JP2004143208A - ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、降温結晶化温度が175℃以上であるか、又は降温結晶化温度が175℃以上であり、残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)以下であるポリブチレンテレフタレート100重量部、(B)ポリカーボネート樹脂5〜100重量部、(C)有機リン化合物0.01〜1重量部および(D)強化充填材0〜200重量部を含有することを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形サイクルが短く生産性に優れ、成形収縮率および成形反りが小さく、また機械物性および耐加水分解性に優れ、自動車部品、電気・電子部品などの広範囲の用途に好適に使用することができるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリエステル樹脂の中で代表的なエンジニアリンブプラスチックであるポリブチレンテレフタレート樹脂は、成形加工の容易さ、機械的物性、耐熱性、その他の物理的、化学的特性に優れていることから、自動車部品、電気・電子部品、精密機器部品などの分野で広く使用されている。ポリブチレンテレフタレートは、結晶化速度が速く、射出成形に好適であるが、さらに結晶化速度を向上し、成形サイクルを短縮して生産性を高めることが望まれている。
また、ポリブチレンテレフタレートは、低吸湿性であるために、常温では水の影響を本質的に受けない。しかし、高温では水や水蒸気によってエステル基が加水分解されてヒドロキシル基とカルボキシル基が生成し、カルボキシル基が自己触媒となってさらに加水分解を促進するので、湿熱環境下における使用は制限される。このために、加水分解に対する安定性が高く、湿熱環境においても使用可能なポリブチレンテレフタレート樹脂が望まれている。
従来より、ポリブチレンテレフタレートの耐加水分解性の改良を目的に、カルボジイミド系化合物やオキサゾリン系化合物を添加することが試みられている。しかしながら、これらの化合物を添加しても耐加水分解性の改良効果は十分でなく、効果を上げるためにこれらの化合物を多量に添加するとポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の熱安定性や機械物性が悪化する畏れがあった。耐加水分解性を向上する方法としては、比較的短時間の溶融重合後、更に固相重合して、末端水酸基量を低減させたポリブチレンテレフタレートを使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
更に、ポリブチレンテレフタレート(PBTと略記することがある。)は、リレー部品の様な、電気、電子部品に使用される場合、樹脂から発生する有機ガスが、金属接点の腐食や金属接点への炭化物の付着の原因となり、導通不良を引き起こす畏れがある。これを避けるためには、成形品を真空ベーキングして脱ガスする必要があった。原因となる有機ガスの発生を抑制する試みとして、ポリブチレンテレフタレート100重量部に対して1,4−ブタンジオール等のポリオールを0.2〜10重量部配合した組成物が提案されている(例えば特許文献3参照)。しかし、この様な多量のポリオールを配合すると、成形時の金型汚れが問題となったり、樹脂成形品の機械的特性が低下する畏れがあった。このため、ポリブチレンテレフタレートが本来有する機械的特性を維持したまま、電気接点の腐食による導通不良を防ぐことが出来るポリブチレンテレフタレートが求められている。
【0004】
また、ポリブチレンテレフタレートは結晶性が大きいため、ガラス繊維などの強化充填剤を配合した成形体は、寸法精度や線膨張係数について満足すべきものとは言えず、とりわけ、成形反りが大きく、ケース、筐体等の材料としてはしばしば問題を生じていた。成形反りを低減するためにポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂等の非晶性樹脂やガラスフレーク、ガラスビーズ、ミルドファイバー等の等方性のフィラーを配合する方法が提案されている(例えば文特許文献4,5参照)。しかしながら、ポリブチレンテレフタレートに対して他樹脂が十分に微分散しないために強度や耐衝撃性が不良の場合がある。また、ポリカーボネートをポリブチレンテレフタレートに配合するにあたっては、エステル交換反応が過度に起こり、結晶化度や結晶化速度を低下させ、成形性や機械物性に悪影響を与える場合が少なくなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−149880号公報
【特許文献2】特開平6−256628号公報
【特許文献3】特開平8−209004号公報
【特許文献4】特開昭54−94556号公報
【特許文献5】特開昭52−121659号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成形サイクルが短く生産性に優れ、成形収縮率および成形反りが小さく、また機械物性および耐加水分解性に優れ、自動車部品、電気・電子部品などの広範囲の用途に好適に使用することができるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、末端カルボキシル基量、高温結晶化温度、残存テトラヒドロフラン量が制御されたポリブチレンテレフタレートにポリカーボネート樹脂、有機リン化合物および強化充填材を配合した樹脂組成物は、成形サイクルが短く、成形収縮率および成形反りが小さく、また機械物性および耐加水分解性に優れ、このようなポリブチレンテレフタレートは、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸を連続的に重合することにより製造し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、(A)末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、降温結晶化温度が175℃以上であるか、又は降温結晶化温度が175℃以上であり、残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)以下であるポリブチレンテレフタレート100重量部、(B)ポリカーボネート樹脂5〜100重量部、(C)有機リン化合物0.01〜1重量部および(D)強化充填材0〜200重量部を含有することを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びその成形品に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートの第一の態様は、末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、降温結晶化温度が175℃以上のポリブチレンテレフタレートである。