JP2006159286A - ガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ - Google Patents

ガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】 溶接の際にアークが安定化し、スパッタの発生量が低く、送給性を良好とする。
【解決手段】 本発明のワイヤは、表面が、平坦な加工面を基準にして負(−)の方向(ワイヤの中心方向)に陥没する凹部を円周方向に有することを特徴とし、前記ワイヤ表面の円周方向における測定長さと、該測定長さ内に存在する前記加工面の総長さの比率が50〜95%の範囲であることが好ましい。又、本発明は上記ワイヤの表面にワイヤ1kg当り0.03〜0.70gの表面処理剤を塗布したことを特徴とし、表面処理剤は動物油、植物油、鉱物油、混合油及び合成油のうち少なくとも1種から構成されるものが好ましい。従って、本発明は、ワイヤの表面に銅メッキ層がなくても、コンタクトチップとの安定的な接触を可能とし、長時間の溶接時にもコンジットケーブル及びコンタクトチップの内部に粉末が集積しないガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤを得ることができた。
【選択図】 図7

Description

本発明は、ガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤに関し、より詳しくは半自動溶接または自動溶接の際にアークが安定化し、スパッタの発生量が低く、送給性が良好なガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤに関する。
最近、溶接の自動化が進むにつれて、ガスアーク溶接用ワイヤの使用は飛躍的に増大し、特に自動車、造船、建築業界で幅広く使用されている。このように、多量に消費されている溶接用ワイヤは、通電性、送給性及び防錆性等の確保のために、表面に銅メッキを施すことが一般的である。ワイヤの表面に銅をメッキする場合、均一なメッキ層を形成してこそ通電性、送給性及び防錆性が確保できるようになる。メッキ層が不均一な場合、実際の溶接時にコンタクトチップ(Contact tip)内でワイヤとコンタクトチップ間の摩擦により微小銅(Cu)成分が脱落し、この脱落した微小銅粉がコンタクトチップ内に集められ、チップ詰まり(clogging)現象を誘発させる。このような現象は、送給不安定及びアーク不安定につながり、スパッタの発生量を増加させる。また、メッキワイヤの場合、上記の問題点だけでなく、メッキ工程でのメッキ廃液を発生させて環境問題を発生させることもある。
このような環境上の問題点を含む上記問題を解消するためにメッキを有しない溶接用ワイヤ、即ち、無メッキワイヤが開発されている。メッキワイヤの場合、薄膜の銅メッキ層が存在することにより、コンタクトチップとの安定的な接触が可能であり、比較的安定したアーク特性を有するが、無メッキワイヤの場合、コンタクトチップとの安定的な接触のために銅メッキ層に代わるワイヤ表面層の特別な特性が求められるようになった。
このようなワイヤの表面層に特別な特性を付与した従来技術としては、下記のものがある。
特開2003−191092号公報 特開2003−225793号公報 特開2003−170293号公報 特開2004−001061号公報
前掲の特許文献1〜4として示した従来技術は、全てワイヤの表面に開口部を有するが、開口部よりも内部が広いボトルネック状の凹部、及び/または内部に延びるケイブ状の凹部、即ち、仮想の外部入射光が照射されない部分を含むケイブ形のピット形状を有する。これらピットの役割は、アーク安定性及び送給性の確保のためにワイヤの表面に存在するようにされた粉末形態の機能性塗布剤をより安定的に保持するためのものである。また、機能性塗布剤を安定的に保持する補助的な役割としてポリイソブテンオイルを同時に使用している。
本発明者等はこれらの従来技術に対する研究を行い、その結果ボトルネック状またはケイブ状のピット(凹部)の大きさ、即ち、凹部形状内部の体積を均一に管理することが事実上不可能であるため、従来技術で言及しているように、ボトルネック状またはケイブ状のピットの形状及び仮想の外部入射光が照射されない部分の長さ比率だけでは、機能性塗布剤をワイヤ断面の表面上、即ち、360°円周方向に均一に存在させる(塗布する)ことが不可能であるということを見出した。従って、これら従来技術の場合、長時間の溶接時にコンジットケーブル(conduit cable)及びコンタクトチップの内部に粉末形態の機能性塗布剤が集積され、送給が不安定となり、またコンタクトチップとワイヤ間の安定的な接触を妨害することになり、アーク不安定をもたらすようになり、これは結果的にスパッタの発生量を増加させることとして表れた。特に、コンタクトチップの先端には溶接時の抵抗熱と輻射熱により機能性塗布剤が溶融した状態で付着し、またはその副産物が集積する現象が発生した。
