以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
先ず、本発明で使用するポリブチレンテレフタレート(A)(以下、PBTと略記することがある)について説明する。本発明で使用するPBTとは、テレフタル酸単位および1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステルであり、ジカルボン酸単位の50モル%以上がテレフタル酸単位から成り、ジオール単位の50モル%以上が1,4−ブタンジオール単位から成る高分子を言う。全ジカルボン酸単位中のテレフタル酸単位の割合は、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上であり、全ジオール単位中の1,4−ブタンジオール単位の割合は、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。テレフタル酸単位または1,4−ブタンジオール単位が50モル%より少ない場合は、PBTの結晶化速度が低下し、成形性の悪化を招く。
本発明で使用するPBTにおいて、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分には特に制限はなく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることが出来る。これらのジカルボン酸成分は、ジカルボン酸として、または、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料として、ポリマー骨格に導入できる。
本発明で使用するPBTにおいて、1,4−ブタンジオール以外のジオール成分には特に制限はなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール等を挙げることが出来る。
本発明で使用するPBTにおいては、更に、乳酸、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分などを共重合成分として使用することが出来る。
本発明で使用するPBTは、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸(又はテレフタル酸ジアルキル)を原料とし、触媒としてチタン化合物を使用して得られる。
チタン触媒の具体例としては、酸化チタン、四塩化チタン等の無機チタン化合物、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等が挙げられる。これらの中ではテトラアルキルチタネートが好ましく、その中ではテトラブチルチタネートが好ましい。
チタンの他に、触媒としてスズを使用してもよい。スズは、通常、スズ化合物として使用され、その具体例としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などが挙げられる。
スズはポリブチレンテレフタレートの色調を悪化させるため、その添加量はスズ原子として、通常200ppm以下、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下、中でも添加しないことが好ましい。
また、チタンの他に、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等のマグネシウム化合物、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物の他、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、それらのエステルや金属塩などの燐化合物、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム等の反応助剤を使用してもよい。
本発明で使用するPBTの特徴は、チタン含量がチタン原子として33ppmより多く75ppm以下である点に存する。上記の値はPBTに対する原子の重量比である。
上記のチタン含有量の下限は、好ましくは35ppm、更に好ましくは40ppmであり、上限は、好ましくは60ppm、更に好ましくは50ppmである。チタンの含有量が少なすぎる場合は、PBTの重合反応速度が低下するため、高温、長時間で重合反応を進めざるを得なくなり、PBTの色調悪化や熱劣化反応が助長されるだけでなく、芳香族ポリカーボネートとの混練の際に反応が進行せずポリマーアロイの機械的物性の低下を招く。一方、チタンの含有量が多過ぎる場合は、混練時や成形時のガスの発生や熱安定性の悪化を招くだけでなく、エステル交換反応の制御が困難となり、芳香族ポリカーボネートとのポリマーアロイの物性の不安定さ、熱安定性の悪化、機械的物性の低下を招く。更に、チタン化合物は芳香族ポリカーボネートの水酸基と反応し着色する傾向があるため色調の悪化も招く。
チタン原子などの金属原子の含有量は、湿式灰化などの方法でポリマー中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively CoupledPlasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
本発明で使用するPBTの末端カルボキシル基濃度は、通常50μeq/g以下、好ましくは1〜40μeq/g、更に好ましくは1〜30μeq/g、特に好ましくは10〜25μeq/gである。末端カルボキシル基濃度が高すぎる場合は、耐加水分解性が悪化したり、芳香族ポリカーボネートとの相溶性が悪化したりする傾向にある。
PBTの末端カルボキシル基濃度は、PBTを有機溶媒などに溶解し、水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ溶液を使用して滴定することにより求めることが出来る。
