JP2007110699A - 画像処理方法及び画像記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】記録画像に生じる濃度ムラ及びアーティファクトを抑制する画像処理方法及び画像記録装置を提供する。
【解決手段】ノズルの吐出特性に応じたライン補正係数diを乗じた入力画像(対象画像)16の処理画素は、2値化処理部20によって閾値生成部40で生成された閾値を用いて2値化処理が施され、誤差算出部24によって2値化処理の際に発生した誤差が算出され、該誤差は誤差拡散部28によって処理画素周辺の未処理画素に拡散され、入力値補正部32によって未処理画素の入力値が補正される。また、誤差算出部24によって算出された誤差に基づいて閾値補正処理部36では未処理画素の閾値が補正され、補正された閾値を用いて未処理画素の2値化処理が行われる。閾値補正処理部では、2次元状の閾値補正フィルタ34(M2)を用いて閾値の補正処理が行われる。
【選択図】 図1

Description

本発明は画像処理方法及び画像記録装置に係り、特に多数の記録素子(ノズル)を2次元的に高密度に配列させて成る記録ヘッドを用いて記録媒体上に画像を形成する画像記録装置の画像処理技術に関する。
インクジェット記録装置では、ヘッドに備えられた記録素子の記録特性(例えば、液滴を吐出するノズルの吐出特性)のばらつきによって記録画像にスジ状の濃度ムラ(以下、単にムラと呼ぶことがある)が生じる問題があり、画像処理によってノズルの吐出特性を補正する技術が提案されている。
ここで、図26〜図32を用いて、従来技術に係る画像処理におけるノズルの吐出特性の補正技術の一例について説明する。なお、図26〜図32では、図1〜図25と同一または類似する部分には同一の符号を付すこととする。
図26は、従来技術に係る画像処理を説明する図である。同図に示すように、256階調の画像データ1を取得すると、ライン補正処理部14において、該画像データ1に対して予め決められたノズルの吐出特性による補正係数12(ライン補正係数di)が乗算され、256階調の補正画像データ(図1の対象画像)16が生成される。
ライン補正処理部14で用いられるライン補正係数di(iは、図29に示すヘッド520に設けられるノズル522−iのノズル番号、i=1〜8)は、ライン補正係数生成部2において、テストパターンの印字、テストパターンの測定及びノズル濃度補正係数作成などの工程を経てノズルごとに生成され、所定の記憶部に記憶される。このようにして生成されたライン補正係数diを用いた補正により生成された補正画像データ16には、2値化処理部(ハーフトーン処理部)20においてハーフトーン処理(例えば、誤差拡散法による量子化処理)が行われ、2値(多値)の出力データ(印字データ)22が生成される。
図27は、図26により説明した画像処理を実行する画像処理ブロックのブロック図である。一般に、入力画像に対して再現性のよい高品位な2値(多値)画像を生成するには、いわゆる誤差拡散法が好適に用いられる。誤差拡散法では、ライン補正処理が施された補正画像(対象画像)16に、図27に矢印線で示す2値化処理方向へ画素(ピクセル)ごとに2値化処理が実行される。
即ち、2値化処理部20では、処理画素の画素値(例えば、8ビットデータで0〜255)が閾値生成部40で生成された閾値と比較され、その比較結果に基づいて2値の出力データ22(0/255)が求められる。
また、誤差算出部24では、対象画像16のデータと出力データ22との誤差が算出され、誤差拡散処理部28では、誤差算出部24で求められた誤差が誤差拡散フィルタ26に基づいて処理画素の周辺画素へ拡散処理ための補正データを算出し、この補正データは一旦誤差バッファ30に記憶される。
入力値補正部32では、誤差バッファ30に記憶された補正データに基づいて、当該処理画素の周辺画素の入力データIが補正され、誤差拡散処理後の入力データI’に置き換えられる。このようにして置き換えられた誤差拡散処理後の入力データI’を対象として2値化処理部20によって2値化処理が施される。
図28には、誤差拡散フィルタ26の一例を示す。図28に示す誤差拡散フィルタ26は、未処理画素のうち、処理画素26−1の右隣りの画素26−2には7/16の誤差を拡散し、左下の画素26−3には3/16の誤差、真下の画素26−4には5/16の誤差、右下の画素26−5には1/16の誤差を拡散するフィルタである。なお、図28に示す誤差拡散フィルタ26の2値化処理方向は図28おける左から右方向(矢印線で図示)である。
また、上述した誤差拡散処理を数式で表現すると、次式のとおりとなる。
Figure 2007110699
特許文献1に記載された発明には、ノズルから吐出されたインクの体積誤差に起因する濃度ムラを補正する画像処理方法が開示されており、特許文献2に記載された発明には、ノズルから吐出されたインクの着弾位置誤差に起因する濃度ムラを補正する画像処理方法が開示されている。
上記従来技術には、ノズル吐出特性の補正(濃度ムラ補正)処理を施した補正画像データに誤差拡散法を用いた量子化処理を施すと、濃度ムラの補正が十分でなくなり、記録画像にムラが視認されてしまうといった問題がある。
即ち、図29に示すように、入力画像1(図26参照)にライン補正係数diを乗じた対象画像16(図29には不図示、図26参照)に対して、2値化処理部20によって誤差拡散処理を用いた2値化処理を施すと、ライン補正係数diと印字デューティ比12’(ei、iはヘッド3に備えられたノズル4−iの番号、i=1〜8)の間にかなりの誤差を生じてしまう。印字デューティ比eiは、ノズル4−iごとのドット形成可能領域に対して実際にドットが配置された領域の割合を表し、ムラ補正の観点から、印字デューティ比eiはライン補正係数diと等しいことが望ましい。
図30には、ライン補正係数diと印字デューティ比eiの相関を表すグラフを示す。これは、512個のノズルを持つヘッドにおいて、実際にライン補正係数diを作成し、誤差拡散法による2値化処理後に印字デューティ比eiを計算し、両者の相関を表している。好ましい濃度ムラ補正にためには、ライン補正係数diの値と印字デューティ比eiの値が略同一になる(図30に示す直線5上に乗ること)が好ましいが、実際には両者の間には誤差が発生してしまう。
このような問題に対して、結果としてライン補正係数diを保存する特性を持つ誤差拡散法が特許文献3に開示されている。具体的には、図31に示す拡散処理フィルタ6を用いて1次元方向(2値化処理方向)のみに誤差を拡散するというものであり、処理画素6−1の誤差は、水平方向の未処理画素(図31では、処理画素6−1の右隣りの画素6−2)にのみ拡散され、左下の画素6−3や真下の画素6−4、右下の画素6−5には誤差は拡散されない。即ち、あるノズル4−iの画像データの2値化処理時に発生する誤差が他のノズルに対応する画像データに拡散されないので、ライン補正係数diが印字デューティ比eiとして保存される。
特開2004−230672号公報 特開2004−58282号公報 特開平6−225124号公報
しかしながら、特許文献3に記載された画像処理方法では、2値化処理方向に対して垂直方向の周辺画素に誤差を拡散しておらず、即ち、2値化処理方向に対して平行方向のドット分散性を補償する機能を備えていないので、垂直方向に連続してドットが配置されてしまい、図32に示すような垂直方向に沿った縦縞状のアーティファクト7が生じてしまう。
特許文献3には、図32に示す画像8に発生するアーティファクト7を抑制する方法として、2値化処理時に用いる閾値を垂直方向に変調させて、水平方向のラインごとにドットの発生順序を異ならせる方法を提案しているが、特許文献3に記載された方法では、図32に示すようなアーティファクトは低減されるものの、濃度階調によっては目障りなアーティファクトが発生することが本願発明者の実験によって確認されている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、記録画像に生じる濃度ムラ及びアーティファクトを抑制する画像処理方法及び画像記録装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る画像処理方法は、複数の記録素子が所定の方向に並べられた記録ヘッドを用いた画像記録における多階調の入力画像を該入力画像よりも低い階調の画像に変換する画像処理方法であって、前記入力画像の処理画素の画素値と所定の閾値とを比較した比較結果に基づいて、前記複数の記録素子により記録媒体に記録するときの前記複数の記録素子と前記記録媒体との相対搬送方向と略平行方向を処理方向として前記処理画素に量子化処理を施し、前記量子化処理時に発生する誤差を前記処理画素周辺の未処理画素に拡散させるとともに、該誤差に応じて前記入力画像の前記未処理画素に対する閾値を決めることを特徴とする。
本発明によれば、ある処理画素の量子化処理の際に発生する誤差に応じて未処理画素の量子化処理に用いる閾値が決められるので、記録画像において量子化処理の処理方向と略平行方向のドット分散性が補償され、記録画像の量子化処理の処理方向と略直交する方向に生じるアーティファクトが抑制される。
記録素子には、記録媒体上に液体を吐出するノズルや、記録媒体上にLED光を放射するLED素子などがある。ノズルから吐出された液体やLED素子から放射されたLED光によって記録媒体上にドットが形成され、複数のドットが組み合わされて記録媒体上に所望の画像が形成される。
入力画像の画素値には、例えば、濃度値がある。また、量子化処理には、入力画像を2値画像や多値画像(3値画像など)に変換する画像処理が含まれる。
