JP2007162016A - 共重合体の製造方法、熱可塑性樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ゴム質重合体の存在下に、カルボキシル基含有ビニル単量体を含むビニル単量体成分を重合する共重合体の製造方法であって、カルボキシル基含有ビニル単量体の使用量が、共重合体全体(100質量%)に対して0.1〜4質量%であり、好ましくは0.4〜2質量%である共重合体の製造方法。この製造方法で得られる共重合体と熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
Description
例えば、ポリアミド樹脂に、酸変性ポリエチレンをブレンドする方法が知られている(非特許文献1)。
しかしながら、ポリアミド樹脂中に分散される酸変性ポリエチレンの粒子径は、エチレン共重合体中に含有されるメタクリル酸単量体の含有量によってのみ制御されており、メタクリル酸単量体の含有量が多くなるほど分散粒子径が小さくなるため、ポリアミド樹脂に酸変性ポリエチレンをブレンドした樹脂組成物は、衝撃強度の向上が十分ではない。
しかしながら、ABSのメタクリル酸含量が5%であると、メタクリル酸の含有量が多いため、ポリアミド樹脂に酸変性ABSをブレンドした樹脂組成物は、衝撃強度が向上する一方で流動性が低下し、成形加工性が劣るという問題点があった。
実用ポリマーアロイ設計 井手文雄著 工業調査会 p255−269
即ち、本発明の共重合体の製造方法は、ゴム質重合体の存在下に、カルボキシル基含有ビニル単量体を含むビニル単量体成分を重合する共重合体の製造方法であって、カルボキシル基含有ビニル単量体の使用量が、共重合体全体に対して0.1〜4質量%である。
本発明の成形体は、前記の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られるものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性の低下がなく、衝撃強度に優れるため、成形加工性よく成形体を得ることができる。
本発明の成形体は、衝撃強度に優れる。
ゴム質重合体としては、例えば、スチレン/ブタジエン系ゴム、ブタジエン/アクリル系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン/アクリル系複合ゴム等が挙げられる。これらの中では、熱安定性が高いことから、アクリル系ゴム、シリコーン/アクリル系複合ゴムが好ましく、シリコーン/アクリル系複合ゴムがより好ましい。
これらの中では、重合性に優れることから、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
これらの中では、ビニル単量体成分から構成される重合体(以下、「ビニル重合体」と称する)層のガラス転移温度を50℃以上とすることができ、共重合体の取扱いが容易となり工業的に有利であることから、メタクリル酸メチル、スチレンが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
ビニル単量体成分中での架橋性単量体の含有量は、ビニル単量体成分100質量%に対して、30質量%以下が好ましい。架橋性単量体の含有量が30質量%以下であると、用いた架橋性単量体が架橋構造の形成に効率的に作用することから好ましい。
ゴム質重合体の存在下でカルボキシル基含有ビニル単量体を含むビニル単量体成分を重合することにより、本発明の共重合体は、マトリクスとなる熱可塑性樹脂に対する高い相溶性と、衝撃強度の向上効果を同時に発現することができる。
重合開始剤は、水性媒体又はビニル単量体成分の何れか一方、又は双方に添加して用いることが可能である。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩等が挙げられる。乳化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。この中では、硫酸エステル塩、スルホン酸塩が好ましい。
共重合体全体(100質量%)に対するビニル単量体成分の使用量は、5〜60質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。ビニル単量体成分の使用量が5質量%以上であると、共重合体の粘着性が小さくなり、取扱いが容易となるため好ましい。60質量%以下であると、熱可塑性樹脂に対する衝撃強度の向上効果が十分であるため好ましい。
ゴム質重合体存在下でのビニル単量体成分の重合を多段で行なう場合、カルボキシル基含有ビニル単量体は、ゴム質重合体を被覆するビニル重合体層の何れの層に含まれていてもよいが、最外層のビニル重合体層に含まれていることが好ましい。最外層に含まれていることで、少ない酸変性量で共重合体の良好な分散状態を達成することが可能となり、衝撃強度、曲げ弾性率及び流動性のバランスが良好となる。
共重合体が1質量%以上であると、樹脂組成物の衝撃強度の向上効果が十分であり好ましい。50質量%以下であると、熱可塑性樹脂の基本的物性の低下が少なく好ましい。
本発明の成形体は、インテークマニホールド、シリンダーヘッドカバー、ワイヤーハーネスコネクタ、イグニッションコイル、ランプリフレクタ、エンジンカバー、エアクリーナー、ラジエータータンク、チューブ・リザーバータンク、キャニスター・ブレーキ系統部品等の自動車部品;電動工具部品;各種コネクタ、スイッチ、コイルボビン等の電気・電子部品;フィルム、繊維等の押出成形品;ボタン、容器、椅子の脚等の一般射出成形品等、幅広い用途に使用できる。
ゴム質重合体又は共重合体のラテックスを、180℃で30分間乾燥して、求めた。
ラテックスをイオン交換水で希釈したものを試料として、動的光散乱法(大塚電子(株)製:EL800を使用)にて測定した。
測定温度は25℃で、散乱角90°で測定した。
射出成形により得た試験片を用い、JIS−K7110に従い、厚み3.2mm、ノッチ付で、−40℃、0℃、23℃の温度において測定した。
射出成形により得た試験片を用い、JIS−K7171に従い、速度3mm/分、スパン間隔10cmで測定した。
ツインキャピラリーレオメーター(ROSAND社製、RH−7)を使用し、シリンダー温度280℃、L/D=16/1で、シェアレートは2000/S及び200/Sで測定した。
シリコーン系ゴム質重合体(L−1)ラテックスの製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合し、シロキサン混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解したイオン交換水300部を添加し、ホモミキサーにて10000rpmで2分間攪拌した。
さらに、30MPaの圧力でホモジナイザーに2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
