JP2682806B2 - アーク溶接用メッキワイヤ - Google Patents

アーク溶接用メッキワイヤ

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JP2682806B2
JP2682806B2 JP23592794A JP23592794A JP2682806B2 JP 2682806 B2 JP2682806 B2 JP 2682806B2 JP 23592794 A JP23592794 A JP 23592794A JP 23592794 A JP23592794 A JP 23592794A JP 2682806 B2 JP2682806 B2 JP 2682806B2
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啓一 鈴木
聖一 横島
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Kobe Steel Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面にメッキが施され
たソリッドワイヤ及びフラックス入りワイヤ(シームレ
スワイヤ)等のアーク溶接用メッキワイヤに関し、特に
アーク安定性及び送給安定性が優れたアーク溶接用メッ
キワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】アーク溶接において、アークが不安定に
なる原因としては、通電点が変動すること及びワイヤの
送給が不安定であること等がある。従来、アーク安定性
を向上させた銅メッキソリッドワイヤとして、粒界酸化
ワイヤが提案されている(特開昭56−144892
号)。この粒界酸化ワイヤは、ワイヤの下地表面を粒界
酸化して酸素富化層を形成した後、この下地表面に銅メ
ッキを施し、更に伸線加工することによってワイヤ表面
に横溝を形成し、この横溝内に液体潤滑剤を保持するこ
とによってワイヤ送給性を向上させたものである。ま
た、メッキ前処理の前に少なくとも1パス以上の湿式伸
線加工を施して微量な残留物を取り除くことによりメッ
キ密着性を向上させ、これにより通電点の変動を抑制し
アーク安定性を向上させたワイヤも提案されている(特
公平5−1120号)。
【0003】一方、メッキを施したフラックス入りワイ
ヤについても、通電点を安定させるために、メッキ技術
の検討及びフラックス中のアーク安定剤等の検討がなさ
れている。また、送給性を安定させるため、表面潤滑剤
等の技術開発がなされている(特開昭57−32894
号等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の溶接用ワイヤにおいては、いずれもアークの安
定性が十分でないという問題点がある。即ち、近年、ロ
ボット溶接機の普及に伴い、溶接ワイヤは更に過酷な条
件で使用されるようになった。このため、上述の溶接用
ワイヤでは、連続溶接の際に、通電チップと溶接ワイヤ
との間で間欠的にCuメッキ皮膜の融着又は剥離が発生
し、安定したアークを得ることができない。
【0005】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、ワイヤ送給性が優れていると共に通電点の
変動を回避でき、ロボット溶接機等において使用する際
にも良好なアーク安定性を得ることができるアーク溶接
用メッキワイヤを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係るアーク溶接
用メッキワイヤは、表面にメッキ皮膜を有するアーク溶
接用メッキワイヤにおいて、下記数式1で定義されるワ
イヤ比表面積を0.05以下に規制すると共に、下記数
式2で定義される下地比表面積を0.005乃至0.0
5に規制したことを特徴とする。
【0007】
