JP3780453B2 - 銅メッキなしアーク溶接用ソリッドワイヤ - Google Patents

銅メッキなしアーク溶接用ソリッドワイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨、橋梁、造船、又は自動車等の溶接に広く使用される銅メッキなしアーク溶接用ワイヤに関し、更に詳述すれば、コンジットライナ内部及び給電チップ内部での送給抵抗が小さく、アークが安定し、スパッタ発生量が少ない銅メッキなしアーク溶接用ソリッドワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
アーク溶接用ワイヤの送給性を向上させる方法としては、ワイヤ表面に滑り性を有する潤滑剤を塗布することが一般的である。従来、ワイヤ表面に塗布された潤滑剤を効果的に保持するためには、特開平8-197278号公報、特開2000-107881号公報、特開2000-117483号公報及び特開2000-271780号公報に記載されているように、ある一定の表面平均粗さ及び表面粗度を有するワイヤ表面に、送給潤滑剤を塗布する方法が挙げられる。
【0003】
送給潤滑剤の種類としては、特開平6-285678号公報及び特開平9-70684号公報に記載されているように、MoS、WS、PTFE、C、フッ化黒鉛又は金属石鹸が挙げられる。これらは全てワイヤの送給性を向上させ、安定化させる目的で塗布されている。
【0004】
また、特開2001-239393号公報には、スパッタ発生量を低減するために、黒鉛をワイヤ表面上及び/又は表面直下に存在させる方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの塗布剤を単純な凹凸を有するワイヤ表面に塗布しただけでは、コンジットライナ内部等で、ワイヤに変形が加わったときに離脱してしまい、塗布剤の送給性向上効果及びスパッタの低減効果が減少してしまうという問題があった。このため、必要以上にこれらの塗布剤を予めワイヤ表面に保持させてしまい、このため、離脱した塗布剤がコンジットライナ内部等に堆積し、安定なワイヤ送給を妨げるといった問題が生じていた。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、機能性を有する塗布剤を、ワイヤ表面に開口する凹部内に保持することにより、ワイヤ表面から離脱しないように、ワイヤ表面に存在させることにより、良好なワイヤ送給性と、ワイヤ−チップ間の通電安定性を維持することができ、優れたアーク安定性と低スパッタ量で良好な溶接作業性を有する銅メッキなしアーク溶接用ソリッドワイヤを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る銅メッキなしアーク溶接用ソリッドワイヤは、ワイヤ表面に開口し、長手方向に延びると共に、断面が開口部よりも内部が広いボトルネック状及び/又は開口が狭く内部に延びるケイブ状の凹部を有し、この凹部内に、K化合物、Na化合物、Cs化合物、硫化物、リン化合物、ホウ素化合物、亜鉛化合物、黒鉛、及びPTFEからなる群から選択された1種以上の物質のみが存在すると共に、前記凹部がワイヤ周方向に、1周長あたり、総数で20箇所以上存在することを特徴とする。
【0008】
この銅メッキなしアーク溶接用ソリッドワイヤにおいて、前記凹部の有効長さ率が0.5%以上50%未満であることが好ましい。更に、前記凹部内及びワイヤ表面のいずれかに存在するK、Na、及びCsの総量が0.3乃至10ppmであることが好ましい。更にまた、植物油、動物油、鉱物油及び合成油からなる群から選択された1種又は2種以上の油が、前記凹部内及びワイヤ表面のいずれかに、ワイヤ10kgあたり0.1乃至2g存在することが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。ソリッドワイヤに良好な送給性と溶接作業性を付加するためには、送給性向上、通電性安定及びスパッタ低減という機能性を有する塗布剤を、ワイヤ表面とコンジットライナ及び給電チップとの間に存在させることが必要である。一方、これらの機能性を有する塗布剤をワイヤ表面から離脱させることなく、且つ所望の機能を得るために必要最小限の量をワイヤ表面に保持するためには、これらの塗布剤を、コンジットライナ及び給電チップの内面に接触しないように保持する必要がある。何故なら、これらの機能性物質は、決して電気的に通電性の良い物質とはいえず、ある一定量以上存在すると通電の妨げになるばかりか、塗布剤が多すぎるとワイヤ表面がコンジットライナ及び給電チップの内面に接触し、摺動したときに、塗布剤がワイヤ表面から離脱しやすく、この離脱した塗布剤がコンジットライナ内部に堆積してワイヤ送給を阻害してしまう。
