JPH07100687A - アーク溶接用ワイヤ - Google Patents

アーク溶接用ワイヤ

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JPH07100687A
JPH07100687A JP5267956A JP26795693A JPH07100687A JP H07100687 A JPH07100687 A JP H07100687A JP 5267956 A JP5267956 A JP 5267956A JP 26795693 A JP26795693 A JP 26795693A JP H07100687 A JPH07100687 A JP H07100687A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 通電点の変動や送給の不安定さがなくアーク
安定性の優れたアーク溶接用ソリッドワイヤを提供す
る。 【構成】 ワイヤ表面にメッキ皮膜が施されているアー
ク溶接用メッキワイヤにおいて、下記(1)式で定義され
るワイヤ表面の比表面積値を0.01以下に抑制し、か
つ、下記(2)式で定義されるメッキ厚指数を0.1〜0.
6に調整したことを特徴とするアーク溶接用メッキワイ
ヤである。軟鋼や高張力鋼を始めとする様々な金属材の
アーク溶接に適用される。 ワイヤ比表面積=(Sa/Sm)−1 ………(1) ここで、Sa:測定部分のワイヤ表面の実表面積(mm2)、
Sm:ワイヤ表面の実表面積を測定した測定部分の見か
け上の面積(mm2)である。 メッキ厚指数=[Cu]×ワイヤ径 ………(2) ここで、[Cu]:アーク溶接用メッキワイヤ中のCu量
(単位:wt%)、ワイヤ径:アーク溶接用メッキワイヤの
ワイヤ径(単位:mm)である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は溶接作業性(アーク安定
性、送給安定性を含む)を改善したアーク溶接用メッキ
ワイヤに関し、軟鋼や高張力鋼を始めとする様々な金属
材のアーク溶接に適用される。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】アーク
不安定は、従来アーク溶接での溶接作業性の大きな問題
点の1つである。その原因としては、通電点の変動や送
給性の不安定さが挙げられる。
【0003】このアーク不安定さを改善する方法とし
て、銅メッキを施したソリッドワイヤに関しては、通電
点を安定させるためにメッキ密着性の向上やメッキ皮膜
の均一性向上を図ったワイヤなどが検討され実用化され
てきた。また、送給性安定のために粒界酸化せしめたワ
イヤ(特開昭56−144892号)等の技術が提案され
た。
【0004】しかしながら、ソリッドワイヤについての
アーク不安定さの問題点は、メッキ密着性、メッキつき
まわりの向上、また粒界酸化ワイヤだけでは満足し得る
程度には改善されていない。すなわち、粒界酸化ワイヤ
は、ワイヤ表層に酸素富化層を形成させて、その上に銅
メッキを施した後伸線することにより、ワイヤ表面に横
溝をつくり、横溝中に保持される液体潤滑剤によりワイ
ヤ送給性を向上させるものであるが、アーク安定性につ
いては不十分である。また、メッキ密着性やメッキ皮膜
の均一性を向上させ、チップ−ワイヤ間の通電点を安定
させる試みもなされてきたが、それらの因子を改善して
も、アーク安定性については満足できる性能は得られて
いない。
【0005】本発明の目的は、上記従来ワイヤの欠点を
解消して、通電点の変動や送給の不安定さがなくアーク
安定性の優れたアーク溶接用ソリッドワイヤを提供する
ことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の手段として、本発明は、ワイヤ表面にメッキ皮膜が施
されているアーク溶接用メッキワイヤにおいて、下記
(1)式で定義されるワイヤ表面の比表面積値(「ワイヤ
比表面積」)を0.01以下に抑制し、かつ、下記(2)式
で定義されるメッキ厚指数を0.1〜0.6に調整したこ
とを特徴とするアーク溶接用メッキワイヤを要旨として
いる。 記 ワイヤ比表面積=(Sa/Sm)−1 ………(1) ここで、 Sa:測定部分のワイヤ表面の実表面積(mm2) Sm:ワイヤ表面の実表面積を測定した測定部分の見か
け上の面積(mm2) メッキ厚指数=[Cu]×ワイヤ径 ………(2) ここで、 [Cu]:アーク溶接用メッキワイヤ中のCu量(単位:w
t%) ワイヤ径:アーク溶接用メッキワイヤのワイヤ径(単
位:mm)
【0007】
【作用】以下に本発明を更に詳述する。まず、本発明の