記録ヘッドには、記録媒体の全幅に対応する長さにわたって記録素子が配置されたライン型ヘッドがある。このライン型ヘッドには、記録媒体の全幅に対応する長さに満たない短尺のヘッドを千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、記録媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
記録ヘッドに液体を吐出させるノズルを備える態様では、該ノズルから吐出させるインクには、インクジェット記録装置に用いられるインクやレジストなどの薬液、処理液などがある。
記録媒体は、ノズルから吐出される液体を付着させる媒体やLED光の照射を受ける媒体であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、PHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。なお、記録媒体は、記録メディア、印字媒体などと呼ばれることがある。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像処理方法の一態様に係り、前記入力画像に前記記録素子の記録特性に応じた補正処理を施し、該補正処理が施された前記入力画像を該入力画像よりも低い階調の画像に変換することを特徴とする。
記録素子の記録特性に応じて入力画像を補正し、この補正された入力画像に量子化処理が施されるので、記録素子の記録特性の違いにより記録画像に生じる濃度ムラを抑制することができる。
記録素子の記録特性には、記録媒体上に形成されるドットの形成位置のズレや、該ドットの大きさのズレ、該ドットの濃度のズレなどがある。このような記録特性を補正する態様には、記録素子の記録特性に応じた補正係数を求め、該補正係数を入力画像に乗算(演算)する態様がある。
また、上記目的を達成するために、請求項3に係る画像処理方法は、複数の記録素子が所定の方向に並べられた記録ヘッドを用いた画像記録における多階調の入力画像を該入力画像よりも低い階調の画像に変換する画像処理方法であって、前記記録素子の記録特性に応じて前記入力画像に補正処理を施し、該補正処理が施された前記入力画像の処理画素の画素値と所定の閾値とを比較した比較結果に基づいて、前記複数の記録素子により記録媒体に記録するときの前記複数の記録素子と前記記録媒体との相対搬送方向と略平行方向を処理方向として前記処理画素の量子化処理を行い、前記量子化処理時に発生する誤差を前記処理画素周辺の未処理画素に拡散させる際に前記記録素子の記録特性に応じて前記誤差を前記未処理画素に拡散させることを特徴とする。
本発明によれば、記録素子の記録特性に応じて未処理画素に誤差拡散処理が施されるので、記録素子の記録特性による入力画像の補正の保存性が良好であり、記録画像に生じるアーティファクトが抑制される。
また、上記方法発明を具現化するための装置発明を提供する。即ち、請求項4記載の画像記録装置は、複数の記録素子が所定の方向に並べられた記録ヘッドと、入力画像の処理画素の画素値と所定の閾値とを比較した比較結果に基づいて、前記複数の記録素子により記録媒体に記録するときの前記複数の記録素子と前記記録媒体との相対搬送方向と略平行方向を処理方向として前記処理画素に量子化処理を施す量子化処理手段と、前記量子化処理手段の量子化処理時に発生する誤差を前記処理画素周辺の未処理画素に拡散させる誤差拡散手段と、前記誤差に応じて前記未処理画素に対する閾値を決める閾値決定手段と、を備えたことを特徴とする。
画像記録装置には、画像形成装置と呼ばれるものを含み、記録媒体上にインクを吐出させて所望の画像を形成するインクジェット記録装置や、記録媒体上にLED素子からLED光を照射して所望の画像を形成するLED電子写真プリンタ(記録装置)などがある。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の画像記録装置の一態様に係り、前記入力画像に前記記録素子の記録特性に応じた補正処理を施す画像補正手段を備え、前記量子化処理手段は、該補正処理が施された前記入力画像を該入力画像よりも低い階調の画像に変換することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5記載の画像形成装置の一態様に係り、前記閾値決定手段は、2次元マトリクス型の拡散フィルタを用いて予め決められた閾値の初期値を補正して前記未処理画素の閾値を決定することを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、閾値変更手段に2次元マトリクス型の拡散フィルタを適用することで、記録媒体上に形成されるドットの分散性を高めることができる。なお、予め決められた閾値や、補正された閾値を記憶する閾値記憶手段を備えてもよい。
請求項7に記載の発明は、請求項4、5又は6記載の画像記録装置の一態様に係り、前記閾値決定手段は、処理画素ごとに閾値を決定することを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、処理画素(即ち、量子化処理が実行される画素)ごとに量子化処理の閾値が決められるので、ドットの分散性が補償された好ましい量子化処理が行われる。
請求項8に記載の発明は、請求項4乃至7のうち何れか1項に記載の画像記録装置の一態様に係り、前記誤差拡散手段は、誤差拡散処理の処理方向の未処理画素のみに前記誤差を拡散させることを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、誤差拡散処理の処理方向の1次元方向にのみ量子化処理の際に生じた誤差を拡散させるので、記録素子の記録特性に応じた補正を他の記録素子によるドット形成に影響を与えず、良好なドット分散性が実現される。
また、上記目的を達成するために、請求項9記載の画像記録装置は、複数の記録素子が所定の方向に並べられた記録ヘッドと、前記記録素子の記録特性に応じて前記入力画像に補正処理を施す画像補正手段と、前記補正手段によって補正された入力画像の処理画素の画素値と前記閾値決定手段により決められた閾値とを比較した比較結果に基づいて、前記複数の記録素子により記録媒体に記録するときの前記複数の記録素子と前記記録媒体との相対搬送方向と略平行方向を処理方向として前記処理画素に量子化処理を施す量子化処理手段と、前記量子化処理手段の量子化処理時に発生する誤差を前記処理画素周辺の未処理画素に拡散させる際に前記記録素子の記録特性に応じて前記誤差を前記未処理画素に拡散させる誤差拡散手段と、を備えたことを特徴とする。
閾値決定手段によって閾値を決定する態様には、予め決められた(所定の記憶手段に記憶された)閾値の初期値を補正する態様がある。
請求項10に記載の発明は、請求項9記載の画像記録装置の一態様に係り、前記誤差拡散手段は、2次元マトリクス型の拡散フィルタを用いて前記未処理画素に誤差を拡散させることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、請求項10記載の画像記録装置の一態様に係り、前記誤差拡散手段は、記録誤差が大きい記録素子に対応する領域では誤差拡散処理の処理方向の重み付けを増加させることを特徴とする。
請求項11に記載の発明によれば、記録誤差が大きい記録素子に対応する領域では高い補正精度が求められるので、誤差拡散処理の処理方向の重み付けを増加させることで記録素子の記録特性に応じた補正結果が量子化処理後も良好に保存され、好ましいムラ補正が実現される。また、記録誤差が小さな領域では、誤差を2次元的に拡散できる拡散フィルタを用いる態様が好ましい。
本発明によれば、量子化処理の際に発生する誤差に応じて未処理画素の量子化処理に用いる閾値が決められるので、記録画像において複数の記録素子により記録媒体に記録するときの該複数の記録素子と該記録媒体との相対搬送方向と略平行方向のドット分散性が補償され、記録画像に生じるアーティファクトが抑制される。また、記録素子の記録特性に応じて未処理画素に誤差拡散処理が施される態様では、記録素子の記録特性による入力画像の補正の保存性が良好であり、記録画像に生じるアーティファクトが抑制される。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像処理方法を実行する画像処理ブロック10のブロック図である。同図に示す画像処理ブロック10は、入力データ(濃度値、0〜255)に対して各記録素子の記録特性に対応したライン補正係数12(di)を乗じるライン補正処理部14と、ライン補正係数di(iは図29に示すヘッド3に設けられたノズル(記録素子)4−iの番号、i=1,2,…)を乗じた2値化処理の対象画像16に対して所定の処理方向(矢印線で図示)に2値化処理(或いは、多値化処理)を施す2値化処理部20と、2値化処理部20により得られた出力データ22(0/255)と対象画像16との誤差を算出する誤差算出部24と、を有している。なお、ここでいう対象画像16は、図26,27に示す補正画像(補正画像データ)16に対応している。
また、図1に示すように、誤差算出部24により算出された誤差を誤差拡散フィルタ26(M1)によって処理画素の周辺の未処理画素に拡散させる誤差拡散処理部28と、該周辺画素に拡散させる誤差が記憶される誤差バッファ30と、誤差バッファ30に記憶された誤差に基づいて、該未処理画素の入力値を補正する入力値補正部32と、を有し、更に、誤差算出部24により求められた誤差に応じて閾値補正フィルタ34(M2)により周辺の未処理画素の閾値を補正する閾値補正処理部36と、当該未処理画素に対応する閾値の補正値が記憶される閾値補正バッファ38と、閾値補正バッファ38に記憶されている閾値の補正値に基づいて未処理画素の閾値が生成(補正)される閾値生成部40と、を有している。
