図1は本発明の第1実施形態を示し、図2はその一部を拡大して示す。この第1実施形態は、請求項1に係る発明の一実施形態であり、カラー画像形成装置における定着装置においてオイルを用いないようにするためにホットオフセット防止と立ち上がり時間の短縮を図ったものである。図1及び図2において、1は加熱ローラ、2は定着ローラ、3は無端状定着ベルト、4は加圧ローラ、5は定着ベルト加熱用ヒータ、6は入口ガイド板、7はサーミスタからなる温度検知手段、8は第1の定着工程を行う部分、9は第2の定着工程を行う部分、10は加圧スプリングからなる加圧手段、11はテンションスプリングからなるテンション付与手段、13は未定着トナー13aを担持した転写紙である。
定着ベルト3は加熱ローラ1及び定着ローラ2に張架され(所定の張力で架設され)、加圧ローラ4は定着ベルト3を介して定着ローラ2に対向して設けられる。加圧ローラ4は、第2の定着工程を行う部分9では定着ベルト3を介して定着ローラ2に加圧するとともに、第1の定着工程を行う部分8では定着ローラ2に加圧せずに定着ベルト3に圧接される。
ヒータ5を内蔵した加熱ローラ1は本装置の立ち上がりを早くするために、小径かつ薄肉の金属パイプ(例えばアルミニウム、鉄、銅又はステンレスからなるパイプ)で構成して低容量化してある。定着ベルト3はヒータ5により加熱ローラ1を介して加熱され、サーミスタ7は定着ベルト3における加熱ローラ1で加熱される部分の表面温度を検知する。図示しない温度制御部はサーミスタ7の温度検知信号に基づいてヒータ5を定着ベルト3の表面温度が所定の設定温度に保たれるように制御する。
図示しない駆動源による回転駆動で定着ローラ2、加熱ローラ1、加圧ローラ4、定着ベルト3が回転する。被定着材としての転写紙は定着ベルト3と加圧ローラ4との間を通して搬送され、転写紙上のトナー像が定着ベルト3により加熱されて転写紙に定着される。第1の定着工程を行う部分8では定着圧(定着ベルト3と加圧ローラ4との間の圧力)が転写紙にシワが発生しない程度に低く設定され、第2の定着工程を行う部分9では定着圧(定着ベルト3と加圧ローラ4との接触圧)が所望の定着性が得られるように設定されている。
加熱ローラ1は移動可能に設けられて加圧スプリング11による定着ベルト3押圧で定着ベルト3にテンションを与え、加圧ローラ4は加圧スプリング10により押圧されて定着ベルト3を介して定着ローラ2に加圧する。第1の定着工程における定着圧の設定はテンションスプリング11により定着ベルト3のテンションを調整することによって行われ、第2の定着工程における定着圧の設定は加圧スプリング10により行われる。なお、加圧スプリング10が定着ローラ2を押圧することにより加圧ローラ4が定着ベルト3を介して定着ローラ2に加圧するようにしてもよい。
この第1実施形態では、ヒータ5が低容量化した加熱ローラ1を介して定着ベルト3を加熱するので、瞬時の立ち上がりが可能である。また、定着工程が第1の定着工程と第2の定着工程とからなっていて十分に長い(ニップ幅が長いためにニップ時間が50ms〜200msと十分に長い)ことと、定着ベルト3の自己冷却作用(定着ベルト3における定着工程部分8、9の未定着画像面側に加熱源がないために定着工程で定着ベルト3の表面が冷える作用)とにより、定着良好な温度領域が得られ、オフセット余裕度が増す。
さらに、転写紙の進入側である第1の定着工程における定着圧を0.5kg/cm2以下、好ましくは0.2kg/cm2以下と十分に低く設定することにより、転写紙がスムーズに定着ベルト3と加圧ローラ4との定着ニップ部に入り込んで転写紙のシワの発生率が現状以上(転写紙のシワが発生する程度が熱ローラ定着装置と比べて同等以上)に大きくならないようにすることができる。
この第1実施形態は定着良好な温度領域が得られてオフセット余裕度が増すが、この点について図3のモデルを用いて説明する。このモデルは、定着ローラ21の内部にヒータを持ち、定着ローラ21がアルミニウムからなる芯金21a上にシリコンゴムの層21bを設けた熱ローラ定着装置のモデルである。図3は、このモデルにおいて、定着ローラ21と加圧ローラ22との定着ニップ部に転写紙29が進入して定着ローラ21に転写紙29上の未定着トナー30が接触したときの時間の経過(転写紙が定着ニップ部を搬送されるニップ時間の経過)とともに変化する各層内非定常温度分布状態を表わす。
定着ローラ21には内部のヒータから常に一定の熱量が供給されるという仮定のもとにおいて、最初は定着ローラ21が一定の温度T0に保たれる。各層内温度分布は、転写紙29が定着ニップ部に進入した直後にはt1の温度分布をなし、時間が経過するにつれてt2、t3のように変化していく。この時、シリコンゴムの層21bと転写紙29上の未定着トナー30との境界面は略一定の温度T1(トナー30の上面温度に相当する)を維持している。
また、時間の経過と共にトナー30の内部に熱が伝わり、トナー30と転写紙29との境界温度Tf(トナー30の下面温度に相当する)が上昇する。トナー30・転写紙29間の温度分布が定常状態になるほどニップ時間が十分に長いと、その後はt4のような経過をたどり、シリコンゴムの層21bと転写紙29上の未定着トナー30との境界の温度T1は漸次に上昇していく。もちろん、Tfも上昇していく。
一方、第1実施形態のベルト定着装置では、定着ベルト3の自己冷却作用(定着ベルト3と加圧ローラ4との定着ニップ部内における未定着画像面側に加熱源がないために定着ベルト3の表面が転写紙に熱を奪われて時間と共にその温度が低下する作用)が行われる。従って、先ほどのTfはやはり時間と共に上昇するが、内部に熱源を有する熱ローラ定着装置に比べてT1に関しては温度上昇が小さい。従来の熱ローラ定着装置では転写紙上のトナーが定着ニップ部を短いニップ時間で通過する時にTf、T1が図7(a)に示すように変化するが、第1実施形態では転写紙上のトナーが第1の定着工程部分8及び第2の定着工程部分9からなる長い定着工程部分を長いニップ時間で通過する時にTf、T1’(定着ベルト3と転写紙上の未定着トナーとの境界面の温度)が図7(b)に示すように変化する。
また、定着ローラ21の温度T0のうち、ホットオフセット発生時の温度をT01とし、定着可能な下限温度をT02とする。一方、ホットオフセット現象は、定着ローラ21とこれに接触するトナー30との界面において、その界面接着力がトナー30の溶融時の粘弾性変化に伴う凝集力を上回ったときに起り、即ち、界面温度T1の大きさが影響する。
また、一方では、定着は、転写紙29とこれに接触するトナー30との界面において、その界面接着力がトナー30の溶融時の粘弾性変化に伴う凝集力を上回ったときに起り、即ち、界面温度Tfの大きさが影響する。この時、先ほど述べた定着良好な温度領域としては、T0がT01のときのT1と、T0がT02のときのTfから定義付けられる。
図4は第1実施形態の定着可能な温度領域の幅を示すモデル図であり、図5は上記熱ローラ定着装置の定着可能な温度領域の幅を示すモデル図である。図4及び図5において、ホットオフセット発生ラインはホットオフセット発生温度(ホットオフセットが発生する下限温度)を示すラインである。ここで、トナーが溶融してトナーの粘弾性が低下してトナーが定着され又はホットオフセットが発生する条件は、トナーが軟化点温度以上にある時間(ニップ時間)も影響することが考えられるが、トナーの粘弾性による凝集力の低下を机上計算により求めることは困難である。実際に第1実施形態の効果がどの程度有るかは実験により確認しなければならない。
図8はその実験結果の一例を示す。図8に示す定着可能な温度領域を表わす温度分布は図4及び図5に示す定着可能な温度領域を表わす温度分布のモデルと良い相関を示している。このことから、ホットオフセットは転写紙上のトナーと定着ローラ21又は定着ベルト3との界面温度が影響し、定着下限温度は転写紙上のトナーの界面温度が影響すると考えられる。
第1実施形態と上記熱ローラ定着装置とを比較すると、定着下限温度は第1実施形態、上記熱ローラ定着装置ともニップ時間の増加と共に同様な大きさで低下していく。また、ホットオフセット発生温度は第1実施形態ではニップ時間が増加してもそれほど低下する傾向は見られない。第1実施形態では予め加熱ローラから定着ベルトに供給された熱容量で定着行程にて定着が行われる。従って、ホットオフセット発生ラインはニップ時間が長くてもそれほど下がらない。
しかし、上記熱ローラ定着装置では、ホットオフセット発生温度は低く、かつ、ニップ時間の増加に伴って大きく低下し、全体としては定着可能温度領域を狭めていることが確認された。この結果から、第1実施形態は、従来の熱ローラ定着装置に比べると、十分に効果があるということが実証された。ここに、熱ローラ定着装置では、ニップ幅(ニップ時間)が長くとれないから転写紙上のトナー像を定着させるためには転写紙上のトナー像を高温で加熱する必要があり、トナーの温度が急激に立ち上がる。このため、Tf〜T1の温度勾配が大きい。すなわち、Tfに対してT1が大きい。