【数1】ワイヤ比表面積=(Sa/Sm)−1 但し、Sa;測定対象領域におけるワイヤ表面の実表面
積(mm2) Sm;測定対象領域におけるワイヤ表面の見かけ上の面
積(mm2
【0008】
【数2】下地比表面積=(Sb/Sn)−1 但し、Sb;測定対象領域におけるメッキ層の下地のワ
イヤ表面の実表面積(mm2) Sn;測定対象領域におけるメッキ層の下地の見かけ上
の面積(mm2
【0009】
【作用】本願発明者等は、前記課題を解決するために、
種々の製造方法でワイヤを試作し、ワイヤの性状とアー
ク安定性との関係を比較した結果、ワイヤ比表面積及び
下地比表面積がアーク安定性に大きく影響を及ぼしてい
ることを見い出した。
【0010】但し、ワイヤ比表面積及び下地比表面積は
前記数式1,2により定義されるが、この数式1,2に
おけるワイヤ表面及びメッキ下地表面の実表面積Sa,
Sbは、ワイヤ表面及びメッキ下地表面の微細な凹凸を
3次元的に定量化したものである。
【0011】以下に、比表面積の測定方法について説明
する。図1にワイヤ表面の微小部分を3次元直交座標系
で示すように、ワイヤの実表面2は凹凸を有しており、
その実表面2の面積Saは、この実表面2をX−Y面に
投影した見かけ上の表面3の面積Smよりも大きい。そ
こで、図2に示すように、ワイヤ1の表面に、その長手
方向(以下、横方向)の長さが600μm、周方向(以
下、縦方向)の長さが500μmの測定領域(測定視
野)をとり、これを図3に示すように平面に展開し、横
方向の長さを256分割し、縦方向の長さを200分割
して256×200個の有限の区間に分割する。そし
て、各メッシュの交点における実表面の位置(即ち、実
表面の高さ)を測定する。この実表面の高さは、図1の
3次元直交座標系で、X−Y面が測定視野になり、実表
面の高さH11、H12等はZ軸の値として求められる。こ
の高さH11、H12等の位置を隣接する3点毎に結ぶと、
図4のようになる。そこで、実表面を図4の各高さ位置
H11、H12、H21等を結ぶことにより得られる多数の三
角形の連結により近似することとし、図5に示すよう
に、これらの各三角形の面積S11、S12等を算出してこ
れを全て加算することにより、実表面積Saとする。
【0012】この測定視野におけるメッシュ交点におけ
る実表面の高さH11、H12等は、電子線3次元粗さ解析
装置により測定することができる。この3次元粗さ解析
装置はSEM(走査型電子顕微鏡)の一種であり、試料
面に対し略垂直方向に電子を照射し、二次電子を電子線
照射点から4等配の方向について4本の検出器で検出
し、その検出結果をマイクロコンピュータで演算処理す
ることにより3次元(X,Y,Z)の位置情報を得るも
のである。
【0013】また、見かけ上の表面積Smは測定領域
(測定視野)の面積、即ち、Sm=500(μm)×6
00(μm)=300000(μm2)となる。
【0014】このようにして見かけ上の表面積Smと、
実表面の凹凸を考慮した実表面積Saを求めた後、前記
1式に従ってワイヤ比表面積を求める。
【0015】なお、実際に実表面積を求める場合には、
実表面積の測定領域においてメッキ皮膜の表面に疵がな
いこと及びワイヤ表面の付着不純物等を十分に除去する
ことが必要である。また、この比表面積は、メッキ皮膜
表面の複数箇所(例えば、9箇所)において求め、その
平均値とする。
【0016】更に、図3に示すメッシュの分割数をより
細かくすることにより、実表面積の測定値をより一層真
値に近づけることができるが、前述の如く、500μm
×600μmの領域を200×256に分割することに
より、得られた比表面積はアーク安定性との間に優れた
相関関係を示し、ワイヤの評価が可能であった。一方、
メッシュをそれ以上細かくすると、コンピュータにおけ
る解析に時間がかかるなどの不都合が生じる他、ワイヤ
評価精度の向上は少なかった。このため、本発明におい
ては、測定領域(測定視野)を500μm×600μm