ライン補正処理部14では、記録素子の記録特性(例えば、濃度特性)に応じて求められたライン補正係数diを入力画像(図22の画像データ1に対応)のデータに乗じることで、記録素子の記録特性より記録画像に生じる濃度ムラが補正される。ライン補正係数diの生成には、特開2004−230672号公報や、特開2004−058282号公報に記載された方法を適用してもよいし、後述するライン補正係数設定方法を適用してもよい。
2値化処理部20では、ライン補正係数diによる濃度補正処理が施された処理画素の入力データ(濃度値)I(i,j)に対して閾値T(i,j)に基づく2値化処理を施し出力データO(i,j)を得る。なお、閾値T(i,j)は空間的に一定でなくてもよい。ここで、I(i,j)=0、1、2、…、255であり、O(i,j)は0或いは255の2値を取る。また、O(i,j)の0はドットの非印字を表し、255はドットの印字を表している。但し、iは記録素子番号、jは記録媒体搬送方向の画素番号を表す。
誤差算出部24にて求められた誤差E(i,j)は、次式のように表される。
Figure 2007110699
上記〔数2〕に示す誤差E(i,j)に基づいて処理画素の周辺の未処理画素の入力データが補正される。この補正処理には、図1に示す誤差拡散フィルタM1(k,l)が用いられる。但し、kは記録素子番号(iに対応)、lは記録媒体搬送方向の画素番号(jに対応)である。
即ち、誤差が拡散された未処理画素の入力データI’(i,j)は、次式のように表される。
Figure 2007110699
なお、誤差拡散フィルタM1には、ライン補正係数diを保存するために(ライン補正係数diと図29で説明した印字デューティ比eiとを略同一にするために)、図31に示すフィルタ6が適用される。言い換えると、本例の2値化処理(誤差拡散処理)では、2値化処理方向の未処理画素にのみ(1次元方向にのみ)2値化処理の際に生じる誤差E(i,j)が拡散される。図31に示すように、処理画素6−1の2値化処理の際に生じる誤差E(i,j)を、処理画素6−1の右隣りの画素6−2にのみ拡散するように構成されている。
本例に示す画像処理では、上記〔数2〕に示す誤差E(i,j)に基づき、処理画素の周辺の未処理画素に対して閾値T(i,j)が補正された閾値T’(i,j)が求められる。即ち、ある画素に対して2値化処理が施されるたびに周辺の未処理画素に対して補正閾値T’(i,j)が求められる。この閾値T’(i,j)は、次式のように表される。
Figure 2007110699
図1に示す閾値補正処理部36では、図2にその一例を示す閾値補正フィルタ34(M2)を用いて、誤差算出部24で算出された誤差E(i,j)に基づいて、上記〔数4〕で表される処理が実行される。図2に示す閾値補正フィルタ34は、2値化処理方向と略平行方向のドット分散性を高めることを目的としたフィルタであり、処理画素34−1の2値化処理方向に隣り合う(右隣りの)画素34−2に対する補正値は0/9(0)であり、処理画素34−1と垂直方向に隣り合う画素34−3,34−4,34−5に対する補正値はそれぞれ3/9,5/9,1/9となっている。
このような閾値の補正では、ドットの分散性を向上させるためにドット形成画素の周辺はドット形成が抑制される補正であることが好ましく、閾値補正フィルタ34の値は正とすることが好ましい。
図3には、本例に示す画像処理が施された画像60を示し、図4には、該画像60のライン補正係数diと印字デューティ比eiとの相関を示す。図3に示すように、画像60では、ドット62が良好に分散しており、画像392には図28に示すようなアーティファクト390が発生していないことがわかる。
また、図4に示すように、ライン補正係数diの値と印字デューティ比eiの値が略同一になり(図4に示す直線70上に乗り)、2値化処理後もライン補正係数diが保存されているために良好な濃度補正(ムラ補正)が行われたことがわかる。
ここで、図5(a)には、記録素子の記録特性に基づく濃度補正処理が施されていない画像80を示し、図6(a)には、従来技術に係る画像処理(記録素子の記録特性に基づく濃度補正処理が施され、一定の閾値により誤差拡散処理)が施された画像82を示す。また、図7(a)には、本発明に係る画像処理(記録素子の記録特性に基づく濃度補正処理が施され、誤差に応じて可変させた閾値により誤差拡散処理)が施された画像84を示す。なお、図5(b)、図6(b)、図7(b)に示す画像80’,82’,84’は、それぞれ図5(a)、図6(a)、図7(a)に示す画像80,82,84を模式的に表現したものである。
図5(a),(b)に示すように、記録素子の記録特性に基づく濃度補正処理が施されていない画像80(82’)には記録媒体搬送方向に沿う濃度ムラ90(90’)が多数視認される。また、図6(a),(b)に示す従来技術に係る画像処理が施された画像82(82’)は、図5(a),(b)に示す画像80(80’)に比べて濃度ムラは低減されているものの、視認される程度の濃度ムラ92が発生し、更に、縦縞状のアーティファクト94(94’)が発生していることがわかる。
一方、本発明に係る画像処理が施された図7(a),(b)に示す画像84(84’)には、視認され得る濃度ムラや縦縞状のアーティファクトが発生していないことがわかる。
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る画像処理では、記録素子の記録特性に対応するライン補正係数diを乗じた入力データI(i,j)を求め、この入力データI(i,j)に対して誤差拡散法による2値化処理を施し出力データO(i,j)を得る画像処理において、誤差拡散処理に用いる閾値T(k,l)を上記(2)に示す2値化処理の際に生じる誤差E(i,j)に基づいて補正して閾値T’(k,l)を求め、該補正閾値T’(k,l)に基づいて未処理画素に対する2値化処理が施される。したがって、2値化処理後もライン補正係数diが保存され、ムラ補正の効果を高めるとともに、ドット分散性が向上して記録画像にアーティファクトが発生することを抑制可能である。
ここでいう記録素子は、インクジェット記録装置におけるノズルやLED電子写真プリンタにおけるLED素子などを意味し、また、記録素子の記録特性には、インクジェット記録装置のノズルにおける吐出特性(吐出量、インク液滴の飛翔方向など)がある。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る画像処理方法について説明する。図8は、本発明の第2実施形態に係る画像処理を実行する画像処理ブロック100のブロック図である。同図に示す画像処理ブロック100は、図1に示す画像処理ブロック10の閾値補正フィルタ34及び閾値補正処理部36に代わり、誤差拡散フィルタ変更処理部102が設けられている。即ち、第2実施形態に示す画像処理では、ライン補正係数diに応じて誤差拡散フィルタ26が変更されるように構成されている。
記録素子の特性誤差(例えば、濃度誤差)が大きい領域(即ち、|di−1|が大きい領域、例えば、|di−1|>0.5となる領域)では、高い補正精度が求められるので、図9(a)に示すような2値化処理方向の重み付けを増加させた誤差拡散フィルタ120が用いられる。即ち、2値化処理方向の重み付けを増加させた誤差拡散フィルタを用いた誤差拡散処理によれば、印字デューティ比eiをdiに近づけることができ、好ましい濃度ムラ補正が実現される。
また、記録素子の特性誤差が小さい領域(即ち、|di−1|が小さい領域、例えば、|di−1|<0.2となる領域)では、フロイド型フィルタのような、図9(b)に示す誤差拡散フィルタ122が用いられる。即ち、大部分の記録素子が正常に記録(ドット形成)を行うことを前提とすれば、2値化処理方向と略平行方向のドット分散性が確保され縦縞上のアーティファクトが発生しない濃度ムラ補正が実現される。
なお、異なる特性を持つフィルタを急激に切り換えることは、ドット生成特性が領域により異なる問題が発生する。このような問題を解決するために、特性の変化が小さなフィルタを連続的に切り換えることが好ましい。前記技術は、著者Reiner Eschbach、文献名jounal of Electronic Imaging 2(4),pp.352-358 1993,Reduction of artifacts in error diffusion by means of input-dependent weightsなどで明らかにされている。
例えば、|di−1|>0.5となる領域には、図9(a)に示す誤差拡散フィルタ120を適用し、0.2≦|di−1|≦0.5となる領域には、図9(b)に示す誤差拡散フィルタ122を適用し、|di−1|<0.2となる領域には、図9(c)に示す誤差拡散フィルタ124を適用する。このように、記録素子の特性誤差の大きさに応じて誤差拡散フィルタが連続的に変化するように、各領域に対して誤差拡散フィルタが適宜選択される。
以上説明したように、本発明の第2実施形態に係る画像処理方法では、予め複数の誤差拡散フィルタを準備しておき、ライン補正係数diに応じて誤差拡散フィルタが選択(変更)され、この選択された誤差拡散フィルタによって未処理画素に対して2値化処理が施されるので、ライン補正係数diが保存された好ましい濃度ムラ補正が実現される。また、近隣の画素(領域)において誤差拡散フィルタの変化が大きくならないように(即ち、誤差拡散の重み付けが大きく変わらないように)、例えば、隣り合う画素(領域)には変化の小さな誤差拡散フィルタが適用されるので、領域によってドット生成特性が異なることを回避することができる。
