JP2007054891A - ガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】長時間の溶接時にも溶接ケーブル及びコンタクトチップの内部に粉末が集積(clogged)されないようにしてアークを安定化し、スパッタの発生量が減少され、送給性が安定化したガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤを提供する。
【解決手段】ワイヤの表面が平坦な加工面と、この加工面を基準にして負の方向(ワイヤの中心方向)の凹部形状を円周方向に有し、見かけ円弧長さ(di)に対する実際の円弧長さ(dr)の比(dr/di)が1.015〜1.515の範囲を持ち、ワイヤの化学成分の組合比である{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の値が0.10〜0.80の範囲であることを特徴とする、ガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ。
【選択図】図9
【解決手段】ワイヤの表面が平坦な加工面と、この加工面を基準にして負の方向(ワイヤの中心方向)の凹部形状を円周方向に有し、見かけ円弧長さ(di)に対する実際の円弧長さ(dr)の比(dr/di)が1.015〜1.515の範囲を持ち、ワイヤの化学成分の組合比である{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の値が0.10〜0.80の範囲であることを特徴とする、ガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ。
【選択図】図9
Description
本発明は、半自動溶接または自動溶接用無メッキワイヤに関し、より詳しくは、メッキワイヤに比べて低電流の短絡移行で、溶接速度100cm/min(以下、‘CPM’という)以上の高速溶接条件での優秀なアーク安定性と350A以上の高電流の溶接条件で、優秀な溶着効率及び溶融速度を示す、軟鋼及び高張力鋼溶接用無メッキワイヤに関する。
溶接用ワイヤは、通電性、送給性及び耐錆性などを確保するために、表面に銅メッキを施すことが一般的である。ワイヤの表面に銅がメッキされた場合、均一なメッキ層を形成してこそ通電性、送給性及び防錆性が確保できるようになる。メッキ層が不均一の場合、溶接時にコンタクトチップ(Contact tip)の内でワイヤとコンタクトチップ間の摩擦により微小銅(Cu)成分が脱落され、脱落した微小銅粉(Cu Flake)がコンタクトチップの内に集まり、チップの詰まり現象(clogging)を誘発する。このような現象は、送給の不安定及びアークの不安定に繋がり、スパッタの発生量を増加させる。また、メッキワイヤの場合、上記の問題点だけでなく、メッキ工程でのメッキ廃液を発生させ、環境問題を加重させることもある。
このような環境上の問題点を解消するために、メッキしていない溶接用ワイヤ、即ち無メッキワイヤが開発された。メッキワイヤの場合、薄膜の銅メッキ層が存在することにより、コンタクトチップと安定的な接触が可能であり、比較的安定したアーク特性を持つが、無メッキワイヤの場合、コンタクトチップとの安定的な接触のために、銅メッキ層に代えられるワイヤ表面層の特別な特性が求められるようになった。
特に、ワイヤの表面に開口部を有するが、開口部よりも内部の広いボトルネック(bottleneck)状及び/又は内部に垂れたケイブ(cave)状の凹部、即ち仮想の外部入射光から照射されない部分を含む洞窟型ピット形状を持つワイヤが開発された。これらピットの役割は、アーク安定性及び送給性確保のために、粉末形態の機能性塗布剤をワイヤの表面に存在させなければならないが、これをより安定的に保持(anchoring)するためである。また、機能性塗布剤を安定的に保持する補助的な役割として、ポリイソブテンオイルを同時に使用している。
しかし、ボトルネック状またはケイブ状のピット(凹部)の大きさ、即ち凹部形状内部の体積を均一に管理することが事実上不可能であるため、ボトルネック状またはケイブ状ピットの形状及び仮想の外部入射光から照射されない部分の長さ比率だけでは、機能性塗布剤をワイヤ断面の表面上、即ち360°円周方向に均一に存在させる(塗布させる)ことが不可能であることを発見することができた。従って、長時間の溶接時、溶接ケーブル(conduit cable)及びコンタクトチップの内部に粉末形態の機能性塗布剤が集積(clogged)されて送給不安を起こし、またコンタクトチップとワイヤとの間の安定的な接触を妨害するようになってアーク不安定をもたらし、これは結果的にスパッタの発生量を増加させるものと表された。特に、チップの先端には、溶接時に抵抗熱と輻射熱により機能性塗布剤が溶融したり、付着したり、またはその副産物が集積される現象が発生し、ボトルネック状またはケイブ状のピット(凹部)は、最終伸線後、脱脂工程で脱脂が困難であり、潤滑剤の残留量が増加するようになる。
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するためのものであって、ワイヤの表面に銅メッキ層がなくてもコンタクトチップとの安定的な接触が可能であるように、ワイヤの表面層に特別な特性を付与することにより、長時間の溶接時にも溶接ケーブル及びコンタクトチップの内部に粉末が集積(clogged)されないようにしてアークを安定化し、スパッタの発生量が減少され、送給性が安定化したガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤを提供することにその目的がある。
さらに、上記ワイヤの化学成分もまた無メッキワイヤに適切な化学成分を持つように構成することにより、溶接の際に溶接の表面張力を減少させ、短絡移行の高速溶接及び高電流溶接で溶滴の移行を円滑にすることにその目的がある。
本発明の目的を達成するために、ワイヤの表面が平坦な加工面と、この加工面を基準にして負の方向(ワイヤの中心方向)の凹部形状を円周方向に有するが、見かけ円弧長さ(di)に対する実際の円弧長さ(dr)の比(dr/di)が1.015〜1.515の範囲を持ち、ワイヤの化学成分の組合比である{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の値が0.10〜0.80の範囲であることを特徴とする、ガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤを提供する。
