JP2007086538A - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 定着ロール611と張架ロール612と張架ロール613とによって定着ベルト610が張架された定着ベルトモジュール61と、定着ベルト610を介して定着ロール611を押圧するように配置された加圧ロール62と、加圧ロール62を冷却する第1冷却部材90および第2冷却部材100とを備えている。
【選択図】 図2
Description
ところが、従来の2ロール方式の定着装置は、高速で連続して送られてくる多数枚の記録紙に対しては、充分な定着処理を行うことが困難であるという問題を有している。すなわち、2ロール方式の定着装置においては、定着ロールを構成する芯金や芯金に被覆されたシリコーンゴム等からなる弾性層等が熱的抵抗体として作用する。そのため、2ロール方式の定着装置では、記録紙が定着ロールの表面から奪う熱量に対応した熱量を、定着ロールの内部に配置したヒータから即応的に、かつ充分に供給することが構造的に難しい。
その結果、2ロール方式の定着装置に高速で連続して記録紙が送られると、定着ロールの表面温度が漸次低下し、次第に定着性能が低下するという不都合が生じる。また、画像形成装置の立ち上がり時において、定着ロールの表面温度が一時的に落ち込む所謂「温度ドループ現象」が発生し易くなる。特に、記録紙として熱容量の大きい厚紙等が使用される場合には、定着ロールの表面から奪われる熱量が大きくなるので、定着性能の低下や温度ドループが大きくなり、定着不良に基づく画像品質の劣化を生じさせることとなる。
このような定着ベルトを用いた定着装置では、ニップ部に進入する前に予め張架ロール内に配設されたヒータによって定着ベルトを充分に加熱しておき、ニップ部においては加熱された定着ベルトから記録紙およびトナー像に熱を加えることでトナー像を定着している。そのため、定着ベルトが定着処理の間に記録紙によって熱を奪われても、定着ベルト自体の熱容量が小さいことから、定着ベルトは張架ロール内のヒータにより短時間で所定の定着可能温度まで回復させることが可能である。それにより、加熱部材として定着ベルトを用いた定着装置では、ニップ部内に進入する際の定着ベルトの温度を所定値に維持することが容易となり、画像形成装置が高速化されても、ニップ部に充分な熱量を供給することが可能である。
定着ベルトからの熱により加圧ロールの表面温度が必要以上に高くなると、ニップ部を通過する記録紙には定着ベルト側と加圧ロール側との両面による過剰な加熱が行われることとなる。そのため、記録紙中の水分が水蒸気に気化したり、空気が熱膨張する現象が生じて、記録紙に火膨れ(ペーパーブリスタ)が発生する場合がある。かかるペーパーブリスタが発生した場合には、画像ズレ等の著しい画像不良の発生をもたらすこととなる。
加えて、特に小サイズ紙を通紙した場合には、加圧ロールの幅方向端部側は、常に定着ベルトと直接接触することとなる。そのために、加圧ロールの軸方向において、中央部と端部とで熱膨張量に相違が生じ、加圧ロールには軸方向に大きな外径差が発生する。その結果、長期に亘る使用によって画像形成動作毎のかかる外径差の発生が繰り返され、加圧ロール表面にはシワやヒビ、さらには破損が生じ易くなる。そのために、画像不良の発生を招き、場合によっては、定着機能が著しく損なわれる可能性もある。
また、他の目的は、長期に亘り高品質の定着画像を得ることができる定着装置を提供することにある。
さらに、冷却部材は、ロール部材に張架された冷却ベルト部材が加圧部材に当接するように配置されたことを特徴とすることもできる。また、冷却部材は、加圧部材の内部を冷却するように構成されたことを特徴とすることもできる。加えて、冷却部材は、加圧部材の表面をラップするように張架された冷却ベルト部材を有することを特徴とすることもできる。
また、加圧部材は、定着ロールと加圧部材との圧接部にて、凹み量が定着ロールの凹み量よりも大きいことを特徴とすることができる。
また、剥離部材は、断面が略円弧状に形成されたブロック部材で構成されたことを特徴とすることができる。また、剥離部材は、定着ロール側とは反対側に位置する側面が定着ベルトの進行方向を屈曲するように変化させる形状に形成されたことを特徴とすることができる。加えて、剥離部材は、ベルト部材を介して加圧部材を押圧する面の上流側端部が定着ロールと加圧部材とで画成されるくさび状領域内に配置されることを特徴とすることもできる。
ここで、定着手段は、定着ロールと加圧部材との圧接部の最下流部から加圧部材と剥離部材との圧接部の最下流部に至る領域のニップ圧が、ベルト部材の進行方向に向けて単調減少するように設定されたことを特徴とすることができる。
