JP2007103676A - 圧電磁器組成物、積層型圧電素子及びその製造方法 - Google Patents

圧電磁器組成物、積層型圧電素子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Cuを内部電極に用いた場合の圧電歪特性低下を防止する。
【解決手段】Pb、Ti及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とし、主成分に対する第1副成分として、Ni、Mg、Cr、Co、Gaから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.5質量%以下(ただし、0は含まず。)含有し、Cuから構成される電極が設置されることを特徴とする圧電磁器組成物。主成分としては、(Pba-bMeb)[(Zn1/3Nb2/3xTiyZrz]O3(ただし、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。また、式中のMeは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種を表す。)で表される複合酸化物が好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、アクチュエータや圧電ブザー、発音体、センサ等の各種圧電素子の圧電体層に好適な圧電磁器組成物に関するものであり、特にCuを内部電極に用いた積層型圧電素子の圧電体層に好適な圧電磁気組成物、当該組成物を用いた積層型圧電素子に関する。
圧電素子に用いられる圧電磁器組成物としては、圧電特性、特に圧電歪定数が大きいことが要求される。この特性を満たす圧電磁器組成物として、例えばチタン酸鉛(PbTiO3)とジルコン酸鉛(PbZrO3)、及び亜鉛・ニオブ酸鉛[Pb(Zn1/3Nb2/3)O3]により構成される3元系の圧電磁器組成物や、前記3元系の圧電磁器組成物においてPbの一部をSr、Ba、Ca等で置換した圧電磁器組成物等が開発されている。
ただし、これら従来の圧電磁器組成物は、比較的高温で焼成する必要があり、また焼成が酸化性雰囲気下で行われるため、例えば内部電極を同時焼成する積層型圧電素子においては、高い融点を持ち、酸化性雰囲気下で焼成しても酸化されない貴金属(例えば、PtやPd等)を用いる必要があった。その結果、コスト増を招き、製造される積層型圧電素子の低価格化に支障をきたしている。
このような状況に対して本願出願人は、前記3元系の圧電磁器組成物に、Fe、Co、Ni及びCuから選ばれる少なくとも1種を含む第1副成分、及び、Sb、Nb及びTaから選ばれる少なくとも1種を含む第2副成分を加えることにより低温焼成を可能とし、内部電極にAg−Pd合金等の安価な材料を使用可能とすることを提案している(特許文献1を参照)。
特許文献1記載の発明は、前記3元系の圧電磁器組成物や、当該3元系の圧電磁器組成物においてPbの一部をSr、Ba、Ca等で置換した圧電磁器組成物に、Fe、Co、Ni及びCuから選ばれる少なくとも1種を含む第1副成分と、Sb、Nb及びTaから選ばれる少なくとも1種を含む第2副成分を加えることで、高い圧電歪定数を持ち、低温で焼成しても各種圧電特性を損なうことなく緻密化され、機械的強度が高められた圧電磁器組成物を実現し、この圧電磁器組成物で構成される圧電体層を有する圧電素子を提供するというものである。
特開2004−137106号公報
より安価な圧電素子を提供するために、例えばAg−Pd合金より安価なCuを内部電極の導電材料として使用することが考えられる。しかしながら、Cuを内部電極の導電材料とした場合、圧電素子の特性として重要な圧電歪特性が低下することが判明した。そこで本発明は、Cuを内部電極の導電材料として用いた場合にも圧電歪特性が低下することのない圧電磁器組成物を提供することを目的とする。また本発明は、そのような圧電磁器組成物を用いた積層型圧電素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、内部電極の導電材料としてCuを用いた場合の圧電歪特性の低下原因について調査したところ、内部電極から圧電体層へのCuの拡散が生じていることを確認した。したがって本発明者等は、この圧電体層へのCuの拡散が圧電歪特性低下の原因と理解している。そこで、本発明者は圧電磁器組成物に添加する副成分について検討を行ったところ、Ni、Mg、Cr、Co及びGaから選ばれる少なくとも1種を含む成分を副成分として微量添加することにより、Cuが圧電体層に拡散した場合においても高い圧電特性を維持することができる。そして驚くことに、これら副成分の添加量を特定することにより、Cuが拡散した方がCuの拡散がないよりも高い圧電歪特性を発現するという極めて特殊な効果が得られることを知見した。
本発明は以上の知見に基づくものであり、Pb、Ti及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とし、主成分に対する第1副成分として、Ni、Mg、Cr、Co、Gaから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.5質量%以下(ただし、0は含まず。)含有し、Cuから構成される電極が設置されることを特徴とする圧電磁器組成物である。
本発明の圧電磁器組成物において、主成分は、(Pba-bMeb)[(Zn1/3Nb2/3xTiyZrz]O3(ただし、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。また、式中のMeは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種を表す。)で表される複合酸化物であることが好ましい。この第1副成分としては、Mg及び/又はGaを酸化物換算で0.03〜0.4質量%含有することがより好ましい。
また本発明の圧電磁器組成物において、第2副成分として、Ta、Sb、Nb及びWから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で1.0質量%以下(ただし、0は含まず。)含有することが好ましい。
