JP2007186635A - リン酸エステル系重合体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水硬性組成物に対して、優れた分散効果、粘性低減効果を付与できる水硬性組成物用分散剤を、工業的に実用性のあるレベルで製造できる方法を提供する。
【解決手段】ポリオキシアルキレン基を有する特定のポリエーテル系単量体1とリン酸モノエステル系単量体2とリン酸ジエステル系単量体3とを、pHを7以下にして共重合させて水硬性組成物用分散剤として好適なリン酸エステル系重合体を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、リン酸エステル系重合体の製造方法に関する。更に本発明は、リン酸エステル系重合体、それを含有する水硬性組成物用分散剤及びさらにそれを含有する水硬性組成物に関する。
水硬性組成物用混和剤の中で、流動性付与効果の大きい高性能減水剤と呼ばれているものがある。その代表的なものに、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩(ナフタレン系)、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩(メラミン系)、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系等がある。
近年、代表的な水硬性組成物であるコンクリートの高耐久化指向が強まってきており、例えば、コンクリートに使用される水量を低減して高強度化することが行われており、この傾向は今後も増加するものと予測される。水量を低減するのに減水性と流動保持性に優れるポリカルボン酸系減水剤を使用することが主流となっている。しかし、水量の低減に伴い、フレッシュコンクリート粘性(以下、コンクリート粘性ともいう)が増加し、ポンプ圧送、打ち込み、型枠への充填といった作業性、施工性が低下するという問題もある。この粘性増大の問題については、ポリカルボン酸系減水剤でもまだ十分解決されておらず、よりコンクリート粘性低減効果の高い添加剤が望まれている。
このような背景から、特許文献1には、高鎖長のオキシアルキレン基と特定の単量体を含むビニル共重合体を必須成分とするコンクリート混和剤が開示されている。また、特許文献2には、水の配合比にかかわらず優れた流動特性と高い分散効果と早い凝結性を発現できるセメント用分散剤を得るために、ポリアルキレングリコール鎖を有するモノエステル又はモノエーテルと、不飽和結合及び燐酸基を有する単量体との重合物を用いることを提案している。特許文献3には、アルキレングリコールエーテルを含む単量体単位とマレイン酸系単量体単位を有する共重合体を含有する、モルタルの粘性が低い水硬性組成物用分散剤が開示されている。
特開平11−79811号公報 特開2000−327386号公報 特開2004−168635号公報
しかしながら、特許文献1の重合体では粘性低減性に限界があり、特許文献2に記載の重合体の製造方法は、特定の単量体を用いることで目的とする分子量の重合体を得ているが、流動性と粘性低減の更なる向上のためには得られる重合体の構造の自由度がより高い製造方法が望まれる。
本発明の課題は、水硬性粉体を含む水硬性組成物に対して、優れた分散効果あるいは粘性低減効果、更にこれら両方の優れた効果を付与でき、性能の良好な水硬性組成物用分散剤に使用できるリン酸エステル系重合体を、工業的に実用性のあるレベルで製造できる方法を提供することである。
本発明は、下記一般式(1)で表される単量体1〔以下、単量体1という〕と、下記一般式(2)で表される単量体2〔以下、単量体2という〕と、下記一般式(3)で表される単量体3〔以下、単量体3という〕とを、pH7以下で共重合するリン酸エステル系重合体の製造方法(以下、第1の製造方法ともいう)に関する。
Figure 2007186635
〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は-CH2O(AO)nX、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、nはAOの平均付加モル数であり、3〜200の数、Xは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
Figure 2007186635
〔式中、R4は水素原子又はメチル基、R5は炭素数2〜12のアルキレン基、m1は1〜30の数、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
Figure 2007186635
〔式中、R6、R8は、それぞれ水素原子又はメチル基、R7、R9は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基、m2、m3は、それぞれ1〜30の数、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
また、本発明は、以下の(X)と(Y)とを共重合した後に、リン酸化剤(Z)とを反応させて得られるリン酸エステル系共重合体の製造方法(第2のリン酸エステル系重合体の製造方法ともいう)に関する。
(X)下記一般式(1)で表される単量体1
(Y)下記一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物
Figure 2007186635
〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は-COO(AO)nX、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、nはAOの平均付加モル数であり、3〜200の数、Xは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
Figure 2007186635
〔式中、R10は水素原子又はメチル基、R11は炭素数2〜12のアルキレン基、m4は1〜30の数を表す。〕
また、本発明は、上記本発明の製造方法により得られるリン酸エステル系重合体、及び上記重合体を含有する水硬性組成物用分散剤に関する。更に、本発明は、水硬性粉体、水及び上記本発明の水硬性組成物用分散剤を含有する水硬性組成物に関する。
本発明によれば、ジエステル体の多いリン酸エステルを含む単量体を用いた場合でも、架橋による高分子量化や性能低下を抑制できる水硬性組成物用の分散剤として好適なリン酸エステル系重合体の製造方法が提供される。しかも、本発明の製造方法では、水硬性組成物用分散剤としての特性を損なうこともない。本発明の製造方法により得られたリン酸エステル系重合体を含有する分散剤は、水硬性粉体を含む水硬性組成物に対して、優れた分散効果、粘性低減効果を付与でき、性能が良好である。
本発明のリン酸エステル系重合体は、低水量で水硬性粉体の多い高耐久高強度系の水硬性組成物であっても、従来のポリカルボン酸系減水剤と同等以上の流動性及び/又は低粘性を発現する。その結果、優れたポンプ圧送、打ち込み、型枠への充填等の作業性、施工性を付与できる。
《第1のリン酸エステル系重合体の製造方法》
本発明は、単量体1と、単量体2と、単量体3とを、pH7以下で共重合するリン酸エステル系重合体の製造方法に関する。本発明のリン酸エステル系重合体は、何れも、この製造方法によって製造することができる。また、単量体2及び単量体3を含有する混合単量体を用いることも好ましい。
本発明者等は、本発明の課題の一つである水硬性組成物の粘性低減に、特定のリン酸エステル由来の重合体が有用であることを見出した。更に、かかる重合体を工業化に適した製造方法を見出した。
以下、単量体1〜3を用いたリン酸エステル系重合体の製造方法について説明する。
