JP4589845B2 - 自動車用ホイールおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、剛性が高く、耐衝撃強度および耐久強度に優れ、走行安定性を高めたホイールであって、しかも意匠性にも優れた自動車用のホイール、およびその製造方法に関する。
自動車用のスチールホイールの一般的なものは、ディスクをリムドロップ部で組み付けた2ピースホイールであるが、これは、アルミホイールに較べて意匠性が劣る。
図1は、スチールホイールの代表的なものである「ドロップ嵌合型ホイール」の一部断面図である。ホイール1は、ディスク2とリム3で構成される。ディスクの先端部(外周部)は、ホイールの回転軸に平行な方向に折り曲げられてディスクフランジ4となり、その部分がリムドロップ6の内側に嵌合され、組み付け溶接8によって固定される。
図1からわかるように、上記のタイプのホイールは、美観を高めるために飾り窓を開けたり、模様をつけることが可能な表面(これを意匠面という)、即ち、ディスクの比較的平らな部分の面積が狭小であるため、意匠性に劣る。したがって、ホイールの外側にホイールキャップをはめて、そのキャップに意匠性を持たせるのが一般的である。
近年、自動車の燃費向上のために、板厚の薄いリムや高剛性ディスクを使用してホイールを軽量化することが求められ、また、ホイールの製造コストの低減も要請される。それに加えて、ホイールキャップを装着しなくても、それ自体で意匠性に優れたホイールが求められている。
図2は、「ビードシート嵌合型ホイール」と呼ばれるものの断面図である。このタイプでは、ディスクフランジ4が、リムフランジ7-1の内側に設けたリムビードシート5に嵌合され、組み付け溶接8によって固定される。このタイプでは、ディスク2の比較的平らな表面(外側になる面)が上部まで拡がっているので、その部分に様々なパターンを付けることができて、意匠性を高めることができる。
特許文献1および特許文献2には「フルフェイス型ホイール」に関する発明が開示されている。特許文献1の発明のホイールは、図3に示すように、ディスクのリムフランジ4がリム3よりも上方まで延長されている。また、特許文献2のホイールでは、図4に示すように、ディスク2の上端がリム3の先端部まで伸びている。
特開2005−53338号公報 特開2005−104315号公報 上記のフルフェイス型ホイールは、ビードシート嵌合型ホイールに較べて、さらにディスクの平らな表面が大きくなるので、意匠性の向上には有利である。しかしながら、以上に述べた従来のホイールには下記のような難点がある。
まず、図1に示したリムドロップ部で組み付け溶接される「ドロップ嵌合タイプ」のホイールでは、通常、リムの板厚を薄くすることによって軽量化を図ろうとするのであるが、耐衝撃強度や耐久強度が問題になるので、薄肉化には限界がある。
図2に示したタイプのホイールは、リムビードシート部で組み付けられるビードシート嵌合タイプであるから、耐衝撃強度においてはドロップ嵌合タイプに勝る。しかし、溶接部の耐久強度が不安定になるために、やはりリムの薄肉化には限度がある。
通常、ホイールは、安全率が考慮されてリムおよびディスクの肉厚が決定されている。しかし、過積載や走行時の道路コンディション等により溶接部近傍に疲労亀裂が発生し、タイヤ内の空気が減じる現象が希にではあるが発生する。この疲労亀裂は、溶接部近傍を起点として発生し、徐々に進展してタイヤ空気室側へと貫通する。これによってタイヤ内の空気圧が徐々に低下するのである。ただし、貫通する亀裂は微小であるから、タイヤ空気圧が急激に低下することはなく、大きな事故にはならない。
さて、前記の特許文献1および特許文献2に開示されているフルフェイスタイプのホイールには次のような問題点がある。即ち、図3および図4に示すように、組み付け溶接部8-1、8-2、8がビードシート5より外側にあるので、溶接部に疲労亀裂が発生しても、その亀裂がタイヤの空気室に通じることはなく、したがって、空気圧の低下は生じない。そのために、運転者が亀裂発生に気づかないままに運転を続けることになる。そうすると、長時間の連続運転や悪路走行時の衝撃などによって疲労亀裂が一挙に進展し、溶接部が破壊してしまうおそれがある。
