JP2015229625A - Mn−Zn−Co系フェライトおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、室温での比初透磁率を高めれば、逆に低温域(−30〜0℃程度)で比初透磁率が著しく低下するため、低温域でのインダクタンスを確保するために巻線数を増やしたり、低温域での比初透磁率を高くするために常温での比初透磁率が必要以上に高いものを使う必要があった。例えば、室温での比初透磁率が7000程度の、従来の一般的なMn-Zn系フェライトの場合、−20℃では比初透磁率が4000程度と半減してしまう。一方、−30〜−20℃において7000程度以上の高い比初透磁率を得ようとすると、上記の劣化を考慮して室温での比初透磁率を15000以上という極めて高くすることが必要となる。室温での比初透磁率が15000以上のMn-Zn系フェライトを得るためには、高品質の原材料や焼成方法、焼成条件の厳密なコントロールが必要であり、コストや工数が大きく増加するという問題があった。従って、広い温度範囲で高い比初透磁率とするための手法は極めて非効率的であった。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、−20℃〜150℃程度の広い温度範囲で高い比初透磁率を有する、Mn-Zn-Co系フェライトを、その有利な製造方法と併せて提案することを目的とする。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.Fe2O3:52.6〜53.7モル%、
ZnO:13.2〜16.7モル%
CoO:0.15〜0.50モル%および
残部MnOを基本成分とし、
前記基本成分に対し、
SiO2:0.002〜0.010質量%、
CaO:0.005〜0.060質量%および
Nb2O5:0.005〜0.020質量%
の副成分を含有し、残部が不可避的不純物からなるMn-Zn-Co系フェライトであって、
前記不可避的不純物中、炭素の含有量を0.0050質量%以下に抑制したことを特徴とするMn-Zn-Co系フェライト。
上記昇温に際し、400℃から焼成保持温度に達するまでの雰囲気中の酸素濃度を5体積%超21体積%以下とし、前記副成分としてのCaOは、炭素を含有しない形態のCa化合物として添加することを特徴とするMn-Zn-Co系フェライトの製造方法。
本発明において、Mn-Zn-Co系フェライトの成分組成は、次のとおりに限定される。
まず、本発明の基本組成について説明する。
Fe2O3:52.6〜53.7モル%
基本成分のうち、Fe2O3量が少ない場合には、比初透磁率がピークをもつ温度が80℃程度以上の高温側となり、その結果、室温での比初透磁率が劣化する。そのため、最低でも52.6モル%のFe2O3を含有させるものとした。一方、Fe2O3量が多すぎる場合には、後で述べるCoO量との関係で比初透磁率がピークをもつ温度が零度程度以下の低温側となり、やはり室温での比初透磁率の劣化が避けられないため、上限を53.7モル%とした。
上記したFe2O3量との組み合わせで、ZnOが少ない場合には、比初透磁率がピークをもつ温度が80℃程度以上の高温側となり、その結果室温での比初透磁率が劣化する。そのため、最低でも13.2モル%のZnOを含有させる必要がある。一方、ZnO量が多すぎる場合には、後で述べるCoO量との関係で比初透磁率がピークをもつ温度が零度程度以下の低温側となり、やはりで室温での比初透磁率の劣化が避けられないため、上限を16.7モル%とした。
CoOは、磁気異方性を変化させて比初透磁率の温度係数を小さくし、また室温付近の比初透磁率のピーク温度を低下させる働きがある。しかしながら0.5モル%を超えて過剰に含む場合には、比初透磁率の温度特性が極端に変化し室温付近で大きく低下するため望ましくない。また、CoO量が0.15モル%より少ないと、透磁率の温度変化を小さくする効果が小さい。したがって、CoOの含有量は0.15〜0.5モル%の範囲とする。
本発明は、Mn-Zn-Co系フェライトであるので、主成分であるFe2O3、ZnOとCoOの残部はMnOでなければならない。というのは、MnOでなければ、上記Fe2O3、ZnOとCoOとの組み合わせで高い比比初透磁率を実現できないからである。MnOの好ましい含有量は、30.0〜33.0モル%である。
なお、Fe2O3、ZnOおよびCoOとMnOとの合計は100モル%である。
SiO2:0.002〜0.010質量%
SiO2は、フェライトの結晶組織の均一化に寄与することが知られており、添加に伴い結晶粒内に残留する空孔を減少させることから、適量の添加によって初めて高い比初透磁率を実現させることができる。そのため、最低でもSiO2を0.002質量%含有させることとする。しかし、添加量過多の場合には反対に異常粒が出現し、比初透磁率の周波数特性を著しく低下させることから、SiO2は0.010質量%以下に制限する必要がある。
CaOは、Mn-Zn-Co系フェライトの結晶粒界に偏析することが知られており、この粒界への偏析によって結晶の高抵抗化が図られ、また適量の添加によって比初透磁率の周波数特性が改善されることから、最低でもCaOを0.005質量%含有させることとする。しかし、添加量過多の場合には不純物相が増大し、低周波領域で高い比初透磁率を得ることが困難になることから、0.060質量%以下に制限する必要がある。
Nb2O5は、上記したSiO2、CaOとの共存下で、比抵抗の増大に有効に寄与し比初透磁率の周波数特性の改善に寄与するが、含有量が0.005質量%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.020質量%を超えると低周波領域で高い比初透磁率を得ることが困難になることから、0.005〜0.020質量%の範囲で添加することが好ましい。