知見を得るに至った基礎実験の結果を示す。
【0008】本発明者らは、ソリッドワイヤについて、
伸線方法(潤滑剤、伸線速度、ワイヤ温度など)や、メッ
キCu量の増減、メッキサイズや焼鈍条件などを変化さ
せたワイヤを試作し、アーク安定性を調査したところ、
アーク安定性に差異(良、悪)が認められた。
【0009】その原因としては、送給性不安定及び通電
点の変動が考えられたので、まず初めに、送給性不安定
とアーク安定性との相関について調査した。具体的に
は、溶接電流を流さずにワイヤ送給性を調査したが、ア
ーク安定性調査結果との良い相関関係は得られなかっ
た。
【0010】次に、アーク安定性はワイヤの通電性と関
係があると考え、ワイヤ表面の粗さをSEMや触針法
(JIS B0601、JIS B0651)で測定し、作
業性との関連を調査した。
【0011】具体的には、触針法によるワイヤ長手方向
の表面粗さを測定した結果及び円周方向の真円度計によ
る測定結果から、アーク安定性との関係を調査したが、
これらの2次元的測定方法からの結果では明確な相関関
係は認められなかった。しかし、SEM及び触針法によ
る表面粗さ測定を通し、本発明の基礎となった2つの知
見を見い出すことができた。
【0012】第1に、触針法による粗さとSEMによる
観察から得られるワイヤ表面の状況は必ずしも一致しな
い。第2に、触針法による粗さの結果は同一であって
も、ワイヤ通電性、アーク安定性に差がある。以上の理
由により、触針法について検討したところ、触針法によ
る粗さ測定では、針先の曲率よりも小さな凹凸が測定困
難である(微細凹部は計測不可能、凸部は触針により破
壊される)ことにより、SEMで観察した表面状況と触
針法により測定された結果と良好な一致はみられてない
との結論に至った。
【0013】そこで、更に微細な粗さ及び粗さの3次元
的定量化を行う測定方法を用いた。この測定の結果、粗
さとアーク安定性との強い相関関係を認めることができ
た。従来の触針法では測定できない微細な凹凸及び3次
元的凹凸度(ワイヤ比表面積)がアーク安定性に大きく影
響していることがわかった。この理由は必ずしも明確で
はないが、ワイヤ表面のワイヤ比表面積が大きい、すな
わち、ワイヤ表面の凹凸が大きくなるとチップとワイヤ
の接触点(通電点)が不安定となり、その結果、溶接電流
が不安定となり、アークが安定しないものと推定され
る。これまでの表面粗さ測定法では測定できないワイヤ
表面の微細な凹凸がアーク安定性に大きく影響するもの
と考えられる。
【0014】更に検討したところ、ワイヤ表面に施した
銅メッキの量によりアーク安定性が大きく変化し、下式
(2)に示すメッキ厚指数を所定の範囲に制御することに
より、ワイヤ比表面積を抑制する効果が顕著になること
を発見した。これは、適量存在する銅メッキの層が、銅
メッキ工程以降の伸線工程でのダイスやローラ等と接触
することにより発生するワイヤ表面の凹凸を抑制してい
るためと考えられる。
【0015】 メッキ厚指数=[Cu]×ワイヤ径 ………(2) ここで、 [Cu]:アーク溶接用メッキワイヤ中のCu量(単位:w
t%) ワイヤ径:アーク溶接用メッキワイヤのワイヤ径(単
位:mm)
【0016】ここで、ワイヤ比表面積とは、ワイヤ表面
の実表面積を測定した部分の見かけ上の面積をSm(m
m2)、測定部分のワイヤ実表面積をSa(mm2)とした場
合、下式(1)で定義される。 ワイヤ比表面積=(Sa/Sm)−1 ……(1)
【0017】なお、測定した部分の見かけ上の面積と
は、測定部分を平面に展開した時の縦×横で表わされる
面積である。本発明では、測定部分を平面に展開した
後、500μm×600μm(300000μm2)の部分の
実表面積を測定した。
【0018】なお、ワイヤ比表面積は、以下の条件の方
法によって測定されるものである。
【0019】サンプリング方法:スプールに巻かれた製
品ワイヤからできるだけ疵を付けないように約20mmを
任意の3ヶ所から採取し、金属表面を腐食させない石油
エーテル、アセトン、四塩化炭素、フロン等の有機溶媒
中で、或いは加工工程中で使用する潤滑剤の種類によっ
てはそれを除くために最も適当と思われる液(湯やその
他の脱脂液)で超音波洗浄することによりワイヤ表面に
付着している汚れや油脂分等の不純物を取り除く。超音
波洗浄はワイヤが互いに擦れ合って疵を付けないように
1本づつ行う。なお、ワイヤの製造に当たっては、伸線
によってダイスから受ける疵や、設備各所や線同士の接
触で生じる疵や擦疵等は可能な限り発生させないように
留意されているものであり、その意味では、ワイヤ比表
面積値は疵のない部分を選んで測定する。
