JP3805605B2 - 結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法とそれに用いる成形金型および成形された成形品 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂等の、結晶性を有する熱可塑性樹脂のシートを加熱成形しつつ、その結晶化を促進して、耐熱性に優れた成形品を得るための成形方法と、それに用いる成形金型、並びに上記成形方法で成形された成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
結晶性を有する熱可塑性樹脂、例えば結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)等の結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂の、発泡あるいは非発泡のシートから耐熱性に優れた成形品を得るために、特許第2849513号公報に記載された成形方法などが一般的に行われている。
この成形方法によって、例えば図4に断面を示すように、平板状の底部S10aの周囲に、側部S10bを所定の角度で立ち上げた形状を有する本体S10と、この本体S10の上部開口の周縁から外方へ延設したフランジS11とを有する、食品包装容器等の成形品S1を成形するには、長尺のシートSを図6に実線の矢印で示す方向に送りながら、まず予熱オーブン91中で、上下に配置したヒータ911、912と非接触の状態で予熱して軟化させる(予熱工程W1)。
【0003】
次にこの軟化したシートSを、縦横に複数個配置した成形金型92の、所定の温度に加熱された上型921と下型922とで挟み、真空成形、圧空成形、真空−圧空成形、マッチモールド成形、プラグアシスト成形等の成形方法によって、所定の成形品S1の形状に成形するとともに、成形金型92内で一定時間、保持して樹脂の結晶化を促進させる(加熱成形工程W2)。
次に、成形品S1が成形されたシートSを成形金型92から取り出し、同じく縦横に複数個配置した冷却金型93の、冷却された上型931と下型932とで挟んで、先の加熱成形工程W2での離型不良などによる成形品S1の全体的な歪み、すなわち本体S10のうち、側部S10bの立ち上がり角度の不規則な変化、底部S10aの湾曲、フランジS11の湾曲等や、あるいは局部的なシワ、凹凸などの成形不良を修復するとともに、この冷却金型93内で一定時間、保持して冷却することで、樹脂の結晶化が過剰に促進されるのを抑制する(冷却工程W3)。
【0004】
そして、冷却されたシートSを冷却金型93から取り出した後、図示しないトリミング工程で成形品S1をシートSから抜き出すことで、耐熱性に優れた、食品包装容器等の成形品が製造される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のうち加熱成形工程W2において、例えば真空−圧空成形によってシートSを成形する場合には、上記図6、並びに図7に示すように下型922として、成形品S1の本体S10の外形に対応した凹部922aを有する雌型が使用され、かつ上型921として、上記凹部922aを閉塞する平板状の型が使用される。
【0006】
そして、前記のように所定温度に加熱された上型921と下型922とでシートSを挟んだ状態で、下型922の凹部922a内に多数形成したエアー通気孔922bから、図7および図8(a)に一点鎖線の矢印で示すように凹部922a内のエアーを吸引し、かつ上型921に形成したエアー通気孔921aから、図7に一点鎖線の矢印で示すように凹部922a内にエアーを供給することで成形品S1が成形される。
【0007】
また成形されたシートSを成形金型92から取り出すには、シートSの、成形品S1が成形された領域以外の平板状の部分を、図6に示す上下のクランプ板941、942で挟んで固定した状態で、上下の型921、922を開くことにより、成形品S1を上下の型921、922から強制的に引き剥がして離型させることが行われる。
ところが従来は、上記のように成形品S1を強制的に離型させる際に、当該成形品S1のうち特に本体S10が、下型922の凹部922aからきれいに離型しない離型不良が発生しやすく、かかる離型不良が発生すると、クランプ板941、942で挟まれていないフリーな状態の成形品S1の全体(すなわち本体S10およびフランジS11)に引き剥がしの力が集中的に加わる結果、当該成形品S1に、冷却金型93で挟んだだけでは完全に修復できないような大きな歪みやシワ、凹凸等の成形不良が発生する。
【0008】
また、このような大きな成形不良が生じた成形品S1を、冷却工程W3で、冷却型93で挟んで修復しようとすると、冷却工程W3を経た成形品S1に修復跡が残る、いわゆるダブルイメージの不良が発生し、さらにトリミング工程で、冷却後の成形品S1を冷却型93と同形状の固定型で挟んだ状態で、シートSから抜き出す際に、成形品S1がずれた状態で固定型に挟まれるなどするために、所定の形状にきれいに抜き出せない、いわゆるトリミング不良が発生する。
【0009】
そしてその結果として、成形品製造の歩留まりが著しく低下するという問題を生じる。
また上記従来法では、外観が美麗で光沢のある成形品を製造することはできるものの、美麗でしかも高級感のある艶消しの成形品を製造することはできない。