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するためのものであって、ワイヤの表面に銅メッキ層がなくてもコンタクトチップとの安定的な接触が可能となるように、ワイヤの表面層に特別な特性を付与することにより、長時間の溶接時にもコンジットケーブル及びコンタクトチップの内部に粉末が集積しないようにし、アークを安定化させて、スパッタの発生量を減少し、送給性が安定化されたガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤは、ワイヤの表面が、平坦な加工面と、前記加工面を基準として該ワイヤの中心方向に陥没する凹部を円周方向に有することを特徴とする。
このワイヤは、ワイヤの表面の円周方向における測定長さと、該測定長さ内に存在する前記加工面の総長さの比率が50〜95%の範囲であることが好ましい。
また本発明は、上記ワイヤの表面に、ワイヤ1kg当り0.03〜0.70gの表面処理剤を塗布したことを特徴とし、前記表面処理剤は動物油、植物油、鉱物油、混合油及び合成油のうち少なくとも1種から構成されるものが好ましい。
本発明によると、ワイヤの表面に銅メッキ層を設けることなくコンタクトチップとの安定的な接触を可能にすることにより、長時間の溶接時にもコンジットケーブル及びコンタクトチップの内部に粉末が集積されないようにしアークを安定化させて、スパッタの発生量を減少し、送給性が安定化したガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤを得ることができる。
以下では、本発明について図面を参照してより詳細に説明する。
上記のように、メッキワイヤに比べて無メッキワイヤは、コンタクトチップとの安定的な接触のために銅メッキ層に代えてワイヤの表面に特別な特性を付与しなければならないが、従来のワイヤの表面部の表面粗度(粗さ)、比表面積等を一定の範囲内に限定する管理では、コンタクトチップとワイヤ間の安定的な接触をもたらすことができなかった。
本発明者等は、ワイヤの表面に銅メッキ層に代わる特別な特性を付与するために様々な実験を繰り返す過程で、ワイヤの表面形態を3つの分類、即ち、加工面のみから形成された平坦形状の表面(ここで加工面とは、ワイヤの長さ方向に対して直交方向の断面を走査電子顕微鏡で1000倍に拡大したイメージにおいて、伸線の際にダイスの加工を受けて形成されたワイヤ円周方向の平坦部をいう)、加工面が存在しない不定形な凹凸形状の表面、及び加工面と、この加工面を基準にして負(−)の方向(ワイヤの中心方向)に陥没する凹部が円周方向に存在する混合形状の表面に分類することができ、ワイヤの表面が混合形状の表面を有する場合に、アーク安定性及び溶接性に優れているという事実を見出し、本発明に至った。
ここで、「凹凸形状の表面」とは、図1及び図2に示すように、加工面が存在しない表面形態をいう。すでに言及した特開2003−191092号公報、特開2003−225793号公報、特開2003−170293号公報及び特開2004−001061号公報の従来技術はすべて、ワイヤの表面に開口部を有し、開口部よりも内部が広いボトルネック状またはケイブ状のピットがワイヤ断面の表面に存在する形状を記述しているが、本発明が分類している基準によると、これらは「凹凸形状の表面」に該当する。
このような凹凸形状の表面は、表面処理剤または機能性塗布剤の保持能力には優れているが、加工面が存在しないため、コンタクトチップとワイヤ間の安定した接触を確保することができないだけでなく、溶接の際に送給ケーブル内で摩擦による送給負荷が増加して送給性が悪くなる。
平坦形状の表面は、図3及び図4に示したように、加工面のみから形成されており、コンタクトチップとワイヤ間の安定した接触は確保されるが、表面処理剤または機能性塗布剤の保持能力が劣るため、充分な潤滑性が確保できずに送給性が悪くなる。
一方、本発明に該当する混合形状の表面は、図5及び図6に示したように、ワイヤの長さ方向に対して直交方向の断面を見たとき、ワイヤの円周表面部が凹凸または凸形状を有するものではなく、ワイヤの円周方向に、平坦な加工面と、この加工面を基準にして負(−)の方向(ワイヤの中心方向)に陥没する凹部を有することを特徴としている。
ワイヤの表面が本発明による表面形状を有する場合、溶接の際にコンタクトチップとワイヤ間に安定した接触が確保できるようになり、アークが安定し、これによりスパッタの発生量も減らすことができることが明らかとなった。
