JP2007091604A - クロロエチレンカーボネートの製造方法 - Google Patents

クロロエチレンカーボネートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】副生成物のうち特に難分離性不純物の生成を抑制することによって、ビニレンカーボネート(VC)の製造の中間体として好適なクロロエチレンカーボネート(CEC)を提供する。
【解決手段】光照射下、エチレンカーボネート(EC)と塩素ガスとを反応させるクロロエチレンカーボネートの製造方法において、1モルの塩素ガスに対して0.2〜2モルの割合の不活性ガスを希釈・混合し、この混合ガスを光照射下のエチレンカーボネートを含む反応系に導入することを特徴とするクロロエチレンカーボネートの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、エチレンカーボネート(EC)を光塩素化するクロロエチレンカーボネート(CEC)の製造方法に関し、特に蒸留精製によっても分離・除去することの難しい不純物の少ないCECの製造方法に関する。
CECはECを塩素化することによって合成される。
Figure 2007091604

CECはビニレンカーボネート(VC)を製造する際の原料となる物質である。
CECを脱塩化水素化することによって合成されるVCは、リチウムイオン二次電池電解液の溶媒および添加剤として有用な物質であり、電池性能を向上させるためには高純度化されたVCが求められている。この用途には、特に塩素を含有する不純物が注目され、全塩素含有量が100ppm以下、好ましくは20ppm以下の高純度VCが求められている。純度の低いCECを使用してVCを製造した場合、VCの純度も低下させることにつながり、高純度VCを合成することは困難である。よって、CECの段階で不純物の少ない製品が求められている。
ECを塩素化することによるCECの製造方法として、非特許文献1には、光照射下において塩素ガスによる光塩素化反応での製造方法が記載されている。また、特許文献1にはラジカル開始剤の共存下で塩化スルフリル等の塩素化剤を用いる製造方法、特許文献2にはAIBN存在下にハロゲン化スルフリルを塩素化剤とする製造方法、特許文献3には紫外線(UV)照射下にハロゲン化スルフリルを塩素化剤とする製造方法が記載されている。
一般的な光塩素化反応の例として、非特許文献2及び非特許文献3には、光塩素化反応が液相反応である機構が記載されている。この場合、反応液に溶解した塩素ガスが光によって活性化され反応に使用される。
特開平11‐171882号公報 特表2002‐529461号公報 特表2002‐529460号公報 J.Am.Chem.Soc.,75,1263−1264(1953) Chem.Process Eng.,45,560−567(1964) 化学工学論文集,7(2),164−170(1981)
しかしながら、これらのいずれの方法でECの塩素化を行った場合でも、得られるCECには蒸留精製によっても分離・除去することの難しい不純物(難分離性不純物)が少なからず含まれているのが現状である。
原料であるECや、逐次反応の過塩素化で生成するジクロロエチレンカーボネート(DCEC)等については、主成分であるCECに対して比較的沸点が離れており(飽和蒸気圧が離れており)蒸留精製の工程により比較的容易に分離除去可能である。これに対して、塩素化反応で生成する副生成物には主成分であるCECと沸点の近い(飽和蒸気圧が近接した)化合物が複数ピーク検出されており、蒸留精製を行った場合でもCECの純度を高めることは難しい。純度を良くするためこれらの副生成物を除去しようとすると収率が低くなってしまう。
ここで、分子内に塩素原子を持つ難分離性不純物は、所定の条件で得られるGCクロマトグラムにおいてCECのピーク付近、特にピークの後ろに検出される成分群であり、CECを脱HCl化してVCを合成する場合の品質悪化を招き易いものである。VC製造の中間体として好適なCECを得る為には、塩素化反応の段階で副生成物、特にこの難分離性不純物の生成をできるかぎり抑制する必要がある。
そこで、本発明は、以上の技術的課題を解決するためになされたものであって、副生成物のうち特に難分離性不純物の生成を抑制することができ、ビニレンカーボネート(VC)の製造の中間体として好適なクロロエチレンカーボネート(CEC)の製造方法の提供を目的とする。
本願発明者等は、このような課題を解決するため鋭意検討の結果、光照射下で塩素ガスによるECの塩素化反応を行うCECの製造方法において、塩素ガスを窒素ガス等による不活性ガスで希釈してECを含む反応系に吹き込むことによって、光照射下の塩素化反応時に生成する副生成物のうち、特に、蒸留精製によって分離することが難しい不純物が大きく減少することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、光照射下、エチレンカーボネートと塩素ガスとを反応させるクロロエチレンカーボネートの製造方法において、塩素ガスを不活性ガスで希釈・混合し、この混合ガスを光照射下のエチレンカーボネートを含む反応系に導入することを特徴とするものである。
液体の被塩素化物、あるいは溶媒に希釈した被塩素化物に塩素ガスをバブリングする一般的な光塩素化反応は液相反応であることが知られているが、液体に溶存した塩素ガスが反応に使用されるのであれば、反応ガスである塩素ガスを不活性ガスで希釈しても、反応性に影響を与えないと考えられる。
本発明のクロロエチレンカーボネートの製造方法において、反応生成物中の不純物量が減少する理由としては、(1)導入する混合ガス中の塩素ガス濃度が薄くなっているため、不活性ガスに希釈された塩素ガスが原料液と接した気液界面近傍において塩素化反応による局部的な発熱が抑えられること、(2)排出ガス量が増えるため、排出ガス側に与えられる熱量が増え、反応部分の発熱も分散され、これらによっても局部的な発熱が抑えられること、等が関係していると考えられる。
