JP4932259B2 - 鉄筋コンクリート構造物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、防錆剤に関する。
防錆剤は、用途により水系の溶液ないし分散液等の液状形態であることが好ましい場合がある。例えば特許文献1には空調機やラジエター等の用途で、フェノールスルホン酸の構造を有する特定の化合物の存在下に重合した共重合体を有効成分とする防錆剤が開示されている。また、特許文献2には水を分散媒とする、フェニル基を含む特定のリン酸エステルの二価金属塩を含有する金属表面に塗布する防錆剤が開示されている。
また、コンクリート分野では、コンクリートと接触する鉄筋等の腐食を防止することが重要である。コンクリートでは、水、セメント、骨材など使用される様々な材料から塩化物イオンが混入され、鉄筋等の腐食が発生する危険にさらされている。また、海洋からの海水の飛翔などによって塩素イオンがコンクリート躯体に浸透したり、大気中のSOX、NOX等の酸性ガスや炭酸ガスによって中性化が進み、鉄筋が腐食したりする場合もある。そして、従来、普通ポルトランドセメント中の塩化物イオンの規格値が「0.02%以下」と定められていた(JIS R 5210)ものが、「0.035%以下」と引き上げられたことも、コンクリートと接触する鉄筋等の腐食防止においてはマイナス要因となり得る。
このような鉄筋腐食を抑制するために、亜硝酸塩などの防錆剤が知られている。しかしながら、一般に防錆剤は十分な防錆効果を発現させるためには多量に添加する必要があり、また亜硝酸塩はセメントの凝結を早めるため、亜硝酸塩添加後のコンクリートは急速に凝集し、可使時間の確保が困難となる。そのため、遅延剤を併用し可使時間を改善する技術が提案されているが、遅延剤の配合量が増加すると短時間強度の発現が遅れるといった問題が生じ易く、配合や施工環境に応じた調製が必要となるため煩雑となり、実用に向けての課題も多い。
一方、特許文献3には硬化遅延の無いタングステン酸またはモリブデン酸とクエン酸との錯塩からなるコンクリート構造物中の鋼材の防錆剤が開示されている。
特開平5−98477号公報 特開平6−346257号公報 特開2002−12458号公報
しかしながら、特許文献1〜3の防錆剤でも、いまだ防錆効果は十分ではなく、特に、モルタルやコンクリート等の水硬性組成物に使用した際に、鉄筋等の防錆効果に優れ、且つ流動性(流動保持性も含む)を損なわずに、所定の作業性を確保できる防錆剤が要望されている。
本発明は、下記一般式(1)で表される単量体1(以下、単量体1という)と、下記一般式(2)で表される単量体2(以下、単量体2という)と、下記一般式(3)で表される単量体3(以下、単量体3という)とを、pH7以下で共重合して得られるリン酸エステル系重合体を含有する防錆剤に関する。
Figure 0004932259
〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は-COO(AO)nX、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、nはAOの平均付加モル数であり、3〜200の数、Xは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
Figure 0004932259
〔式中、R4は水素原子又はメチル基、R5は炭素数2〜12のアルキレン基、m1は1〜30の数、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
Figure 0004932259
〔式中、R6、R8は、それぞれ水素原子又はメチル基、R7、R9は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基、m2、m3は、それぞれ1〜30の数、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
また、本発明は、上記本発明の防錆剤と、水硬性粉体と、水とを含有する水硬性組成物、更に、該水硬性組成物を用いた鉄筋コンクリート構造物の製造方法に関する。
本発明によれば、防錆効果に優れ、特に、モルタルやコンクリート等の水硬性組成物に使用した際に、鉄筋等の防錆効果に優れ、且つ流動性(流動保持性も含む)を損なわずに、所定の作業性を確保できる防錆剤が提供される。
《リン酸エステル系重合体》
本発明に係るリン酸エステル系重合体は、前記一般式(1)で表されるオキシアルキレン基を有する単量体1と、リン酸基を有する前記一般式(2)、(3)で表される単量体2、3とを共重合して得られる重合物である。
本発明に用いられる単量体1〜3の好ましいものはそれぞれ以下の通りであり、また市販品や反応生成物を使用することもできる。
[単量体1]
単量体1について、一般式(1)中のR3は水素原子が好ましく、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、EO基)を含むことがより好ましく、EO基が全AO中70モル%以上、更に80モル%以上、更に90モル%以上、特に全AOがEO基であることが好ましい。また、Xは水素原子又は炭素数1〜18、更に1〜12、更に1〜4、更に1、2のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。具体的には、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステル、ω−メトキシポリオキシアルキレンアクリル酸エステル等を挙げることができ、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステルがより好ましい。ここで、(1)式中のnは、平均付加モル数である。強電解質系での溶解度の点で、nは3〜200であり、好ましくは4〜120である。また、平均n個の繰り返し単位中にAOが異なるもので、ランダム付加又はブロック付加又はこれらの混在を含むものであっても良い。AOは、EO基以外にもプロピレンオキシ基等を含むこともできる。