本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートの第二の態様は、降温結晶化温度が175℃以上であり、ポリブチレンテレフタレート中の残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)以下のポリブチレンテレフタレートである。本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートは好ましくは、末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、降温結晶化温度が175℃以上であり、残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)以下である。本発明の成形品は、これらのポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形して得られる。
【0009】
本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量は、30eq/t以下であり、より好ましくは25eq/t以下である。ポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量は、PBTを有機溶媒に溶解し、水酸化アルカリ溶液を用いて滴定することにより求めることができる。末端カルボキシル基量を30eq/t以下とすることにより、PBTの耐加水分解性を高めることができる。樹脂中のカルボキシル基は、ポリブチレンテレフタレートの加水分解に対して自己触媒として作用するので、30eq/tを超える末端カルボキシル基が存在すると早期に加水分解が始まり、生成したカルボキシル基が自己触媒となって、連鎖的に加水分解が進行し、PBTの重合度が急速に低下するが、末端カルボキシル基量を30eq/t以下とすることにより、高温、高湿の条件においても、早期の加水分解を抑制することができる。
【0010】
(A)ポリブチレンテレフタレートの降温結晶化温度は175℃以上であり、より好ましくは177℃以上である。本発明において、降温結晶化温度は、示差走査熱量計で降温速度20℃/分にて測定した値であり、ポリブチレンテレフタレートが溶融した状態から降温速度20℃/分で冷却したときに現れる結晶化による発熱ピークの温度である。降温結晶化温度は、結晶化速度と対応するもので、降温結晶化温度が高いほど結晶化速度が速い。降温結晶化温度が175℃以上であると、射出成形に際して冷却時間を短縮し、生産性を高めることができる。降温結晶化温度が175℃未満であると、射出成形に際して結晶化に時間がかかり、射出成形後の冷却時間を長くせざるを得なくなり、成形サイクルが延びて生産性が低下するおそれがある。成形サイクルは、一定の成形条件下で射出成形を行い、成形片の離型の容易さ及び突き出しピン跡の有無により評価することができる。結晶化速度が遅くなるに従い、突き出しピンの跡が発生し、さらに遅くなると離型が不可能となる。
【0011】
(A)ポリブチレンテレフタレート中の残存テトラヒドロフラン量は、300ppm(重量比)以下であり、より好ましくは200ppm(重量比)以下である。残存テトラヒドロフラン量は、PBTペレットを水に浸漬して120℃で6時間処理し、水中に溶出したテトラヒドロフラン量をガスクロマトグラフィーで定量することにより、求めることができる。PBT中の残存テトラヒドロフラン量を300ppm(重量比)以下とすることにより、成形品を高温で使用してもテトラヒドロフランなどのガスの発生が少なく、電気的接点の腐食のおそれが少なく、リレー部品などの電気・電子部品に好適に使用することができる。残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)を超えると、成形品を高温で使用した際のテトラヒドロフランなどのガスの発生が多くなり、金属の腐食を引き起こすおそれがある。
残存テトラヒドロフラン量の下限は、特に限定されるものではないが、通常、50ppm(重量比)程度である。残存テトラヒドロフラン量が少ない方が、有機ガスの発生が少なくなる傾向はあるものの、残存量と、ガス発生量は必ずしも比例するものではない。また、特許文献3に記載される如く、少量のテトラヒドロフランの存在は、電気接点の腐食を抑制する効果も期待される。
【0012】
本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートは、固有粘度が0.5〜1.5dL/gであることが好ましく、0.6〜1.3dL/gであることがより好ましく、0.7〜1.1dL/gであることがさらに好ましい。固有粘度が0.5dL/g未満であると、成形品の機械的強度が不十分となるおそれがり、固有粘度が1.5dL/gを超えると、溶融粘度が高くなり、流動性が悪化して、成形性が不良となるおそれがある。固有粘度は、ポリブチレンテレフタレートを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(重量比1/1)の混合溶媒に溶解した溶液を用い、30℃で測定された溶液粘度から求められる。
【0013】
上記の如き特性を有する本発明のポリブチレンテレフタレートは、例えば、テレフタル酸及び1,4−ブタンジオールを主原料として連続重合することにより製造することができる。ポリブチレンテレフタレートの製造方法には、テレフタル酸ジメチルなどと、1,4−ブタンジオールとのエステル交換反応を経る方法と、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとの直接エステル化反応を経る方法がある。本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートの製造法としては、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールを出発原料とする直接エステル化反応を用いることが好ましく、原料コスト面からも有利である。また、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールを出発原料とする直接エステル化反応によれば、エステル交換反応を経る方法に比べて、降温結晶化温度が高いポリブチレンテレフタレートを容易に得ることができる。