【0020】測定位置:1サンプルの任意の1断面を1
20度ずらした3ヶ所で測定し、3サンプルの合計9ヶ
所の測定値の単純平均とする。
【0021】測定倍率:150倍(ワイヤ径によらず一
定)とする。なお、測定装置としては、例えば、エリオ
ニクス社製ERA−8000が挙げられる。
【0022】本発明は、以上の要領で測定されたワイヤ
比表面積を0.01以下に抑制し、かつ、メッキ厚指数
を0.1〜0.5に調整することにより、アーク安定性に
優れたアーク溶接用メッキワイヤが得られることを見い
出したものである。
【0023】ワイヤ比表面積:0.01以下 ワイヤ比表面積は、アーク安定性に影響し、ワイヤ比表
面積が小さいほどアーク安定性は良好になる。過酷な送
給系で溶接を行うことを想定した場合、ワイヤ送給性を
確保しアーク安定性を保つため、ワイヤ比表面積の上限
は0.01とする。また、前述のERA−8000によ
り測定した平均表面粗さ(Ra)は0.4μm以下であるこ
とが望ましい。また、ワイヤ長手方向における比表面積
値のバラツキも±0.005以内にすることが望まし
い。
【0024】ワイヤ比表面積を小さくする方法として
は、乾式伸線法よりも湿式伸線の方が小さくなり、伸線
速度の低速化、伸線ダイススケジュールを変えることに
よる減面率の細分化、メッキサイズの細径化等により、
ワイヤ比表面積を小さくすることが可能である。
【0025】メッキ厚指数:0.1〜0.6 メッキ厚指数はアーク安定性に影響があり、0.1未満
ではワイヤ表面に流れる電流が均一に規則的に流れるこ
とが阻害されアークが不規則になるという問題があり、
0.6を超えると伸線中にダイスと柔らかい銅メッキが
接触することによりメッキが欠落し、この欠落部分が通
電点の不安定さが生じアークが不規則になるという問題
がある。より好ましい範囲は0.2〜0.5である。
【0026】本発明のアーク溶接用メッキワイヤにおけ
るワイヤ組成は、特に制限されるものではなく、種々の
組成のものが可能であるが、以下の成分を含有する鋼ワ
イヤが推奨される。
【0027】C:0.02〜0.15% Cは溶接金属の強度を得る上で必要不可欠の成分である
が、0.02%未満では高張力鋼溶接金属としては強度
が不足し、また0.15%を超えると、割れ感受性が著
しく高まるため、好ましくない。
【0028】Si:0.5〜1.0% Siは脱酸元素として不可欠であり、溶接金属の降伏強
度を高める上で効果がある。しかし、0.5%未満では
脱酸不足であり、また1.0%を超えると溶接金属の靭
性が低下するため、好ましくない。
【0029】Mn:1.0〜2.0% Mnは、Siと共に脱酸元素として添加されるが、1.0
%未満では溶接金属の引張り強さを保持できず、また
2.0%を超えると生産時の伸線性が極端に悪くなるた
め、好ましくない。
【0030】P≦0.04%、S≦0.03% Pは割れ発生防止の点から0.04%未満に抑制するこ
とが必要である。また、Sは高温割れ発生の原因となる
ため、0.03%未満に抑制することが必要である。
【0031】Cu:0.10〜0.40 Cu量が0.10%未満ではメッキ下地(Fe地)の露出を
完全に皮膜することが困難である。ワイヤ表面にFe地
が露出すると、ワイヤ表面の接触抵抗が不均一になりア
ーク不安定の原因となる。一方、Cu量が0.40を超え
ると、メッキCu皮膜の内部応力が増大するので溶接時
に送給ローラ部やコンジットライナー内部でメッキCu
が剥離して、Fe地の露出が発生し、その結果、アーク
不安定となる。なお、このCu量は主としてメッキCu量
である。
【0032】上記成分のほか、必要に応じて、Ti及び
Alの1種又は2種を適量にて添加することができる。
【0033】Ti:0.01〜0.5% Tiは脱酸元素として添加され、酸化物の生成により溶
接金属のミクロ組織を微細化し、靭性を改善する効果が
ある。しかし、0.01%未満では脱酸不足であり、ま
た0.5%を超えるとワイヤ製造が困難となるため、好
ましくない。
【0034】Al:0.001〜0.5% Alは脱酸元素として添加されると共に溶滴粘度を上げ
る効果がある。しかし、0.001%未満では溶滴粘度
が低く溶滴移行が不安定となり、また0.5%を超える
とビード形状が極端に凸形となり実用上使用できないの
で好ましくない。
【0035】上記成分のほかは実質的に鉄であるが、以
下の元素を不純物として含有しても本発明の効果は阻害
されない。
【0036】Caは50ppmまで、Ni、Cr、Mo、Nb、
Wはそれぞれ0.15%まで許容できる。また微量不純
物としては、B≦0.05%、V≦0.05%、Zr≦0.