〔ライン補正係数設定方法の説明〕
次に、本例に適用されるライン補正係数の設定方法の一例について説明する。本例では、ノズルから吐出させたインク液滴により画像を形成するインクジェット記録装置(画像記録装置)において、ノズルの吐出特性に基づく濃度ムラ補正のライン補正係数(濃度補正係数)の設定について説明する。
<補正原理>
まず、補正の原理について説明する。本例による濃度ムラの補正処理では、あるノズルが持つ着弾位置誤差を補正する際に、そのノズルを含む周囲のノズルN本を用いて補正する。詳細は後述するが、補正に用いるノズル数Nが大きいほど、より補正精度が高くなる。
図10は補正前の様子を示す図である。同図は、ラインヘッド300の左から3番目のノズル(nzl3)が着弾位置誤差を持っており、理想的な着弾位置(原点O)から図上で右方向(X軸で示した主走査方向)に着弾位置がずれて着弾する。また、図10の下側に示したグラフは、ノズルからの打滴による印字濃度を被記録媒体搬送方向(副走査方向)に平均化して得られる、ノズル列方向(主走査方向)の濃度プロファイルを示したものである。ただし、図10ではノズルnzl3の印字に対する補正を考察するので、ノズルnzl3以外の濃度出力は図示を省略した。
各ノズルnzl1〜5の初期出力濃度をDi=Dini(ただし、iはノズル番号i=1〜5、Diniは一定値を表す)、ノズルnzl3の理想着弾位置を原点O、各ノズルnzl1〜5の着弾位置をXiとする。
ここでDiは、物理的には記録媒体搬送方向に平均化したノズルの出力光学濃度を表し、データ処理上は各画素が持つ濃度データD(i,j)(但し、iはノズル番号、jは記録媒体搬送方向の画素番号を表す)に対して「j」について平均化したものを表している。
図10に示したように、ノズルnzl3の着弾位置誤差は、ノズルnzl3の濃度出力(太線)の原点Oからのズレとして表される。今、この出力濃度のズレを補正することを考える。
図11は補正後の様子を示す図である。ただし、ノズルnzl3以外は補正分のみを図示した。図11の場合、補正に用いるノズル数はN=3であり、ノズルnzl2, nzl3, nzl4 に濃度補正係数d2,d3, d4 が乗ぜられている。ここでいう濃度補正係数di は、補正後の出力濃度をDi’(図1の対象画像16のデータI(i,j)に対応)とするとき、Di’=Di+di×Diで定義される係数である。
本実施形態では、濃度ムラの視認性が最小となるよう、各ノズルの濃度補正係数di が決定される。印字画像の濃度ムラは、空間周波数特性(パワースペクトル)での強度で表される。人間の視覚的には高周波成分は視認できないため、濃度ムラの視認性は、パワースペクトルの低周波成分に等しい。そのため、パワースペクトルの低周波成分を最小とするよう、各ノズルの濃度補正係数di が決定される。
濃度補正係数diを決定する式の導出について詳細は後述するが、結果のみを先に示すと、特定のノズルの着弾位置誤差に対する濃度補正係数diは、以下の式より決定される。
Figure 2007110699
ここで、xi はそれぞれ補正対象ノズルの理想着弾位置を原点とした各ノズルの着弾位置である。Πは、補正に用いるN本のノズル内で積をとることを意味する。図11におけるN=3の場合について明示的に表すと、次のようになる。
Figure 2007110699
<濃度補正係数の導出>
濃度ムラのパワースペクトルの低周波成分を最小化するという条件から、理論的に各ノズルの濃度補正係数を導くことができる。
まず、各ノズルの誤差特性を取り込んだ濃度プロファイルを次式のように定義する。
Figure 2007110699
画像の濃度プロファイルD(x)は、各ノズルが印字する濃度プロファイルの和であり、ノズルの印字を表すのが印字モデル(1ノズルが印字する濃度プロファイル)である。印字モデルはノズル出力濃度Di’と標準濃度プロファイルz(x)に分離して表現される。
標準濃度プロファイルz(x)は、厳密にはドット径に等しい有限の広がりを持つものであるが、位置誤差の補正を濃度ズレのバランシングの問題であると考えると、重要なのは濃度プロファイルの重心位置(着弾位置)であって、濃度プロファイルの広がりは副次的な要素である。そのため、プロファイルをδ関数で置き換える近似は妥当である。このような標準濃度プロファイルを仮定すると数学的な取り扱いが容易となり、補正係数の厳密解が得られる。
図12(a)は現実に即した印字モデルであり、図12(b)はδ関数型印字モデルである。δ関数モデルで近似する場合、標準濃度プロファイルは次式で表される。
Figure 2007110699
補正係数を導出するにあたり、ある特定のノズル(i=0)の着弾位置誤差Δx0を、周辺ノズルN本によって補正することを考える。なお、ここでは補正対象ノズルの番号をi=0とした。また、周辺のノズルも、所定の着弾位置誤差を持ち得ることに注意する。
補正対象ノズル(中心ノズル)を含むN本のノズルの番号(index)は、次式で表される。
Figure 2007110699
なお、この式においては、Nは奇数である必要があるが、本発明の実施に際しては、Nを奇数に限定する必要はない。
初期出力濃度(補正前の出力濃度)はi=0のみ値を持つものとして、次式で表される。
Figure 2007110699
濃度補正係数をdiとするとき、補正後出力濃度Di’は、次式で表される。
Figure 2007110699
つまり、i=0では初期出力濃度値と補正値(di×Dini)の和で表され、i≠0では補正値のみとなる。
各ノズルiの着弾位置xiは、次式で表される。
Figure 2007110699
δ関数型印字モデルを用いると、補正後の濃度プロファイルは、次式で表される。
Figure 2007110699
これに対してFourier変換を行うと、次式、
Figure 2007110699
と表される。なお、Diniは共通の定数のため省略した。
濃度ムラの視認性を最小化することは、即ち、次式のパワースペクトルの低周波成分を最小化することである。
Figure 2007110699
これは、数学的にはT(f)のf=0における微分係数(1次、2次、…)がゼロであることで近似できる。今、未知数di’はN個であるから、DC成分の保存条件も含めると、N−1次までの微分係数がゼロの条件を用いれば、全ての(N個の)未知数di’が厳密に定まる。このようにして、以下の補正条件が定まる。
Figure 2007110699
δ関数モデルにおいては、各補正条件を展開していくと、容易な計算によってDiについてのN本の連立方程式に帰着する。各補正条件を展開したものを整理すると、以下の条件群(方程式群)が得られる。
Figure 2007110699
これらの方程式群の意味するところは、1式目はDC成分の保存であり、2式目は重心位置の保存を表している。3式目以降は統計学におけるN−1次モーメントがゼロであることを表している。
このようにして得られた条件式を行列形式で表すと、以下のように表すことができる。
Figure 2007110699
この係数行列Aは、いわゆるVandermonde型の行列であり、その行列式は差積を用いて次式となることが知られている。
Figure 2007110699
このため、Crammerの公式を用いてdi’の厳密解を求めることができる。計算の詳細な過程は省略するが、代数計算によって、その解は次式となることが示される。
Figure 2007110699
よって、求めるべき濃度補正係数diは、次式となる。
Figure 2007110699
以上のように、パワースペクトルの原点微分係数をゼロにするという条件から、濃度補正係数diの厳密解が導かれる。補正に用いる周辺ノズル数Nを増やすほど、より高次の微分係数をゼロにすることが可能になるため、低周波エネルギーがより小さくなり、ムラの視認性は一層低減する。
本実施形態では、微分係数をゼロにする条件を用いたが、完全にゼロとせずとも、補正前の微分係数に比べて十分小さい値(例えば、補正前の1/10)に設定しても、ムラ低減可能である。
<上記濃度補正係数を用いる補正の効果>
図13は、図10に示した着弾位置誤差を持つノズルに対して、補正後の空間周波数特性(パワースペクトル)を示したものである。図13では補正無しの場合と、N=3のときの補正例1と、N=5のときの補正例2が示されている。計算上の共通の条件として、ドット密度:1200dpi、ドットの着弾径:32μm、ノズル位置誤差(着弾位置誤差):10μmを用いた。
人間の視覚特性を考慮すると、濃度ムラの視認性を示すのは、0〜8cycle/mmの低周波領域であり、この領域のパワースペクトルが小さいほど、補正精度が高いことを意味する。
補正例1(N=3)は、0〜5cycle/mmでほぼパワースペクトルがゼロであり、補正無しの場合と比較して、十分に補正効果を有していることを示している。また、補正例2(N=5)は、補正例1(N=3)に比べてさらにパワースペクトルが低下している。このことより、補正に用いるノズル数Nを増やすほど、補正効果の向上が認められる。なお、図10の場合、補正対象ノズルnzl3の出力濃度は、物理的にはarea1、area5にはみ出していないが、ノズルnzl1、nzl5も補正に用いることで、よりパワースペクトルを低下させることができる。
