JP6079172B2 - フェライトコア及びトランス - Google Patents

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本発明はFe、Mn、Zn及びCaを含むフェライトコア及びこれを用いたトランス、及び、電源に関する。
電源用トランスなどの磁心材料として、フェライト焼結体が使用されている。磁心を形成するフェライト焼結体は、フェライトコアと呼ばれ、Mn及びZnを含有するMnZn系フェライトが広く使用されている。機器の使用時における磁心の発熱量を低減する観点から、フェライトコアは使用される温度範囲でコアロスの値が小さいことが求められる。
近年、電子機器や電源の小型化が進むとともに、電子機器における部品の高密度化も進展している。かかる状況においては、磁心の発熱による温度上昇が大きくなる傾向にあり、磁心は温度上昇に対して厳しい環境で使用される機会が増加している。このため、磁心の温度上昇をさらに抑制することが望まれている。また特許文献1では、焼成時の雰囲気を制御することによってフェライトコアを低ロスにする製造方法が開示されている。
特開2008−247675号公報
従来は電子機器や電源などの実稼動時のコア温度を低くするため、動作温度での低ロス化が検討されてきた。またコアロスが極小値を示す温度(コアロス極小温度)よりも電子機器や電源などの動作温度が低ければ、使用時にコアの温度が徐々に上昇したとしても、発熱量が徐々に小さくなるため、熱暴走の発生を十分に防止できるものと考えられていた。
しかしながら、本発明者らは磁心を実装した電子機器や電源を連続的に運転した場合を想定し、連続的に励磁してコアの温度変化を測定したところ、動作温度におけるコアロスが低い場合でもコアの温度が高くなる場合があることを見出した。
詳細は不明だが、かかる温度上昇の原因はコアの表皮電流による渦電流損失の影響であると考えられる。すなわち、MnZnフェライトは他のフェライトに比べ比較的電気抵抗が低く、表皮電流を生じやすい。そのため動作温度におけるコアロスが低い場合でも、連続的に励磁するとコア発熱に伴って表面の電気抵抗が低下し表皮電流が増加、コア温度が上昇する傾向にある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、連続的に励磁するような環境にあっても、コア温度が上昇するのを十分に抑制できるフェライトコアを提供し、かつこれを用いたトランス、及び、電源を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、連続的に励磁した場合でもコア温度の上昇を十分に抑制できるフェライトコアについて鋭意検討し、MnZn系フェライトに含まれる微量成分であるCaOについて、焼結体内部と焼結体表面近傍の差を所定の値にすることが有用であることを見出した。
すなわち、第1の手段に係るフェライトコアは、少なくともFe、Mn、Zn及びCaを含有したフェライトコアであって、フェライトコア表面部のCa含有量(CaO換算)をx(o)[質量%]、フェライトコア内部のCa含有量(CaO換算)をx(i)[質量%]としたとき、{x(o)−x(i)}が0.001≦{x(o)−x(i)}≦0.01の範囲であることを特徴とする。
第2の手段に係るフェライトコアは、前記第1の手段に係るフェライトコアにおいて、それぞれ酸化物に換算したとき、51.0〜54.0モル%のFe、32.0〜43.0モル%のMnO、及び、6.0〜14.0モル%のZnOからなる主成分と、主成分の上記酸化物の合計質量1質量部に対し、CaOに換算すると220×10−6〜1100×10−6質量部に相当する量のCaをコア表面部に含有することが好ましい。
フェライトコアが上記に示す量のFe、Mn、Zn及びCaを含有すると、コア温度の上昇を一層低減できる。
第3の手段に係るフェライトコアは、前記第1又は第2の手段のいずれか1つに係るフェライトコアにおいて、更に、主成分の上記酸化物の合計質量1質量部に対し、SiOに換算すると50×10−6〜150×10−6質量部に相当する量のSiを含有する。
フェライトコアが上記に示す量のSiを含有すると、フェライトコアの粒界が高抵抗化して、コアロスをより一層低減できる。
第4の手段に係るフェライトコアは、前記第1から前記第3の手段のいずれか1つに係るフェライトコアにおいて、更に、主成分の上記酸化物の合計質量1質量部に対し、Nbに換算すると100×10−6〜400×10−6質量部に相当する量のNbを含有する。
