JP2007103677A - フェライト材料の製造方法、フェライトコア、焼成炉システム - Google Patents
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Abstract
【課題】均等な条件で焼成を行い、特性の低下、バラツキを抑えることのできるフェライト材料の製造方法、焼成炉システムを提供することを目的とする。
【解決手段】連続炉方式の焼成炉システム10において、ガス供給手段30で供給する雰囲気ガスの気流の方向を搬送コンベア13上に搭載されたセッター20の表面に沿った方向とすることで、複数段積み重ねられたセッター20どうしの間の空間における雰囲気ガスの流れを良くし、酸素分圧のバラツキを抑える。これにより、複数段積み重ねられたセッター20に搭載された複数の成形体間における焼成条件の均一化を図る。
【選択図】図1
Description
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、均等な条件で焼成を行い、特性の低下、バラツキを抑えることのできるフェライト材料の製造方法、焼成炉システムを提供することを目的とする。
このように、セッターの表面にほぼ沿う方向に雰囲気ガスを供給することで、複数段積み重ねたセッターの各段における雰囲気ガスを平均化することができ、焼成条件の均一化を図ることができる。
このような製造方法は、特に、焼成工程にて、複数段に積み重ねたセッターを搬送コンベア上に搭載し、搬送コンベアによってセッターを搬送しながら、焼成炉の昇温領域、保持領域、降温領域を順次通過させることで成形体を焼成する、いわゆる連続炉方式の焼成炉で焼成を行う場合に有効である。
また、焼成工程のうち、成形体から酸素等が大量に放出される昇温過程にて前記の方向に雰囲気ガスを供給するのが有効であり、これにより、焼成後の相対密度の向上、バラツキの減少といった効果が得られる。さらに、昇温過程では、保持過程で保持する所定温度まで昇温を行うわけであるが、前記の所定温度よりも低い温度領域にて、前記のようにセッターの表面にほぼ沿う方向に雰囲気ガスを供給するのが好ましい。
さらに、雰囲気ガスは、予め所定温度に加熱して供給するのが好ましい。これにより前記の効果はいっそう顕著なものとなる。
本発明のフェライト材料の製造方法は、成形体が、Fe2O3:52〜67mol%、MnO:15〜48mol%、残部実質的にZnO(但し、0mol%を含む)を主成分とする粉末を所定形状に成形したものである場合に特に有効である。
セッターを積み重ねた方向とは異なる方向に雰囲気ガスを流す雰囲気ガス供給手段は、搬送コンベアで焼成対象物を焼成炉本体内で搬送しながら所定の焼成温度まで昇温する領域に設けるのが好ましい。
このような雰囲気ガス供給手段は、焼成炉本体の側面から搬送コンベア上に向けて、雰囲気ガスを供給する供給口を備える構成とすることができる。これにより、セッターを積み重ねた方向とは異なる方向に雰囲気ガスを流すことができる。
また、雰囲気ガス供給手段は、焼成炉本体の上部および/または下部から搬送コンベア上のセッターに向けて供給される雰囲気ガスの流れ方向を、セッターを積み重ねた方向とは異なる方向に変える気流ガイド部材を備える構成とすることもできる。これによっても、セッターを積み重ねた方向とは異なる方向に雰囲気ガスを流すことができる。
また、雰囲気ガス供給手段で供給する雰囲気ガスは、焼成炉本体内に供給するに先立ちガス加熱手段で加熱するのが好ましい。
本発明の焼成炉システムは、焼成対象物が、Fe2O3:52〜67mol%、MnO:15〜48mol%、残部実質的にZnO(但し、0mol%を含む)を主成分とする粉末を所定形状に成形したものである場合に特に有効である。
図1は、本実施の形態における焼成炉システム10を説明するための図である。
図1に示すように、焼成炉システム10は、焼成炉本体11と、焼成炉本体11内に配置された複数の加熱源12を備えている。
この図3に示すような温度プロファイルで成形体100を焼成するため、加熱源12は、焼成炉本体11が連続する方向に沿って適宜配置され、コントローラ14によってその加熱温度が制御される。これにより、焼成炉本体11の温度分布が、昇温過程P1に対応する昇温領域では焼成炉本体11の入り口11iから徐々に温度が上昇し、保持過程P2に対応する保持領域ではほぼ一定の温度となり、徐冷過程P3、急冷過程P4に対応した降温領域では焼成炉本体11の出口11oに向けて温度が低下するようになっている。焼成炉本体11において、急冷過程P4に対応する領域には、急冷を行うため、焼成炉本体11の外部から焼成炉本体11の内部に、焼成炉本体11内よりも低温の外気をファン等で導入できるようにしても良い。