ここで、上記ワイヤの表面部に存在する潤滑剤の残留量が、ワイヤkg当り0.50g以下であることが好ましい。
ここで、上記ワイヤの表面にワイヤkg当り0.03〜0.70gの表面処理剤を塗布させることがより好ましく、ここで、表面処理剤はオイル形態の動物油、植物油、鉱物油、混合油及び合成油のうち少なくとも1種から構成されることがさらに好ましい。
ここで、上記ワイヤの表面にワイヤkg当り0.03〜0.70gの表面処理剤を塗布させることがより好ましく、ここで、表面処理剤はオイル形態の動物油、植物油、鉱物油、混合油及び合成油のうち少なくとも1種から構成されることがさらに好ましい。
前述した通り本発明によると、ワイヤの表面に銅メッキ層がなくてもコンタクトチップとの安定的な接触を可能にすることで、長時間の溶接時にも溶接ケーブル及びコンタクトチップの内部に粉末が集積(clogged)されないようにしてアークを安定化し、スパッタの発生量が減少され、送給性が安定化したガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤを得ることができる。
また、ワイヤの表面に銅メッキを施さないことにより、コンタクトチップとワイヤとの間の抵抗熱の発生を高めると共に、化学成分及び成分組合比の調整による溶融金属の表面張力を調整することにより、短絡移行条件の高速溶接及び高電流溶接での溶着効率及び溶融速度に優れた、ガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤを得ることができる。
以下では、本発明の好適な実施例についてより詳しく説明する。
既に説明したように、メッキワイヤに比べて無メッキワイヤは、コンタクトチップとの安定的な接触のために銅メッキ層に代えられるように、ワイヤの表面に特別な特性を付与しなければならない。
既に説明したように、メッキワイヤに比べて無メッキワイヤは、コンタクトチップとの安定的な接触のために銅メッキ層に代えられるように、ワイヤの表面に特別な特性を付与しなければならない。
ワイヤの表面に銅メッキ層に代えられる特別な特性を付与するために、ワイヤの表面形態を3つの分類、即ち加工面のみから形成された平坦形状表面(ここで加工面とは、ワイヤの長手方向に対して90°方向の断面を走査電子顕微鏡で1000倍拡大したイメージにおいて、伸線時にダイスの加工を受けて形成されたワイヤ円周方向の平坦部をいう)、加工面が存在しない凹凸形状の表面、及び加工面と、この加工面を基準にして負の方向(ワイヤの中心方向)の凹部形状が、円周方向に存在する混合形状の表面に分類することができる。
図5及び図6に示したように、凹凸形状の表面は加工面が存在しない表面形態をいう。既存の技術は、ワイヤの表面に開口部を有し、開口部より内部の広いボトルネック状またはケイブ状のピットが、ワイヤ断面の表面に存在するようにする形状を記述しているが、本発明が分類している基準によると、この形状は凹凸形状の表面に該当する。
このような凹凸形状の表面は、表面処理剤または機能性塗布剤の保持能力には優れているものの、加工面が存在しないためコンタクトチップとワイヤとの間の安定した接触が確保されないだけでなく、溶接時に送給ケーブル内で摩擦による送給負荷が増加し、送給性が悪くなる。また、最終伸線の後、脱脂工程における脱脂が困難であり、潤滑剤の残留量が増加される。
図7と図8に示したように、平坦形状の表面は、加工面のみから形成されているため、コンタクトチップとワイヤとの間の安定した接触は確保されるが、表面処理剤または機能性塗布剤の保持能力が劣るため、十分な潤滑性が確保できなくて送給性が悪くなる。
一方、図9と図10に示したように、本発明に該当する混合形状の表面は、ワイヤの長手方向に対して90°方向の断面状の表面部が凹凸または凸形状を持つものではなく、円周方向に平坦な加工面と、この加工面を基準にして負の方向(ワイヤの中心方向)の凹部形状を持つ。ワイヤの表面がこのような表面形状を持つ場合、溶接時にコンタクトチップとワイヤとの間に安定した接触がなされ、任意の円周方向で測定長さに対する加工面の総長さ比率を適正範囲にする場合、アークが安定し、これによりスパッタの発生量も減らすことができるようになる。
しかし、加工面の総長さ比率を適正範囲にすることだけでは、溶接時のスパッタの発生量を効率的に下げることに限界がある。即ち、残留潤滑剤の量が増加するほど、溶接時のスパッタの発生量が増加するが、加工面の総長さ比率を適正範囲にすることだけでは、凹部部分の深さ、体積及び形状に起因する残留潤滑剤の量からくる問題点を解決することができない。
従って、本発明ではワイヤの表面が加工面と、この加工面を基準にして負の方向(ワイヤの中心方向)の凹部形状が、円周方向に存在する混合形状の表面を有するが、見かけ円弧長さ(di)に対する実際の円弧長さ(dr)の比(dr/di)を1.015〜1.515の範囲にすることにより、アーク安定性及び溶接性に優れ、潤滑剤の残留量も減少させるようにした。
ここで、実際の円弧長さはワイヤの長さ方向に対して90°方向の断面を走査電子顕微鏡で1000倍拡大したイメージにおいて、測定領域に該当する実際の円弧長さ(即ち、ワイヤの表面に存在する凹部の周辺長さと加工面の長さの和)を映像分析システムを利用して測定した値であり、見かけ円弧長さは上記のイメージにおいて、測定領域に該当する円弧長さを、ワイヤの実線径を利用して理論上で計算した値を意味し、その計算方法は後述する。
見かけ円弧長さに対する実際の円弧長さの比(dr/di)が1.015未満の場合は、実際の製造過程で達成することが不可能であり、平坦形状の表面部のようにほとんど加工面のみから形成される。このような場合には、コンタクトチップとワイヤとの間に安定した接触は確保されるが、表面処理剤または機能性塗布剤の保持能力が劣るため、十分な潤滑性の確保が難しくて送給性が悪くなる。見かけ円弧長さに対する実際の円弧長さの比(dr/di)が1.515を超える場合は、ワイヤ断面上の表面部が粗くなり、表面処理剤の保持能力には優れているものの、加工面が十分に存在することができなく、溶接時にコンタクトチップとワイヤとの間に安定した接触が確保できないだけでなく、溶接時に送給ケーブル内で摩擦による送給負荷が増加し、送給性が悪くなる。
