JP5061019B2 - アーク溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ロボットにより溶接トーチをウィービングさせながらレ形開先内を溶接するアーク溶接方法に関する。
一般的な6軸多関節アーク溶接ロボットは、アーム先端部に溶接トーチ(以下「トーチ」という)が取り付けられ、このトーチが任意の姿勢で空間座標の任意の位置に移動することができるように構成されている。そして、各種開先における突合せ溶接やすみ肉溶接を行う場合には、溶込み深さを確保すると共に融合不良等の溶接欠陥の発生を抑制するために、一般的に、トーチ内のコンタクトチップから突出させた溶接ワイヤを、溶接線に対して概ね垂直に揺動させるウィービング動作が実施される(例えば、特許文献1、2参照)。
また、実際の溶接工程においては、予め溶接ロボットに対して溶接線や開先に応じた溶接動作を教示していたとしても、溶接による熱歪みにより開先位置やその角度は相当に変位し、溶接線に対してトーチの位置ずれが生じてしまう。そこで、トーチをウィービングさせる際に、溶接中の溶接電流と電圧のいずれか一方または両方の変化をモニタリングすることにより、溶接線に対するトーチの位置ずれを修正するアーク倣い等の開先倣いが実施される。
図6(a),(b)に公知のウィービング方法をそれぞれ模式的に表した図を示す。図6(a)に示すウィービング方法は、第1母材(立板)91から一定距離離れた位置に第2母材(開先)92を配置し、これらの間のルートギャップに裏当て金93を配置してなるレ形開先内を、トーチ94に傾斜角をつけずに揺動させるウィービング方法を示している。図6(b)に示すウィービング方法は、同構造のレ形開先内をトーチ94に傾斜角をつけて揺動させるウィービング方法を示している。なお、図6(a),(b)に示す符号95は溶接ワイヤを示している。
また、6軸多関節アーク溶接ロボットにおいて、トーチの先端を溶接線に対して略垂直に、かつ、トーチ傾斜角とトーチ前進角を変化させながら揺動させるウィービング方法、すなわち、トーチを円弧運動させながらトーチを溶接線に沿って移動させるウィービングする方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。このようなトーチ傾斜角を変化させるウィービング方法では、一般的に、位置決め精度が低下しやすいという問題がある。特許文献3に開示された技術は、この問題を解決するものであり、トーチ先端位置の位置決め精度を向上させて、溶接線に沿った溶接が可能となっている旨記載されている。
特開平9−253853号公報 特許第3531811号公報 特開2005−21971号公報
しかしながら、従来のウィービング方法には、以下のような問題点が存在する。すなわち、図6(a)に示される、トーチ94に傾斜角をつけずにトーチ94をウィービングさせる方法を用いてレ形開先内の溶接を行う場合にルートギャップが狭いと、トーチ94が第1母材91に干渉しない範囲で十分なウィービング幅を確保することが困難であり、第1母材91側の溶込み深さが不足し、融合不良等の溶接欠陥が発生しやすくなる。
また、図6(b)に示される、トーチ94に傾斜角をつけてトーチ94をウィービングさせる方法を用いて、レ形開先内の溶接を行った場合には、ウィービングにより第2母材92側にアーク点が移動した際のトーチ進入角(開先斜面とトーチ94の軸方向〔溶接ワイヤ95の軸方向〕とがなす角度)が極めて小さくなる。そのため、第2母材92側の溶込み深さが不足しやすくなる。また、融合不良等の溶接欠陥が発生しやすくなる。
さらに、アークが開先斜面側へ偏向するために、溶接ワイヤ95先端の溶滴に働く反力方向がワイヤ送給方向から大きく外れ、離脱した溶滴がスパッタとなって第1母材91に多量に付着することになる。
