JP2004091583A - 難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Makoto Saito
斉藤 良
Hidekazu Shoji
庄司 英和
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Abstract

【課題】高い難燃性を有し、成形サイクルが短く生産性に優れ、電気的接点の腐食がなく、とりわけ加水分解に対する安定性が高く、リレー部品などの電気・電子部品に好適に使用することができる難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品を提供する
【解決手段】(A)末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、且つ、降温結晶化温度が175℃以上であるか、又は降温結晶化温度が175℃以上であり、且つ、残存テトラヒドロフラン量が300ppm以下であるポリブチレンテレフタレート、(B)臭素化芳香族化合物系難燃剤,(C)アンチモン化合物、(D)ポリテトラフルオロエチレン及び要すれば(E)強化充填材を含有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品に関する。さらに詳しくは、本発明は、高い難燃性を有し、成形サイクルが短く生産性に優れ、電気的接点の腐食がなく、とりわけ加水分解に対する安定性が高く、リレー部品などの電気・電子部品に好適に使用することができる難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリエステル樹脂の中で代表的なエンジニアリングプラスチックであるポリブチレンテレフタレート(PBTと略記することがある)は、成形加工の容易さ、機械的物性、耐熱性、その他の物理的、化学的特性に優れていることから、自動車部品、電気・電子部品、精密機器部品などの分野で広く使用されている。ポリブチレンテレフタレートは、結晶化速度が速く、射出成形に好適であるが、さらに結晶化速度を向上し、成形サイクルを短縮して生産性を高めることが望まれている。
ポリブチレンテレフタレートは、低吸湿性であるために、常温では水の影響を本質的に受けない。しかし、高温では水や水蒸気によってエステル基が加水分解されてヒドロキシル基とカルボキシル基が生成し、カルボキシル基が自己触媒となってさらに加水分解を促進するので、湿熱環境下における使用は制限される。このために、加水分解に対する安定性が高く、湿熱環境においても使用可能なポリブチレンテレフタレートが望まれている。
また、ポリブチレンテレフタレートは、リレー部品のような電気、電子部品に使用される場合、PBTから発生する有機ガスが金属接点の腐食や金属接点への炭化物の付着の原因となり、導通不良を引き起こすおそれがある。導通不良を防止するため、成形品を真空ベーキングして脱ガスする方法が採られているが、操作が煩雑で製品の劣化を招く畏れのある、真空ベーキングの代わりに接触不良の原因となる有機ガスの発生を抑制する試みがなされている。例えば、特開平8−209004号には、PBT100重量部に、ポリオールを0.2〜10重量部配合した組成物が提案されているが、この様な多量のポリオールの配合は、成形時の金型汚染の畏れがあり、また成形品の機械的特性の低下の畏れがある。
【0003】
また、電気、電子部品、自動車部品その他の電装部品、機械部品等に使用される樹脂には、難燃性が求められる。近年、電気、電子部品や電装部品は、各種機器の小型化、軽量化の趨勢から薄肉小型化されてきており、それに利用される各種成型品も小型化と薄肉化が進んでいる。薄肉成形品においては、その最も薄い部分に対応する難燃性が要求される場合が多く、難燃性としてはUL−94に規定されるランクV−0の難燃性が指標とされ、一般に成形品が薄肉になるほど難燃化の達成は困難になる。所定の難燃性を達成するために、難燃剤を多量に配合したPBTは、発生ガスの増加による金属接点腐食および耐加水分解性の悪化がより惹起されやすくなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い難燃性を有し、成形サイクルが短く生産性に優れ、電気的接点の腐食がなく、とりわけ加水分解に対する安定性が高く、リレー部品などの電気・電子部品に好適に使用することができる難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品を提供することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、末端カルボキシル基量が30eq/t以下、降温結晶化温度が175℃以上、残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)以下であるポリブチレンテレフタレートに特定の難燃剤および難燃助剤を配合した樹脂組成物は、成形サイクルが短く、電気的接点の腐食をさせにくく、とりわけ加水分解に対する安定性に優れことを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、(A)末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、且つ、降温結晶化温度が175℃以上であるか、又は降温結晶化温度が175℃以上であり、且つ、残存テトラヒドロフラン量が300ppm以下であるポリブチレンテレフタレート100重量部、(B)臭素化芳香族化合物系難燃剤3〜50重量部,(C)アンチモン化合物1〜30重量部、(D)ポリテトラフルオロエチレン0.1〜5重量部および(E)強化充填材0〜150重量部を含有してなる難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートの第一の態様は、末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、降温結晶化温度が175℃以上であるポリブチレンテレフタレートであり、第二の態様は、降温結晶化温度が175℃以上であり、ポリブチレンテレフタレート中の残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)以下であるポリブチレンテレフタレートである。