しかし、本発明のように、見かけ円弧長さに対する実際の円弧長さの比(dr/di)が1.015〜1.515の場合、ワイヤ断面上の表面部が平滑になり、十分な加工面の確保が可能になり、ボトルネックやケイブ部分に該当する凹部の体積が減り、潤滑剤の残留量が減少する。従って、溶接時にコンタクトチップとワイヤとの間に安定した接触を確保することができ、残留潤滑剤の量が減少してスパッタの発生量を大きく減らすことができる。
本発明では潤滑剤の残留量を0.50g/W・kg(ワイヤkgに対する潤滑剤の重量)以下に限定する。これは潤滑剤の残留量が本発明の範囲である0.50g/W・kgを超える場合、溶接時のスパッタの発生量を増加させ、アークの安定性を悪くするためである。
伸線時に使用する潤滑剤は、最終伸線の後には完全に除去されることが好ましく、脱脂手段には一般的に機械的脱脂、アルカリ溶液脱脂、電解脱脂などが多く利用される。潤滑剤の残留量は脱脂方法だけでなく、ワイヤ表面の凹部形態などにも影響を受け、特に凹部の深さが深かったり、形状がボトルネックまたはケイブ形状の場合、潤滑剤の除去が非常に困難である。
本発明によって、見かけ円弧長さに対する実際の円弧長さの比(dr/di)を1.015〜1.515の範囲にする場合、潤滑剤の残留量も本発明の範囲である0.50g/W・kg以下に維持することができるが、dr/diの比が1.515を超える場合、電解脱脂を実施してもイン−ライン(In-line)システムでは潤滑剤の残留量を0.50g/W・kg以下に下げることが困難である。
また、本発明によるとワイヤの表面にワイヤkg当り0.03〜0.70g/W・kg の表面処理剤を塗布させたが、ここで表面処理剤は、ワイヤに安定した送給性を付与し、アーク安定性をより向上させる役割をする。
表面処理剤量が0.03g/W・kg 未満の場合、表面処理剤量が少なすぎて十分な潤滑性を確保できなくて送給性が悪くなり、0.70g/W・kg を超える場合、溶接時にフィーダー(feeder)部のスリップ(Slip)が発生し、やはり送給性が確保できない。
本発明で表面処理剤は、オイル形態の動物油、植物油、鉱物油、混合油、及び合成油のうち少なくとも1種から構成されることが好ましい。これは、粉末形態の表面処理剤を使用する場合、長時間の溶接時、溶接ケーブル及びコンタクトチップの内部に粉末が集積(clogged)されるが、オイル形態を使用する場合、このような現象を避けることができるため、アークがより安定化し、スパッタの発生量の減少にさらに効果的であるためである。
また、メッキワイヤに比べて低電流の高速溶接時にアーク安定性の向上や、高電流の溶接時に溶着効率及び溶融速度の向上を獲得することが容易ではないため、本発明では溶接の際に移行現象に影響を及ぼすワイヤの表面張力及び比抵抗を調節するために、ワイヤの化学成分を検討した。
本発明に使用されるガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤは、その主要成分がC、Si、Mn、P、S、Cu、Fe及び不可避な不純物から構成されている。この成分中で、溶接時のアーク安定のために、溶滴移行を阻害する因子と促進する因子に分けて、それぞれの範囲を限定しようとした。
溶滴移行を阻害する因子としてCu成分と、促進する因子としてSi、Mn、P、S成分間の関係を検討した結果、{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の範囲を0.10〜0.80に調節することにより、低電流の短絡移行におけるアーク安定性と、高電流溶接における溶着効率及び溶融速度の向上を達成することができた。
上記ワイヤの組成元素のうちCは、溶接時にスパッタの発生を起こす主要因子であって、本発明で得ようとする特性のアーク安定性を害する元素の一つとして作用し、下記の組合比から排除した。
また、本発明は溶着効率を向上するために、溶接時に溶着効率を落とす因子として、ヒューム(Fume)、スパッタ、スラグ生成物質をできるだけ抑制することにより、溶着効率を極大化しようとした。
このため、すでに前述したワイヤの表面特性の制御、ワイヤ表面の残留潤滑剤量の管理、そして表面処理剤を液状に限定することにより、ヒューム、スパッタ、スラグ量を抑制することができ、さらにメッキを施していない無メッキワイヤによるCu含量の抑制、Si、Mnなどの成分の含量を調節することにより、アーク安定性を図ろうとし、ヒューム、スパッタ、スラグ生成物質をできるだけ抑制して溶着効率を向上した。
以下、ワイヤの各成分及び成分比に対する役割を詳しく説明する。
C:0.03〜0.07重量%(ワイヤの全重量に対する重量比)
溶着金属の引張強度を向上させる元素であるが、ワイヤ中に含量が増加することにより、溶接時のスパッタの発生量を増加させる。0.03重量%未満では溶着金属の強度が余りにも低くなり、0.07重量%を超える場合は、溶接時のスパッタの発生が多くなる。
C:0.03〜0.07重量%(ワイヤの全重量に対する重量比)
溶着金属の引張強度を向上させる元素であるが、ワイヤ中に含量が増加することにより、溶接時のスパッタの発生量を増加させる。0.03重量%未満では溶着金属の強度が余りにも低くなり、0.07重量%を超える場合は、溶接時のスパッタの発生が多くなる。
Si:0.50〜1.00重量%
溶融金属の流動性を向上させ、溶接の際に溶接ビードの広がり性を良好にする。また、金属の強度を持たせる必須成分であり、溶融金属内の脱酸反応を助けて溶融金属上にスラグを形成させる。0.50重量%未満では、溶着金属の引張強度及び溶融金属の流動性が落ち、1.00重量%を超える場合は、高電流溶接時のビード垂れ現象及び溶接時の溶滴の流動性が増加し、溶滴のバラツキが発生してアークが不安になる。
溶融金属の流動性を向上させ、溶接の際に溶接ビードの広がり性を良好にする。また、金属の強度を持たせる必須成分であり、溶融金属内の脱酸反応を助けて溶融金属上にスラグを形成させる。0.50重量%未満では、溶着金属の引張強度及び溶融金属の流動性が落ち、1.00重量%を超える場合は、高電流溶接時のビード垂れ現象及び溶接時の溶滴の流動性が増加し、溶滴のバラツキが発生してアークが不安になる。