第5の手段に係るフェライトコアは、前記第1から前記第4の手段のいずれか1つに係るフェライトコアにおいて、更に、主成分の上記酸化物の合計質量1質量部に対し、Vに換算すると50×10−6〜400×10−6質量部に相当する量のVを含有する。
フェライトコアが上記に示す量のNb、Vの少なくとも1種以上を含むものであると、フェライトコアの粒界が高抵抗化して、コアロスを一層低減できる。
第6の手段に係るフェライトコアは、前記第1から前記第5の手法のいずれか1つに係るフェライトコアにおいて、さらに、主成分の上記酸化物の合計量1質量部に対し、Ta、ZrO、HfOに換算すると50×10−6〜100×10−6質量部に相当する量のTa、Zr、Hfを少なくとも1種以上含有する。
フェライトコアが上記に示す量のTa、Zr、Hfの少なくとも1種以上を含むものであると、フェライトコアの粒界が高抵抗化して、コアロスを一層低減できる。
さらには、上記第1〜第6のいずれかの手段に係るフェライトコアを含んでトランスを構成することによって、温度上昇を抑制できるトランスを提供できる。
さらには、上記第1〜第6のいずれかの手段に係るフェライトコアを含んだトランスを用いた電源を構成することによって、温度上昇が抑制された電源を提供できる。
本発明は、連続的に励磁するような環境にあっても、コアの上昇温度を50℃以下に抑制できるフェライトコア及びこれを備えたトランス、及び、電源が提供される。
本発明に係るフェライトコア(a)、及びフェライトコアを使用したトランス(b)、さらにトランスを用いた電源(c)の一実施形態を示す斜視図である。 本焼成工程における温度設定の一例を示すグラフである。 二次焼成工程における温度設定の一例を示すグラフである。 {x(o)−x(i)}とコアの上昇温度(ΔT)の関係を示すグラフである。 {x(o)−x(i)}と120℃におけるコアロス(Pcv)の関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1(a)は、本実施形態に係るフェライトコア(磁心)を示す斜視図である。図1(a)に示すように、E字型のフェライトコア10は、E型コアなどと呼ばれ、トランスなどに使用される。フェライトコア10のようなE型コアが採用されたトランスとしては、内部に2つのE型コアが対向配置されたものが知られている。
図1(a)に示したフェライトコア10のようなE型コアが採用されたトランスとしては、図1(b)に示すように、2つのフェライトコアを対応配置して、中脚部11の回りにコイル12を巻き回したトランスが知られている。
図1(c)は、上記トランスを用いた電源の一例としてフルブリッジ方式の電源回路を示したが、本実施形態に係る電源は、これに限定されるものではない。
フェライトコア10はFe、Mn、Zn及びCaを含有し、フェライトコア表面部のCa含有量(CaO換算)をx(o)[質量%]、フェライトコア内部のCa含有量(CaO換算)をx(i)[質量%]としたとき、x(o)−x(i)が0.001≦{x(o)−x(i)}≦0.01の範囲である。
フェライトコア10は、{x(o)−x(i)}が0.001未満であると、コアの温度上昇が大きくなる。{x(o)−x(i)}が0.01を超えるとコアの温度上昇が大きくなり、コアの温度上昇が50℃を超える。{x(o)−x(i)}は0.002以上で、0.009以下であることが好ましい。その範囲にすると、更にコアの温度上昇が抑えられる。コアの発熱メカニズムの詳細は不明だが、MnZnフェライトは他のフェライトコアに比べて比較的電気抵抗が小さいため、コア表面で表皮電流が生じて渦電流損失の影響を受ける。一方、コア内部ではヒステリシス損失がコアロスの主な要因である。従ってCa含有量をコア表面部で増やし、内部では減らして内外差をつけると、コア表面部の表皮電流による渦電流損失と、コア内部のヒステリシス損失がそれぞれ減少して、コア発熱が抑制されると考えられる。