さらに、ウィービングにおいてアーク倣いを実施する場合には、ウィービング幅とウィービング周波数が大きくなるため、スパッタの発生は顕著になる。こうして第1母材91に付着したスパッタは、溶接構造物の外観を損なう。また、溶接構造物の超音波探傷試験において、スパッタは探触子の障害となるため、スパッタを除去する必要が生じる。このようなスパッタの除去作業は、生産性を低下させる。
特許文献3には、トーチ先端の位置決め精度の向上について記載されているものの、ウィービング方法と溶込み深さ、融合不良等の溶接欠陥及びスパッタとの関係については記載されていない。そのため、単純に特許文献3に開示されたウィービング方法を用いれば、溶込み深さを確保し、融合不良等の溶接欠陥の発生を抑制し、スパッタを低減することができるわけではなく、開先形状に対してウィービング条件を適切に設定することによって初めて溶接品質の大きな向上が図られる。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、レ形開先内の溶接を行う際に、溶接欠陥の発生を抑制し、さらにスパッタの発生を大幅に低減させるアーク溶接方法を提供することを目的とする。
本発明に係るアーク溶接方法は、レ形開先内のウィービング中心位置に溶接トーチを所定の傾斜角で配置し、前記ウィービング中心位置を中心として前記溶接トーチを略円弧状に所定のウィービング振り角でウィービングさせながらアーク倣いを実施するアーク溶接方法であって、前記ウィービング中心位置における前記溶接トーチの傾斜角をθ(°)、前記ウィービング振り角をθ(°)、前記レ形開先の開先角度をθ(°)としたときに、(a)5°≦θ≦25°、(b)1°≦θ≦20°、(c)25°≦θ≦35°、(d)θ−5°≦θ/2≦θ+5°、(e)θ/2−θ3≧15°、(f)θ/2≧15°、の条件が満たされていることを特徴とする。
このような構成により、レ形開先を構成する母材の溶込み深さを確保し、融合不良等の溶接欠陥の発生が抑制された良好な溶接を行うことができる。また、溶接ワイヤ先端の溶滴に働く反力方向がワイヤ送給方向から大きく外れることがないためにスパッタの発生が低減される。発生したスパッタは、母材に付着しても、その殆どが溶接ビードに含まれることとなる。こうして、スパッタの除去に係る負荷が軽減され、またはスパッタの除去が実質的に不要になることで、生産性を高めることができ、しかも、溶接構造物の外観を損なうこともなくなる。さらに、スパッタの大幅な低減は、溶接ワイヤの利用率を高める利点もある。
本発明においては、溶接電流としてパルス電流を用いることが好ましい。すなわち、本発明に係るウィービング方法は、Arを主成分とする混合ガスを用いて1パルス1溶滴移行するパルスMAG溶接方法、及び、炭酸ガス(COガス)を主成分とし、1周期あたりにパルスピーク電流とパルス幅(期間)の異なる2種のパルス波形を交互に出力することにより1周期あたり1溶滴移行させるCOパルスアーク溶接方法に好適に用いられる。これによりスパッタの発生をさらに低減し、溶込み深さをより確実に確保し、融合不良等の溶接欠陥の発生を防止することができる。
本発明は、レ形開先内の溶接において、両母材における溶込み深さを確保し、融合不良等の溶接欠陥の発生を抑制すると共に、スパッタの発生を大幅に低減することができるという顕著な効果を奏する。また、本発明のウィービング方法とパルス電流を用いた溶接方法により、スパッタの発生をさらに低減することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<アーク溶接ロボットの概略構造>
図1に本発明に係るウィービング方法を実施するために用いられる6軸多関節型アーク溶接ロボットの一例に係る概略構造を示す。このアーク溶接ロボットは、床面に固設されたベース11と、ベース11に設けられたアーム10とを備えている。アーム10は、基台12と第1アーム13と第2アーム14と手首部材15とを有している。基台12は、旋回軸J1として機能するようにベース11上に旋回可能に設けられている。基台12の上面には、第1アーム13が縦設されており、第1アーム13は、前後揺動軸J2として機能するように揺動可能となっている。
