JP2007169366A - 強化ポリエステル樹脂組成物およびポリエステル樹脂構造体 - Google Patents
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Abstract
生分解性を保持すると共に、耐衝撃性等の機械的特性、成形加工性(流動性)に優れ、更には滞留安定性及び耐加水分解性にも優れる強化ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(A)芳香族ポリエステル樹脂1〜99重量部、及び(B)脂肪族ポリエステル共重合体1〜99重量部の合計100重量部に対して、(C)繊維状強化材を、3〜150重量部含有する強化ポリエステル樹脂組成物であって、該(A)芳香族ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基濃度が50eq/ton以下であり、該(B)脂肪族ポリエステル共重合体が、脂肪族オキシカルボン酸単位を0〜30モル%、脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位を35〜50モル%、脂肪族ジカルボン酸単位を35〜50モル%含む強化ポリエステル樹脂組成物及び該樹脂組成物を成形して成るポリエステル樹脂構造体。
【選択図】 なし
Description
しかし、特許文献1〜4に開示された樹脂組成物では、生分解性や滞留熱安定性、耐加水分解性の点で未だ不十分であり、また、芳香族ポリエステルの物性、例えば末端カルボキシル基濃度が、これらの特性に与える影響については何ら着目されていない。
従って、生分解性を保持すると共に、機械的特性、成形加工性(流動性)に優れ、更には滞留安定性及び耐加水分解性にも優れ、総合的に優れた性能を有する強化ポリエステル樹脂組成物の開発が望まれていた。
〜50モル%含むことを特徴とする強化ポリエステル樹脂組成物、に存する。
先ず、本発明に使用される(A)芳香族ポリエステル樹脂について説明する。芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体とジオールとの重縮合体である。原料の芳香族ジカルボン酸またはその誘導体としては、テレフタル酸またはその低級アルキルエステルが主であるが、その他、フタル酸、イソフタル酸、4,4'−ジフェニル
ジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはその低級アルキルエステル等の1種または2種以上を併用してもよい。
シフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオールが挙げられ、好ましくは、エチレングリコール又は1,4−ブタンジオールである。
また、PET樹脂の固有粘度は、通常0.4〜3dl/g、好ましくは0.5〜1.5dl/g、更に好ましくは0.6〜1.0dl/gの範囲である。なお、固有粘度の異なる2種以上のPBT樹脂やPET樹脂を併用して固有粘度が上記範囲となる様に調節してもよい。
ステル化反応させる。次いで、得られたエステル化反応生成物であるオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、1基又は複数基の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に、好ましくは210〜280℃、より好ましくは220〜265℃の温度、好ましくは26.7kPa以下、より好ましくは20kPa以下の減圧下で、攪拌下に2〜5時間で連続的に重縮合反応させることができる。重縮合反応により得られたPBT樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂は、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら又は水冷されたのちに、ペレタイザーで切断されてペレット状とされる。
次に、本発明に使用される(B)脂肪族ポリエステル共重合体について説明する。(B)肪族ポリエステル共重合体は、下記(I)、(II)及び(III)で示される単位を各々
所定のモル%で含有する共重合体であり、各単位に対応する脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族及び/又は脂環式ジオール、並びに脂肪族ジカルボン酸の所定量を共重合させることにより製造することが出来る。また、該(B)共重合体の数平均分子量は、通常1万〜20万であり、好ましくは3万〜10万である。
等が挙げられ、これらは2種以上、例えば脂肪族ジオールと脂環式ジオールの混合物として使用することも出来る。上記のジオールの中では、ポリエステル樹脂組成物の物性の面から、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。
