JP2015229625A - Mn−Zn−Co系フェライトおよびその製造方法 - Google Patents

Mn−Zn−Co系フェライトおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】−20℃〜150℃程度の広い温度範囲で高い比初透磁率を有する、Mn-Zn-Co系フェライトを提供する。【解決手段】Fe2O3:52.6〜53.7モル%、ZnO:13.2〜16.7モル%、CoO:0.15〜0.50モル%および残部MnOを基本成分とし、前記基本成分に対し、SiO2:0.002〜0.010質量%、CaO:0.005〜0.060質量%およびNb2O5:0.005〜0.020質量%の副成分を含有し、残部が不可避的不純物からなるMn-Zn-Co系フェライトにおいて、前記不可避的不純物中、炭素の含有量を0.0050質量%以下に抑制する。【選択図】なし

Description

本発明は、家電機器や車載部品などで設置環境の温度変化が大きい電子機器に搭載するノイズフィルターとして好適なMn-Zn-Co系フェライトおよびその製造方法に関するものである。
Mn-Zn系フェライトは、家電機器や電子機器などに搭載されるスイッチング電源トランスやノイズフィルター、チョークコイルなどのコアとして使用されている。その中でも、ノイズフィルターに使用されるフェライトコアは、ノイズを除去したい周波数帯域でノイズ電流に対する大きなインピーダンスが要求されるため、より高い比初透磁率(インピーダンスは比初透磁率に比例する)が維持できることが望まれる。
この要求に応えるために、従前、室温での比初透磁率が5500〜10000程度のMn-Zn系フェライトが多く使われているが、最近ではこれまでパルストランスなどに使われていた比初透磁率が12000以上のMn-Zn系フェライトをノイズフィルターに適用することも行われている。これらのノイズフィルター用Mn-Zn系フェライトは、室温付近以上で使用されることを前提にして、室温における磁気異方性および磁歪が零となり、高い比初透磁率が発現するような組成が選ばれている。このため従来材の比初透磁率の温度特性は、キュリー温度直上で磁気異方性定数が急激に小さくなることによる透磁率のピーク(プライマリーピーク)と、室温付近での磁気異方性および磁歪が小さいことによるピーク(セカンダリーピーク)との2つの山を持つ。そして、この室温付近のセカンダリーピークを高くするように成分組成や製造方法の工夫が種々なされてきた。
従来、電子機器の電源部に搭載されるノイズフィルターは、発熱の大きい半導体やトランスから比較的に離れた場所に設置されているため、室温付近での比初透磁率を念頭にフィルターを設計すればよかった。ところが、近年、電子機器の小型・薄型化に伴う電源の小型化に伴って発熱量がより増大する場合や、電子化が進む自動車に搭載される電子機器や電源などでは、ノイズフィルターの温度環境が−20℃以下の低温から150℃程度の高温まで大きく変化する場合、が増えてきている。
しかしながら、従来のMn-Zn系フェライトのノイズフィルターは、室温付近での比初透磁率の改善を中心に開発が実施されてきたため、広い温度範囲で高い比初透磁率をもつものではなかった。
すなわち、室温での比初透磁率を高めれば、逆に低温域(−30〜0℃程度)で比初透磁率が著しく低下するため、低温域でのインダクタンスを確保するために巻線数を増やしたり、低温域での比初透磁率を高くするために常温での比初透磁率が必要以上に高いものを使う必要があった。例えば、室温での比初透磁率が7000程度の、従来の一般的なMn-Zn系フェライトの場合、−20℃では比初透磁率が4000程度と半減してしまう。一方、−30〜−20℃において7000程度以上の高い比初透磁率を得ようとすると、上記の劣化を考慮して室温での比初透磁率を15000以上という極めて高くすることが必要となる。室温での比初透磁率が15000以上のMn-Zn系フェライトを得るためには、高品質の原材料や焼成方法、焼成条件の厳密なコントロールが必要であり、コストや工数が大きく増加するという問題があった。従って、広い温度範囲で高い比初透磁率とするための手法は極めて非効率的であった。
また、従来のノイズフィルター用Mn-Zn系フェライトは、室温付近での比初透磁率を高めるため、磁性を失うキュリー温度を120〜150℃程度に設定しており、150℃ではフィルターとしての用をなさないか、キュリー温度直上で比透磁率が急激に増大しフィルターの設計条件から大きく乖離してしまうため、やはりフィルターとして使用できないという、大きな問題がある。