【0010】
そこで、本願発明者等は鋭意実験研究を重ねた結果、次のような機能性表面を持つワイヤを製造することにより、前記課題が解決されることを見出した。即ち、図1に示すように、ワイヤ表面に開口し、開口部よりも内部の方が広いボトルネック状の凹部及び/又は内部に延びるケイブ状の凹部を形成する。そして、このような形状の間口部が狭い凹部(ボトルネック状)又は間口が狭くそのまま内部に深く通じている凹部(ケイブ状)の内部にのみ機能性物質(塗布剤)を存在させ、ワイヤの最表面は見かけ上平滑として、良好な通電性を維持する。
【0011】
図2の上図は、後述するように、ワイヤの中心軸を含む断面において、走査型顕微鏡を使用して、その表面状態を調べたときに撮影した写真であり、下図はそれを画像処理した図である。図2の下図において、黒く塗りつぶした部分が塗布剤である。このように、ボトルネック状又はケイブ状の凹部内に塗布剤が存在しているので、ワイヤ表面がコンジットライナ及び給電チップの内面に接触し、摺動しても、塗布剤がワイヤ表面から容易に離脱してしまうことはない。
【0012】
そして、狭いくぼみ内部の機能性物質は、ワイヤに変形が加わった場合にも、アンカー効果で容易には離脱することなく、図1又は図2に示す状態で、ワイヤ先端のアークの直上位置まで保持され、その機能性効果を十分に発揮することができる。更に、前記凹部に存在する塗布剤が前記凹部以外に微量しみ出し、ワイヤ表面の凸部及び/又は平坦部に存在していても、通電性が阻害されることはなく、塗布剤はその機能性を発揮することも判明した。また、しみ出した塗布剤は、送給性を阻害するほどの量で、ワイヤ表面から離脱し、コンジットライナ及び給電チップ内面に堆積してしまうことはない。
【0013】
次に、図1又は図2に示すボトルネック状又はケイブ状の凹部をワイヤ表面に形成する方法の一例について説明する。なお、このようなボトルネック状及びケイブ状の凹部は、伸線前の線にあらかじめ形成されていなくても、伸線の中間段階で形成してもよいし、最終段階で形成してもよい。工業的には、以下の3つのステップによる方法が製造コストが低い有効な製造方法である。
【0014】
▲1▼素線の加工工程で凹凸を形成する工程
溶接ワイヤの素線であるところの「原線」は、製鉄所において一貫した連続鋳造及び熱間圧延工程によって製造される。但し、バッチ式の炉で鋳造され、その後圧延されて、製造されることもある。このときの圧延条件、即ち、圧延温度、及び減面率を調整することにより、ワイヤ長手方向に「皺状くぼみ」を生成させることができる。この「皺状くぼみ」は、通常、酸化鉄(所謂スケール)が埋めているが、その酸化物を機械的又は化学的に除去することによって、後述の工程を経て「ボトルネック状及び/又はケイブ状のくぼみ」に変えることができる「素線の凹部」となり得る。従って、予め十分な深さの「素線の凹部」を得るべく、圧延温度や減面率を調整する。
【0015】
また更に別の方法として、焼鈍によって素線の凹凸を制御することも可能であった。例えば、先ず、素線を酸化性雰囲気又は水蒸気雰囲気で焼鈍することにより、金属結晶粒界を優先的に酸化する。焼鈍後、化学的又は電気化学的に酸化膜を除去することにより、粒界腐食部が選択的に除去され、「素線の凹部」が生成される。
【0016】
上記の化学的な酸化皮膜除去の工程においては、酸洗条件を調整することによっても、「素線の凹部」の度合いを制御することができる。素線を塩酸酸洗する場合、塩酸浴中に酸素及び/又は硝酸及び/又は過酸化水素水等を添加することで酸化力を向上させ、「素線の凹部」の度合いを制御させることも可能である。塩酸以外の酸を用いても「素線の凹部」を調整することができる。例えば、硝酸を用いて原線表面を不動態化処理し、その後塩素イオン等を用いて電解局部腐食させることにより、原線表面にくぼみを生成することができる。また、インヒビターを使用し、酸洗することにより素線表面の酸化鉄(スケール)のみを選択的に溶解させ、組成が本来持っている鋭利なくぼみをなますことなく、保存することにより、鋭利なくぼみが多い素線を得ることもできる。このこの鋭利なくぼみは後述する方法により、「ボトルネック及びケイブ状の凹部」となりやすい。即ち、通常の酸洗であると、凹部はその開口周縁がなだらかに拡がるが、インヒビターを使用すると、凹部の開口周縁が鋭角のままで、凹部の内部よりも開口周縁の方が狭くなっている。なお、インヒビターとは、鉄地腐食阻害物質の薬品のことである。