本発明は、上記圧電磁器組成物を用いた積層型圧電素子を提供する。この積層型圧電素子は、Pb、Ti及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とし、主成分に対する第1副成分として、Ni、Mg、Cr、Co、Gaから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.5質量%以下(ただし、0は含まず。)含有する複数の圧電体層と、複数の圧電体層間に形成されCuを含有する内部電極層と、
を備えることを特徴とする。この積層型圧電素子は、内部電極に含まれるCuが圧電体層に拡散した場合であっても、高い圧電歪特性を得ることができる。
本発明の積層型圧電素子において、上述した主成分の組成、第2副成分の含有を許容することができる。
また、以上の本発明による積層型圧電素子は、複合酸化物を含む圧電体層前駆体と、Cuを含む内部電極前駆体とが積層された積層体を得る工程と、この積層体を還元性雰囲気下で焼成する焼成工程と、を経ることにより製造することができる。還元性雰囲気下での焼成は、焼成温度800℃〜1200℃、酸素分圧1×10-10〜1×10-6気圧で行われることが好ましい。
以上説明したように、本発明によれば、Cuという安価な金属材料を内部電極の導電材料として用いた場合にも圧電歪特性、例えば電気機械結合係数krの高い圧電磁器組成物を提供することが可能である。したがって、本発明によれば、安価でありながら、圧電特性に優れた圧電素子、特に積層型圧電素子を提供することが可能である。特に本発明によれば、Cuが圧電体層に拡散すると圧電歪特性が向上するという特異な効果がある。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本発明により得られる積層型圧電素子1の構成例を示す断面図である。なお、図1はあくまで一例を示すものであって、本発明が図1の積層型圧電素子1に限定されないことはいうまでもない。 この積層型圧電素子1は、複数の圧電体層11と複数の内部電極層12とを交互に積層した積層体10を備えている。圧電体層11の一層当たりの厚さは例えば1〜200μm、好ましくは20〜150μm、さらに好ましくは50〜100μmとする。なお、圧電体層11の積層数は目標とする変位量に応じて決定される。
圧電体層11を構成する圧電磁器組成物は、Pb、Ti及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とする。この複合酸化物の例としては、例えばチタン酸鉛(PbTiO3)とジルコン酸鉛(PbZrO3)及び亜鉛・ニオブ酸鉛[Pb(Zn1/3Nb2/3)O3]により構成される3元系の複合酸化物や、前記3元系の複合酸化物においてPbの一部をSr、Ba、Ca等で置換した複合酸化物である。
具体的な組成としては、下記(1)式、あるいは(2)式で表される複合酸化物等を挙げることができる。なお、これら(1)式、あるいは(2)式において、酸素の組成は化学量論的に求めたものであり、実際の組成においては、化学量論組成からのずれは許容されるものとする。
Pba[(Zn1/3Nb2/3xTiyZrz]O3 ・・・(1)
(ただし、0.96≦a≦1.03、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。)
(Pba-bMeb)[(Zn1/3Nb2/3xTiyZrz]O3 ・・・(2)
(ただし、0.96≦a≦1.03、0<b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。また、式中のMeは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種を表す。)
前記複合酸化物は、いわゆるペロブスカイト構造を有しており、Pb及び(2)式における置換元素Meについては、ペロブスカイト構造のいわゆるAサイトに位置する。ZnやNb、Ti、Zrは、ペロブスカイト構造のいわゆるBサイトに位置する。
前記(1)式や(2)式で表される複合酸化物において、Aサイト元素の割合aは、0.96≦a≦1.03であることが好ましい。Aサイト元素の割合aが0.96未満であると、低温での焼成が困難になるおそれがある。逆に、Aサイト元素の割合aが1.03を超えると、得られる圧電磁器の密度が低下し、その結果、十分な圧電特性が得られなくなるおそれがあり、機械的強度も低下するおそれがある。さらに好ましいAサイト元素の割合aは0.97≦a≦1.02であり、より好ましいAサイト元素の割合aは0.98≦a≦1.01である。
前記(2)式で表される複合酸化物においては、Pbの一部を置換元素Me(Sr,Ca,Ba)で置換しているが、これにより圧電歪定数を大きくすることができる。ただし、置換元素Meの置換量bが多くなりすぎると、圧電歪定数が小さくなり、機械強度も低下する。また、キュリー温度も置換量bの増加に伴って低下する傾向にある。したがって、置換元素Meの置換量bは、0.1以下とすることが好ましい。さらに好ましい置換元素Meの置換量bは0.005≦b≦0.08であり、より好ましい置換元素Meの置換量bは0.007≦b≦0.05である。
一方、Bサイト元素のうち、ZnとNbの割合xは、0.05≦x≦0.15とすることが好ましい。前記割合xは焼成温度に影響を与え、この値が0.05未満であると焼成温度を低下させる効果が不足するおそれがある。逆に0.15を超えると、焼結性に影響を及ぼし、その結果、圧電歪定数が小さくなるとともに、機械的強度が低下するおそれがある。さらに好ましいZnとNbの割合xは
0.07≦x≦0.13であり、より好ましいZnとNbの割合xは0.08≦x≦0.12である。
Bサイト元素のうちTiの割合y及びZrの割合zは、圧電特性の観点から好ましい範囲が設定される。具体的には、Tiの割合yは、0.25≦y≦0.5であることが好ましく、Zrの割合zは、0.35≦z≦0.6であることが好ましい。前記範囲内に設定することで、モルフォトロピック相境界(MPB)付近において、大きな圧電歪定数を得ることができる。さらに好ましいTiの割合yは0.3≦y≦0.48であり、より好ましいTiの割合yは0.4≦y≦0.46である。また、さらに好ましいZrの割合zは0.37≦z≦0.55であり、より好ましいZrの割合zは0.4≦z≦0.5である。