次に、オイルレストナーを用いて第1実施形態のホットオフセット性及び定着性に関しての効果を実験により確認した。図9は第1実施形態と上記従来の熱ローラ定着装置とで同一の定着性を得た時の定着ニップ部内出口部断層方向の温度分布を示す。あるスポットに焦点を当てて説明すると、第1実施形態と上記従来の熱ローラ定着装置とで同一の定着性を得た時の測定値としては、第1実施形態では定着温度が130℃、上記従来の熱ローラ定着装置では定着温度が160℃であった。この時の定着ニップ部の転写紙表面温度は91℃となった。
これらの測定結果をもとにホットオフセットに影響があると考えるところの、転写紙29上のトナー30と定着ローラ21又は定着ベルト3との界面温度を計算により求めたところ、第1実施形態では92℃、上記従来の熱ローラ定着装置では101℃となり、その温度が高い程トナー粘度が低下してホットオフセット現象に対してはより不利に作用するはずである。従って、同じ定着性のもとでは従来の熱ローラ定着装置の方が第1実施形態に比べてホットオフセットの余裕度がないことが前述と同様にここでも言える。
さらに、この時の定着条件においてニップ時間の変化と定着率との関係を測定したところ図10に示すようになった。この結果から、第1実施形態では、従来の熱ローラ定着装置に比べて、ニップ時間の変動(即ち、定着圧力、ローラ膨潤、ゴム硬度等のバラツキ)に対して定着率の変化が少なく安定した定着性が得られることが分かった。
以上から、第1実施形態においては、十分に長い定着工程と定着ベルト3の自己冷却作用(定着工程部分8、9の未定着画像面側に加熱源がないために定着工程で定着ベルト3の表面が冷える作用)により、広範囲の定着良好な温度領域(定着可能領域)が得られ、ホットオフセットの余裕度が増すことが分かった。また、定着ニップ部の幅のバラツキに対しても強く、安定した定着性能が得られることが分かった。
なお、第1実施形態で用いる定着ベルト3は、熱容量の小さい構成であり、図16(a)に示すように基体3a上に離型層3bが設けられたものである。この定着ベルト3は、例えば、薄い基体3a(ニッケル、ポリイミドからなる基体の場合は厚さが好ましくは30から150μm位が適当)上に、離型層3bとしてシリコンゴム(厚さが好ましくは50から300μm)又はフッソ樹脂系(厚さが好ましくは10から50μm)を薄く形成して熱応答性を良好にする。定着ベルト3は、図16(b)に示すようにフッ素樹脂層3cを離型層3bを設けてもよく、また、図16(c)に示すように基体3a上にフッ素樹脂層3cを設けたものでもよい。
定着ベルト3は、加熱ローラ1により加熱部で瞬時に加熱され、定着ニップ部で表面が瞬時に冷却される特性が望まれる。しかし、他方では、定着ベルト3は、定着ニップ部内で、トナーを十分に溶かして定着させるのに必要な熱容量を有するように設計されなくてはならない。定着ベルト3の厚さはこれらの両方の要件を満たす範囲にある。
次に、転写紙の搬送性(特にシワの防止)に関して説明する。第1実施形態においては、十分に長い定着ニップ部の幅(第1の定着工程及び第2の定着工程の長さ)を設けているので、定着ニップ部内で転写紙が規制される幅が大きいと、それだけシワ(タテスジ状のシワ、ミミズ状のシワ、波打ち状のシワ)が従来の熱ローラ定着装置に比べて発生しやすくなる。
従って、転写紙の搬送に対して最初に加圧ローラ4と定着ベルト3とが接触して形成される入口側の第1の定着工程を行う部分8は転写紙の進入に対して転写紙と同一の速度で回転する定着ベルト3と加圧ローラ4との間に転写紙が抵抗無く導かれるように定着ベルト3と入口ガイド板6が配置され、かつ、転写紙に不均一に力が加えられてシワが発生することがない程度に定着圧が低く設定される。
また、加圧ローラ4が定着ベルト3を介して定着ローラ2に加圧して形成される出口側の第2の定着工程を行う部分9では、定着不良が発生しないように逆に十分な定着圧力が加圧スプリング10により加えられている。このようにして定着工程部分8、9における定着ニップ部の幅が十分に長くとられ、定着性及び転写紙の搬送性が良好になるようになされている。
以上のように、この第1実施形態は、請求項1に係る発明の一実施形態であって、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4とを有し、この加圧ローラ4と前記定着ベルト3との間を搬送される被定着材としての転写紙上のトナー像を定着するベルト定着装置において、前記加熱ローラ1の内部に設けられた定着ベルト加熱用ヒータ5を備え、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に加圧することなく前記定着ベルト3に接触して形成されて被定着材に対する第1の定着工程を行う部分8の定着圧を被定着材のシワが生じない程度に低く設定し、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に加圧して形成されて被定着材に対する第2の定着工程を行う部分9の定着圧を所望の定着性が得られる定着圧に設定したので、十分に長い定着工程と定着ベルトの自己冷却作用により定着良好な温度範囲が得られてオフセット余裕度が増し、第1の定着工程を行う部分8の定着圧を被定着材のシワが生じない程度に低く設定したことにより被定着材のシワの発生を防止することができる。このため、被定着材の搬送性及び定着性が良好となり、高速の装置やカラー画像形成装置の定着装置でも安定した定着性を得ることができる。
なお、この第1実施形態では、加熱ローラ1の内部に定着ベルト加熱用ヒータ5を設けたが、加圧ローラ4の内部に定着ベルト加熱用ヒータ5を設け、或いは、加熱ローラ1及び加圧ローラ4の両方の内部に定着ベルト加熱用ヒータ5を設けるようにしても同様な効果がえられる。
この第1実施形態では、第1の定着工程においては熱伝導によってトナーが仮定着されると共に、定着圧が小さくて転写紙のシワが発生しないように定着ベルト3が加圧ローラ4に対しては軽く密着している程度が良い。図15は第1の定着工程部分8の定着圧と転写紙のシワのランクとの関係の実験結果を示す。ここに、第1の定着工程部分8の定着圧は、(定着ベルト3の張力)/(第1の定着工程部分8における定着ベルト3の接触面積)で定義した。
1Kg/cm2とは例えば定着ベルト3の張力が9kg、定着ベルト3の幅が310cm、定着ベルト3の接触幅が3cmのときであり、9kg/310cm×0.3cm≒1Kg/cm2となる。また、0.5Kg/cm2とは例えば4.5kg/310cm×0.3cm≒0.5Kg/cm2となる。
また、シワランクとは定着装置を通過する用紙(被定着材としての転写紙)に発生するシワの程度をランク付けしたことを意味し、ランク3以上はユーザクレームにならない程度を意味する。ランク5はシワが無く、ランク4はシワが少しは有り、ランク3はシワは有るがユーザクレームにならない程度を意味する。ランク2はユーザクレームになるシワが有り、ランク1は顕著なシワが有る。図15に示す実験結果から、第1の定着工程部分8の定着圧が1Kg/cm2のときにはシワランクが3となり、第1の定着工程部分8の定着圧が0.5Kg/cm2のときにはシワランクが4となった。
この実験結果から、転写紙のシワの発生の許容される目標ランクに対しては第1定着工程部分8の定着圧が面圧換算で1Kg/cm2以下、好ましくは0.5g/cm2以下であれば本来の定着工程である第2の定着工程に加えて第1の定着工程を設けても転写紙のシワランクが従来の熱ローラ定着装置に比べて同等以上となることを確認できた。
また、図11は加圧ローラ4が定着ベルト3を介して定着ローラ2に加圧して形成される出口側の第2の定着工程の定着圧と定着温度との関係の実験結果を示す。この実験結果から、第2の定着工程では定着不良が発生しないように逆に十分な定着圧力を加える条件としては1Kg/cm2(9.8N/cm2)以上、好ましくは2Kg/cm2(19.6N/cm2)以上必要であることが分かった。
図17は第1実施形態において、線速;200mm/s、ニップ時間;100nsとし、かつ、第2の定着工程部分9の定着圧を圧大;2.0kg/cm2、圧中;1.5kg/cm2、圧小;0.5kg/cm2と変えて定着温度と画像光沢度との関係を測定した実験結果を示す。また、図18は第1実施形態において、線速;100mm/s、ニップ時間;200nsとし、かつ、第2の定着工程部分9の定着圧を圧大;2.0kg/cm2、圧中;1.5kg/cm2、圧小;0.5kg/cm2と変えて定着温度と画像光沢度との関係を測定した実験結果を示す。
