。
比較例21
実施例1で用いたEVOH(F)を30重量部、ポリオレフィン(G)として直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製ウルトゼックス2022L)65重量部、実施例27で用いた相容化剤(H)5重量部を使用し、実施例26と同様に二軸押出を行い樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用い、実施例26と同様に評価を行った。樹脂組成物の組成等に関しては表5に、成形品の評価結果等については表6にそれぞれまとめて示した。
比較例22
実施例5で用いたEVOH(F)を35重量部、ポリオレフィン(G)として直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製ウルトゼックス2022L)65重量部を使用し、実施例26と同様に二軸押出を行い樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用い、実施例26と同様に評価を行った。樹脂組成物の組成等に関しては表5に、成形品の評価結果等については表6にそれぞれまとめて示した。
比較例23
実施例5で用いたEVOH(F)を30重量部、ポリオレフィン(G)として直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製ウルトゼックス2022L)65重量部、実施例29で用いた相容化剤(H)5重量部を使用し、実施例26と同様に二軸押出を行い樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用い、実施例26と同様に評価を行った。樹脂組成物の組成等に関しては表5に、成形品の評価結果等については表6にそれぞれまとめて示した。
実施例26〜29で得られた本発明のプルリング付き注ぎ口は、バリア性に優れており、落下評価によるキャップ強度も十分であった。さらに、易開封性に優れており、またリング強度及びヒンジ強度という機械強度にも優れていた。ポリオレフィン(G)のみを使用した比較例18は、ガスバリア性が極端に悪かった。EVOH(F)のみからなる比較例19、EVOH(F)及びポリオレフィン(G)からなる比較例20及び比較例22、EVOH(F)、ポリオレフィン(G)及び相容化剤(H)からなる比較例21及び比較例23は、キャップ強度、リング強度及びヒンジ強度など機械強度が不十分であり、易開封性にも劣っていた。またリサイクル性も悪かった。
実施例30
変性EVOH(C)として合成例3で得られた変性EVOH(C)を30重量部、ポリオレフィン(G)としてポリプロピレン(日本ポリケム(株)製ノバテックPP BC03B)65重量部、相容化剤(H)として下記の要領にて製造したものを5重量部ドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度210℃でスクリュー回転数400rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行い樹脂組成物を得た。
相容化剤(H)の製造方法:
攪拌機、窒素導入管、冷却器及び蒸留器を備えた反応槽に旭化成株式会社製「タフテックH1062」を500重量部及びデカリン1500重量部を仕込み、減圧により窒素置換後、反応槽の温度を130℃に設定し、攪拌により溶解した。これにトリエチルアミンボラン57.5重量部及びホウ酸1,3−ブタンジオールエステル143重量部の混合液を加え、5分間攪拌後、攪拌を止め、反応槽の温度を200℃に昇温した。昇温後、しばらくして全体がゲル化した後、壁面からゲルの溶解が始まり、攪拌可能になった時点で再び攪拌を開始した。反応容器中のゲルが完全に消失してから、さらに1時間加熱後、冷却器の代わりに蒸留器に切り替え、常圧で蒸留を開始した。反応槽の温度を220℃まで上げ、留出がほぼ止まるまで蒸留を続けた。得られたポリマーの溶液を冷却後、アセトン5重量部に再沈殿し、さらに、120℃で1晩真空乾燥することにより、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を0.22mmol/g有するポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンのトリブロック共重合体の水添物を得た。このボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を有するトリブロック共重合体を相容化剤(H)として用いた。
次に、図13に示すような成形品を作製するための金型を備えた射出成形機に上記樹脂組成物ペレットを供給し、射出成形法により容器用キャップを作製した。このとき射出成形機のシリンダー温度は230℃、ノズル温度は220℃とした。
このようにして成形した容器用キャップを切断し、小片を得た。小片の切断面の変性EVOH(C)をヨウ素で染色し、小片の切断面を光学顕微鏡で観察することにより、変性EVOH(C)が連続相であるか、分散相であるかを判別した。連続相はポリプロピレンであり、変性EVOH(C)が分散相として存在していた。成形した容器用キャップの評価は以下のように行った。評価結果を表7にまとめて示す。
(1)バリア性(酸素透過係数)