本発明の圧電磁器組成物は、副成分(第1副成分)として、Ni、Mg、Cr、Co及びGaから選ばれる少なくとも1種を酸化物(NiO、MgO、CrO、CoO、Ga23)換算で0.5質量%以下(ただし、0は含まず。)含むことを特徴とする。この第1副成分を含むことにより、電極材料としてのCuが圧電体層に拡散しても、高い圧電歪特性を得ることができる。第1副成分の添加量は、酸化物換算で0.03〜0.4質量%が好ましく、0.08〜0.35質量%であることがより好ましい。第1副成分の中ではMg、Gaが高い圧電歪特性を得る上で好ましく、特にMgが好ましい。
本発明の圧電磁器組成物は、主成分の他、副成分の他にさらに他の副成分を含んでいてもよい。この場合、副成分(第2副成分)としては、Ta、Sb、Nb及びWから選ばれる少なくとも1種である。副成分を添加することで、圧電特性及び機械的強度を向上させることができる。ただし、これら副成分の含有量は、酸化物換算で1.0質量%以下とすることが好ましい。例えばTaの場合、Ta25換算で1.0質量%以下、Sbの場合、Sb23換算で1.0質量%以下、Nbの場合、Nb25換算で1.0質量%以下、Wの場合、WO3換算で1.0質量%以下である。この副成分の含有量が、酸化物換算で1.0質量%を超えると、焼結性が低下し、圧電特性が低下するおそれがある。さらに好ましい含有量は0.05〜0.8質量%、より好ましい含有量は0.1〜0.5質量%である。
内部電極層12は、導電材料を含有している。本発明は、この導電材料としてCuを用いる。導電材料としてCuを用いると、例えば1050℃以下の低温焼成に有益である。
複数の内部電極層12は例えば交互に逆方向に延長されており、その延長方向には内部電極層12と電気的に接続された一対の端子電極21、22がそれぞれ設けられている。端子電極21、22は、例えば、図示しないリード線を介して図示しない外部電源に対して電気的に接続される。
また、端子電極21、22は、例えばCuをスパッタリングすることにより形成されていてもよく、また端子電極用ペーストを焼き付けることにより形成されていてもよい。端子電極21、22の厚さは用途等に応じて適宜決定されるが、通常、10〜50μmである。
次に、積層型圧電素子1の好適な製造方法について図2をも参照しつつ説明する。図2は積層型圧電素子1の製造工程を示すフローチャートである。
まず、圧電体層11を得るための主成分の出発原料として、例えば、PbO、TiO2、ZrO2、ZnO及びNb25又は焼成によりこれら酸化物に変わり得る化合物;SrO、BaO及びCaOから選ばれる少なくとも一つの酸化物又は焼成によりこれら酸化物に変わり得る化合物等の粉末を用意し、秤量する(ステップS101)。出発原料としては、酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよい。これらの原料粉末は、通常、平均粒子径0.5〜10μm程度のものが用いられる。
必要に応じて副成分の出発原料をそれぞれ用意し、秤量する(ステップS101)。第1副成分の出発原料としては、NiO、MgO、CrO、CoO、Ga23から選ばれる少なくとも一つの酸化物を用いることができる。ただし、酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよい。また第2副成分の出発原料としては、Ta25、Sb23、Nb25及びWO3から選ばれる少なくとも一つの酸化物を用いることができる。酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよいことは上述の通りである。これら第2副成分は、焼結性を向上させ、焼成温度をより低くする効果を奏する。
続いて、主成分及び副成分の出発原料を例えばボールミルを用いて湿式粉砕・混合して、原料混合物とする(ステップ S102)。
なお、副成分の出発原料は、後述する仮焼成(ステップS103)の前に添加してもよいが、仮焼成後に添加するようにしてもよい。但し、仮焼成前に添加した方がより均質な圧電体層11を作製することができるので好ましい。仮焼成後に添加する場合には、副成分の出発原料には酸化物を用いることが好ましい。
次いで、原料混合物を乾燥し、例えば、750〜950℃の温度で1〜6時間にわたり仮焼成する(ステップS103)。この仮焼成は、大気中で行っても良く、また大気中よりも酸素分圧の高い雰囲気又は純酸素雰囲気で行ってもよい。仮焼成したのち、例えば、この仮焼成物をボールミルにて湿式粉砕・混合し、主成分及び必要に応じて副成分を含む仮焼成粉とする(ステップS104)。
次に、この仮焼成粉にバインダを加えて圧電体層用ペーストを作製する(ステップS105)。具体的には以下の通りである。はじめに、例えばボールミル等を用いて、湿式粉砕によりスラリを得る。このとき、スラリの溶媒として、水もしくはエタノールなどのアルコール、又は水とエタノールとの混合溶媒を用いることができる。湿式粉砕は、仮焼成粉の平均粒径が0.5〜2.0μm程度となるまで行うことが好ましい。
次いで、得られたスラリを有機ビヒクル中に分散させる。有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものであり、有機ビヒクルに用いられるバインダは、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、このとき用いられる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート成形法など、利用する方法に応じてテルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、MEK(メチルエチルケトン)、ターピネオール等の有機溶剤から適宜選択すればよい。
圧電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、仮焼成粉とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
また、内部電極層用ペーストを作製する(ステップS106)。