この実験結果から、第1実施形態では、第2の定着工程部分9の定着圧が低圧で第2の定着工程部分9の定着温度が低温であるという条件でも、定着可能なことが確認された。通常、カラー画像形成装置用の熱ローラ定着装置においては、上述のような第1実施形態における第2の定着工程部分9と同等の定着性を得るには、定着圧を3kg/cm2以上、定着温度を160℃以上とする必要がある
。
そこで、本発明の第2実施形態は、上記第1実施形態において、転写紙に対する第1の定着工程を行う部分8の定着圧を1Kg/cm2以下とし、転写紙に対する第2の定着工程を行う部分9の定着圧を第1の定着工程を行う部分8の定着圧以上、例えば1Kg/cm2以上としたものである。
このように、この第2実施形態は、請求項2に係る発明の一実施形態であって、請求項1記載のベルト定着装置において、前記被定着材としての転写紙に対する第1の定着工程を行う部分8の定着圧を1Kg/cm2以下とし、前記被定着材としての転写紙に対する第2の定着工程を行う部分9の定着圧を第1の定着工程を行う部分8の定着圧以上としたので、被定着材の搬送性及び定着性が良好となり、高速の装置やカラー画像形成装置の定着装置でも安定した定着性を得ることができる。
ベルト定着装置において、立ち上がり時間の短縮、省エネルギー化を実現する方法としては、待機時にヒータをオフするか、又は省エネルギーモード(待機時の定着温度を低くして消費電力を少なくするモード)を設けることが必要である。そのためには、立ち上がり時間を十分に短くする方法として、熱容量の小さい定着ベルト及び加熱ローラの構成が条件となる。
そこで、請求項3に係る発明の各実施形態は、立ち上がり時間の短縮、省エネルギー化を実現するため、定着ベルト及び加熱ローラを熱容量の小さい構成としたものである。上記第1実施形態は請求項3に係る発明の一実施形態でもあり、図12〜図14は本発明の第3実施形態乃至第5実施形態であって請求項3に係る発明の他の各実施形態である。
これらの請求項3に係る発明の各実施形態では、定着ローラ2と加熱ローラ1との間に張架された低熱容量の無端状定着ベルト3と、定着ローラ2に定着ベルト3を介して対向して設けられた加圧ローラ4とを有するベルト定着装置を基本構成とし、内部に定着ベルト加熱用のヒータ5を有する加熱ローラ1が低熱容量のもので構成されている。
定着ベルト3はヒータ5により加熱ローラ1を介して加熱され、サーミスタからなる温度検知手段は定着ベルト3における加熱ローラ1で加熱される部分の表面温度を検知する。図示しない温度制御部はそのサーミスタの温度検知信号に基づいてヒータ5を定着ベルト3の表面温度が所定の設定温度に保たれるように制御する。
定着ローラ2、加熱ローラ1、定着ベルト3、加圧ローラ4は図示しない駆動源による回転駆動で回転する。被定着材としての転写紙は図示矢印のように定着ベルト3と加圧ローラ4との間の定着ニップ部を通して搬送され、転写紙上のトナー像が定着ベルト3により加熱されて転写紙に定着される。
加熱ローラ1は本装置の構成から特に大きな負荷を必要としない。定着ベルト3を張架するのに必要な力としては1Kgf(9.8N)/片側の定着ベルトテンションがあれば定着ベルト3が十分に機能する。また、定着ベルト加熱手段である加熱ローラ1と定着ニップ部形成手段とが分離しているため、加熱ローラ1は定着圧を必要とせず大きな負荷がかからない。このため、加熱ローラ1を小型化、薄肉化して加熱ローラ1の熱容量を小さくすることにより、立ち上がり時間を短くすることができる。
低容量の加熱ローラ1としては、45cal/℃以下、好ましくは15cal/℃以下の加熱ローラが望ましい。加熱ローラ1を45cal/℃以下の低容量の加熱ローラとすることは立ち上がり時間30秒を満足する場合の加熱ローラ1の熱容量を表わし、加熱ローラ1を15cal/℃以下の低容量の加熱ローラとすることは立ち上がり時間10秒を満足する場合の加熱ローラ1の熱容量を表わす。
従来の熱ローラ定着装置、特にカラー画像形成装置用熱ローラ定着装置においては、カラートナーを溶融混色させて発色性及び光沢性を発現させるために定着温度を高く設定すると同時に、定着圧も大きく設定する必要があった。かかる装置においては、立ち上がり時間を短くするために定着ローラを薄肉化して熱容量を小さくすると定着圧に耐え得るローラ強度を確保することが困難であった。
本実施形態において、加熱ローラ1に加わる負荷は定着ベルト3の張力のみであり、これは取付け条件としては2〜3kgである。これに対して、従来の熱ローラ定着装置では、定着圧としては少なくとも上述の定着ベルト3の張力よりはるかに大きい力がかかり、低速の装置でも定着圧は10kg以上が現状である。本実施形態の加熱ローラ1としては、熱ローラ定着装置に用いる加熱ローラより更に薄肉化して低熱容量化したローラの使用が可能になった。
また、本実施形態では、定着ベルト3を加熱する加熱手段が定着ベルト3に連れ回る加熱ローラ1で形成されていることにより、定着ベルト3にかかる負荷が小さくなり、定着ベルト3が摩耗しないという効果を奏する。逆に、定着ベルトを加熱する加熱手段が定着ベルトに対して摺動する固定部材(面状発熱ヒータ、板状発熱ヒータ、固定発熱ヒータ)である場合には、クィックスタートが可能であるが、定着ベルトの寿命が短くなる。
このように、請求項3に係る発明の各実施形態は、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4とを有し、この加圧ローラ4と前記定着ベルト3との間を搬送される被定着材としての転写紙上のトナー像を定着するベルト定着装置において、前記加熱ローラ1の内部に設けられた定着ベルト加熱用ヒータ5を備え、前記加熱ローラ1を低熱容量のものに構成したので、立ち上がり時間の短縮及び省エネルギー化を達成することができる。
ところで、例えば複写機を例にとると、ユーザがコピーを出力する際の操作に関しての満足度調査によると、その中のひとつとして待ち時間(電源投入から複写可能になるまでの待ち時間)については10秒以下であることが望ましいという調査結果を得た。待ち時間を10秒以下にして且つ省エネルギー化を達成するためには、上述した省エネルギーモードを設ける方法が望ましい。
例えば省エネルギーモードとして待機時の定着温度を低く設定して消費電力を50%低減し、かつ、待ち時間10秒以下を目標として達成するためには、待機時の設定定着温度と消費電力量の関係を測定した結果から、定着装置単体として立ち上がり時間はおよそ30秒以下が望ましい。そのためには、熱容量の小さい定着ベルト及びローラの構成が条件となる。
上記請求項3に係る発明の実施形態としては加熱ローラ1の構成は低熱容量化を実現するために加熱ローラ1の肉厚は薄いほどよいが0.3mm以上が定着ベルト3の張力を確保して加熱ローラ1の軸方向の曲がりや円形断面の凹みが発生しない限界値として必要である。また、加熱ローラ1の径は小さいほどよいが20mm以上が好ましい。これは、定着ベルト3がそれに接触する従動ローラとしての加熱ローラ1から熱を受けて連続通紙中も温度が落ち込むことがなく、かつ、定着ベルト3の表面が一定温度を維持するために加熱ローラ1の径は20mm以上40mm以下(温度落ち込み防止の点から20mm以上、ローラ強度確保の点から40mm以下)が必要であるということである。
加熱ローラ1の材質としては、比熱が小さくて熱伝導率が大きいものがよく、例えばアルミニウム、銅、鉄、ステンレス等の金属がよい。また、定着ベルト3は、熱応答性をよくして定着ベルトとしての可撓性を保つためには、基体3aの厚さが30から150μm以下の、例えばニッケル、ポリイミド等が好ましい。また、定着ベルト3の離型層3bにおいても、熱応答性を良くするためにはシリコンゴムであれば厚さが好ましくは50から300μm、フッ素樹脂系であれば厚さが好ましくは10から50μmが好ましい。
上記実施形態において立ち上がり時間として、例えば上述のように30秒以下を目標とすると、上記のような熱容量の小さい定着ベルトを用いると、
(i)加熱ローラ1の径が30mmのときは、加熱ローラ1がアルミニウムでその肉厚が0.6mm、加熱ローラ1が鉄でその肉厚が0.4mmの場合に立ち上がり時間が約10秒となり、
(ii)加熱ローラ1の径が40mmのときは、加熱ローラ1がアルミニウムでその肉厚が0.8mm、加熱ローラ1が鉄でその肉厚が0.4mmの場合に立ち上がり時間が約20秒となり、
(iii)加熱ローラ1の径が40mmのときは、加熱ローラ1がアルミニウムでその肉厚が2.0mm、加熱ローラ1が鉄でその肉厚が12mmの場合に立ち上がり時間が約30秒となるという結果が得られた。但し、このとき、ヒータ5の出力値は100V15Aの商用電源を使用した時の許容最大出力として1.3kwである。