導体は、HOOC−R3−COOH(R3は直接結合または2価の脂肪族炭化水素基を示す。)で示されるジカルボン酸、その低級アルコールエステル又は酸無水物である。式中、R3としては、直接結合または直鎖アルキレン基が好ましく、直鎖アルキレンの炭素数は通常1〜10、好ましくは1〜6である。シカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられ、ジカルボン酸の低級アルコールエステルとしては、例えば、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル等の炭素数1〜4程度の脂肪族アルコールのエステルが挙げられ、酸無水物としては、無水コハク酸、無水アジピン酸などが挙げられる。これらは2種以上の混合物として使用することも出来る。これらの中では、ポリエステル樹脂組成物の物性の面から、コハク酸、無水コハク酸またはこれらの混合物が好ましい。
々35〜50モル%、好ましくは40〜49.75モル%、更に好ましくは45〜49.5モル%の範囲から選ばれるが、式(II)と式(III)の単位の割合は、通常実質的に等
しくなる。ここで、両者の割合が実質的に等しいとは、両者の割合の差が通常3モル%以内、更には2モル%以内を意味する。なお、式(II)のジオール単位に相当するジオールとして、脂肪族ジオールと脂環式ジオールの混合物を使用する場合には、両者の合計含有量が、上記の範囲内となればよい。
またはその誘導体を反応させて脂肪族ポリエステルを製造するに際し、式(I)の単位に対応する脂肪族オキシカルボン酸を、上述した所定の範囲の量となるよう共重合させる方法により製造することが出来る。
の誘導体(ジカルボン酸量基準の値)と実質的に等モルであるが、エステル化反応中に留出することを考慮し、通常1〜20モル%過剰に使用される。式(I)に対応する脂肪族オキシカルボン酸の使用量は、式(III)に対応するジカルボン酸またはその誘導体10
0モルに対して、通常0〜60モル、好ましくは0.04〜60モル、更に好ましくは1〜40モル、特に好ましくは2〜20モルである。
ニウムが好適である。重合触媒の使用量は、使用するモノマー全体量に対し、通常0.001〜3重量%、好ましくは0.005〜1.5重量%である。
重合反応温度は、通常150〜260℃、好ましくは180〜230℃、反応時間は、通常2時間以上、好ましくは4〜15時間、反応圧力は、通常10mmHg以下、好ましくは2mmHg以下である。
にも、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合成分を導入することが出来る。他の共重合成分の原料としては、ヒドロキシ安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸類、ビスフェノールA等の芳香族ジオール類、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコール類、りんご酸などの多価オキシカルボン酸類などが挙げられる。
本発明の強化ポリエステル樹脂組成物は、上述した樹脂成分の他に、(C)繊維状強化材を含有することを特徴とする。これにより、耐衝撃性等の機械的特性や荷重たわみ温度等の熱的特性が向上するというメリットがある。
本発明に用いる繊維状強化材の平均繊維径には特に制限はないが、1〜100μm、更には2〜50μm、特には3〜30μm、最も好ましくは5〜20μmが好ましい。平均繊維径が1μm未満の繊維状強化材は、製造が容易でなく、コスト高になるおそれがある。また、繊維状強化材の平均繊維径が100μmを超えると、繊維状強化材の引張強度が低下するおそれがある。本発明に用いる繊維状強化材の平均繊維長に特に制限はないが、0.1〜20mm、更には1〜10mmが好ましい。繊維状強化材の平均繊維長が0.1mm未満であると、繊維状強化材による補強効果が十分に発現しないおそれがある。また、
繊維状強化材の平均繊維長が20mmを超えると、樹脂との溶融混練や、樹脂組成物の成形が困難になるおそれがある。
ロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系化合物や、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、エポキシ系化合物などを挙げることができる。
本発明の強化ポリエステル樹脂組成物には、材料の加熱安定性および滞留安定性の向上のために、(D)有機リン化合物を含有させることが出来る。
(D)有機リン化合物としては、有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物または有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。中でも、有機ホスフェート化合物が好ましく、特には下記一般式(1)で表される長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が好ましい。
(一般式(1)中、Rは炭素数8〜30のアルキル基を表し、nは1又は2である。)
