JP2007143832A - 浴室成形品及び浴室部材 - Google Patents

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【課題】 本発明は、上記の課題を解決するものであり、基部とこの基部の表面に配置される表面部材とを備え、上記表面部材が基部よりも軟質でその表面に微細凹凸を有することにより、滑りにくく、転倒した場合であっても衝撃を抑え、かつ寒冷時に冷たさを感じにくい、より安全で快適な浴室成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】 基部とこの基部の表面に配置される表面部材とを備え、上記表面部材が基部よりも軟質である浴室成形品。
【選択図】 図1

Description

本発明は、基部を配し、その表面に軟質な表面部材を設けた浴室成形品であり、より具体的には、基部にSMCを用いた浴室部材に関する。
浴室内に設置される防水パン、浴槽、壁パネル、カウンター等は通常、樹脂(FRP)製、ステンレス製、またはホーロー製等であり、表面の平滑性、重厚感を向上させるために、これを硬質化する傾向があった。
また、浴室内での安全性をより高めるために、発泡ポリウレタン製の浴槽状軟質材を既設の浴槽上に被覆し、使用後の交換が可能な軟質なセーフティバスが提案されている(特許文献1参照)。
特開平7−236587号公報 特開平10−80958号公報 特開2000−62098号公報
しかし、特許文献1に記載されるセーフティバスは、軟質で強度の弱い発泡ポリウレタンで形成されているため、耐久性や高級・重厚感に欠け、交換時にさらにコストが発生するといった問題があった。さらに、軟質材裏面には、汚れ、ぬめり等が付着し、不潔であるといった問題があった。
また、熱可塑性エラストマー層と発泡層を有する軟質材である表面層を予め真空成形により成形し、これを成形型にセットしてFRPのバックアップ層を積層させて一体化する軟質浴槽(特許文献2参照)や、表面樹脂層をアクリル変性ビニルエステル樹脂などの軟質樹脂で形成し、基材樹脂層をアクリル変性ビニルエステル樹脂などの軟質樹脂に充填剤を添加した材料で形成する人工大理石(特許文献3参照)が提案されている。しかし、これらの方法であると、従来のSMC成形等に比べると、多工程が必要で時間を要する。また転倒の原因となる滑りを防止することが困難であった。
本発明は、上記の課題を解決するものであり、基部とこの基部の表面に配置される表面部材とを備え、上記表面部材が基部よりも軟質でその表面に微細凹凸を有することにより、滑りにくく、転倒した場合であっても衝撃を抑え、かつ寒冷時に冷たさを感じにくい、より安全で快適な浴室成形品を提供することを目的とする。
本発明は、次のものに関する。
(1)基部とこの基部の表面に配置される表面部材とを備え、上記表面部材が基部よりも軟質である浴室成形品。
(2)項(1)において、基部が、SMCである浴室成形品。
(3)項(1)又は(2)において、表面部材が、軟質BMCである浴室成形品。
(4)項(1)乃至(3)の何れかにおいて、基部と表面部材とが、一体成形される浴室成形品。
(5)項(1)乃至(4)の何れかにおいて、表面部材の表面が、微細凹凸を有する浴室成形品。
(6)項(1)乃至(5)の何れかに記載の浴室成形品が、防水パン、浴槽底面、浴槽上縁面、壁パネル、又は、カウンターである浴室部材。
本発明に係る表面部材が軟質な浴室成形品によれば、万が一転倒して身体の一部を浴室部材に強く当てた場合であっても、その衝撃を吸収できるため、転倒時の衝撃を弱くすることができる。さらに、表面に軟質材を使用するため、寒冷時に触れた際の冷たさを低減できる。また、SMC等との一体成形が可能であり、従来の方法で製造が可能である。
以下、この発明を図面に基づいて説明する。
本発明における表面に軟質部材を備えた浴室用部材の、1実施例を示す断面構成は図1、2に示すように、SMCを配してなる基部と基部よりも軟質な表面部材、および接着部で構成されている。
本発明に用いる基部としては、安価で生産性に優れるSMCを使用することが好ましいが、バルクモールディングコンパウンド(BMC)等の使用も可能である。また、基部の厚みは1〜20mmとすることが好ましい。これは、厚みが1mm以下になると徐々に成形品の強度が乏しくなり、20mm以上であると徐々に成形品重量が増し、成形性も乏しくなるためである。
基部に用いるSMCとは、不飽和ポリエステル樹脂、重合性単量体、低収縮材、硬化材、重合禁止材、充填材、増粘材及び繊維強化材を配合してなる繊維強化成形材料であって、シート状に形成されたものである。