本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートは、末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、降温結晶化温度が175℃以上であり、残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)以下であることが好ましい。
【0007】
本発明に使用されるポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量は、30eq/t以下であり、より好ましくは25eq/t以下である。末端カルボキシル基量は、PBTを有機溶媒に溶解し、水酸化アルカリ溶液を用いて滴定することにより求めることができる。PBTの末端カルボキシル基量が30eq/t以下であることにより、本発明の樹脂組成物の耐加水分解性を著しく高めることができる。PBT中のカルボキシル基は、加水分解に対して自己触媒として作用するので、30eq/tを超える末端カルボキシル基が存在すると早期に加水分解が始まり、生成したカルボキシル基が自己触媒となって、連鎖的に加水分解が進行し、樹脂の重合度が急速に低下するが、本発明樹脂組成物は、末端カルボキシル基量が30eq/t以下のPBTを使用することにより、高温、高湿の条件においても、早期の加水分解が抑制される。
【0008】
本発明に使用される、(A)ポリブチレンテレフタレートの降温結晶化温度は175℃以上であり、より好ましくは177℃以上である。本発明において、降温結晶化温度は、示差走査熱量計で、降温速度20℃/分の条件で測定した結晶化温度を意味し、この降温結晶化温度は、PBTが溶融した状態から降温速度20℃/分で冷却したときに現れる結晶化による発熱ピークの温度である。降温結晶化温度は、結晶化速度と対応し、降温結晶化温度が高いほど結晶化速度が速い。降温結晶化温度が175℃以上であると、本発明樹脂組成物を射出成形するに際して冷却時間を短縮し、生産性を高めることができる。降温結晶化温度が175℃未満であると、射出成形に際して結晶化に時間がかかり、射出成形後の冷却時間を長くせざるを得なくなり、成形サイクルが伸びて生産性が低下するおそれがある。成形サイクルは、一定の成形条件下で射出成形を行い、成形片の離型の容易さ及び突き出しピン跡の有無により評価することができる。結晶化速度が遅くなるに従い、突き出しピンの跡が発生し、さらに遅くなると離型が不可能となる。
【0009】
本発明に使用される、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂中の残存テトラヒドロフラン量は、300ppm(重量比)以下であり、より好ましくは200ppm(重量比)以下である。PBT中の残存テトラヒドロフラン量は、PBTペレットを水に浸漬して120℃で6時間処理し、水中に溶出したテトラヒドロフラン量をガスクロマトグラフィーで定量することにより、求めることができる。PBT中の残存テトラヒドロフラン量を300ppm(重量比)以下とすることにより、本発明樹脂組成物から得られる成形品を高温で使用してもテトラヒドロフランなどのガスの発生が少なく、電気的接点の腐食のおそれが少なく、リレー部品などの電気・電子部品に好適に使用することができる。PBT中の残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)を超えると、成形品を高温で使用した際に、テトラヒドロフランなどのガスの発生が多くなり、金属の腐食を引き起こすおそれがある。
残存テトラヒドロフラン量の下限は、特に限定されるものではないが、通常、50ppm(重量比)程度である。残存テトラヒドロフラン量が少ない方が、有機ガスの発生が少なくなる傾向はあるものの、残存量と、ガス発生量は必ずしも比例するものではない。また、特開平8−209004に記載される如く、少量のテトラヒドロフランの存在は、電気接点の腐食を抑制する効果も期待される。
【0010】
本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートは、固有粘度が0.5〜1.5dL/gであることが好ましく、0.6〜1.3dL/gであることがより好ましく、0.7〜1.1dL/gであることがさらに好ましい。(A)ポリブチレンテレフタレートの固有粘度が0.5dL/g未満であると、成形品の機械的強度が不十分となるおそれがある。固有粘度が1.5dL/gを超えると、本発明樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、流動性が悪化して、成形性が不良となるおそれがある。なお、本発明においてPBTの固有粘度は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(重量比1/1)の混合溶媒を用いて30℃で測定した溶液粘度から求められる値である。