第1アーム13は、主アーム13a及び副アーム13bからなる。主アーム13a及び副アーム3bは、上下揺動軸J3として機能するように、自由端側において第2アーム14をそれぞれ回動自在に軸支している。第2アーム14は、アーム回転軸J4として機能するように回転可能であり、その自由端側に手首部材15が設けられている。手首部材15は、手首揺動軸J5及び手首回転軸J6として機能するように揺動可能及び回転可能となっている。このように構成されたアーム10は、各軸J1〜J6により複数の自由度を備えることによって、3次元からなる空間座標(X,Y,Z)の任意の位置にアーム先端部10aを移動させることができる。
アーム先端部10aには、トーチブラケット18を介して溶接トーチ17(以下「トーチ17」と記す)が設けられている。トーチブラケット18は、手首回転軸J6の軸線から外れた位置でトーチ17を支持している。トーチ17は、先端面から後端面にかけて連通されており、後端面に供給された溶接ワイヤ16(以下「ワイヤ16」と記す)をトーチ17内に挿通させて先端面から送り出す、消耗電極式の構造となっている。トーチ17の軸心方向とワイヤ16の長さ方向とは実質的に平行となっている。ワイヤ16の送り出し方向は、手首回転軸J6の軸線に対して一定角度で交差するように設定されている。
このように構成されたアーク溶接ロボットを用いて、以下に説明するレ形開先内の溶接を行う。その条件について詳細に説明する。
<レ形開先の構成とトーチの設定>
図2にレ形開先の構造及びトーチの設定条件を模式的に表した図を示す。レ形開先20として、鉛直壁を備えた第1母材21と、開先加工された第2母材22と、裏当て金23から構成されたものを例示している。第1母材21の鉛直壁と第2母材22の開先斜面とのなす角度をθ(以下「開先角度θ」という)とする。
レ形開先20内の溶接は、トーチ17の先端を溶接線に沿って移動させると共に、トーチ17の先端を溶接線に対して左右に揺動させ、かつ、トーチ17のトーチ傾斜角とトーチ前進角を変化させながらウィービング動作させる(以下「振り子ウィービング」という)ことにより行い、このときに、基本三軸(旋回軸J1、前後揺動軸J2、上下揺動軸J3)の動きを減少させるように、トーチ17のトーチ回転角を変化させる。
このような振り子ウィービングを実施するために、トーチ17は、まず図2中の実線で示されるように、振り子ウィービングの中心位置(以下「ウィービング中心位置」という)に所定の角度θ(以下「トーチ傾斜角θ」という)で配置される。そして、このウィービング中心位置を中心としてトーチ17を所定の角度θ(以下「ウィービング振り角θ」という)で振り子ウィービングさせて、アーク溶接を行う。ウィービング振り角θでのトーチ17のウィービングは、例えば、主に手首揺動軸J5の回転動作により行うことができる。また、ウィービング両端での傾斜角(図2に示すトーチ17の点線位置での傾斜角であり、後述する「開先側トーチ進入角α」と「立板側トーチ進入角β」に相当する)やウィービング振り角θを指定し、トーチ17の移動は直線補間で行ってもよい。
図2に示されるように、振り子ウィービングを行った際に、第2母材22側ウィービング端においてトーチ17の軸心方向と第2母材22の開先加工面とがなす角度α(以下「開先側トーチ進入角α」という)は、[θ/2−θ3]で表される。また、第1母材21側ウィービング端においてトーチ17の軸心方向と第1母材21の鉛直面とがなす角度β(以下「立板側トーチ進入角β」という)は、[θ/2]で表される。
振り子ウィービングを用いたレ形開先20内のアーク溶接では、
(a)5°≦θ≦25°、
(b)1°≦θ≦20°、
(c)25°≦θ≦35°、