すなわち、塩素ガスを不活性ガスで希釈・混合し、この混合ガスを光照射下のエチレンカーボネートを含む反応系に導入することにより、蒸留によって容易に精製可能な、クロロエチレンカーボネートを高収率かつ高選択的に製造することができるものである。
クロロエチレンカーボネートの製造方法において、反応系に導入する混合ガスは、1molの塩素ガスに対して0.2〜2molの割合の不活性ガスを希釈・混合されたものであることが好ましい。
本発明のクロロエチレンカーボネートの製造方法において、反応系に導入する塩素ガス1molに対する希釈・混合する不活性ガスのmol量の割合(以下、「不活性ガス混合率」と表現することがある。)が低いと難分離性不純物の低減効果が少ない。したがって、反応系に導入する混合ガスは、不活性ガス混合率が0.2以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。
一方、不活性ガス混合率が2.0を超えても難分離性不純物の低減効果は変わらない。したがって、反応系に導入する混合ガスは、不活性ガス混合率が2.0以下であることが好ましい。実際の製造装置において不活性ガスの使用量を過剰にすることは、その不活性ガス自体が費用の上で無駄であることに加えて、排ガス量が増えることになるので、排ガスに同伴する反応液中の原料や生成物の量(同伴量)が増え、そのままでは原単位の悪化に繋がる。更に、これら原料や生成物を回収除去するためには、回収装置が大きくなり、その建設費用及び保守費用の面からも不経済である。したがって、反応系に導入する混合ガスは、不活性ガス混合率が1.0以下であることがより好ましい。
希釈・混合する不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス等を例示することができ、中でも費用の理由から窒素ガスが好ましい。
本発明のクロロエチレンカーボネートの製造方法においては、塩素ガスを不活性ガスで希釈・混合することに加えて、エチレンカーボネートに対して0.1〜7.0mol倍の特定物質を共存させることが好ましく、ここで、特定物質としては、炭化水素系塩素化合物、特に、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の芳香族塩化物が好ましい。
光塩素化の為の光照射に用いる光源としては、波長ピークが313、365nm等の紫外線領域にあれば特に制限しないが高圧水銀灯などを用いることができる。内部照射型の反応容器が光の効率上好ましいが、外部照射型の反応容器でもその効果を得ることができる。
光塩素化の反応温度は、原料であるECの融点(36〜38℃)以上である必要があり、低く設定すると塩素化反応速度が低下(反応性そのものが低下)することから50℃以上が好ましい。反応温度が高いと副生成物の生成量が増大することから80℃以下が好ましく70℃以下がより好ましい。
光塩素化反応の終点についての考え方としては、後工程での不純物除去を考慮して、特定不純物の含有量(濃度)を目安に反応を終了させることが好ましい。
たとえば、光塩素化反応の段階で難分離性不純物の生成を抑え、その含有量を少なくしておくとの本発明の趣旨から、除去にあまり負担のかからないよう、反応の終点における難分離性不純物の含有量は、2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。
DCECは蒸留で容易に分離できるので、除去の観点からは量がいくらあってもかまわない。しかし、DCECの含有量が多すぎると蒸留除去量及びこれに同伴して留去される主成分量が増え、反応の進行に伴う多様な不純物成分量が増えることにもなる。このため、反応の終点におけるDCECの含有量は8%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。
実際には、主成分であるCECの生成量がある程度確保できて、DCECと難分離性不純物のどちらかが目安の含有量(濃度)に達する塩素化度をもって反応を終了させることができる。ここで、反応の終点における塩素化度は、0.70〜1.00であることが好ましく、0.75〜0.90であることがより好ましい。
本発明によれば、エチレンカーボネート(EC)を光塩素化してクロロエチレンカーボネート(CEC)を製造するに際して、難分離性不純物の生成量を大幅に低減することができ、CECの精製コストの低廉化とともに蒸留精製後のCECの純度を容易に改善できる。更に、本発明の製造方法により得られるCECをビニレンカーボネート(VC)製造の中間体として用いた場合には、VCの精製コストをも低廉化できると期待される。
本発明のクロロエチレンカーボネートの製造方法においては、塩素ガスを不活性ガスで希釈・混合することに加えて、エチレンカーボネートに対して0.1〜7.0mol倍の特定物質を共存させることが好ましく、ここで、特定物質としては、炭化水素系塩素化合物、特に、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の芳香族塩化物が好ましい。
以下に示す実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はここに開示の実施例により限定されるものではない。
<実施例1>
塩素−窒素混合ガスの導入口、熱電対、コンデンサーを介して排ガス除去装置に繋がる排気口等を備えた反応容器に、所定量のECを秤量し、系内を窒素置換した後、ECを60℃まで加熱したところで、この反応容器から15cm離れた位置から200W高圧水銀灯を点灯して光照射した。反応温度60℃を保つように、所定量の塩素−窒素混合ガスを供給し反応を開始した。反応は、DCECの含有量が6.0%程度となるところ、もしくは難分離性不純物の含有量が2.0%以下となるところを終点とし、塩素−窒素混合ガスの供給を停止させ、反応終了とした。