【0011】
上述の特性を有する本発明の(A)ポリブチレンテレフタレートの製法は、特に限定されるものではないが、テレフタル酸及び1,4−ブタンジオールを主原料とする連続重合により得ることが出来る。主原料とは、テレフタル酸が全ジカルボン酸成分の50モル%以上を占め、1,4−ブタンジオールが全ジオール成分の50モル%以上を占めることをいう。テレフタル酸は、全ジカルボン酸成分の80モル%以上を占めることがより好ましく、95モル%以上を占めることがさらに好ましい。1,4−ブタンジオールは、全ジオール成分の80モル%以上を占めることがより好ましく、95モル%以上を占めることがさらに好ましい。
【0012】
本発明において、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分に特に制限はなく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。
【0013】
本発明において、1,4−ブタンジオール以外のジオール成分に特に制限はなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1、6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールなどの脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどの芳香族ジオールなどを挙げることができる。
本発明においては、さらに、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトールなどの三官能以上の多官能成分などを共重合成分として用いることができる。
【0014】
本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、連続的に重合して得られる樹脂であることが好ましい。連続重合の方法に特に制限はないが、直列連続槽型反応器を用いて連続的に重合することが好ましい。例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分を、1基又は複数基のエステル化反応槽内で、エステル化反応触媒の存在下に、好ましくは150〜280℃、より好ましくは180〜265℃の温度、好ましくは6.67〜133kPa、より好ましくは9.33〜101kPaの圧力で、攪拌下に2〜5時間でエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物であるオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、1基又は複数基の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に、好ましくは210〜280℃、より好ましくは220〜265℃の温度、好ましくは26.7kPa以下、より好ましくは20kPa以下の減圧下で、攪拌下に2〜5時間で重縮合反応させることができる。重縮合反応により得られたポリブチレンテレフタレート樹脂は、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら又は水冷されたのちに、ペレタイザーで切断されてペレット状などの粒状体とされる。
【0015】
用いるエステル化反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽などを挙げることができる。エステル化反応槽は、1基とすることができ、あるいは、同種又は異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできる。本発明に用いる重縮合反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽などを挙げることができる。重縮合反応槽は、1基とすることができ、あるいは、同種又は異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできる。
【0016】
図1は、本発明に使用される(A)ポリブチレンテレフタレートを製造する装置の一態様の工程系統図である。テレフタル酸、1,4−ブタンジオール及びエステル化反応触媒が、スラリー調製槽1に供給され、撹拌、混合されて、スラリーが調製される。調製されたスラリーは、連続的に第一エステル化反応槽2に移送され、エステル化反応によりオリゴマーとなる。なお、本図では、簡略化のために、ポンプ、精留塔、冷却バスなどの付帯設備は図示しない。オリゴマーは、第一エステル化反応槽から連続的に第二エステル化反応槽3に移送され、1,4−ブタンジオールが留去されて、より分子量の大きいオリゴマーとなる。第二エステル化反応槽のオリゴマーは、連続的に第一重縮合反応槽4に移送され、重縮合反応が進められてプレポリマーとなる。第一重縮合反応槽のプレポリマーは、連続的に第二重縮合反応槽5に移送され、さらに重縮合反応が進められて、所定の重合度を有する本発明のポリブチレンテレフタレートとなる。PBTは、第二重縮合反応槽の底部からダイに移送されてストランド状に抜き出され、ペレタイザー6で切断されて樹脂ペレットとなる。
【0017】
