JP2007076011A - 複合成形体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 樹脂フィルムの結晶化を促進できるとともに耐熱性を付与することができ、且つ生産性に優れる複合成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の複合成形体の製造方法は、予め成形された成形体本体10を熱成形機7内に配し、熱成形機7内で所定温度に加熱又は維持された成形体本体10に樹脂フィルム11を熱成形することで積層し、成形体本体10と樹脂フィルム11とを複合化する。成形体本体10と樹脂フィルム11とを積層させた状態で樹脂フィルム11の結晶化処理を行う。
【選択図】 図4

Description

本発明は、成形体本体に樹脂フィルムを複合化した複合成形体の製造方法に関する。
成形体本体の表面を樹脂フィルムで被覆した複合成形体に関する従来技術は、例えば、パルプモールド容器に直接樹脂フィルムをラミネートする技術として、下記特許文献1記載の技術が知られている。
一方、近年、環境問題に対応し、生分解性フィルムとして知られているポリ乳酸をラミネートフィルムに用いることが試みられている。しかし、特許文献1に記載の技術に、十分に結晶化されていないポリ乳酸の樹脂フィルムを適用して複合容器を製造しても、熱によってフィルムが容易に収縮してしまうため、実用的な複合容器は得られなかった。
特許文献2には、ポリ乳酸の結晶化を促進させる技術として、ポリ乳酸を主体とする樹脂成分と結晶核剤とを含む樹脂組成物からなるシートから成形体を製造するときに、その結晶化処理を行うために成形終了後も高温状態の金型内で成形体を保持することで、結晶化を促進させる技術が提案されている。
そこで、特許文献2の技術により得られた樹脂成形体を予め成形された成形体と複合化させることが考えられるが、工程が多くなって生産性が悪く、設備も大がかりなものとなるため、コストがかかり実用的ではない。
特開平10−218235号公報 特開2003−253009号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、樹脂フィルムの結晶化を促進できるとともに耐熱性を付与することができ、且つ生産性に優れる複合成形体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、予め成形された成形体本体を熱成形機内に配し、該熱成形機内で所定温度に加熱又は維持された該成形体本体に樹脂フィルムを熱成形することで積層し、該成形体本体と該樹脂フィルムとを複合化する複合成形体の製造方法であって、前記成形体本体と前記樹脂フィルムとを積層させた状態で該樹脂フィルムの結晶化処理を行う複合成形体の製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
また、本発明は、予め成形された成形体本体を熱成形機内に配し、該熱成形機内で該成形体本体に樹脂フィルムを熱成形することで積層し、該成形体本体と該樹脂フィルムとを複合化する複合成形体の製造方法であって、複合化した前記成形体本体と前記樹脂フィルムとを前記熱成形機から取り出した後、該樹脂フィルムを加熱して結晶化処理を行う複合成形体の製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
本発明の複合成形体の製造方法は、樹脂フィルムの結晶化を促進できるとともに耐熱性を付与することができ、且つ生産性に優れる。
以下本発明の複合成形体の製造方法をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の製造方法で製造された2層構造の複合成形体1を示す。図1に示すように、成形体本体10(樹脂フィルムと複合化される前の複合成形体)は内層111と外層112を有するパルプモールド成形体2から成り、その開口周縁部の外側に延出するフランジ部114を有する。本実施形態の複合成形体1は、成形体本体10の内面113からフランジ部114の上面部、側面部及び下面部を経てフランジ部114の下方に位置する部分の外面部115の一部分まで樹脂フィルム11で被覆されている。