また、本実施形態において、コア表面部のCa含有量であるx(o)は、上記コアの主成分酸化物の合計質量を1質量部としたときに、CaO換算で、220×10−6〜1100×10−6質量部であることが好ましい。220×10−6質量部よりも少ないとフェライトコア表面部とフェライトコア内部のCaの含有量の差が不十分なために、コア発熱が大きくなる傾向にあり、1100×10−6質量部を超えるとフェライトコア表面部とフェライトコア内部のCaの含有量の差が大きくなりすぎ、コアロスが増加する傾向にあるからである。また、主成分の酸化物の合計質量1質量部に対し、Caの含有量(CaO換算)は、200×10−6質量部〜1080×10−6質量部であることが好ましい。主成分の酸化物の合計質量1質量部に対し、Ca含有量(CaO換算)が200×10−6質量部未満であると、フェライトコアにおける高抵抗層の形成が不十分となる傾向にあり、コアロスの低減が不十分となる。他方、Caの含有量(CaO換算)が1080×10−6質量部を超えると、異常な粒成長を招来し、コアロスの低減が不十分となる傾向にある。
ここで、フェライトコア表面部とは、フェライトコア表面から深さ1.5mmまでの範囲とする。深さ1.5mmを超える範囲でCaを濃化させても、コア発熱抑制効果が見られないからである。また、フェライトコア内部とは、フェライトコア表面部を除いた残部とする。
本実施形態に係るフェライトコアは、更にそれぞれ酸化物に換算したとき、主成分が51.0〜54.0モル%のFe、32.0〜43.0モル%のMnO、及び、6.0〜14.0モル%のZnOからなることが好ましい。
フェライトコアのFeの含有率が51.0モル%未満であると、飽和磁束密度が低くなる傾向にある。他方、Feの含有率が54.0モル%を超えると、高温条件下で使用した場合に性能の経時劣化が顕著となる傾向にある。Feの含有率は、51.5〜53.5モル%であることがより好ましい。
フェライトコアのZnOの含有率が6.0モル%未満であると、コアの上昇温度が高くなる傾向にある。他方、ZnOの含有率が14.0モル%を超えると、飽和磁束密度が低くなる傾向にある。ZnOの含有率は、8.0〜12.0モル%であることがより好ましい。
フェライトコアのMnOの含有率は、他の主成分であるFe及びZnOの含有率を定めると、主成分のうちの残部として定まるものである。
Siは、フェライトコアの焼結性を高める作用を有するとともに、粒界の高抵抗化に寄与するため、適量のSiを含有せしめることで、コアロスの低減化が図られる。フェライトコアのSiの含有量(SiO換算)が、主成分の酸化物の合計質量1質量部に対し、50×10−6質量部未満であると、フェライトコアにおける高抵抗層の形成が不十分となり、コアロスの低減が不十分となる。他方、Siの含有量(SiO換算)が150×10−6質量部を超えると、異常な粒成長を招来し、コアロスの低減が不十分となる。Siの含有量(SiO換算)は、フェライトコア表面部に60×10−6〜130×10−6質量部であることが好ましい。
本実施形態に係るフェライトコアは、副成分が主成分の上記酸化物の合計質量1質量部に対し、Nbに換算すると100×10−6〜400×10−6質量部に相当する量のNb及び/又はVに換算すると50×10−6〜400×10−6質量部に相当する量のVを含むことが好ましい。
Nbは、フェライトコアの粒界の高抵抗化に寄与するため、適量のNbを含有せしめることで、コアロスの低減化が図られる。フェライト焼結体のNbの含有量(Nb換算)が、主成分の酸化物の合計質量1質量部に対し、100×10−6質量部未満であると、粒界の高抵抗化が不十分となりやすく、コアロスの低減が不十分となる傾向がある。他方、Nbの含有量(Nb換算)が400×10−6質量部を超えると、結晶組織の不均一性を助長する傾向がある。Nbの含有量(Nb換算)は、150×10−6〜400×10−6質量部であることが好ましい。
Vは、上述のNbと同様、フェライトコアの粒界の高抵抗化に寄与するため、適量のVを含有せしめることで、コアロスの低減化が図られる。フェライトコアのVの含有量(V換算)が、主成分の酸化物の合計質量1質量部に対し、50×10−6質量部未満であると、粒界の高抵抗化が不十分となりやすく、コアロスの低減が不十分となる傾向がある。他方、Vの含有量(V換算)が400×10−6質量部を超えると、結晶組織の不均一性を助長する傾向がある。Vの含有量(V換算)は、50×10−6〜300×10−6質量部であることが好ましい。
フェライトコアに、Nb及びVの両方を含有せしめる場合は、Nb及びVの分子量に基づき、Nb及びVの合計含有量を適宜調整すればよい。