このとき、ワイヤの表面形状が混合形状の表面を有する場合、測定範囲におけるワイヤ表面の円周長さに対する加工面の総長さ比率が50〜95%の範囲に存在するものが好ましい。
加工面の総長さ比率が50%未満の場合、表面処理剤の保持能力には優れているが、表面が粗くなり、溶接の際にコンタクトチップとワイヤ間に安定した接触が確保できないだけでなく、溶接の際に送給ケーブル内で摩擦による送給負荷が増加して送給性が悪くなる。しかし、加工面の総長さ比率が50〜95%の範囲である場合、ワイヤ断面上の表面部が平滑になり、充分な加工面の確保が可能になり、溶接の際にアークが安定され、これによりスパッタの発生量も減少する。
また、本発明ではワイヤの表面にワイヤ1kg当り0.03〜0.70gの表面処理剤を塗布した。表面処理剤はワイヤに安定した送給性を付与し、アーク安定性をより向上させる役割をする。
表面処理剤の量が0.03g/ワイヤ1kg未満の場合、表面処理剤の量があまりにも少なく、充分な潤滑性が確保できずに送給性が悪くなり、0.70g/ワイヤ1kgを超える場合、溶接の際にフィーダー(feeder)部のスリップが発生し、やはり送給性を確保できない。
本発明において表面処理剤は、動物油、植物油、鉱物油、混合油及び合成油のうち少なくとも1種から構成されたものであることが好ましい。これは、粉末形態の表面処理剤を使用する場合、長時間の溶接時にコンジットケーブル及びコンタクトチップの内部に粉末が集積されるが、オイル形態の表面処理剤を使用する場合、このような現象を避けることができるため、アークがより安定化され、スパッタの発生量の減少により効果的なためである。
以下では、ワイヤの長さ方向に対して直交方向の断面上の表面部が凹凸または凸形状を有するものではなく、円周方向に平坦な加工面と、この加工面を基準にして負(−)の方向(ワイヤの中心方向)に陥没する凹部を有し、任意の円周方向の測定位置におけるワイヤの測定長さに対する加工面の総長さ比率が50〜95%の範囲となるようにする方案について説明する。
まず、本発明で記述している加工面及び加工面の総長さ比率を確保するためには、伸線前の粗度(粗さ)、即ち、伸線工程に投入される原料ロッドの粗度(粗さ)を0.40μm(Ra基準)以下になるように管理しなければならず、これは塩酸、硫酸等の酸洗方式または機械的脱スケール後の研磨工程を通して、上記の範囲以下に管理することが可能である。
次に、伸線方式及び伸線速度を適切に組合せなければならない。伸線方式としては、全ての乾式伸線(dry drawing ; 以下、「DD」という。)、全てのカセットローラーダイ(cassette roller die ; 以下、「CRD」という。)による伸線、CRD+DDの組合せ方式の連続伸線方式を適用するか、DD(1次伸線)・スキンパス(skin pass ;以下、「SP」という。)(2次伸線)、DD(1次伸線)・湿式伸線(wet drawing ; 以下、「WD」という。)(2次伸線)、CRD(1次伸線)・SP(2次伸線)、CRD(1次伸線)・WD(2次伸線)の2段階伸線方式を適用することが可能である。
伸線速度は連続伸線方式の場合、伸線速度が1000m/minを超えないようにしなければならず、2段階伸線方式の場合、1次伸線速度が高いほど、2次伸線速度を低く管理しなければならない。
最終的には、原料ロッドの粗度(粗さ)、伸線方式と伸線速度を適切に管理することにより、最終的なワイヤの粗度(粗さ)を0.25〜0.10μm(Ra基準)の範囲になるように管理しなければならない。
以下では、実施例を通して本発明を説明する。
表1は種々の原料ロッドの粗度(粗さ)、伸線方式と伸線速度により得られる最終的なワイヤの粗度(粗さ)を表したものである。このとき、伸線方式でCRD以外にはホール(hole)ダイスを使用した。最終的なワイヤの粗度(粗さ)を0.25〜0.10μm(Ra基準)の範囲になるようにするためには、原料ロッドの粗度(粗さ)を0.40μm(Ra基準)以下になるように管理しなければならず、連続伸線方式の場合は、DD、CRDまたはこれらの組合せに関係なく伸線速度が1000m/minを超えないようにしなければならず、2段階伸線方式の場合は、1次伸線速度が1000〜1500m/minの範囲では、2次伸線速度を400m/min以下に、1次伸線速度が500〜1000m/minの範囲では、2次伸線速度を600m/min以下にする等、1次伸線速度が高いほど2次伸線速度を低く管理しなければならないことが分かる。但し、比較例15と16から見られるように、1次伸線速度が500m/min以下で、2次伸線速度が200m/minであまりにも低い場合は、伸線のあと粗度(粗さ)が0.10μm(Ra基準)以下になるため、適切な伸線速度の組合せが必要である。
Figure 2006159286