工業的には、通常、リン酸エステル単量体は、モノエステル体(単量体2)とジエステル体(単量体3)を含む混合物として入手される。このうち、ジエステル体は架橋により高分子量化(ゲル化)しやすいため、その性質を利用した分野、例えば増粘剤、接着剤、被覆剤等の用途では、このような混合物を製造上の制限をあまり受けることなく好適に使用できる。一方、水硬性組成物用の混和剤(分散剤、減水剤等)では、リン酸基を含む共重合体は水硬性物質に対する吸着力に優れるため好ましいが、高分子量化すると分散性や粘性低減化効果が低下し、取り扱い性の点でも好ましくない。しかしながら、水硬性組成物の用途や経済的な性質からして、かかるリン酸エステルの混合物からモノエステル体とジエステル体とを分離して原料とすることは工業的に不利である。本発明の製造方法では上記単量体1と、リン酸エステル単量体である単量体2と単量体3とをpH7以下で共重合する。この製造方法により、ジエステル体を含む原料を用いても架橋(高分子量化、ゲル化)の発生なく重合体を再現性良く安定に製造でき、しかもリン酸エステル系重合体の水硬性組成物用分散剤としての優れた性能を維持できるため、この製造方法は水硬性組成物の分野では極めて有利である。
本発明に係るリン酸エステル系重合体は、前記一般式(1)で表されるオキシアルキレン基を有する単量体1と、リン酸基を有する前記一般式(2)、(3)で表される単量体2、3とを共重合して得られる重合物である。
本発明に用いられる単量体1〜3の好ましいものはそれぞれ以下の通りであり、また市販品や反応生成物を使用することもできる。
[単量体1]
単量体1について、一般式(1)中のR3は水素原子が好ましく、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、EO基)を含むことがより好ましく、EO基が70モル%以上、更に80モル%以上、更に90モル%以上、特に全AOがEO基であることが好ましい。また、Xは水素原子又は炭素数1〜18、更に1〜12、更に1〜4、更に1、2のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
単量体1としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アリルアルコールとのエーテル化物、及び(メタ)アリルアルコールへの炭素数2〜4のアルキレンオキシド付加物付加物が好ましく用いられる。具体的には、ポリオキシエチレンアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル等を挙げることができる。ここで、(1)式中のnは、重合体の水硬性組成物に対する分散性と粘性付与効果の点で、3〜200であり、好ましくは4〜120である。また、平均n個の繰り返し単位中にAOが異なるもので、ランダム付加又はブロック付加又はこれらの混在を含むものであっても良い。AOは、EO基以外にもプロピレンオキシ基等を含むこともできる。
[単量体2]
単量体2としては、有機ヒドロキシ化合物のリン酸モノエステルが挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等が挙げられる。例えば、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル等が挙げられる。中でも、単量体1との反応(重合)性の観点から、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステルが好ましい。
[単量体3]
単量体3としては、有機ヒドロキシ化合物のリン酸ジエステルが挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートアシッドリン酸ジエステル等が挙げられる。例えば、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル等が挙げられる。中でも、単量体1との反応(重合)性の観点から、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステルが好ましい。
単量体2、3の何れも、塩であってもよく、これらの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などであっても良い。
単量体2のm1及び単量体3のm2、m3は、それぞれ1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましい。
また、本発明の製造方法では、単量体2及び単量体3を含む混合単量体を用いることができる。
このような単量体2及び単量体3を含む混合単量体としては、モノエステル体とジエステル体とを含む市販品を使用することができ、例えば、ホスマーM、ホスマーPE、ホスマーP(ユニケミカル)、JAMP514、JAMP514P、JMP100(何れも城北化学)、ライトエステルP−1M、ライトアクリレートP−1A(いずれも共栄社化学)、MR200(大八化学)、カヤマー(日本化薬)、Ethyleneglycol methacrylate phosphate(アルドリッチ試薬)などとして入手できる。
また、単量体2、単量体3を含む混合単量体は、例えば、一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物と無水リン酸(P25)及び水を所定の仕込み比で反応させることで、反応生成物として製造することもできる。
Figure 2007186635
〔式中、R10は水素原子又はメチル基、R11は炭素数2〜12のアルキレン基、m4は1〜30の数を表す。〕
すなわち、前記一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させて得られるリン酸エステルを用いることができる。
一般式(4)中のm4は、1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましい。
このリン酸エステルは、一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物をリン酸化剤でリン酸化することで得られる。
リン酸化剤としては、オルトリン酸、五酸化リン(無水リン酸)、ポリリン酸、オキシ塩化リン等が挙げられ、オルトリン酸、五酸化リンが好ましい。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いることも出来る。また、後記のリン酸化剤〔以下、リン酸化剤(Z’)という〕も好ましい。本発明において、有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させる際のリン酸化剤の量は目的とするリン酸エステル組成に応じ適時決めることができる。
リン酸エステルは、有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを、下記式(I)で定義された比率が2.0〜4.0、更に2.5〜3.5、特に2.8〜3.2の条件下に反応させることで得られたものが好ましい。
Figure 2007186635
本発明では、式(I)においては、リン酸化剤を便宜的にP25・n(H2O)として扱うものとする。
特に、リン酸化剤は、五酸化リン(Z−1)並びに水、リン酸及びポリリン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種(Z−2)を含むリン酸化剤(Z)が好ましく、この場合も、式(I)においては、五酸化リン(Z−1)と、水、リン酸及びポリリン酸からなる群から選ばれた少なくとも一種(Z−2)とを含むリン酸化剤(Z’)を、便宜的にP25・n(H2O)として扱うものとする。
また、式(I)で定義されたリン酸化剤のモル数とは、原料として反応系に導入されるリン酸化剤、特にリン酸化剤(Z’)に由来するP25単位の量(モル)を示す。また、水のモル数とは、原料として、反応系に導入されるリン酸化剤(Z’)に由来する水(H2O)の量(モル)を示す。即ち、水には、ポリリン酸を(P25・xH2O)と、オルトリン酸を〔1/2(P25・3H2O)〕として表した場合の水を含めた反応系内に存在する全ての水が含まれることになる。
また、有機ヒドロキシ化合物にリン酸化剤を添加する際の温度は20〜100℃が好ましく、40〜90℃がさらに好ましい。また、反応系へのリン酸化剤の添加に要する時間(添加開始から添加終了までの時間)は0.1時間〜20時間が好ましく、0.5時間〜10時間がさらに好ましい。
リン酸化剤投入後の反応系の温度は20〜100℃が好ましく、40〜90℃がさらに好ましい。なお、共重合は、前述のリン酸エステル系重合体の製造方法に基づき行うことができる。