Mn:1.10〜1.80重量%
Siと同様に、溶融金属の脱酸反応を起こして溶接金属上にスラグを形成させ、溶着金属の強度を向上させる。1.10重量%未満では、溶着金属の引張強度及び適切な表面張力が確保できず、1.80重量%を超える場合は、溶接の際に溶滴内の活性酸素量を減少させ、溶滴の表面張力を増加させる。
Siと同様に、溶融金属の脱酸反応を起こして溶接金属上にスラグを形成させ、溶着金属の強度を向上させる。1.10重量%未満では、溶着金属の引張強度及び適切な表面張力が確保できず、1.80重量%を超える場合は、溶接の際に溶滴内の活性酸素量を減少させ、溶滴の表面張力を増加させる。
P:0.01〜0.03重量%
金属に不純物の形で存在し、低融点の化合物を作って高温亀裂の感受性を増大させるが、鋼中に含有量が多いほど、図1に示すように溶融金属の表面張力を落とす。0.01重量%未満では、溶接時の溶滴の表面張力に及ぼす影響が余りにも少なくなり、0.03重量%を超える場合は、高温亀裂の原因になる。
金属に不純物の形で存在し、低融点の化合物を作って高温亀裂の感受性を増大させるが、鋼中に含有量が多いほど、図1に示すように溶融金属の表面張力を落とす。0.01重量%未満では、溶接時の溶滴の表面張力に及ぼす影響が余りにも少なくなり、0.03重量%を超える場合は、高温亀裂の原因になる。
S:0.01〜0.03重量%
Pと同様に、低融点の化合物を作って高温亀裂の感受性を増大させるが、酸素(O)及び窒素(N)と共に代表的な表面活性元素の一つであって、図1に示すように溶融金属の表面張力を落とす。0.01重量%未満では、溶接時の溶滴の表面張力に及ぼす影響が余りにも少なくなり、0.03重量%を超える場合は、高温亀裂の原因になる。
Pと同様に、低融点の化合物を作って高温亀裂の感受性を増大させるが、酸素(O)及び窒素(N)と共に代表的な表面活性元素の一つであって、図1に示すように溶融金属の表面張力を落とす。0.01重量%未満では、溶接時の溶滴の表面張力に及ぼす影響が余りにも少なくなり、0.03重量%を超える場合は、高温亀裂の原因になる。
図2で示されたように、通常の合金元素は温度が上がるほど表面張力が低くなる反比例の関係にあるが、表面活性化元素を添加する場合は、温度に比例関係の勾配を表すため、溶込みを深くすると共にワイヤの先端での移行を促進する。
Cu:0.003〜0.030重量%
鋼中に不純物として存在し、表面にメッキされるときは、ワイヤとコンタクトチップとの間の通電性を助ける役割をするが、溶接時の表面張力を制御する調整剤の役割をする。0.003重量%未満では、溶接時の溶滴の表面張力を調整することができなく、0.030重量%を超える場合は、表面張力が余りにも高くなって溶滴移行を阻害する。
鋼中に不純物として存在し、表面にメッキされるときは、ワイヤとコンタクトチップとの間の通電性を助ける役割をするが、溶接時の表面張力を制御する調整剤の役割をする。0.003重量%未満では、溶接時の溶滴の表面張力を調整することができなく、0.030重量%を超える場合は、表面張力が余りにも高くなって溶滴移行を阻害する。
以下、アークの溶接時における溶融金属の移行現象についてみると、図3に示すように移行を促進する因子には、低い溶融金属の表面張力(FS)、溶融金属の溶滴の自重(重力、FG)、溶接電流の二乗に比例するピンチ力(FEM)などがあり、移行を抑制する因子には、CO2ガスの使用による溶滴の先端で移行を抑制するアーク浮揚力(FB)、電磁気力(FEC)、高い溶融金属の表面張力(FS)などがある。
また、アーク溶接中のワイヤの溶融速度を支配するものは、上記溶滴の移行を促進する因子とともにワイヤの先端とコンタクトチップとの間に発生する抵抗熱が挙げられ、溶融速度は下記の数式で表現できる。
[数式1]
溶融速度=アーク熱+抵抗熱=al+bLeI2
(a、b:定数 、Le:ワイヤ突出長さ(Wire Extension)、I:溶接電流)
[数式1]
溶融速度=アーク熱+抵抗熱=al+bLeI2
(a、b:定数 、Le:ワイヤ突出長さ(Wire Extension)、I:溶接電流)
上記の抵抗熱は、アーク溶接時に溶接電源から供給される電流の二乗、そしてコンタクトチップからワイヤの先端までに至るワイヤの突出長さに比例し、次の数式2のように表せる。
[数式2]
抵抗熱=aLeI2(a:定数、Le:ワイヤ突出長さ、I:溶接電流)
[数式2]
抵抗熱=aLeI2(a:定数、Le:ワイヤ突出長さ、I:溶接電流)
上記の抵抗熱は、物体の持っている固有特性の一つである比抵抗に比例するため、溶接ワイヤの種類によって、そして表面層の状態によって比抵抗及び抵抗熱が変わるのは自明な事実である。比抵抗と溶融速度間との関係を、図4に示した。
一般的に、電気を通す導体である金属の場合は、温度が上昇するにつれて金属内の自由電子の移動が活発になり、電子間の衝突が頻繁に発生して電子の移動が難しくなるため、抵抗が上昇し、結果として比抵抗もまた上昇する。そのため、溶接中、即ち高温のアーク熱によるワイヤの先端での抵抗は、常温での値より大きい値を有し、常温での抵抗が高いほど、高温での抵抗も高い。
従って、本発明では製造工程での品質であるワイヤの表面特性を制御するとともに、このような溶滴移行を促進する因子及びワイヤの溶融速度を速くする因子を組み合わせるために、本発明者らはSi、Mn、P、Sの成分を特定の範囲に限定し、最適の実験を繰り返した。しかし、今までの銅メッキワイヤが持つメッキ層の役割である通電性と、表面張力の調整役割に代えられなかった。従って、表面張力の調整剤としてCu成分と溶融速度の制御成分のSi、Mn、P、Sを適宜に組み合わせた値、即ち{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100に対する比の値を0.10〜0.80の範囲に管理することにより、低電流の短絡移行で溶滴の移行を促進させて高速溶接を容易にすることができ、また、高電流溶接で溶滴移行を安定的に行うことができるようにする、ガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤが獲得できた。
