JP2011143594A - 樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】成形品20の薄肉部位22にはSMCまたはLSMCのいずれかの成形部22aが、15mm以上の厚肉部位21の中央部にはBMC成形部21bを設けるとともに、BMC成形部21bを囲んでSMCまたはLSMCのいずれかの成形部21aを設ける。
【選択図】図11
Description
SMCの成形品は、圧縮成形法により製造されることがほとんどである。圧縮成形法は、プレス装置に取り付けられ、所定の温度に制御(加熱)された金型(下型と上型)に、適量の樹脂材料を投入し、プレス機による型締めにより、上型と下型で樹脂材料を加熱しながら圧縮することで、金型に沿った形状に成形し、この状態で一定時間保持することで、樹脂材料を硬化させた後、金型より取り出し成形品を得る方法である。
SMCを用いた圧縮成形による成形品の場合、製品に求められる機能により、成形品には部分的に厚肉部を設ける場合がある。SMCは硬化時の硬化収縮や硬化反応による発熱とその後の冷却による熱収縮などによって、成形品内部に歪が生じてしまうことが多い。特に肉厚が大きい成形品の場合、内部歪が大きく、内部クラックやヒケ、変形といった成形不良が発生してしまう。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、SMCなどの熱硬化性樹脂を用いて厚肉部を有する成形品を成形する場合に、成形品内部に発生するクラック不良を抑制し、不良のない健全な樹脂成形品を得ることを目的としている。
この発明の実施の形態1による樹脂成形品の優れた特徴をより理解し易くする為、まず以下にSMC(シートモールディングコンパウンド)シートの製法およびSMC成形品から切り出した試験品の強度調査結果について説明する。
このような工程でSMCシートは製造されるため、ガラス繊維等の強化材料はシートの面方向に配向される。SMCシートは、金型の面に沿って投入(チャージ)されることが多いため、成形品となった場合にも、ガラス繊維は成形品の厚みと直交する方向に配向するケースが多い。そのため、成形品の厚み方向と直交する方向の面(平面部)に曲げ応力を受ける場合などに対して、強度を向上することができる。
SMCを用いて成形した成形品から、試験片を切り出し、曲げ強度を測定した結果を図2(a)に示す。なお、内部クラック発生数を示す図2(b)についての説明は後述する。曲げ試験は、図3(a)、図3(b)のように実施し、面方向の曲げ強度は図3(b)に示す方向に曲げ応力が掛かった時の強度を示し、積層方向の曲げ強度は、図3(a)方向に曲げ応力が掛かった時の強度を示す。図2(a)から分かる通り、面方向の強度は積層方向の強度の20倍程度である。
SMCと同じ工程で製造されるが、長さが約1000mmのガラス繊維を用いるLSMCおよび、樹脂材料と繊維長25mm程度のガラス繊維を混練した材料であるBMC(バルクモールディングコンパウンド)の特性についても図2(a)に記している。
また、図2(a)に示す流動性とは、流動のしやすさを示す指標であり、例えば、ある加圧力でSMC、LSMC、BMCを加圧した場合に、どの程度樹脂材料の面積が広がるか(厚みをどこまで圧延(薄く)できるか)を示すものである。さらに図2(a)に示すようにLSMC(長尺のSMC)は繊維長が長いため、SMCよりも面方向強度が高いが、流動性は最も劣る結果となっている。BMCは、材料の状態では、混練されているだけなので、ガラス繊維に配向はないが、金型内での圧縮成形される時の樹脂材料流動により、面方向にガラス繊維が配向されるため、面方向と積層方向で強度に差が現れている。ただし、その差はSMCよりも小さく、3倍程度である。また、この試験により、積層方向に関しては、SMCよりもBMCの方が大きな強度を発揮できるという知見を得た。
図4は参考例の熱硬化性樹脂成形品20の外観を示す図であり、幅1000mm、奥行き1200mm、高さ700mm、厚さ5〜50mmの大きさである。
図5は図4の断面図であり、これらの図から判るように厚さ50mmの厚肉部位21と、5mmの薄肉部位22とが一体化して成形されている。次にこの成形品20の製造方法を図に基づいて説明する。
図6に示すようにまず、予め下型の形状に合わせて裁断されたSMCシート材2を必要枚数重ねて、下型1に投入し、その状態で図示省略したプレス機の機構により、上型3を下降させて、SMC2を圧縮・流動(変形)させて、金型のキャビティ(上型3と下型1で形成される空間)内をSMC材2で充填し、加熱硬化することでキャビティ形状に沿った形状の成形品20となる。
SMC2を用いて、5〜50mmまでの肉厚のサンプル成形品(縦100mm、横100mmの試験片)を各50個成形し、内部クラックの発生状況を確認した結果を図2(b)に示す。肉厚15mm以下ではクラックの発生はないが、20mmで50個中の35個、25mm以上では全数にクラックが発生していた。SMC2を用いた場合には、20mm以上の肉厚を有する成形品を品質よく成形することが困難であることが分かった。
ここで、圧縮成形時の成形品内部と表面の温度を測定した結果を、図9に示す。金型温度140℃で成形を行なった。成形品の厚さ方向表面部は金型温度140℃より若干高くなった後、金型温度140℃と同等の温度になっているが、成形品の厚さ方向中央部は、圧縮開始後17〜18分で、200℃以上に達していることが分かった。樹脂の硬化反応による発熱により、このような高温となった。
また、金型1、3の近傍ほど金型からの伝熱が早く、硬化するのが早くなる。前記中央部は温度が上昇するのに時間がかかるため、金型1、3近傍(側面図)部が昇温して硬化し、弾性体となった後に、硬化反応が開始されるため(前記表面部が硬化した時点、前記中央部はまだ未硬化の状態である)、中央部の硬化収縮によっても引張り応力が発生し、クラックの原因となる。
このように、SMC2を用いた厚肉品21の成形では、20mm以上の肉厚では、内部クラックの発生を抑制することはできなかった。