(d)θ−5°≦θ/2≦θ+5°、
(e)α=θ/2−θ3≧15°、
(f)β=θ/2≧15°、
の条件が満たされた状態で行われる。これらの全ての条件が満たされた振り子ウィービングを用いたレ形開先20内のアーク溶接により、スパッタの発生を低減し、かつ、溶込み深さを確保し、融合不良等の溶接欠陥(以下単に「溶接欠陥」という)の発生を抑制した溶接を行うことができる。以下、上記(a)〜(f)の各条件について説明する。
[(a)5°≦θ≦25°]
トーチ傾斜角θが5°未満の場合には、ワイヤ16の先端が第1母材21と裏当て金23との接合部への接近が困難になるため、第1母材21側で溶込み深さが不足しやすく、溶接欠陥が発生しやすくなる。また、前提条件として開先角度θを条件(c)の通りに設定するため、トーチ傾斜角θが25°を超える場合には、開先角度θとの差が小さくなった状態でワイヤ16が開先斜面に接近することとなる。このとき、アークが開先側へ偏向して、ワイヤ16先端の溶滴に働く反力方向がワイヤ送給方向から大きく外れ、溶滴がスパッタとなって第1母材21に付着するため(この現象については、後に条件(e)について説明する際に、図3を参照しながら詳細に説明する)、溶接後にこれを除去する作業が必要となる。さらに、第2母材22側で溶込み深さが不足しやすく、溶接欠陥が発生しやすくなる。よって、トーチ傾斜角θを5〜25°の範囲(5°≦θ≦25°)とする。
[(b)1°≦θ≦20°]
ウィービング振り角θが1°未満の場合とは、実質的にウィービングが行われていない状態であり、このような条件では、後述する実施例に示すように、スパッタの発生量が多くなり、溶接欠陥も発生しやすくなる。そこで、ウィービング振り角θを1°以上とする。また、前提条件として、開先角度θを条件(c)の通りに設定し、トーチ傾斜角θを5〜25°とするため、ウィービング振り角θの上限を、現実的に振り子ウィービングを行うことができる20°に設定する。
[(c)25°≦θ≦35°]
開先角度θは、実際に溶接される母材の構造、溶接構造物に求められる強度等を考慮して適宜定められるが、振り子ウィービングの条件は、開先角度θに応じて変わることが予想されるため、本発明では、前提条件として、開先角度θを25〜35°(25°≦θ≦35°)に設定する。
[(d)θ−5°≦θ/2≦θ+5°]
トーチ17が第1母材21及び第2母材22に干渉しない範囲で十分なウィービング幅ΔW(図2参照)を確保するために、条件(d)が満たされるように、トーチ傾斜角θ1を開先角θ3に応じて設定することが必要であり、その条件が[θ−5°≦θ/2≦θ+5°]となることが、本発明により見いだされた。但し、振り子ウィービングでは、条件(d)のみが満たされても、第1母材21側で溶込み深さが不足しやすく、溶接欠陥を発生させると共に、第2母材22側で多量のスパッタを発生させ、このスパッタが第1母材21に付着してしまう。このような問題を回避するために、条件(e),(f)が必要とされる。
[(e)α=θ/2−θ3≧15°]
条件(e)は開先側トーチ進入角αについて規定したものであり、この条件(e)が満たされることにより、スパッタの発生が低減され、かつ、第2母材22側で溶込み深さが確保され、溶接欠陥の発生が抑制されることが、鋭意研究の結果、見いだされた。スパッタの発生をより効果的に低減するためには、α≧20°とすることが好ましい。この理由について図3を参照して説明する。図3に開先側トーチ進入角とスパッタの飛散方向との関係を模式的に表した図を示す。ここで、図3(a)は本発明例の場合を示しており、図3(b)は開先側トーチ進入角が小さい(条件(e)を満たさない)参考例の場合を示している。