上記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂等を用いることができる。
上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、ターシャリブチルスチレン、臭化スチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のメタクリル酸又はアクリル酸のアルキルエステル、β−ヒドロキシメタクリル酸エチル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル等のメタクリル酸又はアクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、ジアリルフタレート、アクリルアミド、フェニルマレイミド等があげられる。
上記低収縮材としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ブタジエンゴムなどの熱可塑性樹脂が用いられる。使用量は、成形品の成形収縮率や表面平滑性、表面光沢等の表面特性を考慮して決定され、特に制限はない。低収縮材は、前記不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との総量に対して20〜50質量%の範囲で使用されることが好ましい。
上記硬化材としては、ケトンパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、アルキルパーエステル類などが挙げられる。硬化材の量は、材料の保存性、成形サイクルの面から前記不飽和ポリエステル樹脂及び重合性単量体の総量に対して0.5〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。
上記重合禁止材としては、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、ハイドロキノン、モノ−t−ブチルハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。重合禁止材は、前記不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との総量に対して0.8質量%以下で使用されることが好ましい。
上記充填材としては、炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム等が使用できる。その含有量は、増粘性及び成形した場合の表面特性、機械特性等を考慮して決定されるが不飽和ポリエステル樹脂組成物中の含有量が10質量%以上60質量%以下になるように加えられる。
上記増粘材としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カリウム、水酸化カリウム等が用いられるが、一般的には酸化マグネシウムが用いられる。増粘材の量は、成形材の作業性に応じて決定されるが、前記不飽和ポリエステル樹脂及び重合性単量体の総量に対して、0.5〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.7〜2.0質量%である。
上記繊維強化基材(補強材)としては、ガラス繊維や有機繊維が用いることができる。ガラス繊維は、連続繊維、織布等の形態で用いられるが、ロービング状のものを5〜30mmに切断したものを用いることが好ましい。
前記の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、さらに適宜、離型剤、安定剤、着色剤等が配合されてもよい。
SMCは、通常のSMC製造装置を用いて通常の方法により製造することができる。
例えば、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を、上下に配置されたキャリアフィルムに均一な厚さとなるように塗布し、巻き出し装置から巻き出された所定の大きさの繊維補強材(織布又は不織布)を、上記した上下に配置されたキャリアフィルムの不飽和ポリエステル樹脂組成物に挾み込み、次いで、全体を含浸ロールの間に通して、圧力を加えて繊維補強材を不飽和ポリエステル樹脂組成物に含浸させた後、ロール状に巻き取るかつづら折りに畳む。また、繊維補強剤として単繊維を用いる場合、キャリアフィルムに不飽和ポリエステル樹脂組成物を塗布し、ついで、単繊維をその上に散布する方法もある。
この後、必要に応じて熟成等を行う。増粘材を配合した場合には室温〜60℃の温度に加熱して熟成することが好ましい。
SMCの粘度は、40℃において15,000〜150,000Pa・sとなるように調整されるのが好ましく,60,000〜120,000Pa・sとなるように調整されるのが特に好ましい。