リン酸化反応終了後は、生成したリン酸の縮合物(ピロリン酸結合を有する有機化合物やリン酸)を加水分解により低減しても良く、又加水分解を行わなくても、本発明のリン酸エステル系重合体製造用のモノマーとしては好適である。
単量体2、3は、不飽和結合とヒドロキシル基を有する単量体のリン酸エステル化物であり、上記の市販品や反応生成物にはモノエステル体(単量体2)とジエステル体(単量体3)以外の化合物を含んでいる事が確認されている。それらの他の化合物は、重合性、非重合性のものが混在していると考えられるが、本発明ではこのような混合物(混合単量体)をそのまま使用することができる。
混合単量体中の単量体2、3の含有量は、31P−NMRの測定結果に基づき算出することができる。
31P-NMR測定条件>
・逆ゲート付きデカップリング法(inverse-gated-decoupling method)
・測定範囲6459.9Hz
・パルス遅延時間30sec
・観測データポイント10336
・パルス幅(5.833μsec)35°パルス
・溶媒CD3OH(重メタノール)(30重量%)
・積算回数128
この条件では、得られたチャートのシグナルは以下の化合物に帰属するので、その面積比から相対的な量比を決めることが可能である。
例えば、有機ヒドロキシ化合物が「メタクリル酸2−ヒドロキシエチル」のリン酸化物の場合、以下のように帰属できる。
・1.8ppm〜2.6ppm:リン酸
・0.5ppm〜1.1ppm:単量体2(モノエステル体)
・-0.5ppm〜0.1ppm:単量体3(ジエステル体)
・-1.0ppm〜-0.6ppm:トリエステル体
・-11.1ppm〜-10.9ppm、-12.4ppm〜-12.1ppm:ピロリン酸モノエステル
・-12.0ppm〜-11.8ppm:ピロリン酸ジエステル
・-11.2ppm〜-11.1ppm:ピロリン酸
・それ以外のピーク:不明物
本発明では、混合単量体中のリン酸含量を定量して、混合単量体中の単量体2及び単量体3の比率を決める。具体的には以下のようにして算出する。
ガスクロマトグラフィーによって試料中のリン酸含量の絶対量(重量%)を求める。31P-NMRの結果から試料中のリン酸、モノ体、ジ体の相対モル比が求まるので、リン酸の絶対量を基準にして、モノ体、ジ体の絶対量を算出する。
[リン酸含量]
ガスクロマトグラフィーの条件は以下の通り。
サンプル:ジアゾメタンによりメチル化
例)0.1gの試料にジアゾメタンのジエチルエーテル溶液1〜1.5ccを加えてメチル化する
カラム:Ultra ALLOY、15m×0.25mm(内径)×0.15μmdf
キャリアガス:He、スプリット比50:1
カラム温度:40℃(5min)(保持)→10℃/min(昇温)→300℃到達後15min保持
注入口温度:300℃
検出器温度:300℃
上記条件で9分前後にリン酸由来のピークが検出され、検量線法により未知試料中のリン酸含量を算出する事が出来る。
流動性及び粘性低減性の観点からは、モノエステル体を多く含有しているリン酸エステルの混合物を用いる方が良好であるが、ジエステル体を多く含有する場合でも、単量体1との共重合モル比を制御することで、流動性や粘性低減性を調整することができる。
単量体の共重合に際しては、単量体1と、単量体2、3との仕込みモル比は、単量体1/(単量体2+単量体3)=5/95〜95/5、更に、20/80〜80/20が好ましい。また、単量体1と単量体2と単量体3のモル比は、単量体1/単量体2/単量体3=5〜95/3〜90/1〜80(ただし合計は100である)が好ましい。なお、単量体2と単量体3については、酸型の化合物に基づきモル比やモル%を算出するものとする(以下、同様)。
また、本発明では、単量体3の比率を、反応に用いる全単量体中、1〜60モル%、更に1〜30モル%とすることができる。
また、単量体2と単量体3のモル比を、単量体2/単量体3=99/1〜4/96、更に99/1〜5/95とすることができる。
このような範囲で単量体3を含有する単量体原料は、一般にゲル化が著しいと予想されるため、通常は水硬性組成物用分散剤のための重合体の製造原料としては適さないと考えられる。しかし、本発明ではpHを7以下で反応させることで、ゲル化が抑制され、水硬性組成物用分散剤として好適なリン酸エステル系重合体を再現性よく安定的に工業的に実用性のあるレベルで製造することができる。
以下、ゲル化抑制、好適分子量の調整及び水硬性組成物用分散剤の性能設計の観点から、更に好ましい製造条件を説明する。このような観点から、本発明では、共重合の際に、単量体1〜3の合計モル数に対して1モル%以上、更に3モル%以上の連鎖移動剤を使用することが好ましい。また、連鎖移動剤の使用量の上限は、単量体1〜3の合計モル数に対して好ましくは100モル%以下、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、特に好ましくは15モル%以下とすることができる。更に詳しくは、
(1)単量体1のnが3〜30の場合で、
(1−1)単量体2と単量体3の単量体1〜3中のモル比が50モル%以上の場合は、連鎖移動剤は、単量体1〜3に対して3〜100モル%を用いるのが好ましく、
(1−2)単量体2と単量体3の単量体1〜3中のモル比が50モル%未満の場合は、連鎖移動剤は、単量体1〜3に対して1〜60モル%を用いるのが好ましく、
(2)単量体1のnが30超の場合は、連鎖移動剤は、単量体1〜3に対して3〜50モル%を用いるのが好ましい。
本発明の製造方法においては、単量体2と3の反応率は60%以上、更に70%以上、更に80%以上、更に90%以上、特に95%以上を目標に行うことが好ましく、連鎖移動剤の使用量は、この観点から選定することができる。ここに、単量体2と3の反応率は、下記の式によって算出する。
Figure 2007186635
本発明に係るリン酸エステル系重合体の製造においては、上記単量体1〜3の他に、共重合可能なその他の単量体を用いることもできる。共重合可能な他の単量体としては、不飽和基を有するスルホン酸又はカルボン酸及びこれらの塩が挙げられる。例えば、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、これら何れかのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩を挙げることができる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのアクリル酸系単量体を挙げることができ、またこれらの何れか1種以上のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、メチルエステル、エチルエステルや無水マレイン酸などの無水化合物であっても良い。更に、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メタスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−エタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、スチレン、スチレンスルホン酸などが挙げられる。全単量体中、単量体1〜3の合計の割合は、30〜100モル%、更に50〜100モル%、特に75〜100モル%が好ましく、更に、本発明のリン酸エステル系重合体に載した分散剤としての性能を達成する観点からは、95モル%超〜100モル%記、更に97〜100モル%である。
反応系の単量体1、2、3及び共重合可能なその他の単量体の総量は、反応系中5〜80重量%が好ましく、10〜65重量%がより好ましく、20〜50重量%が特に好ましい。
本発明の製造方法において、単量体1〜3の反応温度は、40〜100℃、更に60〜90℃が好ましく、反応圧力はゲージ圧で101.3〜111.5kPa(1〜1.1atm)、更に101.3〜106.4kPa(1〜1.05atm)が好ましい。
本発明では、キレート剤を用いることが好ましく、少量でもキレート能が高く重合反応系中の遷移金属イオンを捕捉できる観点から、ホスホン酸系キレート剤が好ましい。
本発明の製造方法では、適当な溶媒により調製した単量体2及び/又は単量体3を含有する単量体溶液を、好ましくは所定量の連鎖移動剤の存在下で、単量体1を含む他の単量体とをpH7以下で共重合させる。また、共重合可能な他の単量体や重合開始剤等を用いても良い。