また、本発明で使用するPBTの末端ビニル基濃度は、通常0.1〜15μeq/g、好ましくは0.5〜10μeq/g、更に好ましくは1〜8μeq/gである。末端ビニル基濃度が高すぎる場合は、色調悪化の原因となる。成形時の熱履歴により、末端ビニル基濃度は更に上昇する傾向にあるため、成形温度が高い場合、リサイクル工程を有する製造方法の場合には、更に色調悪化が顕著となる。
PBTの末端には、水酸基、カルボキシル基、ビニル基の他に、原料由来のメトキシカルボニル基が残存していることがあり、特に、テレフタル酸ジメチルを原料とする場合には多く残存することがある。ところで、メトキシカルボニル末端は、成形時による熱により、毒性のあるメタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸を発生する。また、蟻酸は金属製の成形機器やこれに付随する真空関連機器などを痛めることがある。そこで、本発明で使用するPBTにおける末端メトキシカルボニル基濃度は、好ましくは0.5μeq/g以下、更に好ましくは0.3μeq/g以下、特に好ましくは0.2μeq/g以下、最適には0.1μeq/g以下である。
上記の各末端基濃度は、重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=7/3(体積比)の混合溶媒にPBTを溶解させ、1H−NMRを測定することによって定量することが出来る。この際、溶媒シグナルとの重なりを防ぐため、重ピリジン等の塩基性成分などを極少量添加してもよい。
本発明で使用するPBTの固有粘度は、通常0.60〜2.50dL/g、好ましくは0.70〜2.00dL/g、更に好ましくは0.80〜1.20dL/g、特に好ましくは0.80〜1.10である。固有粘度が0.60dL/g未満の場合は成形品の機械的強度が不十分となり、2.50dL/gを超える場合は溶融粘度が高くなり、流動性が悪化して成形性や製品の表面性が悪化する傾向にある。また、PBTの固有粘度が高すぎても低すぎても、芳香族ポリカーボネートと溶融混練した際の分散性が悪化する傾向にある。上記の固有粘度は、フェノール/テトラクロルエタン(重量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃で測定した値である。
次に、本発明で使用するPBTの製造方法について説明する。PBTの製造方法は、原料面から、ジカルボン酸を主原料として使用するいわゆる直接重合法と、ジカルボン酸ジアルキルを主原料として使用するエステル交換法とに大別される。前者は初期のエステル化反応で水が生成し、後者は初期のエステル交換反応でアルコールが生成するという違いがある。
また、PBTの製造方法は、原料供給またはポリマーの払い出し形態から回分法と連続法に大別される。初期のエステル化反応またはエステル交換反応を連続操作で行って、それに続く重縮合を回分操作で行ったり、逆に、初期のエステル化反応またはエステル交換反応を回分操作で行って、それに続く重縮合を連続操作で行う方法もある。
本発明においては、原料の入手安定性、留出物の処理の容易さ、原料原単位の優位性、本発明による改良効果という観点から、直接重合法が好ましい。また、本発明においては、生産性や製品品質の安定性、本発明による改良効果の観点から、連続的に原料を供給し、連続的にエステル化反応またはエステル交換反応を行う方法を採用する。そして、本発明においては、エステル化反応またはエステル交換反応に続く重縮合反応も連続的に行ういわゆる連続法が好ましい。
本発明においては、エステル化反応槽にて、チタン触媒の存在下、少なくとも一部の1,4−ブタンジオールをテレフタル酸(又はテレフタル酸ジアルキル)とは独立にエステル化反応槽(又はエステル交換反応槽)に供給しながら、テレフタル酸(又はテレフタル酸ジアルキル)と1,4−ブタンジオールとを連続的にエステル化(又はエステル交換)する工程が好ましく採用される。
すなわち、本発明においては、触媒に由来するヘイズや異物を低減し、触媒活性を低下させないため、原料スラリー又は溶液として、テレフタル酸またはテレフタル酸ジアルキルと共に供給される1,4−ブタンジオールとは別に、しかも、テレフタル酸またはテレフタル酸ジアルキルとは独立に1,4−ブタンジオールをエステル化反応槽またはエステル交換反応槽に供給する。以後、当該1,4−ブタンジオールを「別供給1,4−ブタンジオール」と称することがある。
上記の「別供給1,4−ブタンジオール」には、プロセスとは無関係の新鮮な1,4−ブタンジオールを当てることが出来る。また、「別供給1,4−ブタンジオール」は、エステル化反応槽またはエステル交換反応槽から留出した1,4−ブタンジオールをコンデンサ等で捕集し、そのまま、または、一時タンク等へ保持して反応槽に還流させたり、不純物を分離、精製して純度を高めた1,4−ブタンジオールとして供給することも出来る。以後、コンデンサ等で捕集された1,4−ブタンジオールから構成される「別供給1,4−ブタンジオール」を「再循環1,4−ブタンジオール」と称することがある。資源の有効活用、設備の単純さの観点からは、「再循環1,4−ブタンジオール」を「別供給1,4−ブタンジオール」に当てることが好ましい。
また、通常、エステル化反応槽またはエステル交換反応槽より留出した1,4−ブタンジオールは、1,4−ブタンジオール成分以外に、水、アルコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン等の成分を含んでいる。従って、上記の留出物した1,4−ブタンジオールは、コンデンサ等で捕集した後、または、捕集しながら、水、アルコール、THF等の成分と分離、精製し、反応槽に戻すことが好ましい。
そして、本発明においては、「別供給1,4−ブタンジオール」の内、10重量%以上を反応液液相部に直接戻すことが好ましい。ここで、反応液液相部とは、エステル化反応槽またはエステル交換反応槽中の気液界面の液相側を示し、反応液液相部に直接戻すとは、配管などを使用して「別供給1,4−ブタンジオール」が気相部を経由せずに直接液相部分に供給されることを表す。反応液液相部に直接戻す割合は、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。反応液液相部に直接戻す「別供給1,4−ブタンジオール」が少ない場合は、チタン触媒が失活する傾向にある。