このとき、{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の値が0.10未満の場合は、上記の分母に該当する(Si+Mn+P+S)の値が大きい場合であり、これによると鋼中の不純物元素であるP、Sの含量が多くなるか、脱散剤であるSi、Mnの量が多い場合である。このうち、低融点化合物を形成する元素であるP、Sの含量が多くなると、表面張力の適宜な制御が困難であり、溶接時に高温亀裂に対する危険度を高めるという問題点がある。また、Si、Mnの量が多い場合、表面張力が増加して円滑な溶滴移行が困難になる。
また、上記組合比の範囲が0.80を超える場合は、分母に該当するSi+Mn+P+Sの値が小さい状態であるか、分子のCuが多い状態である。本発明に対する構成は無メッキワイヤに対するもので、原素材でのCu含量は微量の一定範囲を超えないため、後者の場合は該当しない。
一方、前者の場合であるSi+Mn+P+Sが少ない場合についてみると、溶接金属の脱酸役割または強度を与えるSi、Mnの成分が少ない場合は、脱酸不足により健全な溶接部が得られなかったり、所望の強度が与えられない。さらに、溶接金属のビード広がり性に関与するSi成分の不足により、最終溶接部のビード形状が凸状になり、すみ肉溶接でのアンダーカット及び多層溶接の際にスラグ混入などを惹起させるという問題点がある。
また、表面活性化元素の一つであるP、Sなどの含量が余りにも少なくなると、溶融金属の表面張力が高くなり、高温のアークでワイヤがよく溶けないことにより、短絡移行の移行回数を減少させる。
従って、本発明では上記の{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の比を0.10〜0.80に限定することにより、短絡移行条件での高速溶接性に優れ、高電流の溶接条件での優れた溶着効率及び溶融速度の速い、無メッキワイヤを提供することができる。
メッキワイヤと無メッキワイヤの成分一例及び化学成分組合比である{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の値と表面張力、比抵抗を比較した試験例を、下記の表1にまとめた。
(その他の元素は、Fe及び不可避な不純物である)
*表面張力の試験方法:Inagaki式(4.3*I*V)/(溶落の厚さ*√溶接速度)
*比抵抗の測定法:四端子法により試片の両端に100mAを印加して測定する。
メッキワイヤと無メッキワイヤの成分一例及び化学成分組合比である{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の値と表面張力、比抵抗を比較した試験例を、下記の表1にまとめた。
*表面張力の試験方法:Inagaki式(4.3*I*V)/(溶落の厚さ*√溶接速度)
*比抵抗の測定法:四端子法により試片の両端に100mAを印加して測定する。
上記の表1によると、メッキワイヤと無メッキワイヤは、成分及び化学成分組合比の差異を持ち、ワイヤの表面にメッキ層の有無による比抵抗値もまた差異を持つため、低電流の短絡移行条件の高速溶接及び高電流の溶接条件での溶接性の違いを表すことが分かった。
以下では、ワイヤの表面特性であるdr/diの値を1.015〜1.515の範囲に制御できる方案について説明する。
まず、本発明で記述している加工面及び加工面の総長さ比率を確保するためには、伸線前の粗度、即ち伸線工程に投入される原線(rod)の粗度を0.40μm(Ra基準)以下になるように管理しなければならなく、これは塩酸、硫酸などの酸洗方式または機械的脱スケールの後、研磨工程を通して上記の範囲以下に管理することが可能である。
まず、本発明で記述している加工面及び加工面の総長さ比率を確保するためには、伸線前の粗度、即ち伸線工程に投入される原線(rod)の粗度を0.40μm(Ra基準)以下になるように管理しなければならなく、これは塩酸、硫酸などの酸洗方式または機械的脱スケールの後、研磨工程を通して上記の範囲以下に管理することが可能である。
次に、伸線方式及び伸線速度を適切に組み合さなければならない。伸線方式としては、全面的な乾式伸線(all dry drawing;以下DDという)、全面的なカセットローラーダイ(all cassette roller die)による伸線(以下CRDという)、CRD+DD組合方式の連続伸線方式(in-line)を適用したり、DD(1次伸線)−スキンパス(skin pass)(2次伸線;以下SPという)、DD(1次伸線)−湿式伸線(wet drawing)(2次伸線;以下WDという)、CRD(1次伸線)−SP(2次伸線)、CRD(1次伸線)−WD(2次伸線)の2段階伸線方式を適用することが可能である。
伸線速度は連続伸線方式の場合、伸線速度が1000m/minを超えないようにしなければならなく、2段階伸線方式の場合、1次伸線速度が高いほど2次伸線速度を低く管理しなければならない。
最終的には、原線の粗度(粗さ)、伸線方式と伸線速度を適切に管理することにより、最終線径の粗度を0.10〜0.25μm(Ra基準)の範囲になるように管理しなければならない。
以下では、実施例を通して本発明を説明する。
以下では、実施例を通して本発明を説明する。
表2は原線の粗度、伸線方式と伸線速度により得られる最終線径の粗度を示したものである。この時、伸線方式でCRD以外にはホール(hole)ダイスを使用した。最終線径の粗度を0.10〜0.25μm(Ra基準)の範囲になるようにするためには、原線の粗度を0.40μm(Ra基準)以下になるように管理しなければならなく、連続伸線方式の場合は、DD、CRDまたはこれらの組合に関係なく、伸線速度が1000m/minを超えないようにしなければならなく、2段階伸線方式の場合は、1次伸線速度が1000〜1500m/minの範囲では2次伸線速度を400m/min以下に、1次伸線速度が500〜1000m/minの範囲では2次伸線速度を600m/min以下にするなど、1次伸線速度が高いほど2次伸線速度を低く管理しなけらばならないことが分かる。但し、比較例18から見られるように、1次伸線速度が500m/min以下であり、2次伸線速度が200m/minと低すぎる場合は、伸線後の粗度が0.10μm(Ra基準)以下になるため、適切な伸線速度の組合が必要である。
表3は、上記の表2から得られたワイヤに対してワイヤ断面の表面形状、見かけ円弧長さ(di)に対する実際の円弧長さ(dr)の比(dr/di)、潤滑剤の残留量、使用された表面処理剤の量、各ワイヤに対する送給性とアーク安定性を測定した結果を表したものである。