【0014】
主原料とは、テレフタル酸が全ジカルボン酸成分の50モル%以上を占め、1,4−ブタンジオールが全ジオール成分の50モル%以上を占めることをいう。テレフタル酸は、全ジカルボン酸成分の80モル%以上を占めることがより好ましく、95モル%以上を占めることがさらに好ましい。1,4−ブタンジオールは、全ジオール成分の80モル%以上を占めることがより好ましく、95モル%以上を占めることがさらに好ましい。
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分に特に制限はなく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。
【0015】
1,4−ブタンジオール以外のジオール成分に特に制限はなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールなどの脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどの芳香族ジオールなどを挙げることができる。
本発明においては、さらに、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトールなどの三官能以上の多官能成分などを共重合成分として用いることができる。
【0016】
ジカルボン酸成分とジオール成分の反応方法は特に限定されるものではなく、回分式で反応させることも出来るが、本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、連続的に重合して製造することが好ましい。連続重合することにより、反応終了後の反応槽からの抜き出しの時間的経過に伴う分子量低下、末端カルボキシル基量の増加、残存テトラヒドロフラン量の増加が発生することがなく、高品質の樹脂を容易に得ることができる。
本発明のポリブチレンテレフタレートを製造する連続重合法に特に制限はないが、直列連続槽型反応器を用いて連続的に重合することが好ましい。例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分を、1基又は複数基のエステル化反応槽内で、エステル化反応触媒の存在下に、好ましくは150〜280℃、より好ましくは180〜265℃の温度、好ましくは6.67〜133kPa、より好ましくは9.33〜101kPaの圧力で、攪拌下に2〜5時間でエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物であるオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、1基又は複数基の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に、好ましくは210〜280℃、より好ましくは220〜265℃の温度、好ましくは26.7kPa以下、より好ましくは20kPa以下の減圧下で、攪拌下に2〜5時間で重縮合反応させることができる。重縮合反応により得られたポリブチレンテレフタレートは、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら又は水冷されたのちに、ペレタイザーで切断されてペレット状などの粒状体とされる。
本発明に用いるエステル化反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽などを挙げることができる。エステル化反応槽は、1基とすることができ、あるいは、同種又は異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできる。本発明に用いる重縮合反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽などを挙げることができる。重縮合反応槽は、1基とすることができ、あるいは、同種又は異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできる。
【0017】
図1に、本発明のポリブチレンテレフタレートを製造する装置の一態様の工程系統図を示して説明する。テレフタル酸、1、4−ブタンジオール及びエステル化反応触媒が、スラリー調製槽1に供給され、撹拌、混合されて、スラリーが調製される。調製されたスラリーは、連続的に第一エステル化反応槽2に移送され、エステル化反応によりオリゴマーとなる。なお、本図では、簡略化のために、ポンプ、精留塔、冷却バスなどの付帯設備は図示しない。オリゴマーは、第一エステル化反応槽から連続的に第二エステル化反応槽3に移送され、1,4−ブタンジオールが留去されて、より分子量の大きいオリゴマーとなる。第二エステル化反応槽のオリゴマーは、連続的に第一重縮合反応槽4に移送され、重縮合反応が進められてプレポリマーとなる。第一重縮合反応槽のプレポリマーは、連続的に第二重縮合反応槽5に移送され、さらに重縮合反応が進められて、所定の重合度を有する本発明のポリブチレンテレフタレートとなる。樹脂は、第二重縮合反応槽の底部からダイに移送されてストランド状に抜き出され、ペレタイザー6で切断されて樹脂ペレットとなる。
【0018】
用いるエステル化反応触媒に特に制限はなく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物などを挙げることができる。これらの中で、チタン化合物を特に好適に用いることができる。エステル化触媒として用いるチタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどのチタンアルコラート、テトラフェニルチタネートなどのチタンフェノラートなどを挙げることができる。チタン化合物触媒の使用量は、例えば、テトラブチルチタネートの場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂の理論収量に対して、チタン原子として30〜300ppm(重量比)を用いることが好ましく、50〜200ppm(重量比)を用いることがより好ましい。