次いで、この反応物を室温で12時間保持した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、シリコーン系ゴム質重合体(L−1)ラテックスを得た。得られた(L−1)ラテックスの固形分濃度は18.1%あった。
シリコーン/アクリル系複合ゴム質重合体(S−1)ラテックスの製造
温度計、攪拌翼、冷却管、窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、下記のラテックス混合物を入れ、フラスコ内を窒素置換した後、内温を50℃に昇温した。
ラテックス混合物:
シリコーン系ゴム質重合体(L−1)ラテックス 44.2部
(固形分として8部)
イオン交換水 158部
第一単量体混合物:
アクリル酸n−ブチル 74部
メタクリル酸アリル 0.05部
ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド 0.4部
次いで、下記の開始剤混合物を添加し、ラジカル重合を開始した。
開始剤混合物:
硫酸第一鉄 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.003部
ロンガリット 0.2部
イオン交換水 4.6部
共重合体(A−1)の製造
(S−1)ラテックスの重合を終了したセパラブルフラスコに、下記の第二単量体混合物を1時間かけて滴下した。
(重合終了時の(S−1)ラテックスは、281.5部(固形分として82部))
第二単量体混合物:
メタクリル酸 0.2部
メタクリル酸メチル 15.8部
アクリル酸n−ブチル 2.0部
ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド 0.5部
(A−1)のラテックス300部を、70℃に加熱した5%濃度の酢酸カルシウム水溶液600部中に添加し、その後、90℃まで昇温してラテックスを凝固し、イオン交換水により洗浄を繰り返した後、固形分を分離し、65℃で24時間乾燥して(A−1)の乾粉を得た。
共重合体(A−2〜A−4)の製造
用いる第二単量体混合物の内、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びアクリル酸n−ブチルを、表1に示した量に変更した以外は実施例1と同様にして、共重合体(A−2〜A−4)ラテックスを得た。
(A−2〜A−4)ラテックスの固形分濃度は何れも33.3%であった。重量平均粒子径の測定結果は、表1に示した。
次いで、実施例1と同様にして凝固、乾燥を行ない、共重合体(A−2〜A−4)の乾粉を得た。
シリコーン系ゴム質重合体(L−2)ラテックスの製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン97.5部、テトラエトキシシラン2部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部を混合し、シロキサン混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を溶解したイオン交換水300部を添加し、製造例1と同様にホモミキサー、ホモジナイザーで処理し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
次いで、この反応物を室温で12時間保持した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、シリコーン系ゴム質重合体(L−2)ラテックスを得た。得られた(L−2)ラテックスの固形分濃度は18.1%であった。
シリコーン/アクリル系複合ゴム質重合体(S−2)ラテックスの製造
温度計、攪拌翼、冷却管、窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、下記のラテックス混合物を入れ、フラスコ内を窒素置換した後、内温を50℃に昇温した。
ラテックス混合物:
シリコーン系ゴム質重合体(L−2)ラテックス 44.2部
(固形分として8部)
イオン交換水 158部
第一単量体混合物:
アクリル酸n−ブチル 73.5部
メタクリル酸アリル 0.5部
ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド 0.4部
次いで、下記の開始剤混合物を添加し、ラジカル重合を開始した。
開始剤混合物:
硫酸第一鉄 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.003部
ロンガリット 0.2部
イオン交換水 4.7部
共重合体(A−5)の製造
(S−2)ラテックスの重合を終了したセパラブルフラスコに、下記の第二単量体混合物を1時間かけて滴下した。
(重合終了時の(S−2)ラテックスは、281.5部(固形分として82部))
第二単量体混合物:
メタクリル酸 0.5部
メタクリル酸メチル 15.5部
アクリル酸n−ブチル 2.0部
ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド 0.5部
次いで、実施例1と同様にして凝固、乾燥を行ない、共重合体(A−5)の乾粉を得た。
共重合体(A−6〜A−8)の製造
用いる第二単量体混合物の内、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルを、表1に示した量に変更した以外は実施例5と同様にして、共重合体(A−6〜A−8)ラテックスを得た。
(A−6〜A−8)ラテックスの固形分濃度は何れも33.3%であった。重量平均粒子径の測定結果は、表1に示した。
次いで、実施例1と同様にして凝固、乾燥を行ない、共重合体(A−6〜A−8)の乾粉を得た。
ポリアミド樹脂として6ナイロン(UBEナイロン1015B:宇部興産(株)製)を用い、表2に示す割合で実施例1〜7、比較例1で得た共重合体(A−1〜A−8)と混合し、同方向二軸押出機(PCM−30:池貝製)を用い、シリンダー温度250℃の条件で、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
ポリアミド樹脂組成物のペレットを乾燥させた後、射出成形機(KM−50B:川口金属工業製)を用い、シリンダー温度240℃、金型温度80℃の条件で、試験片を成形し、衝撃強度、曲げ弾性率の評価を実施した。結果を表2に示した。
一方、比較例3の結果より、メタクリル酸を含まない共重合体の場合は、衝撃強度、曲げ弾性率のバランスが劣ることがわかった。
Claims (3)
- ゴム質重合体の存在下に、カルボキシル基含有ビニル単量体を含むビニル単量体成分を重合する共重合体の製造方法であって、
カルボキシル基含有ビニル単量体の使用量が、共重合体全体に対して0.1〜4質量%である共重合体の製造方法。 - 請求項1記載の製造方法で得られる共重合体と熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体。
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