とし、これを200×256分割して求めた比表面積を
特許請求の範囲に規定した。
【0017】更に、下地比表面積も、メッキ層の下地の
ワイヤ表面の見かけ上の面積Sn及び実表面積Sbにつ
いて測定及び演算する以外は、上述のワイヤ比表面積と
同様にして求めることができる。
【0018】従来ワイヤの表面粗さは、SEM又はJI
SB0601、JISB0651で規定されている触針
法で測定されている。しかし、触針法では針先の曲率よ
りも小さな凹凸の検出が困難であり、また、触針法によ
り求めたワイヤ表面の状況は、SEMによる観察から得
られるワイヤ表面の状況と必ずしも一致していない。こ
のため、従来、このワイヤ表面の状況とアーク安定性と
の間には、相関関係が認められなかった。
【0019】しかし、本願発明のように、微細な凹凸を
3次元的に定量化する方法を用いて測定したところ、従
来相関がみられなかった表面粗さとアーク安定性は、一
定の関係があることが認められた。これは、ワイヤの表
面粗さを一定値以下に抑制することにより、ワイヤと溶
接チップとの接触面積が増大し、単位面積当たりの電流
密度が下がり、通電がスムーズに行われているためであ
ると考えられる。
【0020】また、ワイヤ比表面積が大きくなって、ワ
イヤ表面の凹凸が大きくなると、チップとワイヤとの接
触点(通電点)が不安定となり、その結果、電流が不安
定となり、アークが安定しないものと推定される。この
ように、従来の表面粗さ測定法では測定できないワイヤ
表面の微細な凹凸がアーク安定性に大きく影響する。
【0021】この影響は、銅メッキを施したソリッドワ
イヤに関しても、またメッキがないソリッドワイヤにお
いても同様である。更に、ソリッドワイヤの替わりに、
フラックス入りワイヤを使用しても同様の傾向が得られ
た。
【0022】なお、測定領域は、前述の如く、ワイヤ表
面を平面に展開した状態で、500μm×600μm
(300000μm2)である。
【0023】また、ワイヤ比表面積は、以下の条件で測
定することができる。
【0024】(1)サンプリング方法:スプールに巻か
れた製品ワイヤからできるだけ疵を付けないようにし
て、約20mmの部分を任意の3箇所から採取し、金属
表面を腐食させない石油エーテル、アセトン、四塩化炭
素若しくはフロン等の有機溶媒中で、又は加工工程中で
使用する潤滑油の種類に応じてそれを除くために最も適
当と思われる液(湯若しくはその他の脱脂液)で超音波
洗浄することにより、ワイヤ表面に付着している汚れ及
び油脂分等の不純物を取り除く。超音波洗浄はワイヤが
互いに擦れ合って疵を付けないように1本づつ行う。な
お、ワイヤの製造に当たっては、伸線によってダイスか
ら受ける疵、設備各所及び線同士の接触で生じる疵及び
擦り疵は可能な限り発生させないように留意されている
ものであり、その意味では比表面積値は疵のない部分を
選んで測定することが好ましい。
【0025】(2)測定位置:1サンプルの任意の1断
面を120度ずらした3箇所で測定し、3サンプルの合
計9箇所の測定値の単純平均とする。
【0026】(3)測定倍率:150倍(ワイヤによら
ず一定)である。測定装置としては、3次元粗さ解析装
置(例えば、エリオニクス社製ERA−8000)があ
る。
【0027】下地比表面積 アーク安定性は、チップ−ワイヤ間の通電点変動に関係
がある。この通電点変動はチップ−ワイヤ間の接触抵抗
により支配され、この接触抵抗は、ワイヤ表面の性状
(ワイヤ表面の粗さ及び付着不純物)の他に、メッキ層
の下地表面(メッキ層を設ける前のワイヤ表面)の性状
(ワイヤ下地表面の粗さ及び付着不純物)と密接な関係
がある。
【0028】そこで、本願発明者等が、前述のワイヤ表
面(メッキ層表面)について、比表面積とアーク安定性
との関係を調べた手法により、メッキ下地表面の性状と
アーク安定性との関係を調べた。その結果、下地表面積
は、下記(2)式にて定義される下地比表面積を、0.