樹脂組成物をTダイにより240℃にて溶融押出して厚み100μmのフィルムを作製した後、温度20℃、65%RHの条件で2週間調湿し、モダン・コントロール社(米国)製Ox−Tran10/50型酸素透過率測定装置を用いて温度20℃、65%RHの条件下でJISK7126に準じて酸素透過係数(cc・20μm/m2・day・atm)を求めた。
(2)キャップ強度
成形した容器用キャップを温度20℃、65%RHの条件で1ヶ月間調湿後、5mの高さから5回落下させて損傷をチェックし、以下の基準で判定した。
判定基準;
◎:5回落下後において変形なし。
○:3回落下後において変形はなかったが、5回落下においてひび割れ、もしくは破損が発生。
△:1回落下後において変形はなかったが、2回落下においてひび割れ、もしくは破損が発生。
×:2回落下においてひび割れ、もしくは破損が発生。
(3)リサイクル性
容器用キャップの射出成形時に生じたライナー部分などのバリを粉砕後、再度射出成形機に仕込み、同条件で容器用キャップを再度成形した。成形品について、上記の項目(2)のキャップ強度を評価した。
実施例31
実施例1で用いたEVOH(F)20重量部、及び合成例4で得られた変性EVOH(C)15重量部をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度200℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行いEVOH(F)と変性EVOH(C)とからなる樹脂組成物を得た。
続いて、得られたEVOH(F)と変性EVOH(C)とからなる樹脂組成物を35重量部、ポリオレフィン(G)としてポリプロピレン(日本ポリケム(株)製ノバテックPP BC03B)60重量部、相容化剤(H)として実施例30で用いた相容化剤(H)5重量部をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度210℃でスクリュー回転数400rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行い樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用い、実施例30と同様に評価を行った。評価結果を表7に示す。
比較例24
実施例30で用いたポリプロピレン(日本ポリケム(株)製ノバテックPP BC03B)のみを使用し、実施例30と同様に評価を行った。評価結果を表7に示す。
比較例25
実施例5で用いたEVOH(F)のみを使用し、実施例30と同様に評価を行った。評価結果を表7に示す。
比較例26
実施例1で用いたEVOH(F)を30重量部、ポリオレフィン(G)としてポリプロピレン(日本ポリケム(株)製ノバテックPP BC03B)65重量部、実施例30で用いた相容化剤(H)5重量部を使用し、実施例30と同様に二軸押出を行い樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用い、実施例30と同様に評価を行った。評価結果を表7に示す。
比較例27
実施例5で用いたEVOH(F)を30重量部、ポリオレフィン(G)としてポリプロピレン(日本ポリケム(株)製ノバテックPP BC03B)65重量部、実施例30で用いた相容化剤(H)5重量部を使用し、実施例30と同様に二軸押出を行い樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用い、実施例30と同様に評価を行った。評価結果を表7に示す。
実施例30及び31で得られた本発明の樹脂組成物を用いた容器用キャップは、バリア性に優れており、落下評価によるキャップ強度も十分であった。さらに、リサイクル後にもキャップ強度が優れていた。一方、ポリオレフィン(G)のみからなる比較例24は、ガスバリア性が極端に悪かった。EVOH(F)のみからなる比較例25、EVOH(F)、ポリオレフィン(G)及び相容化剤(H)からなる比較例26及び比較例27は、キャップ強度が不十分であった。またリサイクル性も悪かった。
実施例32
実施例11で用いたEVOH(F)を80重量部、合成例4で得られた変性EVOH(C)10重量部、及び実施例29で用いた相容化剤(H)10重量部をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度200℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行い樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は1.1g/10分であった。
こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。フィルム、シートの評価結果について表8にまとめて示した。
また、得られた樹脂組成物を用いて、下記3種5層共押出装置を用いて、下記共押出成形条件で多層シート(ポリプロピレン樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリプロピレン樹脂層)を作製した。シートの構成は、両最外層のポリスチレン樹脂(日本ポリケム(株)製「EG−7FT」)層が各425μm、また接着性樹脂(三井化学製「アドマーQF500」)層が各50μm、さらに樹脂組成物層が50μmである。
共押出成形条件は以下のとおりである。
層構成:
ポリプロピレン樹脂/接着性樹脂/樹脂組成物/接着性樹脂
/ポリプロピレン樹脂
(厚み425/50/50/50/425:単位はμm)
各樹脂の押出機仕様及び押出温度:
ポリプロピレン樹脂;
65φ押出機 20VSE−65−22型(大阪精機工作株式会社製)
C1/C2/C3/C4/AD
=200/210/230/240/240℃
接着性樹脂;
40φ押出機 10VSE−40−22型(大阪精機工作株式会社製)
C1/C2/C3/C4/AD
=130/180/210/220/220℃
樹脂組成物;
40φ押出機 VSVE−40−24型(大阪精機工作株式会社製)
C1/C2/C3/C4/AD
=175/210/220/220/220℃
Tダイ仕様:
600mm幅3種5層用 (株式会社プラスチック工学研究所製)
AD/Die=240/240℃
冷却ロールの温度:80℃
引き取り速度:1.2m/分
得られた多層シートを粉砕後、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度240℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、8時間熱風乾燥を行いリサイクルペレットを得た。
こうして得られたリサイクルペレットを用いて、40φ押出機(プラスチック工学研究所製PLABOR GT−40−A)とTダイからなる製膜機を用いて、下記押出条件で製膜し、厚み25μmの単層フィルムを得た。
形式: 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D: 24
口径: 40mmφ
スクリュー: 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼
スクリュー回転数:40rpm
ダイス: 550mm幅コートハンガーダイ
リップ間隙: 0.3mm
シリンダー、ダイ温度設定:
C1/C2/C3/アダプター/ダイ
=200/230/240/240/240(℃)
上記作製した単層フィルムを用いて、フィルム外観及びEVOHの分散状態を以下の評価基準により評価し、リサイクル(回収)性を判断した。なお、EVOHの分散状態は得られた単層フィルムの断面をメタノール/イソプロパノール混合溶媒(50/50vol%)でエッチングしSEMにより観察した。
判定基準;
A:ブツの個数が10個/100cm2未満であって、EVOHの分散粒径が概ね1μm以下である。
B:ブツの個数が10個/100cm2以上50個/100cm2未満であって、EVOHの分散粒径が概ね1〜5μmである。
C:ブツの個数が50個/100cm2以上100個/100cm2未満であって、EVOHの分散粒径が概ね5〜10μmである。
D:ブツの個数が100個/100cm2以上であって、EVOHの分散粒径が10μmを超えるものが多数存在する。
実施例33
実施例11で用いたEVOH(F)を80重量部、合成例4で得られた変性EVOH(C)10重量部、及び実施例30で用いた相容化剤(H)10重量部をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、押出温度200℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、80℃、16時間熱風乾燥を行い樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は1.2g/10分であった。こうして得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。また、実施例32と同様にして、リサイクル(回収)性の評価を行った。評価結果について表8にまとめて示した。
比較例28
実施例11で用いたEVOH(F)を樹脂組成物の代わりに使用し、実施例1と同様にして単層フィルム、単層シート及び多層シートを製造し、酸素透過速度、炭酸ガス透過速度及びヘイズを測定し、耐屈曲性及び延伸性を評価した。また、実施例32と同様にして、リサイクル(回収)性の評価を行った。評価結果について表8にまとめて示した。
実施例32及び実施例33に示されるように、EVOH(F)、変性EVOH(C)及び相容化剤(H)からなる本発明の樹脂組成物は低いヤング率、低い引張降伏点強度、高い引張破断伸度を有し、良好な耐屈曲性、延伸性、リサイクル性を示す。また、ガスバリア性に関しても、未変性のEVOH(F)に対して遜色のない性能を有していることが分かる。一方、比較例27に示されるように、未変性のEVOH(F)においては、十分な耐屈曲性、延伸性、リサイクル性が得られない。
以下に示すのは、動的架橋樹脂組成物についての実施例である。下記の実施例、比較例で得られた樹脂組成物のペレットを用いて、以下のようにして成形品(試験片)をつくり、それらの物性、すなわち、酸素透過係数、弾性率、100%モジュラス、引張破断強度、引張破断伸び、エラストマー分散粒子径を次のようにして測定した。
(1)酸素透過係数の測定:
以下の実施例、比較例で製造した樹脂組成物のペレットを用いて、そのペレットを圧縮成形機により加熱下に圧縮成形し、厚さ100μmのシート状試験片を作製し、これらを用いて酸素透過係数の測定を行った。酸素透過係数の測定はガス透過率測定装置(柳本製作所製「GTR−10」)を用いて、酸素圧0.34MPa、温度35℃、湿度0%RHの条件で行った。
(2)弾性率の測定:
以下の実施例、比較例で製造した樹脂組成物のペレットを用いて、そのペレットを圧縮成形機により加熱下に圧縮成形して厚さ1mmのシートとした。これから幅5mmの短冊状試験片を作製し、引張での動的粘弾性測定を行い、室温における弾性率を求めた。なお、動的粘弾性の測定は粘弾性解析測定装置(レオロジ社製「DVE−V4」)を用いて、周波数1Hzの条件で行なった。