【0019】
重縮合反応触媒としては、新たな触媒の添加を行うことなく、エステル化反応時に添加したエステル化反応触媒を引き続いて重縮合反応触媒として用いることができ、あるいは、重縮合反応時に、エステル化反応時に添加したエステル化反応触媒と同じ又は異なる触媒をさらに添加することもできる。例えば、テトラブチルチタネートをさらに添加する場合、その使用量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の理論収量に対して、チタン原子として、300ppm(重量比)以下であることが好ましく、150ppm(重量比)以下であることがより好ましい。エステル化反応触媒と異なる重縮合反応触媒としては、例えば、三酸化二アンチモンなどのアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物などを挙げることができる。
【0020】
エステル化反応及び/又は重縮合反応においては、前記の触媒の他に、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、又は、これらのエステルや金属塩などの燐化合物、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物などの反応助剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチルテトラキス〔3−(3’5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などのフェノール化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)などのチオエーテル化合物、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどの燐化合物などの抗酸化剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルなどの長鎖脂肪酸又はそのエステル、シリコーンオイルなどの離型剤などの他の添加剤を存在させることができる。
【0021】
本発明に使用される(B)ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって作られる分岐していてもよいポリカーボネート重合体または共重合体が挙げられる。芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチンなどを前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、使用量は、0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0022】
分子量を調節するには、一価芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール及びp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンをホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させて製造されるポリカーボネート樹脂、または2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とを用いて製造されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。また、2種以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、15,000〜30,000であり、好ましくは16,000〜25,000である。本発明樹脂組成物中の(B)ポリカーボネート樹脂の含有量はポリブチレンテレフタレート100重量部に対して、5〜100重量部である。(B)ポリカーボネート樹脂の量が100重量部を越えると結晶化速度が遅く溶融粘度が高く極度に成形性が悪化し、5重量部未満であると成形収縮率や成形反りの低減の効果が不十分である。(B)ポリカーボネート樹脂の配合量は、好ましくは、7〜90重量部、更に好ましくは10〜80重量部である。
【0023】
本発明に使用される(C)有機リン化合物としては、有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物または有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。中でも、有機ホスフェート化合物が好ましい。特に下記一般式(1)で表される長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が好ましい。
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、Rは炭素数8〜30のアルキル基を表し、nは1又は2である。)。
一般式(1)において、Rで表される炭素数8〜30のアルキル基の具体例としては、n−オクチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、トリアンコチル基等が挙げられる。また、nが1のモノアルキルアシッドホスフェート、nが2のジアルキルアシッドホスフェート、或いはそれらの混合物も使用される。
本発明組成物中の(C)有機リン化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート100重量部に対し0.01〜1重量部である。含有量が0.01重量部未満であると、材料の加熱安定性および滞留安定性の向上効果が低下し、1重量部を越えるとかえって他の性能に悪影響を及ぼす。有機リン化合物の含有量は、好ましくは0.05〜0.6重量部であり、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。また、これらの有機リン化合物は、一種または二種以上を併用して使用してもよい。
【0026】