このようにして作製したSMCを基部として用いると、運搬時等に衝撃を受けた時に、クラックが発生しにくくなり、浴室部材として優れた特性を持たせることができる。
本発明の基部よりも軟質である表面部材は、デュロメーター硬さ試験タイプDで測定した際の基部の硬度(SMCでは93)よりも値が小さければ限定されないが、特に83以下であることが好ましく、SMCと一体成形できる材料または接着可能なシート材料であれば良い。例えば軟質BMC、塩ビシート、熱可塑性エラストマー、ゴム材、シリコーン、発泡材料などの軟質材料を使用できる。
表面部材の厚みは10〜5000μmとする。厚みが10μm以下になると柔軟性に乏しくなり、5000μm以上であると成形品の強度バランスが乏しくなるためである。表面部材に基部よりも軟質な材料を使用することにより、子供や高齢者等が浴室内で、万が一転倒して身体の一部を浴室部材に強く当てた場合であっても、その衝撃を吸収できるため、転倒時の衝撃を弱くすることが可能である。また、表面に軟質材を使用するため、寒冷時に触れた際の冷たさを低減することが可能である。
表面部材は、2種類以上の材料の組合せでもよく、軟質材料をガラスペーパー、ガラスマット、合成繊維、天然繊維の織布、不織布、チタン紙、薄葉紙、クラフト紙、オーバーレイ紙、和紙等に含浸させたシートを用いることや、ラミネートさせた材料を用いること等も可能である。また、シート状の場合、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷を施すこともできる。
表面部材には、必要に応じて充填材、発泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種添加剤を添加できる。また、防カビ・抗菌剤を含有でき、市販の工業用抗菌剤を使用できる。通常、工業用抗菌剤は無機系抗菌剤と有機系抗菌剤に大別されるが、本発明の表面部材には何れの抗菌剤も用いることができる。
本発明の表面に軟質部材を備えた浴室用部材の製造は、図3に示すように、表面部材をSMCと加熱加圧一体成形する方法ででき、図1に示す成形品が得られる。また、図4示すように、基部に微細凹凸を施した表面部材を接着材等により接着する方法や、図5に示すように、基部に接着する際に表面部材に微細凹凸を形成する方法でも製造ができ、図2に示す成形品が得られる。生産性や密着性等を考慮するとSMCと一体成形するのがより好ましい。
表面部材をSMCと加熱加圧一体成形する場合は、圧縮成形、トランスファー成形等により成形され、予め昇温しておいた金型の製品面側から、軟質材料、SMCの順に材料をセットし、加熱加圧する。また、成形温度は70〜180℃、成形圧力は0.05〜10MPaであることが好ましい。
また、軟質材料をSMCと加熱加圧一体成形する場合は、SMCに使用している熱硬化性樹脂と同質または類似の材料、または硬化系が同一な材料を含む、例えば軟質BMCを使用することが好ましい。これは、基部と表面部材の材料間で化学的に反応させ、接着力をより強化させるためである。
一方、基部に微細凹凸を施した表面部材を接着材等により接着する場合、または基部に接着する際に表面部材に微細凹凸を形成する場合の接着は、一般に用いられている接着剤等が使用でき、例えばエポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、アクリル変成シリコーン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、合成ゴム系ラテックス形接着剤、イソシアネート系接着剤、エマルジョン形接着剤、ホットメルト形接着剤等が使用できる。また、接着部の厚みは1〜50μmが好ましい。
接着方法は、SMC成形品の接着面を必要に応じて脱脂処理、サンディング処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、オゾン処理、酸処理した後、上記接着剤を塗布、さらにその上にシート状の軟質部材をセットし、加圧して接着する。また、加圧方法は図4、5に示すようなプレスによる方法や加圧ローラーによる方法等があり、特に限定するものではない。なお、接着条件は使用する軟質部材により適宜選択できるが、温度は20〜180℃、圧力は0.05〜10MPaであることが好ましい。
表面部材の微細凹凸は、製品面に微細凹凸を形成した金型を使用し、材料を加熱および加圧することで微細凹凸の転写形成ができ、一体成形時・接着時に形成、または予め表面部材に形成することが可能である。これにより、浴室部材が濡れている場合にも表面部材に形成された微細凹凸によるグリップ効果で滑り転倒を防止することができる。