また、ガス供給手段30によるセッター20の表面に沿った方向の雰囲気ガスの供給は、一連の焼成過程の一部でのみ行い、他の過程では、焼成炉本体11の炉床や天井から雰囲気ガスを供給しても良い。この場合、特に、昇温過程P1において、ガス供給手段30によるセッター20の表面に沿った方向の雰囲気ガスの供給を行うのが好ましい。この場合、ガス供給手段30は、焼成炉本体11内において、少なくとも、昇温過程P1に対応する領域に設けられる。
さらに、昇温過程P1の一部、具体的には保持過程P2における保持温度まで昇温するに際し、保持温度より低い所定の温度まで、ガス供給手段30から雰囲気ガスを供給することもできる。その場合、焼成炉本体11内において、前記の所定の温度まで昇温される領域に、ガス供給手段30を備える。
加熱手段32でガスの加熱を行う場合、200〜1400℃、例えば1000℃まで加熱したガスを焼成炉本体11内に供給する。
なお、ガス供給手段30で雰囲気ガスを供給する具体的な条件については、焼成炉本体11の構成やサイズ、セッター20のサイズや積み重ねる段数、さらにセッター20に搭載する成形体100の数等の荷姿によって異なる。
主成分の原料としては、酸化物または加熱により酸化物となる化合物の粉末を用いる。具体的には、Fe2O3粉末、Mn3O4粉末及びZnO粉末等を用いることができる。用意する各原料粉末の平均粒径は0.1〜3μmの範囲で適宜選択すればよい。
主成分の原料粉末を湿式混合した後、仮焼きを行う。仮焼きの温度は800〜1000℃の範囲内での所定温度で、また雰囲気はN2〜大気の間で行えばよい。仮焼きの安定時間は0.5〜5時間の範囲で適宜選択すればよい。仮焼き後、仮焼き体を、例えば平均粒径0.5〜2μm程度まで粉砕する。なお、上述の主成分の原料に限らず、2種以上の金属を含む複合酸化物の粉末を主成分の原料としてもよい。例えば、塩化鉄、塩化マンガンを含有する水溶液を酸化培焼することによりFe、Mnを含む複合酸化物の粉末が得られる。この粉末とZnO粉末を混合して主成分原料としてもよい。このような場合には、仮焼きは不要である。
このとき、保持過程P2における保持温度や酸素濃度は、成形体100の組成等に基づいて適宜設定すればよい。例えば、飽和磁束密度の高特性化を狙う組成(A)の場合には、保持温度を1150〜1400℃、酸素濃度を0.01〜10%とするのが好ましい。また、初透磁率の高特性化を狙う組成(B)の場合は、保持温度を1200〜1400℃、酸素濃度を1〜20.8%とするのが好ましい。
このような焼成工程を経ることで、焼成体である本発明のMn−Zn系フェライトコアを得ることができる。
表1に示すように、炉床から雰囲気ガスを供給した比較例1に対し、搬送コンベア13上に搭載されたセッター20の表面に沿った方向、すなわち側方から雰囲気ガスを供給した実施例1においては、コア損失は大きくなってしまっているものの、飽和磁束密度、相対密度が向上し、さらに、1つのセッター20における複数の成形体100間における相対密度のバラツキも小さくなった。これにより、焼成条件の均一化が図られていると確認できた。
その結果、表1に示すように、実施例1よりも相対密度のバラツキは大きくなっているものの、比較例1と比較すれば、飽和磁束密度、相対密度の向上、および相対密度のバラツキが小さくなっていることが確認できた。つまりこれにより、炉床とセッター20の側方から雰囲気ガスを供給することでも、焼成条件の均一化が図れることが確認された。
また、保持過程P2のみセッター20の側方から雰囲気ガスを供給した実施例4では、飽和磁束密度、相対密度、コア損失のいずれも、比較例1と同等であった。徐冷過程P3のみセッター20の側方から雰囲気ガスを供給した実施例5では、飽和磁束密度、相対密度ともに比較例1と同等であり、さらにコア損失は比較例1より若干悪化していた。
これにより、セッター20の側方から雰囲気ガスを供給することによって焼成条件の均一化が図れるという効果は、特に昇温過程P1でセッター20の側方から雰囲気ガスを供給することに大きく起因しており、焼成過程の一部の過程においてセッター20の側方から雰囲気ガスを供給する場合、少なくとも昇温過程P1でセッター20の側方から雰囲気ガスを供給するのが好ましいと言える。