さらに成形品が、例えばカップ麺容器等の食品包装容器である場合には、食品収容後のフランジの上面に、トップシールフィルムを熱シールするなどして封がされるのであるが、上記従来法で製造された成形品は、かかるトップシールフィルムの接着強度が不足する、いわゆるシール不良を生じやすいという問題もある。
【0010】
本発明の主な目的は、上記のような離型不良に起因する成形不良やダブルイメージ、トリミング不良などの発生を抑制して、成形品製造の歩留まりをこれまでよりも向上できる、新規な結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記成形不良などの原因である離型不良の発生をこれまでよりも低減できる、新規な成形金型を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、上記本発明の成形方法によって製造され、外観が美麗でしかも高級感のある艶消し面に仕上げられており、なおかつトップシールフィルムのシール不良を生じにくい、新規な成形品を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、発明者らはまず成形品の、成形金型からの離型方法について検討した。
そして成形時とは逆に、図7に実線の矢印で示すように上型921のエアー通気孔921aから凹部922a内のエアーを吸引するとともに、下型922のエアー通気孔922bから凹部922a内にエアーを供給することで、成形品S1の特に本体S10に直接に、離型のための圧力を加えて離型する方法を行うことを検討した。
【0013】
しかしこの方法単独では、加熱されて軟化した状態で、金型92の表面(特に図に示すように下側921の凹部922aの内面)に密着している本体S10のうち、エアー通気孔922bの周囲の極めて狭い領域にのみ、集中的にエアーの圧力が加わることになるため、それによって、図8(b)に示すように本体S10の、上記の狭い領域のみが局部的に膨らんで、シワなどの成形不良の原因になる。
【0014】
また本体S10の、エアー通気孔922bの近傍以外の領域は、エアー供給後も依然として金型表面と密着していることが多いため、上記の方法単独では離型が困難で、結果的に、前述したクランプ板941、942による強制的な離型を併用する必要があり、しかもこの併用によって強制的に離形した場合には、成形品S1の全体に無理な力が加わって歪みなどの成形不良がさらに大きくなるおそれもある。
【0015】
そこで発明者らは、成形金型を構成する上型および下型のうち、少なくとも成形品と接触する面の表面状態について検討した結果、
(a) これらの面が、従来は平滑面に仕上げられていたため、シートを加熱して成形された成形品が、かかる平滑面に軟化状態のままで密着すると、両者の間に高い密着力が生じて離型性が低下し、それに伴って前記のような種々の問題を生じること、
(b) これに対し、これらの面を微細な凹凸面に仕上げると、成形品の離型性をこれまでより向上して、前記のような種々の問題の発生を確実に防止できること、
を見出した。
【0016】
すなわち上型および下型の、少なくとも成形品と接触する面を微細な凹凸面に仕上げると、加熱成形工程で成形された成形品の表面は、ある程度は上記凹凸面に追従するものの完全には追従しきれないために、当該成形品の表面と金型表面との間に、上記凹凸に起因する微細な隙間が形成される。
このため、平滑面同士の密着に比べて両者の密着力を低減できる上、エアー通気孔を通して凹凸面にエアーを供給した際に、このエアーが、上記の隙間を通して広い面積に拡がる結果、エアーの圧力の、狭い領域への集中を防止することができる。
【0017】
しかも拡がったエアーが、成形品と金型表面との密着力をさらに低下させつつ、成形品の全体を均等な圧力で、金型表面から離型する方向に加圧するため、前述した成形不良などを発生させることなく、成形品をスムースに離型することが可能となる。
また従来の成形品において、トップシールフィルムの、フランジ上面へのシールの際にシール不良が発生するのも、当該フランジの上面に対応する金型の表面が、従来は平滑面であったことに原因がある。
【0018】
すなわち上記のように、フランジの上面に対応する表面が平滑面である金型を使用して成形した成形品は、当然ながら、フランジの上面が平滑面となるため、トップシールフィルムを熱シールなどした際の接着面積が小さく、かつ接着剤の濡れ性が低くなり、結果として、トップシールフィルムのシール不良が発生する。
それゆえシール不良の問題も、金型の表面を微細な凹凸面に仕上げることで解消される。
【0019】
そこで発明者らは、上記凹凸面の、表面粗さの好適な範囲についてさらに検討した結果、中心線平均粗さRa=4〜18μm、最大高さRmax=40〜170μmの範囲内であれば、前記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法は、結晶性熱可塑性樹脂のシートを予熱して軟化させる工程と、軟化したシートを、上型と下型とを備えた成形金型の、前記上型と下型で挟んだ状態で、加熱成形しつつ結晶化させて、平板状の底部の周囲に、側部を所定の角度で立ち上げた形状を有する本体と、この本体の上部開口の周縁から外方へ延設したフランジとを有する成形品を得る工程とを含み、
上記成形金型を構成する上型および下型として、
当該両型の、少なくとも成形品の本体、およびフランジの上面と接触する面が、中心線平均粗さRa=4〜18μm、最大高さRmax=40〜170μmの微細な凹凸面に仕上げられているとともに、