本発明樹脂組成物は上記の(A)〜(C)の成分を必須として含有し、更に(D)強化充填材を含有することが好ましい。本発明に使用される(D)強化充填材としては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維などの無機繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維などの有機繊維などを挙げることができる。これらの強化充填材は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、無機充填材を好適に用いることができ、ガラス繊維を特に好適に用いることができる。強化充填材が無機繊維又は有機繊維である場合、その平均繊維径に特に制限はないが、1〜100μmであることが好ましく、2〜50μmであることがより好ましく、3〜30μmであることがさらに好ましく、5〜20μmであることが特に好ましい。また、平均繊維長にも特に制限はないが、0.1〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることがより好ましい。
【0027】
(D)強化充填材は、ポリブチレンテレフタレート樹脂との界面密着性を向上させるために、収束剤又は表面処理剤で表面処理した強化充填材を用いることが好ましい。収束剤又は表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物を挙げることができる。強化充填材は、収束剤又は表面処理剤によりあらかじめ表面処理して用いても、あるいは、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の調製の際に、収束剤又は表面処理剤と共に添加して表面処理することもできる。本発明組成物中の、(D)強化充填材の含有量は、ポリブチレンテレフタレート100重量部に対して0〜200重量部である。(D)強化充填材の含有量がポリブチレンテレフタレート100重量部に対して200重量部を超えると、ポリブチレンテレフタレートとの溶融混練や、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形が困難になるおそれがある。(D)強化充填材の添加量は、ポリブチレンテレフタレート100重量部に対して3〜180重量部であることが好ましく、5〜160重量部がより好ましい。
【0028】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、(D)強化充填材とともに他の充填材を配合することができる。配合する他の充填材としては、例えば、板状無機充填材、セラミックビーズ、ワラストナイト、タルク、クレー、マイカ、ゼオライト、カオリン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを挙げることができる。板状無機充填材を配合することにより、成形品の異方性及びソリを低減することができる。板状無機充填材としては、例えば、ガラスフレーク、雲母、金属箔などを挙げることができる。これらの中で、ガラスフレークが特に好適に用いられる。
【0029】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、難燃性を付与するために難燃剤を配合することができる。配合する難燃剤に特に制限はなく、例えば、有機ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、その他の有機難燃剤、無機難燃剤などを挙げることができる。有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレートなどを挙げることができる。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダなどを挙げることができる。リン化合物としては、例えば、リン酸エステル、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、赤リンなどを挙げることができる。その他の有機難燃剤としては、例えば、メラミン、シアヌール酸などの窒素化合物などを挙げることができる。その他の無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ素化合物、ホウ素化合物などを挙げることができる。
【0030】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、必要に応じて、慣用の添加剤などを配合することができる。配合する添加剤に特に制限はなく、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤、滑剤、離型剤、触媒失活剤、結晶核剤、結晶化促進剤などの添加剤は、重合途中あるいは重合後に添加することができる。さらに、ポリブチレンテレフタレートに、所望の性能を付与するために、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの安定剤、染顔料などの着色剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤などを配合することができる。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂には、必要に応じて、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂を配合して成形品とすることができる。これらの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
本発明の樹脂組成物を製造する方法は特に限定されるものではなく、(A)ポリブチレンテレフタレートに(B)ポリカーボネート樹脂、(C)有機リン化合物、及び必要に応じて、(D)強化充填材その他の種々の添加剤を配合することにより製造される。配合方法も特に制限はなく、公知の任意の方法を採用することができるが、溶融混練により配合することが好ましく、熱可塑性樹脂について通常使用される混練方法を適用することができる。混練方法としては、例えば、各成分を、必要により、付加的成分である物質とともに、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダーなどにより均一に混合したのち、一軸混練押出機、多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー、ブラベンダーなどを用いて混練することができる。各成分は、付加的成分を含めて、混練機に一括して供給することができ、あるいは、順次供給することもできる。また、付加的成分を含めて、各成分から選ばれた2種以上の成分をあらかじめ混合しておくこともできる。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いた成形品の成形加工方法に特に制限はなく、熱可塑性樹脂について一般に用いられている成形法、すなわち、射出成形、中空成形、押し出し成形、プレス成形などの成形法を適用することができる。