従って、目標30秒以下の立ち上がり時間を達成するためにはヒータ5の容量を十分に大きくできた(但し1.3kw)としても、内部にヒータ5を内蔵する加熱ローラ1が低熱容量になる構成としては、ローラ径が20mm以上40mm以下、肉厚が0.3mm以上2.0mm以下の金属材料で加熱ローラ1が形成されることが必要である。
高出力のヒータを搭載した場合、電源スイッチ投入による突入電流が大きくなり、また、ヒータのオン/オフによる蛍光灯のちらつき現象が問題となるので、これらの問題を防止するためにヒータの出力は好ましくは700W以下が良い。この条件を考慮すると、加熱ローラ1は肉厚が0.3mm以上1.0mm以下の金属材料で構成することが好ましい。
立ち上がり時間を十分に短くして低熱容量化する範囲として加熱ローラ1の径の範囲としては、20mm〜40mmが好ましい。つまり、定着ベルト3がそれに接触する従動ローラとしての加熱ローラ1から熱を受けて連続通紙中も温度が落ち込むことなく定着ベルト3の表面が一定温度を維持するために加熱ローラ1の径が20mm以上は必要である。一方、加熱ローラ1の径が40mmを超えると、加熱ローラ1の肉厚が薄くなり過ぎて加熱ローラ1としての強度が不足してしまう。仮に、クィックスタートとして、立ち上がり時間10秒以下を目標とした場合は、加熱ローラ1の径を40mmを超えたローラ径として例えば50mmのローラ径にすると、加熱ローラ1の肉厚が鉄で0.3mm以下、アルミニウムで0.5mm以下になる。かかる薄肉の加熱ローラでは定着ベルト3の張力に対しての初期及び経時での撓み、凹み等の変形が懸念される。
そこで、本発明の第6実施形態は、上記請求項3に係る発明の実施形態において、加熱ローラ1をローラ径が20mm以上40mm以下であって肉厚が0.3mm以上2.0mm以下、好ましくは0.3mm以上1.0mm以下の金属材料で低熱容量のものに構成したものである。
このように、第6実施形態は、請求項4に係る発明の実施形態であって、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4とを有し、この加圧ローラ4と前記定着ベルト3との間を搬送される被定着材としての転写紙上のトナー像を定着するベルト定着装置において、前記加熱ローラ1の内部に設けられた定着ベルト加熱用ヒータ5を備え、前記加熱ローラ1をローラ径が20mm以上40mm以下であって肉厚が0.3mm以上2.0mm以下の金属材料で低熱容量のものに構成したので、立ち上がり時間の短縮及び省エネルギー化を達成することができる。
定着性の向上を更に図るために、加圧ローラ内にヒータを設けた場合は定着装置としての立ち上がり時間を早くすることが可能である。また、加圧ローラ内にヒータを設けない場合は、プリントスタートにあたって定着ベルト回転直後に定着ニップ部において定着ベルトが加圧ローラに接触したときに、定着ベルト温度が急激に落ちこみ、定着不良が発生する恐れがある。そのため、定着ベルトを所定の温度に回復させるべくプレ回転時間を設ける必要があるが、上述の低熱容量の加圧ローラを用いると、加圧ローラの温度上昇速度が早くなるため、プレ回転時間が短くなるという利点がある。
本発明のベルト定着装置は(低温)低圧定着がその特徴の一つであり、そのため加圧ローラを薄肉化して低熱容量加圧ローラとして用いることができる。なお、本発明のベルト定着装置に用いた加熱ローラの熱容量としては36cal/℃以下(本例ではローラ径が40〜60mm、且つローラ肉厚が0.3〜1.5mmの範囲で使用可能)である。
本発明の第7実施形態では、上記請求項3に係る発明の実施形態において、加熱ローラ1が本定着装置の構成から特に大きな負荷を必要としないため、加熱ローラ1が光透過性の部材(例えば耐熱ガラス等)で構成され、また、この加熱ローラ1に接する定着ベルト3の内側若しくは加熱ローラ1の表面に輻射熱吸収率の高い層(黒色ペイントの塗装、カーボン印刷、定着ベルト3内のカーボン分散等の処理により形成した層)が設けられる。定着ベルト3は加熱ローラ1からの輻射熱によって加熱され、瞬時の立ち上がりが可能となる。
このように、第7実施形態は、請求項5に係る発明の実施形態であって、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4とを有し、この加圧ローラ4と前記定着ベルト3との間を搬送される被定着材としての転写紙上のトナー像を定着するベルト定着装置において、前記加熱ローラ1の内部に設けられた定着ベルト加熱用ヒータ5を備え、前記加熱ローラ1は光透過性を有するローラであって、且つ、前記定着ベルト3の内側と前記加熱ローラ4の表面とのいずれか一方に輻射熱吸収率の大きい層を設けたので、立ち上がり時間の短縮及び省エネルギー化を達成することができる。また、加熱ローラ内にヒータを設けた場合においても、本発明のベルト定着装置においては(低温)低圧力定着が実現可能であるため、加熱ローラにおいても光透過性を有するローラで形成しても強度上問題ない。
ところで、上記第1実施形態のベルト定着装置では、図19に示すように転写紙13上の未定着画像は定着工程前においては定着ベルト3と接触しても転写紙13と定着ベルト3とが同期して移動すれば定着ベルト3とのこすれが発生しない。しかし、画像形成装置本体(画像形成装置の定着装置以外の部分)と定着装置との間で転写紙搬送速度差があって定着装置側の転写紙搬送速度が画像形成装置本体側の転写紙搬送速度より遅くなると、転写紙13にたるみが生じ、転写紙13上の未定着画像が定着ベルト3に触れると未定着画像と定着ベルト3との同期ずれにより未定着画像が定着ベルト3でこすられる現象が発生してしまう。
転写紙13のたるみ量は定着工程部分8、9の入口から遠ざかるほど大きい。逆に言えば、定着工程部分8、9の入口近傍で転写紙13のたるみによって転写紙13が定着ベルト3に接触した場合は、そのたるみ量が極めて小さいために未定着画像と定着ベルト3との同期ずれによる未定着画像の定着ベルト3によるこすれ現象の程度が小さくなってしまう。
従って、未定着画像のこすれ現象を防止するためには、未定着画像が定着ベルト3に接触してもそれが定着工程部分8の入口近傍であれば許容されると考えられる。よって、定着ベルト3が加熱ローラ1より離間する位置から定着ベルト3が最初に加圧ローラ4と接触する位置までの距離Lを十分に小さくする必要がある。上述のような第1実施形態の実験によれば、Lと未定着画像のこすれ現象のランクとの関係が図20に示すようになり、実際にLが20mm以下であれば未定着画像と定着ベルトとの同期ずれ量が無視できる程度となり、未定着画像のこすれ現象が起こらないことが確認された。
図20に示す実験結果から、Lが20mmのときにコスレランクが3となり、Lが15mmのときにコスレランクが4となり、Lが10mm以下のときにコスレランクが5となる。ここに、コスレランクとは、定着装置を通過する未定着画像に発生する画像コスレの程度をランク付けしたことを意味し、コスレランク3以上はユーザクレームにならない程度の画像コスレを意味する。コスレランク5は画像コスレがまったく無い状態、コスレランク2以下はユーザクレームになるような画像コスレを表わす。
そこで、本発明の第8実施形態では、上記第1実施形態において、定着ベルト3が加熱ローラ1より離間する位置から定着ベルト3が最初に加圧ローラ4と接触する位置までの距離Lを20mm以下に設定しており、未定着画像のこすれ現象を防止することができる。
このように、この第8実施形態は、請求項6に係る発明の一実施形態であって、定着ローラ2と、この定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を加熱する加熱手段としての加熱ローラ1と、前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4と、この加圧ローラ4と前記加熱手段1とのいずれか一方若しくは両方を加熱する定着ベルト加熱用ヒータ5とを有し、被定着材の搬送方向について最初に前記加圧ローラ4が前記定着ローラ2に加圧することなく前記定着ベルト3に接触して形成される第1の定着工程部分8の定着圧を被定着材のシワが生じない程度に低く設定し、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に加圧して形成される第2の定着工程部分9の定着圧を所望の定着性が得られる定着圧に設定したベルト定着装置において、前記定着ベルト3が前記加熱手段1により加熱される箇所より離間する位置から前記定着ベルト3が最初に前記加圧ローラ4と接触する位置までの距離を20mm以下としたので、未定着画像のこすれ現象を十分に防止することができる。