図3(b)に示されるように、開先側トーチ進入角αが小さくなると、ワイヤ16の先端の溶滴に働く反力方向がワイヤ送給方向から大きく外れ、ワイヤ16から離脱した溶滴がスパッタ26となって、開先斜面と直交する方向に飛散し、第1母材21に付着する。そのため、スパッタ26の付着する位置は、最終溶接表面よりも上側となることが多く、第1母材21に付着したスパッタ26により、溶接構造物の外観が損なわれる。また、溶接構造物の超音波探傷試験において、スパッタ26は探触子の障害となるため、スパッタ26を除去する必要が生じる。このようなスパッタ26の除去作業は、生産性を低下させる。さらに、第2母材22側において溶込み深さが不足しやすく、溶接欠陥が発生する可能性が高くなる。
これに対して、図3(a)に示されるように、開先側トーチ進入角αに一定の大きさが確保されることにより、ワイヤ16の先端の溶滴に働く反力方向がワイヤ送給方向から大きく外れることがなくなるため、ワイヤ16から離脱した溶滴は、スパッタ26となって飛散して第1母材21に付着しても、多くの場合、その付着位置が最終溶接表面よりも下側となる。そのため、第1母材21に付着したスパッタ26は、溶接構造物の外観を損なうこともないし、スパッタ26を除去する作業が軽減され、或いは作業の必要がなくなる。また、開先側トーチ進入角αに一定の大きさが確保されることにより、第2母材22側での溶接欠陥の発生を防止することができる。
[(f)β=θ/2≧15°]
条件(f)は立板側トーチ進入角βについて、前記条件(e)と同等に規定したものである。したがって、条件(f)が満たされることにより、スパッタの発生が低減されると共に第1母材21側での溶込み深さが確保され、溶接欠陥の発生が抑制される。スパッタの発生をより効果的に低減するためには、β≧20°とすることが好ましい。
<溶接電流のパルス化>
振り子ウィービングは、パルスMAG溶接方法及びCOパルスアーク溶接方法に好適に用いられ、これにより、スパッタの発生をさらに低減し、溶込み深さをより確実に確保して、溶接欠陥の発生をさらに抑制することができる。その理由について、以下に説明する。
Arガスに5〜30%のCOガスを混合してなる混合ガスをシールドガスとして用いるMAG溶接方法において、溶接電流を200〜350Hz程度のパルス電流として出力することにより1パルス1溶滴移行としたパルスMAG溶接方法は、低スパッタ溶接方法として広まってきている。また、COガスを主成分とするシールドガスを用いるCOアーク溶接方法において、1周期あたりにパルスピーク電流とパルス幅(期間)の異なる2種のパルス波形を交互に出力するCOパルスアーク溶接方法では、1周期あたり1溶滴を移行させる極めて規則正しい溶滴移行が実現されるため、スパッタ発生量を低減させることができる。
しかしながら、図6(a)に示したようにトーチ94に傾斜角を付けずに、或いは図6(b)に示したようにトーチ94に傾斜角を付けてレ形開先内を溶接線に対して垂直方向に揺動させる従来のウィービング方法を、パルスMAG溶接方法やCOパルスアーク溶接方法に適用しても、パルスピーク期間中のアーク反力が強力であるため、開先側ウィービング端においては、離脱した溶滴がスパッタとなる場合があり、パルスMAG溶接方法とCOパルスアーク溶接方法の利点であるスパッタ低減の効果が小さくなってしまう。
これに対して、パルスMAG溶接方法やCOパルスアーク溶接方法に本発明に係る振り子ウィービングを用いたアーク溶接方法を適用してレ形開先20内の溶接を行った場合には、開先側ウィービング端においても離脱した溶滴がスパッタとなり難く、スパッタ発生量が極めて少ない溶接を行うことが可能となる。さらに、振り子ウィービングを行うこととパルスアークによる強力なアーク圧力が相乗し、第1母材21及び第2母材22の溶込み深さを増大させると共に、第1母材21及び第2母材22に対するアーク圧力の直接作用により、溶接欠陥の発生を防止することができる。
<アーク倣い>