さらに、車載用途などでは、−20℃〜150℃の広い温度範囲において、できるだけ温度変化が少なく、かつ高い比初透磁率が望まれている。例えば、−20℃では5500以上、室温から120℃程度までは7000程度、急激に上昇し始める150℃では12000以下、といったように、従来のノイズフィルターの設計に利用されている比透磁率の範囲に収まることである。
特許文献1には、比初透磁率が−20〜100℃の範囲で8000以上かつその変化率が70%以内であるMn-Zn系フェライトが記載されている。しかしながら、−20℃で5500以上、室温から120℃程度までは7000程度、150℃では12000以下であるものは記載されていない。また、特許文献2には、Mn-Zn系フェライトに酸化ビスマスと酸化モリブデンとを含有させることにより、−20〜20℃の範囲で比初透磁率8500以上、かつ20〜100℃の温度範囲で比初透磁率が10000以上となるMn-Zn系フェライトが記載されている。しかし、さらに高温の120℃から150℃の温度域における改善についての言及はなく、−20℃〜150℃の低温から高温までの広い温度域での性能保証を与えるものではなかった。
特開平6−263447号公報 特開平10−256025号公報 特開2001−93718号公報 特開平4−257204号公報
このように、従来のMn-Zn系フェライトでは、広い温度範囲で高い比初透磁率を得ようとすると、室温での比初透磁率を必要以上に上げざるを得ないか、高々100℃程度までの温度範囲という、非常に非効率でかつコストアップ、また高温域の要求に応えられないといった問題点があった。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、−20℃〜150℃程度の広い温度範囲で高い比初透磁率を有する、Mn-Zn-Co系フェライトを、その有利な製造方法と併せて提案することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、Mn-Zn-Co系フェライトの基本成分組成を厳密に制御した上で、フェライト中に残留する炭素を所定値以下に抑制することによって、所望の目的が達成されることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
なお、フェライト中の炭素の影響については、例えば特許文献3に、残留C量と抗析強度、さらにはコアロス、透磁率との関係について、特許文献4には、C量とコアロスとの関係について記載されているが、本発明のように、残留C量と比初透磁率の温度特性との関係については考察されていなかった。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.Fe2O3:52.6〜53.7モル%、
ZnO:13.2〜16.7モル%
CoO:0.15〜0.50モル%および
残部MnOを基本成分とし、
前記基本成分に対し、
SiO2:0.002〜0.010質量%、
CaO:0.005〜0.060質量%および
Nb2O5:0.005〜0.020質量%
の副成分を含有し、残部が不可避的不純物からなるMn-Zn-Co系フェライトであって、
前記不可避的不純物中、炭素の含有量を0.0050質量%以下に抑制したことを特徴とするMn-Zn-Co系フェライト。
2.23℃における10kHzの比初透磁率が7000以上、かつ23℃〜120℃の温度範囲における10kHzの比初透磁率の、(最大値−最小値)/(120℃−23℃)が15/℃以下であることを特徴とする前記1に記載のMn-Zn-Co系フェライト。
3.−20℃における10kHzの比初透磁率が5500以上および150℃における10kHzの比初透磁率が12000以下であることを特徴とする前記2に記載のMn-Zn-Co系フェライト。
4.基本成分組成に従って酸化物原料を秤量し、混合したのち仮焼し、ついで副成分を添加して混合し、さらに粉砕後、成形して得た成形品を、昇温し、焼成保持温度で焼成することにより前記1〜3のいずれかに記載のMn-Zn-Co系フェライトを得るMn-Zn-Co系フェライトの製造方法において、
上記昇温に際し、400℃から焼成保持温度に達するまでの雰囲気中の酸素濃度を5体積%超21体積%以下とし、前記副成分としてのCaOは、炭素を含有しない形態のCa化合物として添加することを特徴とするMn-Zn-Co系フェライトの製造方法。
本発明によれば、−20℃の低温域から120℃さらには150℃の温度領域にわたって、ノイズフィルターなどに使用するのに適した高透磁率のMn-Zn-Co系フェライトを得ることができる。