【0032】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、ポリブチレンテレフタレート及び樹脂組成物の物性の測定及び評価は下記の方法により行った。
(1)末端カルボキシル基量
ポリブチレンテレフタレート0.1gをベンジルアルコール3mLに溶解し、水酸化ナトリウムの0.1モル/Lベンジルアルコール溶液を用いて滴定した。
【0033】
(2)降温結晶化温度
示差走査熱量計[パーキンエルマー社、型式1B]を用い、昇温速度20℃/分で室温から300℃まで昇温したのち、降温速度20℃/分で80℃まで降温し、発熱ピークの温度を測定し、降温結晶化温度とした。
(3)残存テトラヒドロフラン量
ポリブチレンテレフタレートのペレット5gを水10gに浸漬し、加圧下に120℃で6時間処理し、水中に溶出したテトラヒドロフランをガスクロマトグラフィーにより定量した。
【0034】
(4)固有粘度
ウベローデ型粘度計とフェノール/1,1,2,2,−テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を用い、30℃において、ポリブチレンテレフタレート濃度1.0g/dL、0.6g/dL及び0.3g/dLの溶液の粘度を測定し、粘度数を濃度0に外挿して算出した。
【0035】
(5)引張強度
射出成形機(住友重機械(株)製 型式S−75 MIII)を用い、250℃にて、実施例又は比較例の樹脂組成物からISO引張試験片を成形し、ISO527に従い、引張強度を測定した。
(6)曲げ物性
ISO引張試験片と同様にISO曲げ試験片を射出成形機にて成形し、ISO178に従い、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
【0036】
(7)シャルピー衝撃強さ
射出成形で得られたISO試験片にノッチ加工を施した後、ISO179に従い、シャルピー衝撃強さを測定した。
(8)耐加水分解性
ISO引張試験片を、121℃、飽和水蒸気中、203kPaで、100時間湿熱処理する。処理前後の引張強度をISO527に従って測定し、次式に従い、強度保持率を求めた。
【0037】
【数1】
強度保持率(%)=(処理後の引張強度/処理前の引張強度)×100
【0038】
(9)ソリ量
直径100mm、厚さ1.6mmの円板を成形した。ゲートは円周上の1点ゲートである。円板の片端を平板に固定し、反対側が平板から浮き上がった距離をmm単位で測定した。
【0039】
実施例1
図1に工程系統図を示す装置を用いて連続重合を行った。まず、テレフタル酸1.0モルに対して1,4−ブタンジオール1.8モルの割合でそれぞれスラリー調製槽1に供給し、攪拌装置で混合して調製したスラリー2,972重量部(テレフタル酸9.06モル部、1,4−ブタンジオール16.31モル部)を、連続的にギヤポンプにより、温度230℃、圧力101kPaに調整した第一エステル化反応槽2に移送するとともに、テトラブチルチタネート3.14重量部を供給し、滞留時間2時間で、攪拌下にエステル化反応させてオリゴマーを得た。ついで、第一エステル化反応槽から、オリゴマーを、温度240℃、圧力101kPaに調整した第二エステル化反応槽3に移送し、滞留時間1時間で、撹拌下にエステル化反応をさらに進めた。
【0040】
第二エステル化反応槽から、オリゴマーを、温度250℃、圧力6.67kPaに調整した第一重縮合反応槽4に移送し、滞留時間2時間で、攪拌下に重縮合反応させ、プレポリマーを得た。第一重縮合反応槽から、プレポリマーを、温度250℃、圧力133Paに調整した第二重縮合反応槽5に移送し、滞留時間3時間で、攪拌下に重縮合反応をさらに進めて、ポリマーを得た。このポリマーを第二重縮合槽から抜き出してダイに移送し、ストランド状に引き出して、ペレタイザー6で切断することにより、ベレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は20eq/tであり、降温結晶化温度は178℃であり、残存テトラヒドロフラン量は180ppm(重量比)であり、固有粘度は0.85dL/gであった。
【0041】
このポリブチレンテレフタレートのペレット100重量部に対して、ポリカーボネート樹脂(三菱化学(株)製、グレード名:7022PJ−4LV、粘度平均分子量:約14,000)43重量部、リン化合物としてオクタデシルアシッドホスフェート(旭電化(株)製、AX−71、モノアルキル体とジアルキル体の混合物)0.2重量部およびガラス繊維(日本電気硝子(株)製、T−187、繊維径13μm、繊維長3mm)61重量部を、スクリュー径30mmのベント付き二軸押出機[(株)日本製鋼所TEX30C]を用いて260℃にて溶融混練しストランド状に押し出してペレット化した。
得られたペレットの降温結晶化温度をDSCにより測定した。また、ペレットから射出成形機によりISO試験片および直径100mmの円板を作製した。ISO試験片を用いて引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、シャルピー衝撃値を測定した。引張試験片を湿熱処理することにより耐加水分解性を評価した。また、円板を用いてソリ量を測定した。結果を第1表に示した。
【0042】
実施例2
ポリカーボネート樹脂とガラス繊維の配合量を第1表に示す量用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、同様に試験片を成形し、試験を実施した。結果を第1表に示した。
【0043】
比較例1
ポリカーボネート樹脂やリン化合物を配合せず、ガラス繊維を43重量部配合した以外は実施例1と同様に試験片を成形し、試験を実施した。結果を第1表に示した。
【0044】
比較例2