また、反応器に戻す際の「別供給1,4−ブタンジオール」の温度は、通常50〜220℃、好ましくは100〜200℃、更に好ましくは150〜190℃である。「別供給1,4−ブタンジオール」の温度が高過ぎる場合はTHFの副生量が多くなる傾向にあり、低過ぎると場合は熱負荷が増すためエネルギーロスを招く傾向がある。
また、本発明においては、触媒の失活を防ぐため、エステル化反応(又はエステル交換反応)に使用されるチタン触媒の内、10重量%以上をテレフタル酸(又はテレフタル酸ジアルキル)とは独立に反応液液相部に直接供給することが好ましい。ここで、反応液液相部とは、エステル化反応槽またはエステル交換反応槽中の気液界面の液相側を示し、反応液液相部に直接供給するとは、配管などを使用し、チタン触媒が反応器の気相部を経由せずに直接液相部分に供給されることを表す。反応液液相部に直接添加するチタン触媒の割合は、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
上記のチタン触媒は、溶媒などに溶解させたり又は溶解させずに直接エステル化反応槽またはエステル交換反応槽の反応液液相部に供給することも出来るが、供給量を安定化させ、反応器の熱媒ジャケット等からの熱による変性などの悪影響を軽減するためには、1,4−ブタンジオール等の溶媒で希釈することが好ましい。この際の濃度は、溶液全体に対するチタン触媒の濃度として、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%、更に好ましくは0.08〜8重量%である。また、異物低減の観点から、溶液中の水分濃度は、通常0.05〜1.0重量%とし、溶液調製の際の温度は、失活や凝集を防ぐ観点から、通常20〜150℃、好ましくは30〜100℃、更に好ましくは40〜80℃とする。また、触媒溶液は、劣化防止、析出防止、失活防止の点から、別供給1,4−ブタンジオールと配管などで混合してエステル化反応槽またはエステル交換反応槽に供給することが好ましい。
直接重合法を採用した連続法の一例は、次の通りである。すなわち、テレフタル酸を主成分とする前記ジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とする前記ジオール成分とを原料混合槽で混合してスラリーとし、単数または複数のエステル化反応槽内で、チタン触媒の存在下に、通常180〜260℃、好ましくは200〜245℃、更に好ましくは210〜235℃の温度、また、通常10〜133kPa、好ましくは13〜101kPa、更に好ましくは60〜90kPaの圧力下(絶対圧力、以下同じ)で、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜6時間で、連続的にエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、単数または複数の重縮合反応槽内で、重縮合触媒の存在下に、好ましくは連続的に、通常210〜280℃、好ましくは220〜260℃、更に好ましくは230〜250℃の温度で、少なくとも1つの重縮合反応槽においては、通常20kPa以下、好ましくは10kPa以下、更に好ましくは5kPa以下の減圧下で、攪拌下に、通常2〜15時間、好ましくは3〜10時間で重縮合反応させる。重縮合反応により得られたポリマーは、通常、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら又は水冷後、カッターで切断され、ペレット状、チップ状などの粒状体とされる。
直接重合法の場合は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとのモル比は、以下の式(I)を満たすことが好ましい。
上記の「エステル化反応槽に外部から供給される1,4−ブタンジオール」とは、原料スラリー又は溶液として、テレフタル酸またはテレフタル酸ジアルキルと共に供給される1,4−ブタンジオールの他、これらとは独立に供給する1,4−ブタンジオール、触媒の溶媒として使用される1,4−ブタンジオール等、反応槽外部から反応槽内に入る1,4−ブタンジオールの総和である。
上記のB/TPAの値が1.1より小さい場合は、転化率の低下や触媒失活を招き、5.0より大きい場合は、熱効率が低下するだけでなく、THF等の副生物が増大する傾向にある。B/TPAの値は、好ましくは1.5〜4.5、更に好ましくは2.0〜4.0、特に好ましくは3.1〜3.8である。
エステル交換法を採用した連続法の一例は、次の通りである。すなわち、単数または複数のエステル交換反応槽内で、チタン触媒の存在下に、通常110〜260℃、好ましくは140〜245℃、更に好ましくは180〜220℃の温度、また、通常10〜133kPa、好ましくは13〜120kPa、更に好ましくは60〜101kPaの圧力下で、通常0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間で、連続的にエステル交換反応させ、得られたエステル交換反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、単数または複数の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に、好ましくは連続的に、通常210〜280℃、好ましくは220〜260℃、更に好ましくは230〜250℃の温度で、少なくとも1つの重縮合反応槽においは、通常20kPa以下、好ましくは10kPa以下、更に好ましくは5kPa以下の減圧下で、攪拌下に、通常2〜15時間、好ましくは3〜10時間で重縮合反応させる。
エステル交換法の場合、テレフタル酸ジアルキルと1,4−ブタンジオールとのモル比は、次の式(II)を満たすことが好ましい。
上記のB/DATの値が1.1より小さい場合は、転化率の低下や触媒活性の低下を招き、2.5より大きい場合は、熱効率が低下するだけでなく、THF等の副生物が増大する傾向にある。B/DATの値は、好ましくは1.1〜1.8、更に好ましくは1.2〜1.5である。