本発明に用いるエステル化反応触媒に特に制限はなく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物などを挙げることができる。これらの中で、チタン化合物を特に好適に用いることができる。エステル化触媒として用いるチタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどのチタンアルコラート、テトラフェニルチタネートなどのチタンフェノラートなどを挙げることができる。チタン化合物触媒の使用量は、例えば、テトラブチルチタネートの場合、ポリブチレンテレフタレートの理論収量に対して、チタン原子として30〜300ppm(重量比)を用いることが好ましく、50〜200ppm(重量比)を用いることがより好ましい。
重縮合反応触媒としては、新たな触媒の添加を行うことなく、エステル化反応時に添加したエステル化反応触媒を引き続いて重縮合反応触媒として用いることができ、あるいは、重縮合反応時に、エステル化反応時に添加したエステル化反応触媒と同じ又は異なる触媒をさらに添加することもできる。例えば、テトラブチルチタネートをさらに添加する場合、その使用量は、ポリブチレンテレフタレートの理論収量に対して、チタン原子として、300ppm(重量比)以下であることが好ましく、150ppm(重量比)以下であることがより好ましい。エステル化反応触媒と異なる重縮合反応触媒としては、例えば、三酸化二アンチモンなどのアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物などを挙げることができる。
【0018】
エステル化反応及び/又は重縮合反応においては、前記の触媒の他に、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、又は、これらのエステルや金属塩などの燐化合物、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物などの反応助剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)などのチオエーテル化合物、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどの燐化合物などの抗酸化剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルなどの長鎖脂肪酸又はそのエステル、シリコーンオイルなどの離型剤などの他の添加剤を存在させることができる。
【0019】
ポリブチレンテレフタレートの製造方法には、テレフタル酸ジメチルなどと、1,4−ブタンジオールとのエステル交換反応を経る方法と、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとの直接エステル化反応を経る方法がある。テレフタル酸と1,4−ブタンジオールを出発原料とする直接エステル化反応は、原料コスト面から有利である。また、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールを出発原料とする直接エステル化反応によれば、エステル交換反応を経る方法に比べて、降温結晶化温度が高いポリブチレンテレフタレートを容易に得ることができる。
ポリブチレンテレフタレートの製造方法には、回分式反応と連続式反応がある。回分式反応は、エステル交換反応又はエステル化反応と重縮合反応を回分式で行う方法であり、連続式反応は、エステル化反応と重縮合反応を連続的に行う方法である。テレフタル酸と1,4−ブタンジオールを連続的に重合する場合、反応終了後の反応槽からの抜き出しの時間的経過に伴う分子量低下、末端カルボキシル基量の増加、残存テトラヒドロフラン量の増加を回避して、高品質の樹脂を容易に得ることができる。
【0020】
本発明で用いられる(B)臭素化芳香族化合物系難燃剤としては、樹脂に使用される臭素系難燃剤として知られている芳香族系化合物であり、例えばテトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー、ポリ(ペンタブロモベンジルアルコール)、ポリブロモフェニルエーテル、ブロム化ポリスチレン、ブロム化エポキシ、ブロム化イミド、ブロム化ポリカーボネート等が挙げられる。(B)臭素化芳香族化合物系難燃剤の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート100重量部に対し、3〜50重量部である。(B)臭素化芳香族化合物系難燃剤の配合量が3重量部未満であると難燃効果が不十分であり、50重量部を越えると機械的強度が低下し、溶融時の熱安定性が低下しやすい。臭素化芳香族化合物系難燃剤の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート100重量部に対し、好ましくは5〜40重量部であり、より好ましくは6〜30重量部である。
【0021】
本発明に使用される(C)アンチモン化合物としては、例えば酸化アンチモンやアンチモン酸塩が挙げられ、具体例としては、三酸化アンチモン(Sb)、四酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)等の酸化物或いはアンチモン酸ナトリウム等のアンチモン酸塩が挙げられる。
