JP2007137209A - 自動車用ホイール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 外側ビードシート2bを有するリム2と、外周を軸方向に沿って内側に折り返して成るフランジ10fを有するディスク10とを備えた自動車用ホイールであって、ディスクの外周にフランジより縮径の水抜き凹部が形成され、外側ビードシートの内面とフランジの外面との嵌合部のうち外側部分5の少なくとも一部が溶接され、水抜き凹部と外側ビードシートの内面との間に水抜き穴が構成される。
【選択図】 図1
Description
セミフルデザインホイールは、リムのドロップ部(ウェル)20dでディスクを溶接するタイプのスチールホイールに比べ、ディスク径を大きくできる分、意匠性が高くなるとされている。
なお、「外側」とは、ホイールを自動車に取付けた際、ホイールの軸方向から見て外面側となる部分をいう。
但し、この技術はアルミホイールに関するものであり、スチールホイールのような水抜き穴は形成されていない。水抜き穴は、ディスクとリムで囲まれるホイール内部空間に溜った水や泥を排出し、ホイールバランスを改善させるものであり、通常、スチールホイールのディスク外面とリム内面との間に水抜き穴として数箇所の隙間が形成される。特に、セミフルデザインのスチールホイールは、薄い板材をプレスして外周を内側に折り返してフランジを形成しディスクとするため、水や泥が内部空間に溜まりやすいので、水抜き穴は必須である。
これに対し、アルミホイールの場合、鋳造によって厚肉のディスクが一体に形成され、通常はスポーク部がディスクの端まで延びているため、スポーク間の空隙からホイール内の水を排出することができ、水抜き穴が不要である。
又、この技術の場合、上記嵌合部の外側部分の隙間からディスク表面に錆汁が流れて外観を損なうため、図6の嵌合部50の外側部分に防錆シール剤を塗布する手間が生じる。
さらに、この技術の場合、溶接強度を確保するため嵌合部全周の連続溶接が必須であり、水抜き穴を形成できないという問題がある。
これらに加え、セミフルデザインホイールは、従来のドロップ部で溶接するホイールに比べ、より外側でディスクの周縁を溶接することから、ディスクが平坦な形状になる。そして、ディスクが平坦になると、意匠性は増すもののディスクの剛性が低下するという問題が生じる。
さらに、この技術はリム部のフランジの強度向上を図るものであり、スチールディスクの強度向上については検討されていない。
このようにすると、外側ビードシートとフランジとの嵌合部の内側部分を溶接した場合に比べ、溶接位置がビードシートの外側寄りとなるので溶接部の強度が向上する。そのため溶接部を全周溶接しなくとも溶接強度を確保できるので、外側ビードシートとフランジの間に水抜き穴を設けることができる。
又、本発明において、嵌合部の外側部分はV形の開先を形成するため、溶接が容易かつ確実となり、溶接強度が向上する。
又、本発明において、嵌合部の外側部分は溶接され、その隙間が閉塞されるので、従来のような嵌合部外側へのシール剤の塗布が不要又は軽減される。
このようにすると、従来のホイールに比べてフランジの長さが短くて済み、軽量化が図られる。
このようにすると、リム内面との接触がより緊密になり、リムとディスクの嵌合面積が増大してより確実に溶接できると共に、ホイールの振れ精度が向上する。
このようにすると、溶接の溶け込み深さを深くして、溶接を確実に行うことができる。
一方、アルミニウム、マグネシウム等はスチール等に比べて比強度が高いため、鋳造によって厚肉のディスクを一体に製造するのが通常であり、飾り穴周辺の強度低下の問題は少ない。本発明ではこのような厚肉に一体成形された鋳造(鍛造)ディスクを対象としない。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る自動車用ホイールの一例を示す断面図である。本発明の実施形態の自動車用(スチール)ホイールは、スチール製のリム2とスチール製のディスク10とを嵌合し、溶接して成るセミフルデザインホイールである。
なお、以下の説明で「外側」とは、ホイールを自動車に取付けた際、ホイールの軸方向から見て外側となる部分をいい、「内側」とは内側となる部分をいう。
リム2は略円筒状をなし、その両端に形成された外側フランジ2a及び内側フランジ2gの間にタイヤを収容するようになっている。外側フランジ2aの内側にはタイヤのビードを受ける外側ビードシート2bが形成されている。外側ビードシート2bの内側には最も小径のドロップ部2dが形成され、外側ビードシート2bとドロップ部2dはサイドウォール部2cを介して滑らかに接続されている。ドロップ部2dより内側にはサイドウォール部2eを介して内側ビードシート2fが形成され、内側ビードシート2fは内側フランジ2gに接続されている。