本発明では、単量体1、単量体2、単量体3を、単量体溶液の均一性、ゲル化防止、性能低下の抑制の観点から、pH7以下で反応させる。本発明では、反応途中(反応開始時〜反応終了時)で採取した反応液の20℃でのpHを、反応中のpHとする。通常は、反応中のpHが7以下となることが明らかな条件(単量体比率、溶媒、その他の成分等)で反応を開始すればよい。
なお、反応系が非水系の場合は、pH測定可能な量の水を反応系に加えて測定することができる。
本発明の対象とする単量体1〜3では、以下の(1)、(2)に例示した条件で反応を行えば、その他の条件の考慮の下で、通常は、反応中のpHも7以下になると考えられる。また、ゲルが生成しない等、反応全体に影響を及ぼさない範囲であれば、反応初期に一時的にpHが7を超える場合があってもよい。
(1)単量体1〜3を全て含むpH7以下の単量体溶液を、単量体1〜3の共重合反応に用いる。
(2)単量体1〜3の共重合反応をpH7以下で開始する。すなわち、単量体1〜3を含む反応系を、pH7以下にした後、反応を開始する。
具体的には、
(i)単量体1〜3を含む単量体溶液のpHを7以下に調整して共重合反応を開始する。
(ii)単量体1〜3を含む単量体溶液(pHは任意であるが7以下が好ましい。)を、反応系に滴下する。
(iii)単量体1を含む単量体溶液(pHは任意であるが7以下が好ましい。)と、単量体2を含む単量体溶液(pHは任意であるが7以下が好ましい。)と、単量体3を含む単量体溶液(pHは任意であるが7以下が好ましい。)を、別々に反応系に滴下する。
(iv)上記を適宜組み合わせて重合溶媒中で反応を行う。例えば、単量体1〜3を含む単量体溶液(pHは任意であるが7以下が好ましい。)の一部を反応系に仕込んでおき、残りの単量体溶液を反応系に滴下する。
上記、(iii)及び(iv)では、設定した単量体モル比から逸脱せぬよう、滴下する単量体溶液の滴下条件を制御することが好ましい。また、上記(ii)〜(iv)では、滴下した単量体1〜3を含む反応系のpHが7以下、好ましくは4以下となるよう、その他の反応条件を考慮する。
なお、反応系のpHは、必要に応じて、無機酸(リン酸、塩酸、硝酸、硫酸等)や、NaOH、KOH、トリエタノールアミンなどを用いて調整できる。
上記のように、本発明では、反応中の反応系のpHを7以下にするために、反応に用いる単量体溶液のうち、単量体2、単量体3の少なくとも一方を含む単量体溶液のpHが7以下であることが好ましい。当該pH7以下の単量体溶液は、単量体2、単量体3の少なくとも一方を含むものであり、単量体1を含むもの、更には連鎖移動剤、その他の単量体を含むものであってもよい。ここで、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液は、pH測定上、含水系(すなわち、溶媒が水を含むこと)である事が好ましいが、非水系の場合には必要量の水を加えて測定しても良い。単量体溶液の均一性、ゲル化防止、性能低下の抑制の観点で、pHは7以下であり、0.1〜6が好ましく、更に0.2〜4.5が好ましい。また、単量体1もpH7以下の単量体溶液として用いることが好ましい。このpHは、20℃のものである。
最終的に単量体が仕込まれた反応前の反応系(重合系)のpHは、重合体の分子量を制御する際の安定性、反応時のpH制御の容易性の観点から、20℃で6以下である事が好ましく、より好ましくは5以下、更に好ましくは4以下、特に好ましくは2以下となる事である。好ましくは、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液のpH(反応開始時の反応系のpH)、反応途中の反応系のpH、反応終了時の反応系のpHが何れも7以下であることである。
なお、これら単量体1〜3を含水状態で用いない(つまり液体成分としてそのまま滴下する)場合は、必然的に重合系のpHは7以下となるので、このような方法も好適である。中和前の最終重合系のpHは6以下、更に5以下、更に4以下、特に2以下となる事が好ましい。
[連鎖移動剤]
連鎖移動剤は、ラジカル重合における連鎖移動反応(成長しつつある重合体ラジカルが他の分子と反応してラジカル活性点の移動が起こる反応)をもたらす機能を有し、連鎖単体の移動を目的として添加される物質である。
連鎖移動剤は、ゲル化抑制、及び好適分子量の調整の観点から、単量体1〜3の合計モル数に対して1モル%以上、更に3モル%以上使用することが好ましい。
連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、特に一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’または−SO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1〜3を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素などが挙げられる。
その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
[重合開始剤]
本発明の製造方法では、重合の開始、反応率の向上、重合時間の短縮等の重合効率の観点から、重合開始剤を使用することが好ましく、特に、単量体1〜3の合計モル数に対して重合開始剤を3モル%以上、更に5〜50モル%、特に7〜30モル%使用することが好ましい。
水系の重合開始剤としては、過硫酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等の水溶性アゾ化合物が使用される。また、重合開始剤と併用して、亜硫酸水素ナトリウム、アミン化合物などの促進剤を使用することもできる。
[溶媒]
本発明の第1の製造方法は、溶液重合法で実施することができる。その際に使用される溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールアセトン、メチルエチルケトン等の水溶性有機溶媒が挙げられる。取り扱いと反応設備から考慮すると、水が好ましい。特に水系溶液を用いる場合、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液をpH7以下、更に0.1〜6、特に0.2〜4で反応に用いて共重合反応を行うことが、モノマー混液の均一性(取り扱い性)、モノマー反応率の観点や、リン酸系化合物のピロ体の加水分解により架橋を抑制する点で好ましい。本発明の製造方法において、重合溶媒は、単量体総重量に対して、0.1〜5重量倍、特に0.5〜4重量倍の比率で用いることが好ましい。
なお、水系溶液とは、水もしくは水を50重量%以上含有する溶液であり、水と均一に混合し得るメタノール、イソプロパノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が混合されていても良い。
本発明では、共重合反応物を過酸化水素で後処理する工程を有することが好ましい。上記の通り、特に、水溶性チオール化合物のような連鎖移動剤を用いる場合、該化合物を失活させるために好ましい。過酸化水素の使用量は、共重合反応物(重合反応系に近似)に対して50〜3000mg/kg、更に100〜1800mg/kgであることが好ましい。
本発明の第1の製造方法の一例を示す。反応容器に所定量の水を仕込み、窒素等の不活性気体で雰囲気を置換し昇温する。予め単量体1、単量体2、単量体3、連鎖移動剤を水に混合溶解したものと、重合開始剤を水に溶解したものとを用意し、0.5〜5時間かけて反応容器に滴下する。その際、各単量体、連鎖移動剤及び重合開始剤を別々に滴下してもよく、また、単量体の混合溶液を予め反応容器に仕込み、重合開始剤のみを滴下することも可能である。すなわち、連鎖移動剤、重合開始剤、その他の添加剤は、単量体溶液とは別に添加剤溶液として添加しても良いし、単量体溶液に配合して添加してもよいが、重合の安定性の観点からは、単量体溶液とは別に添加剤溶液として反応系に供給することが好ましい。何れの場合も、単量体2及び/又は単量体3を含有する溶液はpH7以下が好ましい。また、酸等により、pHを7以下に維持して共重合反応を行い、好ましくは所定時間の熟成を行う。なお、重合開始剤は、全量を単量体と同時に滴下しても良いし、分割して添加しても良いが、分割して添加することが未反応単量体の低減の点では好ましい。例えば、最終的に使用する重合開始剤の全量中、1/2〜2/3の重合開始剤を単量体と同時に添加し、単量体滴下終了後1〜2時間熟成した後、残部を添加することが好ましい。必要に応じ、熟成終了後に更にアルカリ剤(水酸化ナトリウム等)で中和し、また、過酸化水素による後処理を行い、本発明に係るリン酸エステル系重合体を得る。本発明の製造方法は、上記リン酸エステル系重合体を含有する水硬性組成物用分散剤の製造方法として好適である。