なお、上記第8実施形態において、加熱ローラ1の代りに例えばローラタイプの加熱手段や固定基板に発熱体層を設けた加熱手段などを用いてもよく、また、定着ベルト加熱用ヒータ5を加圧ローラ4の内部若しくは加熱ローラ1及び加圧ローラ4の両方の内部に設けるようにしても上記第1実施形態と同様な効果が得られる。
図21は本発明の第9実施形態を示す。この第9実施形態は請求項7に係る発明の一実施形態である。この第9実施形態では、上記第8実施形態において、加圧ローラ4が定着ベルト3を介して加熱ローラ1に加圧し、第1の定着工程部分は加圧ローラ4が定着ベルト3を介して加熱ローラ1に加圧して形成される。定着ベルト3は第1の定着工程部分から第2の定着工程部分まで加圧ローラ4と接触することになる。
このようなベルト定着装置においては、第1の定着工程部分の定着圧を実際は0.5kg/cm2以下に低く設定すれば、転写紙13のシワが発生しないことが確認されている。転写紙13は、第1の定着工程部分を搬送されるときに定着ベルト3からの熱伝導によってトナーが仮定着される。第1の定着工程部分の定着圧は小さくとって転写紙13のシワが発生しないように定着ベルト3が加圧ローラ4に対して軽く密着する程度がよい。
図22は実験により求められた第1の定着工程部分の定着圧と転写紙13のシワのランクとの関係を示す。この第1の定着工程部分の定着圧と転写紙13のシワのランクとの関係から、転写紙13のシワ発生の許容される目標ランクに対しては第1の定着工程部分の定着圧が面圧換算で0.5kg/cm2以下、好ましくは0.3kg/cm2以下であれば、本来の定着工程部分である第2の定着工程部分に加えて第1の定着工程部分を設けても転写紙13のシワ発生率が従来の熱ローラ定着装置に比べてより小さくなることを確認できた。
図22に示す第1の定着工程部分の定着圧と転写紙13のシワランクとの関係は加熱ローラ1が定着ベルト3を介して加圧ローラ4とで形成する第1の定着工程部分のニップ幅と定着圧力によって求めたものである。第1の定着工程部分の定着圧は、(第1の定着工程部分の定着圧力)/(第1の定着工程部分の定着ニップ面積)で定義し、第1の定着工程部分の定着圧0.5kg/cm2とは例えば第1の定着工程部分の定着圧が5kg、定着ベルト3の幅が310mm、第1の定着工程部分の定着ニップ幅が3mmのときであって5kg/310cm×0.3cm≒0.5kg/cm2となる。
また、第1の定着工程部分の定着圧0.3kg/cm2とは、例えば第1の定着工程部分の定着圧が3kg、定着ベルト3の幅が310mm、第1の定着工程部分の定着ニップ幅が3mmのときであり、3.0kg/310cm×0.3cm≒0.3kg/cm2となる。図22に示す実験結果から、第1の定着工程部分の定着圧が0.5kg/cm2のときはシワランクが3となり、第1の定着工程部分の定着圧が0.3kg/cm2のときはシワランクが4となる。したがって、第1の定着工程部分の定着圧は、0.5kg/cm2以下、好ましくは0.3kg/cm2以下に設定する必要がある。
また、加圧ローラ4が定着ベルト3を介して定着ローラ2に加圧して形成される出口側の第2の定着工程部分では、定着不良が発生しないように逆に十分な定着圧を加える条件としては、実験により求められた図24に示すような第2の定着工程部分の定着圧と定着温度との関係から、0.5kg/cm2(4.9N/cm2)以上、好ましくは1.5kg/cm2以上必要であることがわかった。
第9実施形態において、線速;200mm/s、ニップ時間;100nsとし、かつ、第2の定着工程部分の定着圧を圧大;2.0kg/cm2、圧中;1.5kg/cm2、圧小;0.5kg/cm2と変えて定着設定温度と画像光沢度との関係を測定した実験結果が図17に示すようになった。また、第9実施形態において、線速;100mm/s、ニップ時間;200nsとし、かつ、第2の定着工程部分の定着圧を圧大;2.0kg/cm2、圧中;1.5kg/cm2、圧小;0.5kg/cm2と変えて定着温度と画像光沢度との関係を測定した実験結果が図18に示すようになった。
この実験結果から、第9実施形態では、第2の定着工程部分の定着圧が低圧で第2の定着工程部分の定着温度が低温であるという条件でも、定着可能なことが確認された。通常、カラー画像形成装置用の熱ローラ定着装置においては、上述のような第1実施形態における第2の定着工程部分9と同等の定着性を得るには、定着圧を3kg/cm2以上、定着温度を160℃以上とする必要がある。
そこで、本発明の第9実施形態では、第1の定着工程部分の定着圧を面圧換算で0.5kg/cm2以下、好ましくは0.3kg/cm2以下に設定し、第2の定着工程部分の定着圧を0.5kg/cm2(4.9N/cm2)以上、好ましくは1.5kg/cm2(9.8N/cm2)以上に設定した。
このように、第9実施形態は、請求項7に係る発明の一実施形態であって、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4と、この加圧ローラ4と前記加熱ローラ1とのいずれか一方若しくは両方の内部に設けられた定着ベルト加熱用ヒータ5とを備え、被定着材の搬送方向について最初に前記加圧ローラ4が前記定着ローラ2に加圧することなく前記加熱ローラ1が前記定着ベルト3を介して前記加圧ローラ4により加圧される位置関係で形成される第1の定着工程部分の定着圧を被定着材のシワが生じない程度に0.5kg/cm2以下に低く設定し、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に加圧して形成される第2の定着工程部分の定着圧を所望の定着性が得られる定着圧に設定したので、被定着材のシワや未定着画像のこすれ現象を十分に防止することができる。
なお、上記第9実施形態において、定着ベルト加熱用ヒータ5を加圧ローラ4の内部若しくは加熱ローラ1及び加圧ローラ4の両方の内部に設けるようにしても上記第2実施形態と同様な効果が得られる。
図23は本発明の第10実施形態を示す。この第10実施形態は請求項8に係る発明の一実施形態である。この第10実施形態では、上記第8実施形態において、定着ベルト3が加熱ローラ1により加熱されてから最初に加圧ローラ4と接触する位置の近傍(具体的には加圧ローラと接触する位置から10mm以下を表わす)で定着ベルト3の内側にガイド部材としての補助ローラ12が設けられ、第1の定着工程部分は加圧ローラ4が定着ベルト3を介して補助ローラ12に加圧して形成される。
また、定着ベルト3が加熱ローラ1より離間する位置から定着ベルト3が最初に加圧ローラ4と接触する位置までの距離Lの間にて未定着トナー像を有する転写紙13に対して定着ベルト3が遠ざかるように(転写紙13上の未定着トナー像に接触しないように)加熱ローラ1が配置される。従って、上記距離Lの間においては、転写紙13上の未定着トナー像は定着ベルト3に接触することがなく、未定着トナー像のこすれ現象は起こらなくなる。
このように、この第10実施形態は、請求項8に係る発明の一実施形態であって、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4と、この加圧ローラ4と前記加熱ローラ1とのいずれか一方若しくは両方の内部に設けられた定着ベルト加熱用ヒータ5とを有し、被定着材の搬送方向について最初に前記加圧ローラ4が前記定着ローラ2に加圧することなく前記定着ベルト3に接触して形成される第1の定着工程部分の定着圧を被定着材のシワが生じない程度に低く設定し、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に加圧して形成される第2の定着工程部分の定着圧を所望の定着性が得られる定着圧に設定したベルト定着装置において、前記定着ベルト3が前記加熱ローラ1により加熱されてから最初に前記加圧ローラ4と接触する位置の近傍で前記定着ベルト3の内側に設けられたガイド部材としての補助ローラ12を備え、前記定着ベルト3が前記加熱ローラ1より離間する位置から前記定着ベルト3が最初に前記加圧ローラ4と接触する位置までの間にて未定着トナー像を有する被定着材に対して前記定着ベルト3が遠ざかるように前記加熱ローラ1を配置したので、未定着画像のこすれ現象を十分に防止することができる。
なお、上記第10実施形態において、定着ベルト加熱用ヒータ5を加圧ローラ4の内部若しくは加熱ローラ1及び加圧ローラ4の両方の内部に設けるようにしても上記第3実施形態と同様な効果が得られる。