先ず、第1実施形態による複合成形体1の製造方法について説明する。
本実施形態の複合成形体の製造方法は、予め成形された成形体本体10を成形型(熱成形機)7(図4参照)内に配し、成形型7内で所定温度に加熱又は維持された成形体本体10に樹脂フィルム11を熱成形することで積層し、成形体本体10と樹脂フィルム11とを複合化する。そして、成形体本体10と樹脂フィルム11とを積層させた状態で樹脂フィルム11の結晶化処理を行うものである。以下、さらに詳細に説明する。
前記成形体本体10を構成するパルプモールド成形体2の製造方法について説明する。
まず、湿式抄造法により、2個のパルプ繊維積層体を個別に製造する。次いで、これらを乾燥させ、重ね合わせて接着剤により接着させて2層構造のパルプモールド成形体2(成形体本体10)を製造する。本実施形態では、接着剤はこれらパルプ繊維積層体の表面に部分的に塗布する。なお、乾燥前にそれぞれのパルプ繊維積層体を重ね合わせ、その後乾燥させて2層構造の成形体本体10を製造してもよい。
図2は、パルプ繊維積層体3の製造装置を模式的に示したものである。まず図2(a)のように、凸形状の弾性体の抄紙型4と外枠5を組み合わせ、組み合わせによって生じた空間に、パルプスラリー注入口50からパルプスラリーを注入する。次いで、抄紙型4内に形成された気液体通路40を吸引手段(図示せず)で吸引し、図2(b)に示すように、抄紙型4上に設置された抄紙ネット(図示せず)上にパルプ繊維積層体3を形成させる。
その後、図2(c)に示すように、繊維積層体3を抄紙型と共にヒーター60を内蔵する乾燥型6と組み合わせて繊維積層体を加熱・押圧して乾燥させてそれを取出し、図2(d)に示すパルプモールド成形体2を得る。なお、乾燥型6の材質はアルミニウム合金である。
同様な装置を用いて、前記のパルプモールド成形体2よりも、その壁厚分小さいパルプモールド成形体を製造し、次いで、これら2個のパルプモールド成形体を一体化してフランジ部の端部を切断し、フランジ部を有し、内外層共にパルプモールド成形体から成る2層構造の成形体本体10を得る。パルプモールド成形体どうしは、本実施形態のように接着剤を使用して部分的に接着してもよいし、接着剤を用いずに嵌合のみで一体化させてもよい。
本発明者らの検討結果によれば、本発明の複合成形体を構成する成形体本体の熱容量Cを、積層された樹脂フィルムの面積Sで割った値C/Sが特定の範囲とすると、後述するように樹脂フィルムの結晶化を促進化させる上でより効果的であることがわかった。そのC/Sの好ましい範囲は、0.01J/K・cm2以上で、より好ましくは0.03J/K・cm2以上、さらに好ましくは0.05J/K・cm2以上である。
上記熱容量を有する成形体本体として、本実施形態のようにパルプ繊維を含む成形体(パルプモールド成形体)が所望の形状が容易に得られ、安価で再利用ができる観点から好ましい。前記成形体本体の嵩密度は、樹脂フィルム11の結晶化を促進する上の熱容量を確保する上で、0.2〜1.2g/cm3が好ましい。なお、パルプモールド成形体は、パルプ繊維を抄紙することによって直接的に製造された希望とする形状や大きさの成形体を意味する。
前記成形体本体10を多層構造にし、内層を外層よりも低密度にする場合に、該内層にマーセル化処理や架橋処理等を施したパルプ繊維(嵩高処理パルプ)を含有させると、所望の密度に調整しやすい。架橋処理パルプ繊維としてはカールドファイバーが挙げられるが、密度調整の容易さや原料としてパルプスラリーを用いる場合のパルプ繊維の分散性を考慮すると、湿潤カールドファクタが0.1〜1.0、特に0.2〜0.6のカールドファイバーが好ましい。
前記成形体本体には、パルプモールド成形体以外にも、板紙を組み立てた容器などのパルプ製成形体や、木材、繊維、プラスチック、エラストマー、金属、ガラス、セラミックス等の素材を1種もしくは複数種を組み合わせた成形体も使用可能である。成形方法も、使用する素材や成形体形状により、抄紙、圧縮成形、プレス成形、真空成形、圧空成形、押出成形、射出成形、切削加工、組立加工等の種々の手段を適宜使用可能である。