本実施形態に係るフェライトコアは、上記以外の成分を更に含有するものであってもよい。例えば、Ta(Ta)、Zr(ZrO)及びHf(HfO)は、上述のNb,Vと同様、フェライトコアの粒界の高抵抗化に寄与するため、これらを適量含有せしめることで、コアロスの低減化が図られる。フェライトコアのTa、Zr及びHfの含有量(Ta、ZrO、HfO換算)が、主成分の酸化物の合計量1質量部に対し、50×10−6質量部未満であると、粒界の高抵抗化が不十分となりやすく、コアロスの低減が不十分となる傾向がある。他方、Ta、Zr及びHfの含有量(Ta、ZrO、HfO換算)が400×10−6質量部を超えると、結晶組織の不均一性を助長する傾向がある。Ta、Zr及びHfの含有量(Ta、ZrO、HfO換算)は、50×10−6〜300×10−6質量部であることが好ましい。
次に、フェライトコア10の製造方法について説明する。
はじめに、主成分をなす酸化鉄α−Fe、酸化マンガンMn及び酸化亜鉛ZnOを用意し、これら酸化物を混合して混合物を得る。このとき、最終的に得られる混合物中の各酸化物成分の構成比が所定の範囲内となるように上記酸化物とともに他の化合物を混合してもよい。
次いで、上記主成分の混合物を仮焼成して仮焼成物を得る(仮焼工程)。仮焼は通常は空気中で行えばよい。仮焼温度は混合物を構成する成分に依存するが、800〜1100℃とすることが好ましい。また、仮焼時間は、混合物を構成する成分に依存するが、1〜3時間とすることが好ましい。その後、得られた仮焼成物をボールミル等により粉砕して粉砕粉を得る。
上述の主成分原料の仮焼成物を粉砕する際、所定量のCaを、炭酸カルシウム(CaCO)もしくは酸化カルシウム(CaO)として添加し両者を混合することによって本焼成用の原料混合粉を得る(混合工程)。
他方、副成分をなす酸化ケイ素(SiO)を所定量、用意し主成分原料の仮焼成物を粉砕する際に添加し両者を混合する。これにより、原料混合粉を得る。さらに、ここで上記成分以外の副成分(CoO、TiO、Nb,V,Ta,ZrO,HfOなど)を適宜添加してもよい。なお、最終的に得られる混合物中の各副成分の含有量が上記範囲内となるように、上記化合物の代わりに他の化合物を用いてもよい。
続いて、上記のようにして得られる原料混合粉と、ポリビニルアルコール等の適当なバインダとを混合し、フェライトコア10と同形状、即ちE字型に成形して成形体を得る。
次に、成形体を加熱炉内において焼成する(本焼成工程)。図2は、本焼成工程における温度設定の一例を示すグラフである。図2に示すように、本焼成工程は、加熱炉内の成形体を徐々に加熱する昇温工程S1と、温度を1250〜1350℃に保持する温度保持工程S2と、保持温度から徐々に降温する徐冷工程S3と、徐冷工程S3の終了後に急冷する急冷工程S4とを少なくとも有する。
昇温工程S1は、加熱炉内の温度を後述の保持温度にまで昇温する工程である。昇温速度は、10〜300℃/時間とすることが好ましい。
昇温工程S1によって所定の温度(1250〜1350℃)に到達すると、この温度に維持する温度保持工程S2を行う。温度保持工程S2における保持温度が1250℃未満であると、フェライトコアの粒成長が不十分となり、ヒステリシス損失が増大するため、コアロスの低減が不十分となる。他方、保持温度が1350℃を超えると、フェライトコアの粒成長が過剰となり、渦電流損失が増大するため、コアロスの低減が不十分となる。保持温度を1250〜1350℃とすることで、ヒステリシス損失と渦電流損失とのバランスがとれ、高温領域におけるコアロスを十分に低減できる。
上述の保持温度で焼成を行う時間(保持時間)は、2時間以上であることが好ましい。保持時間が2時間未満であると、温度1250〜1350℃で焼成を行った場合でも粒成長が不十分となり、コアロスの低減が不十分となりやすい。保持時間は粉砕粉を構成する原料に依存するが、3〜10時間とすることがより好ましい。
温度保持工程S2の終了後、徐冷工程S3を行う。徐冷工程S3における徐冷速度は、200℃/時間以下であることが好ましい。徐冷速度が200℃/時間を超えると、フェライトコアの粒内の残留応力が大きくなりやすく、これによりコアロスの低減が不十分となる傾向がある。なお、上記徐冷速度は、徐冷帯域での平均値を意味するものであり、これを超える速度で温度が低下する部分があってもよい。
徐冷工程S3において保持温度から降温するに際し、加熱炉内の酸素濃度を制御し、連続的又は段階的に下げる操作を行う(酸素濃度調整工程)。このような操作を行うことで、温度1200℃における酸素濃度を0.2〜3.0体積%とし且つ温度1100℃における酸素濃度を0.02〜1.00体積%とすることが好ましい。