[単量体2]
単量体2としては、有機ヒドロキシ化合物のリン酸モノエステルが挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等が挙げられる。例えば、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル等が挙げられる。中でも、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルが好ましい。
[単量体3]
単量体3としては、有機ヒドロキシ化合物のリン酸ジエステルが挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートアシッドリン酸ジエステル等が挙げられる。例えば、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル等が挙げられる。中でも、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルが好ましい。
単量体2、3の何れも、塩であってもよく、これらの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などであっても良い。
単量体2のm1及び単量体3のm2、m3は、それぞれ1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましい。
また、本発明の製造方法では、単量体2及び単量体3を含む混合単量体を用いることができる。
このような単量体2及び単量体3を含む混合単量体としては、モノエステル体とジエステル体とを含む市販品を使用することができ、例えば、ホスマーM、ホスマーPE、ホスマーP(ユニケミカル)、JAMP514、JAMP514P、JMP100(何れも城北化学)、ライトエステルP−1M、ライトアクリレートP−1A(いずれも共栄社化学)、MR200(大八化学)、カヤマー(日本化薬)、Ethyleneglycol methacrylate phosphate(アルドリッチ試薬)などとして入手できる。
また、単量体2、単量体3を含む混合単量体は、例えば、一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物と無水リン酸(P25)及び水を所定の仕込み比で反応させることで、反応生成物として製造することもできる。
Figure 0004932259
〔式中、R10は水素原子又はメチル基、R11は炭素数2〜12のアルキレン基、m4は1〜30の数を表す。〕
すなわち、前記一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させて得られるリン酸エステルを用いることができる。
一般式(4)中のm4は、1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましい。
リン酸化剤としては、オルトリン酸、五酸化リン(無水リン酸)、ポリリン酸、オキシ塩化リン等が挙げられ、オルトリン酸、五酸化リンが好ましい。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いることも出来る。また、後記のリン酸化剤〔以下、リン酸化剤(Z)という〕も好ましい。本発明において、有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させる際のリン酸化剤の量は目的とするリン酸エステル組成に応じ適時決めることができる。
リン酸エステルは、有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを、下記式(I)で定義された比率が2.0〜4.0、更に2.5〜3.5、特に2.8〜3.2の条件下に反応させることで得られたものが好ましい。
Figure 0004932259
本発明では、式(I)においては、リン酸化剤を便宜的にP25・n(H2O)として扱うものとする。
特に、リン酸化剤は、五酸化リン(Z−1)並びに水、リン酸及びポリリン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種(Z−2)を含むリン酸化剤(Z)が好ましく、この場合も、式(I)においては、五酸化リン(Z−1)と、水、リン酸及びポリリン酸からなる群から選ばれた少なくとも一種(Z−2)とを含むリン酸化剤(Z)を、便宜的にP25・n(H2O)として扱うものとする。
また、式(I)で定義されたリン酸化剤のモル数とは、原料として反応系に導入されるリン酸化剤、特にリン酸化剤(Z)に由来するP25単位の量(モル)を示す。また、水のモル数とは、原料として、反応系に導入されるリン酸化剤(Z)に由来する水(H2O)の量(モル)を示す。即ち、水には、ポリリン酸を(P25・xH2O)と、オルトリン酸を〔1/2(P25・3H2O)〕として表した場合の水を含めた反応系内に存在する全ての水が含まれることになる。
また、有機ヒドロキシ化合物にリン酸化剤を添加する際の温度は20〜100℃が好ましく、40〜90℃がさらに好ましい。また、反応系へのリン酸化剤の添加に要する時間(添加開始から添加終了までの時間)は0.1時間〜20時間が好ましく、0.5時間〜10時間がさらに好ましい。