次に、成形体本体10と樹脂フィルム11とを複合化して、複合成形体1を得るまでの工程について説明する。なお、図3〜図4に掲げられた成形体本体及び複合成形体は、全て実際には2層構造であるが、便宜上、単層構造として記載されている。
まず、図3に示すように、成形体本体10を成形型7内に収容する。成形型7の上部には、環状の口部部材8が配置されている。
成形型7の内周面70には、格子状の通気溝(図2では縦の通気溝のみ図示)700が設けられ、底面部71には前記の通気溝700に通じる通気溝710が設けられている。これらの通気溝のうち、通気溝700は、後述する空間80に通じる。通気溝710は図中では放射状に設けられているが、形状や加工方法等に応じて同心円状や格子状など自由に変更可能である。
なお、図示していないが、成形型7は、冷却水路やヒーターを備えるので、成形体本体10の温度制御が可能である。
口部部材8としては気密性と断熱性を有し、且つ吸引又は押圧によって変形する材質が好ましく、成形体本体10が成形型7内に収容されたときにその外面部115との間に樹脂フィルム11の一部が回り込む空間80を形成する段部81を有し、且つその外面部との間に空隙を形成する凸部82を有している。
口部部材8の材質としては、シリコーン系、フッ素系、EPT(エチレン・プロピレン・ターポリマー)、CR(クロロプレンラバー)、NBR(ニトリル・ブタジエン・ラバー)、ナチュラル・ラバー、ウレタンラバー等が挙げられる。
次に、成形体本体10と樹脂フィルム11とを複合化する方法について説明する
成形体本体10を成形型7内に収納し、樹脂フィルム11を構成し結晶化を行う樹脂のガラス転移温度以上、溶融温度以下であることが一般的で、結晶化温度をTcとした場合に、好ましくは(Tc−30)〜(Tc+40)℃、より好ましくは(Tc−20)〜(Tc+30)℃に加熱し維持する。斯かる温度範囲に加熱し維持することで、より短い時間での結晶化と高い結晶化度を得ることができる。本実施形態におけるガラス転移温度、溶融温度および結晶化温度は、例えば以下の方法で求めることができる。
測定機:セイコー電子工業(株)の型式DSC220
試料容器:品番PN/50−020(アルミ製オープン型試料容器、容量15μl)および品番PN/50−021(アルミ製オープン型試料容器クリンプ用カバー)
試料重量:約10mg
昇温速度、降温速度:10℃/min
測定温度範囲:用いる樹脂に応じて、ガラス転移温度、溶融温度および結晶化温度の3つの相転移を測定範囲に含むよう、最適な範囲を選択する。10℃/minで融解させ[第1昇温過程]、次に10℃/minの速度で結晶化させ[降温過程]、再度10℃/minの速度で昇温させる[第2昇温過程]測定を行う。結晶化温度は[降温過程]での結晶化のピーク温度を求め、ガラス転移温度及び融解温度(ピーク温度)は[第2昇温過程]から求めることができる。
図5は、実施例で使用した樹脂のデータで、[第1昇温過程]10℃から210℃、[降温過程]210℃(3分間保持)から10℃、[第2昇温過程]10℃(3分間保持)から210℃と連続して測定を行ったデータから溶融温度及び結晶化温度を求めた結果を示している。図6は、図5の[第2昇温過程]の微分曲線で、ガラス転移温度を求めた結果を示している。
この状態で、図4(a)に示すように、樹脂フィルム11の周囲を枠体9で挟み、樹脂フィルム11を樹脂フィルム用ヒーターHで加熱して軟化させる。樹脂フィルム11の温度は、その材質、厚み、面積等に応じて適宜設定する。
樹脂フィルム11の材質は、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂が挙げられる。