005〜0.05にする必要があることを見い出した。
【0029】 下地比表面積=(Sb/Sn)−1 …(2) 但し、Sb:測定対象領域におけるメッキ層の下地のワ
イヤ表面の実表面積(mm2) Sn:測定対象領域におけるメッキ層の下地の見かけ上
の面積(mm2
【0030】即ち、ワイヤ表面の比表面積が同程度であ
っても、ワイヤ下地表面の比表面積が大きい場合、即
ち、ワイヤ下地表面の凹凸が大きくなると、ワイヤ送給
中、コンジットライナー内でワイヤがライナーと接触
し、ワイヤ下地の凸部において極端にメッキCuの剥離
が起こりやすくなり、チップとワイヤとの間の通電点が
不安定となり、その結果、溶接電流が不安定となり、ア
ークが安定しないものとなる。
【0031】この下地表面積の影響については、ワイヤ
下地表面の凹凸の程度が小さいと、メッキ処理工程にお
いて、ワイヤと、メッキ浴との間で十分な接触面積を得
ることができず、溶接用ワイヤとして必要なメッキ密着
性を得ることができず、その結果、アーク不安定となる
と考えられる。従来の表面粗さ測定法では測定できない
ワイヤ下地表面の微細な凹凸がメッキ密着性に影響を及
ぼし、更にアーク安定性に大きく影響を及ぼすものと考
えられる。本発明はこのような微細な凹凸を前記式
(2)にて定義される下地比表面積というパラメータで
定量化し、これを所定範囲に規制することによりアーク
安定性を更に向上させる。
【0032】即ち、本発明は、前述の要領で測定された
ワイヤ比表面積を0.05以下に規制し、且つ、下地比
表面積を0.005乃至0.05に規制することによ
り、アーク安定性が優れた溶接用メッキワイヤを得る。
【0033】以下、本発明における数値限定理由につい
て説明する。
【0034】ワイヤ比表面積:0.05以下 ワイヤ比表面積はアーク安定性に影響し、ワイヤ比表面
積が小さいほどアーク安定性が良好になる。送給速度等
が速い等、過酷な送給条件で溶接を行うことを考慮する
と、ワイヤ送給性を十分に確保し、アーク安定性を保つ
ためには、ワイヤ比表面積の上限を0.05とすること
が必要である。
【0035】過酷な送給状態では、アーク安定性を確保
するために更に一層ワイヤ比表面積を低くすることが要
求されることから、ワイヤ比表面積の上限は0.01が
好ましい。
【0036】また、平均表面粗さ(Ra)は0.4μm
以下であることが望ましい。更に、ワイヤ長手方向にお
ける比表面積値のばらつきも±0.005以内にするこ
とが望ましい。
【0037】ワイヤ比表面積を小さくするためには、ワ
イヤ本体を乾式伸線法ではなく、湿式伸線法により伸線
加工することが好ましい。また、伸線速度の低速化、伸
線ダイススケジュールを変えることによる減面率の細分
化及びメッキサイズの細径化等により、ワイヤ比表面積
を小さくすることができる。
【0038】なお、本発明は、ワイヤの成分に拘わら
ず、同様の効果が得られる。
【0039】下地比表面積:0.005乃至0.05 下地比表面積が0.005未満では、溶接用ワイヤとし
て十分なメッキ密着性が得られず、また、0.05を超
えると溶接時に、ワイヤとコンジットライナーとの間で
ワイヤ凸部のメッキが剥離しやすくなる。従って、下地
比表面積は0.005乃至0.05の範囲とする。な
お、下地比表面積は、前述のワイヤ表面積と同一の方法
により測定されるものである。
【0040】また、下地比表面積は、以下の条件で測定
することができる。
【0041】(1)サンプリング方法:スプールに巻か
れた製品ワイヤからできるだけ疵を付けないようにし
て、約20mmの部分を任意の3箇所から採取する。そ
して、これらのサンプルの表面の銅メッキ皮膜を薬品に
より溶解して下地表面を露出させ、超音波洗浄により下
地表面に付着している不純物を除去する。この場合に、
サンプル同士が相互に擦れ合って疵が付くことを防止す
るために、サンプルの超音波洗浄は1本づつ行うことが
必要である。
【0042】(2)測定位置:1サンプルの任意の1断
面を120度ずらした3箇所で測定し、3サンプルの合
計9箇所の測定値の単純平均とする。
【0043】(3)測定倍率:150倍(ワイヤ径によ
らず一定)である。
【0044】本発明においては、アーク溶接用ワイヤの
組成は特に限定されるものではない。しかし、メッキを
施したソリッドワイヤとしては、C;0.05乃至0.