本発明の課題は、前述したような従来のホイールにおける問題点を解消し、耐衝撃強度および耐久性に優れ、かつ意匠性にも優れた自動車用ホイールおよびその製造方法を提供することにある。
本発明は、図5に例示する下記(1)および(2)の自動車用ホイール、ならびに下記(3)の自動車用ホイールの製造方法を要旨とする。
(1)リムビードシート5の内側に、ホイールの回転軸と平行な方向に内向きに屈曲させたディスクフランジ4を嵌合させ、上記リムビードシート5と上記ディスクフランジ4とを溶接したホイールであって、リムフランジのアウター側先端部7-3がホイールの回転軸に向かって湾曲していて、その先端がディスクフランジの屈曲肩部に溶接されていることを特徴とする自動車用ホイール。
(2)リムの肉厚が不等厚であることを特徴とする上記(1)の自動車用ホイール。
(3)リムフランジのアウター側先端部7-3とディスク外周部の屈曲肩部との溶接を、TIG溶接法、ソフトプラズマ溶接法、レーザー溶接法およびレーザー・アーク複合溶接法のうちのいずれかで行うことを特徴とする上記(1)または(2)の自動車用ホイールの製造方法。
本発明によれば、軽量であるにもかかわらず、耐衝撃性および耐久性に優れ、しかも意匠性に富み、ホイールキャップの装着が不必要な自動車用ホイールが得られる。
1.本発明のホイール
図5は、本発明のホイールの一例を示す断面図である。この図は、ホイールを立てた状態でのおよそ上半分の断面図である。図の右側が外側(アウター側)である。図示のとおり、このホイールではディスク2の外周部のディスクフランジ4がホイールの回転軸に平行な方向(図5では内側方向、即ち、インナー方向)に屈曲している。そして、そのディスクフランジ4は、リムのビードシート5の内側に嵌合し、先端部でビードシート5に組み付け溶接8で固定されている。7-2はインナー側のリムフランジである。なお、ホイールの軽量化には、リム3の肉厚が不等厚であることが望ましい。
リム3のフランジ7-1は大きく伸びて先端部がΩ形に湾曲し、先端7-3はディスクフランジ4の屈曲部の肩に当接して溶接9で接合されている。このような構造であるから、組み付け溶接8は、ビードシート5の内側に位置し、もしもその溶接部に亀裂が発生して進展した場合、タイヤのエア漏れに伴う空気圧の減少によってそれを検知することができる。また、溶接が8および9の二カ所で行われているから、リムとディスクの結合は強固であり、耐衝撃性および耐久性にも著しく優れている。さらに、図1の従来のホイールと比較すればディスクの比較的平らな部分が広いので、そこに多様なパターンを造形して意匠性を高めることが可能である。
2.本発明のホイールの製造方法
図6〜図8を用いて本発明のホイールの製造方法を説明する。
リムは、まず素管をフローフォーミングすることによって成形する。このとき、各部の肉厚は、元厚(素管の肉厚)のままでもよいが、部分的に元厚よりも減肉する(不等厚にする)のが望ましい。図9は、フローフォーミング成形後のリムの肉厚分布の一例を示す断面図である。図示のように、部分的に元厚の最大50%程度まで減肉するのが望ましい。このように肉厚分布を変化させるのはホイールをできるだけ軽量化するためである。
上記のフローフォーミングで成形された素管にロールフォーミング加工を施して、アウター側リムフランジ7-1、インナー側リムフランジ7-2、およびリムドロップ6等を形成する。
上記のように成形したリムをディスクと結合する手順は、図6〜図8に示すとおりである。まず、リムフランジ7-1が大きく湾曲させられていない状態、即ち、リムフランジの先端部7-3が開いた状態で、ディスクフランジ4の屈曲部が嵌合される(図6)。次いで、リムフランジ7-1を治具10と11とによって湾曲させる(図7)。さらに、治具11を押しつけて、図8に示す形状とする。最後に、図5に示したように、組み付け溶接8および9によって固定する。この組み付け溶接にあたっては、まず図6の状態で溶接8を行い、次いで図7および図8の成形を行った後に溶接9を実施してもよい。