内部電極層用ペーストは、上述した各種導電材料あるいは焼成後に上述した導電材料となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上述した有機ビヒクルとを混練して調製される。
後述する焼成工程において、内部電極層用ペーストに含まれるCuが圧電体層用ペーストの焼成によって形成される圧電体層2中に拡散する。なお、この拡散に際しては、内部電極層用ペーストに含まれるCuの粒径が拡散量に影響を及ぼす。内部電極層用ペーストに含まれるCuの粒径が大きいと拡散量が多くなり、Cuの粒径が小さいと拡散量が少なくなる。圧電歪特性を低下させないためにはCuの拡散量は少ない方が望ましく、したがって内部電極層用ペーストに含まれるCuの粒径はできるだけ小さい方が望ましいことになる。
端子電極用ペーストも内部電極層用ペーストと同様にして作製する(ステップS107)。
以上では圧電体層用ペースト、内部電極層用ペースト及び端子電極用ペーストを順番に作製しているが、並行して作製してもよいし、逆の順番でもよいことは言うまでもない。
各ペーストの有機ビヒクルの含有量は、特に限定されず、通常の含有量、たとえば、バインダは5〜10質量%程度、溶剤は10〜50質量%程度とすればよい。また、各ペースト中には必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されてもよい。
次に、以上のペーストを用いて焼成の対象であるグリーンチップ(積層体)を作製する(ステップS108)。
印刷法を用いグリーンチップを作製する場合は、圧電体層用ペーストを、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の基板上に所定厚さで複数回印刷して、図1に示すように、グリーン状態の外側圧電体層11aを形成する。次に、このグリーン状態の外側圧電体層11aの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層(内部電極層前駆体)12aを形成する。次に、このグリーン状態の内部電極層12aの上に、前記同様に圧電体層用ペーストを所定厚さで複数回印刷して、グリーン状態の圧電体層(圧電体層前駆体)11bを形成する。次に、このグリーン状態の圧電体層11bの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層12bを形成する。グリーン状態の内部電極層12a、12b…は、対向して相異なる端部表面に露出するように形成する。以上の作業を所定回数繰り返し、最後に、グリーン状態の内部電極層12の上に、前記同様に圧電体層用ペーストを所定厚さで所定回数印刷して、グリーン状態の外側圧電体層11cを形成する。その後、加熱しながら加圧、圧着し、所定形状に切断してグリーンチップ(積層体)とする。
以上では、印刷法によりグリーンチップを作製する例を説明したが、シート成形法を用いてグリーンチップを作製することもできる。
次に、グリーンチップについて脱バインダ処理を行う(ステップS109)。
脱バインダ処理において、内部電極層前駆体中の導電材料によってその雰囲気を決定する必要がある。貴金属を導電材料として用いる場合には、大気中で行っても良く、また大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気又は純酸素雰囲気で行っても良い。Cuを導電材料として用いる場合には、酸化を考慮する必要があり、還元性雰囲気下での加熱を採用すべきである。一方で、脱バインダ処理において、圧電体層前駆体に含まれる酸化物、例えばPbOが還元されることを考慮する必要がある。例えば導電材料としてCuを用いた場合、CuとCu2Oの平衡酸素分圧(以下、単にCuの平衡酸素分圧)及びPbとPbOの平衡酸素分圧(以下、単にPbの平衡酸素分圧)に基づいて、いかなる還元性雰囲気を脱バインダ処理に適用するか設定することが好ましい。
脱バインダ処理の温度が300℃未満では脱バインダを円滑に行うことができず、650℃を超えても温度に見合う脱バインダの効果を得ることができずエネルギの浪費になる。また、脱バインダ処理の時間は、温度及び雰囲気によって定める必要があるが、0.5〜50時間の範囲で選定することができる。さらに、脱バインダ処理は、焼成と別個に独立して行うことができるし、焼成と連続的に行うことができる。焼成と連続的に行う場合には、焼成の昇温過程で脱バインダ処理を実行すればよい。
脱バインダ処理の後に、焼成(ステップS110)を行う。
積層型圧電素子1は、還元焼成条件において焼成することが好ましい。積層型圧電素子1の作製に際し、酸化性雰囲気中で焼成すると、例えば内部電極層12の電極材料として貴金属を用いる必要がある。これに対して、積層型圧電素子1は、還元焼成条件において焼成されたものであるので、本発明では安価なCuを内部電極層12に用いることができる。ここで、還元焼成条件としては、例えば、焼成温度800℃〜1200℃、酸素分圧1×10-10〜1×10-6気圧である。
焼成温度が800℃未満では焼成が十分に進行せず、また1200℃を超えるとCuの溶融が懸念される。好ましい焼成温度は850〜1100℃、さらに好ましい焼成温度は900〜1050℃である。
酸素分圧が1×10-10気圧未満では圧電体層前駆体に含まれる酸化物、例えばPbOが還元されて金属Pbとして析出し、最終的に得らる焼成体の圧電特性を低下させる恐れがあり、また1×10-6気圧を超えると電極材料であるCuの酸化が懸念される。好ましい酸素分圧は10-9〜10-7気圧、さらに好ましい酸素分圧は10-8〜10-7気圧である。
以上の工程を経て作製された積層体10は、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、前述した端子電極用ペーストを印刷又は焼き付けることにより端子電極21、22を形成する(ステップS111)。なお、印刷又は焼き付けの他に、スパッタリングすることにより端子電極21、22を形成することもできる。
以上により、図1に示した積層型圧電素子1を得ることができる。
