JP2780960B2 - アーク溶接用ソリッドワイヤ - Google Patents

アーク溶接用ソリッドワイヤ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は軟鋼、高張力鋼及び低合
金鋼等の溶接に適用され、溶接作業性が優れていると共
に、アーク安定性が良好であるアーク溶接用ソリッドワ
イヤに関する。
【0002】
【従来の技術】アーク溶接において、アークが不安定に
なる原因としては、通電点の変動及び送給の不安定性等
がある。このアーク不安定を改善するために、銅メッキ
を施したソリッドワイヤに対して、種々の研究がなされ
ている。例えば、通電点を安定させるために、メッキの
密着性及びメッキ被膜の均一性等を向上させる方法が開
発されている。また、積極的にアークの安定性を高める
ために、ワイヤ表面にアーク安定性を高める効果を有す
る物質を付着させたソリッドワイヤも公知である(特開
昭58−379号公報)。更に、送給性を安定させるた
めに、粒界酸化ワイヤが提案されている(特開昭56−
14489号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ソリッ
ドワイヤにおけるアーク不安定は、粒界酸化ワイヤを使
用するのみでは十分に解決することができない。また、
ワイヤ表面にアーク安定性を高める効果を有する物質を
付着させる方法においても、ワイヤ表面に傷を付けるの
で、この傷によって通電点の変動が発生するという問題
点がある。
【0004】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、通電点の変動を抑制すると共に送給の安定
性を高めることによって、アークの安定性を向上させ、
スパッタ発生量を低減させることができるアーク溶接用
ソリッドワイヤを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係るアーク溶接
用ソリッドワイヤは、測定対象領域におけるワイヤ実表
面積をSa 、測定対象領域における見かけ上の面積をS
m としたとき、数式((Sa /Sm )−1)によって表
されるワイヤ比表面積が0.05以下であり、表面に鉱
物油と合成油との混合潤滑油に無機カリウム化合物を分
散させたものを、前記無機カリウム化合物がカリウム換
算値でワイヤ全重量に対して1乃至8重量ppmとなる
ように付着されていることを特徴とする。
【0006】本発明に係る他のアーク溶接用ソリッドワ
イヤは、測定対象領域におけるワイヤ実表面積をSa
測定対象領域における見かけ上の面積をSm としたと
き、数式((Sa /Sm )−1)によって表されるワイ
ヤ比表面積が0.05以下であり、表面にワイヤ全重量
に対して0.5乃至3.0重量%の銅メッキ被膜が形成
されており、更に、鉱物油と合成油との混合潤滑油に無
機カリウム化合物を分散させたものを、前記無機カリウ
ム化合物がカリウム換算値でワイヤ全重量に対して1乃
至8重量ppmとなるように付着されていることを特徴
とする。
【0007】また、前記潤滑油の全体積に対する前記合
成油の混合率は30乃至70体積%であることが好まし
い。
【0008】更に、ワイヤ重量の10kg当たりの前記
潤滑油の付着量は0.5乃至2.0gであることが好ま
しい。
【0009】更にまた、前記無機カリウム化合物はホウ
酸カリウムであることが好ましい。
【0010】
【作用】本願発明者等は、前記課題を解決するために、
種々の製造方法でワイヤを試作した。例えば、ソリッド
ワイヤについて、伸線時の潤滑油、伸線速度及び減面率
の条件、メッキCuの増減、メッキサイズ並びに焼鈍条
件等を変化させた。また、従来技術であるアークを安定
化する物質(固体状又は粉末状のステアリン酸カリウム
を代表とするカルボン酸カリウム)を添加したワイヤ及
びホウ酸カリウムを鉱物油と合成油との混合潤滑油に分
散させたものを適量塗布したワイヤについても試作し
た。その結果、これらの種々の試作ワイヤにおいて、ア
ークの安定性及びスパッタ発生量に差異が生じた。
【0011】アーク安定性に差異が生じる原因として、
第1に、送給安定性の不良が挙げられたため、先ず、ワ
イヤの送給性とアーク安定性との相関性について調査し
た。具体的には、溶接電流を流さずに、ワイヤの送給性
を評価した。その結果、従来技術であるアークを安定化