不純物である炭素は、Mn-Zn-Co系フェライトの製造工程において不可避的に混入し、焼成後も残留Cとしてコア内に含まれる。この残留C量と比初透磁率との関係については、従来、知見はなかった。
そこで、発明者らは、この点に関し鋭意検討を重ねた結果、C量を0.0050質量%以下に抑制すれば、−20℃の低温域から120℃さらには150℃の温度領域にわたって、比初透磁率の改善に効果があるとの新規知見を得たのである。
(1) Fe2O3、MnO、ZnOの主原料に含有されるC、
(2) 副原料の各種添加物に含有されるC、
(3) 粉砕時に使用する鋼鉄製の容器や粉砕ビーズに含有されるC、
(4) 造粒時に混合されるバインダーである有機物のPVA(ポリビニルアルコール)
が挙げられる。
従って、混入するCが、(1)、(3)、(4)だけであれば、焼成条件を適切に制御すれば残留C量を低減できることが判明した。
そこで、CaOの添加を、一般的に行われているCaCO3という炭酸化物の形態ではなく、Cを含まないCaOという酸化物の形態で添加したところ、残留C量を比初透磁率に悪影響を及ぼさない0.0050質量%以下まで抑制できることが判明したのである。
より好ましい残留C量は0.0047質量%以下である。
本発明のMn-Zn-Co系フェライトは、通常、各粉末原料を所定の最終組成になるように秤量し、混合したのち、仮焼し、ついで副成分を添加する場合には、得られたフェライト仮焼粉に副成分を添加して混合したのち、粉砕し、ついで造粒後、圧縮成形したのち、焼成することにより製造される。
上記した製造工程において、本発明では、特に焼成工程における昇温途中の400℃から焼成保持温度に達するまでの焼成雰囲気について、雰囲気中の酸素濃度を5体積%超から(大気の濃度である)21体積%以下にして焼成する点に特徴がある。
さらに、焼成保持温度までの昇温速度については、特に制限はないが、150℃/h以上の速度で昇温することが好ましい。
最終基本組成が表1に示す種々の組成となるように、各粉末原料を秤量し、混合したのち、950℃で3時間仮焼した。この仮焼体に、同じく表1に示す各種微量添加物を添加し、ボールミルで12時間粉砕したのち、焼成後に外径:31mm、内径:19mm、高さ:7mmのリング状(実効断面積:42mm2)となるように成形し、ついで大気中で400℃まで昇温速度:250℃/hで昇温し、400℃から焼成保持温度1370℃までは、表1に示す種々の酸素濃度で、昇温速度:600℃/hで昇温した。その後、保持温度:1370℃に達してからは、酸素濃度を8体積%以下に制御して2時間焼成した。
・残留C量
試料を酸素気流中で燃焼させ、発生したCO2ガスを赤外線検出器により検出し、炭素量に換算する、高周波燃焼式・赤外線吸収法で測定した。
リング状試料に10ターンの巻線を施し、インピーダンスアナライザにより0.5mA程度の電流を流したときのインダクタンスから、リング試料の断面積、磁路長、巻数を用いて比初透磁率に換算して測定した。
23℃から120℃までの比初透磁率の測定値(23℃で測定後30℃から120℃は10℃刻みで測定)から、(比初透磁率の最大値−最小値)/(120℃−23℃)で定義される数値を温度変化率(/℃)とした。
したがって、かかるフェライトコアをノイズフィルターに搭載すれば、広い温度域で優れたフィルター特性を発揮することができる。
表2において、本発明の範囲内のものは発明例、また範囲外のものは比較例としている。なお、添加物のうちCaOについては、発明例では酸化物であるCaOの形態で添加したが、比較例として炭酸化物であるCaCO3の形態で添加した例も併記した。
したがって、かかるフェライトコアをノイズフィルターに搭載すれば、さらに優れたフィルター特性を発揮することができる。
Claims (4)
- Fe2O3:52.6〜53.7モル%、
ZnO:13.2〜16.7モル%
CoO:0.15〜0.50モル%および
残部MnOを基本成分とし、
前記基本成分に対し、
SiO2:0.002〜0.010質量%、
CaO:0.005〜0.060質量%および
Nb2O5:0.005〜0.020質量%
の副成分を含有し、残部が不可避的不純物からなるMn-Zn-Co系フェライトであって、
前記不可避的不純物中、炭素の含有量を0.0050質量%以下に抑制したことを特徴とするMn-Zn-Co系フェライト。 - 23℃における10kHzの比初透磁率が7000以上、かつ23℃〜120℃の温度範囲における10kHzの比初透磁率の、(最大値−最小値)/(120℃−23℃)が15/℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のMn-Zn-Co系フェライト。
- −20℃における10kHzの比初透磁率が5500以上および150℃における10kHzの比初透磁率が12000以下であることを特徴とする請求項2に記載のMn-Zn-Co系フェライト。
- 基本成分組成に従って酸化物原料を秤量し、混合したのち仮焼し、ついで副成分を添加して混合し、さらに粉砕後、成形して得た成形品を、昇温し、焼成保持温度で焼成することにより請求項1〜3のいずれかに記載のMn-Zn-Co系フェライトを得るMn-Zn-Co系フェライトの製造方法において、
上記昇温に際し、400℃から焼成保持温度に達するまでの雰囲気中の酸素濃度を5体積%超21体積%以下とし、前記副成分としてのCaOは、炭素を含有しない形態のCa化合物として添加することを特徴とするMn-Zn-Co系フェライトの製造方法。
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