徐冷工程S3を終了し、急冷工程S4を開始する温度(徐冷終了温度)は、900〜1150℃であることが好ましい。徐冷終了温度が1150℃よりも高いと、フェライトコアの粒界の形成が不十分になりやすく、これによりコアロスの低減が不十分となる傾向がある。他方、徐冷終了温度が900℃よりも低いと、フェライトコアの粒界に異相が生じやすく、これによりコアロスの低減が不十分となる傾向がある。
徐冷工程S3の終了後、急冷工程S4を行う。少なくとも徐冷終了温度から700℃に到達するまでの温度範囲については、降温速度を150℃/時間以上とすることが好ましい。
急冷工程S4終了後、フェライトコアの表面にCaを濃化させ、{x(o)−x(i)}を所望の値に制御するため二次焼成を行う。図3は、二次焼成工程における温度を示すグラフである。図3に示すように、二次焼成過程は、加熱炉内の成形体を徐々に加熱する昇温工程T1と、1000〜1200℃に保持する温度保持工程T2、さらに温度保持工程終了後の急冷を行う急冷工程T3を有する。
昇温工程T1は、加熱炉内の温度を後述の保持温度にまで昇温する工程である。昇温速度は、10〜300℃/時間とすることが好ましい。
昇温工程T1によって所定の温度(1000〜1200℃)に到達すると、この温度に維持する温度保持工程T2を行う。温度保持工程T2における保持温度が1000℃未満であると、フェライトコアのCaOの拡散が十分に進まず、フェライトコアの内外(内部と表面部)でCaO量に差を引き起こすことができない。他方、保持温度が1200℃を超えると、フェライトコア内のCaO拡散と同時に結晶粒成長が起こり、結晶組織が不均一になるため、コアロスの低減が不十分となる。保持温度を1000〜1200℃とすることで、CaOの拡散だけを生じさせフェライトコア表面部と内部とのCa含有量に差をつけることができる。
温度保持工程T2での雰囲気酸素濃度を0.02〜0.16体積%に制御することにより、フェライトコア表面部のCaO濃度を変化させて、フェライトコアの{x(o)−x(i)}を所望の値に制御する。
また、上記実施形態では、主成分原料を仮焼して得られた仮焼成物を粉砕する際、副成分原料を添加することで本焼成用の混合粉を調製する場合を例示したが、当該混合粉は次のようにして調製してもよい。例えば、仮焼前の主成分原料と副成分原料とを混合して得られた混合物を仮焼した後、仮焼成物を粉砕することによって本焼成用の混合粉を得てもよい。あるいは、仮焼前の主成分原料と副成分原料とを混合して得られた混合粉を仮焼した後、仮焼成物を粉砕する際、更に副成分原料などを添加することによって本焼成用の混合粉を得てもよい。
また、上記実施形態では、E字形状のフェライトコア10を例示したが、フェライトコアの形状は、これに限定されるものではない。フェライトコアの形状は、そのフェライトコアが内蔵される機器の形状や用途に応じて決定することができる。
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づいて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
実施例1〜23
各成分原料を最終的に表1に示した組成になるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合した。原料混合物を乾燥させた後、空気中において、900℃程度の温度で仮焼した。得られた仮焼粉をボールミルに投入し、所望の粒子径となるまで湿式粉砕を3時間行った。
こうして得られた粉砕粉を乾燥し、粉砕粉100質量部に対してポリビニルアルコールを0.8質量部加えて造粒した後、得られた混合物を約150MPaの圧力で加圧成形し、E字型成形体を得た。成形体を次に示す焼成条件の範囲内で本焼成を行い、複数のE字型フェライトコアを得た。この本焼成工程は、保持温度が1250℃〜1350℃であり、徐冷終了温度を900℃〜1150℃に設定した。本焼成終了後、表1に示した雰囲気酸素濃度で二次焼成をおこなった。E字型フェライトコアの中脚及び外脚の上面部を、面精度を向上させるために研磨加工した。
比較例1、2
各成分原料を最終的に表1に示した組成になるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合した。原料混合物を乾燥させた後、空気中において、900℃程度の温度で仮焼した。得られた仮焼粉をボールミルに投入し、所望の粒子径となるまで湿式粉砕を3時間行った。