する固体又は粉末物質を付着させたワイヤについては、
実験開始直後においては問題なくワイヤが送給された
が、数時間後において、ワイヤの送給に不良が発生し
た。この原因は明らかではないが、アーク安定効果を有
する固体又は粉末が溶接コンジットライナ内に堆積する
ために、ワイヤの送給性が悪化したものと考えられる。
【0012】アーク安定性に差異が生じる第2の原因と
して、通電点の移動が考えられる。そこで、ワイヤ表面
の粗さをSEM(走査型電子顕微鏡)及び触針法(JI
SB0601又はJIS B0651)によって測定
し、アーク安定性との相関性について調査したが、これ
らの二次元的測定による評価では、両者の間に明確な相
関関係を認めることができなかった。
【0013】しかしながら、本願発明者等は、送給性試
験並びにSEM及び触針法による通電性試験によって、
本発明の基礎となる以下の知見を得た。即ち、第1に、
アークを安定化する従来の固体又は粉末物質をワイヤ表
面に付着させると、ワイヤ送給性が低下し、長時間にわ
たってアーク安定性を維持することが困難になることで
ある。第2に、触針法等によるワイヤ表面の粗さは同一
であっても、ワイヤの通電性及びアーク安定性に差異が
生じることである。
【0014】そこで、先ず、アークを安定化する物質の
付着形態について検討した結果、ワイヤ表面に固体状態
でアークを安定化する物質を付着させるのではなく、鉱
物油と合成油との混合潤滑油に適正量のカリウム化合物
を微粒子状態で分散させたものを付着させることによっ
て、ワイヤの送給性を長時間にわたって維持することが
できることを確認した。
【0015】次に、ワイヤ表面の粗さを測定する方法に
ついて検討した。ワイヤ表面には針先の曲率よりも小さ
な凹凸が存在するので、触針法においては微細な凹部は
計測不可能となり、凸部は針先に破壊されるため、正確
な表面粗さを測定することができない。従って、SEM
による観察と、触針法による測定との間においても、ワ
イヤ表面の粗さについて明確に一致しなかった。そこ
で、より微細な粗さを測定する方法として、3次元的に
表面粗さを定量化する測定方法を使用した。この測定方
法によって、ワイヤ表面の粗さと、アーク安定性との相
関性を見い出すことができた。即ち、従来の触針法にお
いては測定することができない微細な3次元的凹凸度
(ワイヤ比表面積)が通電性に影響を及ぼしており、そ
のために、アーク安定性にも影響を及ぼしていることを
確認した。
【0016】本発明においては、3次元的に測定したワ
イヤ表面の実表面積をSa とし、ワイヤ表面の見かけ上
の面積をSm としたときに、ワイヤ比表面積を((Sa
/Sm )−1)として表し、通電点の移動を阻止してア
ーク安定性を向上させるために必要なワイヤ比表面積の
範囲を規定した。
【0017】比表面積は以下の方法により算出すること
ができる。
【0018】図3はワイヤ表面の微小領域における実表
面を3次元直交座標系により示す模式図であり、図4は
ワイヤ表面の比表面積の測定領域を示す模式図である。
図3に示すように、ワイヤ表面の実表面2は凹凸を有し
ており、この実表面2の面積Sa は、実表面2をX−Y
面に投影した見かけ上の表面3の面積Sm よりも大き
い。そこで、図4に示すように、ワイヤ1の表面に、ワ
イヤの長手方向(横方向)の長さが600μmであり、
周方向(縦方向)の長さが500μmである測定領域
(測定視野)をとり、これを平面に展開した。
【0019】図5は実表面積を算出するために測定領域
を分割するメッシュを示す模式図である。図5に示すよ
うに、展開した平面を横方向に256分割、縦方向に2
00分割して256×200個の有限の区間に分割し
た。そして、各メッシュの交点における実表面の位置、
即ち、実表面の高さを測定した。この実表面の高さは、
図3の3次元直交座標系において、X−Y面が測定視野
となり、Z軸の値が実表面の高さとなる。
【0020】図6はメッシュの各交点における実表面の
高さ位置を3次元直交座標系により示し、実表面を三角
形の連結で近似する模式図であり、図7は図6の三角形
の面積を算出する方法を示す模式図である。図6に示す
ように、実表面の高さH11、H12及びH21等の位置を3
点毎に連結し、得られる多数の三角形の連続により実表
面を近似した。そして、図7に示すように、これらの各