そして、本発明のMn-Zn-Co系フェライトは、前記の構成とすることにより、従来のMn-Zn系フェライトでは不可能であった、例えば、比初透磁率が、−20℃では5500以上、室温から120℃程度までは7000程度、急激に上昇し始める150℃では12000以下、という優れた温度特性を有し、ノイズフィルターのうち、特に車載用電源ラインから流出入するノイズを除去するラインフィルター用の磁心として適している。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明において、Mn-Zn-Co系フェライトの成分組成は、次のとおりに限定される。
まず、本発明の基本組成について説明する。
Fe2O3:52.6〜53.7モル%
基本成分のうち、Fe2O3量が少ない場合には、比初透磁率がピークをもつ温度が80℃程度以上の高温側となり、その結果、室温での比初透磁率が劣化する。そのため、最低でも52.6モル%のFe2O3を含有させるものとした。一方、Fe2O3量が多すぎる場合には、後で述べるCoO量との関係で比初透磁率がピークをもつ温度が零度程度以下の低温側となり、やはり室温での比初透磁率の劣化が避けられないため、上限を53.7モル%とした。
ZnO:13.2〜16.7モル%
上記したFe2O3量との組み合わせで、ZnOが少ない場合には、比初透磁率がピークをもつ温度が80℃程度以上の高温側となり、その結果室温での比初透磁率が劣化する。そのため、最低でも13.2モル%のZnOを含有させる必要がある。一方、ZnO量が多すぎる場合には、後で述べるCoO量との関係で比初透磁率がピークをもつ温度が零度程度以下の低温側となり、やはりで室温での比初透磁率の劣化が避けられないため、上限を16.7モル%とした。
CoO:0.15〜0.50モル%
CoOは、磁気異方性を変化させて比初透磁率の温度係数を小さくし、また室温付近の比初透磁率のピーク温度を低下させる働きがある。しかしながら0.5モル%を超えて過剰に含む場合には、比初透磁率の温度特性が極端に変化し室温付近で大きく低下するため望ましくない。また、CoO量が0.15モル%より少ないと、透磁率の温度変化を小さくする効果が小さい。したがって、CoOの含有量は0.15〜0.5モル%の範囲とする。
MnO:残部
本発明は、Mn-Zn-Co系フェライトであるので、主成分であるFe2O3、ZnOとCoOの残部はMnOでなければならない。というのは、MnOでなければ、上記Fe2O3、ZnOとCoOとの組み合わせで高い比比初透磁率を実現できないからである。MnOの好ましい含有量は、30.0〜33.0モル%である。
なお、Fe2O3、ZnOおよびCoOとMnOとの合計は100モル%である。
次に、上記した基本成分からなるMn-Zn-Co系フェライトに添加する副成分について説明する。
SiO2:0.002〜0.010質量%
SiO2は、フェライトの結晶組織の均一化に寄与することが知られており、添加に伴い結晶粒内に残留する空孔を減少させることから、適量の添加によって初めて高い比初透磁率を実現させることができる。そのため、最低でもSiO2を0.002質量%含有させることとする。しかし、添加量過多の場合には反対に異常粒が出現し、比初透磁率の周波数特性を著しく低下させることから、SiO2は0.010質量%以下に制限する必要がある。
CaO:0.005〜0.060質量%
CaOは、Mn-Zn-Co系フェライトの結晶粒界に偏析することが知られており、この粒界への偏析によって結晶の高抵抗化が図られ、また適量の添加によって比初透磁率の周波数特性が改善されることから、最低でもCaOを0.005質量%含有させることとする。しかし、添加量過多の場合には不純物相が増大し、低周波領域で高い比初透磁率を得ることが困難になることから、0.060質量%以下に制限する必要がある。
Nb2O5:0.005〜0.020質量%
Nb2O5は、上記したSiO2、CaOとの共存下で、比抵抗の増大に有効に寄与し比初透磁率の周波数特性の改善に寄与するが、含有量が0.005質量%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.020質量%を超えると低周波領域で高い比初透磁率を得ることが困難になることから、0.005〜0.020質量%の範囲で添加することが好ましい。
また、本発明では、上記した基本成分からなるMn-Zn-Co系フェライトにおいて、不可避的に混入する炭素(C)の比初透磁率に及ぼす影響について検討し、比初透磁率の観点から規制すべき炭素量を究明した。
C:0.0050質量%以下
不純物である炭素は、Mn-Zn-Co系フェライトの製造工程において不可避的に混入し、焼成後も残留Cとしてコア内に含まれる。この残留C量と比初透磁率との関係については、従来、知見はなかった。