両型のうち少なくとも一方に、加熱成形された成形品を離型するためのエアーを上記凹凸面に供給するエアー通気孔が形成されたもの
を用いることを特徴とする。
【0020】
また上記の成形方法に使用する本発明の成形金型は、前記シートを挟む上型と下型とを備え、当該両型の、少なくとも成形品の本体、およびフランジの上面と接触する面が、中心線平均粗さRa=4〜18μm、最大高さRmax=40〜170μmの微細な凹凸面に仕上げられているとともに、両型のうち少なくとも一方に、加熱成形された成形品を離型するためのエアーを上記凹凸面に供給するエアー通気孔が形成されたことを特徴とする。
かかる本発明の成形方法、および成形金型において、上型および下型に設けられる微細な凹凸面の中心線平均粗さRa、および最大高さRmaxが上記の範囲に限定されるのは、以下の理由による。
【0021】
すなわち中心線平均粗さRaが4μm未満であるか、もしくは最大高さRmaxが40μm未満では、このいずれの場合にも、凹凸面の凹凸が小さすぎるため、型内での加熱によって軟化した成形品の表面が、上記凹凸に入り込んで、平滑面の場合と同様に凹凸面に密着して、両者の間に高い密着力を生じる。このため、成形品の離型性が低下して、前記のような成形不良などが発生しやすくなる。また成形品の表面が平滑面に近づくため、高級感のある艶消し面にならないという問題も生じる。
【0022】
さらに食品包装容器などの場合は、成形された成形品のうちフランジの上面が平滑面に近づくため、トップシールフィルムを熱シールなどした際の接着面積が小さく、かつ接着剤の濡れ性が低くなって、トップシールフィルムのシール不良が発生するという問題も生じる。
一方、中心線平均粗さが18μmを超えるか、もしくは最大高さが170μmを超えた場合には、このいずれにおいても、成形された成形品の、上記凹凸面に対応する表面の凹凸が大きくなりすぎるため、当該成形品の外観が荒れたような状態となって、かえって高級感のある艶消し面にならないという問題を生じる。
【0023】
また本発明の成形品は、上記本発明の成形金型を使用して、本発明の成形方法によって成形されたものであって、成形金型を構成する上型および下型の微細な凹凸面と接触していた本体の表面、およびフランジの上面が、中心線平均粗さRa=3〜8μm、最大高さRmax=30〜80μmの艶消し面に仕上げられたことを特徴する。
かかる本発明の成形品は、艶消しの、美麗でかつ高級感のある外観を有している。また開口周縁のフランジの上面が上述した艶消し面に仕上げられるため、このフランジの上面にトップシールフィルムを熱シールなどした際には、当該フランジの艶消し面によるアンカー効果、すなわち接着面積の増加と、接着剤の濡れ性の改善効果によって、トップシールフィルムの接着強度を向上して、シール不良の問題を解消することが可能となる。
【0024】
なお特開2000−37732号公報には、ゴムを加硫成形するための金型の表面にブラスト処理を施すことで、当該表面に、最大高さRmax=0.1〜100μmの微細な凹凸面を形成することが記載されている。
しかしこの発明では、金型の表面に、加硫後のゴムの離型を助けるためのオイルを、複数回の加硫成形を行う間、良好に保持させるべく、上記の凹凸面が形成されており、凹凸面の有する機能が本発明とは異なっている。
【0025】
それゆえ上記公報記載の発明では、凹凸面の、実際に使用可能な具体的な中心線平均粗さRaが0.1〜1μm、最大高さRmaxが1〜10μmに規定されており、これらの範囲は、前述した本発明における凹凸面の中心線平均粗さRa、および最大高さRmaxの範囲とは全く異なっている。公報記載の範囲では、後述する実施例、比較例の結果より明らかなように、結晶性熱可塑性樹脂シートの成形品を、エアーの吹き込みによってきれいに離型することはできない。
【0026】
また本発明において、エアーに代えてオイルを使用した場合には、結晶性熱可塑性樹脂シートから成形された成形品を高温で保持して、その結晶化を進行させる工程で、当該成形品が高温のオイルと接触することになるため、樹脂が劣化してかえって強度、例えば衝撃強度等が低下したり、あるいは樹脂の結晶化が妨げられたりするおそれがある。またオイルは、食品包装容器には使用することができない。
【0027】
しかも上記公報記載の発明は、前記のようにゴムを加硫成形するための金型に関するものであって、結晶性熱可塑性樹脂のシートを加熱成形することについては一切、記載されていない。
したがって上記公報記載の発明は、本発明を開示も示唆もするものではない。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を説明する。
本発明によって製造する成形品S1は、図4に断面を示すように、平板状の底部S10aの周囲に、側部S10bを所定の角度で立ち上げた形状を有する本体S10と、この本体S10の上部開口の周縁から外方へ延設したフランジS11とを有し、食品包装容器等として使用されるものである。
〈結晶性熱可塑性樹脂シート〉
本発明で使用する結晶性熱可塑性樹脂シートとしては、例えば前記結晶性PETのシートや、あるいは結晶性ポリブチレンテレフタレート(PBT)のシートなどに代表される結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが好適に使用される他、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂のシートも使用可能である。