ワイヤ断面の表面形状は、ワイヤの長さ方向に対して90°方向の断面を走査電子顕微鏡で1000倍拡大したイメージから判断したものであって、凹凸の表示は加工面が存在しない凹凸形状の表面、凹の表示は加工面と、この加工面を基準にして負の方向(ワイヤの中心方向)の凹部形状が円周方向に存在する、本発明による混合形状の表面、平坦面は加工面のみから形成された平坦形状の表面を意味する。表3から分かるように、上記の表2から得られたワイヤの中から、最終線径の粗度が0.10〜0.25μm(Ra基準)の範囲にあるとき、本発明による混合形状の表面が得られることが分かった。
以下、見かけ円弧長さ(di)に対する実際の円弧長さ(dr)の比(dr/di)に対する測定方法を説明する。
まず、映像分析システム(Image Analyzing system / Image-pro plus 4.5, Media cybernetics)を使用して、倍率1000倍で測定しようとするワイヤの実際の円弧長さ(dr)を測定する。この時、映像分析システムが求めた実際の円弧長さは、ワイヤの表面に存在する凹部の周辺長さと加工面の長さの和に該当する。
まず、映像分析システム(Image Analyzing system / Image-pro plus 4.5, Media cybernetics)を使用して、倍率1000倍で測定しようとするワイヤの実際の円弧長さ(dr)を測定する。この時、映像分析システムが求めた実際の円弧長さは、ワイヤの表面に存在する凹部の周辺長さと加工面の長さの和に該当する。
図13と図14は、映像分析システムを使用して実際の円弧長さを測定する前のイメージと、測定後のイメージを示す写真である。次には、見かけ円弧長さ(di)を計算するために、映像分析システムを利用してやはり倍率1000倍でワイヤの測定区間の弦の長さ(l)を測定する。図11は、見かけ円弧長さ(di)を計算するための弦の長さ測定用イメージを示す写真である。弦の長さが得られると、図12に示したように、三角関数を利用してワイヤの半径(r)が弦の長さとなす円の内角(θ;ラジアン値)を求めることができ、この内角を利用すると見かけ円弧長さ(di)はワイヤの半径(r)×円の内角(θ)になる。従って、ワイヤの実線径を測定して半径(r)を求めると、見かけ円弧長さ(di)を計算することができる。
以下、映像分析システムを利用した測定方法を説明する。
まず、完製品のワイヤを採取した後、有機溶媒中で超音波洗浄をして表面上の汚染物を除去する。その後、上記のワイヤを400℃で2〜3時間加熱して酸化皮膜を作る。次に、該当ワイヤを熱硬化性樹脂でワイヤの長さ方向90°断面方向にマウンティングした後、研磨する。次いで、上記の研磨された横断面を電子顕微鏡(SEM)の後方散乱電子を利用してワイヤ断面上の表面部の形状を観察し、映像分析システムを利用して見かけ円弧長さ、実際の円弧長さを求めてdr/di値を計算した。この時、倍率は1000倍にした。
以下、表面処理剤の塗油量測定方法を説明する。
1. ワイヤを4〜6cmの長さに切り、50〜80g程度になるように用意する。
2. ビーカーに溶媒としてCCl4150 mlを用意する。
3. 用意されたワイヤを1g/10000天秤に載せて、脱脂前の重量(Wb)を測定する。
4. 用意されたワイヤをCCl4が入っているビーカーに入れて、2〜3回掻き回しながら表面処理油を10分間脱脂する。
5. 脱脂されたワイヤをドライオーブンに入れて10分間乾燥した後、デシケーターで常温に冷却させる。
6. 乾燥されたワイヤを1g/10000天秤に載せて脱脂させた後、重量(Wa)を測定する。
7. 測定されたWb値とWa値に基づき、次式のように表面処理剤の塗油量を計算する。
[数式3]
表面処理剤の塗油量(g/W・kg)={(Wb−Wa)/Wa}×1000
まず、完製品のワイヤを採取した後、有機溶媒中で超音波洗浄をして表面上の汚染物を除去する。その後、上記のワイヤを400℃で2〜3時間加熱して酸化皮膜を作る。次に、該当ワイヤを熱硬化性樹脂でワイヤの長さ方向90°断面方向にマウンティングした後、研磨する。次いで、上記の研磨された横断面を電子顕微鏡(SEM)の後方散乱電子を利用してワイヤ断面上の表面部の形状を観察し、映像分析システムを利用して見かけ円弧長さ、実際の円弧長さを求めてdr/di値を計算した。この時、倍率は1000倍にした。
以下、表面処理剤の塗油量測定方法を説明する。
1. ワイヤを4〜6cmの長さに切り、50〜80g程度になるように用意する。
2. ビーカーに溶媒としてCCl4150 mlを用意する。
3. 用意されたワイヤを1g/10000天秤に載せて、脱脂前の重量(Wb)を測定する。
4. 用意されたワイヤをCCl4が入っているビーカーに入れて、2〜3回掻き回しながら表面処理油を10分間脱脂する。
5. 脱脂されたワイヤをドライオーブンに入れて10分間乾燥した後、デシケーターで常温に冷却させる。
6. 乾燥されたワイヤを1g/10000天秤に載せて脱脂させた後、重量(Wa)を測定する。
7. 測定されたWb値とWa値に基づき、次式のように表面処理剤の塗油量を計算する。
[数式3]
表面処理剤の塗油量(g/W・kg)={(Wb−Wa)/Wa}×1000
以下では、ワイヤ表面の潤滑剤残留量の測定方法について説明する。
1. 上記表面処理剤の塗油量の測定方法の1〜6項と同一な過程を遂行する。
2. 6項のWaの重量を脱脂前の重量(Wb')とする。
3. 用意されたワイヤを70℃に維持された5%無水クロム酸(CrO3)溶液に20分間沈積させる。
4. 脱脂されたワイヤを湯洗させた後、アルコールで洗浄する。
5. アルコールで洗浄されたワイヤをドライオーブンに入れて10分間乾燥した後、デシケーターで常温に冷却させる。
6. 乾燥されたワイヤを1g/10000天秤に載せて脱脂させた後、重量(Wa')を測定する。
7. 測定されたWb'値とWa'値に基づき、次式のように潤滑剤の残留量を計算する。
[数式4]
潤滑剤の残留量(g/W・kg)={(Wb'−Wa')/Wa'}×1000
1. 上記表面処理剤の塗油量の測定方法の1〜6項と同一な過程を遂行する。
2. 6項のWaの重量を脱脂前の重量(Wb')とする。