本発明において、エステル化反応またはエステル交換反応は、反応時間短縮のため、1,4−ブタンジオールの沸点以上の温度で行うことが好ましい。1,4−ブタンジオールの沸点は反応の圧力に依存するが、101.1kPa(大気圧)では230℃、50kPaでは205℃である。
エステル化反応槽またはエステル交換反応槽としては、公知のものが使用でき、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽などの何れの型式であってもよく、また、単数槽としても、同種もしくは異種の槽を直列または並列させた複数槽としてもよい。中でも、攪拌装置を有する反応槽が好ましく、攪拌装置としては、動力部、軸受、軸、攪拌翼から成る通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機などの高速回転するタイプも使用することが出来る。
攪拌の形態は、特に制限されず、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部などから直接攪拌する通常の攪拌方法の他、配管などで反応液の一部を反応器の外部に持ち出してラインミキサ−等で攪拌し、反応液を循環させる方法も採ることが出来る。
攪拌翼の種類は、公知のものが選択でき、具体的には、プロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、デイスクタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼などが挙げられる。
PBTの製造においては、通常、複数段の反応槽を使用し、好ましくは2〜5の反応槽を使用し、順次に分子量を上昇させていく。通常、初期のエステル化反応またはエステル交換反応に引き続き、重縮合反応が行われる。
PBTの重縮合反応工程は、単数の反応槽を使用しても、複数の反応槽を使用してもよいが、好ましくは複数の反応槽を使用する。反応槽の形態は、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽などの何れの型式であってもよく、また、これらを組み合わせることも出来る。中でも、攪拌装置を有する反応槽が好ましく、攪拌装置としては、動力部、軸受、軸、攪拌翼から成る通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機などの高速回転するタイプも使用することが出来る。
攪拌の形態は、特に制限されず、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部などから直接攪拌する通常の攪拌方法の他、配管などで反応液の一部を反応器の外部に持ち出してラインミキサ−等で攪拌し、反応液を循環させる方法も採ることが出来る。中でも、少なくとも重縮合反応槽の1つは、水平方向に回転軸を有する表面更新とセルフクリーニング性に優れた横型の反応器を使用することが推奨される。
また、着色や劣化を抑え、ビニル基などの末端の増加を抑制するため、少なくとも1つの反応槽において、通常1.3kPa以下、好ましくは0.5kPa以下、更に好ましくは0.3kPa以下の高真空下で、通常225〜255℃、好ましくは230〜250℃、更に好ましくは233〜245℃の温度で行うのがよい。
更に、PBTの重縮合反応工程は、一旦、溶融重縮合で比較的分子量の小さい、例えば、固有粘度0.1〜1.0程度のPBTを製造した後、引き続き、PBTの融点以下の温度で固相重縮合(固相重合)させることも出来る。
以下、添付図面に基づき、PBTの製造方法の好ましい実施態様を説明する。図1は本発明で採用するエステル化反応工程またはエステル交換化反応工程の一例の説明図、図2は本発明で採用する重縮合工程の一例の説明図である。
図1において、原料のテレフタル酸は、通常、原料混合槽(図示せず)で1,4−ブタンジオールと混合され、原料供給ライン(1)からスラリーの形態で反応槽(A)に供給され、原料がテレフタル酸ジアルキルの場合は、通常溶融した状態で反応槽(A)に供給される。一方、チタン触媒は、好ましくは触媒調整槽(図示せず)で1,4−ブタンジオールの溶液とした後、触媒供給ライン(3)から供給される。図1では再循環1,4−ブタンジオールの再循環ライン(2)に触媒供給ライン(3)を連結し、両者を混合した後、反応槽(A)の液相部に供給する態様を示した。
反応槽(A)から留出するガスは、留出ライン(5)を経て精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離される。通常、高沸成分の主成分は1,4−ブタンジオールであり、低沸成分の主成分は、直接重合法の場合は水およびTHF、エステル交換法の場合は、アルコール、THF、水である。
精留塔(C)で分離された高沸成分は抜出ライン(6)から抜き出され、ポンプ(D)を経て、一部は再循環ライン(2)から反応槽(A)に循環され、一部は循環ライン(7)から精留塔(C)に戻される。また、余剰分は抜出ライン(8)から外部に抜き出される。一方、精留塔(C)で分離された軽沸成分はガス抜出ライン(9)から抜き出され、コンデンサ(G)で凝縮され、凝縮液ライン(10)を経てタンク(F)に一時溜められる。タンク(F)に集められた軽沸成分の一部は、抜出ライン(11)、ポンプ(E)及び循環ライン(12)を経て精留塔(C)に戻され、残部は、抜出ライン(13)を経て外部に抜き出される。コンデンサ(G)はベントライン(14)を経て排気装置(図示せず)に接続されている。反応槽(A)内で生成したオリゴマーは、抜出ポンプ(B)及び抜出ライン(4)を経て抜き出される。
図1に示す工程においては、再循環ライン(2)に触媒供給ライン(3)が連結されているが、両者は独立していてもよい。また、原料供給ライン(1)は反応槽(A)の液相部に接続されていてもよい。