[実施の形態1]
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置を示した概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回動に伴って搬送され、クリーニングバックアップロール34および中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
図2は本実施の形態の定着装置60の概略構成を示す側断面図である。この定着装置60は、加熱部材の一例としての定着ベルトモジュール61と、定着ベルトモジュール61に対して圧接して配置された加圧部材の一例としての加圧ロール62とで主要部が構成されている。
定着ベルトモジュール61は、ベルト部材の一例としての定着ベルト610、定着ベルト610を張架しながら回転駆動する定着ロール611、内側から定着ベルト610を張架する張架ロール612、外側から定着ベルト610を張架する張架ロール613、定着ロール611と張架ロール612との間で定着ベルト610の姿勢を矯正する姿勢矯正ロール614、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62とが圧接する領域であるニップ部N内の下流側領域であって定着ロール611の近傍位置に配置された剥離部材の一例としての剥離パッド64、ニップ部Nの下流側において定着ベルト610を張架する張架ロール615により主要部が構成されている。
また、定着ロール611の内部には、発熱源として定格900Wのハロゲンヒータ616aが配設され、定着ロール611の表面に接触するように配置された温度センサ617aの計測値に基づき、画像形成装置の制御部40(図1参照)が定着ロール611の表面温度を180℃に制御している。
また、張架ロール612の両端部には定着ベルト610を外側に押圧するバネ部材(不図示)が配設され、定着ベルト610全体の張力を15kgfに設定している。その際に、定着ベルト610の張力を幅方向に亘って均一にするとともに、定着ベルト610の軸方向の変位をできる限り小さく抑えるため、張架ロール612は、外径が端部よりも中央部のほうを100μmだけ大きくした所謂クラウン形状で形成されている。
張架ロール613の内部には、発熱源としての定格1000Wのハロゲンヒータ616cが配設されており、温度センサ617cと制御部40(図1参照)とによって、表面温度が210℃に制御されている。したがって、張架ロール613は、定着ベルト610を張架する機能とともに、定着ベルト610を外周面側から加熱する機能をも併せ持っている。したがって、本実施の形態では、定着ロール611と張架ロール612および張架ロール613とによって定着ベルト610が加熱される構成を採用している。
また、張架ロール615は、外径12mm、長さ360mmのアルミニウムで形成された円柱状ロールである。そして、剥離パッド64を通過した定着ベルト610が定着ロール611に向けて円滑に回動するように、剥離パッド64の定着ベルト610進行方向下流側近傍に配置されている。
第1冷却部材90は、加圧ロール62から熱を吸収するとともに、加圧ロール62の軸方向の温度差を均一化するための吸熱手段の一例としての吸熱ロール91、92、吸熱ロール91、92および加圧ロール62表面を冷却する冷却ファン93、冷却ファン93からの送風を吸熱ロール91、92および加圧ロール62表面に導くダクト94により構成されている。ここで、吸熱ロール91、92は、熱伝導率の高い銅やアルミニウム等の金属等で形成された円柱状ロールである。そして、加圧ロール62の軸方向全域に亘って当接するように配設され、加圧ロール62の回転に伴って従動するように構成されている。
また、第2冷却部材100は、加圧ロール62のニップ部N下流側領域の内周面に沿って、一方の加圧ロール62端部開口から他方の端部開口に向けて空気を導くダクト101、一方の加圧ロール62端部開口からダクト101に空気を送る冷却ファン102により構成されている。
図3は、ニップ部Nの近傍領域を表す概略断面図である。図3に示したように、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62とが圧接されたニップ部Nには、定着ベルト610が定着ロール611に巻き付けられた(ラップされた)領域(ラップ領域)内において、加圧ロール62が定着ベルト610の外周面に圧接するように配置されることにより、ロールニップ部(第1ニップ部)N1が形成されている。