表2は、表1で得られたワイヤに対して、ワイヤ断面の表面形状、加工面の総長さ比率(%)、使用された表面処理剤の量、各ワイヤに対する送給性とアーク安定性を測定した結果を表したものである。
Figure 2006159286

ワイヤ断面の表面形状は、ワイヤの長さ方向に対して直交方向の断面を走査電子顕微鏡で1000倍に拡大したイメージから判断したものであって、「凹凸」の表示は加工面が存在しない凹凸形状の表面、「凹」の表示は加工面と、この加工面を基準にして負の方向(ワイヤの中心方向)に陥没する凹部が円周方向に存在する、本発明による混合形状の表面、「平坦面」は加工面のみから形成された平坦形状の表面を意味する。表2から分かるように、表1で得られたワイヤの中で、最終的なワイヤの粗度(粗さ)が0.25〜0.10μm(Ra基準)の範囲にあるとき、本発明による混合形状の表面が得られることが分かる。
加工面の総長さ比率(%)は、ワイヤの長さ方向に対して直交方向の断面を走査電子顕微鏡で1000倍に拡大したイメージを使用して、次の通り求めた。即ち、図7は図5の写真をイメージ化して映像分析システム(Image Analyzing system / Image-pro plus 4.5, Media cybernetics)を利用して、d1+d2+…+dn及びd値を測定したものであって、図7で測定位置における加工面の総長さはd1+d2+…+dnであり、同測定位置におけるワイヤの測定長さはdである(d値の計算は、映像分析システムを利用してイメージ上の円弧を求めて、測定長さとした)。従って、加工面の総長さ比率は[(d1+d2+ … +dn)/d]×100になる。
映像分析システムを利用した実質的な測定は、次のような方法で実施した。
まず、完成品のワイヤを採取した後、有機溶媒中で超音波洗浄をして表面上の汚染物を除去する。その後、上記ワイヤを400℃で2〜3時間加熱して酸化被膜を作る。次に、酸化被膜が形成された各ワイヤに熱硬化性樹脂を長さ方向にマウンティング(mounting)した後、熱硬化性樹脂と共にワイヤを研磨して、ワイヤを囲む熱硬化性樹脂の表面にワイヤの断面を露出させる。最後に、上記の研磨された断面を電子顕微鏡(SEM)の後方散乱電子を利用してワイヤ断面上の表面部の形状を観察し、映像分析システムを利用して加工面の総長さを測定した。このとき、倍率は1000倍にした。
さらに、本発明の表面処理剤の塗油量の測定方法は次の通りである。
1.ワイヤを6〜8cmの長さに切って、50〜80g程度になるように用意する。
2.ビーカーに溶媒としてCCl4を1000ml用意する。
3.1g/ 10000天秤に用意したワイヤを乗せて脱脂前の重量(Wb)を測定する。
4.用意されたワイヤをCCl4の入ったビーカーに入れて2〜3回かき混ぜながら、表面処理油を10分間脱脂する。
5.脱脂されたワイヤをドライオーブンに入れて10分間乾燥した後、デシケーターで常温に冷却する。
6.1g/10000天秤に乾燥したワイヤを乗せて脱脂後の重量(Wa)を測定する。
7.測定したWb値とWa値に基づき、次式のように表面処理剤の塗油量を計算する。
表面処理剤の塗油量(g/W.kg)=[(Wb-Wa)/Wa]×1000
次に、アーク安定性の評価及び送給性の評価方法を説明する。
表3は、アーク安定性を評価するための溶接条件で、アーク安定性の評価は、長さ3mの送給ケーブルを直線状態にし、表3のような溶接条件で評価した。
Figure 2006159286

アーク安定性の判断は、1mm以上のスパッタ量が0.2gを超えるか、或いは総スパッタ量が2gを超える場合は、アーク安定性が不良なものとして取り扱いXと表記し、上記の数値内の場合は、アーク安定性に優れたものとして取り扱い○と表記した。ワイヤはJIS Z 3312 YGW12(AWS A5.18 ER70S-6) 1.2mmを使用した。
表4は、送給性の評価のための溶接条件で、送給性の評価は新規の長さ5mの送給ケーブルを直径300mmで2回巻いた状態(リング状)で、表4のような溶接条件で評価した。
Figure 2006159286