そこで、発明者らは、この点に関し鋭意検討を重ねた結果、C量を0.0050質量%以下に抑制すれば、−20℃の低温域から120℃さらには150℃の温度領域にわたって、比初透磁率の改善に効果があるとの新規知見を得たのである。
ここで、残留C量が比初透磁率に影響する理由については、まだ十分に解明できてはいないが、Cが結晶粒内にあれば磁壁移動の妨げとなって比初透磁率を低下させることが考えられ、また結晶粒界に偏折すると導電性付与の核となり、コアの比抵抗を減少させて渦電流損失を増大させ、その結果比初透磁率を劣化させることが推定される。
特に、残留C量を制限することは、比初透磁率の温度特性の改善に有効である。すなわち、比初透磁率の温度特性は、温度変化に対応する比初透磁率の変化率(以下、温度変化率ともいう)にて評価でき、この温度変化率が小さいことが求められている。より具体的には、23℃における10kHzの比初透磁率が7000以上、かつ23℃〜120℃の温度範囲における10kHzの比初透磁率の、(最大値−最小値)/(120℃−23℃)が15/℃以下とすることが好ましい。なぜなら、この温度範囲での比初透磁率の変化が15/℃超になると、比初透磁率は最小値で5500未満および最大値で8500以上程度に変動することになり、一般に比初透磁率の目標値±20%程度のバラツキを含むノイズフィルターの設計値から外れることになる。すなわち、比初透磁率が低くなりすぎると、上記設計値を満足することができずに特性の劣るものとなる。一方、比初透磁率が高くなれば、該比初透磁率に応じてコイルの巻線数を低減できるのであるが、そのままの巻数で用いるため過剰品質のノイズフィルターとなる。
ところで、Mn-Zn-Co系フェライトの製造工程で混入するCとしては、
(1) Fe2O3、MnO、ZnOの主原料に含有されるC、
(2) 副原料の各種添加物に含有されるC、
(3) 粉砕時に使用する鋼鉄製の容器や粉砕ビーズに含有されるC、
(4) 造粒時に混合されるバインダーである有機物のPVA(ポリビニルアルコール)
が挙げられる。
このうち、(4)の最後に添加されるPVAは、フェライト粒子の外側に接触している状態であり、焼成昇温途中で分解・燃焼してコア外部にほとんどが排出されるため、この段階で完全に燃焼する条件とすれば、フェライトへの混入を阻止することができる。(1)の主原料に含まれるCや(3)の粉砕装置から混入するCは、混入量は多いもののやはり大部分は仮焼や焼成工程で燃焼して外部に排出される。
従って、混入するCが、(1)、(3)、(4)だけであれば、焼成条件を適切に制御すれば残留C量を低減できることが判明した。
しかしながら、(2)のうち特に副成分であるCaOの添加に際し、Cを含有するCaCO3の形態で添加した場合、CaCO3は焼成工程で分解され排出されるが、分解により生成したCが結晶粒内あるいは粒界に残留することが多く、このため、最終的な残留Cが増加するということが新たに知見された。
そこで、CaOの添加を、一般的に行われているCaCO3という炭酸化物の形態ではなく、Cを含まないCaOという酸化物の形態で添加したところ、残留C量を比初透磁率に悪影響を及ぼさない0.0050質量%以下まで抑制できることが判明したのである。
より好ましい残留C量は0.0047質量%以下である。
なお、不純物としては、上記したCの他、塩素(Cl)、硫黄(S)等が挙げられるが、これらは混入量が合計で0.01質量%以下であれば、特性上、何ら問題はない。
さらに、Mn-Zn-Co系フェライトとして、−20℃における10kHzの比初透磁率が5500以上および150℃における10kHzの比初透磁率が12000以下であることが好ましい。なぜなら、上記した用途では比初透磁率7000程度がノイズフィルターの目標値となるため、この比初透磁率が5500未満であると上述の設計値を満足できなくなるからである。一方、12000を超えると、比初透磁率の周波数特性が劣化し、所期した周波数特性を満足できなくなる。
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明のMn-Zn-Co系フェライトは、通常、各粉末原料を所定の最終組成になるように秤量し、混合したのち、仮焼し、ついで副成分を添加する場合には、得られたフェライト仮焼粉に副成分を添加して混合したのち、粉砕し、ついで造粒後、圧縮成形したのち、焼成することにより製造される。
上記した製造工程において、本発明では、特に焼成工程における昇温途中の400℃から焼成保持温度に達するまでの焼成雰囲気について、雰囲気中の酸素濃度を5体積%超から(大気の濃度である)21体積%以下にして焼成する点に特徴がある。