三角形の面積S11及びS12等を算出して、全ての三角形
の面積を合計することにより、実表面Sa を算出した。
【0021】この測定視野中のメッシュ交点における実
表面の高さH11及びH12等は、電子線3次元粗さ解析装
置により測定することができる。この3次元粗さ解析装
置はSEMの1種であり、試料面に対して略垂直方向に
電子線を照射し、二次電子を電子線照射点から4等配の
方向について4本の検出器で検出するものである。そし
て、その結果をマイクロコンピュータで演算処理するこ
とによって、3次元(X,Y,Z)の位置情報を得るこ
とができる。
【0022】また、見かけ上の表面積Sm は、測定領域
(測定視野)の面積、即ち、Sm =500(μm)×6
00(μm)=300000(μm2 )となる。
【0023】このようにして見かけ上の表面積Sm と、
実表面の凹凸を考慮した実表面積Sa を測定できるの
で、ワイヤ比表面積((Sa /Sm )−1)を算出する
ことができる。なお、ワイヤの製造においては、伸線に
よってダイスから受ける疵、設備各所及び線同士の接触
によって生じる疵並びに擦り疵は可能な限り発生させな
いように留意されているものである。従って、実際に実
表面積を算出する場合には、実表面積の測定領域におい
て、試料の表面に疵がないこと及びワイヤ表面の付着不
純物等を十分に除去することが必要である。また、この
比表面積は1サンプルの任意の1断面を120度ずらし
た3箇所で測定し、3サンプルの合計9箇所の測定値の
単純平均とする。
【0024】更に、図5に示すメッシュの分割をより細
かくすることにより、実表面の測定値をより真値に近づ
けることができるが、メッシュの分割数を増加させる
と、コンピュータによる解析に時間がかかる等の不都合
が生じる他に、ワイヤ評価精度の向上は少ない。従っ
て、500μm×600μmの測定領域を200×25
6個の区間に分割することによって得られた比表面積
は、アーク安定性との間に優れた相関関係を示し、ワイ
ヤの評価には十分である。
【0025】更に、本発明におけるアーク溶接用ソリッ
ドワイヤのカリウム付着量及びワイヤ比表面積の限定理
由について説明する。
【0026】ワイヤ全重量に対するカリウム付着量(カ
リウム換算値):1乃至8重量ppm 本発明においては、無機カリウム化合物を微粒子状態に
し、これを鉱物油及び合成油からなる混合潤滑油に分散
させてワイヤ表面に付着させる。このカリウム付着量が
1重量ppm未満であると、アークを安定化する効果が
低下する。一方、カリウム付着量が8重量ppmを超え
ると、アークのふらつきが発生しやすくなる。従って、
ワイヤ全重量に対するカリウム付着量は、カリウム換算
値で1乃至8重量ppmとする。また、カリウム付着量
が3乃至5重量ppmであると、アーク安定性がより一
層向上し、スパッタ発生量も低減される。従って、好ま
しくは、カリウム付着量は3乃至5重量ppmである。
【0027】なお、カリウム付着量の測定は、スプール
内の任意の部分において約20gのワイヤをサンプリン
グし、塩酸及び過酸化水素によってワイヤ表面の付着物
を溶解させた後、原子吸光法によりこの溶解液を分析し
てカリウム換算値とする。また、カリウム化合物の中で
もホウ酸カリウムは、鉱物油及び合成油からなる混合潤
滑油への分散性が優れ、潤滑油に高濃度に分散させるこ
とが可能である。更に、適切な界面活性剤を使用してホ
ウ酸カリウムを鉱物油に分散させた後、合成油に分散さ
せることも可能である。
【0028】ワイヤ比表面積:0.05以下 ワイヤ比表面積は通電性との相関性が高い。本発明にお
いては、3次元的に測定したワイヤ表面の実表面積をS
a とし、ワイヤ表面の見かけ上の面積をSm としたとき
に、ワイヤ比表面積を((Sa /Sm )−1)として表
す。従って、ワイヤ比表面積の値が小さいことは、ワイ
ヤ実表面積Sa とワイヤ表面の見かけ上の面積との差が
小さいことを示しており、このワイヤ表面は滑らかであ
る。即ち、ワイヤ比表面積が小さいほど通電性が向上す
ると共に、アーク安定性が向上する。ワイヤ比表面積が
0.05を超えると、アーク安定性を確保する効果が低
下する。従って、ワイヤ比表面積は0.05以下とす
る。また、過酷な送給系のもとで安定したアークを確保
するためには、より一層比表面積を減少させることが必
要である。従って、好ましくは、ワイヤ比表面積は0.