《第2のリン酸エステル系重合体の製造方法》
水硬性組成物用分散剤の機能である流動性及び低粘性の観点からすると、単量体1と単量体2からなる重合体は好ましいものであるが、工業的には、通常、単量体2と単量体3を含む混合物として入手されるのが現状である。本発明の第1の製造方法によれば、このような混合物から分散剤として好適なリン酸エステル系重合体を得ることができる。
一方、本発明の第2の製造方法によれば、大部分が単量体1と単量体2からなり、単量体3の比率が非常に少ない共重合体を提供することができる。具体的には、以下の(X)と(Y)とを共重合した後に、リン酸化剤(Z)とを反応させてリン酸エステル系共重合体を得ることができる。第2の製造方法では、共重合時には重合体を高分子量化に導く2官能性の単量体が存在しないので、得られる共重合体の分子量の制御が容易になる。また、得られた共重合体のリン酸化ではリン酸ジエステルが生じにくいため、結果として単量体3由来の構造に相当する構成単位の組成比の少ないリン酸エステル系重合体が得られる。
(X)下記一般式(1)で表される単量体1
(Y)下記一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物(以下、単量体4という)
Figure 2007186635
〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は-COO(AO)nX、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、nはAOの平均付加モル数であり、3〜200の数、Xは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
Figure 2007186635
〔式中、R10は水素原子又はメチル基、R11は炭素数2〜12のアルキレン基、m4は1〜30の数を表す。〕
(X)と(Y)との共重合はpH7以下で行うことが好ましい。
リン酸化剤(Z)としては、ヒドロキシル基をリン酸化できるものであれば特に指定は無いが、オルトリン酸、五酸化リン(無水リン酸)、ポリリン酸、オキシ塩化リン等が挙げられる。
単量体の共重合に際しては、単量体1と、単量体4との仕込みモル比は、単量体1/単量体4=5/95〜95/5、更に、10/90〜90/10が好ましい。
以下、好適分子量の調整及び水硬性組成物用分散剤の性能設計の観点から、第2の製造方法における更に好ましい製造条件を説明する。
第2の製造方法では、重合開始剤を単量体1及び単量体4の合計モル数に対して15モル%以上が好ましく、更に50〜100モル%使用することが好ましい。重合開始剤量が単量体1及び単量体4の合計モル数に対して15モル%以上用いると、未反応の単量体1および単量体4が少なくなり、水硬性組成物用分散剤としての性能が向上する。
重合開始剤としては、過硫酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等が挙げられる。
また、重合開始剤と併用して、亜硫酸水素ナトリウム、アミン化合物などの促進剤を使用することもできる。また、分子量制御等の目的に応じて、連鎖移動剤を添加することもできる。連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられる。
その他、重合装置や溶媒等は第1のリン酸エステル系重合体の製造で挙げたものが使用できる。
本発明の第2の製造方法において、単量体1と単量体4の重合温度は60℃以上が好ましく、80〜120℃が更に好ましい。
得られた共重合体のリン酸化において、重合体中のヒドロキシル基をリン酸化できるものであれば特に指定はないが、オルトリン酸、五酸化リン(無水リン酸)、ポリリン酸、オキシ塩化リン等が挙げられ、中でもポリリン酸が好ましい。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いることも出来る。また、第1の製造方法で示したリン酸化剤(Z’)も好ましい。
リン酸化剤(Z)の量は目的とする共重合体組成に応じ適宜決めることができ、仕込みモノマー(単量体4)のヒドロキシル基に対し、1.0当量以上用いることが好ましい。より好ましくは2.0当量以上、更に好ましくは4.0当量以上である。リン酸化剤量が1.0当量以上用いた場合には、共重合体中のヒドロキシル基のリン酸化率が向上し、水硬性組成物用分散剤としての性能が向上する。
本発明の第1又は第2のリン酸エステル系重合体の製造においては、上記単量体1〜3又は、単量体1と4の他に、共重合可能なその他の単量体を用いることもできる。共重合可能な他の単量体としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、これら何れかのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩を挙げることができる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのアクリル酸系単量体を挙げることができ、またこれらの何れか1種以上のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、メチルエステル、エチルエステルや無水マレイン酸などの無水化合物であっても良い。更に、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メタスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−エタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、スチレン、スチレンスルホン酸などが挙げられる。全単量体中、単量体1及び2の合計の割合は、30〜100モル%、更に50〜100モル%、特に75〜100モル%が好ましく、更に、水硬性組成物用分散剤としての性能を達成する観点からは、95モル%超〜100モル%、更に97〜100モル%、特に100モル%とすることである。
本発明の第1又は第2のリン酸エステル系重合体の製造方法により、一般式(1)に由来する構成単位と、一般式(2)に由来する構成単位と、一般式(3)に由来する構成単位とを含むリン酸エステル系重合体が得られる。
本発明のリン酸エステル系重合体は、重量平均分子量(以下Mwと表記する)が10,000〜150,000であることが好ましい。分散効果の発現や粘性低減効果の観点から、Mwが10,000以上であり、好ましくは12,000以上、さらに好ましくは13,000以上、より好ましくは14,000以上、特に好ましくは15,000以上で、架橋による高分子量化、ゲル化の抑制や性能面では分散効果や粘性低減効果の観点から、150,000以下であり、好ましくは130,000以下、さらに好ましくは120,000以下、より好ましくは110,000以下、特に好ましくは100,000以下であり、前記両者の観点から、好ましくは12,000〜130,000、より好ましくは13,000〜120,000、さらに好ましくは14,000〜110,000、特に好ましくは15,000〜100,000である。この範囲のMwを有し、かつ、Mwと数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1.0〜2.6であることが好ましい。ここに、Mw/Mnの値は分散度であり、1に近いほど分子量分布が単分散に近づき、1から離れる(大きくなる)ほど分子量分布が広くなることを意味する。