3. 用意されたワイヤを70℃に維持された5%無水クロム酸(CrO3)溶液に20分間沈積させる。
4. 脱脂されたワイヤを湯洗させた後、アルコールで洗浄する。
5. アルコールで洗浄されたワイヤをドライオーブンに入れて10分間乾燥した後、デシケーターで常温に冷却させる。
6. 乾燥されたワイヤを1g/10000天秤に載せて脱脂させた後、重量(Wa')を測定する。
7. 測定されたWb'値とWa'値に基づき、次式のように潤滑剤の残留量を計算する。
[数式4]
潤滑剤の残留量(g/W・kg)={(Wb'−Wa')/Wa'}×1000
以下では、アーク安定性の評価及び送給性の評価方法について説明する。
表4はアーク安定性を評価するための溶接条件であって、アーク安定性の評価は、長さ3mの送給ケーブルを直線状態にし、表4中に記載された溶接条件で評価した。
表4はアーク安定性を評価するための溶接条件であって、アーク安定性の評価は、長さ3mの送給ケーブルを直線状態にし、表4中に記載された溶接条件で評価した。
アーク安定性の判断は、全溶着金属の重量に対するスパッタ量である、溶着金属当たりスパッタ量の比率(%)において、粒子が1mm以上である大粒のスパッタ量が1.6(%)を超えたり、あるいは総スパッタ量の比率(%)が9(%)を超える場合は、アーク安定性が不良なものと取り扱ってXと表記し、上記の数値内である場合は、アーク安定性に優れたものと取り扱って○と表記した。ワイヤはJIS Z 3312 YGW12(AWS A5.18 ER70S-6)1.2mmを使用した。
表5は送給性評価のための溶接条件であって、送給性の評価は新規の長さ5mの送給ケーブルを、直径300mmで2回巻いた状態(コイル模様)で、表5のような溶接条件で評価した。
送給性の評価は、持続的な溶接時間が80sec未満で、送給が円滑でなくて溶接が不可能な場合には、送給性が不良なものと取り扱ってXと表記し、100sec以上持続的な溶接が可能な場合には、送給性を○と表記し、80〜100secの範囲は普通の送給性と判断して△と表記した。ワイヤはやはりJIS Z 3312 YGW12(AWS A5.18 ER70S-6) 1.2mmを使用した。
本発明の実施例に使用されたワイヤは、JIS Z 3312 YGW12(AWS A5.18 ER70S-6)を基準にしたが、JIS YGW 11、14、15、16、18、21タイプも同一な結果を表した。
上記の表3から分かるように、比較例1〜3、4、10、11、14、15、16、17(2次伸線の高速伸線条件を含む)は、高速伸線によるワイヤ断面上の表面部の形状が凹凸形状を持つことにより、表面処理剤が本発明の範囲内にあるが、送給性及びアーク安定性が良くなかった。また、dr/diの比が本発明の範囲を超えることにより、潤滑剤の残留量も本発明の範囲を超えてスパッタの発生量が多くなった。即ち、アークが不安定であった。比較例5、7、12、13は、安定的な伸線条件によるワイヤ断面上の表面部の形状が凹形状を持つとともに、表面処理剤量も本発明の範囲内であって、送給性はどれくらい確保されるものの、dr/diの比が本発明の範囲を超えることにより、加工面より加工面以外の比率が高くなるため、溶接時にコンタクトチップとワイヤとの間に接触が不安定になるとともに、伸線時に使用する潤滑剤の残留量が多くなり、スパッタの発生量が多くなった。
上記の表3から分かるように、比較例1〜3、4、10、11、14、15、16、17(2次伸線の高速伸線条件を含む)は、高速伸線によるワイヤ断面上の表面部の形状が凹凸形状を持つことにより、表面処理剤が本発明の範囲内にあるが、送給性及びアーク安定性が良くなかった。また、dr/diの比が本発明の範囲を超えることにより、潤滑剤の残留量も本発明の範囲を超えてスパッタの発生量が多くなった。即ち、アークが不安定であった。比較例5、7、12、13は、安定的な伸線条件によるワイヤ断面上の表面部の形状が凹形状を持つとともに、表面処理剤量も本発明の範囲内であって、送給性はどれくらい確保されるものの、dr/diの比が本発明の範囲を超えることにより、加工面より加工面以外の比率が高くなるため、溶接時にコンタクトチップとワイヤとの間に接触が不安定になるとともに、伸線時に使用する潤滑剤の残留量が多くなり、スパッタの発生量が多くなった。
特に、比較例5、7、12、13は伸線前または伸線後の粗度が本発明の範囲内に確保されても、伸線速度の管理ができず、dr/diの比が本発明の範囲から外れていることが分かる。比較例6、8は高速伸線によるワイヤ断面上の表面部の形状が凹凸形状を持つとともに、表面処理剤が本発明の範囲から外れることにより、送給性及びアーク安定性が悪く、またdr/diの比が本発明の範囲を超えることにより、潤滑剤の残留量も本発明の範囲を超えてスパッタの発生量が多くなった。
比較例9は安定的な伸線条件によるワイヤ断面上の表面部の形状が凹形状を持つとともに、dr/diの比及び潤滑剤の残留量が本発明の範囲内にあるため、アーク安定性は良好であるものの、表面処理剤量が本発明の範囲を超えるため、溶接時にフィーダー部のスリップ(Slip)が発生し、送給性が確保できなかった。比較例18はワイヤ断面上の表面部の形状が平坦形状を持つことにより、溶接時にコンタクトチップとワイヤとの間に接触が安定的でアーク安定性は確保されるが、表面処理剤量が本発明の範囲であるにも拘らず、ワイヤ断面上の表面部の形状が平坦形状を持つことにより、溶接時にフィーダー部のスリップ(Slip)が発生して送給性が確保されなかった。
一方、発明例1〜20は伸線前の粗度、伸線方式、伸線速度、伸線後の粗度を、本発明範囲内の最適の状態に管理して製造することにより、ワイヤの表面部の形状が加工面を基準にして負(−)の方向(ワイヤの中心方向)に凹形状を持つことが可能であって、見かけ円弧長さに対する実際の円弧長さの比(dr/di)値が、本発明の範囲内になるようにすることができ、潤滑剤の残留量もやはり本発明の範囲内にあるため、スパッタ発生量の減少が可能であった。
また、表面処理剤量が0.03〜0.70g/W・kgの範囲になるように管理して製造することにより、はじめて送給性及びアーク安定性とともに満足できる結果を得ることができた。
以下では、低電流の短絡移行条件での高速溶接性に優れ、高電流の溶接条件での優れた溶着効率及び溶融速度の向上した無メッキワイヤを確保するための実施例を説明する。