リン酸化剤投入後の反応系の温度は20〜100℃が好ましく、40〜90℃がさらに好ましい。なお、共重合は、前述のリン酸エステル系重合体の製造方法に基づき行うことができる。
リン酸化反応終了後は、生成したリン酸の縮合物(ピロリン酸結合を有する有機化合物やリン酸)を加水分解により低減しても良く、又加水分解を行わなくても、本発明のリン酸エステル系重合体製造用のモノマーとしては好適である。
単量体2、3は、不飽和結合とヒドロキシル基を有する単量体のリン酸エステル化物であり、上記の市販品や反応生成物にはモノエステル体(単量体2)とジエステル体(単量体3)以外の化合物を含んでいる事が確認されている。それらの他の化合物は、重合性、非重合性のものが混在していると考えられるが、本発明ではこのような混合物(混合単量体)をそのまま使用することができる。
混合単量体中の単量体2、3の含有量は、31P−NMRの測定結果に基づき算出することができる。
31P-NMR測定条件>
・逆ゲート付きデカップリング法(inverse-gated-decoupling method)
・測定範囲6459.9Hz
・パルス遅延時間30sec
・観測データポイント10336
・パルス幅(5.833μsec)35°パルス
・溶媒CD3OH(重メタノール)(30重量%)
・積算回数128
この条件では、得られたチャートのシグナルは以下の化合物に帰属するので、その面積比から相対的な量比を決めることが可能である。
例えば、有機ヒドロキシ化合物が「メタクリル酸2−ヒドロキシエチル」のリン酸化物の場合、以下のように帰属できる。
・1.8ppm〜2.6ppm:リン酸
・0.5ppm〜1.1ppm:単量体2(モノエステル体)
・-0.5ppm〜0.1ppm:単量体3(ジエステル体)
・-1.0ppm〜-0.6ppm:トリエステル体
・-11.1ppm〜-10.9ppm、-12.4ppm〜-12.1ppm:ピロリン酸モノエステル
・-12.0ppm〜-11.8ppm:ピロリン酸ジエステル
・-11.2ppm〜-11.1ppm:ピロリン酸
・それ以外のピーク:不明物
本発明では、混合単量体中のリン酸含量を定量して、混合単量体中の単量体2及び単量体3の比率を決める。具体的には以下のようにして算出する。
ガスクロマトグラフィーによって試料中のリン酸含量の絶対量(重量%)を求める。31P-NMRの結果から試料中のリン酸、モノ体、ジ体の相対モル比が求まるので、リン酸の絶対量を基準にして、モノ体、ジ体の絶対量を算出する。
[リン酸含量]
ガスクロマトグラフィーの条件は以下の通り。
サンプル:ジアゾメタンによりメチル化
例)0.1gの試料にジアゾメタンのジエチルエーテル溶液1〜1.5ccを加えてメチル化する
カラム:Ultra ALLOY、15m×0.25mm(内径)×0.15μmdf
キャリアガス:He、スプリット比50:1
カラム温度:40℃(5min)(保持)→10℃/min(昇温)→300℃到達後15min保持
注入口温度:300℃
検出器温度:300℃
上記条件で9分前後にリン酸由来のピークが検出され、検量線法により未知試料中のリン酸含量を算出する事が出来る。
単量体の共重合に際しては、単量体1と、単量体2、3とのモル比は、単量体1/(単量体2+単量体3)=5/95〜95/5、更に、10/90〜90/10が好ましい。鉄筋等の鉄への吸着性の観点から、単量体2と3の合計量が多い方が好ましく、単量体1/(単量体2+単量体3)=5/95〜70/30、更に、10/90〜40/60が好ましい。水系での塩析の観点から、単量体1の量が多い方が好ましく、単量体1/(単量体2+単量体3)=30/70〜95/5、更に、40/60〜90/10が好ましい。
また、単量体1と単量体2と単量体3のモル比は、単量体1/単量体2/単量体3=5〜95/3〜90/1〜80/、更に5〜96/3〜80/1〜60(ただし合計は100である)が好ましい。なお、単量体2と単量体3については、酸型の化合物に基づきモル比やモル%を算出するものとする(以下、同様)。
また、本発明では、単量体3の比率を、反応に用いる全単量体中、1〜60モル%、更に1〜30モル%とすることができる。
また、単量体2と単量体3のモル比を、単量体2/単量体3=99/1〜4/96、更に99/1〜5/95とすることができる。
このような範囲で単量体3を含有する単量体原料は、一般にゲル化が著しいと予想されるため、通常は水系の防錆剤の製造原料としては適さないと考えられる。しかし、本発明では、pHを7以下で反応させることで、ゲル化が抑制され、水系の防錆剤として好適なリン酸エステル系重合体を再現性よく安定的に工業的に実用性のあるレベルで製造することができる。
以下、ゲル化抑制、好適分子量の調整及び防錆剤の性能設計の観点から、更に好ましい製造条件を説明する。このような観点から、本発明では、共重合の際に、単量体1〜3の合計モル数に対して4モル%以上、更に6モル%以上、特に8モル%以上の連鎖移動剤を使用することが好ましい。また、連鎖移動剤の使用量の上限は、単量体1〜3の合計モル数に対して好ましくは100モル%以下、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、特に好ましくは15モル%以下とすることができる。更に詳しくは、
(1)単量体1のnが3〜30の場合で、
(1−1)単量体2と単量体3の単量体1〜3中のモル比が50モル%以上の場合は、連鎖移動剤は、単量体1〜3に対して6〜100モル%、特に8〜60モル%を用いるのが好ましく、