このような定着ロール611と加圧ロール62との構成により、本実施の形態のロールニップ部N1では、加圧ロール62の弾性層622が変形することでロールニップ部N1が形成されており、加圧ロール62側がニップを形成するロール(NIP Forming Pressure Roll)として機能している。すなわち、ロールニップ部N1では、定着ロール611には凹みが殆ど生じず、加圧ロール62表面のみが大きく凹んだ状態(加圧ロール62の凹み量>定着ロール611の凹み量)が形成されることで、定着ベルト610の進行方向に所定の幅を持ったニップ領域を作り出している。
このように、本実施の形態の定着装置60では、ロールニップ部N1において定着ベルト610がラップされている側の定着ロール611は殆ど変形せず、円筒形状が維持されている。そのため、定着ベルト610は定着ロール611表面の円周面に沿って回動し、その回動半径に変動が生じることがないので、進行速度を一定に維持しながらロールニップ部N1を通過することができる。それにより、定着ベルト610がロールニップ部N1を通過する際にも、定着ベルト610にはシワや歪み(所謂「波うち」)が極めて発生し難い。その結果、定着画像に画像乱れが生じることが抑制され、良質の定着画像を安定的に提供することができる。なお、本実施の形態の定着装置60では、ロールニップ部N1は定着ベルト610の進行方向に沿って15mmの幅に設定されている。
図3に示したように、剥離パッドニップ部N2を形成する剥離パッド64は、断面が略円弧形状に形成され、ロールニップ部N1の下流側近傍にて定着ロール611の軸方向に沿って配置されている。そして、剥離パッドニップ部N2を通過した後の定着ベルト610は、剥離パッド64の側面に倣って回動する。それにより、定着ベルト610の進行方向は剥離パッド64によって張架ロール615方向に屈曲するように急激に変化する。そのため、ロールニップ部N1および剥離パッドニップ部N2を通過した用紙Pは、剥離パッドニップ部N2を出た時点で定着ベルト610の進行方向の変化に追随できなくなり、用紙Pは自身の所謂「コシ」によって定着ベルト610から剥離される。このようにして、剥離パッドニップ部N2の出口部において、用紙Pに対する曲率分離が安定的に行なわれる。なお、本実施の形態の定着装置60では、剥離パッドニップ部N2は定着ベルト610の進行方向に沿って5mmの幅に設定されている。
剥離パッド64は、上述したようにロールニップ部N1の下流側近傍に配設されている。それにより、ロールニップ部N1および剥離パッドニップ部N2からなるニップ部N内においては、ロールニップ部N1内でニップ圧がピークとなる位置(後段の図4および図5参照)から剥離パッドニップ部N2の最下流位置に至るまでの領域で、ニップ圧が所定値以下に落ち込んだ谷間の領域が発生することが抑制され、ニップ圧が連続的に単調減少するように設定することが可能となる。そのため、本実施の形態の定着装置60では、安定的な用紙分離を実現できると同時に、画像ムラ等といった画像不良のない高品質の定着画像を提供することが可能となる。ここでは、ロールニップ部N1の下流側近傍に配設された剥離パッド64により、ニップ圧が所定値以下に落ち込む谷間の領域が発生することが抑制され、ニップ部N内でニップ圧が連続的に単調減少するように設定される点について説明する。
しかし、かかる定着ベルトモジュール61を用いた定着装置60においても、用紙Pの表面にはトナー像が担持されているため、定着ベルト610の熱によってトナー像が溶融した際に、トナー像が接着剤となって用紙Pと定着ベルト610との間に付着力が働く。そのため、従来の定着装置と同様に、定着ベルト610表面から用紙Pを剥離する機構を設ける必要がある。特に画像形成装置の高速化を図った場合には、定着装置60において一旦剥離不良が生じて紙詰まり(ジャム)が生じると、その影響を受けて損傷する後続の用紙Pの枚数も多くなることから、ニップ部Nを高速で通過した用紙Pを定着ベルト610側から安定的に、かつ確実に剥離する必要がある。
そこで、本実施の形態の定着ベルトモジュール61では、ニップ部Nの下流部に定着ベルト610の進行方向を急激に変化させる部材、すなわち剥離パッド64を配設している。
ここで図4は、剥離パッド64をロールニップ部N1の下流側端部N1Eから所定の距離以上に離隔して配設した場合のニップ部N(ロールニップ部N1および剥離パッドニップ部N2)のニップ圧分布の概略を示した図である。図4に示したように、この場合には、剥離パッドニップ部N2において、ロールニップ部N1との境界領域N2Sにニップ圧Pnが所定値Pn1以下に落ち込んだ谷間の領域が形成されている。