Figure 2007091604

反応液のサンプリングを反応開始から2h毎に実施して、ガスクロマトグラフィー(装置:GC14B(島津製作所社製)、カラム:TC−1701、(0.25mmIDX30m、膜厚1μm、GLサイエンス社製)、検出器:FlD、INJ(気化室温度):200℃、DET(検出器温度):200℃、カラム温度:140℃を5min維持し、1℃/minの昇温速度で150℃まで昇温し、更に5℃/minの昇温速度で250℃まで昇温し、その後250℃を維持する。)による定量分析を行うと共に、GC−MS分析によりEC、CEC及びDCECの各ピークを特定した。各反応液のGCクロマトグラムにおいて、更に、CECのピーク以降に、分子内に少なくとも塩素原子を持つ難分離性不純物が複数検出された。各成分の保持時間は、DCEC:6.6min、EC:11.4min、CEC:13.6minであり、難分離性不純物は13.6minを越えて30minまでに検出される成分の合計である。実施例1の定量分析結果を表2に示す。16h後の反応液のGC分析結果は、EC:18.0%、CEC:74.5%、DCEC:6.1%、保持時間でCEC以降に検出された難分離性不純物は合計で1.05%、また、塩素化度は0.88であった。
塩素化度は塩素がどれだけ置換されたかを評価する数値であって、塩素化度が1の場合、原料と同mol量の塩素が置換された状態であることを示す。以下の評価においては、EC=0、CEC=1、DCEC=2、CEC以降に検出された難分離性不純物=1、その他=1とし、各時刻にサンプリングした反応液の塩素化度を次式にしたがって求めた。ただし、組成量の値はGC検出強度比をそのまま利用した。
塩素化度={(EC組成量(%))×0+(CEC組成量(%))×1+(DCEC組成量(%))×2+(CEC以降に検出された難分離性不純物量(%))×1+(その他組成量(%))×1}/100


Figure 2007091604

このようにして得られた反応液229.9gについて、理論段数21段の蒸留塔を用いて還流比5の条件で減圧下に精製蒸留を行い、112〜116℃/17〜20mmHgの精留分123.0gを得た。蒸留収率はCEC基準で71.3%、CECの純度は99.20%、難分離性不純物の含有量は0.16%であった。
<実施例2>
表1に示すように、窒素ガスの供給量を塩素ガスに対し1mol倍量にして(窒素ガス混合率:1.0)、それ以外は実施例1と同様に光塩素化反応を実施した。実施例2のGC分析結果を表3に示す。