すると、表1に示すように、飽和磁束密度、相対密度、コア損失の平均値、バラツキともに、昇温過程P1全体でセッター20の側方から雰囲気ガスを供給した実施例3と同等であった。すなわち、セッター20の側方から雰囲気ガスを供給する場合、保持温度までの昇温を行う昇温過程P1のうち、保持温度以下の一定温度まで昇温する過程で、セッター20の側方から雰囲気ガスを供給するのが好ましいと言える。
そこで、実施例7〜10として、1325℃の保持温度で焼成を行う場合についての確認を行った。
保持過程P2の保持温度である1325℃までの昇温を行う昇温過程P1のうち、1000℃(実施例7)、1100℃(実施例8)、1200℃(実施例9)、1250℃(実施例10)に昇温するまで、ガス供給手段30から、毎分60000cm3の流量で、セッター20の表面に沿った方向に雰囲気ガスを吹き付けて供給し、残る過程は炉床から毎分60000cm3の流量で雰囲気ガスを供給して焼成を行った。また、比較例2として、1325℃の保持温度とする焼成工程の全体において、炉床から毎分60000cm3の流量で雰囲気ガスを供給して焼成を行った。
その結果、この場合においても、実施例8と同様の改善が見られ、特にコア損失については実施例8以上の改善が認められた。
この場合においては、実施例8、11と同等の改善結果が得られており、雰囲気ガスの供給流量を低減させても、十分な効果が得られることが確認され、セッター20の側方から雰囲気ガスの供給を行うことによって、焼成条件の容易化が図れることがわかった。
その結果、この場合も、実施例8、11、12と同等の改善結果が得られており、保持温度を下げても十分な効果が得られることが確認され、セッター20の側方から雰囲気ガスの供給を行うことによって、焼成条件の容易化が図れることがわかった。
これには、実施例1と同様、焼成過程全体でセッター20の側方から雰囲気ガスの供給を行い、そのときに実施例14では供給する雰囲気ガスをヒータで1000℃に加熱し、実施例15では雰囲気ガスの加熱を行わずに焼成を行った。
そして、得られたフェライトコアの縮率(焼成前の成形体100に対する収縮率)と、コア損失を測定した。なお、実施例14、15においては、5段に積層したセッター20のうち、最上段のセッター20の隅部に搭載されて焼成されたフェライトコア、中間の段のセッター20の中央部に搭載されたフェライトコア、最下段のセッター20の隅部に搭載されたフェライトコアについて縮率とコア損失を測定し、その平均値とバラツキ(R)を求めた。
その結果を表3に示す。
また、比較のため、焼成炉本体11内に、従来と同様、炉床から窒素を雰囲気ガスとして供給して焼成を行った(比較例21)。このときの雰囲気ガスの流量は毎分50000cm3とし、1250℃まで昇温した時点で、焼成炉本体11内の雰囲気を大気に置換した。
図4(a)は周波数1kHzにおける0〜140℃の範囲での温度特性変化、図4(b)は周波数150kHzにおける0〜140℃の範囲での温度特性変化、図5は温度25℃の環境下における1〜10000kHzでの周波数特性変化の測定結果を示す図である。また、図6は、実施例21、22、比較例21のフェライトコアの組織写真である。
図4に示すように、昇温過程P1でセッター20の表面に沿った方向に雰囲気ガスを供給した実施例21、22とも、常温域(10〜30℃)において比較例21よりも温度特性が向上している。実施例21と実施例22を比較すれば、図4および図5に示すように、実施例22は実施例21に対し周波数1kHzにおける25℃前後の領域、25℃環境下における1〜200kHzの領域において、大きく初透磁率が向上している。これにより、このような領域での高特性化を狙う場合、昇温過程P1の1100〜1200℃の領域で、セッター20の表面に沿った方向に雰囲気ガスを供給するのが有効であると言える。
しかし、図4、図5に示したように、他の領域では、実施例22は、実施例21、比較例21に対し、周波数特性、温度特性ともに劣化してしまっている。これは、図6に示すように、結晶粒子径の過大化に起因するものと思われる。
その結果を図7〜9に示す。図7(a)は周波数1kHzにおける0〜140℃の範囲での温度特性変化、図7(b)は周波数150kHzにおける0〜140℃の範囲での温度特性変化、図8は温度25℃の環境下における1〜10000kHzでの周波数特性変化の測定結果を示す図、図9は、実施例23、24のフェライトコアの組織写真である。
図7、図8に示すように、実施例21、22に比較し、周波数特性、温度特性が改善された。また、図9に示すように、組織写真においても、図6の実施例22に対し、結晶粒子径の緻密化が確認された。