しかし、剥離パッドニップ部N2内のロールニップ部N1との境界領域N2Sにおけるニップ圧Pnが所定値Pn1以下の低い状態に形成されていると、ロールニップ部N1で抑え込まれていた気泡が境界領域N2Sにおいては抑止できずに発生することとなる。そして、気泡が発生した状態で、用紙Pが剥離パッド64の配設されたニップ圧の高い領域N2Tに進入すると、境界領域N2Sにおいて発生した気泡がその高いニップ圧によって用紙Pの表面上を動き回る。そうすると、用紙P上のトナー像は、ロールニップ部N1を通過した直後であって、溶融したトナーが未だ完全に固化されていない状態にあるため、気泡が動き回ることによってトナー像が乱される現象が生じる。その結果、定着画像にムラ等の画像不良が発生するという事態を招来することとなる。
このように、境界領域N2Sのニップ圧Pnを所定のPn1よりも高く設定できるので、境界領域N2Sにおいて気泡の発生を抑止することができる。さらには、ロールニップ部N1内でニップ圧がピークとなる位置から剥離パッドニップ部N2の最下流位置に至るまで、ニップ圧を連続的に単調減少するように設定することにより、ロールニップ部N1において高いニップ圧により抑え込まれていた水蒸気や熱膨張しようとする空気は、剥離パッドニップ部N2を通過するまでの経路で徐々に開放されることとなり、上記したような気泡が動き回る現象の発生を抑制することが可能となる。そのため、未だ完全に固化されていない状態のトナー像が乱されることが殆ど無くなり、定着画像に画像ムラ等の画像不良が発生するのを抑制することができる。
Pn≧Po×(Tn/To−1) ……(1)
すなわち、上記した境界領域N2Sでのニップ圧Pnの所定値Pn1は、
Pn1=Po×(Tn/To−1)
となる。
なお、Tnは定着ベルト610の絶対温度、Toは定着ロール611から充分に離れた位置における空気の絶対温度(環境温度)、Poは大気圧である。
PV = nRT ……(2)
なお、Pは圧力、Vは体積、nはモル数、Rは気体定数、Tは絶対温度である。
したがって、次の(3)式および(4)式が導かれる。
(Po+Pn)×Vn = nRTn ……(3)
PoVo = nRTo ……(4)
なお、Vnは境界領域N2S内の気泡の体積、Voは大気圧下での気泡の体積である。 境界領域N2S内で気泡の発生を抑制するには、Vn≦Voなる条件を満たせばよい。そこで、(3)式および(4)式より、次の(5)式が導かれる。
Tn/(Po+Pn)≦To/Po ……(5)
さらに(5)式を変形すると、上記した式(1)が導かれる。
そして、剥離パッド64は、式(1)を満たすニップ圧Pnとなるような充分に狭い境界領域N2Sが形成されるように、ロールニップ部N1の下流側近傍位置に配設されることとなる。
図6は、剥離パッド64が配置された領域周辺を表す概略断面図である。図6に示したように、剥離パッド64には、主として、定着ロール611側に面する内側面64a、剥離パッドニップ部N2を通過した定着ベルト610の進行方向を急激に変化させる外側面64b、定着ベルト610を加圧ロール62に押圧する押圧面64cが形成されている。
剥離パッド64の内側面64aは、剥離パッド64を定着ロール611側に極力近接させて(例えば、剥離パッド64と定着ロール611とのギャップを0.5mm)配置するために、定着ロール611の周面に倣った湾曲面で形成されている。すなわち、図6に示した境界領域N2Sを極力狭く設定するためには、ロールニップ部N1(図3も参照)の下流側近傍であって、定着ロール611と加圧ロール62とで画成されたくさび状領域Qにおいて、剥離パッド64が加圧ロール62表面を押圧するように配置する必要がある。そのため、内側面64aの上流側端部(押圧面64cの上流側端部)64pをロールニップ部N1の下流側端部N1Eの近傍、すなわち上記したくさび状領域Q内の定着ロール611に近接した位置に設置できるように、内側面64aは定着ロール611の周面に倣った湾曲面に形成している。本実施の形態の剥離パッド64では、内側面64aは曲率半径33mmの略円周面で形成している。なお、内側面64aは、定着ロール611の周面に倣う湾曲面であれば、略円周面等の曲面に限らず、複数の平面を段階的に屈曲させて形成することも可能である。
また、内側面64aの上流側端部64pをくさび状領域Q内の定着ロール611に近接した位置に設置できるようにするとともに、上流側端部64p部分の強度および剛性を確保するために、内側面64aと押圧面64cとのなす角度θ1は、20〜50°に設定するのが好適である。