本発明の第11実施形態は請求項9に係る発明の一実施形態である。この第11実施形態では、上記第8実施形態において、上記第10実施形態と同様に、定着ベルト3が加熱ローラ1により加熱されてから最初に加圧ローラ4と接触する位置の近傍で定着ベルトの内側にガイド部材としての補助ローラ12が設けられ、加圧ローラ4が定着ベルト3を介して補助ローラ12に加圧して第1の定着工程部分が形成されて第1の定着工程部分の定着圧が転写紙13のシワが生じない程度に低く設定される。
さらに、定着ベルト3が加熱ローラ1より離間する位置から定着ベルト3が最初に加圧ローラ4と接触する位置までの距離Lの間にて未定着トナー像を有する転写紙13に対して定着ベルト3が遠ざかるように(未定着トナー像に接触しないように)加熱ローラ1が配置され、加圧ローラ4が定着ベルト3を介して定着ローラ2に加圧して形成される第2の定着工程部分の定着圧は所望の定着性が得られる定着圧に設定される。
このようなベルト定着装置では、上記第9実施形態と同様に第1の定着工程部分の定着圧を0.5kg/cm2以下、好ましくは0.3kg/cm2以下に低く設定すれば転写紙13のシワ発生を防止できることが確認されている。また、第2の定着工程部分の定着圧は定着不良が発生しないように逆に十分な定着圧力を加える条件として図24の実験結果から0.5kg/cm2(4.9N/cm2)以上、好ましくは1.5kg/cm2以上必要であることがわかった。
そこで、この第11実施形態では、第1の定着工程部分の定着圧を0.5kg/cm2以下、好ましくは0.3kg/cm2以下に低く設定し、第2の定着工程部分の定着圧を0.5kg/cm2(4.9N/cm2)以上、好ましくは1.5kg/cm2以上に設定する。
このように、この第11実施形態は請求項9に係る発明の一実施形態であって、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4と、この加圧ローラ4と前記加熱ローラ1とのいずれか一方若しくは両方の内部に設けられた定着ベルト加熱用ヒータ5と、被定着材の搬送方向について前記定着ベルト3が最初に前記加圧ローラ4と接触する位置の近傍で前記定着ベルト3の内側に設けられたガイド部材としての補助ローラ12とを備え、前記定着ベルト3が前記加熱ローラ1より離間する位置から前記定着ベルト3が最初に前記加圧ローラ4と接触する位置までの間にて未定着トナー像を有する被定着材に対して前記定着ベルト3が遠ざかるように前記加熱ローラ1を配置し、前記ガイド部材12が前記定着ベルト3を介して前記加圧ローラ4により加圧される位置関係で形成される第1の定着工程部分の定着圧を被定着材のシワが生じない程度に0.5kg/cm2以下に低く設定し、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2をに圧して形成される第2の定着工程部分の定着圧を所望の定着性が得られる定着圧に設定したので、被定着材のシワや未定着画像のこすれ現象を十分に防止することができる。
なお、上記第11実施形態において、定着ベルト加熱用ヒータ5を加圧ローラ4の内部若しくは加熱ローラ1及び加圧ローラ4の両方の内部に設けるようにしても上記第4実施形態と同様な効果が得られる。
図25は上記第1実施形態において加圧ローラ4の内部にヒータ14を設けるようにしたベルト定着装置の例を示し、図26はその一部を拡大して示す。このベルト定着装置では、加圧ローラ4の表面温度がサーミスタからなる温度検知手段15により検知され、図示しない温度制御部はそのサーミスタ15の温度検知信号に基づいてヒータ14を加圧ローラ4の表面温度が所定の設定温度に保たれるようにオン/オフ制御する。
被定着材としての転写紙は入口ガイド板6により案内されて定着ベルト3と加圧ローラ4との間を通して搬送され、転写紙上のトナー像が定着ベルト3、加圧ローラ4で加熱されて転写紙に定着される。
このベルト定着装置では、加圧ローラ4内にヒータ14を設けて加圧ローラ4の表面温度を温度制御部により制御するので、転写紙をその裏面からも加熱することになり、定着性及びオフセット余裕度を一層増すことができる。
このベルト定着装置において、加圧ローラ4に内蔵されたヒータ14の効果について図27により説明する。定着性に影響するトナーと転写紙の界面温度Tfは一定とし、定着性を同じとしたときには図27に示すように加圧ローラ4の表面温度を70℃、160℃、190℃としたとき、定着ベルト3の温度は160℃、140℃、130℃と低くなる。
このことから、加圧ローラ4の表面温度を高く設定するほど定着可能領域の下限値を下げることが可能となる。一方、定着可能領域の上限値であるホットオフセット発生温度は、定着ベルト3とトナーとの界面温度T1に影響され、Tfは一定(用紙へのトナー定着性を表わす)としたとき、加圧ローラ温度が高いほどT1(定着ベルトとトナーの離型性を表わす)が低くなり、ホットオフセットは発生しにくくなる。
図28はそれを実験により検証した結果である。加圧ローラ4の表面温度が高いほど定着可能領域が拡大し、その中でホットオフセット発生温度はそれほど変化していないが、定着下限温度は下がる。
以上から、加熱ローラ1に加えて加圧ローラ4にもヒータ14を内蔵させると、更に定着可能領域が拡大し、その効果が十分に発揮されることがわかった。
このベルト定着装置においては、定着ベルト3と加圧ローラ4は、回転を始めると、互いに熱の授受があるので、温度が安定せず、画像品質の悪化(光沢ムラ、光沢低下)を招くことがある。特に、立ち上がり後、待機時から画像形成開始時にかけて定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の表面温度との差が大きいと、定着ベルト3の温度は加圧ローラ4の表面温度に影響されるから、定着ベルト3及び加圧ローラ4がしばらく回転して定着ベルト3の温度が安定するまでは画質が良好にならない。このような不具合を防止するためには、定着ベルト3の温度の設定値と加圧ローラ4の表面温度の設定値との差を実質的に好ましくは40℃以下に設定しておけば、定着ベルト3の温度が加圧ローラ4の表面温度に影響されて画質の悪化を招くことは少ないことが確認された。
このベルト定着装置においては、定着ベルト3の回転直後には定着ベルト3自体の熱容量の一部が定着ニップ部において加圧ローラ4に奪われるために定着ベルト3の温度が大きく落ち込む。しかし、定着ベルト3の回転時間の経過と共に加圧ローラ4の温度が上昇していくため、定着ニップ部の定着ベルト温度は漸次に上昇していく。
従って、プリントスタート直後(画像形成装置の画像形成動作開始直後)と連続画像形成動作終了時の定着品質(特に画像光沢度)に大きな差が生ずることが問題となる。この問題を防止する手段の一つとしては、加圧ローラ4の温度が所定の温度になるまで加圧ローラ4や定着ベルト3等の回転体のプレ回転を行うようにしてもよい。しかし、かかる方法では、待ち時間が長くなり、操作性が低下する。
そこで、本発明の第12実施形態は、第1実施形態における加圧ローラ4の内部にヒータ14を設けるようにしたベルト定着装置において、定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の表面温度との差が回転動作時に40℃以下になるように定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の表面温度の各設定値を設定したものである。上記温度制御部はサーミスタ7の温度検知信号に基づいてヒータ5を定着ベルト3の表面温度が設定温度に保たれるようにオン/オフ制御する。また、上記温度制御部は加圧ローラ4の表面温度を検知するサーミスタの温度検知信号に基づいてヒータ14を加圧ローラ4の表面温度が設定温度に保たれるようにオン/オフ制御する。
図31は、この第12実施形態において、定着ベルト3の温度を130℃に設定し、加圧ローラ4の設定温度を可変してプリントスタート直後の定着画像と、プリントスタート後に画像形成装置で50枚のプリント(画像形成)を行った時の定着画像との光沢度の差を確認した結果を示す。例えば、定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の温度との設定温度差が50度有る状態として、加圧ローラ4の温度を80℃に設定した場合には、1枚目プリント時の画像光沢度が平均で約7%であり、50枚目プリント時の画像光沢度が平均で約20%であった。
また、定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の温度との設定温度差が40度有る状態として、加圧ローラ4の温度を90℃に設定した場合には、1枚目プリント時の画像光沢度が平均で約10%であり、50枚目プリント時の画像光沢度が平均で約20%であった。また、定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の温度との設定温度差が30度有る状態として、加圧ローラ4の温度を100℃に設定した場合には、1枚目プリント時の画像光沢度が平均で約13%であり、50枚目プリント時の画像光沢度が平均で約20%であった。