本発明では前述したように、ワイヤの表面特性の制御、ワイヤ表面の残留潤滑剤量の管理、そして表面処理剤を液状に限定することにより、ヒューム、スパッタ、スラグ量を抑制することができ、さらにメッキを施していない無メッキワイヤによるCu含量の抑制、Si、Mnなどの成分の含量調節により、ヒューム、スパッタ、スラグの生成物質をできるだけ抑制し、溶着効率を向上させることができ、下記の表6のような化学成分の調整、化学成分の組合比により溶融速度を向上させ、本発明の目的が達成できた。
*その他の元素は、Fe及び不可避な不純物である。
以下では、低電流の短絡移行条件での高速溶接性に優れ、高電流の溶接条件での優れた溶着効率及び溶融速度の向上した無メッキワイヤを確保するための実施例を説明する。
本発明では前述したように、ワイヤの表面特性の制御、ワイヤ表面の残留潤滑剤量の管理、そして表面処理剤を液状に限定することにより、ヒューム、スパッタ、スラグ量を抑制することができ、さらにメッキを施していない無メッキワイヤによるCu含量の抑制、Si、Mnなどの成分の含量調節により、ヒューム、スパッタ、スラグの生成物質をできるだけ抑制し、溶着効率を向上させることができ、下記の表6のような化学成分の調整、化学成分の組合比により溶融速度を向上させ、本発明の目的が達成できた。
溶着効率及び溶融速度を測定するための溶接条件は表7の通りであり、溶着効率及び溶融速度は、下記の式により計算した。
[数式5]
溶着効率(%, Deposition efficiency)=(溶着金属の重量/消耗溶接棒の重量)×100
[数式6]
溶融速度(g/min, Rate of melting)=(消耗溶接棒の重量/Arc time)
[数式5]
溶着効率(%, Deposition efficiency)=(溶着金属の重量/消耗溶接棒の重量)×100
[数式6]
溶融速度(g/min, Rate of melting)=(消耗溶接棒の重量/Arc time)
上記表6の結果のように、ワイヤの成分比である{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の範囲が0.10〜0.80の間であり、dr/diの値が1.015〜1.515を満たす場合は、ワイヤの送給性及びアーク安定性に優れ、さらに溶融金属の表面張力が低くなると共に比抵抗が大きくなり、溶着効率が高くて溶融速度が速くなる。これにより、低電流の短絡移行の高速溶接性及び高電流溶接での優れたアーク安定性の確保が可能になる。
一方、{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の範囲が0.10〜0.80を満たさなかったり、dr/diの値が1.015〜1.515から外れる場合は、ワイヤの送給性やアーク安定性が不安になり、溶融金属の表面張力を下げる表面活性化元素(P、S)の値が小さくなり、表面張力が高くなるか、或いはCuの値が小さくなり、表面張力の適切な調節が難しくなる。メッキワイヤの場合、Cuメッキ層の存在によるCu含量の増加のため、比抵抗もまた小さくなり、溶着効率が低くて溶融速度が遅くなる。
対照例1〜5はメッキワイヤに対するもので、メッキ層の存在によりワイヤの成分に一定量以上のCuが存在し、実施例1〜10の無メッキワイヤに比べてワイヤの比抵抗が小さく、溶融金属の表面張力は大きくなる。その結果、ワイヤの溶融速度が遅くなり、また無メッキワイヤに比べて溶接材料の溶着金属化率が低いため、溶着効率が低くて本発明で得ようとする短絡移行での高速溶接性と高電流溶接での本発明の目的が達成できなかった。
また、対照例6〜8は無メッキワイヤに対するもので、成分調整による{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の値が、本発明で求めている0.10〜0.80の範囲に存在するが、表面特性の制御値であるdr/diの値が本発明で求めている1.015〜1.515の範囲に属していないことにより、溶接ワイヤの基本特性である送給性とアーク安定性が確保できなかったり、溶着効率の抑制要因が生じるため、これもやはり本発明で得ようとする溶接特性が得られなった。
そして、対照例9〜10の場合は無メッキワイヤの場合であるが、Cu成分の過多により本発明で求めている成分比である{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の値が0.10〜0.80を超えるため、それによる溶融金属の表面張力が高くなることにより、本発明で得ようとする溶接特性もまた満たせなかった。
従って、本発明ではこのようなワイヤの表面特性の制御と共に、化学成分及び成分組合比を調整した結果、実施例1〜10に示したような低電流の短絡移行で高速溶接が可能で、且つ高電流溶接で溶着効率及び溶融速度が向上した、優れた溶接特性を持つ無メッキワイヤが製造できた。
Claims (4)
- ワイヤの表面が平坦な加工面と、この加工面を基準にして負の方向(ワイヤの中心方向)の凹部形状を円周方向に有し、見かけ円弧長さ(di)に対する実際の円弧長さ(dr)の比(dr/di)が1.015〜1.515の範囲を持ち、ワイヤの化学成分の組合比である{Cu/(Si+Mn+P+S)}×100の値が0.10〜0.80の範囲であることを特徴とする、ガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ。
- 上記ワイヤの表面部に存在する潤滑剤の残留量が、ワイヤkg当り0.50g以下であることを特徴とする、請求項1記載のガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ。
- ワイヤの表面にワイヤkg当り0.03〜0.70gの表面処理剤を塗布させたことを特徴とする、請求項1または2記載のガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ。
- 上記の表面処理剤がオイル形態の動物油、植物油、鉱物油、混合油及び合成油のうち少なくとも1種から構成されることを特徴とする、請求項3記載のガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ。
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