(C)アンチモン化合物の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート100重量部に対し、1〜30重量部である。アンチモン化合物の配合量が1重量部未満であると充分な難燃効果が得られず、30重量部を越えると機械的強度が低下し、溶融時の熱安定性が低下しやすい。アンチモン化合物の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート100重量部に対し、好ましくは2〜25重量部であり、より好ましくは3〜20重量部である。
【0022】
本発明に使用される(D)ポリテトラフルオロエチレンとしては、フィブリル形成能を有するものが好ましい。すなわち、樹脂中に容易に分散し、且つ重合体同士が結合して繊維状材料を作る傾向を示すものであり、滴下防止剤として機能する。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類され、例えば、ダイキン化学工業(株)のポリフロンFA−500、またはF−201L、旭硝子(株)のフルオンCD−123、三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(R)6Jとして商業的に入手できる。
【0023】
(D)ポリテトラフルオロエチレンの配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート100重量部に対し、0.1〜5重量部である。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの配合量が0.1重量部未満であると本発明の効果が発揮されず、5重量部を越えると押出性、成形性等の加工性が損なわれる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート100重量部に対し、好ましくは0.2〜4重量部であり、より好ましくは0.3〜3重量部である。
【0024】
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、上記(A)〜(D)の成分を含むことを必要とするが、これら成分以外に更に、(E)強化充填材を含んでいても良い。本発明に使用される(E)強化充填材の種類は、特に制限はなく、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維などの無機繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維などの有機繊維などを挙げることができる。これらの強化充填材は、1種を単独で用いるでも良いし、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、無機充填材が好適に用いられ、特にガラス繊維を好適に用いることができる。(E)強化充填材が無機繊維又は有機繊維である場合、その平均繊維径に特に制限はないが、1〜100μmであることが好ましく、2〜50μmであることがより好ましく、3〜30μmであることがさらに好ましく、5〜20μmであることが特に好ましい。また、平均繊維長にも特に制限はないが、0.1〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることがより好ましい。
強化充填材は、ポリブチレンテレフタレートとの界面密着性を向上させるために、収束剤又は表面処理剤で表面処理した強化充填材を用いることが好ましい。収束剤又は表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物を挙げることができる。強化充填材は、収束剤又は表面処理剤によりあらかじめ表面処理しておくことができ、あるいは、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の調製の際に、収束剤又は表面処理剤を添加して表面処理することもできる。強化充填材の添加量は、ポリブチレンテレフタレート100重量部に対して、0〜150重量部であることが好ましく、5〜100重量部であることがより好ましい。
【0025】
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、強化充填材とともに他の充填材を配合することができる。配合する他の充填材としては、例えば、板状無機充填材、セラミックビーズ、アスベスト、ワラストナイト、タルク、クレー、マイカ、ゼオライト、カオリン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを挙げることができる。板状無機充填材を配合することにより、成形品の異方性及びソリを低減することができる。板状無機充填材としては、例えば、ガラスフレーク、雲母、金属箔どを挙げることができる。これらの中で、ガラスフレークを特に好適に用いることができる。
【0026】
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、臭素化芳香族化合物、アンチモン化合物及びポリテトラフルオロエチレン以外の難燃剤を配合することができる。配合する難燃剤に特に制限はなく、例えば、有機塩素系化合物、リン化合物、その他の有機難燃剤、無機難燃剤などを挙げることができる。リン化合物としては、例えば、リン酸エステル、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、赤リンなどを挙げることができる。その他の有機難燃剤としては、例えば、メラミン、シアヌール酸などの窒素化合物などを挙げることができる。その他の無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ素化合物、ホウ素化合物などを挙げることができる。