【0017】
更に、別の方法として、素線加工工程において、ローラの表面粗度を調整した圧延ローラを使用し、そのローラ表面の凹凸をワイヤ表面に転写することにより、「素線の凹部」を生成できる。ローラ転写により「素線の凹部」を生成することは、酸化膜の有無、伸線温度、及び線径に拘わらず可能である。
【0018】
▲2▼その凹部を何らかの充填物で埋めてから、凹部の存在を保持しつつ、開口部(間口)を狭める工程
開口部が大きく開いた状態の素線表面に、最終製品ワイヤ径で必要となる機能性塗布剤を塗布し、その後、ワイヤを伸線加工することにより、開口部が狭まり、凹部内の塗布剤の上に鋼皮が薄くかぶさり、所望の「ボトルネック状及びケイブ状の凹部の内部に塗布剤が存在するワイヤ」を得ることができる。このときの伸線加工は、穴ダイス、マイクロミル又はローラダイスを使用して行うことができる。
【0019】
穴ダイスを用いて伸線加工する場合は、「素線の凹部」の形状をそのまま保存することは困難であるが、塗布剤中のバインダー成分を調整することにより、「ボトルネック状又はケイブ状の凹部」を生成することができる。具体的には、ボラックス、ボンデ処理等のワイヤ表面に化学的に結合する無機バインダー及び/又は有機バインダーを用いることにより、凹部を保持することができる。
【0020】
また、マイクロミル及び/又はローラダイスを用いると、「素線の凹部」は比較的保存されやすく、最終ワイヤ径において、「ボトルネック状又はケイブ状の凹部」を生成することができる。
【0021】
伸線加工工程においては、穴ダイス、マイクロミル又はローラダイスの単独による伸線加工に加えて、これらの方法を組合せて伸線加工しても良い。
【0022】
更に、種々のK化合物、Na化合物、Cs化合物、硫化物、リン化合物、ホウ素化合物、亜鉛化合物、黒鉛、PTFEを、有機系及び/又は無機系のバインダーで混合したものをワイヤ表面に塗布し、上記のような伸線工程を経ることによって、「素線の凹部」形状を保持しつつ、ワイヤ表面の開口部(間口)を狭めていき、内部に機能性塗布剤を保持しうる「ボトルネック状又はケイブ状の凹部」を高効率で形成することができる。
【0023】
▲3▼見かけ上平滑なワイヤ表面を持つように仕上げる工程
最終的には、その凹部に送給潤滑剤、通電安定剤、又はスパッタ防止剤等の機能性物質が充填されると共に、通電性及び耐詰まり性が良好であるように、見かけ上平滑なワイヤ表面を持つように仕上げることが必要である。
【0024】
最終ワイヤ径においては、「素線の凹部」の形成段階で機能性物質を充填させた場合は、仕上げ穴ダイス又はローラダイス等でスキンパス加工(低減面率で加工)することにより、凹部の開口部にワイヤ鋼皮が薄くかぶさって間口が小さくなり、本発明のワイヤを製造することができる。
【0025】
更に別の方法として、「素線の凹部」に予め別の物質を充填して伸線加工したものを、最終伸線上がり工程において、K化合物、Na化合物、Cs化合物、硫化物、リン化合物、ホウ素化合物、亜鉛化合物、黒鉛、PTFEからなる群から選択された1種以上のものを、水、アルコール、油、又はエマルジョン等に分散させて、ワイヤ表面にすり込むことによっても、「ボトルネック状又はケイブ状の凹部」の内部が、これらの物質により置換され、凹部内に残留する。
【0026】
なお、本発明は銅メッキを施していないソリッドワイヤである。これは、銅メッキが施されたワイヤにおいては、前述の「ボトルネック状又はケイブ状の凹部」を生成しても、銅メッキが剥離しやすくなるため、実用に供することができないからである。
【0027】
次に、「ボトルネック状又はケイブ状の凹部」について更に詳細に説明する。本発明の目的は、機能性を有する塗布剤をワイヤ表面に離脱することなく保持し、良好なワイヤ送給性とアーク安定性とを併せ持つと共に、スパッタが少ない良好な溶接作業性を有するアーク溶接用ソリッドワイヤを得ることにある。この目的を達成するために、本発明においては、「ボトルネック状又はケイブ状の凹部」として、図1に示すように、仮想光源からワイヤ表面に対して垂直に光を投射した場合に、影になる部分(表面から見えない部分、図1に黒で塗りつぶした部分)が存在するような凹部と定義する。