05%、O(酸素)≦0.03%、N≦0.02%を許容で
きる。
【0037】次に本発明の実施例を示す。
【0038】
【実施例】
【0039】各種の原線を用い、原線→中間伸線→焼鈍
→酸洗→メッキ→仕上伸線→製品の製造条件により、表
1に示す化学成分でワイヤ径1.0〜2.0mmφのソリッ
ドワイヤを試作した。それらのワイヤを用いて、軟鋼母
材上で溶接を行い、一部は送給系条件を2水準に変えて
溶接を行い、溶接作業性を評価した。溶接条件を表2に
示す。
【0040】一方、各ワイヤについて、前述の測定方法
により、ワイヤ比表面積を測定した。それらの結果を表
1にまとめて示す。
【0041】表1において、ワイヤNo.1〜8は本発明
例であり、いずれも良好な作業性及び機械的性能を示し
た。
【0042】これに対し、比較例のワイヤNo.9はメッ
キ厚指数が本発明範囲の下限より小さいため、アーク安
定性が劣っている。ワイヤNo.10もメッキ厚指数が本
発明範囲の下限より小さいため、アーク安定性、送給性
が劣っている。また、ワイヤNo.11とNo.12はメッ
キ厚指数が本発明範囲の上限より大きいため、アーク安
定性が劣っている。
【0043】比較例ワイヤNo.13はワイヤ比表面積値
が本発明範囲を外れているため、アーク安定性が劣って
いる。ワイヤNo.10もワイヤ比表面積値が本発明範囲
を外れているため、アーク安定性、送給性が劣ってい
る。ワイヤNo.15とNo.16はワイヤ比表面積値及び
メッキ厚指数が共に本発明範囲を外れているため、アー
ク安定性、送給性が劣っている。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
通電点の変動や送給の不安定さがなくアーク安定性の優
れたアーク溶接用ソリッドワイヤを提供することがで
き、軟鋼や高張力鋼を始めとする様々な金属材のアーク
溶接に適用できる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ワイヤ表面にメッキ皮膜が施されている
    アーク溶接用メッキワイヤにおいて、下記(1)式で定義
    されるワイヤ表面の比表面積値(以下、「ワイヤ比表面
    積」という)を0.01以下に抑制し、かつ、下記(2)式
    で定義されるメッキ厚指数を0.1〜0.6に調整したこ
    とを特徴とするアーク溶接用メッキワイヤ。 記 ワイヤ比表面積=(Sa/Sm)−1 ………(1) ここで、 Sa:測定部分のワイヤ表面の実表面積(mm2) Sm:ワイヤ表面の実表面積を測定した測定部分の見か
    け上の面積(mm2) メッキ厚指数=[Cu]×ワイヤ径 ………(2) ここで、 [Cu]:アーク溶接用メッキワイヤ中のCu量(単位:w
    t%) ワイヤ径:アーク溶接用メッキワイヤのワイヤ径(単
    位:mm)
  2. 【請求項2】 ワイヤ組成が、重量%で(以下、同じ)、 C:0.02〜0.15%、 Si:0.5〜1.0%、 Mn:1.0〜2.0%、 P:0.04%以下、 S:0.03%以下、 Cu:0.10〜0.40%、 残部:鉄及び不可避不純物、 である請求項1に記載のアーク溶接用メッキワイヤ。
  3. 【請求項3】 ワイヤ組成として、更に、 Al:0.001〜0.5%、 Ti:0.01〜0.5%、 の1種又は2種を含有している請求項2に記載のアーク
    溶接用メッキワイヤ。
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