具体的には、熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンとポリブチレンサクシネートとの混合物若しくは共重合物、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシバリレートとの共重合物、ポリブチレンサクシネートとポリブチレンアジペートとの混合物若しくは共重合物、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンサクシネートとの共重合物、ポリブチレンテレフタレートとポリブチレンアジペートとの共重合物が挙げられる。また、上記熱可塑性ポリエステル樹脂には、共重合成分として、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、p−オキシ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸や、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ナフタレンジオール等のグリコール成分の1種もしくは2種以上が、重合体中に共重合されていても良い。上記ポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩、無水マレイン酸等で変性された酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、グリシジルメタクリレート等を共重合したエポキシ変性ポリエチレン等のオレフィン系樹脂等、上記ポリ(メタ)アクリル系樹脂としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート(以下、両方を総称して、(メタ)アクリレートと称する)、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの低級アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等の単独重合体またはこれらを共重合した共重合(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体等、上記ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ポリメチルスチレン等、上記ポリカーボネート系樹脂としては、ポリ(オキシカルボニルオキシビス(1,4−(3,5−ジクロロフェニレン))、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンブチリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンシクロヘキシリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレン−1,3−ジメチル−ブチリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンジフェニル−メチレン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンエチリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンイソブチリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンイソプロピリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレン−1−メチル−ブチリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレン−1−プロピル−ブチリデン−1,4−フェニレン)等のビスフェノール系の樹脂等、上記ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系樹脂が挙げられ、使用に際しては1種若しくは2種以上を併用して用いることができる。複合成形体を生分解性とする場合には、フィルム11にも生分解性の材料を用いる。この場合フィルム11の材質としては、生分解性を有する脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルとの共重合系樹脂、又は脂肪族ポリカーボネート系樹脂が好ましい。