内部電極層12にCuを用いて積層型圧電素子1を作製し、内部電極層12近傍の圧電体層11をTEM−EDS(field-emission type transmission electron microscope with energy dispersive X-ray spectroscopy)により解析を行った。図3にTEM像及びEDSによる点分析結果を示す。圧電体層11の三重点及び粒界にCuが存在しており、焼成過程で内部電極層12から拡散していることが確認された。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
<第1実施例>
第1副成分(MgO)の添加による効果の確認を行った実験を第1実施例として説明する。
本実験では、下記の主成分に対して、MgをMgO換算で表1に示す量となるように添加し、その効果を調べた。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
圧電磁器組成物は、次のようにして作製した。先ず、主成分の原料として、PbO粉末、SrCO3粉末、ZnO粉末、Nb25粉末、TiO2粉末、ZrO2粉末を用意し、前記主成分の組成となるように秤量した。また、Mgの添加種としてMgOを用意し、表1に示す含有量となるように主成分の母組成に添加した。次に、ボールミルを用いてこれら原料を16時間湿式混合し、大気中において700〜900℃で2時間仮焼した。
得られた仮焼物を微粉砕した後、ボールミルを用いて16時間湿式粉砕した。これを乾燥した後、バインダとしてアクリル系樹脂を加えて造粒し、1軸プレス成形機を用いて約445MPaの圧力で直径17mm、厚さ1mmの円板状に成形した。成形した後、粒径1.0μmのCu粉末を含むCuペーストを両面に印刷した。得られたペレットに熱処理を施してバインダを揮発させ、低酸素還元雰囲気中(酸素分圧1×10-10〜1×10-6気圧)において950℃で8時間焼成した。得られた焼結体をスライス加工及びラップ加工により厚さ0.6mmの円板状とし、印刷したCuペーストを除去するとともに特性評価が可能な形状に加工した。得られたサンプルの両面に銀ペーストを印刷して350℃で焼き付け、120℃のシリコーンオイル中で3kVの電界を15分間印加し、分極処理を行った。また、Cuペーストの印刷、バインダ揮発のための熱処理を行わない以外は上記と同様にして分極処理まで行った試料を作製した。
作製した6種類の試料について、電気機械結合係数kr(%)を測定した。電気機械結合係数krの測定は、インピーダンスアナライザー(ヒューレット・パッカード社製、HP4194A)を用いて行った。結果を表1に示す。また、図4にMg(MgO)の添加量と電気機械結合係数kr(%)の関係を示す。
Figure 2007103676
表1及び図4に示すように、Cuペーストの印刷を行わない場合にはMgOの添加により電気機械結合係数krは低下するのに対して、Cuペーストの印刷を行なった場合にはMgOの添加により電気機械結合係数krが向上する。したがって、Cuを内部電極の導電材料として用いた積層型圧電素子を製造した場合に、前述したCuの圧電体層への拡散が起こったとしても、MgOを添加することにより電気機械結合係数krを向上できることが容易に理解される。したがって、本発明によれば、電極材料としてCuを使用することによる低コスト化を達成できることに加えて、電気機械結合係数krを向上できる。
図5に、Cuペースト印刷が施された試料(左側)及びMgOを0.1質量%添加し、かつCuペースト印刷が施された試料(右側)のSEM像を示す。両者の比較より、Cu存在下においてもMgOの添加により粒成長が促進され電気機械結合係数krが高くなったものと解される。
<第2実施例>
下記の主成分に対して、a及びMgをMgO換算で表2に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表2に示す。
主成分:(Pba-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表2に示すように、Cuペースト印刷を行った試料において、aが0.96〜1.03の範囲にあると60%以上の電気機械結合係数krを得ることができる。
<第3実施例>
下記の主成分に対して、b及びMgをMgO換算で表3に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表3に示す。
主成分:(Pb0.995-bSrb)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表3に示すように、上記主成分のPbをSrで置換することにより電気機械結合係数krが向上すること、Srの置換量(モル比)は0.1以下であることが好ましいことがわかる。
<第4実施例>
下記の主成分に対して、Meを表4に示す元素とし、かつ表4に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表4に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Me0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表4に示すように、Pbの置換元素としてCa又はBaを用いた場合にも、Srと同様にMgO含有の効果である電気機械結合係数kr向上の効果を享受することができる。
<第5実施例>
下記の主成分に対して、x,y及びzを表5に示す値とし、かつMgをMgO換算で表5に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表5に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/3xTiyZrz]O3
Figure 2007103676
表5から明らかなように、Bサイト元素のx、y、zを変えた場合にも、MgOを添加することによる効果が得られ、Cuペーストを印刷した方が電気機械結合係数krが高くなることがわかる。ただし、x、y、zが各々0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6の範囲から外れると、電気機械結合係数kr(%)が小さくなってしまう。
<第6実施例>