15重量%(Cuメッキ皮膜を含むワイヤ全体に対する
重量%:以下、同じ)、Si;0.5乃至1.0重量
%、Mn;1.0乃至2.0重量%を含有すると共に、
主にメッキ皮膜を構成するCu量が0.1乃至0.4重
量%であり、P含有量を0.04重量%以下、S含有量
を0.03重量%以下に規制し、残部がFe及び不可避
的不純物からなることが好ましい。また、これらの元素
に加えて、Tiを0.01乃至0.5重量%含有してい
てもよい。以下に、各元素の添加理由及び組成限定理由
について説明する。
【0045】C:0.05乃至0.15重量% Cは、溶接金属の強度向上に必要不可欠な元素である。
C含有量が0.05重量%未満の場合は、高張力鋼溶接
金属としては強度が不足する。また、C含有量が0.1
5重量%を超えると、割れ感受性が著しく高くなる。こ
のため、C含有量は0.05乃至0.15重量%とす
る。
【0046】Si:0.5乃至1.0重量% Siは、脱酸元素として不可欠の元素であり、溶接金属
の降伏強度を高めるという効果がある。Si含有量が
0.5重量%未満の場合は、脱酸効果が十分でない。ま
た、Si含有量が1.0重量%を超えると、溶接金属の
靱性が低下する。このため、Si含有量は0.5乃至
1.0重量%とする。
【0047】Mn:1.0乃至2.0重量% Mnは、Siと同様に脱酸効果を有する元素である。M
n含有量が1.0重量%未満では、溶接金属の引張強さ
が十分でない。また、Mn含有量が2.0重量%を超え
ると、生産工程における伸線性が著しく低下する。この
ため、Mn含有量は1.0乃至2.0重量%とする。
【0048】P≦0.04重量%,S≦0.03重量% Pは、割れ発生防止の点から0.04重量%以下に抑制
することが必要である。また、Sは、高温割れ発生の原
因となるため、0.03重量%以下に規制することが必
要である。
【0049】Cu:0.1乃至0.4重量% Cuはメッキ皮膜を構成する元素である。Cu量が0.
1重量%未満の場合は、メッキ下地(鉄地)を完全に被
覆することが困難であり、鉄地が露出する虞れがある。
ワイヤ表面に鉄地が露出すると、ワイヤの接触抵抗が不
均一になり、アーク不安定の原因になる。一方、Cu量
が0.4重量%を超えると、メッキ皮膜の内部応力が増
大するので、溶接時に、送給ローラ部及びコンジットラ
イナー内部においてメッキ皮膜が剥離し、鉄地が露出し
て、アークが不安定になる。このため、Cu量は0.1
乃至0.4重量%とする。このCu量は主にメッキ皮膜
のCu量である。これらの効果は、メッキを施したフラ
ックス入りワイヤにおいても同様であり、フラックス入
りワイヤの場合もCu含有量は0.1〜0.4重量%と
することが好ましい。
【0050】Ti:0.01乃至0.5重量% Tiは、アーク安定剤及び脱酸元素として作用し、特に
大電流で溶接する場合に、アーク安定性を向上させると
共に、酸化物の生成により溶接金属のミクロ組織を微細
化し、靱性を改善する効果がある。このため、大電流で
溶接する場合にはTiを添加することが好ましい。小電
流での溶接の場合は、Tiを添加しなくてもよい。Ti
を添加する場合は、その添加量を0.01乃至0.5重
量%とする。Ti添加量が0.01重量%未満の場合は
脱酸効果が不足する。また、Ti含有量が0.5重量%
を超えると、ワイヤの製造が困難になる。このため、T
iを添加する場合は、その含有量を0.01乃至0.5
重量%とする。
【0051】なお、上述した成分の他に、必要に応じ
て、Al;0.02重量%以下、Ca;50ppm以
下、Ni;0.15重量%以下、Mo;0.15重量%
以下からなる群から選択された1種又は2種以上の元素
を含有させても、本発明の効果に何等悪影響を及ぼさな
い。従って、これらの元素を上述の範囲内で含有するこ
とは許容される。
【0052】また、メッキを施したフラックス入りワイ
ヤとしては、外皮成分として、C;0.08重量%以
下、Si;1.0重量%以下、Mn;0.10乃至2.