【0029】
また、結晶性熱可塑性樹脂シートとしては非発泡シートが使用される他、発泡倍率1.1〜10倍程度の発泡シートも使用可能である。
結晶性熱可塑性樹脂シートは単層構造であっても良いし、少なくともその片面に熱可塑性樹脂フィルムなどを積層した、2層以上の積層構造であってもよい。
〈結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法、および成形金型〉
本発明の成形方法の大まかな工程は、従来法と同様である。
【0030】
すなわち、長尺のシートSを図1に実線の矢印で示す方向に送りながら、まず予熱オーブン1中で、上下に配置したヒータ11、12と非接触の状態で予熱して軟化させる(予熱工程W1)。
予熱の温度は、シートSを形成する樹脂の種類などによって異なるが、例えば結晶性PETシートの場合は、当該シートの表面温度が90〜130℃の範囲内となるように予熱を行う。
【0031】
またこの際、次工程である加熱成形工程W2での熱成形性を極端に損なわない範囲で、シートSの結晶化度を、およそ5〜15%の範囲まで高めることもできる。シートSの結晶化度を予めこの範囲に高めることによって、成形時の伸び率は若干低下するものの、シート表面が化学的に安定になるため、成形品S1の離型性がさらに向上する。
なお予熱は、上述した所定の温度に加熱された予熱板を、シートの両面に直接に接触させて行っても良い。
【0032】
次に、この予熱工程W1で予熱されて軟化したシートSを、縦横に複数個配置した成形金型2の、所定温度に加熱された上型21と下型22とで挟み、真空成形、圧空成形、真空−圧空成形、マッチモールド成形、プラグアシスト成形等の成形方法によって、前記した所定の成形品S1の形状に成形するとともに、成形金型2内で一定時間、保持して樹脂の結晶化を促進させる(加熱成形工程W2)。
【0033】
例えば真空−圧空成形の場合には、上記図1、並びに図2に示すように下型22として、前記成形品S1の、本体S10の外形に対応した凹部22aを有する雌型を使用し、かつ上型21として、上記凹部22aを閉塞する平板状の型(平型)を使用する。なお、この雌型と平型の組み合わせは、マッチモールド成形、プラグアシスト成形にも適用できる。
上記雌型(下型22)と平型(上型21)の組み合わせにおいては、少なくとも成形品S1と接触する面として、下型22のうち
・凹部22aの内面全体(成形品S1のうち、本体S10を構成する底部S10aの下面、および側部S10bの外面に対応)と、
・上型21と対向する上面22c(成形品S1のうち、フランジS11の下面に対応)、並びに上型21のうち
・下型22と対向する下面21b(上記フランジS11の上面に対応)が、それぞれ前述したように中心線平均粗さRa=4〜18μm、最大高さRmax=40〜170μmの微細な凹凸面に仕上げられている必要がある。この理由は前記のとおりである。
【0034】
なお凹凸面の中心線平均粗さRaは、上記の範囲内でも特に5〜16μmの範囲内であるのが好ましく、10μmを超えて16μm以下の範囲内であるのがさらに好ましい。また最大高さRmaxは、上記の範囲内でも特に50〜160μmの範囲内であるのが好ましく、100μmを超えて160μm以下の範囲内であるのがさらに好ましい。
上下両型21、22の各面を、上述した表面粗さを有する微細な凹凸面とするためには、例えば被処理面に硬質の微小粒子(ブラスト材)を吹き付けるショットブラスト法などの、従来公知の種々の方法がいずれも採用可能である。ショットブラスト法によって表面粗さを調整するには、吹き付けるブラスト材の粒径を調整すればよい。ブラスト材の粒径を大きくするほど、表面粗さを粗くすることができる。
【0035】
また図3の例では、上記凹凸面に、表面エネルギーの小さい樹脂の層L1がコーティングされている。かかる層L1をコーティングすることにより、成形品S1の離型性をさらに向上することができる。
上記層L1を構成する、表面エネルギーの小さい樹脂としては、例えばPTFE、FEP、PFA、ETFEなどの含フッ素系樹脂や、これらと他の樹脂とを混合した変性樹脂、あるいはシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0036】
凹凸面の上に上記層L1を形成する場合には、当該層L1を形成した後の、凹凸面の中心線平均粗さRa、および最大高さRmaxが前記の範囲内である必要があり、そのためには、層L1を形成後の表面粗さを考慮して、下地としての型表面の表面粗さを調整しなければならない。
なお、層L1を形成後の表面粗さは、型表面に、樹脂を含む塗布液をスプレー塗布して層L1を形成する際の条件、特にスプレー塗布時の吹付圧力によっても調整可能である。具体的には、吹付圧力を低くするほど、表面粗さを粗くすることができる。
【0037】
下型22の凹部22a内には、真空−圧空成形の際に当該凹部22a内のエアーを吸引し、かつ離型の際に、凹部22aの凹凸面にエアーを供給するための複数本のエアー通気孔22bが形成されている。
また一方、上型21の、面方向の中心位置には、上記と逆に真空−圧空成形の際に凹部22a内にエアーを供給し、かつ離型の際に凹部22a内のエアーを吸引するための1本のエアー通気孔21aが形成されている。
【0038】