図14は、補正に用いるノズル数を変えた各補正例1〜3の濃度補正係数を比較したものである。N=3のときの補正例1、N=5のときの補正例2、N=7のときの補正例3を比較するとわかるように、N値が増加するほど補正精度は向上するが、濃度補正係数の変化幅も大きくなる。また、当然ながらノズルの着弾位置誤差が増大するほど、濃度補正係数の変化幅も大きくなる。
濃度補正係数がある一定以上増加すると、入力画像の再現を破綻させる可能性があるため好ましくない。したがって、必要以上のN値の増加は好ましくない。補正精度と画像再現性の観点を踏まえて最適なN値を設定することが望ましい。なお、図14で示したN=3〜7の各補正例1〜3は、いずれの場合も濃度補正係数の変化幅(絶対値)は比較的小さく、入力画像の再現を破綻させることなく、濃度ムラの補正が可能である。
上記説明は、ある特定の1ノズル(例えば、図10におけるノズルnzl3)に対する濃度補正係数の決定方法である。実際には、ヘッド内の全てのノズルが何らかの着弾位置誤差を持っているため、全ての着弾位置誤差に対して補正を行うことが好ましい。
即ち、全てのノズルに対して、周囲N個のノズルにおける上記の濃度補正係数を求める。濃度補正係数を決定する際に用いる後述のパワースペクトル最小化方程式は線形なので、ノズルごとに重ね合わせが可能である。そのため、トータルの濃度補正係数は、上述のようにして得られた濃度補正係数の和を取れば求められる。
つまり、ノズルmの持つ位置誤差に対するノズルiの濃度補正係数をd(i,m)とおくと、このd(i,m)は、上記〔数5〕の方程式で求められる。そして、ノズルiのトータルの濃度補正係数diは、次式として求められる。
Figure 2007110699
なお、上記の例では、全ノズルの着弾位置誤差を補正対象としてインデックスmを足し合わせているが、ある値ΔX_threshを閾値として予め設定しておき、この閾値を超える着弾位置誤差をもつノズルのみを補正対象とするように選択的に補正する構成も可能である。
前述のとおり、補正に用いるノズル数Nの値を増加させると補正精度が向上するが、濃度補正係数の変化幅も増加して再現画像の破綻を招く可能性がある。そのため、画像破綻を起こさないための補正係数制限範囲(上限値d_maxと下限値d_min)を定めておき、上記〔数22〕の式で求まるトータルの濃度補正係数が制限範囲内に収まるようにN値を設定することが望ましい。即ち、dmin<di<dmaxを満たすようN値を定める。
実験的な知見によれば、dmin≧−1、dmax≦1を満たすならば画像破綻を起こさない。
<画像処理フロー>
本実施形態によるムラ補正処理の実装を含めた画像処理フローを図15に示す。
入力画像320のデータ形態は、特に限定されないが、例えば、24bitのRGBデータとする。この入力画像320に対して、ルックアップテーブルによる濃度変換処理を行い(ステップS22)、プリンタの持つインク色に対応した濃度データD(i,j)に変換する。なお、(i,j)は画素の位置を表し、各画素について濃度データが割り当てられる。
ここでは、入力画像320の解像度とプリンタの解像度(ノズル解像度)は一致しているものとする。なお、両者が一致しない場合は、プリンタ解像度に合わせて、入力画像について画素数変換の処理が行われる。
ステップS22における濃度変換処理は一般的な処理であり、下色除去(UCR:Undercolor Removal)処理、或いはライトインク(同色系の淡インク)を使用するシステムの場合におけるライトインクへの分配処理などが含まれる。
例えば、C(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)の3色インクの構成の場合には、CMYの濃度データD(i,j)に変換される。或いはまた、上記3色に加えてK(黒),LC(ライトシアン),LM(ライトマゼンタ)などの他のインクを含むシステムの場合は、そのインク色を含む濃度データD(i,j)に変換される。
濃度変換処理を経て得られた濃度データD(i,j)(図15中の符号330)に対してムラ補正処理が行われる(ステップS32)。ここでは、対応するノズルに応じた濃度補正係数(打滴率補正係数)diを濃度データD(i,j)に乗ずる演算が行われる。
図16の模式図に示したように、ノズルnzliの位置(主走査方向位置)iと副走査方向位置jによって画像上の画素位置(i,j)が特定され、各画素について濃度データD(i,j)が与えられる。今、図16の斜線で示した画素列の打滴を受け持つノズルについてムラ補正処理を行う場合、補正後の濃度データD’(i,j)は次式、
D’(i,j)=D(i,j)+di×D(i,j)
で計算される。こうして、補正済みの濃度データD’(i,j)
が得られる。
この補正済みの濃度データD’(i,j)(図15中の符号340)からハーフトーニング処理を行うことによって(ステップS42)、ドットのオン/オフ信号(2値データ)、または、ドットサイズ変調を含む場合はサイズの種類(ドットサイズの選択)を含んだ多値データに変換される。ハーフトーニングの手法は特に限定されず、誤差拡散法やディザ法など周知の2値(多値)化手法を用いることができる。
このようにして得られた2値(多値)信号(図15の符号350)に基づいて各ノズルのインク吐出(打滴)データが生成され、吐出動作が制御される。これにより、濃度ムラが抑制され、高品位な画像形成が可能である。
図17は、濃度補正係数(補正データ)の更新処理の例を示したフローチャートである。補正データの更新処理は、例えば、以下のいずれかの条件で開始される。即ち、(a)印字結果を監視する自動チェック機構(センサ)によって印字画像にスジムラが生じていると判断された場合、(b)人間(オペレータ)が印字画像を見て画像内にスジムラが生じていると判断して所定の操作(更新処理を開始させる指令の入力など)を行った場合、(c)事前に設定していた更新タイミングに達した場合(タイマー等による時間管理やプリント枚数カウンタなどによる稼働実績管理などによって更新タイミングを設定並びに判断可能)、のいずれかの条件で図示の更新処理がスタートする。
更新処理がスタートすると、まず、着弾誤差データを測定するためのテストパターン(予め定められている所定のパターン)のプリントが実行される(ステップS70)。
次いで、そのテストパターンの印字結果から着弾誤差データを測定する(ステップS72)。着弾誤差データの測定には、イメージセンサ(撮像素子)を利用した画像読取装置(撮像信号を処理する信号処理手段を含む)を用いることができる。着弾誤差データには、着弾位置誤差の情報及び光学濃度情報などが含まれる。
そして、ステップS72で得られた着弾誤差データから補正データ(濃度補正係数)が算出される(ステップS74)。濃度補正係数の算出方法については、既に説明した通りである。
こうして、求めた濃度補正係数の情報はEEPROM等の書き換え可能な記憶手段に記憶され、以後、最新の補正係数が用いられる。
〔インクジェット記録装置の構成〕
次に、上述した濃度ムラの補正機能を備えた画像記録装置の具体的な適用例としてのインクジェット記録装置について説明する。
図18は、本発明に係る画像記録装置の一実施形態を示すインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置410は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)412K,412C,412M,412Yを有する印字部412と、各ヘッド412K,412C,412M,412Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部414と、記録媒体たる記録紙416を供給する給紙部418と、記録紙416のカールを除去するデカール処理部420と、前記印字部412のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙416の平面性を保持しながら記録紙416を搬送するベルト搬送部422と、印字部412による印字結果を読み取る印字検出部424と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部426とを備えている。
インク貯蔵/装填部414は、各ヘッド412K,412C,412M,412Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド412K,412C,412M,412Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部414は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図18では、給紙部418の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録媒体(メディア)を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部418から送り出される記録紙416はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部420においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム430で記録紙416に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図18のように、裁断用のカッター(第1のカッター)428が設けられており、該カッター428によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター428は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙416は、ベルト搬送部422へと送られる。ベルト搬送部422は、ローラ431、432間に無端状のベルト433が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部412のノズル面及び印字検出部424のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト433は、記録紙416の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図18に示したとおり、ローラ431、432間に掛け渡されたベルト433の内側において印字部412のノズル面及び印字検出部424のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ434が設けられており、この吸着チャンバ434をファン435で吸引して負圧にすることによって記録紙416がベルト433上に吸着保持される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式を採用してもよい。