本発明においては、振り子ウィービングを実施しながら、開先倣いとしてのアーク倣いが実行される。一般的には、振り子ウィービングを用いると、従来方法に比して、溶接電流の変化が小さくなり、倣い難くなる。しかし、前記した条件(d)〜(f)を規定することにより、ウィービングによる電流の変化が現れる。そのため、本発明に係る振り子ウィービングを用いれば、アーク倣いの精度も確保される。
なお、X形、I形、U形、K形、V形、J形開先等の各開先内を溶接するに際しても、本発明の思想を用いることにより、容易に、溶接欠陥の発生を抑制し、さらにスパッタの発生を低減させることができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
図1に示した構造のアーク溶接ロボットを用い、100%COガスをシールドガスとして用いたアーク溶接を行った。以下に溶接試験の共通条件を示す。また、表1,2には、試料ごとに設定された試験条件を示す。さらに、図4(a)にアーク溶接に用いた母材の構造とスパッタの捕集ツールの外観を表した斜視図を示し、図4(b)に図4(a)に示すA−A断面図を示す。また、図5にパルス溶接で用いたパルスパターンを示す。
[溶接試験の共通条件]
溶接ワイヤ : JIS Z3312 YGW11 φ1.2mm
シールドガス : 100%炭酸ガス(CO
母材材質 : SM490A
コンタクトチップ
−母材間距離 : 25mm
溶接速度 : 40cm/min
溶接ワイヤ送給速度 : 13.0〜18.0m/min
平均ルートギャップ : 3〜16mm
開先倣い方法 : アーク倣い(電流制御)
図4(a),(b)に示される第1母材21は、図2に示したものと同じである。第1母材21は、厚さ:32mm、幅(図4(b)では高さ):200mm、長さ:500mmである。第2母材22aは、開先加工前には第1母材21と同じ形状であったものを、平均ルートギャップが3〜16mmの範囲の所定値に設定され、かつ、表1,2に示される開先角度θとなるように開先加工したものである。
なお、ルートギャップが長さ方向において7mmとなるように開先加工された第2母材22aを用いた場合の実際の溶接試験においては、ルートギャップには5mm〜9mm程度の幅でばらつきが生じる。但し、その平均は、大凡7mmとなる。こうしてルートギャップが変化しても、アーク倣いを実施しているために、ウィービング幅ΔWは、ルートギャップに応じて適正なウィービング幅ΔWに修正されながら、溶接が進められる。また、ルートギャップとルートギャップに応じてウィービング幅ΔWが変化しても、振り子ウィービング端におけるトーチ傾斜角θを固定しているため、ウィービング振り角θは変化しない。したがって、開先側トーチ進入角αと立板側トーチ進入角βの値も変化しない(適宜、図2参照)。
図5に示すパルスパターンについて、Tp1は第1パルスのピーク期間を、Tb1は第1パルスのベース期間を、Tp2は第2パルスのピーク期間を、Tb2は第2パルスのベース期間を、Ip1は第1パルスのピーク電流を、Ib1は第1パルスのベース電流を、Ip2は第2パルスのピーク電流を、Ib2は第2パルスのベース電流を、それぞれ表しており、ここでは、Tp1=2.0msec、Tb1=2.0msec、Tp2=3.5msec、Ip1=500A、Ib1=150A、Ip2=400A、Ib2=150Aとし、基本的に、1周期1溶滴移行によるパルス溶接を実行しながら、Tb2を変化させることにより、溶接ワイヤの溶融バランスを維持している。
試験条件について、表1,2に示す「f」はウィービングの周波数である。また、表1,2に示すウィービング幅ΔWは、初期設定値である。通常、レ形開先内の溶接では多層盛り溶接が行われるため、本試験においても、このような多層盛り溶接を想定した試験を行っている。すなわち、実施例及び比較例において、ウィービング幅ΔWの設定値2〜6mm、6〜9mm、9〜12mm、12〜16mmはそれぞれ、初層溶接、2層目溶接、3層目溶接、4層目溶接をそれぞれ想定している。なお、例えば、表1の試料4におけるΔW:6〜16は、2層目から4層目まで角度に関する条件を同一とした場合を想定している。