上記各通気孔21a、22bはそれぞれ、図示しない弁装置を介して、エアーポンプなどの真空−圧空源と接続されており、弁装置を切り替えることで、上記のようにエアーの吸引、および供給に交互に使用可能とされる。また弁装置には、上記各通気孔21a、22bを大気に開放する切り替えを設け、この切り替えによって凹部22a内を大気に開放した状態で、型締めや型開きを行うようにしても良い。
【0039】
上記のうち成形品S1と直接に接する下型22側の通気孔22bは、当該本体S10の表面に跡を残さないために、凹部22a側の開口部の直径を、0.5〜1mmの範囲内とするのが好ましい。
上記上型21と下型22とを、前記のように所定の温度に加熱しつつ、両型21、22間にシートSを挟んだ状態で、図2に一点鎖線の矢印で示すように、下型22のエアー通気孔22bから凹部22a内のエアーを吸引し、かつ上型21のエアー通気孔21aから凹部22a内にエアーを供給すると、真空−圧空成形法によって、成形品S1が成形される。
【0040】
上下両型21、22の加熱温度は、結晶性PETのシートの場合、130〜200℃の範囲内に設定される。
次いで加熱成形後の成形品S1を、そのままの温度で所定時間、成形金型2内で保持すると、成形品S1の結晶化が促進されて耐熱性が付与される。
このあと、冷却工程W3とトリミング工程とを経て製造される成形品S1の最終的な結晶化度は、これに限定されないがおよそ18〜25%の範囲内であるのが好ましく、成形品の結晶化度がこの範囲内となるように、上記成形金型2内での、結晶化のための保持時間が設定される。
【0041】
次に、図2に実線の矢印で示すように、上型21のエアー通気孔21aから凹部22a内のエアーを吸引するか、もしくはエアー通気孔21aを大気に開放し、かつ下型22のエアー通気孔22bから、凹部22aの凹凸面にエアーを供給しつつ両型21、22を開く。
そうすると図3に実線の矢印で示すように、通気孔22bから供給されたエアーが、成形品S1の本体S10と、下型22の凹部22aの表面に形成された凹凸面との隙間を通して成形品S1の全体に広がって、前述したように離型不良に伴う成形不良を生じることなく、スムースに離型が行われる。
【0042】
次に、成形品S1が成形されたシートSを成形金型2から取り出したあとは、当該シートSを、従来同様に縦横に複数個配置した冷却金型3の、冷却された上型31と下型32とで挟んで、先の加熱成形工程W2で成形品S1に生じた成形不良(殆どないが)を修復するとともに、この冷却金型3内で一定時間、保持して冷却することで、結晶化が過剰に促進されるのを抑制する(冷却工程W3)。
なお本発明では、前記のように成形不良が殆ど生じないため、冷却金型3を使用せずに成形品S1を自然放冷するか、もしくは成形品S1に冷却のためのエアーを吹き付けて冷却しても良い。
【0043】
冷却温度は50℃以下であるのが好ましく、10〜40℃の範囲内であるのがさらに好ましい。
次に、冷却されたシートSを図示しないトリミング工程に送り、成形品S1をシートSから抜き出すことで、本発明の成形品が製造される。
〈成形品〉
上記の製造方法によって製造された図4の成形品S1は、前述したように成形金型2を構成する上型21および下型22の微細な凹凸面と接触していた、本体S10を構成する底部S10aの下面、および側部S10bの外面、並びにフランジS11の上下両面が、それぞれ中心線平均粗さRa=3〜8μm、最大高さRmax=30〜80μmの艶消し面に仕上げられる。中心線平均粗さRaおよびが最大高さRmaxこの範囲内にあるとき、高級感のある艶消し面であると言える。
【0044】
成形品S1の上記各面の中心線平均粗さRaが3μm未満であるか、または最大高さRmaxが30μm未満では、このいずれの場合にも、表面に光沢が出てしまって、高級感のある艶消し面とすることができない。またフランジS11の上面の場合は、後述するようにトップシールフィルムを熱シールなどした際に、接着強度が不足するシール不良を生じる。
一方、中心線平均粗さRaが8μmを超えるか、もしくは最大高さRmaxが80μmを超えた場合には、表面が荒れたような外観となって、やはり高級感のある艶消し面とすることができない。
【0045】
なお艶消し面の中心線平均粗さRaは、上記の範囲内でも特に5〜8μmの範囲内であるのが好ましい。また最大高さRmaxは、上記の範囲内でも特に40〜70μmの範囲内であるのが好ましい。
かくして製造された成形品S1を、例えばカップ麺容器等の食品包装容器として使用する場合は、上記のように食品収容後の成形品S1の、フランジS11の上面に、トップシールフィルムFを熱シールするなどして封がされる。
【0046】
具体的には、まず成形品S1のフランジS11を、図5(a)(b)に示すように熱シール装置の受け板H1上に載置し、その上から、トップシールフィルムFを間に挟んだ状態で、所定の温度に加熱された熱刃H2を、図(a)中に白矢印で示すように降下させる。
そして重ね合わされたフランジS11とトップシールフィルムFとを、熱刃H2と受け板H1とで一定時間、加熱、加圧すると、図(b)に示すように、トップシールフィルムFがフランジS11の上面に熱融着されて、成形品S1の熱シールが完了する。
【0047】
【実施例】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
なお各実施例、比較例で使用した成形金型、および製造した成形品について、下記の各試験を行った。