具体的には、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンとポリブチレンサクシネートとの混合物若しくは共重合物、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシバリレートとの共重合物、ポリブチレンサクシネートとポリブチレンアジペートとの混合物若しくは共重合物、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンサクシネートとの共重合物、ポリブチレンテレフタレートとポリブチレンアジペートとの共重合物等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、本実施形態における樹脂フィルム11には、構成の少なくとも一部(例えば多層構成の一部の層など)に結晶性の樹脂が使用される。該結晶性の樹脂には、加熱状態を維持することで結晶化が進行する、室温(20℃程度)よりも高いガラス転移温度を有するものが使用される。
樹脂フィルム11の構成としては、融解温度の高い結晶性の熱可塑性樹脂と、軟化温度が低く成形体本体との接着性に優れる熱可塑性樹脂との積層体が最も好ましい。
前記ヒーターHは、図示しない駆動機構によって移動可能である。ヒーターHの熱源に特に制限はないが、輻射熱による加熱の場合は樹脂フィルム11を容易に均一軟化させることが容易な赤外線ヒーターが好ましい。また、加熱板を樹脂フィルム11に接触させて、樹脂フィルム11を軟化させてもよい。この場合には、加熱板に樹脂フィルム11の溶着を防止するための表面処理、たとえば四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂をその表面にコートしておくのがよい。
次に、前記ヒーターHを成形型7の上方より遠ざけ、図4(b)に示すように、枠体9を降下させて軟化した樹脂フィルム11で成形体本体10の開口部を塞ぎ、且つ前記口部部材8の外周縁部84に樹脂フィルム11を密着させる。
次に、図4(c)に示すように、樹脂フィルム11にプラグPを当接させながら樹脂フィルム11を成形体本体10内に押し込む。なお、枠体4を降下させる代わりに、枠体4及び成形型7を上昇させたり、枠体4を移動させず、成形型7を上昇させ、プラグPを下降させる等の方法で樹脂フィルム120を成形体本体11内に導入してもよい。
前記プラグPは、プラグ用ヒーター(図示せず)を備え且つ樹脂フィルム11の溶着防止のためにフッ素樹脂等で表面処理を施されていることが好ましい。前記樹脂フィルム11を成形型7内に導入するときの当該樹脂フィルム11に当接させるプラグPの温度は、プラグPの寸法形状、前記樹脂フィルム11の材質、厚み、導入速度等に応じて適宜設定することができるが、樹脂フィルムの変形不足や過剰変形防止の観点から、加熱された樹脂フィルム11と略同じ温度とするのが好ましい。
またプラグPは、樹脂フィルム11の穴あき防止の点から先端に曲面加工が施されているものが好ましい。また、成形品の肉厚分布を均等にする手段として、外周面の全体又は前方部に所定角度のテーパ面を有して先細る形状のものを用いることもできる。
次に、図4(d)に示すように、成形体本体10を介し、前記成形型7内を通気路711を通して吸引して成形体本体10の内面に樹脂フィルム11を接触させて成形する。
成形型7内を吸引すると、前記流通溝700を通して前記空間80及び空隙83も吸引される。この吸引によって、樹脂フィルム11のフランジ部114近傍部分が変形しながらフランジ部114の上面、下面および外面部115の上部に回り込んでこれらの部分に密着する。
樹脂フィルム11のかかる変形密着に伴い、口部部材8の凸部82が次第に成形体本体10の外面部115に接近するように変形して空隙83の幅が減少し(図4(e)参照)、最終的にはこの空隙が殆ど閉塞される。以上の操作によって、樹脂フィルム11は、吸引により変形しつつフランジ部114を被覆する。なお、フランジ部114の全体が樹脂フィルムで被覆されるのが好ましく、フランジ部全体に加えて、胴部の一部も樹脂フィルムで被覆されることも好ましい。
通気路721を通した吸引の吸引力は、樹脂フィルムの変形不良防止の観点から0.1MPa〜0.03MPaが好ましい。
上記の方法では、パルプモールドが通気性を持つことを利用して樹脂フィルムを複合化しているが、成形体本体が通気性を持たない場合には、例えばチャンバー内に成形体本体を入れてチャンバー内を真空吸引した上でフィルムを熱成形して積層するスキンパック法を用いることで複合化が可能である。