送給性の評価は、持続的な溶接時間が80sec未満で送給が円滑ではなく溶接が不可能な場合は、送給性が不良なものとして取り扱いXと表記し、100sec以上持続的な溶接が可能な場合は、送給性を○と表記し、80〜100secの範囲は通常の送給性と判断して△と表記した。ワイヤは同様にJIS Z 3312 YGW12(AWS A5.18 ER70S-6) 1.2mmを使用した。
本発明の実施例に使用されたワイヤは、JIS Z 3312 YGW12(AWS A5.18 ER70S-6)を基準にしたが、JIS YGW 11、14、15、16、18、21タイプでも同一の結果を得た。
表2から分かるように、比較例1〜3、8、9、11,12、13、14(2次伸線の高速伸線の条件を含む)は、高速伸線によるワイヤ断面上の表面部の形状が凹凸形状を有することにより、表面処理剤が本発明の範囲であるものの、送給性及びアーク安定性が良くなかった。比較例4,6,10は安定的な伸線条件によるワイヤ断面上の表面部の形状が凹部形状を有するとともに、表面処理剤の量も本発明の範囲内にあって送給性は幾分確保されるが、加工面の総長さ比率がそれぞれ41%、45%、48%であって、加工面が充分に存在できないため、溶接の際にコンタクトチップとワイヤ間の接触が不安定であり、アーク安定性が良くなかった。特に、比較例4、6、10は伸線前または伸線後の粗度(粗さ)が本発明の範囲内に確保されていても、伸線速度の管理ができず、加工面の総長さ比率が本発明の範囲から外れていることが分かる。比較例5は、高速伸線によるワイヤ断面上の表面部の形状が凹凸形状を有するとともに、表面処理剤が本発明の範囲から外れていることにより、送給性及びアーク安定性が良くなかった。比較例7は、安定的な伸線条件によるワイヤ断面上の表面部の形状が凹部形状を有するとともに、加工面の総長さ比率が51%であり、アーク安定性は良好であるものの、表面処理剤の量が本発明の範囲を超えるため、溶接の際にフィーダー部のスリップが発生し、送給性が確保されなかった。比較例15、16は、ワイヤ断面上の表面部の形状が平坦形状を有し、加工面の総比率が95%を超えることにより、溶接の際にコンタクトチップとワイヤ間に接触が安定的であるため、アーク安定性は確保される。しかし、表面処理剤の量が本発明の範囲であるにも拘らず、ワイヤ断面上の表面部の形状が平坦形状を有することにより、溶接の際にフィーダー部のスリップが発生して送給性が確保されなかった。
一方、発明例1〜16は、伸線前の粗度(粗さ)、伸線方式、伸線速度、伸線後の粗度(粗さ)を本発明の範囲内の最適の状態に管理して製造することにより、ワイヤ断面上の表面部の形状が加工面を基準にして表面内部方向(ワイヤの中心方向)に向かう凹形状とすることが可能であり、加工面の総長さ比率が50〜95%の範囲とすることができた。また、表面処理剤の量を0.03〜0.70g/w.kgの範囲になるように管理して製造することにより、送給性及びアーク安定性ともに満足する結果を得ることができた。
加工面が存在しないワイヤの表面形態を示す電子顕微鏡写真。 加工面が存在しないワイヤの表面形態を示す電子顕微鏡写真。 加工面のみから形成されたワイヤの表面形態を示す電子顕微鏡写真。 加工面のみから形成されたワイヤの表面形態を示す電子顕微鏡写真。 加工面と、この加工面を基準にして負(−)の方向(ワイヤの中心方向)に陥没する凹部を有する、本発明によるワイヤの表面形態を示す電子顕微鏡写真。 加工面と、この加工面を基準にして負(−)の方向(ワイヤの中心方向)に陥没する凹部を有する、本発明によるワイヤの表面形態を示す電子顕微鏡写真。 図5の電子顕微鏡写真をイメージ化して、映像分析システムを利用して加工面の総長さを算出することを示す電子顕微鏡写真。

Claims (4)

  1. ワイヤの表面が、平坦な加工面と、前記加工面を基準として該ワイヤの中心方向に陥没する凹部とを円周方向に有することを特徴とするガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ。
  2. 前記ワイヤ表面の円周方向における測定長さと、該測定長さ内に存在する前記加工面の総長さとの比率が50〜95%の範囲であることを特徴とする請求項1記載のガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ。
  3. 前記ワイヤの表面に、ワイヤ1kg当り0.03〜0.70gの表面処理剤を塗布したことを特徴とする請求項1または2記載のガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ。
  4. 前記表面処理剤が動物油、植物油、鉱物油、混合油及び合成油のうち少なくとも1種から構成されることを特徴とする請求項3記載のガスシールドアーク溶接用無メッキワイヤ。
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