リム2は、例えば所定形状の圧延形鋼を円筒形に丸めて製造することができ、又は、鋼板を丸めて円筒形にした後、ロール成形等によって所定の断面形状としてもよいが、これらの方法に限られない。
ディスク10は略円盤状をなし、中心にセンターボア10aが開口され、センターボア10aより外周側にハブを取付けるためのボルト孔10bが形成されている。そして、ボルト孔10bから外周側に向かい、ディスクの軸方向外側に向かって延びる段部10cを介し、ほぼ平坦なディスク面(意匠面)10dが形成されている。ディスク面10dには適宜、軸方向内側に落込む側壁10hを有する飾り窓10eが開口している。飾り窓10eは通常、軽量化及び放熱のために形成される。
ディスク面10dの外周は軸方向に沿って内側へ折返されてフランジ10fを形成し、フランジ10fはフランジ終端10gに至っている。
ディスク10は、例えば正方形の鋼板の四隅を円形に打ち抜いたものを絞り加工(プレス加工)して成形することができる。この場合、鋼板の円形に打ち抜かれた部分がディスクの外縁となり、鋼板のそれ以外の部分は後述する水抜き凹部となる。
水抜き凹部10iはフランジ10fより縮径であるため、ディスク10をリム2の外側ビードシート2b内面に嵌合した際に、水抜き凹部10iと外側ビードシート2b内面との間に隙間が形成され、これが水抜き穴12となる。
本発明の自動車用スチールホイールは水抜き穴を有することを必須とする。水抜き穴は、ディスクとリムで囲まれるホイール内部に溜った水や泥を排出し、ホイールバランスを改善させる。
次に、上記したリム2とディスク10とを嵌合し、溶接接合する態様について、図3を参照して説明する。図3は、図1の部分拡大図である。
図3において、リム2の外側ビードシート2bの内面にディスク10のフランジ10fが嵌合されて嵌合部が形成される。そして、嵌合部の外側部分5が溶接され(図3のW1)、リム2とディスク10が接合される。
溶接方法は特に制限されず、例えば、レーザー溶接、プラズマ溶接、CO2−アーク溶接、MAG溶接、及びTIG溶接等を用いることができる。但し、溶接部分がホイール外面になるので、溶接ビード表面がきれいなレーザー溶接、プラズマ溶接、又はTIG溶接を用いることが外観上好ましい。特に、コスト、溶接強度信頼性、外観の点からは、ホットワイヤーTIG溶接が好ましい。
本発明においては嵌合部の外側部分5が溶接されるため、従来のように嵌合部の内側(フランジ終端10g側)を溶接した場合(図3のW2)に比べ、溶接部の強度が向上する。この理由としては以下のことが考えられる。まず、回転中のディスクは楕円状にゆがむため、ディスクの径方向(図1の上下方向)に、ディスク10とリム2の嵌合面を広げる(上下に開く)応力が作用する。このため、嵌合部の内側を溶接した場合、嵌合面を広げる応力は嵌合部の外側(図3のW1)から溶接部(図3のW2)に伝達し、この際、梃子の原理により溶接部に掛かる応力が高くなると考えられる。
一方、嵌合部の外側(図3のW1)を溶接した場合、嵌合面を広げる応力は嵌合部の外側の溶接部に直接負荷されるだけであり、溶接部に掛かる応力は従来に比べて低くなる。又、嵌合部の外側を溶接した場合、溶接位置がビードシートの外側寄りとなるため、ビードシート部からの衝撃を受け難くなることが考えられる。
そのため、本発明においては溶接部を全周溶接しなくとも溶接強度を確保でき、その結果、上記した水抜き穴を設けることができる。つまり、水抜き穴の部分は溶接できないため、ディスクを全周溶接することはできずに断続溶接となるが、本発明においては溶接部に掛かる応力が低減されるため、断続溶接でも充分な溶接強度が確保される。
又、外側部分5が溶接されてその隙間が閉塞されるので、従来のような嵌合部外側へのシール剤塗布が不要又は軽減される。
図1、2に示す形状のホイールについてFEM解析を行った。FEM解析は、JIS−D4103に規定する「回転曲げ耐久試験」と同一条件で行った。ディスクの飾り穴は5個とし、ホイールの外周上の基準位置の角度を0度とし、基準位置から所定の角度における飾り穴周りの主応力を計算した。なお、図3のW1位置を溶接(解析上では固定)したものを実施例とし、W2位置を溶接したものを比較例とした。得られた結果を表1に示す。