次に溶接方法について述べる。
組み付け溶接8には、一般によく使用されるMAG溶接やCO2溶接などのアーク溶接が好ましい。コストと生産性の面から円周方向の4カ所以上を部分的に溶接すればよい。例えば、4カ所を各80mmの長さで溶接すれば十分である。
一方、外側の組み付け溶接9は、ディスクの意匠性に対する影響を考慮して、TIG溶接法またはソフトプラズマ溶接法で実施するのが好ましい。溶接材料(ワイヤー)を電極とする前記のMAG溶接やCO2溶接では、スパッターが多量に発生し、ディスクの意匠面に付着して品質低下を招くおそれがある。これに対して、TIG溶接やソフトプラズマ溶接では非消耗電極を用いるのでスパッターの発生がなく、意匠性を損なわずに高品質の溶接を行うことができる。特に、ソフトプラズマ溶接は、溶け込みが深く、高速化が可能であるから、より望ましい。
ソフトプラズマ溶接は、TIG溶接とプラズマ溶接の中間的な溶接方法であり、二重ガスシールド方式が一般的であるが、三重ガスシールド方式もある。この溶接方法は、タングステン電極の周辺からガス気流を形成させてアークを冷却し、サーマルピンチ効果でアークを絞ることにより、アーク電流密度を高くして溶け込み深さ深くするという溶接方法である。最外周側のシールドガスの主な作用は、溶融池の酸化防止である。
溶接にはレーザー溶接法も採用できる。レーザー溶接は、高速で、かつ深い溶け込み深さが得られる溶接方法である。ただし、レーザー溶接では、溶接突き合わせ部にギャップがあるとエネルギーが貫通してしまい、キーホールの形成が困難になって溶接欠陥を生じることがあるので、突き合わせ精度の向上が必要である。
このレーザー溶接と前記のアーク溶接とを組み合わせた「レーザー・アーク複合溶接法」であれば、双方の利点を生かして、突き合わせ精度の許容範囲の拡大と高速溶接が可能になり、溶接欠陥のない美麗な接合が実現できる。レーザー溶接とTIG溶接またはソフトプラズマ溶接との組合せは、アークの安定化、溶接金属の増大および突き合わせ精度の許容範囲の拡大のために最も望ましい。また、レーザー溶接とMAG溶接との組合せも、MAG溶接に伴うスパッターを抑制し、溶接金属を最も増加させる溶接方法であり、あらゆる位置での組み付け溶接に利用できる。
以上の方法で作製された本発明のホイールは、意匠面の広いホイールである。そして、リムとホイールの溶接が二カ所でなされているから、高い剛性および耐久性を持つ。しかも、そのうちの一カ所の溶接がリムのビードシートの内側にあるので、その部分に亀裂が生じた場合にはタイヤの空気圧が減少する。したがって、亀裂の早期発見が可能であり、ホイールの破損事故を未然に防ぐことができる。
肉厚2.6mmのリムおよび板厚4.5mmのディスクにより、16インチ×61/2JJのホイールを製作した。リムの材料は45キロ熱延鋼板(JISのSAPH440)、ディスクの材料は60キロ熱延鋼板(JISのSPFH590)である。
(1)本発明例
図6〜図8に示した工程でリムとディスクを組み合わせて、図5に示した形状のホイールとした。リムはフローフォーミングで図9に示したように不等厚に成形した。溶接8は、MAG溶接により円周方向4カ所で各80mmの長さとした。溶接9は、ソフトプラズマ溶接法でフィラーワイヤーを用いて全周溶接を行った。
(2)比較例1
図1に示したドロップ嵌合タイプのホイールとした。組み付け溶接8は、リムドロップ部で行い、MAG溶接により円周方向4カ所で各80mmの長さとした。
(3)比較例2
図2に示したビードシート嵌合型ホイールとした。組み付け溶接8は、MAG溶接により円周方向4カ所で各80mmの長さとした。
(4)比較例3