図2において、前述の図1に示す抜出ライン(4)から供給されたオリゴマーは、第1重縮合反応槽(a)で減圧下に重縮合されてプレポリマーとなった後、抜出用ギヤポンプ(c)及び抜出ライン(L1)を経て第2重縮合反応槽(d)に供給され、更に、抜出用ギヤポンプ(e)及び抜出ライン(L3)を経て第3重縮合反応槽(k)に供給される。第3重縮合反応槽(k)は、複数個の攪拌翼ブロックで構成され、2軸のセルフクリーニングタイプの攪拌翼を具備した横型の反応槽である。そして、第2重縮合反応槽(d)において、通常、第1重縮合反応槽(a)よりも低い圧力で重縮合が進み、第3重縮合反応槽(k)において、重縮合が更に進み、ポリマーとなる。得られたポリマーは、抜出用ギヤポンプ(m)及び抜出ライン(L5)を経てダイスヘッド(g)から溶融したストランドの形態で抜き出され、水などで冷却された後、回転式カッター(h)で切断されてペレットとなる。符号(L2)、(L4)、(L6)は、各重縮合反応槽(a)、(d)、(k)のベントラインである。
次に、本発明で使用する芳香族ポリカーボネート(B)(以下、PCと略記することがある)について説明する。本発明で使用するPCとは、芳香族ヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステル又はホスゲンとを反応させることによって製造される、分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、これらの中ではビスフェノールAが好ましい。難燃性を高める観点から、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物は、スルホン酸テトラアルキルホスホニウムの他、臭素原子やシロキサン構造を有する基で置換された構造を有していてもよい。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で示されるポリヒドロキシ化合物の他、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等を前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として使用すればよく、その使用量は、通常0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜2モル%である。
また、分子量や末端基の調節などの目的で、一価芳香族ヒドロキシ化合物、そのクロロホルメート体などの一価芳香族ヒドロキシ化合物誘導体を使用することも出来、これらの具体例としては、フェノール、mー及p−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキルフェノール、これらの誘導体などが挙げられる。
本発明で使用するPCには、難燃性を高める目的でシロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合したり、成形時の流動性を改良する目的でジカルボン酸、ジカルボン酸クロライド等の誘導体を共重合することが出来る。更に、2種以上のPCを併用してもよい。
本発明で使用するPCの末端水酸基濃度は、通常60μeq/g以下、好ましくは1〜50μeq/g、更に好ましくは5〜50μeq/g、特に好ましくは10〜45μeq/g、中でも20〜40μeq/gが最適である。末端水酸基濃度が60μeq/gより大きいと、PBT由来のチタンによる着色が激しくなり、得られた熱可塑性樹脂組成物の機械的物性も低下する傾向にある。一方、末端水酸基濃度が小さすぎてもPBTとの相溶性が低下し、機械的物性が悪化する傾向にある。
PCの末端水酸基濃度は、芳香族ヒドロキシ化合物とホスゲンを反応させる界面重合法の場合には、例えば、反応温度、触媒、組成などの反応条件で制御することが出来、芳香族ヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを反応させる溶融重合法の場合には、例えば原料の組成比により制御することが出来る。
本発明においては、界面重合法および溶融重合法の何れの方法で得られたPCも使用できるが、末端水酸基濃度の制御のし易さという観点から、溶融重合法で得られたPCが好ましい。
本発明で使用するPCの分子量は、溶媒として塩化メチレンを使用し、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量として、通常14000〜40000、好ましくは15000〜30000、更に好ましくは15000〜23000である。
次に、本発明の熱可塑性樹脂組成物について説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前述のPBTとPCとを1/19〜19/1(重量比)で含有して成る。両成分の割合が上記の範囲外であると、夫々の成分の特徴を活かした所望の性能が発現されない。PBTとPCとの割合(重量比)は、好ましくは1/9〜9/1、更に好ましくは1/4〜4/1である。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前述のPBTとPCとのみから構成されていてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で各種の成分を含有することが出来る。
本発明の好ましい態様の熱可塑性樹脂組成物においては、前述のPBTとPCの他に、更に、繊維状強化充填材を更に含有する。
繊維状強化充填材としては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維などの無機繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維などの有機繊維などが挙げられる。これらの繊維状強化充填材は、2種以上を組み合わせて使用することが出来る。上記の繊維状強化充填材の中では、無機繊維、特にガラス繊維が好適に使用される。
繊維状強化充填材の平均繊維径は、通常1〜100μm、好ましくは2〜50μm、更に好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmである。また、平均繊維長は、通常0.1〜20mm、好ましくは1〜10mmである。