01以下である。更に、アーク安定性のより一層の向上
のためには、1コイルにおけるワイヤの長手方向につい
てのワイヤ比表面積のばらつき範囲は−0.0025乃
至+0.0025であることが望ましい。
【0029】ワイヤ比表面積を小さくするためには、乾
式伸線法よりも湿式伸線法の方が有効である。また、伸
線速度の低速化、伸線時の減面率の細分化及びメッキサ
イズの細径化等によって、ワイヤ比表面積を小さくする
ことも可能である。最も有効であるのは、溶接用スプー
ルに巻き換える前の伸線方法を乾式伸線から湿式伸線に
変更することである。
【0030】銅メッキ被膜:0.5乃至3.0重量%、
潤滑油全体に対する合成油の混合率:30乃至70体積
ワイヤ表面に施される銅メッキ被膜がワイヤ全重量に対
して0.5重量%未満であると、ワイヤと溶接チップと
の通電性が悪化し、溶接作業性の点において好ましくな
い。一方、銅メッキ被膜が3.0重量%を超えると、溶
接金属に高温割れが発生しやすくなる。従って、ワイヤ
全重量に対する銅メッキ被膜は0.5乃至3.0重量%
であることが好ましい。
【0031】合成油と鉱物油との混合比は、溶接時にお
けるワイヤ送給性及びカリウム化合物の分散性と相関性
が高い。潤滑油全体に対する合成油の混合率が30体積
%未満であると、送給性が低下して、過酷な送給系にお
いてはアーク安定性を向上させることができない。一
方、合成油の混合率が70体積%を超えると、カリウム
化合物の分散性が低下するため、同様に、優れたアーク
安定性を得ることができない。従って、潤滑油全体に対
する合成油の混合率は30乃至70体積%であることが
好ましい。
【0032】ワイヤ重量の10kg当たりの潤滑油付着
量:0.5乃至2.0g 潤滑油の付着量がワイヤ10kg当たりに0.5g未満
であると、潤滑油の絶対量が不足して、優れた潤滑性を
得ることができなくなるので、溶接アークが途絶える可
能性がある。一方、潤滑油の付着量がワイヤ10kg当
たりに2.0gを超えると、送給ローラにより送給され
るワイヤが送給部においてスリップしやすくなると共
に、ワイヤと溶接チップとの通電性が悪化する。従っ
て、ワイヤ重量の10kg当たりの潤滑油付着量は0.
5乃至2.0gであることが好ましい。
【0033】
【実施例】以下、本発明に係るアーク溶接用ソリッドワ
イヤの実施例についてその比較例と比較して具体的に説
明する。
【0034】先ず、JIS Z 3312に規定された
YGW11又はYGW12の化学成分の範囲内である各
種の原線に伸線加工を施した後に、焼鈍した。次いで、
この線材を酸洗し、メッキ加工を施して再び伸線するこ
とによって、ワイヤ径が1.2mmである溶接用ソリッ
ドワイヤを作製した。また、酸洗及びメッキ加工を施さ
ないワイヤも作製した。YGW12に相当する原線を使
用して作製したソリッドワイヤの化学成分の例を下記表
1に示す。
【0035】次に、これらのソリッドワイヤについて、
以下の条件によって比表面積を算出した。
【0036】(1)サンプリング方法:スプールに巻か
れた製品ワイヤからできるだけ疵を付けないようにし
て、約20mmの部分を任意の3箇所から採取し、ワイ
ヤ表面を超音波洗浄することによって、表面に付着して
いる汚れ及び油脂分等の不純物を取り除いた。この超音
波洗浄には、金属表面を腐食させない石油エーテル、ア
セトン、四塩化炭素又はフロン等の有機溶媒を使用する
ことができる。また、加工工程中に使用する潤滑油の種
類に応じて、この油脂分等を取り除くために最も適当で
ある液(湯又はその他の脱脂液)を使用することもでき
る。この超音波洗浄は、ワイヤが互いに擦れ合って疵を
付けないように1本ずつ洗浄した。
【0037】(2)測定位置:1サンプルの任意の1断
面を120度ずらした3箇所で測定し、3サンプルの合
計9箇所の測定値の単純平均とした。
【0038】(3)測定倍率:ワイヤによらず一定と
し、150倍とした。測定装置としては、3次元粗さ解
析装置(例えば、エリオニクス社製ERA−8000)
がある。
【0039】このようにしてワイヤの比表面積を算出し
た後、このワイヤを使用して、2種類の送給系によって
軟鋼母材を溶接し、溶接時のアーク安定性について、半
自動溶接の官能評価によって評価した。
【0040】図1はアーク安定性を評価するために使用
した溶接装置の側面図である。図1(a)に示すよう