テレフタル酸ジメチル及び1,4−ブタンジオールを用い、回分式装置を用いて重合を行った。テレフタル酸ジメチル1.0モルに対して、1,4−ブタンジオール1.8モルの割合で、合計3,226重量部をエステル交換反応槽に供給し、テトラブチルチタネート3.14重量部を添加し、温度210℃、圧力101kPaで、3時間エステル交換反応させて、オリゴマーを得た。引き続いて、このオリゴマーを、重縮合反応槽に移送し、攪拌下に、温度250℃、圧力133Paで、3時間重縮合反応を進めてポリマーを得た。次いで、窒素圧をかけてストランド状に抜き出し、ペレタイザーで切断することにより、ペレット状のポリブチレンテレフタレートを得た。
得られたポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量は41eq/tであり、降温結晶化温度は170℃であり、残存テトラヒドロフラン量は680ppm(重量比)であり、固有粘度は0.85dL/gであった。
このポリブチレンテレフタレートのペレット100重量部に対して、実施例で用いたのと同じポリカーボネート樹脂43重量部、有機リン化合物0.2重量部およびガラス繊維61重量部をスクリュー径30mmのベント付き二軸押出機[(株)日本製鋼所TEX30C]を用いて260℃にて溶融混練しストランド状に押し出してペレット化した。
得られたペレットの降温結晶化温度をDSCにより測定した。また、ペレットから射出成形機によりISO試験片および直径100mmの円板を作製した。
ISO試験片を用いて引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、シャルピー衝撃値を測定した。引張試験片を湿熱処理することにより耐加水分解性を評価した。また、円板を用いてソリ量を測定した。結果を第1表に示した。
【0045】
比較例3
ポリカーボネート樹脂とガラス繊維の配合量を第1表に示す量用いた以外は比較例2と同様にして樹脂組成物を調製し、同様に試験片を成形し、試験を実施した。結果を第1表に示した。
【0046】
比較例4
ポリカーボネート樹脂およびリン化合物は配合せず、ガラス繊維を43重量部配合した以外は実施例2と同様にして樹脂組成物を調製し、同様に試験片を成形し、試験を実施した。結果を第1表に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
第1表に見られるように、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールを連続的に重縮合して得られた末端水酸基量、降温結晶化温度、残存テトラヒドロフラン量が本発明の規定内のポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂とガラス繊維を含有する実施例1,2のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、テレフタル酸ジメチルと1,4−ブタンジオールを回分式で重縮合して得られた末端水酸基量、残存テトラヒドロフラン量が多く、降温結晶化温度が低いポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂とガラス繊維を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物(比較例2,3)に比べて、降温結晶化温度が高く(=結晶化速度が速い)、成形サイクルが短いと推定される。また、機械特性、耐加水分解性に優れている。
【0050】
【発明の効果】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、成形サイクルが短く生産性に優れ、機械特性および耐加水分解性に優れ、また、成形収縮率および成形反りが小さく、自動車部品、電気・電子部品などの広範囲の用途に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂を製造する装置の一態様の工程系統図である。
【符号の説明】
1 スラリー調製槽
2 第一エステル化反応槽
3 第二エステル化反応槽
4 第一重縮合反応槽
5 第二重縮合反応槽
6 ペレタイザー
Claims (7)
- (A)末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、降温結晶化温度が175℃以上であるか、又は降温結晶化温度が175℃以上であり、残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)以下であるポリブチレンテレフタレート100重量部、(B)ポリカーボネート樹脂5〜100重量部、(C)有機リン化合物0.01〜1重量部および(D)強化充填材0〜200重量部を含有することを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- (A)ポリブチレンテレフタレートが、末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、降温結晶化温度が175℃以上であり、残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)以下であることを特徴とする請求項1記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- (A)ポリブチレンテレフタレートの固有粘度が、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を用いて30℃で測定した場合、0.5〜1.5dL/gであることを特徴とする請求項1又は2記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- (A)ポリブチレンテレフタレートが、テレフタル酸及び1,4−ブタンジオールを主原料とし、連続的に重合して得られるポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- (B)ポリカーボネート樹脂が、ビスフェノールAをホスゲンまたは炭酸ジエステルと反応させることによって作られるポリカーボネート重合体または共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- (C)有機リン化合物が、有機ホスフェート化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
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