また、上述したように、押圧面64cの上流側端部64pは、境界領域N2Sの幅を極力狭くするために、定着ロール611に近接した位置に配置されるが、その際に、上流側端部64pを定着ロール611と当接するように配置することも可能である。このように設定すれば、境界領域N2Sを殆ど無くし、剥離パッドニップ部N2の殆ど全域を剥離パッド64と加圧ロール62との圧接部N2Tで形成することができる。加えて、押圧面64cは、上流側端部64pが定着ロール611からの押圧力も同時に受けることができるので、剥離パッドニップ部N2全域において充分なニップ圧を形成することが可能となる。
なお、押圧面64cは、定着ベルト610や定着ロール611と摺擦するので、定着ベルト610の進行をスムーズに行ない、また、定着ロール611との磨耗を低減するため、その表面に、摩擦係数が小さく、かつ耐摩耗性に優れた例えばテフロン(登録商標)等を被覆した構成とすることが好ましい。
さらに、外側面64bは、定着ベルト610が加圧ロール62から離隔した後、円滑に張架ロール615および定着ロール611の方向に進行するように、張架ロール615に向けて傾斜した平面で形成されている。この場合に、外側面64bは外側(定着ベルト610側)に向けて湾曲した曲面で形成することもできる。なお、外側面64bも押圧面64cと同様に、定着ベルト610と摺擦するので、定着ベルト610の進行をスムーズに行なうため、その表面に、摩擦係数が小さく、かつ耐摩耗性に優れた例えばテフロン(登録商標)等を被覆した構成とすることが好ましい。
そのため、境界領域N2Sにおいて所定のニップ圧Pnを設定することで、境界領域N2Sでの気泡の発生を抑止することができる。さらに、ニップ圧を連続的に単調減少するように設定することにより、ロールニップ部N1において高いニップ圧により抑え込まれていた水蒸気や熱膨張しようとする空気を、剥離パッドニップ部N2を通過するまでの経路で徐々に開放することが可能となる。それにより、水蒸気や熱膨張した空気が気泡となってニップ内で動き回る現象の発生を抑制することができるため、未だ完全に固化されていない状態のトナー像が乱されることが殆ど無くなり、定着画像に画像ムラ等の画像ディフェクトの発生を抑制することが可能となる。
画像形成装置の二次転写部20(図1参照)において未定着トナー像が静電転写された用紙Pは、搬送ベルト55および定着入口ガイド56により、定着装置60のニップ部Nに向けて(図2参照:矢印F方向)搬送されてくる。そして、ニップ部Nを通過する用紙P表面の未定着トナー像は、主としてロールニップ部N1に作用する圧力と熱とにより用紙Pに定着される。
さらには、紙種に対応させて定着温度を途中で切り替える(定着温度のアップおよびダウンの双方を含む。)必要がある場合にも、定着ベルト610は熱容量が小さいので、ハロゲンヒータ616bおよび/またはハロゲンヒータ616cの出力調整により、所望の温度への切り替えを容易、かつ速やかに行うことも可能となる。
上述したように、本実施の形態の定着装置60では、ニップ部Nは、ロールニップ部N1と剥離パッドニップ部N2とにより広く形成されている。そのため、ニップ部Nを通過する用紙Pに対して定着ベルト610から充分な熱量を供給することが可能となり、高速で連続通紙される用紙Pにも安定した定着性能を発揮することができる。
ところが、定着ベルト610は、通紙と通紙との間のインターバルで加圧ロール62と直接的に接触する。また、例えば小サイズ紙を連続して通紙した場合には、加圧ロール62の両端部領域、または一方の端部領域が長期に亘って加圧ロール62と直接的に接触することとなる。そのため、加圧ロール62の温度は次第に上昇する傾向を示す。
加えて、加圧ロール62はロールニップ部N1において定着ベルト610を介して定着ロール611と押圧されている。そのため、アルミニウムからなる熱容量の大きな定着ロール611の温度が、定着ベルト610と同等またはそれよりも高く設定されている場合には、加圧ロール62の温度は定着ロール611と略同様の温度まで上昇することとなる。そうすると、ニップ部Nでは、用紙Pは定着ベルト610側と加圧ロール62側との両面から過剰に加熱されることとなる。それにより、用紙P中において、水分が気化して水蒸気が発生したり、空気が熱膨張するという現象が起こり、一方の面からのみ加熱された際には生じることがない用紙Pの火膨れ(ペーパーブリスタ)が発生し易くなる。
そして、冷却ファン93からの送風は、ダクト94により吸熱ロール91、92および吸熱ロール91、92が配設された周辺領域の加圧ロール62表面に導かれる。それにより、冷却ファン93は、吸熱ロール91、92を介して間接的に加圧ロール62を冷却するとともに、加圧ロール62表面も直接的に冷却する。