(1−2)単量体2と単量体3の単量体1〜3中のモル比が50モル%未満の場合は、連鎖移動剤は、単量体1〜3に対して4〜60モル%、特に5〜30モル%を用いるのが好ましく、
(2)単量体1のnが30超の場合は、連鎖移動剤は、単量体1〜3に対して6〜50モル%、特に8〜40モル%を用いるのが好ましい。
本発明に係るリン酸エステル系重合体の製造においては、単量体2と3の反応率は60%以上、更に70%以上、更に80%以上、更に90%以上、特に95%以上を目標に行うことが好ましく、連鎖移動剤の使用量は、この観点から選定することができる。ここに、単量体2と3の反応率は、下記の式によって算出する。
Figure 0004932259
なお、反応開始時と反応終了時の反応系中のリン含有化合物中の単量体2と単量体3の割合(モル%)は、1H−NMRの測定結果に基づき算出することができる。
本発明に係るリン酸エステル系重合体の製造においては、上記単量体1〜3の他に、共重合可能なその他の単量体を用いることもできる。共重合可能な他の単量体としては、不飽和基を有するスルホン酸又はカルボン酸及びこれらの塩が挙げられる。例えば、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、これら何れかのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩を挙げることができる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのアクリル酸系単量体を挙げることができ、またこれらの何れか1種以上のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、メチルエステル、エチルエステルや無水マレイン酸などの無水化合物であっても良い。更に、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メタスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−エタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、スチレン、スチレンスルホン酸などが挙げられる。全単量体中、単量体1〜3の合計の割合は、30〜100モル%、更に50〜100モル%、特に75〜100モル%が好ましく、更に、防錆剤、特に水硬性組成物用防錆剤としての性能を達成する観点からは、95モル%超〜100モル%、更に97〜100モル%である。
反応系の単量体1、2、3及び共重合可能なその他の単量体の総量は、反応系中5〜80重量%が好ましく、10〜65重量%がより好ましく、20〜50重量%が特に好ましい。
本発明の製造方法において、単量体1〜3の反応温度は、40〜100℃、更に60〜90℃が好ましく、反応圧力はゲージ圧で101.3〜111.5kPa(1〜1.1atm)、更に101.3〜106.4kPa(1〜1.05atm)が好ましい。
本発明に係るリン酸エステル系重合体の製造では、適当な溶媒により調製した単量体2及び/又は単量体3を含有する単量体溶液を、好ましくは所定量の連鎖移動剤の存在下で、単量体1を含む他の単量体と、pH7以下で共重合させる。また、共重合可能な他の単量体や重合開始剤等を用いても良い。
本発明では、単量体1、単量体2、単量体3を、ゲル化防止の観点から、pH7以下で反応させる。本発明では、反応途中(反応開始時〜反応終了時)で採取した反応液の20℃でのpHを、反応中のpHとする。通常は、反応中のpHが7以下となることが明らかな条件(単量体比率、溶媒、その他の成分等)で反応を開始すればよい。
なお、反応系が非水系の場合は、pH測定可能な量の水を反応系に加えて測定することができる。
本発明の対象とする単量体1〜3では、以下の(1)、(2)に例示した条件で反応を行えば、その他の条件の考慮の下で、通常は、反応中のpHも7以下になると考えられる。また、ゲルが生成しない等、反応全体に影響を及ぼさない範囲であれば、反応初期に一時的にpHが7を超える場合があってもよい。
(1)単量体1〜3を全て含むpH7以下の単量体溶液を、単量体1〜3の共重合反応に用いる。
(2)単量体1〜3の共重合反応をpH7以下で開始する。すなわち、単量体1〜3を含む反応系を、pH7以下にした後、反応を開始する。
具体的には、
(i)単量体1〜3を含む単量体溶液のpHを7以下に調整して共重合反応を開始する。
(ii)単量体1〜3を含む単量体溶液(pHは任意であるが7以下が好ましい。)を、反応系に滴下する。
(iii)単量体1を含む単量体溶液(pHは任意であるが7以下が好ましい。)と、単量体2を含む単量体溶液(pHは任意であるが7以下が好ましい。)と、単量体3を含む単量体溶液(pHは任意であるが7以下が好ましい。)を、別々に反応系に滴下する。
(iv)上記を適宜組み合わせて重合溶媒中で反応を行う。例えば、単量体1〜3を含む単量体溶液(pHは任意であるが7以下が好ましい。)の一部を反応系に仕込んでおき、残りの単量体溶液を反応系に滴下する。
上記、(iii)及び(iv)では、設定した単量体モル比から逸脱せぬよう、滴下する単量体溶液の滴下条件を制御する必要がある。また、上記(ii)〜(iv)では、滴下した単量体1〜3を含む反応系のpHが7以下、好ましくは4以下となるよう、その他の反応条件を考慮する。
なお、反応系のpHは、必要に応じて、無機酸(リン酸、塩酸、硝酸、硫酸等)や、NaOH、KOH、トリエタノールアミンなどを用いて調整できる。