〈表面粗さの測定〉
(株)東京精密製の表面粗さ計〔ハンディーサーフE−30A〕を使用して、日本工業規格JIS B0651-1984に規定された方法に準じて、カットオフ値:2.5mm、測定長さ:12.5mmの条件で、各実施例、比較例で使用した成形金型、並びに製造した成形品の測定を行って、それぞれの中心線平均粗さRa(μm)、および最大高さRmax(μm)を求めた。
【0048】
測定個所は下記のとおりとした。
成形品:本体の側部外面とフランジ上面。
下型表面:凹部内の、上記側部外面に対応する部位。
上型表面:下型と対向する下面の、上記フランジ上面に対応する部位。
〈離型性の評価〉
各実施例、比較例における、成形品の、成形金型からの離型性の良否を、下記の3つの評価方法で得られた結果を総合して評価した。
【0049】
(局部的不良発生率)
成形金型から成形品を離型する際に、離型性が悪いものを無理に離型しようとすると、先に述べたように成形品の表面に、前記のようにシワや凹凸といった局部的な成形不良が発生する。そこで、同じ成形金型を使用して連続的に500個の成形品を製造した際に、表面にシワや凹凸などの局部的不良が発生した成形品の個数をカウントし、百分率で、局部的不良発生率を求めた。そして局部的不良発生率が5%以下のものを離型性良好(○)、5%を超えるものを離型性不良(×)として評価した。
【0050】
(スタック高さのばらつき)
離型性が悪いと、上記シワや凹凸といった局部的な成形不良とは別に、前述したように、本体の側部の、立ち上がり角度の不規則な変化や、あるいは本体の底部やフランジの、成形品の全体にわたる湾曲などが発生する。
そこで、同じ成形金型を使用して連続的に成形した成形品を25個ずつ重ねてスタック高さを測定する操作を20回、上記500個の成形品の全てについて行い、得られた20回分のスタック高さχ1、χ2、・・・χn-1、χn(n=20)の測定結果から、下記式によりスタック高さのばらつきσn-1を求めた。
【0051】
【数1】
【0052】
〔式中、χiはi回目のスタック高さ(mm)、iは1〜nでかつn=20である。〕
スタック高さがばらつくということは、成形品を重ねたときの個々の成形品間の間隔(スタック間隔)が一定になっていないということを示す。したがってこのような成形品をスタックした状態で、例えば食品等の自動充てん機に供給すると、充てんのために成形品を1枚づつばらす工程でうまくばらせないという問題が発生するおそれがあるため、スタック高さのばらつきは小さいほど好ましい。
【0053】
それゆえここでは、前記式によって求められるスタック高さのばらつきσn-1が3以下のものを離型性良好(○)、3を超えるものを離型性不良(×)として評価した。
(ダブルイメージ発生率)
成形品は、次工程である冷却工程で、前記のように冷却金型によって再プレスされて、歪み、シワ、凹凸等の成形不良が修復されるが、これらの成形不良が大きすぎると、冷却工程を経た成形品に修復跡が残る場合がある。この修復跡を、前記のようにダブルイメージと称するが、このダブルイメージがあると成形品の見栄えが悪いだけでなく、加熱調理時などに成形品がそこから変形するおそれもある。そこで、前記500個の成形品のうち、ダブルイメージが見られた成形品の個数をカウントし、百分率で、ダブルイメージ発生率を求めた。そしてダブルイメージ発生率が5%以下のものを離型性良好(○)、5%を超えるものを離型性不良(×)として評価した。
【0054】
(総合評価)
上記3つの評価方法で得られた結果が全て○であったものを離型性良好(○)、一つでも×があったものを離型性不良(×)として評価した。
〈成形品の外観評価〉
各実施例、比較例で製造した成形品の外観を目視にて観察して、不良の有無、並びに艶消しの状態を評価した。
〈トップシール性試験〉
各実施例、比較例で製造した成形品の、フランジの上面に、PETフィルム(20μm)/PEフィルム(30μm)/接着剤層(30μm)の3層構造を有するトップシールフィルムを、接着剤層をフランジ側にして、図5(a)(b)に示したように熱シール装置を用いて熱シールした。この時のシール温度は180℃、シール時間は2秒とした。
【0055】
シール後、全体を23℃程度まで自然冷却させたのち、トップシールフィルムを剥がす剥離試験を行い、フランジ上面とトップシールフィルムとの界面で剥離した場合はシール不良(×)、フランジまたはトップシールフィルムのいずれかに相手側の材料が付着して剥離した場合、あるいはトップシールフィルムの接着層が破壊されて剥離した場合はシール良好(○)として評価した。
実施例1〜3、比較例1〜3
密度0.4g/cm3、発泡倍率3.4倍、厚み1.0mmの結晶性PET樹脂の発泡シートを用いて、図4に示す断面形状を有し、本体S10の平面形状が縦173mm、横113mm(いずれも開口部の外形寸法)の矩形状で、かつ全体の高さが25mm、フランジS11の幅が5.0mmである成形品S1を、真空−圧空成形によって製造することとし、上記本体S10の外形に対応した凹部22aを有する下型(雌型)22と、平板状の上型21とを成形金型2として作製した。
【0056】
そして上記のうち下型22の、凹部22aの内面全体と、上型21と対向する上面22c、並びに上型21の、下型22と対向する下面21bを、それぞれショットブラスト法によって処理するとともに、その上にPTFEの層をコーティングして、表1に示す表面粗さを有する凹凸面とした。