に、スプール支持台15はスプール13を支持してい
る。そして、スプール13に巻かれたワイヤは、コンジ
ットケーブル11内を通過して、下向きに溶接トーチ1
2に供給される。また、コンジットケーブル11は支持
点14において支持されている。本実施例及び比較例に
おいては、簡単な送給系の1例として、図1(a)に示
す溶接装置を使用したが、スプール13から支持点14
までの距離を2000mmとし、支持点14から溶接ト
ーチ12までの距離を1000mmとした。
【0041】また、過酷な送給系の1例として、図1
(b)に示す溶接装置を使用した。この溶接装置につい
ても、図1(a)に示すものと同様に、スプール支持台
10がスプール8を支持しており、スプール支持台10
のスプール8までの高さを900mmとした。このスプ
ール8に巻回されたワイヤはコンジットケーブル6内を
通過して、下向きに溶接トーチ7に供給される。このコ
ンジットケーブル6はその途中で一旦紐16によって吊
り上げられた後、スプール8と同程度の高さにおいて1
周巻回され、ループ9を形成している。但し、スプール
8からワイヤの最上点6aまでの距離を2250mm、
ワイヤの最上点6aからループ9までの距離を1500
mm、ループ9から溶接トーチ7までの距離を1060
mmとし、紐16によって吊り上げられたワイヤの最上
点6aの高さを1440mmとした。
【0042】また、溶接条件は、溶接電流;280A
(DCEP)、溶接電圧;32V、シールドガス;10
0%CO2、シールドガス流量;25リットル/分とした。
【0043】更に、各実施例及び比較例のワイヤを使用
して軟鋼母材を溶接することにより、スパッタ発生量に
ついても評価した。
【0044】図2はスパッタ発生量を評価する方法を示
す模式的断面図である。図2に示すように、先ず、一方
の側面が開放したスパッタ捕集箱26a及び26bをそ
の開放側面を対面させて支持台25に設置した。そし
て、両者の中央部の支持台25上に、溶接面に端面加工
が施されている軟鋼母材23を載置し、固定器24によ
って固定すると共に、両者間にトーチ21を下向きに配
置し、ワイヤ22によって母材23を溶接した。スパッ
タ発生量は、溶接部から発生するスパッタを捕集箱26
a及び26bに集め、1分間に発生したスパッタの発生
量を測定することによって評価した。
【0045】本実施例及び比較例においては、軟鋼母材
23の幅を25mm、捕集箱26a及び26bの幅を上
部の幅を95mm、下部の幅を60mm、高さを130
mmとし、開放している部分は捕集箱の上部から80m
mの範囲とした。
【0046】このときの溶接条件は、溶接電流;280
A、溶接電圧;32〜34V、溶接速度;30cm/
分、突出し長さ;20mm、溶接電源;サイリスタ制御
式とした。各ワイヤの特性を下記表2及び4に示し、ア
ーク安定性及びスパッタ発生量の評価結果を下記表3及
び5に示す。アーク安定性の欄において、送給系(a)
は図1(a)に示す溶接装置、送給系(b)は図1
(b)に示す溶接装置を使用したものである。また、こ
の評価欄においては、数値が大きいほどアーク安定性が
優れていることを表している。なお、下記表2及び3に
示すワイヤはメッキ加工を施したものであり、下記表4
及び5に示すワイヤはメッキ加工を施していないもので
ある。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】上記表2及び3に示すように、メッキワイ
ヤについて、実施例No.1〜5は本発明の請求項1に
規定される範囲内であり、比較例と比較して、送給系の
種類に拘わらず、アーク安定性が優れると共に、スパッ
タ発生量が減少した。特に、実施例No.1及び2は、
合成油の混合率についても請求項2に規定する範囲内で
あるので、過酷な送給系(b)を使用して溶接しても、
実施例No.3〜5と比較してアーク安定性が優れてい
た。また、実施例No.1と5とを比較すると、ワイヤ
の比表面積及び合成油の混合率は同一であるが、実施例
1はホウ酸カリウムを使用しており、カリウム化合物の
潤滑油への分散性が優れているので、カリウム付着量が
増加し、アーク安定性及びスパッタ発生量の評価が優れ
たものとなった。
【0053】一方、比較例No.6〜9は、カリウムの
付着量が本発明の範囲を外れているので、実施例No.