この実施の形態1の熱硬化性樹脂成形品(以下、成形品と称す)20の形状、寸法は試作した成形品で示した図4,図5と同一である。しかしながら本実施の形態1による成形品20はその断面を図11に示すように厚肉部位21の構成が前述した試作品の厚肉部位とは異なる。すなわち15mm以上であって図11では50mmの厚肉部位21はその厚さ方向の中央部分にBMC成形部21bが設けられ、このBMC成形部21bを囲んでSMC成形部21aが設けられている。上記厚肉部位21の配向模式図を図12に示す。図12からも判るように厚さ50mmの中央部はBMC21bが、その上、下表面にはSMC21aが設けられている。
また、厚肉部位21の表面部や15mm以下の部位にLSMC(長尺のSMC)を用いることもできる。この場合更に、強度を向上することができる。
また、本実施の形態1の製造方法によれば、薄肉部位22にSMCまたはLSMCを用い、厚肉部位21をSMCまたはLSMCのいずれかでBMCを囲む構成とすることにより、図11のような形状に限らず多様な形状で薄肉部位22と厚肉部位21とを有する形状の強度と品質の優れた熱硬化性樹脂成形品の製造が容易となる。
次に実施の形態2の成形品20について説明する。
この実施の形態2による成形品20は、図14に示すような厚肉部位21が設けられている以外は、前述した実施の形態1で示した図4、図5に記載の成形品20と同様である。すなわちこの実施の形態2の厚肉部位21は、厚肉部位21の中央部分を金属性加工物などのインサートワーク21Cを設け、このインサートワーク21Cの側部であって厚肉部位21のSMC成形部21aとの空間部分にインサートワーク21Cを挟むようにBMC成形部21bを設けたものである。
厚肉部位21にインサートワーク21Cが単に設けられた成形品は、20mm以上の厚肉部位21が存在する形状であると、厚肉部厚さ方向の中央部に図8で示したような内部クラックが発生する。しかしながらこの実施の形態2による図15に述べるような材料チャージパターンにより製造される構成の成形品20は内部クラックの発生は無い。
以下、材料のチャージパターンを図15によって説明する。まず下型1に仕上がり厚さ15mm以下の薄肉部位22に相当する部位に未硬化のSMCシート材2Aを投入する。なお、投入する量は実施の形態1と同じである。仕上がり厚さは15mm以上の厚肉部位21に相当する部位には、下型1の上面1aにSMCシート材2Bを投入し、その上部に金属性加工物などのインサートワーク21Cを投入する。
次にインサートワーク21CとSMCシート材2Bとの空間部分を充填するのに十分な量の半固形状態のBMC2Cを投入後、インサートワーク21Cと厚肉部BMC2Cを囲むようにSMCシート材2Bを投入する。このSMCシート材2Bは下型1に投入したSMCシート材2Aを延伸したものであってもよい。その後実施の形態1と同様に圧縮成形することで図14に示す成形品20が得られる。図16に成形後の厚肉部21の配向模式(断面図)を示す。
また、BMCは図2(a)に示すとおり、LSMCの3倍、SMCの1.5倍の流動性を有しており、樹脂流動時の樹脂圧力が小さい(小さな圧力で流動(変形)する)。実施の形態2のように、インサートワーク21Cの周囲にBMC2Cを配置することで、圧縮成形時の樹脂(BMC)流動により、インサートワーク21Cが変形したり、インサートワーク21Cの位置が変動したりするのを防止することができる。すなわち材料のチャージパターンに不均一があった場合などは、圧縮成形時に、金型1、3内の材料の密度が均一になるように、材料が金型1、3内で流動するが、流動抵抗の大きいSMCが大きく流動すると、インサートワーク21Cもその流動とともに位置が変動したり、インサートワーク21Cが変形したりする可能性がある。しかしながら、インサートワーク21Cの周辺に流動性の高いBMC2Cが配置されていると、BMC2Cのみが流動するため、インサートワーク21Cの位置が変動したり、変形したりすることがない。また、実施の形態1と同様に、厚肉部位21の表面部や15mm以下の部位にLSMCを用いることもできる。この場合更に、強度を向上することができる。
なお、前述した図14の厚肉部位21の構成に代替して、図17に示すような厚肉部位21であってもよい。
すなわち、図14に示した厚肉部位21はBMC成形部21bがインサートワーク21Cを挟むように設けられた構成であったが、図17に示すように、インサートワーク21Cの片側のみにBMC成形部21bを設けた構成であっても同様の効果を奏する。なおここでBMC成形部21bをインサートワーク21Cの外側に設ける例を示したが、これに限らず内側に設けてもよい。
2C BMC材、3 上型、20 成形品、21 厚肉部位、
21a 厚肉部位SMC成形部、21b BMC成形部、21C インサートワーク、
22a 薄肉部位SMC成形部。
Claims (2)
- 熱硬化性樹脂材を加熱、圧縮して形成され、薄肉部位と厚肉部位とが一体化して設けられた樹脂成形品であって、前記薄肉部位は、SMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方で形成されており、前記厚肉部位は15mm以上の肉厚を有し、その肉厚方向中央部分にBMC成形部が設けられているとともに、前記BMC成形部を囲むようにSMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方が形成されていることを特徴とする樹脂成形品。
- 前記厚肉部位の肉厚方向中央部分には、金属材のインサートワークが設けられ、前記BMC成形部は前記インサートワークの側部に設けられているとともに、前記SMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方が前記インサートワークおよびBMC成形部を囲むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
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