ベルト433が巻かれているローラ431、432の少なくとも一方にモータ(図25中符号488)の動力が伝達されることにより、ベルト433は図18上の時計回り方向に駆動され、ベルト433上に保持された記録紙416は図18の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト433上にもインクが付着するので、ベルト433の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部436が設けられている。ベルト清掃部436の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組合せなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、ベルト搬送部422に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
ベルト搬送部422により形成される用紙搬送路上において印字部412の上流側には、加熱ファン440が設けられている。加熱ファン440は、印字前の記録紙416に加熱空気を吹き付け、記録紙416を加熱する。印字直前に記録紙416を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部412の各ヘッド412K,412C,412M,412Yは、当該インクジェット記録装置410が対象とする記録紙416の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図19参照)。
ヘッド412K,412C,412M,412Yは、記録紙416の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド412K,412C,412M,412Yが記録紙416の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
ベルト搬送部422により記録紙416を搬送しつつ各ヘッド412K,412C,412M,412Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙416上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド412K,412C,412M,412Yを色別に設ける構成によれば、記録媒体搬送方向(副走査方向)について記録紙416と印字部412を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙416の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
図18に示した印字検出部424は、印字部412の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。各色のヘッド412K,412C,412M,412Yにより印字されたテストパターン又は実技画像が印字検出部424により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部424の後段には後乾燥部442が設けられている。後乾燥部442は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部442の後段には、加熱・加圧部444が設けられている。加熱・加圧部444は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部426から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置410では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部426A、426Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)448によってテスト印字の部分を切り離す。また、図18には示さないが、本画像の排出部426Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド412K,412C,412M,412Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号450によってヘッドを示すものとする。
図20はヘッド450の構造例を示す平面透視図であり、図21はその一部の拡大図である。また、図22はヘッド450の他の構造例を示す平面透視図、図23は1つの液滴吐出素子(記録素子、1つのノズル451に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図21中の23−23線に沿う断面図)である。
記録紙416上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド450におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド450は、図20,21 に示したように、インク吐出口であるノズル451と、各ノズル451に対応する圧力室452等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙416の送り方向と略直交する方向に記録紙416の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図20の構成に代えて、図22に示すように、複数のノズル451が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール450’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙416の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル451に対応して設けられている圧力室452は、その平面形状が概略正方形となっており(図20,21 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル451への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)454が設けられている。なお、圧力室452の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図12に示したように、各圧力室452は供給口454を介して共通流路455と連通されている。共通流路455はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路455を介して各圧力室452に分配供給される。
圧力室452の一部の面(図23において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)456には個別電極457を備えたアクチュエータ458が接合されている。個別電極457と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ458が変形して圧力室452の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル451からインクが吐出される。なお、アクチュエータ458には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ458の変位が元に戻る際に、共通流路455から供給口454を通って新しいインクが圧力室452に再充填される。