また下型22の凹部22a内には、本体S10の底部S10aに対応する底面に、当該底面に臨む開口の直径が0.9mmであるエアー通気孔を24本、ほぼ等間隔となるように規則的に配置した。一方、上型21の下面21bの、面方向中心位置には、当該下面に臨む開口の直径が4.0mmのエアー通気孔を1本、形成した。
【0057】
上記上型21と下型22と組み合わせた成形金型2を15組用意し、それを図1に示す真空−圧空成形装置に組み込んで、下記の条件で、連続的に真空−圧空成形を行った。
予熱温度(シートSの表面温度):115℃
予熱後のシートSの二次厚み:1.1mm
成形金型2の加熱温度:180℃
冷却金型3の冷却温度:35℃
成形品S1の結晶化度:22%
そして得られた成形品について、前記の各試験を行って、その特性を評価した。
【0058】
結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表より、凹凸面の中心線平均粗さRaが4μm未満で、かつ最大高さRmaxが40μm未満である成形金型を用いた比較例1、2の成形方法で製造した成形品はそれぞれ、上記凹凸面に対応する表面の中心線平均粗さRa、および最大高さRmaxが、元になった上記凹凸面の中心線平均粗さRa、および最大高さRmaxとほぼ近い値を示しており、このことから加熱成形時に、成形品と金型とが殆ど隙間なく密着していたことが判った。
【0061】
そしてその結果として比較例1、2で製造した成形品はいずれも離型性が不良であり、また外観も光沢が出てしまって高級感のある艶消しになっていないことが確認された。
さらにフランジの上面も光沢面であったため、トップシールフィルムを熱シールした際のシール性も不良であった。
また凹凸面の中心線平均粗さRaが18μmを超え、かつ最大高さRmaxが170μmを超える成形金型を用いた比較例3の成形方法で製造した成形品は、その外観が荒れたような状態となって、やはり高級感のある艶消し面になっていないことがわかった。
【0062】
これに対し、凹凸面の中心線平均粗さRaが4〜18μmの範囲内で、かつ最大高さRmaxが40〜170μmの範囲内である成形金型を用いた実施例1〜3の成形方法で製造した成形品はいずれも、上記凹凸面に対応する表面の中心線平均粗さRa、および最大高さRmaxが、元になった上記凹凸面の中心線平均粗さRa、および最大高さRmaxとの間に大きな差を有しており、しかもその差は、上記範囲内で、中心線平均粗さRa、最大高さRmaxが大きいほど大きくなっていることが判った。
【0063】
そしてこのことから、加熱成形時に、成形品と金型との間に隙間が確保されていたことが判明し、その結果として実施例1〜3で製造した成形品はいずれも離型性が良好であり、また外観が高級感のある艶消しになっていることが確認された。
しかもフランジの上面も艶消し面であったため、トップシールフィルムを熱シールした際のシール性も良好であった。
【0064】
実施例4、5、比較例4、5
厚み0.35mmの結晶性PET樹脂の非発泡シートを用いて、図4に示す断面形状を有し、本体S10の底部S10aの外径が58mm、開口部の外径が75mmのカップ状で、かつ全体の高さが15mm、フランジS11の幅が3.5mmである成形品S1を、真空−圧空成形によって製造することとし、上記本体S10の外形に対応した凹部22aを有する下型(雌型)22と、平板状の上型21とを成形金型2として作製した。
【0065】
そして上記のうち下型22の、凹部22aの内面全体と、上型21と対向する上面22c、並びに上型21の、下型22と対向する下面21bを、それぞれショットブラスト法によって処理するとともに、その上にPTFEの層をコーティングして、表2に示す表面粗さを有する凹凸面とした。
また下型22の凹部22a内には、本体S10の底部S10aに対応する底面に、当該底面に臨む開口の直径が0.7mmであるエアー通気孔を12本、ほぼ等間隔となるように規則的に配置した。一方、上型21の下面21bの、面方向中心位置には、当該下面に臨む開口の直径が4.0mmのエアー通気孔を1本、形成した。
【0066】
上記上型21と下型22と組み合わせた成形金型2を15組用意し、それを図1に示す真空−圧空成形装置に組み込んで、下記の条件で、連続的に真空−圧空成形を行った。
予熱温度(シートSの表面温度):121℃
成形金型2の加熱温度:180℃
冷却金型3の冷却温度:35℃
成形品S1の結晶化度:24%
そして得られた成形品について、前記の各試験を行って、その特性を評価した。
【0067】
結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表より、凹凸面の中心線平均粗さRaが4μm未満で、かつ最大高さRmaxが40μm未満である成形金型を用いた比較例4の成形方法で製造した成形品は、上記凹凸面に対応する表面の中心線平均粗さRa、および最大高さRmaxが、元になった上記凹凸面の中心線平均粗さRa、および最大高さRmaxとほぼ近い値を示しており、このことから加熱成形時に、成形品と金型とが殆ど隙間なく密着していたことが判った。
【0070】
そしてその結果として比較例4で製造した成形品は離型性が不良であり、また外観も光沢が出てしまって高級感のある艶消しになっていないことが確認された。
さらにフランジの上面も光沢面であったため、トップシールフィルムを熱シールした際のシール性も不良であった。