そして、成形体本体10と樹脂フィルム11とを接触させたままの状態で樹脂フィルム11の結晶化処理を行うが、前記樹脂フィルム11の結晶化処理が終了する前に樹脂フィルム11とともに成形体本体10を成形型7から取り出すことが好ましい。そうすることで、型内での保持時間を短くできるため生産性が大幅に向上する。取り出しに際しては、成形体本体10を介した吸引を停止し、図4(e)に示すように、プラグPを成形型7内から退避させる。その後、枠体9を上昇させて樹脂フィルム11で被覆された成形体本体10を成形型7から分離し、該枠体9から樹脂フィルム11を外し、樹脂フィルム11の不要部分(バリ)を除去する。
さらに、成形型7から脱型した後、成形体本体10の保持する熱によって樹脂フィルム11の結晶化処理をさらに継続する。成形体本体の熱容量では十分でない場合や生産性をより高めるためには、トンネルヒーター等の加熱手段又は温度維持手段を用いて前記結晶化処理を継続することが好ましい。成形体本体10を成形型7から取り出す際の結晶化度は、成形体本体の熱容量や脱型した後の加熱手段又は温度維持手段の有無によって決めることができる。
このようにして樹脂フィルム11の結晶化処理を終えた後、不要な部分のトリミング等を施して複合成形体1の製造を完了する。ただし、不要な部分のトリミングは結晶化処理の前に行うこともできる。
以上説明したように、本実施形態の複合成形体の製造方法は、成形体本体10の保持する熱(熱容量)によって樹脂フィルムの結晶化を促進でき、得られた成形体は樹脂フィルムの結晶化が図られたものであるため、耐熱性に優れたものである。また、結晶化処理の終了前に成形体本体を取り出せるため、成形型を次の成形体の製造に使用することができ、生産性に優れる。
本実施形態により得られる複合成形体は、成形体本体と樹脂フィルムが強固に融着しており、その後の加工工程や使用時に熱が加えられても収縮が抑えられる。また、樹脂フィルムの結晶化処理によって、樹脂フィルムの耐久性が向上しているため、種々の収容物の収容を行うための容器として使用可能であり、固体、液体、気体の何れの性状を有する収容物も特に制限なく収容できる。具体的な収容物としては、インスタント食品、菓子類、アイスクリーム、豆腐、プリン、ゼリー、ヨーグルト等の飲食品の他、各種医薬品、マヨネーズ、ドレッシング、味噌等の各種調味料、液体・粉末化粧料、液体・粉末洗剤、柔軟剤、糊剤等が挙げられる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の製造方法は、成形体本体と樹脂フィルムの複合化の工程が異なる以外は、第1実施形態の製造方法と同じであるので、以下の説明では、複合化の工程について説明する。
第2実施形態の製造方法は、予め成形された成形体本体を熱成形機内に配し、該熱成形機内で該成形体本体に樹脂フィルムを熱成形することで積層し、該成形体本体と該樹脂フィルムとを複合化するものであり、複合化した前記成形体本体と前記樹脂フィルムとを前記熱成形機から取り出した後、該樹脂フィルムを所定温度に加熱又は維持して結晶化処理を行うものである。
樹脂フィルムの結晶化処理に際し、複合化した前記成形体本体及び前記樹脂フィルムを、前記樹脂フィルムを構成し結晶化を行う樹脂のガラス転移温度以上、溶融温度以下であることが一般的で、結晶化温度をTcとした場合に、好ましくは(Tc−30)〜(Tc+40)℃、より好ましくは(Tc−20)〜(Tc+30)℃に加熱し維持する。斯かる温度範囲に加熱し維持することで、より短い時間での結晶化と高い結晶化度を得ることができる。斯かる温度範囲への加熱手段又は維持手段は、トンネルヒーター等の従来から知られている通常の加熱装置を用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
〔実施例1〕