【0027】
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、必要に応じて、この種樹脂組成物に慣用の添加剤などを配合することができる。配合する添加剤に特に制限はなく、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤、滑剤、離型剤、触媒失活剤、結晶核剤、結晶化促進剤などの添加剤は、重合途中あるいは重合後に添加することができる。また、耐加水分解性をさらに向上させるべくエポキシ化合物、カルボジイミド、オキサゾリンなどを添加できる。さらに、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、所望の性能を付与するために、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの安定剤、染顔料などの着色剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤などを配合することができる。
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、必要に応じて、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイドなどの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂を配合して成形品とすることができる。これらの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する方法は、特に制限されることはなく、例えば、(i)(A)ポリブチレンテレフタレート、(B)臭素化芳香族化合物系難燃剤、(C)アンチモン化合物、(D)ポリテトラフルオロエチレン、および必要に応じて(E)強化充填材、他の添加剤を混合し、スクリュー型押出機によって溶融・混練してペレット化する一括ブレンド方法、或いは、(ii)まず(A)ポリブチレンテレフタレートをスクリュー型押出機によって溶融・混練し、押出機の他の供給口から(E)強化充填材などの他の成分、および必要に応じてその他の添加剤を供給し、溶融・混練して、ペレット化する分割ブレンド方法などが挙げられる。
【0029】
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形品の成形加工方法に特に制限はなく、熱可塑性樹脂について一般に用いられている成形法、すなわち、射出成形、中空成形、押出し成形、プレス成形などの成形法を適用することができる。
【0030】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、ポリブチレンテレフタレート或いはその組成物の物性の測定及び成形物の評価は下記の方法により行った。
【0031】
(1)末端カルボキシル基量;
ポリブチレンテレフタレート0.1gをベンジルアルコール3mLに溶解し、水酸化ナトリウムの0.1モル/Lベンジルアルコール溶液を用いて滴定した。
【0032】
(2)降温結晶化温度;
示差走査熱量計[パーキンエルマー社、型式1B]を用い、昇温速度20℃/分で室温から300℃まで昇温したのち、降温速度20℃/分で80℃まで降温し、発熱ピークの温度を測定し、降温結晶化温度とした。
【0033】
(3)残存テトラヒドロフラン量;
ポリブチレンテレフタレートのペレット5gを水10gに浸漬し、加圧下に120℃で6時間処理し、水中に溶出したテトラヒドロフラン量をガスクロマトグラフィーにより定量した。
【0034】
(4)固有粘度;
ポリブチレンテレフタレートをフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒に溶解し、ウベローデ型粘度計を用い、30℃において、PBT濃度1.0g/dL、0.6g/dL及び0.3g/dLの溶液粘度を測定し、粘度数を濃度0に外挿して算出した。
【0035】
(5)難燃性;
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物から厚さが1/32インチの試験片を成形し、アンダーライターズラボラトリーズィンコーポレーションのUL−94「材料分類のための燃焼試験」(以下、UL−94)に示される試験方法に従って試験を行い、5個の試験片の結果に基づいてUL−94規格のV−0、V−1およびV−2のいずれかの等級に評価した。UL−94についての各Vの等級基準は、概略以下のとおりである。
(i)V−0:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が5秒以下であり、かつ、全試験片とも脱脂綿に着火するような微粒炎を落下しない。
(ii)V−1:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が25秒以下であり、かつ、全試験片とも脱脂綿に着火するような微粒炎を落下しない。
(iii)V−2:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が25秒以下であり、かつ、これらの試験片から落下した微粒炎から脱脂綿に着火する。
【0036】
(6)発生ガス;