微細凹凸とは、表面粗さ形状測定機で評価長さ20mm、測定速度0.6mm/s、カットオフ値0.08mm、フィルタ種別ガウシン、カットオフ比300に設定し、任意に選んだ3箇所以上を測定したときに、算術平均粗さRaの平均値が0.5μm以上であるように施されたものであり、より好ましくは0.7μm以上である。
(SMCの作製)
スチレンに溶解された不飽和ポリエステル樹脂(商品名:PS−9415、日立化成工業株式会社製)85質量部(スチレン60質量部%)及びスチレンに溶解したポリスチレン15質量部(スチレン60質量部%)の混合物100質量部に対して、硬化材1.0質量部、重合禁止材のパラベンゾキノン0.77質量部、離型材のステアリン酸亜鉛2.5質量部、及び増粘材の酸化マグネシウム2.0質量部、充填材として炭酸カルシウムを150質量部配合して不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。このように配合して得られた不飽和ポリエステル樹脂組成物を、ガラス繊維に含浸させ、SMCを作製した。
(SMC一体成形による軟質成形品の作製)
製品面側から順に、軟質BMC(日本ユピカ株式会社製)、上記で得られたSMCの順に材料を金型上に投入し、加熱加圧成形により200cm角の成形品を得た。なお、成形条件は、軟質BMC投入重量100g、SMC投入重量200g、チャージ面積0.05m(15cm角)、成形圧力3MPa、保圧時間3分で成形し、金型には鏡面型と微細凹凸を施した型の2種を使用した。また、SMCの加熱加圧成形により成形品を作製し、上記軟質部材を備えた成形品と比較した。
(接着による軟質成形品の作製)
SMCを金型上に投入し、加熱加圧成形により200cm角の平板を得た。なお、成形条件は、SMC投入重量300g、チャージ面積0.05m(15cm角)、成形圧力9MPa、保圧時間3分で成形し、金型には鏡面型を使用した。上記により得られたSMC成形品上に接着剤としてスーパーX(商品名、セメダイン社製)を塗布し、さらにその上に予め微細凹凸を有する金型で微細凹凸を転写させておいた塩ビシート、熱可塑性エラストマーをセットし、温度20℃、圧力0.2MPaで接着した。
試験方法
(1)表面硬度の測定方法
得られた成形品の表面硬度を、テクロック社製デュロメータGS−702NタイプDで測定した。(JIS K 7215に準拠)
(2)熱伝導率の測定
得られた成形品の熱伝導率を、京都電子工業製熱伝導率計QTM−500を用い、プローブ法にて、測定時間60sの条件で測定した。
(3)滑りにくさの評価方法
得られた成形品に5%濃度の石鹸水をかけ、質量90gの錘を載せ、成形品を少しずつ傾け、錘が滑り落ち始める角度を読み取った。
(4)生産性の評価
得られた成形品の生産性を、軟質部材を有しないSMC成形品と比較して同等な場合を○、やや劣る場合を△、劣る場合を×として評価した。
その結果、表1、2に示すように、本発明の基部を配し、その表面に軟質な表面部材を設けた成形品は、従来のSMC成形品に比べて表面硬度、熱伝導率が小さいものであり、転倒した場合であっても衝撃を抑え、かつ寒冷時に冷たさを感じにくいものであった。また、軟質部材の表面に微細凹凸を備えることにより、成形品を傾けた際の成形品上の錘が滑り始める角度が大きく、滑りくいものであった。特に軟質BMCを表面部材に使用した場合は、生産性にも優れ、良好な結果が得られた。
Figure 2007143832
Figure 2007143832
SMC一体成形時の成形品の断面構成図である。 SMC成形品と軟質材を接着時の成形品の断面構成図である。 SMC一体成形による製造方法を示す図である。 微細凹凸を転写した軟質部材を接着する際の製造方法を示す図である。 軟質部材を接着する際に微細凹凸を転写させる製造方法を示す図である。
符号の説明
1…表面基材、2…基部、3…接着部、4…微細凹凸有する金型、5…鏡面金型


Claims (6)

  1. 基部とこの基部の表面に配置される表面部材とを備え、上記表面部材が基部よりも軟質である浴室成形品。
  2. 請求項1において、基部が、SMCである浴室成形品。
  3. 請求項1又は2において、表面部材が、軟質BMCである浴室成形品。
  4. 請求項1乃至3の何れかにおいて、基部と表面部材とが、一体成形される浴室成形品。
  5. 請求項1乃至4の何れかにおいて、表面部材の表面が、微細凹凸を有する浴室成形品。
  6. 請求項1乃至5の何れかに記載の浴室成形品が、防水パン、浴槽底面、浴槽上縁面、壁パネル、又は、カウンターである浴室部材。



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