図4に示したフルフェイス型ホイールとした。これは、前掲の特許文献2に開示されているタイプである。溶接は、低電流のMAG溶接とした。
上記の各ホイールの重量測定を行い、耐衝撃性と耐久性を評価した。試験条件は次のとおりである。
[衝撃試験]
タイヤを装着したホイールに対して、タイヤ表面から40mmの位置から約1トンの錘を落とし、アウター側リムフランジの変形深さの測定と空気漏れ発生の有無の調査を行った。この試験は、道路の縁石に衝突したときの耐衝撃性を評価することになる。
[耐久試験]
タイヤに1.5トンの荷重を負荷し、半径方向負荷耐久性を調べた。50万回転ごとに溶接部およびその近傍の疲労亀裂発生の有無を確認し、亀裂発生によるエア漏れまでの回転数で耐久性を評価した。
以上の結果を表1に示す。
Figure 0004589845
表1に示すとおり、本発明のホイールは最も軽量で、比較例2のホイールよりも約5.5%軽い。これは、リムを不等厚にしたことによる効果である。
衝撃試験では、本発明のホイールは、比較例1および2よりも変形が小さく、エア漏れも溶接部の割れ発生もない。比較例3では、変形は比較的小さいが、溶接部には微小な割れが生じた。
耐久性試験では、本発明のホイールはエア漏れが生じたのは359万回転後であった。これに対して、比較例1および2ではそれぞれ163万回転、112万回転でエア漏れが発生している。比較例3は、300万回転で組み付け溶接部に亀裂が発見され、350万回転でその亀裂の拡大が認められたので、試験を中止した。この比較例3では、ホイールに亀裂が生じてもエア漏れが確認できない。これは、前述したように組み付け溶接部がタイヤの外側にあるからである。即ち、エア漏れから亀裂の発生を知ることができないので、亀裂が生じたホイールのままで走行を続けて、ホイール破壊による事故に到るおそれがある。
以上の試験結果から明らかなとおり、本発明のホイールは、軽量化されているにもかかわらず、優れた耐衝撃性および耐久性を備えている。
本発明によれば、耐耐衝撃性および耐久性に優れた自動車用ホイールが得られる。このホイールは軽量化も可能であり、意匠性に富むのでホイールキャップを装着する必要もない。
従来のドロップ嵌合型のホイールを示す部分断面図である。 従来のビードシート嵌合型ホイールを説明する部分断面図である。 特許文献1に開示されるホイールの説明図である。 特許文献2に開示されるホイールの説明図である。 本発明のホイールの一例を示す部分断面図である。 本発明ホイールの製造方法の第1工程を示す部分断面図である。 本発明ホイールの製造方法の第2工程を示す部分断面図である。 本発明ホイールの製造方法の第3工程を示す部分断面図である。 本発明ホイールのリムの肉厚分布の一例を示す図である。
符号の説明
1:ホイール、 2:ディスク、 3:リム、 4:ディスクフランジ、
5:リムビードシート、6:リムドロップ、 7-1, 7-2:リムフランジ、
8,9:溶接、 10, 11:治具

Claims (3)

  1. リムビードシートの内側に、ホイールの回転軸と平行な方向に内向きに屈曲させたディスクフランジを嵌合させ、上記リムビードシートと上記ディスクフランジとを溶接したホイールであって、リムフランジのアウター側先端部がホイールの回転軸に向かって湾曲していて、その先端がディスクフランジの屈曲肩部に溶接されていることを特徴とする自動車用ホイール。
  2. リムの肉厚が不等厚であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ホイール。
  3. リムフランジのアウター側先端とディスクフランジの屈曲肩部との溶接を、TIG溶接法、ソフトプラズマ溶接法、レーザー溶接法およびレーザー・アーク複合溶接法のうちのいずれかで行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車用ホイールの製造方法。
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