さらに、ユーザによる画像形成装置の操作パネル(不図示)からの用紙種選択指示信号に基づいて、ON/OFF制御することもできる。例えば、ユーザが所定の用紙P(例えば、厚紙)を選択した場合に、冷却ファン93および/または冷却ファン102をONするように設定こともできる。加えて、プリント枚数や装置の駆動時間等の装置の使用状況や、装置の使用環境温度等の外的要因等に基づいて、ON/OFF制御することもできる。
さらには、本実施の形態の定着装置60では、第1冷却部材90と第2冷却部材100とを配設したが、第1冷却部材90と第2冷却部材100とのいずれか一方だけを配設してもよい。
また、第1冷却部材90において、吸熱ロール91、92としてペルチェ素子を用いることもできる。その場合には、冷却ファン93およびダクト94は、ペルチェ素子の放熱部を冷却するように構成される。
さらに、吸熱ロール91、92は、吸熱ロール91または吸熱ロール92のいずれか一方のみで構成することできる。また、3本以上の吸熱ロールを配設することもできる。
また、この評価試験の際に加圧ロール62の温度をモニターした結果、加圧ロール62の温度を100〜160℃に制御できることが確認できた。また、加圧ロール62の軸方向の温度差も、50℃以下に抑えられることも確認できた。
ロールニップ部N1を通過した後には、用紙Pは剥離パッドニップ部N2に搬送される。剥離パッドニップ部N2は、加圧ロール62に剥離パッド64が押圧されて、定着ベルト610が加圧ロール62に圧接するように形成されている。したがって、図3に示したように、ロールニップ部N1は定着ロール611の曲率によって下に凸である湾曲した形状を有するのに対し、剥離パッドニップ部N2は加圧ロール62の曲率によって上に凸である湾曲した形状を有している。
そのため、ロールニップ部N1において定着ロール611の曲率のもとで加熱加圧された用紙Pは、剥離パッドニップ部N2において加圧ロール62による相反する方向に向いた曲率に進行方向が変化させられる。その際に、用紙P上のトナー像と定着ベルト610表面との間で微小なマイクロスリップが生じる。それによって、トナー像と定着ベルト610との付着力が弱められ、用紙Pは定着ベルト610から剥離され易い状態が形成される。このように、剥離パッドニップ部N2は、最終の剥離工程で確実に剥離が行なわれるための準備工程にも位置付けられる。
そして、定着ベルト610から分離された用紙Pは、剥離パッドニップ部N2の下流側に配設された剥離補助部材の一例としての剥離案内板83により、その進行方向が導かれる。剥離案内板83により案内された用紙Pは、その後、排紙ガイド65および排紙ロール66によって機外に排出されて(図2参照)、定着処理が完了する。
このように、本実施の形態の定着装置60では、境界領域N2Sでの気泡の発生を抑止するとともに、ニップ圧を連続的に単調減少するように設定することにより、ロールニップ部N1において高いニップ圧により押さえ込まれていた水蒸気や熱膨張しようとする空気を、剥離パッドニップ部N2を通過するまでの経路において徐々に開放することが可能となり、水蒸気や熱膨張した空気が気泡となってニップ内で動き回る現象の発生を抑制することができる。そのため、未だ完全に固化されていない状態のトナー像が乱されることが殆ど無くなり、定着画像に画像ムラ等の画像ディフェクトの発生を抑制することが可能となる。
実施の形態1では、画像形成装置に搭載される定着装置60において、加圧ロール62を積極的に冷却する加圧部材冷却手段の一例として、吸熱ロール91、92が加圧ロール62の外表面に当接して配置された第1冷却部材90と、加圧ロール62の内部に配設された第2冷却部材100とを備えた構成について説明した。実施の形態2では、加圧ロール62の外表面に当接するように配置されたベルト部材により加圧ロール62を冷却する構成について説明する。なお、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
第3冷却部材110は、加圧ロール62の外表面に当接するように配置された冷却ベルト111、冷却ベルト111を張架する2本の張架ロール112、113、冷却ベルト111に対して外部から送風する冷却ファン114、冷却ファン114から送風される空気を冷却ベルト111外表面に導くダクト115、冷却ベルト111に対して内部から送風する冷却ファン116で構成されている。