焼成開始から400℃までの温度域で、添加されたPVAはほぼ分解・燃焼する。その後、焼成保持温度に達するまでの酸素濃度を低減すると結晶粒成長が急激に進み、その結果高い比初透磁率が得られる。しかしながら、400℃から焼成保持温度までの酸素濃度をあまり低くすると、今度は、先に述べたように各工程で混入したCが十分に燃焼・分解されず結晶内に取り込まれるため、残留C量が低減せず、かえって比初透磁率の改善効果を阻害することになる。
そこで、この問題を解決すべく種々検討した結果、昇温途中の400℃から焼成保持温度に達するまで焼成雰囲気中の酸素濃度を5体積%超から21体積%以下の範囲に制御してやれば、粒成長と残留C量のバランスがとれ、広い温度域で高い比初透磁率を実現できることを見出した。
なお、酸素濃度の上限は、酸素濃度を大気中での酸素濃度を超える高濃度にするにはコスト面で大きな問題があるため、大気中酸素濃度である21体積%とした。一方、上記した結晶粒成長という点では、昇温途中の400℃から焼成保持温度に達するまで焼成雰囲気中の酸素濃度は低い方が有利であるため、ローラーハース炉のようなガス加熱方式を使用できる焼成炉では、コスト上昇を伴わずに、酸素濃度を18体積%以下とすることが可能なため、酸素濃度の好適な上限は18体積%とする。
焼成に際しては、焼成保持温度は1300〜1400℃、好ましくは1340〜1375℃とすることが望ましい。また、焼成時間は1〜5時間が好適である。さらに、雰囲気中の酸素濃度は12体積%以下とすることが好ましい。
さらに、焼成保持温度までの昇温速度については、特に制限はないが、150℃/h以上の速度で昇温することが好ましい。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
最終基本組成が表1に示す種々の組成となるように、各粉末原料を秤量し、混合したのち、950℃で3時間仮焼した。この仮焼体に、同じく表1に示す各種微量添加物を添加し、ボールミルで12時間粉砕したのち、焼成後に外径:31mm、内径:19mm、高さ:7mmのリング状(実効断面積:42mm2)となるように成形し、ついで大気中で400℃まで昇温速度:250℃/hで昇温し、400℃から焼成保持温度1370℃までは、表1に示す種々の酸素濃度で、昇温速度:600℃/hで昇温した。その後、保持温度:1370℃に達してからは、酸素濃度を8体積%以下に制御して2時間焼成した。
得られた焼結体の残留C量と10kHz、各種温度での比初透磁率μir(=比初透磁率μi/真空の透磁率μ0)とその温度変化率について調べた結果を、それぞれ表1に併記する。
なお、残留C量、比初透磁率μirおよびその温度変化率はそれぞれ、次のようにして測定した。
・残留C量
試料を酸素気流中で燃焼させ、発生したCO2ガスを赤外線検出器により検出し、炭素量に換算する、高周波燃焼式・赤外線吸収法で測定した。
・比初透磁率μir
リング状試料に10ターンの巻線を施し、インピーダンスアナライザにより0.5mA程度の電流を流したときのインダクタンスから、リング試料の断面積、磁路長、巻数を用いて比初透磁率に換算して測定した。
・比初透磁率μirの温度変化率
23℃から120℃までの比初透磁率の測定値(23℃で測定後30℃から120℃は10℃刻みで測定)から、(比初透磁率の最大値−最小値)/(120℃−23℃)で定義される数値を温度変化率(/℃)とした。
Figure 2015229625
表1に示したとおり、昇温途中の400℃から焼成保持温度に達するまで焼成雰囲気中の酸素濃度を5体積%超から21体積%の範囲に制御すると共に、CaO成分を酸化物であるCaOの形態で添加することによって、残留C量を0.0050質量%以下まで低減することができ、その結果、比初透磁率が−20℃では5500以上、23℃では7000以上、23℃から120℃までの温度変化率が15/℃以下、150℃では12000以下と優れた温度特性のフェライトコアを得ることができた。
したがって、かかるフェライトコアをノイズフィルターに搭載すれば、広い温度域で優れたフィルター特性を発揮することができる。
最終基本組成が表2に示す種々の組成となるように、各粉末原料を秤量し、混合したのち、950℃で3時間仮焼した。この仮焼体に、同じく表2に示す各種微量添加物を添加し、ボールミルで12時間粉砕したのち、焼成後に外径:31mm、内径:19mm、高さ:7mmのリング状(実効断面積:42mm2)となるように成形し、ついで大気中で400℃まで昇温速度:250℃/hで昇温し、400℃から焼成保持温度1370℃までは酸素濃度:6体積%で、昇温速度:600℃/hで昇温した。その後、保持温度:1370℃に達してからは、酸素濃度を8体積%以下に制御して2時間焼成した。