1〜4と比較してアーク安定性が低下すると共に、スパ
ッタ発生量が増加した。比較例No.10〜11は、ワ
イヤの比表面積及びカリウムの付着量が本発明の範囲を
外れているので、同様に、アーク安定性が低下すると共
に、スパッタ発生量が増加した。
【0054】また、比較例No.12〜17は、従来技
術によるワイヤを使用しており、粉末又は固体状のカリ
ウム化合物をワイヤ表面に付着させているものであるの
で、ア−ク安定性が低下した。
【0055】更に、上記表4及び5に示すように、メッ
キを施していないワイヤについても、実施例No.21
〜23はワイヤ比表面積及びカリウム付着量が本発明の
範囲内であるので、アーク安定性が優れており、スパッ
タ発生量も減少した。一方、比較例No.24は、実施
例No.21〜23と同様にメッキが施されていないも
のであるが、ワイヤ比表面積が本発明の範囲を外れてい
るので、アーク安定性が低下した。また、比較例No.
25及び26は、従来技術によるワイヤを使用してお
り、粉末又は固体状のカリウム化合物をワイヤ表面に付
着させているものであるので、ア−ク安定性及びスパッ
タ発生量の評価が劣ったものとなった。
【0056】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
鉱物油と合成油との混合潤滑油に無機カリウム化合物を
分散させたものを使用し、このカリウム化合物の付着量
を適正量に規制すると共に、ワイヤの比表面積の値を適
切に規定しているので、アーク安定性が向上されると共
に、スパッタの発生量が低減したアーク溶接用ソリッド
ワイヤを得ることができる。また、カリウム化合物にホ
ウ酸カリウムを使用し、ワイヤに付着させる潤滑油量及
び合成油の混合率を適切に選択すると、より一層優れた
アーク安定性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アーク安定性を評価するために使用した溶接装
置の側面図である。
【図2】スパッタ発生量を評価する方法を示す模式的断
面図である。
【図3】ワイヤ表面の微小領域における実表面を3次元
直交座標系により示す模式図である。
【図4】ワイヤ表面の比表面積の測定領域を示す模式図
である。
【図5】実表面積を算出するために測定領域を分割する
メッシュを示す模式図である。
【図6】メッシュの各交点における実表面の高さ位置を
3次元直交座標系により示し、実表面を三角形の連結で
近似する模式図である。
【図7】図6の三角形の面積を算出する方法を示す模式
図である。
【符号の説明】
1、22;ワイヤ 2;実表面 3;見かけ上の表面 6、11;コンジットケーブル 7、12、21;トーチ 8、13;スプール 9;ループ 10、15、25;支持台 14;支持点 23;母材 24;固定器 26a、26b;捕集箱 H11、H12、H13、H21、H22;高さ S11、S12;面積
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中野 利彦 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株式会社神戸製鋼所藤沢事業所内 (56)参考文献 特開 平7−299583(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B23K 35/36 B23K 35/02

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 測定対象領域におけるワイヤ実表面積を
    a 、測定対象領域における見かけ上の面積をSm とし
    たとき、数式((Sa /Sm )−1)によって表される
    ワイヤ比表面積が0.05以下であり、表面に鉱物油と
    合成油との混合潤滑油に無機カリウム化合物を分散させ
    たものを、前記無機カリウム化合物がカリウム換算値で
    ワイヤ全重量に対して1乃至8重量ppmとなるように
    付着されていることを特徴とするアーク溶接用ソリッド
    ワイヤ。
  2. 【請求項2】 測定対象領域におけるワイヤ実表面積を
    a 、測定対象領域における見かけ上の面積をSm とし
    たとき、数式((Sa /Sm )−1)によって表される
    ワイヤ比表面積が0.05以下であり、表面にワイヤ全
    重量に対して0.5乃至3.0重量%の銅メッキ被膜が
    形成されており、更に、鉱物油と合成油との混合潤滑油
    に無機カリウム化合物を分散させたものを、前記無機カ
    リウム化合物がカリウム換算値でワイヤ全重量に対して
    1乃至8重量ppmとなるように付着されていることを
    特徴とするアーク溶接用ソリッドワイヤ。
  3. 【請求項3】 前記潤滑油の全体積に対する前記合成油
    の混合率は30乃至70体積%であることを特徴とする
    請求項1又は2に記載のアーク溶接用ソリッドワイヤ。
  4. 【請求項4】 ワイヤ重量の10kg当たりの前記潤滑
    油の付着量は0.5乃至2.0gであることを特徴とす
    る請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアーク溶接用
    ソリッドワイヤ。
  5. 【請求項5】 前記無機カリウム化合物はホウ酸カリウ
    ムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1
    項に記載のアーク溶接用ソリッドワイヤ。
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