繊維強化充填材は、樹脂との界面密着性を向上させるため、収束剤または表面処理剤で表面処理して使用することが好ましい。収束剤または表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物が挙げられる。繊維強化充填材は、収束剤または表面処理剤により予め表面処理しておくことが出来、または、熱可塑性樹脂組成物の調製の際に、収束剤または表面処理剤を添加して表面処理することも出来る。
繊維状強化充填材の割合は、ポリブチレンテレフタレート(A)と芳香族ポリカーボネート(B)の合計100重量部に対し、通常0.1〜150重量部、好ましくは5〜100重量部である。繊維状強化充填材の割合が0.1重量部未満の場合は繊維状強化充填材の配合による効果が発現されず、150重量部を超える場合は、溶融混練や樹脂組成物の成形が困難となることがある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には他の充填材を配合することも出来る。他の充填材としては、例えば、板状無機充填材、セラミックビーズ、アスベスト、ワラストナイト、タルク、クレー、マイカ、ゼオライト、カオリン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。板状無機充填材の配合により、成形品の異方性およびソリを低減することが出来る。板状無機充填材としては、例えば、ガラスフレーク、雲母、金属箔などが挙げられる。これらの中ではガラスフレークが好ましい。これらの充填材の使用量は、ポリブチレンテレフタレート(A)と芳香族ポリカーボネート(B)の合計100重量部に対し、通常1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のフェノール化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物などの抗酸化剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸およびそのエステル、シリコーンオイル等の離型剤などを添加してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、難燃性を付与するために難燃剤を配合することが出来る。難燃剤としては、特に制限されず、例えば、有機ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、ポリシロキサン化合物、その他の有機難燃剤、無機難燃剤などが挙げられる。有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート等が挙げられる。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等が挙げられる。リン化合物としては、例えば、リン酸エステル、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等が挙げられる。その他の有機難燃剤としては、例えば、メラミン、シアヌール酸などの窒素化合物などが挙げられる。その他の無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ素化合物、ホウ素化合物などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸エステル、ABS樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を配合することが出来る。これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、慣用の添加剤などを配合することが出来る。斯かる添加剤としては、例えば、耐熱安定剤などの安定剤の他、滑剤、触媒失活剤、結晶核剤、結晶化促進剤などが挙げられる。これらの添加剤は、重合途中または重合後に添加することが出来る。更に、所望の性能を付与するため、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの安定剤、染顔料などの着色剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤などを配合することが出来る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常、単軸または二軸の押出機を使用して溶融混練する方法で製造されるが、分散性を向上させ機械的物性の向上を図るためには二軸の押出機を使用することが好ましい。中でも、溶融混練中の分子量低下を防ぐためにはベント口を有するタイプの押出機を使用することが好ましい。
PBTとPCの押出機への供給方法は、特に制限されないが、予め両者を混合して一括して供給する方法、複数のフィーダーを使用して押出機のホッパー内で混合して供給する方法、一方の樹脂を押出機に供給し、他方の樹脂を押出機の途中から供給する方法、これらを組み合わせた方法などが挙げられる。
また、本発明においては、PBT中の触媒濃度が一定範囲に制御されているため、溶融混練時のエステル交換反応の制御性が従来に比べ大幅に改善されているが、更にエステル交換反応制御性を向上させるために、触媒失活剤として、ホスファイト類、ホスフェート類など、特にモノ(ジ)アルキルホスフェート等のアシッドホスフェートを使用することが出来る。これらの添加量は、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜1重量部、更に好ましくは0.01〜0.5重量部である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形加工方法は、特に制限されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形法、すなわち、射出成形、中空成形、押し出し成形、プレス成形などの成形法を適用することが出来る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、色調、耐加水分解性、熱安定性、成形性、耐衝撃性、耐薬品性、寸法安定性に優れ、しかも、製造時や成形時の着色が抑制されており、産業上の利用価値が高い。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性および評価項目の測定方法は次の通りである。