こうして得られた粉砕粉を乾燥し、粉砕粉100質量部に対してポリビニルアルコールを0.8質量部加えて造粒した後、得られた混合物を約150MPaの圧力で加圧成形し、E字型成形体を得た。成形体を次に示す焼成条件の範囲内で本焼成を行い、複数のE字型フェライトコアを得た。この本焼成工程は、保持温度が1250℃〜1350℃であり、徐冷終了温度を900℃〜1150℃に設定した。本焼成終了後、比較例1のフェライトコアについて、表1に示した雰囲気酸素濃度で二次焼成を行った。また比較例2のフェライトコアについては二次焼成を行わなかった。E字型フェライトコアの中脚及び外脚の上面部を、面精度を向上させるために研磨加工した。
それぞれ製造した2個のE字型のフェライトコアを対向配置して閉磁路を形成した。フェライトコアの初期温度を100℃とし、その後、磁束密度200mT、周波数100kHzの条件で連続的に励磁してコア温度が安定したところで、熱電対でコア温度を測定した。これにより、コアの上昇温度(ΔT)を測定した。
フェライトコアのコアロスを次のようにして測定した。すなわち、岩通計測製B−Hアナライザ(型式SY−8217)にて磁束密度200mT、周波数100kHzの条件で温度25〜150℃の範囲のコアロスを測定し、120℃におけるコアロスの値を求めた。
Ca含有量x(o)及びx(i)は組成分析から得た。フェライトコアを表面から深さ1.0〜1.5mmで切断しフェライトコア表面部とし、残部をフェライトコア内部とした。組成分析については、フェライトコア表面部、フェライトコア内部のそれぞれを乳鉢にて粉砕し粉末状にした後、蛍光X線分析装置を用いてガラスビード法によりCa量を測定した。
表1及び図4、5に測定結果を示す。図4、5に示すとおり、{x(o)−x(i)}とコアロスの間には特段の相関は認められず、コア温度上昇抑制の指標にはなり得ないが、実施例に係るフェライトコアはコア温度の上昇が十分に抑えられている。
Figure 0006079172
以上のように、本発明に係るフェライトコアは、MnZn系フェライトの磁心を連続して励磁した場合における温度上昇を抑制することに有用である。
10 フェライトコア(磁心)
11(中脚部)
12(コイル)

Claims (7)

  1. 少なくともFe、Mn、Zn及びCaを含有したフェライトコアであって、フェライトコア表面部のCa含有量(CaO換算)をx(o)[質量%]、フェライトコア内部のCa含有量(CaO換算)をx(i)[質量%]としたとき、{x(o)−x(i)}が0.001≦{x(o)−x(i)}≦0.01の範囲であり、かつ、
    それぞれ酸化物に換算したとき、51.0〜54.0モル%のFe 、32.5〜43.0モル%のMnO、及び、6.0〜14.0モル%のZnOからなる主成分と、該主成分の前記酸化物の合計質量1質量部に対し、前記x(o)は、220×10 −6 〜1100×10 −6 質量部に相当する量であることを特徴とする、フェライトコア。
  2. 請求項1に記載のフェライトコアであって、前記主成分の前記酸化物の合計質量1質量部に対し、SiOに換算すると50×10−6〜150×10−6質量部に相当する量のSi含有する、フェライトコア。
  3. 請求項1、又は、請求項2のいずれかに記載のフェライトコアであって、前記主成分の前記酸化物の合計質量1質量部に対し、Nbに換算すると100×10−6〜400×10−6質量部に相当する量のNbを含有する、フェライトコア。
  4. 請求項1〜請求項のいずれかに記載のフェライトコアであって、前記主成分の前記酸化物の合計質量1質量部に対し、Vに換算すると50×10−6〜400×10−6質量部に相当する量のVを含有する、フェライトコア。
  5. 請求項1〜請求項のいずれかに記載のフェライトコアであって、前記主成分の前記酸化物の合計質量1質量部に対し、Ta、ZrO、HfOに換算すると50×10−6〜400×10−6質量部に相当する量のTa、Zr、Hfを少なくとも1種以上含有する、フェライトコア。
  6. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のフェライトコアを用いたことを特徴とするトランス。
  7. 請求項に記載のフェライトコアを用いたことを特徴とする電源。
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