上記のようなMw/Mn値を持つ本発明のリン酸エステル系重合体は、ジエステル構造に基づく分岐構造を有する重合体でありながら、分子量分布が非常に狭いという大きな特徴がある。このような本発明のリン酸エステル系重合体は後述する本発明の製造方法により好適に製造できる。
上記のような本発明のリン酸エステル系重合体のMw/Mnは、実用的な製造容易性、分散性、粘性低減効果、及び材料、温度に対する汎用性を確保する観点から、1.0以上が好ましく、分散性及び粘性低減効を両立する観点から、2.6以下が好ましく、さらに好ましくは2.4以下、より好ましくは2.2以下、さらに好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.8以下であり、前記2点を総合した観点から、好ましくは1.0〜2.4、より好ましくは1.0〜2.2、より好ましくは1.0〜2.0、特に好ましくは1.0〜1.8である。
本発明のリン酸エステル系重合体のMw及びMnは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたものである。なお、本発明におけるリン酸エステル系重合体のMw/Mnは、該重合体のピークに基づいて算出されたものとする。
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
上記のようなMw/Mnを満たすリン酸エステル系重合体は、ジエステル体である単量体3による架橋を抑制することにより適度な分岐構造となり、分子内に密に吸着基が存在する構造を形成するものと考えられる。また分散度Mw/Mnを所定範囲に抑制することで同一サイズの分子が単分散した系に近づくため、吸着対象物質(例えばセメント粒子)に対する吸着量も多くすることが可能と考えられる。この両者を満足することで、セメント粒子等の吸着対象物質に密にパッキングすることが可能となり、分散性と粘性低減効果の両立に有効であると推定している。
また、上記条件でのGPC法で得られる分子量分布を示すチャートのパターンにおいて、分子量10万以上の面積が当該チャート全体の面積の5%以下であることが、分散性(必要添加量低減)や粘性低減効果の点でより好ましい。
《水硬性組成物用分散剤》
本発明のリン酸エステル系重合体は、水硬性組成物用分散剤として、各種セメントを始めとし、水和反応によって硬化性を示すあらゆる無機系の水硬性粉体に使用することができる。本発明の重合体を含有する水硬性組成物用分散剤は粉末状でも液体状でもよい。液体状の場合は、作業性、環境負荷低減の観点から、水を溶媒ないし分散媒とするもの(水溶液等)が好ましい。本発明の分散剤中、本発明の重合体の含有量は、固形分中、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは15〜100重量%、更に好ましくは20〜100重量%である。また、液体状の場合、固形分濃度は、製造容易性、作業性の観点から、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは20〜35重量%である。また、本発明の分散剤は、水硬性粉体100重量部に対し、重合体の固形分濃度で0.02〜1重量部、0.04〜0.4重量部の比率で用いられることが、分散効果の点で好ましい。
セメントとして、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。セメント以外の水硬性粉体として、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてよい。セメントと混合されたシリカヒュームセメントや高炉セメントを用いてもよい。
本発明の水硬性組成物用分散剤は、その他の添加剤(材)を含有することもできる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸系、デキストリン、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖系、糖アルコール系等の遅延剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;AE減水剤;塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、蟻酸(塩)、アルカノールアミン等の早強剤又は促進剤;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;高炉スラグ;流動化剤;ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等の消泡剤;防泡剤;フライアッシュ;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系、アミノスルホン酸系、ポリマレイン酸系を含むポリカルボン酸系等の高性能減水剤;シリカヒューム;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、β−1,3−グルカン、キサンタンガム等の天然物系、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、オレイルアルコールのエチレンオキシド付加物もしくはこれとビニルシクロヘキセンジエポキシドとの反応物等の合成系等の水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。
また、本発明の水硬性組成物用分散剤は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、地盤改良用、グラウト用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
《水硬性組成物》
本発明の水硬性組成物は、上記水硬性組成物用分散剤と水硬性粉体と水とを含有するものである。本発明の水硬性組成物は従来にない低い粘性を有し、ポンプ圧送、打ち込み、型枠への充填といった作業性や、施工性に優れるものである。
本発明の水硬性組成物は、低粘性効果が発揮される点で、水/水硬性粉体比〔水硬性組成物中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、以下、W/Pと表記する。〕が、65%以下、更に10〜60%、より更に12〜57%、特に15〜55%、更に20〜55%であることが好ましい。
また、本発明の水硬性組成物は、水及び水硬性粉体(セメント)を含有する、ペースト、モルタル、コンクリート等であるが、骨材を含有してもよい。骨材として細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。
本発明の水硬性組成物は、ビル等の建造物やコンクリート2次製品、土木工事用途等に用いることが出来る。
<実施例1−1〜1−3、及び比較例1−1>
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水70.9gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数32.5:日本乳化剤(株)製AG−325M)130gとリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル(以下、ヒドロキシエチルアクリレートモノリン酸エステルともいう)とリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル(以下、ヒドロキシエチルアクリレートジリン酸エステルともいう)の混合物(Ethyleneglycol acrylate phosphate:ライトアクリレートP1A)43.4gと3−メルカプトプロピオン酸0.26(または0.79g)とを水130gに混合溶解したものに20%水酸化ナトリウム水溶液を所定量加え、pHを調整(表1)した単量体溶液と、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2.82gを水45gに溶解したものと、35%過酸化水素を2.40gを混合溶解したもの2者を、それぞれ2.0時間かけて滴下した。1時間の熟成後、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.41gを水15gに溶解したものと、35%過酸化水素を1.20gを混合溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に20%水酸化ナトリウム溶液で中和し、共重合体を得た。