下記の主成分に対して、副成分としてMgをMgO換算で、またTaをTa23換算で表6に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表6に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表6に示すように、副成分(第2副成分)としてTa23を添加することにより電気機械結合係数krを向上できるとともに、MgOを添加することによる効果が得られ、Cuペーストを印刷した場合に電気機械結合係数krが高くなることがわかる。ただし、Ta23の添加量が多くなりすぎると電気機械結合係数krは低下してしまう。
<第7実施例>
下記の主成分に対して、表7に示す量となるように副成分(第1副成分、第2副成分)を添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表7に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表7に示すように、副成分(第2副成分)としてSb23、Nb25、WO3を添加することにより電気機械結合係数krを向上できるとともに、MgOを添加することによる効果が得られ、Cuペーストを印刷した場合に電気機械結合係数krが高くなることがわかる。ただし、これら副成分の添加量が多くなりすぎると電気機械結合係数krは低下してしまう。
<第8実施例>
下記の主成分に対して、MgOの替わりにCoを表8に示すCoO換算量だけ添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表8に示す。また、図6にCo(CoO)の添加量と電気機械結合係数kr(%)の関係を示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表8及び図6に示すように、Cuペーストの印刷を行わない場合にはCoOの添加により電気機械結合係数krは低下するのに対して、Cuペーストの印刷を行なった場合にはCoOの添加により電気機械結合係数krが向上する。したがって、Cuを内部電極の導電材料として用いた積層型圧電素子を製造した場合に、前述したCuの圧電体層への拡散が起こったとしても、CoOを添加することにより電気機械結合係数krが向上することが容易に理解することができる。したがって、本発明によれば、電極材料としてCuを使用することによる低コスト化を達成できることに加えて、電気機械結合係数krを向上できる。
<第9実施例>
下記の主成分に対して、a及びCoをCoO換算で表9に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表9に示す。
主成分:(Pba-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表9に示すように、Cuペースト印刷を行った試料においても、aが0.96〜1.03の範囲にあると60%以上の電気機械結合係数krを得ることができる。
<第10実施例>
下記の主成分に対して、b及びCoをCoO換算で表10に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表10に示す。
主成分:(Pb0.995-bSrb)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表10に示すように、上記主成分のPbをSrで置換することにより電気機械結合係数krが向上すること、Srの置換量(モル比)は0.1以下であることが好ましいことがわかる。
<第11実施例>
下記の主成分に対して、Meを表11に示す元素とし、かつMgをMgO換算で表11に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表11に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Me0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表11に示すように、Pbの置換元素としてCa又はBaを用いた場合にも、Srと同様にCoO含有の効果である電気機械結合係数kr向上の効果を享受することができる。
<第12実施例>
下記の主成分に対して、x,y及びzを表12に示す値とし、かつCoをCoO換算で表12に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表12に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/3xTiyZrz]O3
Figure 2007103676
表12から明らかなように、Bサイト元素のx、y、zを変えた場合にも、CoOを添加することによる効果が得られ、Cuペーストを印刷した場合の方が電気機械結合係数krが高くなることがわかる。ただし、x、y、zが各々の範囲から外れると、電気機械結合係数kr(%)が小さくなってしまう。
<第13実施例>
下記の主成分に対して、表13に示す量となるように副成分(第1副成分、第2副成分)を添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表13に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表13に示すように、副成分(第2副成分)としてTa23を添加することにより電気機械結合係数krを向上できるとともに、CoOを添加することによる効果が得られ、Cuペーストを印刷した場合に電気機械結合係数krが高くなることがわかる。ただし、Ta23の添加量が多くなりすぎると電気機械結合係数krは低下してしまう。
<第14実施例>
下記の主成分に対して、表14に示す量となるように副成分(第1副成分、第2副成分)を添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表14に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表14に示すように、副成分(第2副成分)としてSb23、Nb25、WO3を添加することにより電気機械結合係数krを向上できるとともに、CoOを添加することによる効果が得られ、Cuペーストを印刷した場合に電気機械結合係数krが高くなることがわかる。ただし、これら副成分の添加量が多くなりすぎると電気機械結合係数krは低下してしまう。