0重量%、P;0.04重量%以下及びS;0.03重
量%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物からな
る組成のものが好ましい。充填するフラックス成分は、
従来使用されている各種の成分系統のものが適用でき
る。
【0053】
【実施例】以下、本発明に係るアーク溶接用メッキワイ
ヤを実際に製造し、アーク安定性、溶接金属性能及びメ
ッキ密着性を調べた結果について、比較例と比較して説
明する。
【0054】実施例1 各種の原線を使用し、原線→伸線→メッキ→伸線(スキ
ンパス)→製品の製造工程を経て、下記表1に示す化学
成分を有し、ワイヤ径が1.2mmのソリッドワイヤを
製造した。これらのワイヤを使用して、軟鋼母材上で溶
接を行い、溶接作業性を評価した。溶接条件は、電流;
280A(DCEP)、電圧;32V、シールドガス;
100%CO2、シールドガス流量;25リットル/分であ
る。
【0055】一方、各ワイヤについて、前述の測定方法
により、ワイヤ比表面積及び下地比表面積を測定した。
その結果を、表2にまとめて示す。また、これらの溶接
用メッキワイヤの作業性を官能評価した結果及び総合判
定結果を、表2に併せて示す。作業性評価の欄は、数値
が大きいほど作業性が良好である。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】この表2に示すように、本発明に係る実施
例1〜10は、いずれも良好な作業性を示した。一方、
比較例11は、下地表面積が0.05を超えており、溶
接時にワイヤ−コンジットライナー間でワイヤ凸部のメ
ッキが剥離しやすくなり、作業性が劣るものであった。
比較例12は、下地比表面積が0.005未満であり、
十分な密着性が得られなかった。また、比較例13は、
ワイヤ比表面積が0.05を超えており、アーク安定性
が満足できるものではなかった。比較例14は、Mn及
びTi量が好ましい範囲を外れており、製造が困難であ
ると共に、下地比表面積も0.05を超えており、凸部
のメッキ剥離が生じた。
【0059】比較例15〜17は、従来のワイヤであ
り、ワイヤ比表面積が0.05を超えているか、又は下
地比表面積が0.01未満若しくは0.05を超えてお
り、いずれも作業性が満足できるものではなかった。
【0060】なお、実施例1のワイヤの下地表面の3次
元鳥瞰図及びワイヤSEM像を夫々図6,7に、比較例
11のワイヤの下地表面の3次元鳥瞰図及びワイヤSE
M像を夫々図8,9に、比較例12のワイヤの下地表面
の3次元鳥瞰図及びワイヤSEM像を夫々図10,11
に示す。
【0061】実施例2 下記表3及び表4に夫々示すパイプ組成及びフラックス
組成を有する継ぎ目なしフラックス入りワイヤを、パイ
プ造管→フラックス充填→伸線→焼鈍→伸線→メッキ→
(伸線)→スキンパス→製品の製造工程を経て、又はパ
イプ充填→焼鈍→伸線→メッキ→(伸線)→スキンパス
→製品の製造工程を経て、製造した。ワイヤA,Bはい
ずれもメッキCu量が0.1〜0.4重量%で同条件と
した。フラックス率は14重量%である。
【0062】これらのワイヤを使用して、軟鋼母材上で
溶接を行い、溶接作業性を評価した。溶接条件は、電
流;280A(DCEP)、電圧;30V、シールドガ
ス;100%CO2、シールドガス流量;25リットル/分
である。
【0063】各ワイヤについて、前述の測定方法によ
り、ワイヤ比表面積及び下地比表面積を測定した。その
結果を、表5にまとめて示す。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】表5から明らかなように、実施例21〜2
7は、いずれも良好な作業性が得られている。一方、比
較例29,31は、下地比表面積が大きすぎるために、