樹脂組成物ペレット5gを内容量26mLのガラス製バイヤル瓶に入れ、150℃で2時間加熱した後、気相部からマイクロシリンジを用いてサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析する。クロマトグラムのピーク面積を求め、その面積に相当する量のテトラヒドロフラン重量を樹脂組成物に対する比(ppm)として表した。発生ガスの大部分(約90%)がTHFと考えられる。
【0037】
(7)耐加水分解性;
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物からASTM1号ダンベル片を作成し、121℃、飽和水蒸気中、203kPaで、非強化の場合は60時間、ガラス繊維(GF)強化の場合は100時間それぞれ湿熱処理する。処理前後の試験片の引張強度を、ASTM D−638に従って測定し、次式に従い、強度保持率を求めた。
【0038】
【数1】
強度保持率(%)=(処理後の引張強度/処理前の引張強度)×100
【0039】
上式において、処理後の引張強度は、非強化では60時間湿熱処理後の値、GF強化では100時間湿熱処理後の値である。
【0040】
実施例および比較例における各成分は、以下のものを使用した。
(1)臭素化芳香族化合物;ポリ(ペンタブロモベンジルアルコール)、ブロモケム・ファーイースト社製、商品名:PBBPA。
(2)アンチモン化合物:三酸化アンチモン、森六社製。
(3)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ダイキン工業社製、商品名ポリフロンFA−500。
(4)強化充填材:直径13μmのガラス繊維、日本電気硝子社製、銘柄名T−187。
【0041】
実施例1
図1に示す工程に従って連続重合を行った。テレフタル酸1.0モルに対して1,4−ブタンジオール1.8モルの割合で両原料をスラリー調製槽1に供給し、攪拌装置で混合して調製したスラリー2,972重量部(テレフタル酸9.06モル部、1,4−ブタンジオール16.31モル部)を、連続的にギヤポンプにより、温度230℃、圧力101kPaに調整した第一エステル化反応槽2に移送するとともに、テトラブチルチタネート3.14重量部を供給し、滞留時間2時間で、攪拌下にエステル化反応させてオリゴマーを得た。
第一エステル化反応槽から、オリゴマーを、温度240℃、圧力101kPaに調整した第二エステル化反応槽3に移送し、滞留時間1時間で、撹拌下にエステル化反応をさらに進めた。
第二エステル化反応槽から、オリゴマーを、温度250℃、圧力6.67kPaに調整した第一重縮合反応槽4に移送し、滞留時間2時間で、攪拌下に重縮合反応させ、プレポリマーを得た。
第一重縮合反応槽から、プレポリマーを、温度250℃、圧力133Paに調整した第二重縮合反応槽5に移送し、滞留時間3時間で、攪拌下に重縮合反応をさらに進めて、ポリマーを得た。このポリマーを第二重縮合槽から抜き出してダイに移送し、ストランド状に引き出して、ペレタイザー6で切断することにより、ベレット状のポリブチレンテレフタレートを得た。
【0042】
得られたポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量は20eq/t、降温結晶化温度は178℃、残存テトラヒドロフラン量は180ppm(重量比)、固有粘度は0.85dL/gであった。
このポリブチレンテレフタレートのペレット100重量部に対して、ポリ(ペンタブロモベンジルアルコール)15.4重量部、三酸化アンチモン7.7重量部、ポリテトラフルオロエチレン1.0重量部およびガラス繊維53.2重量部を二軸押出機((株)日本製鋼所製、型式TEX30C スクリュー径30mm)を用いてシリンダ設定温度255℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練、押出してペレット化した。得られたペレットを用い、試験片を成形した。UL−94試験片は、射出成形機(日本製鋼所製、型式J28SA)を用い、シリンダー温度270℃、金型温度80℃で、ASTM1号ダンベル片は、射出成形機(住友重機械社製、型式SG−75)を用い、温度255℃、金型温度80℃にて成形した。なお、成形に際して、樹脂組成物はその直前まで120℃にて6〜8時間乾燥した。この試験片の湿熱処理前の引張強度は126MPa、湿熱処理後の引張強度は76MPaであり、強度保持率は60%であった。難燃性はV−0で、発生ガス量は10ppmであった。結果を表−1にまとめた。
【0043】
実施例2及び3
ポリ(ペンタブロモベンジルアルコール)、三酸化アンチモン、ポリテトラフルオロエチレンおよびガラス繊維を表−1に示した処方で配合した以外は実施例1と同様にして難燃性組成物を調製し、同様に試験片を作成し試験を実施した。結果を表−1に示した。
【0044】
比較例1、2
ポリ(ペンタブロモベンジルアルコール)、三酸化アンチモン、ポリテトラフルオロエチレンおよびガラス繊維を表−1に示した処方で配合した以外は実施例1と同様にして難燃性組成物を調製し、同様に試験片を作成し試験を実施した。結果を表−1に示した。
【0045】
比較例3
回分式反応装置を用いて、重合を行った。テレフタル酸ジメチル1.0モルに対して、1,4−ブタンジオール1.8モルの割合で、合計3,226重量部をエステル交換反応槽に供給し、テトラブチルチタネート3.14重量部を添加し、温度210℃、圧力101kPaで、3時間エステル交換反応させて、オリゴマーを得た。