<第15実施例>
下記の主成分に対して、MgOの替わりにGaを表15に示すGa23換算量だけ添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表15に示す。また、図7にGa(Ga23)の添加量と電気機械結合係数kr(%)の関係を示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表15及び図7に示すように、Cuペーストの印刷を行わない場合にはGa23の添加により電気機械結合係数krは低下するのに対して、Cuペーストの印刷を行なった場合にはGa23の添加により電気機械結合係数krが向上する。したがって、Cuを内部電極の導電材料として用いた積層型圧電素子を製造した場合に、前述したCuの圧電体層への拡散が起こったとしても、Ga23を添加することにより電気機械結合係数krが向上することが容易に理解することができる。したがって、本発明によれば、電極材料としてCuを使用することによる低コスト化を達成できることに加えて、電気機械結合係数krを向上できる。
<第16実施例>
下記の主成分に対して、a及びGaをGa23換算で表16に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表16に示す。
主成分:(Pba-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表16に示すように、Cuペースト印刷を行った試料においても、aが0.96〜1.03の範囲にあると60%近傍又はそれ以上の電気機械結合係数krを得ることができる。
<第17実施例>
下記の主成分に対して、b及びGaをGa23換算で表17に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表17に示す。
主成分:(Pb0.995-bSrb)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表17に示すように、上記主成分のPbをSrで置換することにより電気機械結合係数krが向上すること、Srの置換量(モル比)は0.1以下であることが好ましいことがわかる。
<第18実施例>
下記の主成分に対して、Meを表18に示す元素とし、かつGaをGa23換算で表18に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表18に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Me0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表18に示すように、Pbの置換元素としてCa又はBaを用いた場合にも、Srと同様にCoO含有の効果である電気機械結合係数kr向上の効果を享受することができる。
<第19実施例>
下記の主成分に対して、x,y及びzを表19に示す値とし、かつCoをCoO換算で表19に示す量となるように添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表19に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/3xTiyZrz]O3
Figure 2007103676
表19から明らかなように、Bサイト元素のx、y、zを変えた場合にも、CoOを添加することによる効果が得られ、Cuペーストを印刷すると電気機械結合係数krが高くなることがわかる。ただし、x、y、zが各々の範囲から外れると、電気機械結合係数kr(%)が小さくなってしまう。
<第20実施例>
下記の主成分に対して、表20に示す量となるように副成分(第1副成分、第2副成分)を添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表20に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表20に示すように、副成分(第2副成分)としてTa23を添加することにより電気機械結合係数krを向上できるとともに、CoOを添加することによる効果が得られ、Cuペーストを印刷した場合に電気機械結合係数krが高くなることがわかる。ただし、Ta23の添加量が多くなりすぎると電気機械結合係数krは低下してしまう。
<第21実施例>
下記の主成分に対して、表21に示す量となるように副成分(第1副成分、第2副成分)を添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表21に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表21に示すように、副成分(第2副成分)としてSb23、Nb25、WO3を添加することにより電気機械結合係数krを向上できるとともに、Ga23を添加することによる効果が得られ、Cuペーストを印刷した場合に電気機械結合係数krが高くなることがわかる。ただし、これら副成分の添加量が多くなりすぎると電気機械結合係数krは低下してしまう。
<第22実施例>
下記の主成分に対して、MgOの替わりに表22に示す副成分を表22に示す量だけ添加した以外は、第1実施例と同様にして試料を作製した。得られた試料について、第1実施例と同様にして電気機械結合係数krを測定した。その結果を表22に示す。
主成分:(Pb0.995-0.03Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3
Figure 2007103676
表22に示すように、NiO及びCrOもMgO、CoOと同様に、Cuペーストの印刷を行なった場合に電気機械結合係数krが向上する。したがって、Cuを内部電極の導電材料として用いた積層型圧電素子を製造した場合に、前述したCuの圧電体層への拡散が起こったとしても、NiO、CrOを添加することにより電気機械結合係数krが向上することが容易に理解することができる。したがって、本発明によれば、電極材料としてCuを使用することによる低コスト化を達成できることに加えて、電気機械結合係数krを向上できる。