上記したように、嵌合部の外側部分5を溶接すると、従来に比べ、溶接部に掛かる応力が低減する。この効果を充分に発揮するためには、外側部分5が外側ビードシート2bのなるべく外側位置に来るよう、フランジ10fを嵌合することが好ましい。例えば、図3において、ディスクの外側折返し部分10kとリムの外側フランジ2aとがほぼ面一(図3の直線S)となるように両者を配置することで、外側部分5が外側ビードシート2bのなるべく外側に来るようにする。
Lが2mm未満であると、溶接ビードの溶け込み深さ(のど厚)が確保できず、溶接強度が低下する場合がある。Lが20mmを超えると、嵌合部長さが余分となり、重量増を招く場合がある。Lを最短(2mm)とすると、ホイール全体の重量が2〜3%程度軽くなる。
なお、溶接トーチを外側から溶接箇所(嵌合部の外側部分5)へ届かせるため、通常、ディスクの折返し部分10kやリムの外側フランジ2aから、外側部分5へ向かう距離(図3のSから外側部分5までの距離)を約20mm以下とする。
又、本発明において、1ヶ所の溶接W1の長さ(ディスク10の外周方向の長さ)は、最長で、隣接する水抜き穴12に挟まれたフランジ10fの周方向長さとなるが、既に述べたように溶接強度が応力に対して充分確保されるため、1ヶ所の溶接長さが15mm以上であれば足りる。従って、ホイールの強度と生産性の観点から、上記範囲で1ヶ所の溶接長さを設定すればよい。又、1ヶ所の溶接長さが15mm以上であればよいことから、水抜き穴を多く形成することができ、ホイールの水抜き性が向上する。
又、本発明において、水抜き穴12が2〜6個形成されていることが好ましい。この場合、溶接はそれぞれ2〜6箇所の断続溶接となる。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る自動車用スチールホイールの溶接の態様を示す部分拡大図であり、図3に対応するものである。
図4において、リム2内面との接触をより緊密にするため、ディスクのフランジ10fの外面14は、外側ビードシート2b内面の形状に沿うように削られている。これにより、リムとディスクの嵌合部の面積が増大してより確実に溶接できると共に、ホイールの振れ精度を向上させることができる。外面14は、例えば旋削等によって削ることができる。
図5は、本発明の第3の実施形態に係る自動車用スチールホイールの溶接の態様を示す部分拡大図であり、図3に対応するものである。
図5において、フランジ10fの外面には、上記外面14とは別に、嵌合部の外側部分に該当する領域16が削られている。領域16は、嵌合部外側から外に向かう開先の角度が広がるように形成される。これにより、溶接の溶け込み深さを深くして、溶接を確実に行うことができる。なお、この実施形態では、開先の角度をさらに広げるため、フランジ10fの外面の代わりに、又はそれに加え、外側ビードシートの内面のうち、嵌合部の外側部分に該当する領域を削ってもよい。
2b 外側ビードシート
5 嵌合部の外側部分
10 ディスク
10f (ディスクの)フランジ
10i 水抜き凹部
12 水抜き穴
Claims (6)
- 外側ビードシートを有するリムと、外周を軸方向に沿って内側に折り返して成るフランジを有するディスクとを備えた自動車用ホイールであって、前記ディスクの外周に前記フランジより縮径の水抜き凹部が形成され、前記外側ビードシートの内面と前記フランジの外面との嵌合部のうち外側部分の少なくとも一部が溶接され、前記水抜き凹部と前記外側ビードシートの内面との間に水抜き穴が構成されることを特徴とする自動車用ホイール。
- 前記フランジの内面のうち最も外側に位置する部分から前記フランジの終端までの軸方向の長さが2〜20mmであることを特徴とする請求項1記載の自動車用ホイール。
- 前記外側ビードシートの内面の形状に沿うよう、前記フランジの外面が削られていることを特徴とする請求項1又は2記載の自動車用ホイール。
- 前記嵌合部から外側に向かって形成される開先の角度が広がるよう、前記フランジの外面又は前記外側ビードシートの内面が削られていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の自動車用ホイール。
- 前記溶接部分の1ヶ所の長さが15mm以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の自動車用ホイール。
- 前記水抜き穴が2〜6個形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の自動車用ホイール。
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