<比較例1−2>
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水70.9gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数32.5:日本乳化剤(株)製AG−325M)130gとリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステルの混合物(Ethyleneglycol acrylate phosphate:ライトアクリレートP1A)43.4gと3−メルカプトプロピオン酸0.79gとを水130gに混合溶解したものに20%水酸化ナトリウム水溶液を所定量加え、pHを調整(表1)した単量体溶液と、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2.82gを水45gに溶解したものと、35%過酸化水素を2.40gを混合溶解したもの2者を、それぞれ2.0時間かけて滴下した。滴下中に反応物はゲル化した。
表1に上記実施例及び比較例をまとめた。表1中、Mwは重量平均分子量であり、EOはエチレンオキサイドであり数字は平均付加モル数であり、(以下同様)。また、仕込み原料の連鎖移動剤と重合開始剤は、単量体1〜3等の単量体成分の合計100モルに対して表中のモル比で用いた(以下同様)。
Figure 2007186635
<試験例1>
実施例1−1〜1−3、及び比較例1−1〜1−2で得られた表1の共重合体を用いて、表2の配合のモルタルに対する試験を行った。結果を表3に示す。評価は、分散性及び粘性を、以下の方法で行った。
(1)モルタル配合
Figure 2007186635
表2中の使用材料は以下のものである。
C:普通セメント(太平洋セメント株式会社製普通ポルトランドセメントと住友大阪セメント株式会社製普通ポルトランドセメントの1:1混合物)
W:イオン交換水
S:千葉県君津産山砂(3.5mm通過品)
W/C:水(W)とセメント(C)の重量百分率(重量%)(以下同様)
(2)モルタルの調製
容器(1Lステンレスビーカー:内径120mm)に、表2に示す配合の約1/2量のSを投入し、次いでCを投入、さらに残りのSを投入し、撹拌機としてEYELA製Z−2310(東京理化器械、撹拌棒:高さ50mm、内径5mm×6本/長さ110mm)を用い、200rpmで空練り25秒後、予め混合しておいた分散剤と水の混合溶液を5秒かけて投入し、投入後30秒間で壁面や撹拌棒の間の材料を掻き落し、水を投入後3分間混練し、モルタルを調製した。なお、必要に応じて消泡剤を添加し、連行空気量が2%以下となるように調整した。
(3)評価
(3−1)分散性
上部開口径が70mm、下部開口径が100mm、高さ60mmのコーンを使用し、モルタルフロー値が200mmとなるのに必要な共重合体の添加量(対セメント有効分重量%、表中は%で示す)により分散性を評価した。なお、このモルタルフロー値の200mmは、モルタルフロー値の最大値と、該最大値を与える線分の1/2の長さで直交する方向で測定したモルタルフロー値との平均値である。添加量が小さい程、分散性が強いことを現す。
(3−2)粘性
図1に示すトルク試験機に記録計を接続し、モルタルのトルクを測定する。予め、図2に示すポリエチレングリコール(Mw20,000)で作成したトルク−粘度の関係式より、モルタルのトルクから粘性を算出した。ポリエチレングリコールのトルク−粘度関係式作成時に、モニター出力60W、出力信号DC0−5Vにより、記録計からトルク出力電圧値(mV)が記録される。
Figure 2007186635
表3の結果から、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液のpHを7以下にして共重合させた実施例1−1〜1−3のリン酸エステル系重合体では、分散性がより強いことが分かる。一方、単量体2、3を含む溶液のpHを7以上にして共重合させた場合は、ゲル化するか、共重合体が得られても分散性が弱いものとなる。実施例の共重合体では、モルタル粘性も比較例より低粘性となり、バンラスの良い分散剤となる。
<実施例2−1〜2−15、比較例2−1>
(1)リン酸エステル化物の製造
反応容器中にアクリル酸2-ヒドロキシエチル200gに、5酸化2リン(無水リン酸)(P2O5)83.2gを温度が60℃を超えないように冷却しながら徐々に添加した。終了後、反応温度を80℃に設定し、6時間反応させ、冷却後、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステルを含む混合物であるリン酸エステル化物を得た。得られたリン酸エステル化物のモノ体およびジ体の合計濃度は約75%であった。なお、アクリル酸2-ヒドロキシエチルと無水リン酸(P25)の仕込み比を変更して、組成の異なるリン酸エステル化物を得た。便宜上、これらを総称してリン酸エステル化物(A)とする。これを以下のリン酸エステル系重合体の製造に用いた。
(2)リン酸エステル系重合体の製造
(2−1)実施例2−1〜2−12、2−14、2−15及び比較例2−1
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水76.3gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(EOの平均付加モル数32.5:日本乳化剤(株)製AG−325M)130gとリン酸エステル化物(A)51.1gと3−メルカプトプロピオン酸0.79gとを水130gに混合溶解したもの(pHは表4の通り)した単量体溶液と、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2.82gを水45gに溶解したものと、35%過酸化水素を2.40gを混合溶解したもの2者を、それぞれ2.0時間かけて滴下した。1時間の熟成後、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.41gを水15gに溶解したものと、35%過酸化水素を1.20gを混合溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に20%水酸化ナトリウム溶液で中和し、実施例2−1の共重合体を得た。同様の方法で実施例2−2〜2−12、2−14、2−15、および比較例2−1の共重合体を製造した。
(2−2)実施例2−13
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水70.9gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で55℃まで昇温した。ポリオキシエチレンアリルエーテル(EOの平均付加モル数10.0:日本乳化剤(株)製AG−110)131gとリン酸エステル化物(A)33.6gと3−メルカプトプロピオン酸1.17gとを水131gに混合溶解したもの(pHは表5の通り)した単量体溶液と、2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド(和光純薬工業(株):V−50 (2,2'-Azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride) 9.94gを水45gに溶解したもの2者を、それぞれ2.0時間かけて滴下した。1時間の熟成後、2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド4.97gを水15gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(55℃)で熟成した。熟成終了後に20%水酸化ナトリウム溶液で中和し、実施例2−13の共重合体を得た。
表4、5に上記実施例2−1〜2−15及び比較例2−1をまとめた。なお、反応時(20℃)のpHは反応終了時のものである。
Figure 2007186635
Figure 2007186635
<試験例2>
実施例2−1〜2−15及び比較例2−1で得られた表4、5の共重合体を用いて、実施例1と同様に分散性及び粘性を評価した。結果を表6に示す。