13〜23のアルキル基が好ましい。また、nが1のモノアルキルアシッドホスフェート、nが2のジアルキルアシッドホスフェート、又はこれらの混合物も使用される。
適に使用することが出来る。特に耐衝撃強度に優れることから、ヒートショックに対する安定性が求められるインサート成形品として好適に使用することができる
(A)芳香族ポリエステル樹脂
(A−1)PBT1
テレフタル酸1.0モルに対して1,4−ブタンジオール1.8モルの割合で両原料をス
ラリー調製槽に供給し、攪拌装置で混合して調製したスラリー1,000重量部を、連続
的にギヤポンプにより、温度230℃、圧力101kPaに調整した第一エステル化反応槽に移送するとともに、テトラブチルチタネート0.158重量部(理論ポリマーに対するTi量として30ppm)を供給し、滞留時間2時間で、攪拌下にエステル化反応させてオリゴマーを得た。
次いで、第二エステル化反応槽で得られたオリゴマーを、温度250℃、圧力6.67
kPaに調整した第一重縮合反応槽に移送し、滞留時間2時間で、攪拌下に重縮合反応させ、プレポリマーを得た。
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT1)の末端カルボキシル基濃度は20eq/tonであり、固有粘度は0.85dl/g、残存テトラヒドロフラン量は18
0ppm(重量比)であった。
テレフタル酸ジメチル1.0モルに対して、1,4−ブタンジオール1.8モルの割合と
なるよう両原料の合計1,000重量部をエステル交換反応槽に供給し、テトラブチルチ
タネート0.53重量部(理論ポリマーに対するTi量として100ppm)を添加して、温度210℃、圧力101kPaで、3時間エステル交換反応させて、オリゴマーを得
た。
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT2)の末端カルボキシル基濃度は41eq/tonであり、固有粘度は0.85dl/g、残存テトラヒドロフラン量は68
0ppm(重量比)であった。
PBT2の製造方法において、テトラブチルチタネートの使用量を1.00重量部とし
、重縮合反応の重合温度を260℃、重合圧力を333Pa、重合時間を4時間としたこと以外は、同様にしてペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT3)を得た。
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT3)の末端カルボキシル基濃度は55eq/tonであり、固有粘度は0.85dl/g、残存テトラヒドロフラン量は70
0ppm(重量比)であった。
(B−1)脂肪族ポリエステル共重合体1(PBSL)
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、減圧装置を備えた反応容器に、コハク酸118.1重量部、1,4−ブタンジオール104.5重量部、酸化ゲルマニウムを予め1重量%溶解させた90重量%乳酸水溶液6.40重量部、結晶核剤としてスーパータルク0.2重量部を仕込み、窒素置換によって系内を窒素雰囲気下にした。次に、系内を攪拌しながら220℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。その後30分かけて230℃に昇温し、同時に1時間30分かけて0.07×103Paになるように減圧し、この圧力下で4時間反応を行い、白色のポリエステルを得た。得られたポリエステルの固有粘度は1.82dl/gであった。各成分のモル%はコハク酸単位48.8モル%、1,4−ブタンジオール単位48.8モル%、乳酸単位2.4モル%であった。得られた脂肪族ポリエステルをPBSL(ポリブチレンサクシネートラクテート)とする。
上記(B−1)脂肪族ポリエステル共重合体−1の製造法において、コハク酸118.1重量部に変えて、コハク酸94.48重量部及びアジピン酸29.23重量部としたこと以外は同様に重合反応を行った。得られたポリエステル重合体の固有粘度は1.82dl/gであった。各成分のモル%はコハク酸単位38.7モル%、1,4−ブタンジオール単位48.8モル%、乳酸単位2.8モル%、アジピン酸単位9.7モル%であった。得られた脂肪族ポリエステルをPBSLA(ポリブチレンサクシネートラクテートアジペート)とする。
ガラス繊維:日本電気硝子(株)製、商品名T−187、平均繊維径13μm、平均繊維長3mm
オクタデシルアシッドホスフェート:旭電化(株)製、商品名AX−71、モノアルキル体(式(1)中のnが1)とジアルキル体(式(1)中のnが2)の混合物
(1)固有粘度
PBT樹脂について、ウベローデ型粘度計を使用し、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール=1:1(重量比)の混合溶媒30℃で測定した溶液粘度から求めた。ハギンズ定数は0.33とした。
(2)末端カルボキシル基濃度