上記のように、本発明では、反応中の反応系のpHを7以下にするために、反応に用いる単量体溶液のうち、単量体2、単量体3の少なくとも一方を含む単量体溶液のpHが7以下であることが好ましい。当該pH7以下の単量体溶液は、単量体2、単量体3の少なくとも一方を含むものであり、単量体1を含むもの、更には連鎖移動剤、その他の単量体を含むものであってもよい。ここで、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液は、pH測定上、含水系(すなわち、溶媒が水を含むこと)である事が好ましいが、非水系の場合には必要量の水を加えて測定しても良い。単量体溶液の均一性、ゲル化防止、性能低下の抑制の観点で、pHは7以下であり、0.1〜6が好ましく、更に0.2〜4.5が好ましい。また、単量体1もpH7以下の単量体溶液として用いることが好ましい。このpHは、20℃のものである。
最終的に単量体が仕込まれた反応前の反応系(重合系)のpHは、重合体の分子量を制御する際の安定性、反応時のpH制御の容易性の観点から、20℃で6以下である事が好ましく、より好ましくは5以下、更に好ましくは4以下、特に好ましくは2以下となる事である。好ましくは、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液のpH(反応開始時の反応系のpH)、反応途中の反応系のpH、反応終了時の反応系のpHが何れも7以下であることである。
なお、これら単量体1〜3を含水状態で用いない(つまり液体成分としてそのまま滴下する)場合は、必然的に重合系のpHは7以下となるので、このような方法も好適である。中和前の最終重合系のpHは6以下、更に5以下、更に4以下、特に2以下となる事が好ましい。
[連鎖移動剤]
連鎖移動剤は、ラジカル重合における連鎖移動反応(成長しつつある重合体ラジカルが他の分子と反応してラジカル活性点の移動が起こる反応)をもたらす機能を有し、連鎖単体の移動を目的として添加される物質である。
連鎖移動剤は、ゲル化抑制、及び好適分子量の調整の観点から、単量体1〜3の合計モル数に対して4モル%以上、更に6モル%以上、特に8モル%以上使用することが好ましい。
連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、特に一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’または−SO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1〜3を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素などが挙げられる。
その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
[重合開始剤]
本発明に係るリン酸エステル系重合体の製造では、重合の開始、反応率の向上、重合時間の短縮等の重合効率の観点から、重合開始剤を使用することが好ましく、特に、単量体1〜3の合計モル数に対して重合開始剤を5モル%以上、更に7〜50モル%、特に10〜30モル%使用することが好ましい。
水系の重合開始剤としては、過硫酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等の水溶性アゾ化合物が使用される。また、重合開始剤と併用して、亜硫酸水素ナトリウム、アミン化合物などの促進剤を使用することもできる。
[溶媒]
本発明に係るリン酸エステル系重合体の製造は、溶液重合法で実施される。その際に使用される溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールアセトン、メチルエチルケトン等の水溶性有機溶媒が挙げられる。取り扱いと反応設備から考慮すると、水が好ましい。特に水系溶液を用いる場合、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液をpH7以下、更に0.1〜6、特に0.2〜4で反応に用いて共重合反応を行うことが、モノマー混液の均一性(取り扱い性)、モノマー反応率の観点や、リン酸系化合物のピロ体の加水分解により架橋を抑制する点で好ましい。本発明の製造方法において、重合溶媒は、単量体総重量に対して、0.1〜5重量倍、特に0.5〜4重量倍の比率で用いることが好ましい。
なお、水系溶液とは、水もしくは水を50重量%以上含有する溶液であり、水と均一に混合し得るメタノール、イソプロパノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が混合されていても良い。
本発明のリン酸エステル系重合体は、重量平均分子量(以下Mwと表記する)が10,000〜150,000であることが好ましい。金属表面への吸着膜の形成の観点から、Mwが10,000以上であり、好ましくは12,000以上、さらに好ましくは13,000以上、より好ましくは14,000以上、特に好ましくは15,000以上であり、計量などの取り扱い性を考慮した粘度の観点から、150,000以下であり、好ましくは130,000以下、さらに好ましくは120,000以下、より好ましくは110,000以下、特に好ましくは100,000以下であり、前記両者の観点から、好ましくは12,000〜130,000、より好ましくは13,000〜120,000、さらに好ましくは14,000〜110,000、特に好ましくは15,000〜100,000である。この範囲のMwを有し、かつ数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが1.0〜2.6であることが好ましい。ここに、Mw/Mnの値は分散度であり、1に近いほど分子量分布が単分散に近づき、1から離れる(大きくなる)ほど分子量分布が広くなることを意味する。