上述した構造を有するインク室ユニット453を図24に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット453を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル451が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図24に示すようなマトリクス状に配置されたノズル451を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル451-11、451-12、451-13、451-14、451-15、451-16を1つのブロックとし(他にはノズル451-21 、…、451-26 を1つのブロック、ノズル451-31、…、451-36を1つのブロック、…として)、記録紙416の搬送速度に応じてノズル451-11、451-12、…、451-16を順次駆動することで記録紙416の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、記録紙416の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ458の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
〔制御系の説明〕
図25は、インクジェット記録装置410のシステム構成を示すブロック図である。同図に示したように、インクジェット記録装置410は、通信インターフェース470、システムコントローラ472、メモリ474、ROM475、モータドライバ476、ヒータドライバ478、プリント制御部480、画像バッファメモリ482、ヘッドドライバ484等を備えている。
通信インターフェース470は、ホストコンピュータ486から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース470にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ486から送出された画像データは通信インターフェース470を介してインクジェット記録装置410に取り込まれ、一旦メモリ474に記憶される。メモリ474は、通信インターフェース470を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ472を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ474は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ472は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置410の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ472は、通信インターフェース470、メモリ474、ROM475、モータドライバ476、ヒータドライバ478等の各部を制御し、ホストコンピュータ486との間の通信制御、メモリ474及びROM475の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ488やヒータ489を制御する制御信号を生成する。
また、システムコントローラ472は、印字検出部424から読み込んだテストパターンの読取データから着弾位置誤差のデータを生成する演算処理を行う着弾誤差測定演算部472Aと、測定された着弾位置誤差の情報から濃度補正係数diを算出する濃度補正係数算出部472Bとを含んで構成される。なお、着弾誤差測定演算部472A及び濃度補正係数算出部472Bの処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
濃度補正係数算出部472Bにおいて求められた濃度補正係数のデータは、メモリ474に記憶される。
ROM475には、システムコントローラ472のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(着弾位置誤差測定用のテストパターンのデータを含む)などが格納されている。ROM475は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。また、このROM475の記憶領域を活用することで、ROM475をメモリ474として兼用する構成も可能である。
メモリ474は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ476は、システムコントローラ472からの指示に従って搬送系のモータ488を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ478は、システムコントローラ472からの指示に従って後乾燥部442等のヒータ489を駆動するドライバである。
プリント制御部480は、システムコントローラ472の制御に従い、メモリ474内の画像データ(多値の入力画像のデータ)から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ484に供給してヘッド450の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
即ち、プリント制御部480は、濃度データ生成部480Aと、補正処理部480Bと、インク吐出データ生成部480Cと、駆動波形生成部480Dとを有する画像処理部480Eを含んで構成される。これら各機能ブロック(480A〜E)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
濃度データ生成部480Aは、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、図15のステップS22で説明した濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
図25の補正処理部480Bは、メモリ474に格納されている濃度補正係数(di)を用いて濃度補正の演算を行う処理手段であり、図15のステップS32で説明したムラ補正処理を行う。
図25のインク吐出データ生成部480Cは、補正処理部480Bで生成された補正後の濃度データから2値(又は多値)のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、図15のステップS42で説明した2値(多値)化処理を行う。インク吐出データ生成部480Cにて生成されたインク吐出データはヘッドドライバ484に与えられ、ヘッド450のインク吐出動作が制御される。
駆動波形生成部480Dは、ヘッド450の各ノズル451に対応したアクチュエータ458(図23参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部480Dにて生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ484に供給される。なお、駆動信号生成部480Dから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
また、図25の画像処理部480Eは、上述した2値化処理、閾値補正処理などの画像処理を行うブロックであり、不図示のプロセッサ(該プロセッサは画像処理専用のプロセッサを用いてもよいし、他のプロセッサと兼用してもよい。)、メモリ(他のメモリと兼用可能)などを含んだ構成となっている。
プリント制御部480には画像バッファメモリ482が備えられており、プリント制御部480における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ482に一時的に格納される。なお、図25において画像バッファメモリ482はプリント制御部480に付随する態様で示されているが、メモリ474と兼用することも可能である。また、プリント制御部480とシステムコントローラ472とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース470を介して外部から入力され、メモリ474に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データがメモリ474に記憶される。
インクジェット記録装置410では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、メモリ474に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ472を介してプリント制御部480に送られ、該プリント制御部480の濃度データ生成部480A、補正処理部480B、インク吐出データ生成部480Cを経てインク色ごとのドットデータに変換される。
即ち、プリント制御部480は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部480で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ482に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド450のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
ヘッドドライバ484は、プリント制御部480から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド450の各ノズル451に対応するアクチュエータ458を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ484にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