(3)引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスの測定:
以下の実施例、比較例または参考例で製造した樹脂組成物のペレットを用いて、15トン射出成形機[FANUC社製「ROBOSHOT−α15」]を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度40℃の条件下で成形し、厚み2mm、幅5mmのダンベルを製造した。これにより得られたダンベル試験片を用いて、オートグラフ(島津製作所社製)を使用して、JIS−K6301に準じて、500mm/分の条件下で引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスを測定した。
(4)エラストマー(J)の平均分散粒子径の測定:
以下の実施例、比較例で製造した樹脂組成物の切断面を電子染色し、走査電子顕微鏡で観察することにより求めた。なお、下記の表2において、エラストマー(J)が分散相にならずマトリックス相となっているもの、または単一相からなるものは、「−」で示した。
また、以下の実施例および比較例で用いた変性EVOH(C)、エラストマー(J)及び架橋剤(K)は次のとおりである。
変性EVOH(C)
合成例1で得られた、エチレン含有量が32モル%で、構造単位(I)の含有量が4.8モル%の変性EVOH(C)を用いた。
エラストマー(J−1)
ポリスチレンブロック−水添ポリブタジエンブロック−ポリスチレンブロックからなり無水マレイン酸基を含有するトリブロック共重合体(スチレン単位含有量=30質量%、分子量=10万、酸価=5mgCH3ONa/g、無水マレイン酸基の量=6.5個/分子)。
エラストマー(J−2)
ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を210μeq/g含有するポリスチレンブロック−水添ポリブタジエンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体(スチレン単位含有量=30質量%、分子量=10万、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基の量=21個/分子)。
架橋剤(K−1)
1,9−ノナンジアミン。
架橋剤(K−2)
イノシトール。
実施例34〜39
(1) 上記変性EVOH(C)、エラストマー(J)および架橋剤(K)を、下記の表9に示す割合で予備混合した後、二軸押出機(Krupp Werner & Pfleiderer社製「ZSK−25WLE」)に供給して、シリンダー温度200℃およびスクリュー回転数350rpmの条件下に溶融混練し、押出し、切断して樹脂組成物のペレットをそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られた樹脂組成物のペレットを用いて、上記した方法でプレスフィルムおよび成形品(試験片)を製造し、その酸素透過係数、20℃での弾性率、引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスを上記した方法で測定したところ、下記の表9に示すとおりであった。
比較例29及び30
(1) 上記変性EVOH(C)およびエラストマー(J)を、下記の表10に示す割合で予備混合した後、架橋剤(K)を添加せずに、二軸押出機(Krupp Werner&Pfleiderer社製「ZSK−25WLE」)に供給して、シリンダー温度200℃およびスクリュー回転数350rpmの条件下に溶融混練し、押出し、切断して樹脂組成物のペレットをそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られた樹脂組成物のペレットを用いて、上記した方法でプレスフィルムおよび成形品(試験片)を製造し、その酸素透過係数、弾性率、引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスを上記した方法で測定したところ、下記の表10に示すとおりであった。
比較例31〜33
(1) ペレットを単独で用いて、上記した方法でプレスフィルムおよび成形品(試験片)を製造した。
(2) 酸素透過係数、弾性率引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスを上記した方法で測定したところ、下記の表10に示すとおりであった。
上記の表9の結果から、変性EVOH(C)、エラストマー(J)および架橋剤(K)を用いて製造した実施例34〜39の樹脂組成物を用いると、酸素透過係数において12〜175ml・20μm/m2・day・atm(1.4〜20fm・20μm/Pa・s)の値を示したようにガスバリア性が良好であり、力学的特性、柔軟性、弾性などの各種物性に優れる高品質の成形品が円滑に得られることがわかる。
上記の表10の結果から、変性EVOH(C)及びエラストマー(J)を含有し、架橋剤(K)を添加しない比較例29または比較例30の樹脂組成物を用いると、酸素透過係数において58000〜67000ml・20μm/m2・day・atm(6600〜7700fm・20μm/Pa・s)の値を示したようにガスバリア性に劣っており、且つ力学的特性の点でも十分には良好ではないことがわかる。