嵩高処理パルプ50重量部と嵩高処理していないパルプ50重量部の繊維組成を有し密度が0.25g/cm3の成形体を内層とし、嵩高処理していないパルプ100重量部の繊維組成を有し密度が0.9g/cm3の成形体を外層とし、これら内外層が接合されたカップ形状の成形体本体を恒温槽で予め130℃に加熱し140℃に加熱した下記成形型内に配し、成形型の上方に下記枠体で下記樹脂フィルムを挟み、その上下から赤外線ヒーターで該樹脂フィルムを約180℃に加熱して軟化させた。なお、該成形体本体の大きさは、底辺の外径は70mm、開口部の外径は96mm、高さは107mm、フランジ部の延出長さは3.3mm、フランジ部の厚みは1.5mmである。
次に、前記樹脂フィルムに130℃の下記プラグを当接させて該樹脂フィルムを前記成形型内に押し込んだ後、該成形型内を下記条件で底面部の通気路を通して吸引し、該成形体本体の内面部及びフランジ部の上面、下面および外面部の上部に亘って樹脂フィルムを接触させて成形した。
その後、吸引を停止し、プラグを成形型内から退避させ、枠体を成形型の上方に移動させた後、該枠体から樹脂フィルムを解放し、樹脂フィルムで被覆された複合成形体を取り出し、所定位置で樹脂フィルムを切断して、図1に示すカップ形状の複合成形体を得た。樹脂フィルムが成形体本体に接触して積層されてから成形型から離れるまでの時間は10秒であった。取り出した後の成形体本体は、約27℃の室内にそのまま放置して十分に冷却した。成形体本体の熱容量Cを積層した樹脂フィルムの面積Sで割った値C/Sは、0.01J/K・cm2であった。冷却開始から24時間以上経過した後、下記の方法で積層された樹脂フィルムの結晶化の程度を評価した。評価結果は他の実施例の結果と合わせて表1にまとめた。
<成形型>
材質:アルミニウム合金
通気溝深さ:1mm
通気溝幅:2mm
通気溝面積率:32%
通気溝の形態:内周面は格子状(格子間隔10〜15mm)、底面部は放射状(隣接する溝の角度22.5度)
<口金部材>
材質:シリコーン発泡体(弾力性:硬度30度)
寸法形状:外径φ134mm、内径φ93.5mm、起立部の内径(31a)φ115 mm、最大厚み10mm
<プラグ>
材質:アルミニウム合金(フッ素樹脂で表面処理)
寸法形状:最小径φ50mm、最大径φ70mmのテーパ形状、コーナーR10mm
<枠体>
寸法形状:φ150mm
<樹脂フィルム>
材質:改質ポリ乳酸(ユニチカ(株)製、HSシート(商標名))
ガラス転移温度:61℃
融解温度:166℃
結晶化温度:106℃
厚さ:0.3mm
寸法:200mm×200mm
<圧空条件>
加圧:0.08Pa
<吸引条件>
吸引圧:0.053MPa
<結晶化の程度の評価>
複合成形体の胴部中央部から樹脂フィルムを剥離し、ガラス転移温度等を求めた前述と同様のDSC測定を行う。第1昇温過程で100℃近傍に観測される樹脂フィルムを構成する樹脂の結晶化に伴う発熱ピークの発熱量を図7のように求め、その発熱量の大きさで該樹脂の結晶化の程度を評価した。この評価方法からは、前記発熱量が大きいほど前記樹脂の結晶化度が低く、該発熱量が小さいほど該結晶化度が高いことがわかる。樹脂の結晶化が不十分である場合、それにより構成される樹脂フィルムの強度は低く、ガラス転移温度以上に加熱した場合には外力で破れや変形が生じたり、収縮により成形体本体から樹脂フィルムが剥がれるなどの耐熱性の問題が生じやすくなる。
〔実施例2〕
成形型から取り出した後の成形体本体をすぐに130℃の恒温槽に移して結晶化処理をさらに行い、30秒後に恒温槽から取り出して約27℃の室内で冷却した以外は、実施例1と同様にして複合成形体を得た。
〔実施例3〕
27℃の成形体本体を用い、27℃の成形型で実施例1と同様に樹脂フィルムを積層し、成形型から取り出した後の成形体本体をすぐに130℃の恒温槽に移して結晶化処理を行い、60秒後に恒温槽から取り出して約27℃の室内で冷却したて複合成形体を得た。
〔比較例〕 27℃の成形体本体を用い、27℃の成形型で実施例1と同様に樹脂フィルムを積層し、成形型から取り出した後の成形体本体を約27℃の室内で冷却したて複合成形体を得た。
表1は、結晶化処理時間と、樹脂フィルムを構成する樹脂の結晶化に伴う発熱量で結晶化の程度を評価した結果をまとめたものである。表1から明らかなように、比較例に比べ、本発明の方法で成形することで、短い成形型内の処理であるにもかかわらず、樹脂フィルムを構成する樹脂の十分な結晶化処理が行われており、耐熱性に優れていることがわかった。よって、斯かる樹脂フィルムで複合化された複合成形体も耐熱性に優れている。