【0028】
このような「ボトルネック状又はケイブ状の凹部」をもつワイヤの特性を評価した結果、以下の事実が明らかになった。
【0029】
「ボトルネック状又はケイブ状の凹部」の数は、ワイヤ周方向に、1周長あたり、総数で20箇所以上存在することが好ましい。これにより、十分に塗布剤の効果を発揮するだけの機能性物質を保持することができる。この凹部の数は、ワイヤの長手方向の数箇所にてその横断面を採取し、ワイヤの周方向に凹部の数(1周あたりの)を求めた結果の平均値として把握される。
【0030】
このような形状の凹部の数が1周あたり20個以上あると、送給性、アーク安定性及びスパッタ発生量低減に、十分効果を発揮するだけの塗布剤を保持することができると共に、ワイヤの周方向の一部だけに塗布剤が偏って存在するということを防止することができる。凹部の数が20個未満の場合は、その位置がワイヤの周方向の一部に偏ってしまうことがあり、このとき塗布剤がワイヤ周面の一部分にしか作用しなくなり、均一で安定なアーク現象を得ることが困難になる。
【0031】
更に、有効くぼみの長さ率が0.5%以上50%未満であると、塗布剤の保持効果が更に一層大きくなり、塗布剤の効果が十分発揮される。なお、有効くぼみの長さ率は、図1に示すように、ワイヤ表面に垂直に仮想投影したときに、影となる部分の長さの総和l1+l2+・・・+lnのワイヤ基準円弧長lに対する比率であると定義する。これを数式で表現すると、下記数式1のようになる。
【0032】
【数1】
Figure 0003780453
【0033】
また、有効くぼみの長さ率が0.5%以上50%未満であるとき、塗布剤を保持する効果が十分に発揮される。有効くぼみの長さ率が0.5%未満では十分な量の塗布剤を保持することができない。逆に、有効くぼみの長さ率が50%以上になると、表面粗さが大きくなり、表面の摩擦抵抗が大きくなるため、ワイヤの送給性が劣化してしまう。
【0034】
一般的に、ワイヤ等の表面凹凸の大小は、算術平均粗さRa、最大高さRy、十点平均粗さRz、負荷長さ率tp、凹凸の平均間隔Sm、局部山頂の平均間隔S及び比表面積等を使用して表現する。しかしながら、これらの値によって表現される単純な凹凸だけでは、塗布剤を効果的に保持することができるとはいえない。即ち、従来検討されているような単純な凹凸だけでは、ワイヤに変形が加わると凹部の形状も変化するため、塗布剤が離脱しやすくなる。塗布剤を効果的に保持するためには、アンカー効果を有する「ボトルネック状又はケイブ状の凹部」に塗布剤を保持することがよい。これにより、ワイヤの変形等が生じ、凹部の形状が多少変化しても、塗布剤は凹部から容易に離脱することはなくなる。
【0035】
くぼみの形状は、以下に示す方法で確認することができる。先ず、ワイヤ表面に、Pt、Ni又はCuなどの金属薄膜をスパッタリングにより蒸着した後、ワイヤを熱硬化性樹脂に埋め込む。その後、断面を研磨し、この断面を走査型電子顕微鏡で観察し、ワイヤ表面形状と塗布剤の有無を確認する。ボトルネック状及びケイブ状の凹部のくぼみ長さ率は1000倍から2000倍の倍率でワイヤ断面の表面を観察することにより求めることが好ましい。より具体的には、1000倍から2000倍で印画紙に焼き付け、又はデジタルデータとして画像をとりこむ。印画紙の場合は、デバイダを用いて仮想光源に対する影の長さの総和を求め、その値をワイヤの基準円弧長で徐することによって有効くぼみ長さ率を求めることができる。また、デジタルデータは画像処理を施し、形状を明確にした後、仮想光源に対する影の長さの総和を求め、その値をワイヤの基準円弧長で徐することによって、有効くぼみ長さ率を求めることができる。
【0036】
この有効くぼみ長さ率は、従来実施されているワイヤ表面の接触式粗さ測定及び電子線又はレーザ等を用いた非接触式形状測定では検出することができない。
【0037】
有効くぼみ長さ率を所定の範囲に制御するために、以下の方法がある。即ち、原線又は伸線途中において、高減面率の熱間圧延を実施することにより、従来には無い特異な表面皺、特に深い凹部を有するワイヤ表面を得ることができる。従来、素線加工工程でワイヤ表面に過度の凹部が生成すると、その後の伸線加工工程で、肌荒れ及びクラック等の発生原因となるため、故意に凹部を生成することはなかった。本発明はこのような従来の常識を覆すものである。