本発明のリン酸エステル系重合体のMwは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたものである。なお、本発明におけるリン酸エステル系重合体のMw/Mnは、該重合体のピークに基づいて算出されたものとする。
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
上記のようなMw/Mnを満たすリン酸エステル系重合体は、ジエステル体である単量体3による架橋を抑制することにより適度な分岐構造となり、分子内に密に吸着基が存在する構造を形成するものと考えられる。また分散度Mw/Mnを所定範囲に抑制することで同一サイズの分子が単分散した系に近づくため、鉄等の吸着対象物質に対する吸着量も多くすることが可能と考えられる。この両者を満足することで、セメント粒子等の吸着対象物質に密にパッキングすることが可能となり、防錆効果に有効であると推定している。
また、上記条件でのGPC法で得られる分子量分布を示すチャートのパターンにおいて、分子量10万以上の面積が当該チャート全体の面積の5%以下であることが、溶液粘性の点でより好ましい。
更に、本発明のリン酸エステル系重合体は、Mwと数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1.0〜2.6であることが好ましい。Mw/Mnの値は分散度であり、1に近いほど分子量分布が単分散に近づき、1から離れる(大きくなる)ほど分子量分布が広くなることを意味する。本発明のリン酸エステル系重合体のMw/Mnは、好ましくは1.0〜2.4、より好ましくは1.0〜2.2、より好ましくは1.0〜2.0、特に好ましくは1.0〜1.8である。なお、Mnも上記条件のGPC法で測定することができる。
本発明の防錆剤は、水硬性組成物用の防錆剤として好適である。本発明の防錆剤と水硬性粉体と水とを含有する水硬性組成物は、鉄筋等の防錆効果に優れるものである。水硬性粉体としては、各種セメントを始めとし、水和反応によって硬化性を示すあらゆる無機系の水硬性粉体に使用することができる。
また、前記水硬性組成物を鉄筋コンクリート構造物の製造に用いることで、鉄筋の防錆効果に優れる鉄筋コンクリート構造物を提供することができる。鉄筋コンクリート構造物としては、ビルや橋梁等が挙げられる。
セメントとして、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。セメント以外の水硬性粉体として、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてよい。セメントと混合されたシリカヒュームセメントや高炉セメントを用いてもよい。
水硬性組成物用とする場合、本発明の防錆剤は、防錆剤としての効果を損なわない限り、水硬性組成物に用いられるその他の添加剤(材)を含有することもできる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸系、デキストリン、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖系、糖アルコール系等の遅延剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;AE減水剤;塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、蟻酸(塩)、アルカノールアミン等の早強剤又は促進剤;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;高炉スラグ;流動化剤;ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等の消泡剤;防泡剤;フライアッシュ;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系、アミノスルホン酸系、ポリマレイン酸系を含むポリカルボン酸系等の高性能減水剤;シリカヒューム;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、β−1,3−グルカン、キサンタンガム等の天然物系、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、オレイルアルコールのエチレンオキシド付加物もしくはこれとビニルシクロヘキセンジエポキシドとの反応物等の合成系等の水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。
また、本発明の防錆剤の対象となる水硬性組成物は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、地盤改良用、グラウト用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
また、本発明の防錆剤の対象となる水硬性組成物は、水/水硬性粉体比〔水硬性組成物中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、以下、W/Pと表記する。〕が65%以下、更に10〜60%、より更に12〜57%、15〜55%、更に20〜55%であってもよい。
また、本発明の防錆剤の対象となる水硬性組成物は、水及び水硬性粉体(セメント)を含有する、ペースト、モルタル、コンクリート等であるが、骨材を含有してもよい。骨材として細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。