その結果を図10〜12に示す。図10(a)は周波数1kHzにおける0〜140℃の範囲での温度特性変化、図10(b)は周波数150kHzにおける0〜140℃の範囲での温度特性変化、図11は温度25℃の環境下における1〜10000kHzでの周波数特性変化の測定結果を示す図、図12は、実施例25、26のフェライトコアの組織写真である。
図10、図11に示すように、その結果、実施例25、26においても、実施例23、24と同様、実施例21、22に比較し、周波数特性、温度特性が改善され、図12に示す組織写真においても、結晶粒子径の緻密化が確認された。これにより、保持過程P2における保持温度を下げたり、保持時間を短くしても、雰囲気ガスをセッター20の表面に沿った方向に供給することによって、従来以上の特性を得ることが可能となり、焼成条件の容易化を図れることが確認された。
Claims (11)
- Fe2O3、MnO、ZnOを主成分とするフェライト材料の製造方法であって、
前記主成分を含む粉末を用いて成形体を得る成形工程と、
前記成形工程で得られた前記成形体を、複数段に積み重ねたセッターの各段に搭載した状態で焼成する焼成工程と、
を有し、
前記焼成工程は、所定温度まで昇温する昇温過程、前記所定温度で保持する保持過程および前記保持過程の後の降温過程とを含み、少なくとも前記昇温過程の一部にて、前記セッターの表面にほぼ沿う方向に雰囲気ガスを供給することを特徴とするフェライト材料の製造方法。 - 前記焼成工程は、複数段に積み重ねた前記セッターを搬送コンベア上に搭載し、前記搬送コンベアによって前記セッターを搬送しながら、焼成炉の昇温領域、保持領域、降温領域を順次通過させることで前記成形体を焼成することを特徴とする請求項1に記載のフェライト材料の製造方法。
- 前記雰囲気ガスを所定温度に加熱して供給することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト材料の製造方法。
- 前記成形体は、Fe2O3:52〜67mol%、MnO:15〜48mol%、残部実質的にZnO(但し、0mol%を含む)を主成分とする粉末を所定形状に成形したものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフェライト材料の製造方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載のフェライト材料の製造方法によって形成されたことを特徴とするフェライトコア。
- 焼成対象物を搭載したセッターを複数段に積み重ねて搬送コンベア上に載せ、前記搬送コンベアで前記セッターを搬送しながら前記焼成対象物の焼成を行う焼成炉本体と、
前記焼成炉本体内において、前記搬送コンベアの搬送方向における一部の領域に対し、前記セッターを積み重ねた方向とは異なる方向に雰囲気ガスを流す雰囲気ガス供給手段と、
を備えることを特徴とする焼成炉システム。 - 前記雰囲気ガス供給手段は、前記搬送コンベアで前記焼成対象物を前記焼成炉本体内で搬送しながら所定の焼成温度まで昇温する領域に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の焼成炉システム。
- 前記雰囲気ガス供給手段は、前記焼成炉本体の側面から前記搬送コンベア上に向けて、前記雰囲気ガスを供給する供給口を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の焼成炉システム。
- 前記雰囲気ガス供給手段は、前記焼成炉本体の上部および/または下部から前記搬送コンベア上の前記セッターに向けて供給される前記雰囲気ガスの流れ方向を、前記セッターを積み重ねた方向とは異なる方向に変える気流ガイド部材を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の焼成炉システム。
- 前記雰囲気ガス供給手段で供給する前記雰囲気ガスを、前記焼成炉本体内に供給するに先立ち加熱するガス加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の焼成炉システム。
- 前記焼成対象物は、Fe2O3:52〜67mol%、MnO:15〜48mol%、残部実質的にZnO(但し、0mol%を含む)を主成分とする粉末を所定形状に成形したものであることを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載の焼成炉システム。
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