(1)エステル化率:
以下の計算式(III)によって酸価およびケン化価から算出した。酸価は、ジメチルホルムアミドにオリゴマーを溶解させ、0.1NのKOH/メタノール溶液を使用して滴定により求めた。ケン化価は0.5NのKOH/エタノール溶液でオリゴマーを加水分解し、0.5Nの塩酸で滴定し求めた。
(2)PBT中のチタン濃度:
電子工業用高純度硫酸および硝酸でPBTを湿式分解し、高分解能ICP(Inductively Coupled Plasma)−MS(MassSpectrometer)(サーモクエスト社製)を使用して測定した。
(3)PBTの固有粘度([η]):
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度1.0g/dLのポリマー溶液および溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(IV)より求めた。
(4)降温結晶化温度(Tc):
示差走査熱量計[パーキンエルマー社、型式DSC7]を使用し、昇温速度20℃/minで室温から300℃まで昇温した後、降温速度20℃/minで80℃まで降温し、発熱ピークの温度を降温結晶化温度とした。Tcが高いほど結晶化速度が速く、成形サイクルが短くなる。
(5)PBTの末端カルボキシル基濃度:
ベンジルアルコール25mLにPBT又はオリゴマー0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定した。
(6)PBTの末端メトキシカルボニル基濃度および末端ビニル基濃度:
重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=7/3(体積比)の混合溶媒1mLにPBT約100mgを溶解させ、重ピリジン36μLを添加し、50℃で1H−NMRを測定し求めた。NMR装置には日本電子(株)製「α−400」又は「AL−400」を使用した。
(7)ペレット色調:
日本電色(株)製色差計(Z−300A型)を使用し、L、a、b表色系におけるb値で評価した。値が低いほど黄ばみが少なく色調が良好であることを示す。
(8)PBTの溶液ヘイズ:
フェノール/テトラクロロエタン=3/2(重量比)の混合液20mLにPBT2.70gを110℃で30分間溶解させた後、30℃の恒温水槽で15分間冷却し、日本電色(株)製濁度計(NDH−300A)を使用し、セル長10mmで溶液の濁度を測定した
。値が低いほど透明性が良好であることを示す。
(9)PCの粘度平均分子量(Mv)
芳香族ポリカーボネートの濃度(C)0.6g/dL塩化メチレン溶液を使用し、温度20℃でウベローデ粘度計で測定した比粘度(ηsp)から、以下の式(V)及び(VI)を使用して算出した。
(10)PCの末端水酸基濃度:
四塩化チタン/酢酸法(Makromol. Chem. 88 215(1965))により、比色定量を行った。
(11)引張およびシャルピー衝撃試験:
住友重機械(株)製射出成形機(型式SG−75MIII)を使用し、シリンダ温度250
℃、金型温度80℃の条件で、ISO294−1に準拠し、機械的物性測定用ISO試験片を成形し、性能評価を行った。引張試験はISO527に準拠して行なった。強度および伸びの単位は、それぞれ、「MPa」及び「%」である。また、シャルピー衝撃試験はISO179に準拠して行なった。ノッチ付き強度を測定し、その単位は「kJ/m2」である。
(12)溶融粘度低下比率:
東洋精機(株)製キャピログラフ(形式1B)の溶融粘度測定用シリンダーにペレットを充填し、270℃で5分間予熱した後、剪断速度91(sec−1)での溶融粘度を測定し(溶融粘度A)、そのままの温度で30分保持した後、再度溶融粘度を測定して(溶融粘度B)、これらの比(溶融粘度B/溶融粘度A)を算出した。値が大きいほど溶融熱安定性に優れることを示す。
実施例1:
図1に示すエステル化工程と図2に示す重縮合工程を通し、次の要領でPBTの製造を行った。先ず、テレフタル酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオール1.80モルの割合で混合した60℃のスラリーをスラリー調製槽から原料供給ライン(1)を通じ、予め、エステル化率99%のPBTオリゴマーを充填したスクリュー型攪拌機を有するエステル化のための反応槽(A)に、40.0kg/hとなる様に連続的に供給した。同時に、再循環ライン(2)から185℃の精留塔(C)の塔底成分を18.4kg/hで供給し、触媒供給ライン(3)から触媒として65℃のテトラブチルチタネートの6.0重量%1,4−ブタンジオール溶液を127g/hで供給した(理論ポリマー収量に対し40ppm)。この溶液中の水分は0.20重量%であった。
反応槽(A)の内温は230℃、圧力は78kPaとし、生成する水とTHF及び余剰の1,4−ブタンジオールを、留出ライン(5)から留出させ、精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離した。系が安定した後の塔底の高沸成分は、98重量%以上が1,4−ブタンジオールであり、精留塔(C)の液面が一定になる様に、抜出ライン(8)を通じてその一部を外部に抜き出した。一方、低沸成分は塔頂よりガスの形態で抜き出し、コンデンサ(G)で凝縮させ、タンク(F)の液面が一定になる様に、抜出ライン(13)より外部に抜き出した。