ベンジルアルコール3mlに樹脂0.1gを溶解し、水酸化ナトリウム0.1モル/1リットルベンジルアルコール溶液を使用し、滴定法により求めた。
Induced Coupled Plasma(ICP)により、PBT樹脂中のチタン金属濃度(重量比)を定量した。
(4)残存テトラヒドロフラン量(THF量)
PBT樹脂のペレット5gを水10gに浸漬させ、120℃の加圧下で6時間処理し、水中に溶出したテトラヒドロフランをガスクロマトグラフィーにより定量した。
1H−NMR法により測定したスペクトルの面積比により各成分の組成(モル%)を計算した。
(6)機械的特性
引張試験:ISO527に準拠して引張強度を測定した。
曲げ試験:ISO178に準拠して曲げ弾性率を測定した。
シャルピー衝撃試験:ISO179−2に準拠して測定した。
テストピースを5月間土中に埋没させた後、目視により観察し、複数の虫食い状の穴が認められれば生分解性有り(〇)、穴が認められない場合は生分解性無し(×)と判定した。
東洋精機製キャピログラフ1Cを用い、270度、6080sec−1の条件下で、サンプルを投入してから測定するまでの滞留時間が3分と10分の場合での溶融粘度を各々測定し、次式に従い溶融粘度保持率を求めた。溶融粘度の値が低い程、流動性に優れることを示し、また、保持率の値が高い程、滞留熱安定性に優れることを示す。
溶融粘度保持率(%)=(滞留時間10分での溶融粘度)/(滞留時間3分での溶融粘度)×100
ISO試験片を、温度80℃、湿度95%の条件下で、75時間湿熱処理を行った。湿熱処理前後の引張強度をISO527に準拠して測定し、次式に従い引張強度保持率を求めた。この保持率の値が高い程、耐加水分解性が高いことを示す。
引張強度保持率(%)=(処理後の引張強度/処理前の引張強度)×100
PBT樹脂、脂肪族ポリエステル共重合体及びリン系安定剤を、表1に示される配合比率となるようドライブレンドした混合物を、二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30HSST L/D=42)のメインフィーダーより投入し、一方、ガラス繊維をサイドフィーダーより投入し、吐出量20kg/h、スクリュー回転数150rpm、バレル温度260℃の条件下で押出し、ペレット化して樹脂組成物のペレットを得た。
れたペレットから、射出成形機(住友重機械社製、型式SH−100)により、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件下でISO試験片を成形し、前記の方法に従って、機械的特性及び耐加水分解性を測定した。更に、得られたペレットから、卓上熱プレス機により、厚み0.3〜0.37mmのフィルムを作成し、これを2cm×2cmに切断してテストピースとしたものについて、前記の方法により生分解性を評価した。結果を表1に示した。
(1)(A)PBT樹脂に(B)脂肪族ポリエステル共重合体と(C)ガラス繊維を配合した実施例1〜6の樹脂組成物は、該(B)共重合体を含まない比較例1と比較すると、
生分解性を示し、衝撃強度及び流動性が共に大きく向上している。また、(B)脂肪族ポリエステル共重合体に(C)ガラス繊維を配合した比較例2に比べ、実施例の樹脂組成物は、引張強度、曲げ弾性率、更には滞留熱安定性、耐加水分解性に優れ、総合的にバランスの良い性能を有している。
(3)リン系安定剤を配合した実施例2の樹脂組成物は、リン系安定剤を配合していない実施例1に比べて、更に滞留熱安定性が優れている。また、末端カルボキシル基濃度が20eq/tonのPBT樹脂1を使用した実施例2の樹脂組成物は、末端カルボキシル基濃度が41eq/tonのPBT樹脂2を使用した実施例3に比べ、更に耐加水分解性が優れている。
Claims (6)
- 該(A)芳香族ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂である請求項1に記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
- 該(A)芳香族ポリエステル樹脂中のチタン化合物の含有量が、チタン原子換算で70ppm(重量比)以下である請求項1又は2に記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
- 該(B)脂肪族ポリエステル共重合体が、(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位を0.5〜20モル%含む請求項1〜3のいずれかに記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
- 該繊維状強化材が、ガラス繊維である請求項1〜4のいずれかに記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して成ることを特徴とするポリエステル樹脂構造体。
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