<第23実施例>
表1記載の試料のうち、MgをMgOに換算した含有量が0質量%の試料(比較例)と、MgをMgOに換算した含有量が0.1質量%の試料(実施例)に対応する焼成前粉末を用い、図1に示したような積層型の圧電素子を作製した。内部電極層12に挟まれた圧電体層11の厚さは25μm、その積層数は100層とした。積層体10の寸法は縦4mm×横4mmである。内部電極層12には実施例1で用いたものと同じ内部電極用Cuペーストを用い、本発明が推奨する範囲内である還元性雰囲気での焼成を行った。得られた圧電素子について43Vの電圧を印加したときの変位量を測定した。その結果を表23に示す。
Figure 2007103676
本実施の形態における積層型圧電素子の一構成例を示す図である。 本実施の形態における積層型圧電素子の製造手順を示すフローチャートである。 Cuを内部電極層に用いて得られた積層型圧電素子の、内部電極層近傍の圧電体層のTEM像及びEDSによる点分析結果を示す図である。 Mg(MgO)の添加量と電気機械結合係数kr(%)の関係を示すグラフである。 MgOを0.1質量%添加し、かつCuペースト印刷が施された試料のSEM像を示す。 Co(CoO)の添加量と電気機械結合係数kr(%)の関係を示すグラフである。 Ga(Ga23)の添加量と電気機械結合係数kr(%)の関係を示すグラフである。
符号の説明
1…積層型圧電素子、10…積層体、11…圧電体層、12…内部電極層、21,22…端子電極

Claims (10)

  1. Pb、Ti及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とし、
    前記主成分に対する第1副成分として、Ni、Mg、Cr、Co、Gaから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.5質量%以下(ただし、0は含まず。)含有し、
    Cuから構成される電極が設置されることを特徴とする圧電磁器組成物。
  2. 前記主成分が、
    (Pba-bMeb)[(Zn1/3Nb2/3xTiyZrz]O3
    (ただし、
    0.96≦a≦1.03、
    0≦b≦0.1、
    0.05≦x≦0.15、
    0.25≦y≦0.5、
    0.35≦z≦0.6、
    x+y+z=1である。
    Meは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種を表す。)で表される複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の圧電磁器組成物。
  3. 第2副成分として、Ta、Sb、Nb及びWから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で1.0質量%以下(ただし、0は含まず。)含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電磁器組成物。
  4. 前記第1副成分が、Mg及び/又はGaを酸化物換算で0.03〜0.4質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電磁器組成物。
  5. Pb、Ti及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とし、前記主成分に対する第1副成分として、Ni、Mg、Cr、Co、Gaから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.5質量%以下(ただし、0は含まず。)含有する複数の圧電体層と、
    複数の前記圧電体層間に形成されCuを導電材料として含有する内部電極層と、
    を備えることを特徴とする積層型圧電素子。
  6. 前記主成分が、
    (Pba-bMeb)[(Zn1/3Nb2/3xTiyZrz]O3
    (ただし、
    0.96≦a≦1.03、
    0≦b≦0.1、
    0.05≦x≦0.15、
    0.25≦y≦0.5、
    0.35≦z≦0.6、
    x+y+z=1、
    Meは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種)で表される複合酸化物から構成されることを特徴とする請求項5に記載の積層型圧電素子。
  7. 第2副成分として、Ta、Sb、Nb及びWから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で1.0質量%以下(ただし、0は含まず。)含有することを特徴とする請求項5又は6に記載の積層型圧電素子。
  8. 前記圧電体層に、前記内部電極層に含まれるCuが拡散していることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  9. Pb、Ti及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とし、前記主成分に対する第1副成分として、Ni、Mg、Cr、Co、Gaから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で0.5質量%以下(ただし、0は含まず。)含有する複数の圧電体層と、複数の前記圧電体層間に形成されCuを導電材料として含有する内部電極層と、を備える積層型圧電素子の製造方法であって、
    前記複合酸化物を含む圧電体層前駆体と、Cuを導電材料として含有する内部電極前駆体とが積層された積層体を得る工程と、
    前記積層体を還元性雰囲気下で焼成する焼成工程と、を含むことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  10. 前記還元性雰囲気下の焼成は、
    焼成温度800℃〜1200℃、
    酸素分圧1×10-10〜1×10-6気圧で行われることを特徴とする請求項9に記載の積層型圧電素子の製造方法。
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