水硬性組成物に本発明の防錆剤を配合して用いる場合、本発明のリン酸エステル系重合体が水硬性粉体重量に対して、0.01〜3%(有効分換算)、更に0.1〜2%、特に0.2〜1%となるように用いるのが、良好な防錆効果を得るために好ましい。
本発明の防錆剤が従来の防錆剤と比較して防錆効果に優れる理由は明らかではないが、本発明のリン酸エステル系重合体がリン酸基によって鉄表面に強固に、しかも隙間の無い密実な吸着形態をとり、本高分子による吸着膜を形成する事から、塩化物イオンが鉄表面への侵入を抑制し、鉄筋腐食を抑制するためと考えられる。
なお、本発明の防錆剤では、本発明のリン酸エステル系重合以外の防錆剤〔以下、防錆剤(X)という〕を併用することができる。水硬性組成物に本発明の防錆剤を配合して用いる場合、防錆剤(X)が水硬性粉体重量に対して、0.02〜3%、更に0.1〜2%となるように用いるのが、良好な防錆効果を得るために好ましい。また、本発明のリン酸エステル系重合体と防錆剤(X)の重量比は、本発明のリン酸エステル系重合体/防錆剤(X)=2/98〜98/2、更に10/90〜90/10、特に20/80〜80/20が好ましい。
防錆剤(X)としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸カルシウムなどの亜硝酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩、石灰窒素、アルキルフェノール類、メルカプタン類、ニトロ化合物、ベンゾトリアゾール、アルカノールアミン類である、N,N-ジメチル−エタノールアミン、N-メチル−エタノールアミン、モノ−、ジ−又はトリエタノールアミンなどが挙げられる。
[製造例]
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水202gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数9:新中村化学製NKエステルM90G)55gとリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物(ホスマーM:ユニケミカル(株))31.0gと3−メルカプトプロピオン酸1.5gとを水55gに溶解したものと過硫酸アンモニウム.5.1gを水58gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム2.5gを水29gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に20%水酸化ナトリウム水溶液38.5gで中和し、重量平均分子量38000、Mw/Mn=1.68の重合体A−1を得た。(単量体重合pH:1.0、反応率99%)
同様にして表1の重合体A−2〜A−4を製造した。表1にリン酸エステル系重合体A−1〜A−4をまとめた。なお、以下では、これらは有効分20重量%の水溶液に調整したものを用いた。それら水溶液はいずれも透明であった。
Figure 0004932259
表中の記号は以下のものである。
・MEPEG−E:ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート
・HEMA−MPE:リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル
・HEMA−DPE:リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル
・Mw:重量平均分子量
・Mn:数平均分子量
また、ポリカルボン酸系分散剤として、以下の分散剤1を用いた。
*分散剤1:メタノールエチレンオキシド付加物(エチレンオキシド平均付加モル数23)・メタクリル酸モノエステル/メタクリル酸=25/75(モル比)の共重合体ナトリウム塩(Mw52000)。有効分20重量%の水溶液に調整したものを用いた。
また、防錆剤(X)として、以下のものを用いた。
*防錆剤X:亜硝酸カルシウム(20重量%水溶液として使用)
実施例
上記成分を表2のように用いて防錆剤とし、以下の配合のセメントペーストに対する評価及び防錆効果を評価した。結果を表2に示す。
(1)ペースト配合
ペースト配合は、水(上水道水)60g、セメント(市販普通ポルトランドセメント、太平洋セメント株式会社製、密度3.16g/cm3)200gの水セメント比30%とした。水、普通セメントと表2の防錆剤成分を攪拌翼付攪拌機(ナショナルハンドミキサーMK−H3、松下電器産業株式会社製)で速度段階1に設定し、120秒間攪拌しペーストを調製した。
(2)分散性評価
得られたペーストを直径50mm、高さ51mmの塩ビ管に投入し、ゆっくりと引き上げ、ペーストの流動が停止した時点で、広がったペーストの直径を測定した(フロー値)。フロー値は、ペーストの調製直後と調製120分後について測定した。
(3)防錆効果
JIS A6205「鉄筋コンクリート用防錆剤」の付属書1「鉄筋の塩水浸せき試験方法」に準じて行った。ガラス製500mLビーカーに防錆剤を表2に示した添加量を入れ、試験用塩水(3.27%NaCl水溶液)で全量を350mLとした。電極は、比較電極としてSUS316L(長さ50mm、幅25mm、厚さ3mm)、鉄筋電極はSS400(長さ50mm、幅25mm、厚さ3mm)を使用し、直流電位差計とつないだ。比較電極および鉄筋電極を試験用塩水中に2.5cm浸漬し、両者の間隔が2cmとなるように固定した。次に、鉄筋電極表面に気泡が付着していない事を確認し、試験用塩水の表面にJIS K 9003に規定する流動パラフィンを20.7g流し込みシールした。自然電極電位(mV)は、測定開始1日後および7日後の数値を計測した。1日後から7日後までの自然電位の低下が小さいほど、防錆効果が良いことを意味する。また、7日後の鉄筋電極の錆びた状態および錆びによる水溶液の着色状況について目視(肉眼)にて観察し、以下の基準で錆発生状況を評価した。