得られた焼結体の残留C量と10kHz、各種温度での比初透磁率μir(=比初透磁率μi/真空の透磁率μ0)とその温度変化率について調べた結果を、それぞれ表2に併記する。
表2において、本発明の範囲内のものは発明例、また範囲外のものは比較例としている。なお、添加物のうちCaOについては、発明例では酸化物であるCaOの形態で添加したが、比較例として炭酸化物であるCaCO3の形態で添加した例も併記した。
Figure 2015229625
表2から明らかなように、CaO成分を酸化物であるCaOの形態で他の添加物と共に添加した場合には残留C量を0.0050質量%以下に制御することができ、そのときの比初透磁率が-20℃では5500以上、23℃では7000以上、23℃から120℃までの温度変化率が15/℃以下、150℃では12000以下と優れた温度特性のフェライトコアを得ることができた。
したがって、かかるフェライトコアをノイズフィルターに搭載すれば、さらに優れたフィルター特性を発揮することができる。
最終基本組成が表3に示す種々の組成となるように、各粉末原料を秤量し、混合したのち、950℃で3時間仮焼した。この仮焼体に、同じく表3に示す各種微量添加物を添加し、ボールミルで8時間粉砕したのち、焼成後に外径:31mm、内径:19mm、高さ:7mmのリング状(実効断面積:42mm2)となるように成形し、ついで大気中で400℃まで昇温速度:250℃/hで昇温した。引き続き、400℃から800℃までは酸素濃度:3体積%、800℃超から焼成保持温度:1370℃までは酸素濃度:6体積%で、昇温速度:600℃/hで昇温した。その後、保持温度:1370℃に達してからは、酸素濃度を8体積%以下に制御して2時間焼成した。
得られた焼結体の残留C量と10kHz、各種温度での比初透磁率μir(=比初透磁率μi/真空の透磁率μ0)とその温度変化率について調べた結果を、それぞれ表3に併記する。
表3から明らかなように、400℃から焼成保持温度までの温度域の一部にでも、焼成雰囲気中の酸素濃度が5体積%超という条件を満足しない温度域が存在した場合には、フェライト中の残留C量を0.0050質量%以下まで低減することができず、その結果、比初透磁率が−20℃では5500未満、23℃から120℃までの温度変化率が15/℃超、150℃では12000超という、非常に温度変化の大きい特性しか得られなかった。
Figure 2015229625

Claims (4)

  1. Fe2O3:52.6〜53.7モル%、
    ZnO:13.2〜16.7モル%
    CoO:0.15〜0.50モル%および
    残部MnOを基本成分とし、
    前記基本成分に対し、
    SiO2:0.002〜0.010質量%、
    CaO:0.005〜0.060質量%および
    Nb2O5:0.005〜0.020質量%
    の副成分を含有し、残部が不可避的不純物からなるMn-Zn-Co系フェライトであって、
    前記不可避的不純物中、炭素の含有量を0.0050質量%以下に抑制したことを特徴とするMn-Zn-Co系フェライト。
  2. 23℃における10kHzの比初透磁率が7000以上、かつ23℃〜120℃の温度範囲における10kHzの比初透磁率の、(最大値−最小値)/(120℃−23℃)が15/℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のMn-Zn-Co系フェライト。
  3. −20℃における10kHzの比初透磁率が5500以上および150℃における10kHzの比初透磁率が12000以下であることを特徴とする請求項2に記載のMn-Zn-Co系フェライト。
  4. 基本成分組成に従って酸化物原料を秤量し、混合したのち仮焼し、ついで副成分を添加して混合し、さらに粉砕後、成形して得た成形品を、昇温し、焼成保持温度で焼成することにより請求項1〜3のいずれかに記載のMn-Zn-Co系フェライトを得るMn-Zn-Co系フェライトの製造方法において、
    上記昇温に際し、400℃から焼成保持温度に達するまでの雰囲気中の酸素濃度を5体積%超21体積%以下とし、前記副成分としてのCaOは、炭素を含有しない形態のCa化合物として添加することを特徴とするMn-Zn-Co系フェライトの製造方法。
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