また、比較例32は下地比表面積が小さすぎるために、
いずれもアーク不安定が生じた。また、比較例28,3
0は、ワイヤ比表面積が夫々0.06、0.07と大き
いためにアーク不安定が生じた。
【0068】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係るアーク
溶接用メッキワイヤは、ワイヤ比表面積及び下地比表面
積を所定の範囲に規制したから、通電点の変動が防止さ
れ、ワイヤの送給性が安定して、極めて良好なアーク安
定性を得ることができる。このため、本願に係るアーク
溶接用メッキワイヤは、ソリッドワイヤ又はフラックス
入りワイヤとして、軟鋼又は高張力鋼を始めとする種々
の金属材のアーク溶接に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤ表面の微小領域における実表面を3次元
直交座標系により示す模式図である。
【図2】ワイヤ表面の比表面積の測定領域を示す模式図
である。
【図3】実表面積を算出するために測定領域を分割する
メッシュを示す模式図である。
【図4】メッシュの各交点における実表面の高さ位置を
3次元直交座標系により示し、実表面を三角形の連結で
近似する模式図である。
【図5】図4の三角形の面積を算出する方法を示す模式
図である。
【図6】実施例1のワイヤについてのワイヤ下地表面の
金属組織を示す3次元鳥瞰図(写真)である。
【図7】実施例1のワイヤについてのワイヤ下地表面の
金属組織を示すSEM像(X線写真)である。
【図8】比較例11のワイヤについてのワイヤ下地表面
の金属組織を示す3次元鳥瞰図(写真)である。
【図9】比較例11のワイヤについてのワイヤ下地表面
の金属組織を示すSEM像(X線写真)である。
【図10】比較例12のワイヤについてのワイヤ下地表
面の金属組織を示す3次元鳥瞰図(写真)である。
【図11】比較例12のワイヤについてのワイヤ下地表
面の金属組織を示すSEM像(X線写真)である。
【符号の説明】
1;ワイヤ 2;実表面 3;見かけ上の表面 Sa;実表面積 Sm;見かけ上の表面積
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−202391(JP,A) 特開 平3−66495(JP,A) 特開 平7−32187(JP,A) 特開 平7−32186(JP,A) 特開 平8−19893(JP,A) 特開 平7−299579(JP,A) 特開 平7−299583(JP,A) 特開 平7−100687(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面にメッキ皮膜を有するアーク溶接用
    メッキワイヤにおいて、下記(1)式で定義されるワイ
    ヤ比表面積を0.05以下に規制すると共に、下記
    (2)式で定義される下地比表面積を0.005乃至
    0.05に規制したことを特徴とするアーク溶接用メッ
    キワイヤ。 ワイヤ比表面積=(Sa/Sm)−1 …(1) 但し、Sa;測定対象領域におけるワイヤ表面の実表面
    積(mm2) Sm;測定対象領域におけるワイヤ表面の見かけ上の面
    積(mm2) 下地比表面積=(Sb/Sn)−1 …(2) 但し、Sb;測定対象領域におけるメッキ層の下地のワ
    イヤ表面の実表面積(mm2) Sn;測定対象領域におけるメッキ層の下地の見かけ上
    の面積(mm2
  2. 【請求項2】 前記ワイヤ比表面積を0.01以下に規
    制したことを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接用
    メッキワイヤ。
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