Figure 2007186635
表6の結果から、単量体2及び/又は単量体3を含むpH7以下の単量体溶液を用いて共重合させた実施例2−1〜2−15のリン酸エステル系重合体では、粘性低減効果に優れる分散剤となる。また、単量体1/(単量体2+単量体3)の仕込みモル比は5〜95/95〜5が分散性と粘性低減効果のバランスの良い分散剤であり、20〜80/80〜20は、更にバランスが良くなる傾向を示した。
<実施例3−1〜3−10>
冷却管、攪拌装置、滴下ロ−トを付けた300mLセパラブルフラスコにメトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(EOの平均付加モル数30モル)120g(85.9mmol)を仕込み、窒素置換を行った。110℃に昇温した後、攪拌を開始し、約10分後に35%過酸化水素水溶液10.4gと、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、ヒドロキシエチルアクリレートともいう)23.2g(20.0mmol)の滴下を開始し、3時間かけて滴下した。1時間加熱した後、35%過酸化水素水溶液10.4gを1時間かけて滴下した。1時間加熱後、放冷しポリリン酸65.75gを1時間で加え、40℃で2時間攪拌を行った。水20mLを加え、80℃で2時間加熱攪拌を行い、実施例3−1の共重合体を合成した。同様の方法で、実施例3−2〜3−6、および実施例3−8〜3−10を合成した。更に実施例3−6を一部採取し、適量の水で希釈した後、セルロースチューブ(分画分子量12000〜14000)に詰め、外液を約10Lとし約12時間おきに交換しながら透析を3日間行い、実施例3−3中に含まれる無機リン酸の除去を行った。その後、エバポレータにて濃縮し淡黄色水溶液を実施例3−7とした。
上記、実施例3−1〜3−10の結果を表7にまとめた。重合開始剤は、単量体1と単量体4の合計100モルに対して表7中のモル比で用いた。
Figure 2007186635
<試験例3>
実施例3で得られた共重合体を用いて、実施例1等と同様に分散性及び粘性を評価した。結果を表8に示す。
Figure 2007186635
表8の結果から、第2の製造方法により得られたリン酸エステル系重合体の分散剤としての性能が得られ、粘性低減効果に優れることがわかった。また、分散性能と粘性低減効果を得るためには、重合開始剤が15モル以上、重合時の温度は60℃以上、更にリン酸化剤の量は反応系での水酸基に対して1.0当量以上が好適である事がわかる。
<試験例4>
前記の実施例の共重合体の一部(表10の通り)を用いて、以下のコンクリート試験を行った。結果を表10に示す。なお、表10中のサンプル番号は前記実施例の番号を示す。
[コンクリート試験]
(1)コンクリート配合
コンクリート配合は表9に示す通りである。
Figure 2007186635
表9中の使用材料は以下のものである。
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製普通ポルトランドセメントと住友大阪セメント株式会社製普通ポルトランドセメントの1:1混合物)
W:イオン交換水
S:細骨材、千葉県君津産山砂
G:粗骨材、高知県鳥形山産石灰砕石
(2)コンクリートの調製
使用ミキサーとして、IHI社製強制二軸ミキサーを用い、コンクリート容量30リットル、撹拌時間空練り10秒、混練水投入後90秒で、コンクリートを調製した。その際、スランプフロー値は35.0〜42.0cmとなるように共重合体の添加量を調整した。なおこのスランプフロー値は、スランプフロー値の最大値と、該最大値を与える線分の1/2の長さで直交する方向で測定したスランプフロー値との平均値である。このスランプフローとなるのに必要な共重合体の添加量を表10に示した。なお、コンクリートのスランプフロー試験は、JIS A 1150(粗骨材(G)の最大寸法20mm、コンクリート温度20〜22℃、試料の詰め方:3層に分けて詰め、各層25回突き棒で一様に突いた)に準じた。また、その共重合体添加量におけるコンクリートについて、スランプ試験(JIS A 1101)を行った。また、コンクリート空気量(JIS A 1128)は、消泡剤やAE剤を添加し、連行空気量が3.5〜5.5体積%となるように調整した。
(3)コンクリート評価
コンクリートの圧縮強度試験方法(JIS A 1108、水中養生、7日強度)を行った。結果を表10に示す。
Figure 2007186635
試験例で粘性の測定に用いたトルク試験機と記録計の概略図 試験例で粘性の算出に用いたポリエチレングリコール(Mw20,000)によるトルク−粘度の関係式

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表される単量体1と、下記一般式(2)で表される単量体2と、下記一般式(3)で表される単量体3とを、pH7以下で共重合するリン酸エステル系重合体の製造方法。
    Figure 2007186635

    〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は−CH2O(AO)nX、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、nはAOの平均付加モル数であり、3〜200の数、Xは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
    Figure 2007186635

    〔式中、R4は水素原子又はメチル基、R5は炭素数2〜12のアルキレン基、m1は1〜30の数、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
    Figure 2007186635

    〔式中、R6、R8は、それぞれ水素原子又はメチル基、R7、R9は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基、m2、m3は、それぞれ1〜30の数、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
  2. 単量体2及び単量体3が、下記一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させて得られたものである請求項1記載のリン酸エステル系重合体の製造方法。
    Figure 2007186635

    〔式中、R10は水素原子又はメチル基、R11は炭素数2〜12のアルキレン基、m4は1〜30の数を表す。〕
  3. 前記単量体1〜3を、連鎖移動剤の存在下で共重合する請求項1又は2記載のリン酸エステル系重合体の製造方法。
  4. 以下の(X)と(Y)とを共重合した後にリン酸化剤(Z)を反応させるリン酸エステル系共重合体の製造方法。
    (X)下記一般式(1)で表される単量体1
    (Y)下記一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物
    Figure 2007186635

    〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は-COO(AO)nX、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、nはAOの平均付加モル数であり、3〜200の数、Xは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
    Figure 2007186635

    〔式中、R10は水素原子又はメチル基、R11は炭素数2〜12のアルキレン基、m4は1〜30の数を表す。〕
  5. 請求項1〜4いずれか記載の製造方法により得られ、重量平均分子量が10,000〜150,000であるリン酸エステル系重合体。
  6. 請求項5記載のリン酸エステル系重合体を含有する水硬性組成物用分散剤。
  7. 水硬性粉体、水及び請求項6記載の水硬性組成物用分散剤を含有する水硬性組成物。
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