○:試験用塩水が無色透明であり、鉄筋電極にも錆が観察されない。
×:試験用塩水が赤茶色に着色、底に錆が沈殿し、鉄筋電極の表面に錆が発生する。
Figure 0004932259
防錆剤は、有効分20%のものを使用した。
本発明品5は、防錆効果の試験を、分散剤1を1.4g/350ml、A−1を3.85g/350mlの割合で用いて行った。
本発明品6は、防錆効果の試験を、分散剤1を1.9g/350ml、A−3を7.35g/350mlの割合で用いて行った。
比較品4は、防錆効果の試験を、分散剤1を4.3g/350ml、防錆剤Xを6.2g/350mlの割合で用いて行った。
本発明品は、錆の発生は認められず、初期のフロー値19cm台が得られると共に、2時間の流動保持性にも優れる。また、市販の分散剤1の分散性も阻害しない。一方、比較品4に示されるように、防錆剤Xは市販の分散剤1の分散性を抑制し、本発明品ほどの流動性が得られない。さらに、分散剤併用系では防錆剤の添加量が制限され、十分に錆の発生を抑制できない。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)で表される単量体1と、下記一般式(2)で表される単量体2と、下記一般式(3)で表される単量体3とを、連鎖移動剤の存在下、pH7以下で共重合して得られる重量平均分子量が10,000〜150,000のリン酸エステル系重合体を含有する防錆剤、水硬性粉体、及び水を含有する水硬性組成物を用いた鉄筋コンクリート構造物の製造方法であって
    前記リン酸エステル系重合体が、単量体1/単量体2/単量体3=5〜95/3〜90/1〜80(ただし合計は100である)のモル比で、且つ、全単量体中、単量体1〜3の合計の割合が75〜100モル%で共重合して得られたものである、
    鉄筋コンクリート構造物の製造方法。
    Figure 0004932259

    〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は-COO(AO)nX、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、nはAOの平均付加モル数であり、3〜200の数、Xは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
    Figure 0004932259

    〔式中、R4は水素原子又はメチル基、R5は炭素数2〜12のアルキレン基、m1は1〜30の数、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
    Figure 0004932259

    〔式中、R6、R8は、それぞれ水素原子又はメチル基、R7、R9は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基、m2、m3は、それぞれ1〜30の数、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
  2. 下記一般式(1)で表される単量体1と、下記一般式(2)で表される単量体2と、下記一般式(3)で表される単量体3とを、連鎖移動剤の存在下、pH7以下で共重合して得られる重量平均分子量が10,000〜150,000のリン酸エステル系重合体を含有する防錆剤、水硬性粉体、及び水を含有する水硬性組成物を用いた鉄筋コンクリート構造物の防錆方法であって
    前記リン酸エステル系重合体が、単量体1/単量体2/単量体3=5〜95/3〜90/1〜80(ただし合計は100である)のモル比で、且つ、全単量体中、単量体1〜3の合計の割合が75〜100モル%で共重合して得られたものである、
    鉄筋コンクリート構造物の防錆方法。
    Figure 0004932259

    〔式中、R 1 、R 2 は、それぞれ水素原子又はメチル基、R 3 は水素原子又は-COO(AO) n X、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、nはAOの平均付加モル数であり、3〜200の数、Xは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
    Figure 0004932259

    〔式中、R 4 は水素原子又はメチル基、R 5 は炭素数2〜12のアルキレン基、m1は1〜30の数、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
    Figure 0004932259

    〔式中、R 6 、R 8 は、それぞれ水素原子又はメチル基、R 7 、R 9 は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基、m2、m3は、それぞれ1〜30の数、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
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