【0038】
ワイヤ表面のボトルネック状及びケイブ状の凹部に保持され、スプリングライナ及び給電チップにおける滑り性を向上させる効果を有する機能性物質としては、酸化物、K化合物、Na化合物、Cs化合物、硫化物、リン化合物、ホウ素化合物、亜鉛化合物、黒鉛及びPTFEからなる群から選択された1種類以上がある。
【0039】
このボトルネック状及び/又はケイブ状の凹部に、K、Na及びCsからなる群から選択された1種又は2種以上が存在していると、アークが安定する。また、K、Na及びCsの合計量が0.3乃至10ppmであるときに、アークが最も安定し、スパッタ発生量を低減できる。
【0040】
これらの塗布剤は、伸線前の原線に塗布したり、伸線の中間段階で塗布したり、最終製品径直前のスキンパスで塗布したりすることができ、そのいくつかを組合せて塗布してもよい。
【0041】
塗布形態としては、粉体塗布、水分散液の塗布、及び油分散液の塗布があり、そのいくつかを組合せて塗布してもよい。必要に応じて、ワイヤ表面に固着させるのり剤を塗布剤と共に塗布してもよい。これらのいずれの方法を使用して塗布しても、送給性を向上する効果、アークを安定化する効果、及びスパッタを低減する効果には差がなかった。
【0042】
植物油、動物油、鉱物油及び合成油からなる群から選択された1種又は2種以上の油が、前記凹部内及びワイヤ表面のいずれかに、ワイヤ10kgあたり0.1乃至2g存在することが好ましい。本願発明者等が送給性及びスパッタ発生量とワイヤの油量との関係を調査した結果、油をワイヤ10kgあたり0.1乃至2g塗布すると、送給性が更に向上し、アークが安定することにより、スパッタ発生量が低減することを見いだした。油の塗布量は0.1g未満では送給性を向上させる効果がない。一方、2gを超えて塗布しても送給性を向上させる効果は飽和し、逆に送給ローラでのスリップが生じ、結果として送給性を低下させてしまう。このため、塗布量はワイヤ10kgあたり0.1乃至2gとする。
【0043】
ソリッドワイヤの組成としては、YGW11,12,15,16,17,18に相当するもの等、種々の組成のソリッドワイヤを使用することができ、いずれのソリッドワイヤでも上記効果を奏する。なお、下記表1にこれらのYGW11,12,15,16,17,18の各ワイヤの組成を示す。
【0044】
【実施例】
以下、本発明の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
【0045】
<ワイヤの製造方法>
以下の方法を使用してワイヤを作成した。先ず、原線の熱間圧延温度及び減面率を調整し、表面に皺状のくぼみを生成した。次に、塩酸酸洗により表面の酸化皮膜を除去し、表面に機能性を有する塗布剤を塗布した。その後、ローラダイス及び穴ダイスを使用して伸線加工し、ワイヤ表面に、内部に塗布剤が存在するボトルネック状及び/又はケイブ状の凹部を形成した。更に、最終製品径で、酸化物、K化合物、Na化合物、Cs化合物、硫化物、リン化合物、ホウ素化合物、亜鉛化合物、黒鉛、又はPTFEのいくつかを、水、油、又はエマルジョンに分散させてワイヤ表面に塗布した。このワイヤはJIS Z3312 YGW11,12,15,16,17,18相当の銅メッキを有しないソリッドワイヤである。
【0046】
<ワイヤ凹凸状態の確認>
ワイヤ表面にPt膜をスパッタリングにより蒸着した後、ワイヤを熱硬化性樹脂に埋め込み、断面を研磨した。この断面を走査型電子顕微鏡で撮影したものが図2の上図である。更に、画像処理を施し、凹部の形状及び塗布剤の付着状態を明確にしたものが図2の下図である。
【0047】
<送給性の評価>
送給性の評価は、図3に示す1ターンの6mトーチを使用し、1ターン溶接時に、送給ローラに加わる荷重を送給抵抗として測定することにより、この送給抵抗の大小で行った。
【0048】
<スパッタ発生量の測定>
スパッタ発生量は次の方法で測定した。直径が1.2mmのワイヤを使用し、電流300A、電圧37V、ワイヤ突出し長さ25mm、溶接速度30cm/minでビードオンプレート溶接を行ない、図4に示すように、母材の周辺を銅製の捕集板で囲い、溶接ビードの左右に飛散する全てのスパッタを捕集板により捕集した。そして、1分間あたりに発生するスパッタ質量をスパッタ発生量として測定した。