こうして、ヘッドドライバ484から出力された駆動信号がヘッド450に加えられることによって、該当するノズル451からインクが吐出される。記録紙416の搬送速度に同期してヘッド450からのインク吐出を制御することにより、記録紙416上に画像が形成される。
上記のように、プリント制御部480(画像処理部480E)における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ484を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
印字検出部424は、図18で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録紙416に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部480及びシステムコントローラ472に提供する。
プリント制御部480は、必要に応じて印字検出部424から得られる情報に基づいてヘッド450に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
上記構成のインクジェット記録装置410によれば、着弾位置誤差による濃度ムラが低減された良好な画像を得ることができる。
〔変形例〕
図25で説明した着弾誤差測定演算部472A、濃度補正係数算出部472B、濃度データ生成部480A、補正処理部480Bが担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ486側に搭載する態様も可能である。
また、本発明の適用範囲は、着弾位置誤差による濃度ムラの補正に限定されず、液滴量誤差による濃度ムラ、不吐出ノズルの存在による濃度ムラ、周期的印字誤差による濃度ムラなど、様々な要因による濃度ムラに対して、上述した補正処理と同様の手法によって、補正効果を得ることができる。
更に、本発明の適用はラインヘッド方式のプリンタに限定されず、シャトルスキャン方式のプリンタにおけるスジムラに対しても有効な補正効果を得ることができる。
上記実施の形態では画像記録装置の一例としてインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。インクジェット方式以外では、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタなど各種方式の画像記録装置についても本発明を適用することが可能である。
本発明の第1実施形態に係る画像処理ブロックの概略構成を示すブロック図 図1に示す閾値補正フィルタの一例を示す説明図 図1に示す画像処理ブロックによる画像処理が施された画像を説明する図 本発明に係る画像処理方法におけるライン補正係数と印字デューティ比の相関を説明する図 記録素子の記録特性による補正が施されていない画像を説明する図 従来技術に係る記録素子の記録特性による補正が施された画像を説明する図 本発明に係る記録素子の記録特性による補正が施された画像を説明する図 本発明の第2実施形態に係る画像処理ブロックの構成を示すブロック図 図8に示す誤差拡散フィルタの一例 濃度ムラ補正前の濃度プロファイルの例を示す説明図 濃度ムラ補正後の様子を示す説明図 (a)は現実に即した印字モデルの濃度プロファイル、(b)はδ関数型印字モデルの濃度プロファイル 補正の効果を示すパワースペクトルのグラフ 補正に用いるノズル数(N)と補正濃度係数の関係を説明するために用いたグラフ 濃度補正処理の流れを示すフローチャート ムラ補正処理の概念図 補正データ更新処理の流れを示すフローチャート 本発明に係る画像記録装置の一実施形態を示すインクジェット記録装置の全体構成図 図18に示すインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図 図18に示すインクジェット記録装置のヘッドの構造例を示す平面透視図 図20の要部拡大図 図20に示すフルライン型ヘッドの他の構造例を示す平面透視図 図21中の23−23線に沿う断面図 図20に示す印字ヘッドのノズル配列を示す拡大図 図18に示すインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図 従来技術に係る画像処理の流れを示す説明図 従来技術に係る画像処理ブロックの概略構成を示すブロック図 従来技術に係る誤差拡散フィルタの一例を説明する説明図 ライン補正係数と印字デューイーティ比を説明する説明図 従来技術に係る画像処理方法におけるライン補正係数と印字デューティ比の相関を説明する図 従来技術に係る誤差拡散フィルタの他の例を説明する説明図 従来技術に係る画像処理が施された画像を説明する図
符号の説明
10…画像処理部ロック、12(di)…ライン補正係数、16…入力画像(対象画像)、20…2値化処理部、24…誤差算出部、26…誤差拡散フィルタ、28…誤差拡散部、32…入力値補正部、34(M2)…閾値補正フィルタ、360…閾値補正処理部、40…閾値生成部、102…誤差拡散フィルタ変更処理部、410…インクジェット記録装置、450…印字ヘッド、451…ノズル、472…システムコントローラ、474…メモリ、480…プリント制御部、480E…画像処理部、482…画像バッファメモリ

Claims (11)

  1. 複数の記録素子が所定の方向に並べられた記録ヘッドを用いた画像記録における多階調の入力画像を該入力画像よりも低い階調の画像に変換する画像処理方法であって、
    前記入力画像の処理画素の画素値と所定の閾値とを比較した比較結果に基づいて、前記複数の記録素子により記録媒体に記録するときの前記複数の記録素子と前記記録媒体との相対搬送方向と略平行方向を処理方向として前記処理画素に量子化処理を施し、前記量子化処理時に発生する誤差を前記処理画素周辺の未処理画素に拡散させるとともに、該誤差に応じて前記入力画像の前記未処理画素に対する閾値を決めることを特徴とする画像処理方法。
  2. 前記入力画像に前記記録素子の記録特性に応じた補正処理を施し、該補正処理が施された前記入力画像を該入力画像よりも低い階調の画像に変換することを特徴とする請求項1記載の画像処理方法。
  3. 複数の記録素子が所定の方向に並べられた記録ヘッドを用いた画像記録における多階調の入力画像を該入力画像よりも低い階調の画像に変換する画像処理方法であって、
    前記記録素子の記録特性に応じて前記入力画像に補正処理を施し、該補正処理が施された前記入力画像の処理画素の画素値と所定の閾値とを比較した比較結果に基づいて、前記複数の記録素子により記録媒体に記録するときの前記複数の記録素子と前記記録媒体との相対搬送方向と略平行方向を処理方向として前記処理画素の量子化処理を行い、前記量子化処理時に発生する誤差を前記処理画素周辺の未処理画素に拡散させる際に前記記録素子の記録特性に応じて前記誤差を前記未処理画素に拡散させることを特徴とする画像処理方法。
  4. 複数の記録素子が所定の方向に並べられた記録ヘッドと、
    入力画像の処理画素の画素値と所定の閾値とを比較した比較結果に基づいて、前記複数の記録素子により記録媒体に記録するときの前記複数の記録素子と前記記録媒体との相対搬送方向と略平行方向を処理方向として前記処理画素に量子化処理を施す量子化処理手段と、
    前記量子化処理手段の量子化処理時に発生する誤差を前記処理画素周辺の未処理画素に拡散させる誤差拡散手段と、
    前記誤差に応じて前記未処理画素に対する閾値を決める閾値決定手段と、
    を備えたことを特徴とする画像記録装置。
  5. 前記入力画像に前記記録素子の記録特性に応じた補正処理を施す画像補正手段を備え、
    前記量子化処理手段は、該補正処理が施された前記入力画像を該入力画像よりも低い階調の画像に変換することを特徴とする請求項4記載の画像記録装置。
  6. 前記閾値決定手段は、2次元マトリクス型の拡散フィルタを用いて予め決められた閾値の初期値を補正して前記未処理画素の閾値を決定することを特徴とする請求項4又は5記載の画像記録装置。
  7. 前記閾値決定手段は、前記未処理画素ごとに閾値を決定することを特徴とする請求項4、5又は6記載の画像記録装置。
  8. 前記誤差拡散手段は、誤差拡散処理の処理方向の未処理画素のみに前記誤差を拡散させることを特徴とする請求項4乃至7のうち何れか1項に記載の画像記録装置。
  9. 複数の記録素子が所定の方向に並べられた記録ヘッドと、
    前記記録素子の記録特性に応じて前記入力画像に補正処理を施す画像補正手段と、
    前記補正手段によって補正された入力画像の処理画素の画素値と前記閾値決定手段により決められた閾値とを比較した比較結果に基づいて、前記複数の記録素子により記録媒体に記録するときの前記複数の記録素子と前記記録媒体との相対搬送方向と略平行方向を処理方向として前記処理画素に量子化処理を施す量子化処理手段と、
    前記量子化処理手段の量子化処理時に発生する誤差を前記処理画素周辺の未処理画素に拡散させる際に前記記録素子の記録特性に応じて前記誤差を前記未処理画素に拡散させる誤差拡散手段と、
    を備えたことを特徴とする画像記録装置。
  10. 前記誤差拡散手段は、2次元マトリクス型の拡散フィルタを用いて前記未処理画素に誤差を拡散させることを特徴とする請求項9記載の画像記録装置。
  11. 前記誤差拡散手段は、記録誤差が大きい記録素子に対応する領域では誤差拡散処理の処理方向の重み付けを増加させることを特徴とする請求項10記載の画像記録装置。
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