そして、張架ロール112、113が冷却ベルト111を張架した状態で加圧ロール62に圧接されることで、冷却ベルト111、および張架ロール112、113が加圧ロール62に圧接される。それにより、冷却ベルト111は、加圧ロール62に当接しながら、加圧ロール62に従動して回動する。
一方、張架ロール112、113は円筒状ロールで形成され、その端部外側にはそれぞれファン117、118が配設されている。そのため、加温された張架ロール112、113は、ファン117、118によってその内部を一方の端部から他方に向けて送風されることで、内部から冷却される。
なお、第3冷却部材110の配置位置、ファン114、116、117、118の制御等は、実施の形態1と同様に設定することができる。
特に、本実施の形態の定着装置200では、冷却ベルト111は加圧ロール62と広い領域で当接することができるので、加圧ロール62の熱をより効率的に吸収することができ、高い冷却性能を発揮することが可能である。
そのため、高速の画像形成装置において稼動時間が長期に亘る場合にも、加圧ロール62の過度な温度上昇を抑えることが可能となる。それにより、ペーパーブリスタの発生を抑えることが可能となる。また、加圧ロール62表面にシワやヒビ、さらには破損が生じることを抑制することもできる。
実施の形態1では、画像形成装置に搭載される定着装置60において、加圧ロール62を積極的に冷却する冷却部材の一例として、吸熱ロール91、92が加圧ロール62の外表面に当接して配置された第1冷却部材90と、加圧ロール62の内部に配設された第2冷却部材100とを備えた構成について説明した。実施の形態3では、加圧ロール62の外表面をラップするように張架されたベルト部材により加圧ロール62を冷却する構成について説明する。なお、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
第4冷却部材120は、加圧ロール62の外表面をラップするようにして張架された冷却ベルト121、冷却ベルト121の他方を張架する張架ロール122、冷却ベルト121の内側に配置され、空気を送風するファン123、ファン123からの送風を冷却ベルト121の内周面に導くダクト124、張架ロール122の一方の端部に配置され、張架ロール122の内部に空気を送風するファン125で構成されている。
また、張架ロール122は、熱伝導率の高いSUSやアルミニウム等の金属からなる円筒状ロールであり、冷却ベルト121に所定のテンションを付加しながら、加圧ロール62に従動して回転する。
なお、第4冷却部材120(張架ロール122)の配置位置、ファン123、125の制御等は、実施の形態1と同様に設定することができる。
すなわち、張架ロール612および張架ロール613によって加熱された定着ベルト610の熱は、ニップ部Nにおいて定着処理のために使用されるが、その定着処理に供されなかった熱が定着ベルト610に残る。これが加圧ロール62を加熱することとなる。ところが、冷却ベルト121の熱容量と定着ベルト610の熱容量とが同程度であれば、定着ベルト610の残熱は冷却ベルト121に移り易くなる特性を有している。したがって、冷却ベルト121と定着ベルト610とを同程度の熱容量に構成することで、トナーに対する定着処理が行われるのと同時に、ニップ部Nにおいて定着ベルト610の残熱を冷却ベルト121に容易に移すことができる。そして、それを第4冷却部材120内(具体的には、ファン123および張架ロール122)で冷却するように構成することができる。そのため、定着ベルト610の残熱が加圧ロール62に移る前に、冷却ベルト121で吸熱することができるので、加圧ロール62の過剰な温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
特に、本実施の形態の定着装置300では、冷却ベルト121は、加圧ロール62とのラップ領域において、定着ベルト610の定着処理に供されなかった残熱が加圧ロール62に移る前に冷却ベルト121で吸熱することができるので、より高い冷却性能を発揮することが可能である。
そのため、高速の画像形成装置において稼動時間が長期に亘る場合にも、加圧ロール62の過度な温度上昇を抑えることが可能となる。それにより、ペーパーブリスタの発生を抑えることが可能となる。また、加圧ロール62表面にシワやヒビ、さらには破損が生じことを抑制することもできる。
Claims (15)
- 記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、
定着ロールと、
前記定着ロールに張架されるベルト部材と、