反応槽(A)で生成したオリゴマーの一定量は、ポンプ(B)を使用し、抜出ライン(4)から抜き出し、反応槽(A)内液の平均滞留時間が3.0hrになる様に液面を制御した。抜出ライン4から抜き出したオリゴマーは、第1重縮合反応槽(a)に連続的に供給した。系が安定した後、反応槽(A)の出口で採取したオリゴマーのエステル化率は97.4%であった。
第1重縮合反応槽(a)の内温は240℃、圧力2.7kPaとし、滞留時間が120分になる様に液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L2)から、水、THF、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応槽(d)に連続的に供給した。
第2重縮合反応槽(d)の内温は245℃、圧力140Paとし、滞留時間が60分になる様に液面制御を行い、減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L4)から、水、THF、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、更に重縮合反応を進めた。得られたポリマーは、抜出用ギヤポンプ(e)により抜出ライン(L3)を経由し、第3重縮合反応槽(k)に連続的に供給した。第3重縮合反応槽(k)の内温は239℃、圧力は600Pa、滞留時間は80分とし、更に、重縮合反応を進めた。得られたポリマーは、ダイスヘッド(g)からストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッター(h)でカッティングした。得られたPBTの末端カルボキシル基濃度は22μeq/gであった。得られたPBTは、色調に優れ、溶液ヘイズが低かった。分析値はまとめて表1に示した
上記のPBTと溶融重合法で得られた、粘度平均分子量が21000、末端水酸基濃度が31μeq/gのPC(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製、商品名「ノバレックス7022J」)を重量比7対3で混合し、日本製鋼社製二軸押出機(内径30mm)を使用し、260℃で溶融混練させ、PBTとPCのポリマーアロイを得た。得られたポリマーアロイは、色調、機械的強度、熱安定性に優れていた。結果をまとめて表1に示した。
実施例2:
実施例1において、第2重縮合反応槽(d)の内温を246℃、圧力を180Pa、滞留時間を80分、第3重縮合反応槽(k)の内温を243℃、圧力を900Pa、滞留時間を90分にした以外は、実施例1と同様に行った。末端カルボキシル基濃度が35μeq/gで、色調に優れ、溶液ヘイズが低いPBTが得られた。このPBT使用し、実施例1と同様にしてポリマーアロイを得た。得られたポリマーアロイは、色調、機械的強度、熱安定性に優れていた。結果をまとめて表1に示した。
実施例3:
実施例1において、界面重合法で得られた末端水酸基濃度が2μeq/gPC(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製、商品名「ノバレックス7022J」)を使用した他は、実施例1と同様に行った。色調、機械的強度、熱安定性に優れたポリマーアロイが得られた。結果をまとめて表1に示した。
比較例1:
実施例1において、触媒溶液を64g/hで供給し、第2重縮合反応槽(d)の内温を247℃、圧力を140Pa、滞留時間を90分、第3重縮合反応槽(k)の内温を247℃、滞留時間を90分にした以外は、実施例1と同様に行った。得られたPBTの末端ビニル基濃度は高く、色調が悪化した。また、得られたポリマーアロイの色調や機械的強度も低下した。結果をまとめて表1に示した。
比較例2:
実施例1において、触媒溶液を254g/hで供給し、第2重縮合反応槽(d)の圧力を200Pa、第3重縮合反応槽(k)の圧力を650Pa、滞留時間を70分にした以外は実施例1と同様に行った。得られたPBTの末端ビニル基濃度は高く、色調や溶液ヘイズが悪化した。また、得られたポリマーアロイの色調、機械的強度、熱安定性も低下した。結果をまとめて表1に示した。
比較例3:
タービン型攪拌翼を具備した内容積200Lのステンレス製反応容器に、テレフタル酸ジメチル(DMT)272.9mol、1,4−ブタンジオール327.5mol、テトラブチルチタネート0.126モル(チタン量として理論収量ポリマー当たり100ppm)を仕込み十分窒素置換させた。続いて、系を昇温し、60分後に温度210℃、窒素下大気圧で、生成するメタノール、1,4−ブタンジオール、THFを系外に留出させながら、2時間エステル交換反応させた(反応開始時間は、所定温度、所定圧力に達した時点とした)。
ベント管およびダブルヘリカル型攪拌翼を有する内容積200Lのステンレス製反応器に、上記で得られたオリゴマーを移送した後、温度245℃、圧力100Paまで60分かけて到達させ、その状態のまま2.5時間重縮合反応を行った。反応終了後、ポリマーをストランド状に抜き出し、ペレット状に切断した。得られたPBTの末端カルボキシル基濃度は44μeq/g、末端メトキシカルボニル基濃度は2.0μeq/gであった。
上記のPBTを使用し、実施例1と同様にポリマーアロイを得た。得られたポリマーアロイの機械的強度は低く、熱安定性も低下した。結果をまとめて表1に示した。
実施例4:
実施例1と同様にPBTとPCを7対3重量比とした100重量部を一括で押出機のホッパーに入れ、溶融した後にガラス繊維を30重量部を別のフィーダーから添加し、ガラス繊維強化ポリマーアロイを得た。得られたガラス繊維強化ポリマーアロイの結果を表2に記載した。ガラス繊維は、日本電気硝子社製の商品名「T−187」(直径13μm、長さ3mm)を使用した。
比較例4:
比較例1で使用したPBTとPCとを使用し、実施例4と同様の方法により、ガラス繊維強化ポリマーアロイを得た。得られたガラス繊維強化ポリマーアロイの結果を表2に記載した。色調や機械的強度が悪化した。
比較例5:
比較例3で使用したPBTとPCとを使用し、実施例4と同様の方法により、ガラス繊維強化ポリマーアロイを得た。得られたガラス繊維強化ポリマーアロイの結果を表2に記載した。色調や機械的強度、熱安定性が悪化した。