Figure 2007076011
樹脂フィルムでフランジ部が被覆された本発明に係わる複合成形体を模式的に示す半断面図である。 本発明に係わる成形体本体を構成するパルプモールド成形体の製造装置を模式的に示す断面図であり、(a)は抄紙型を外枠内に配置した状態を示す図、(b)は抄紙型の表面に繊維積層体を形成させた状態を示す図、(c)は繊維積層体を抄紙型と共に乾燥型内に配した状態を示す図、(d)は乾燥させられた繊維積層体であるパルプモールド成形体を示す図である。 本発明に係わる成形体本体を樹脂フィルムで被覆するための製造型に収納した状態を示す図である。 本発明に係わる成形体本体を樹脂フィルムで被覆する工程を模式的に示す断面図であり、(a)は成形型内に成形体本体を配して樹脂フィルムを加熱している状態を示す図、(b)は樹脂フィルムで成形型の開口部を覆った状態を示す図、(c)はプラグによって樹脂フィルムを成形体本体内に押し込んだ状態を示す図、(d)は成形体本体を吸引し、成形体本体の表面に樹脂フィルムを変形密着させている状態を示す図、(e)は樹脂フィルムによる成形体本体表面の被覆が終了し、吸引を停止してプラグを退避させた状態を示す図である。 DSC測定によりガラス転移温度、溶融温度、結晶化温度を求める方法を示す図である。 DSC測定によりガラス転移温度、溶融温度、結晶化温度を求める方法を示す図である。 DSC測定により結晶化に伴う発熱ピークの発熱量を求める方法を示す図である。
符号の説明
1 複合成形体
10 成形体本体
111 内層
112 外層
113 内面
114 フランジ部
115 外面部
11 樹脂フィルム
2 パルプモールド成形体
3 繊維積層体
4 抄紙型
40 気液体通路
5 外枠
50 スラリー注入路
6 乾燥型
60 乾燥型内蔵ヒーター
7 成形型
70 内周面
700 格子状通気孔
71 底面部
710 放射状通気孔
711 通気路
8 口部部材
80 空間
81 段部
82 凸部
83 空隙
9 枠体
H 樹脂フィルム加熱用ヒーター
P プラグ

Claims (8)

  1. 予め成形された成形体本体を熱成形機内に配し、該熱成形機内で所定温度に加熱又は維持された成形体本体に樹脂フィルムを熱成形することで積層し、該成形体本体と該樹脂フィルムとを複合化する複合成形体の製造方法であって、
    前記成形体本体と前記樹脂フィルムとを積層させた状態で該樹脂フィルムの結晶化処理を行う複合成形体の製造方法。
  2. 前記熱成形機内で前記樹脂フィルムの結晶化処理を行う間、前記複合成形体を所定温度に加熱または維持する請求項1記載の複合成形体の製造方法。
  3. 前記所定温度を、前記樹脂フィルムを構成し結晶化を行う樹脂のガラス転移温度以上、溶融温度以下に制御する請求項1又は2に記載の複合成形体の製造方法。
  4. 前記樹脂フィルムの結晶化処理が終了する前に該樹脂フィルムとともに前記成形体本体を前記熱成形機から取り出した後、該結晶化処理をさらに継続する請求項1〜3の何れかに記載の複合成形体の製造方法。
  5. 前記成形体本体の熱容量Cを積層した前記樹脂フィルムの面積Sで割った値C/Sが0.01J/K・cm2以上である請求項1〜4の何れかに記載の複合成形体の製造方法。
  6. 加熱手段又は温度維持手段を用いて前記結晶化処理を継続する請求項4又は5記載の複合成形体の製造方法。
  7. 予め成形された成形体本体を熱成形機内に配し、該熱成形機内で該成形体本体に樹脂フィルムを熱成形することで積層し、該成形体本体と該樹脂フィルムとを複合化する複合成形体の製造方法であって、
    複合化した前記成形体本体と前記樹脂フィルムとを前記熱成形機から取り出した後、該樹脂フィルムを所定温度に加熱又は維持して結晶化処理を行う複合成形体の製造方法。
  8. 前記所定温度を、前記樹脂フィルムを構成し結晶化を行う樹脂のガラス転移温度以上、溶融温度以下に制御する請求項7記載の複合成形体の製造方法。

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