引き続いて、このオリゴマーを、重縮合反応槽に移送し、攪拌下に、温度250℃、圧力133Paで、3時間重縮合反応を進めてポリマーを得た。次いで、窒素圧をかけてストランド状に抜き出し、ペレタイザーで切断することにより、ペレット状のポリブチレンテレフタレートを得た。
得られたポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量は41eq/tであり、降温結晶化温度は170℃、残存テトラヒドロフラン量は680ppm(重量比)、固有粘度は0.85dL/gであった。
【0046】
得られたポリブチレンテレフタレートのペレット100重量部に対して、ポリ(ペンタブロモベンジルアルコール)15.4重量部、三酸化アンチモン7.7重量部、ポリテトラフルオロエチレン1.0重量部およびガラス繊維53.2重量部を二軸押出機((株)日本製鋼所製、型式TEX30C、スクリュー径30mm)を用いてシリンダ設定温度255℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練、押出してペレット化した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして、UL−94試験片及びASTM1号ダンベル片を成形した。この試験片の湿熱処理前の引張強度は125MPa、湿熱処理後の引張強度は38MPaであり、強度保持率は30%であった。また、難燃性はV−0で発生ガス量は25ppmであった。結果を表−1にまとめた。
【0047】
比較例4及び5
ポリ(ペンタブロモベンジルアルコール)、三酸化アンチモン、ポリテトラフルオロエチレンおよびガラス繊維を表−1に示した処方で配合した以外は比較例3と同様にして難燃性組成物を調整し、同様に試験片を作成し試験を実施した。結果を表−1に示した。
【0048】
【表1】
Figure 2004091583
【0049】
【表2】
Figure 2004091583
【0050】
表−1に見られるように、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールを連続的に重縮合して得られ、末端カルボキシル基量、降温結晶化温度、残存テトラヒドロフラン量が本発明の規定内のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いた難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物である実施例1、2は、テレフタル酸ジメチルと1,4−ブタンジオールを回分式で重縮合して製造され、末端カルボキシル基量及び残存テトラヒドロフラン量が多いポリブチレンテレフタレート樹脂を用いた難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物(比較例3、4)に比べて、難燃性は同等であるが、耐加水分解性に優れている。また発生ガスも少ないことから金属接点の腐食防止効果も大きいと思われる。PTFEを請求範囲より多く添加した場合(比較例1)は、引張強度が低下、すなわち脆い材料となり、PTFE添加量を請求範囲より少なく添加した場合(比較例2)は高度な難燃性であるV−0に到達しない。
【0051】
【発明の効果】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、成形サイクルが短く生産性に優れ、電気的接点の腐食がなく、とりわけ加水分解に対する安定性が高く、接点腐食性に対して厳しい電気・電子部品などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂を製造する装置の一態様の工程系統図である。
【符号の説明】
1 スラリー調製槽
2 第一エステル化反応槽
3 第二エステル化反応槽
4 第一重縮合反応槽
5 第二重縮合反応槽
6 ペレタイザー

Claims (5)

  1. (A)末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、且つ、降温結晶化温度が175℃以上であるか、又は降温結晶化温度が175℃以上であり、且つ、残存テトラヒドロフラン量が300ppm以下であるポリブチレンテレフタレート100重量部、(B)臭素化芳香族化合物系難燃剤3〜50重量部,(C)アンチモン化合物1〜30重量部、(D)ポリテトラフルオロエチレン0.1〜5重量部および(E)強化充填材0〜150重量部を含有してなる難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  2. (A)ポリブチレンテレフタレートが、末端カルボキシル基量が30eq/t以下であり、降温結晶化温度が175℃以上であり、残存テトラヒドロフラン量が300ppm(重量比)以下である請求項1記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. (A)ポリブチレンテレフタレートの固有粘度が、0.5〜1.5dL/gである請求項1又は2記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  4. (A)ポリブチレンテレフタレートが、テレフタル酸及び1,4−ブタンジオールを主原料とし、連続的に重合して得られるポリブチレンテレフタレートである請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
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