前記ベルト部材を加熱するとともに、当該ベルト部材を張架する張架ロールと、
前記定着ロールを押圧するように配置され、当該定着ロールに張架された前記ベルト部材との間で記録材が通過するニップ部を形成する加圧部材と、
前記定着ロールと前記加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、前記ベルト部材の外表面を当該加圧部材に押圧するように配置された剥離部材と、
前記加圧部材を冷却する冷却部材と
を備えたことを特徴とする定着装置。 - 前記冷却部材は、前記ニップ部の下流側に配設されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記冷却部材は、前記加圧部材表面に軸方向に沿って当接する高熱伝導性の吸熱ロール部材を有することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記冷却部材は、前記吸熱ロール部材がペルチェ素子であることを特徴とする請求項3記載の定着装置。
- 前記冷却部材は、ロール部材に張架された冷却ベルト部材が前記加圧部材に当接するように配置されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記冷却部材は、前記加圧部材の内部を冷却するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記冷却部材は、前記加圧部材の表面をラップするように張架された冷却ベルト部材を有することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記加圧部材は、前記定着ロールと当該加圧部材との圧接部にて、凹み量が当該定着ロールの凹み量よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、
発熱源が配設されるとともに、剛体で形成された定着ロールと、
前記定着ロールに張架されるベルト部材と、
前記ベルト部材を加熱するとともに、当該ベルト部材を張架する張架ロールと、
前記定着ロールを押圧するように配置されるとともに、弾性層が被覆された加圧部材と、
前記定着ロールと前記加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、前記ベルト部材の外表面を当該加圧部材に押圧するように配置された剥離部材とを備え、
前記加圧部材は、温度が前記定着ロールの温度よりも低い所定範囲内に制御されることを特徴とする定着装置。 - 前記定着ロールは、前記発熱源により前記ベルト部材の温度よりも低い温度に加熱されることを特徴とする請求項9記載の定着装置。
- 前記剥離部材は、断面が略円弧状に形成されたブロック部材で構成されたことを特徴とする請求項9記載の定着装置。
- 前記剥離部材は、前記定着ロール側とは反対側に位置する側面が前記ベルト部材の進行方向を屈曲するように変化させる形状に形成されたことを特徴とする請求項9記載の定着装置。
- 前記剥離部材は、前記ベルト部材を介して前記加圧部材を押圧する面の上流側端部が前記定着ロールと当該加圧部材とで画成されるくさび状領域内に配置されることを特徴とする請求項9記載の定着装置。
- トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、
前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段とを含み、
前記定着手段は、
剛体で形成された定着ロールと、
前記定着ロールに張架されるベルト部材と、
前記ベルト部材を加熱するとともに、当該ベルト部材を張架する張架ロールと、
前記定着ロールを押圧するように配置されるとともに、弾性層が被覆された加圧部材と、
前記定着ロールと前記加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、前記ベルト部材の外表面を当該加圧部材に押圧するように配置された剥離部材と、
前記加圧部材を冷却する冷却部材とを備え、
前記加圧部材は、温度が前記冷却部材により前記定着ロールの温度よりも低い所定範囲内に制御されることを特徴とする画像形成装置。 - 前記定着手段は、前記定着ロールと前記加圧部材との圧接部の最下流部から当該加圧部材と前記剥離部材との圧接部の最下流部に至る領域のニップ圧が、前記ベルト部材の進行方向に向けて単調減少するように設定されたことを特徴とする請求項14記載の画像形成装置。
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