Figure 2007091604

<実施例3>
表1に示すように、窒素ガスの供給量を塩素ガスに対し2mol倍量にして(窒素ガス混合率:2.0)、それ以外は実施例1と同様に光塩素化反応を実施した。実施例3のGC分析結果を表4に示す。
Figure 2007091604

<実施例4>
表1に示すように、窒素ガスの供給量を塩素ガスに対し5mol倍量にして(窒素ガス混合率:5.0)、それ以外は実施例1と同様に光塩素化反応を実施した。なお、実施例4では反応を24時間行い、その間、サンプリングを2時間毎に行った。実施例4のGC分析結果を表5に示す。
Figure 2007091604

<実施例5>
表1に示すように、窒素ガスの供給量を塩素ガスに対し0.5mol倍量にした(窒素ガス混合率:0.5)。また、原料であるエチレンカーボネートに対して0.65mol倍のモノクロロベンゼン(147.0g)を共存させた。それ以外は、実施例1と同様に光塩素化反応を実施した。実施例5のGC分析結果を表6に示す。


Figure 2007091604

<比較例1>
窒素ガスによる希釈を行わず、塩素ガスのみを供給し(窒素ガス混合率:0)、反応条件を表1のように変えた以外は、実施例1と同様に光塩素化反応を実施した。比較例1のGC分析結果を表7に示す。
Figure 2007091604

このようにして得られた反応液209.5gについて、理論段数21段の蒸留塔を用いて還流比5の条件で減圧下に精製蒸留を行い、112〜116℃/17〜20mmHgの精留分82.0gを得た。蒸留収率はCEC基準で70.7%、CECの純度は98.88%、難分離性不純物の含有量は0.51%であった。
実施例1〜4及び比較例1の結果について、窒素ガス混合率をパラメータとして塩素化度に対する難分離性不純物生成量の関係を図1に示した。また、図2に、図1の塩素化度0.6における窒素ガス混合率と難分離性不純物の生成量との関係を示した。
窒素ガス混合率に対する難分灘性不純物の生成量の違いとして、図1及び図2に示すとおり、塩素ガス1molに対し、窒素ガス0.5mol倍の希釈を行うと、窒素ガスを用いない場合に比べ、難分離性不純物の生成量がほぼ半減することがわかった。また、窒素ガス混合率を上げていくことで、さらに難分離性不純物の生成量が減少する傾向がみられた。
しかし、2mol倍と5mol倍での実験結果にほとんど違いは無く、窒素ガスによる希釈効果は、窒素ガス混合率が塩素ガスに対して2mol倍を超えると、それ以上ではほとんど変わらなかった。窒素ガス混合率を増加させた場合、塩素反応速度が低下する傾向にあるため、実機を想定した条件では、塩素ガスに対して窒素ガス0.5〜1mol倍程度の希釈がより望ましいと考えられる。
図1は、窒素ガス混合率をパラメータとして塩素化度に対する難分離性不純物生成量の関係を示したグラフである。 図2は、図1の塩素化度0.6における窒素ガス混合率と難分離性不純物生成量との関係を示したグラフである。

Claims (7)

  1. 光照射下、エチレンカーボネートと塩素ガスとを反応させるクロロエチレンカーボネートの製造方法において、塩素ガスを不活性ガスで希釈・混合し、この混合ガスを光照射下のエチレンカーボネートを含む反応系に導入することを特徴とするクロロエチレンカーボネートの製造方法。
  2. 1モルの塩素ガスに対して0.2〜2モルの割合の不活性ガスを希釈・混合し、この混合ガスを光照射下のエチレンカーボネートを含む反応系に導入する、請求項1記載のクロロエチレンカーボネートの製造方法。
  3. 前記不活性ガスが窒素ガスである、請求項1又は2記載のクロロエチレンカーボネートの製造方法。
  4. 前記反応系がエチレンカーボネートと特定物質とを共存させた系である、請求項1乃至3のいずれかに記載のクロロエチレンカーボネートの製造方法。
  5. 前記反応系がエチレンカーボネートとこれに対して0.1〜7.0倍モルの特定物質とを共存させた系である、請求項4記載のクロロエチレンカーボネートの製造方法。
  6. 前記特定物質が炭化水素系塩素化合物である、請求項4又は5記載のクロロエチレンカーボネートの製造方法。
  7. 前記炭化水素系塩素化合物が芳香族塩化物である、請求項6記載のクロロエチレンカーボネートの製造方法。
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