一般的に、画像光沢度差が視覚上あまり目立たない範囲としては10%以下が望ましいが、そのためには定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の温度との設定温度差を40℃以下に抑えることが望ましいと言える。また、定着温度と画像光沢度は相関性が高いため、その他の定着可能な範囲での設定温度を設けて確認したときも、ばらつきはあるが、ほぼ同じような結果であることが分かった。
また、別の方法として、加圧ローラ内にヒータを設けない場合は加圧ローラの温度が所定の温度(定着ベルトと加圧ローラの温度差を40℃以下にする)になるまで加圧ローラや定着ベルト等の回転体のプレ回転を行うようにする必要があるが、この場合プレ回転時間は極力短い方が待ち時間が少なくてよい。プレ回転時間を短くする方法としては加圧ローラを低熱量化して温度回復を早くするか、また、加圧ローラの離型層の下に断熱層を設けて温度落ち込みをなくす方法がある。本発明のベルト定着装置は(低温)低圧定着がその特徴の一つであり、そのため加圧ローラを薄肉化して低熱容量加圧ローラとして用いることができる。なお、本発明のベルト定着装置に用いた加圧ローラの熱容量としては36cal/℃以下(本例ではローラ径が40〜60mm、且つローラ肉厚が0.3〜1.5mmの範囲で使用可能)である。
このように、第12実施形態は、請求項10に係る発明の一実施形態であって、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4と、前記加熱ローラ1及び前記加圧ローラ4の両方の内部に設けられた2つのヒータ5、14とを備え、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に圧接することなく前記定着ベルト3に接触して形成されて被定着材に対する第1の定着工程を行う部分の定着圧を被定着材のシワが生じない程度に低く設定し、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に圧接して形成されて被定着材に対する第2の定着工程を行う部分の定着圧を所望の定着性が得られる定着圧に設定したベルト定着装置において、前記定着ベルト3と前記加圧ローラ4との温度差が回転動作時に40℃以下となるように前記定着ベルト3及び前記加圧ローラ4の温度設定を行ったので、被定着材上の画像の光沢ムラを防止することができ、定着性を良好にできる。
本発明の第13実施形態では、上記第12実施形態において、被定着材の種類に応じてヒータ5、14を点灯させる制御手段が設けられる。この制御手段は、上記温度制御部に対して、本実施形態が用いられる画像形成装置にて被定着材として普通紙(秤量で100g/m2以下の用紙)が選択されて使用されるモードではヒータ5、14のいずれか一方のヒータをオフのままとさせて他方のヒータのみを上述のようにオン/オフ制御させ、本実施形態が用いられる画像形成装置にて被定着材として特殊紙(秤量で90g/m2以上の用紙やOHP用紙)が選択されて使用されるモードではヒータ5、14の両方を上述のようにオン/オフ制御させる。この結果、定着性が被定着材の種類に関係なく良好になり、従来の熱ローラ定着装置のように特殊紙を使用する場合には普通紙を使用する場合に比べて定着温度を上げたり(ホットオフセット余裕度が狭くなる)画像形成速度を大幅に落としたりする必要もなくなった。
このように、第13実施形態は、請求項11に係る発明の一実施形態であって、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4と、前記加熱ローラ1及び前記加圧ローラ4の両方の内部に設けられた2つのヒータ5、14とを備え、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に圧接することなく前記定着ベルト3に接触して形成されて被定着材に対する第1の定着工程を行う部分の定着圧を被定着材のシワが生じない程度に低く設定し、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に圧接して形成されて被定着材に対する第2の定着工程を行う部分の定着圧を所望の定着性が得られる定着圧に設定したベルト定着装置において、被定着材として普通紙を使用するモードが選択された時には前記2つのヒータ5、14のいずれか一方を点灯させ、被定着材として特殊紙を使用するモードが選択された時には前記2つのヒータ5、14の両方を点灯させる手段を備えたので、被定着材の種類に関係なく定着性を良好にできる。
なお、この第13実施形態において、上記制御手段は、上記温度制御部に対して、単色の画像形成を行う単色モードとフルカラーの画像形成を行うフルカラーモードとを選択的に行う画像形成装置にて被定着材として普通紙が選択されて使用されるモードの代りに単色モードでヒータ5、14のいずれか一方のヒータをオフのままとさせて他方のヒータのみを上述のようにオン/オフ制御させ、画像形成装置にて被定着材として特殊紙が選択されて使用されるモードの代りにフルカラーモードでヒータ5、14の両方を上述のようにオン/オフ制御させるようにしてもよい。
本発明の第14実施形態では、上記請求項12に係る発明の一実施形態において、画像形成モードに応じて定着ベルト3や加圧ローラ4などの回転体の設定温度を変更する制御手段が設けられる。この制御手段は、画像形成モードとして被定着材の片面のみに画像形成を行う片面画像形成モードと被定着材の両面に画像形成を行う両面画像形成モードとを選択的に行う画像形成装置にて片面画像形成モードが選択されて被定着材の片面のみに画像形成が行われる場合には上記回転体の設定温度を定着ベルト3の温度<加圧ローラ4の表面温度になるように設定し、画像形成装置にて両面画像形成モードが選択されて被定着材の両面に画像形成が行われる場合には上記回転体の設定温度を定着ベルト3の温度>加圧ローラ4の表面温度になるように設定する。
従って、片面画像形成モードでは、上記第12実施形態と同様に加圧ローラ4から被定着材の裏面への熱供給を極力多くして定着ベルト3から被定着材の表面への熱供給を極力少なくすることで、定着ベルト3とトナーとの界面温度を低くすることによって、ホットオフセットに対する余裕度を向上させることができる(図27及び図28参照)。
また、両面画像形成モードでは、被定着材裏面画像定着時に、先に定着した被定着材表面画像は再度定着ニップ部を通過する際に加圧ローラ4から熱供給を受けて光沢が増し、被定着材表裏の画像に光沢差が生じてしまう恐れがあるが、この現象を極力少なくするために、上記回転体の設定温度を定着ベルト3の温度>加圧ローラ4の表面温度になって被定着材表面画像がそれ以上熱を受けないように設定したことにより、定着性を良好にできる。
このように、第14実施形態は、請求項12に係る発明の一実施形態であって、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4と、前記加熱ローラ1及び前記加圧ローラ4の両方の内部に設けられた2つのヒータ5、14とを備え、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に圧接することなく前記定着ベルト3に接触して形成されて被定着材に対する第1の定着工程を行う部分の定着圧を被定着材のシワが生じない程度に低く設定し、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に圧接して形成されて被定着材に対する第2の定着工程を行う部分の定着圧を所望の定着性が得られる定着圧に設定したベルト定着装置において、画像形成モードとして片面画像形成モードが選択された場合には回転動作時に前記定着ベルト3の温度<前記加圧ローラ4の温度になるように温度設定を行い、画像形成モードとして両面画像形成モードが選択された場合には回転動作時に前記定着ベルト3の温度>前記加圧ローラ4の温度になるように温度設定を行ったので、片面画像形成モードでは定着ベルトとトナーとの界面温度を低くすることによって、ホットオフセットに対する余裕度を向上させることができ、両面画像形成モードでは被定着材表裏の画像の光沢差を極力少なくすることができて定着性を良好にでき、画像形成モードに関係なく定着性を良好にできる。