【0049】
下記表1は、使用したソリッドワイヤの組成(JIS Z3312)を示す。なお、表1において、Tr.は微量(トレース)であることを示す。また、下記表2乃至表5は、本発明の実施例(表面に請求項1に記載の凹部を形成し、請求項1に記載の物質を前記凹部内に保持したもの)及び比較例(表面に凹部を形成しない従来のワイヤ)の送給抵抗及びスパッタ発生量を示す。表2及び表3は夫々表1に示すワイヤYGW11を使用した場合の実施例及び比較例であり、表4及び表5は夫々表1に示すワイヤYGW18を使用した場合の実施例及び比較例である。線径はいずれも1.2mmである。なお、凹部が0の比較例において、化合物種の記載がある比較例は、この化合物はワイヤ表面に存在する。
【0050】
【表1】
Figure 0003780453
【0051】
【表2】
Figure 0003780453
【0052】
【表3】
Figure 0003780453
【表4】
Figure 0003780453
【表5】
Figure 0003780453
【0053】
この表2及び表4に示すように、本発明の実施例乃至20及び実施例37乃至47のソリッドワイヤの場合は、送給抵抗が低くスパッタ発生量も少なかった。これに対し、表3及び表5に示す比較例21乃至32及び比較例48乃至59の場合は、送給抵抗が5.0N以上と高く、スパッタ発生量も1190mg/分以上と多量であった。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、ワイヤ表面にボトルネック状及び/又はケイブ状の凹部を形成し、この凹部に機能性を有する塗布剤を内包させ保持させたので、ワイヤ表面がコンジットライナ内面及び給電チップ内面に摺動しても、ワイヤ表面に保持された塗布剤はワイヤ表面から離脱することがなく、送給性が損なわれない。また、ワイヤ表面から離脱した塗布剤がコンジットライナ内部又は給電チップ内面に堆積することもなく、従って堆積物によりワイヤ送給が妨げられることもない。
【0055】
そして、本発明によれば、ワイヤが送給過程で変形等しても、機能性塗布剤がワイヤ表面から容易に離脱してしまうことがないため、機能性を有する塗布剤がアーク直上まで保持され得る。従って、極少量の機能性物質を塗布するだけで、スパッタ発生量の低減及びアークの安定化が可能である。
【0056】
また、本発明は、銅メッキを施していないソリッドワイヤであるため、ワイヤ表面に凹部を生成しても、銅メッキが剥離し易すくなるという問題点は生じない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るソリッドワイヤの表面形状を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例に係るソリッドワイヤの表面の電子顕微鏡観察写真と、その画像処理後の図である。
【図3】ワイヤ送給装置を示す模式図である。
【図4】スパッタ捕集方法を示す斜視図である。

Claims (4)

  1. ワイヤ表面に開口し、長手方向に延びると共に、断面が開口部よりも内部が広いボトルネック状及び/又は開口が狭く内部に延びるケイブ状の凹部を有し、この凹部内に、K化合物、Na化合物、Cs化合物、硫化物、リン化合物、ホウ素化合物、亜鉛化合物、黒鉛、及びPTFEからなる群から選択された1種以上の物質のみが存在すると共に、前記凹部がワイヤ周方向に、1周長あたり、総数で20箇所以上存在することを特徴とする銅メッキなしアーク溶接用ソリッドワイヤ。
  2. 前記凹部の有効長さ率が0.5%以上50%未満であることを特徴とする請求項1に記載の銅メッキなしアーク溶接用ソリッドワイヤ。
  3. 前記凹部内及びワイヤ表面のいずれかに存在するK、Na、及びCsの総量が0.3乃至10ppmであることを特徴とする請求項1に記載の銅メッキなしアーク溶接用ソリッドワイヤ。
  4. 植物油、動物油、鉱物油及び合成油からなる群から選択された1種又は2種以上の油が、前記凹部内及びワイヤ表面のいずれかに、ワイヤ10kgあたり0.1乃至2g存在することを特徴とする請求項1に記載の銅メッキなしアーク溶接用ソリッドワイヤ。
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