一方、凹凸面の中心線平均粗さRaが18μmを超え、かつ最大高さRmaxが170μmを超える成形金型を用いた比較例5の成形方法で製造した成形品は、その外観が荒れたような状態となって、やはり高級感のある艶消し面になっていないことがわかった。
【0071】
これに対し、凹凸面の中心線平均粗さRaが4〜18μmの範囲内で、かつ最大高さRmaxが40〜170μmの範囲内である成形金型を用いた実施例4、5の成形方法で製造した成形品はともに、上記凹凸面に対応する表面の中心線平均粗さRa、および最大高さRmaxが、元になった上記凹凸面の中心線平均粗さRa、および最大高さRmaxとの間に大きな差を有しており、しかもその差は、上記範囲内で、中心線平均粗さRa、最大高さRmaxが大きいほど大きくなっていることが判った。
【0072】
そしてこのことから、加熱成形時に、成形品と金型との間に隙間が確保されていたことが判明し、その結果として実施例4、5で製造した成形品はいずれも離型性が良好であり、また外観が高級感のある艶消しになっていることが確認された。
しかもフランジの上面も艶消し面であったため、トップシールフィルムを熱シールした際のシール性も良好であった。
【0073】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明によれば、離型不良に起因する成形不良やダブルイメージ、トリミング不良などの発生を抑制して、成形品製造の歩留まりをこれまでよりも向上できる結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法と、上記成形不良などの原因である離型不良の発生をこれまでよりも低減できる成形金型と、そして上記成形方法によって成形された、外観が美麗でしかも高級感のある艶消し面に仕上げられており、なおかつトップシールフィルムのシール不良を生じにくい成形品とを提供できるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成形方法の、実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】上記成形方法に使用する、本発明の成形金型の一例を示す断面図である。
【図3】上記成形金型のうち下型の、凹凸面とされた表面を拡大した断面図である。
【図4】上記例で製造される本発明の成形品の一例を示す断面図である。
【図5】同図(a)(b)は、上記成形品のフランジにトップシールフィルムを熱シールして、成形品に封をする工程を示す断面図である。
【図6】従来の成形方法の一例を示す概略図である。
【図7】従来の成形金型の一例を示す断面図である。
【図8】同図(a)(b)は、上記成形金型のうち下型の、エアー通気孔の近傍を拡大した断面図である。
【符号の説明】
W1 予熱工程
W2 加熱成形工程
2 成形金型
21 上型
22 下型
21a、22b エアー通気孔
L1 樹脂の層
S シート
S1 成形品
Claims (4)
- 結晶性熱可塑性樹脂のシートを予熱して軟化させる工程と、軟化したシートを、上型と下型とを備えた成形金型の、前記上型と下型で挟んだ状態で、加熱成形しつつ結晶化させて、平板状の底部の周囲に、側部を所定の角度で立ち上げた形状を有する本体と、この本体の上部開口の周縁から外方へ延設したフランジとを有する成形品を得る工程とを含む成形方法であって、
上記成形金型を構成する上型および下型として、
当該両型の、少なくとも成形品の本体、およびフランジの上面と接触する面が、中心線平均粗さRa=4〜18μm、最大高さRmax=40〜170μmの微細な凹凸面に仕上げられているとともに、
両型のうち少なくとも一方に、加熱成形された成形品を離型するためのエアーを上記凹凸面に供給するエアー通気孔が形成されたもの
を用いることを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法。 - 結晶性熱可塑性樹脂のシートから、平板状の底部の周囲に、側部を所定の角度で立ち上げた形状を有する本体と、この本体の上部開口の周縁から外方へ延設したフランジとを有する成形品を加熱成形するために使用される成形金型であって、前記シートを挟む上型と下型とを備え、当該両型の、少なくとも成形品の本体、およびフランジの上面と接触する面が、中心線平均粗さRa=4〜18μm、最大高さRmax=40〜170μmの微細な凹凸面に仕上げられているとともに、両型のうち少なくとも一方に、加熱成形された成形品を離型するためのエアーを上記凹凸面に供給するエアー通気孔が形成されたことを特徴とする成形金型。
- 前記シートを挟む上型と下型の、少なくとも成形品と接触する面が微細な凹凸面とされ、この凹凸面に、表面エネルギーの小さい樹脂の層がコーティングされて、コーティング後の面が、中心線平均粗さRa=4〜18μm、最大高さRmax=40〜170μmの微細な凹凸面に仕上げられていることを特徴とする請求項2記載の成形金型。
- 請求項1記載の成形方法によって、結晶性熱可塑性樹脂のシートを加熱成形後、冷却して得られた成形品であって、成形金型を構成する上型および下型の微細な凹凸面と接触していた本体の表面、およびフランジの上面が、中心線平均粗さRa=3〜8μm、最大高さRmax=30〜80μmの艶消し面に仕上げられたことを特徴する成形品。
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