本発明の第15実施形態では、上記第14実施形態において、上記制御手段は、画像形成装置にて両面画像形成モードが選択されて被定着材の両面に画像形成が行われる場合には上記回転体の設定温度を定着ベルト3の温度>加圧ローラ4の表面温度になり、かつ、定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の温度との差が30℃以上になるように設定する。この結果、両面画像形成モードでは被定着材表裏の画像の光沢差が視覚上あまり目立たない範囲になることを確認できた。
上記第1実施形態においては、画像形成装置で両面画像形成モードが選択されて転写紙の両面に画像が形成された場合、定着ベルト3の温度及び加圧ローラ4の温度の条件により転写紙の表面と裏面とではその付着トナーに付与される定着熱量に差があって、程度の違いこそあれ、転写紙の両面の画像光沢度に差が生ずることは言うまでもない。
第15実施形態では、両面画像形成モードが選択されて被定着材の両面に画像形成が行われる場合には上記回転体の設定温度を定着ベルト3の温度>加圧ローラ4の表面温度になり、かつ、定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の温度との差が30℃以上になるように設定したが、図32は定着ベルト3の温度を130℃とし、加圧ローラ4の設定温度を可変して転写紙の両面の画像光沢度の差を確認した結果を示す。
例えば、定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の温度との差が20度有る状態として、加圧ローラ4の温度を110℃に設定した時には、転写紙の表面の画像光沢度が平均で約29%であるのに対し、転写紙の裏面の画像光沢度が平均で約14%であった。また、定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の温度との差が30度有る状態として、加圧ローラ4の温度を100℃に設定した時には、転写紙の表面の画像光沢度が平均で約23%であったのに対し、転写紙の裏面の画像光沢度が平均で約13%であった。また、定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の温度との差が50度有る状態として、加圧ローラ4の温度を80℃に設定した時には、転写紙の表面の画像光沢度が平均で約13%であるのに対し、転写紙の裏面の画像光沢度が平均で約7%であった。
上述と同様に画像光沢度差が視覚上あまり目立たない範囲としては10%以下を目標として設定した。かかる条件においては、定着ベルト3の温度と加圧ローラ4の温度との差が30℃以上である範囲が望ましい範囲と言える。また、定着温度と画像光沢度は相関性が高いため、その他の定着可能な範囲での設定温度を設けて確認したときも、ほぼ同じような傾向を示した。
また、加圧ローラ4を所望の温度に設定することは容易であるが、連続プリント時には加圧ローラ4の温度は漸次に上昇していくため、その温度上昇を防止するための冷却手段を設ける必要がある。そこで、例えば、冷却作用のあるローラや冷却ファンを両面画像形成モードが選択された時に必要に応じて加圧ローラ4に接離させたり、オン/オフさせたりしてもよい。
また、転写紙の両面の画像光沢度差を少なくする別の方法としては、加圧ローラ表面の離型層の表面粗さを大きくして、加圧ローラ側の画像面の光沢度が更に大きくなることのないようにしてもよい。このとき、加圧ローラ表面の離型層の表面粗さを大きくする方法としては離型層中心及び表面にカーボン、グラファイト、酸化チタン等の外添剤を分散させてもよい。
このように、第15実施形態は、請求項13に係る発明の一実施形態であって、請求項12記載のベルト定着装置において、両面画像形成モードが選択された場合には回転動作時に前記定着ベルト3の温度>前記加圧ローラ4の温度になり、かつ、前記定着ベルト3の温度と前記加圧ローラ4の温度との差が30℃以上になるように温度設定を行ったので、両面画像形成モードでは被定着材表裏の画像の光沢差を視覚上あまり目立たない範囲にすることができ、画像形成モードに関係なく定着性を良好にできる。
本発明の第16実施形態は、上記第12実施形態において、図29に示すように定着ローラ2の表面硬度を加圧ローラ4の表面硬度より大きくし、第1の定着工程を行う部分8のニップを凸形状となし、第2の定着工程を行う部分9のニップを凹形状となしたものであり、被定着材のデカール(カール防止)と分離爪無し(ローラ傷防止)を達成することができる。なお、加圧ローラ4内にはヒータ14を設けてもヒータ14を省略してもよい。
この第16実施形態では、上記構成により、被定着材のカールを矯正し、被定着材のカールを防止することができる。上記第12実施形態では、定着ローラ2側には分離爪が不要になるが、加圧ローラ4側には分離爪が必要である。本実施形態では、出口側の第2の定着工程を行う部分のニップを加圧ローラ4側に被定着材が巻き付かない方向として凹形状としたことで、加圧ローラ4側にも分離爪が不要となる。
このように、第16実施形態は、請求項14に係る発明の一実施形態であって、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4と、前記加熱ローラ1及び前記加圧ローラ4の両方の内部に設けられた2つのヒータ5、14とを備え、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に圧接することなく前記定着ベルト3に接触して形成されて被定着材に対する第1の定着工程を行う部分の定着圧を被定着材のシワが生じない程度に低く設定し、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に圧接して形成されて被定着材に対する第2の定着工程を行う部分の定着圧を所望の定着性が得られる定着圧に設定したベルト定着装置において、前記定着ローラ2の表面硬度を前記加圧ローラ4の表面硬度より大きくし、前記第1の定着工程を行う部分のニップを凸形状となし、前記第2の定着工程を行う部分のニップを凹形状となしたので、分離爪が不要でカール取りローラを用いずに被定着材のカールを防止することができる。
なお、定着ローラ2の表面硬度を加圧ローラ4の表面硬度より小さくして第2の定着工程を行う部分のニップを凸形状となした場合には、転写紙が加圧ローラ4側に巻き付いたり、またそれを防止するための分離爪が必要であるが、少なくとも定着ローラ2側に転写紙が巻き付くことはなく、また転写紙の巻き付きを防止するための分離爪が不要となる。
本発明の第17実施形態は、上記第12実施形態において、図30に示すように定着ローラ2の表面硬度と加圧ローラ4の表面硬度とを略同一とし、第2の定着工程を行う部分9のニップを略直線となしたものであり、分離爪無し(ローラ傷防止)を達成することができる。なお、加圧ローラ4内には、ヒータ14を設けてもヒータ14を省略してもよい。
上記第12実施形態では、定着ローラ2側には分離爪が不要になるが、加圧ローラ4側には分離爪が必要である。第17実施形態では、出口側の第2の定着工程を行う部分9のニップを加圧ローラ4側に被定着材が巻き付かない方向として略直線形状としたことで、加圧ローラ4側にも分離爪が不要となる。
このように、第17実施形態は、請求項15に係る発明の一実施形態であって、定着ローラ2と、加熱ローラ1と、この加熱ローラ1及び前記定着ローラ2に張架された無端状定着ベルト3と、この定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に対向して設けられた加圧ローラ4と、前記加熱ローラ1及び前記加圧ローラ4の両方の内部に設けられた2つのヒータ5、14とを備え、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に圧接することなく前記定着ベルト3に接触して形成されて被定着材に対する第1の定着工程を行う部分の定着圧を被定着材のシワが生じない程度に低く設定し、前記加圧ローラ4が前記定着ベルト3を介して前記定着ローラ2に圧接して形成されて被定着材に対する第2の定着工程を行う部分の定着圧を所望の定着性が得られる定着圧に設定したベルト定着装置において、前記定着ローラ2の表面硬度と前記加圧ローラ4の表面硬度とを略同一とし、前記第2の定着工程を行う部分のニップを略直線となしたので、分離爪が不要となる。
なお、定着ローラ2の表面硬度を加圧ローラ4の表面硬度より小さくして第2の定着工程を行う部分のニップを凸形状となした場合には、転写紙が加圧ローラ4側に巻き付いたり、またそれを防止するための分離爪が必要であるが、少なくとも定着ベルト3側に転写紙が巻き付くことはなく、また転写紙の巻き付きを防止するための分離爪が不要となる。