溶接試験は、第1母材21と第2母材22aの側面に銅製の捕集箱31を配置した状態で行い、このとき発生するスパッタを捕集箱31で捕集し、その重量を測定することにより、スパッタ発生量を求めた。また、超音波探傷装置を用いて、溶接欠陥の有無を検査した。
Figure 0005061019
Figure 0005061019
表1,2に試験結果を併記する。スパッタ発生量については、連続電流で行った場合(表1,2の「パルス無し」の欄)には、その発生量が3g/min以上であったものを不合格として「×」で、3g/min未満であったものを合格として「○」でそれぞれ示している。パルス電流による溶接を行った場合(表1,2の「パルス有り」の欄)には、その発生量が1g/min以上であったものを不合格として「×」で、1g/min未満であったものを合格として「○」でそれぞれ示している。溶接欠陥の有無は、超音波探傷装置を用いた斜角探傷法により検査し、欠陥エコーが現れなかったものを合格として「○」で、欠陥エコーが現れたものを不合格として「×」でそれぞれ示している。
表1に示す番号1〜29の試験条件は、前記した条件(a)〜(f)が満たされた本発明に係るアーク溶接方法によるものであり、パルス無しのアーク溶接であっても十分にスパッタ発生量が小さく、パルス電流を用いることによりスパッタ発生量をさらに低減することができることが確認された。また、溶接欠陥の発生も確認されなかった。また、アーク倣いも問題なく実施されている。
これに対して、番号30〜47は、ウィービング振り角θが0°の場合であり、前記した条件(b)を満たしていない。そのため、評価項目であるスパッタと溶接欠陥の少なくとも一方が不合格になっているという結果が得られた。なお、パルス電流による溶接を行うことにより、例えば、試料31のように溶接欠陥が改善されるものも現れたが、スパッタの発生の改善効果は現れていない。また、開先側トーチ進入角αが大きいものほど、スパッタの発生が改善される傾向にあることが窺える。
番号48,49,52,53,54,55,58,59では、第1母材21側に配置された捕集箱31でのスパッタ捕集量が多くなった。この結果は、これらの番号の溶接条件では、開先側トーチ進入角αが小さいために、開先側でのスパッタ発生量が極めて多くなったことを示していると考えられる。これらのうち番号49,52,53,55,58,59では、特に開先側トーチ進入角αが小さいため、開先側で溶接欠陥が発生した。一方、番号50,51,54,56,57では、第1母材21側で溶接欠陥が発生した。これは、立板側トーチ進入角βが小さいためと考えられる。このような溶接欠陥の発生は、トーチ進入角の大きさのみに起因するとは考え難く、アーク倣いの精度が得られておらず、その影響が加味された結果と考えられる。なお、これらの試料でも、パルス電流を用いることで、溶接欠陥を改善することができる傾向が現れている。
アーク溶接ロボットの概略構造図である。 レ形開先の構造及びトーチの設定条件を模式的に示す図である。 開先側トーチ進入角とスパッタの飛散方向との関係を模式的に示す図であり、(a)は本発明例、(b)は参考例である。 試験方法を模式的示す図であり、(a)は概略斜視図であり、(b)は概略断面図である。 パルス溶接に用いたパルスパターンを示す図である。 (a),(b)はそれぞれ、公知のウィービング方法を模式的に示す図である。
符号の説明
θ トーチ傾斜角
θ ウィービング振り角
θ 開先角度
α 開先側トーチ進入角
β 立板側トーチ進入角
10 アーム
10a アーム先端部
16 溶接ワイヤ(ワイヤ)
17 溶接トーチ(トーチ)
18 トーチブラケット
20 レ形開先
21 第1母材
22,22a 第2母材
23 裏当て金

Claims (2)

  1. レ形開先内のウィービング中心位置に溶接トーチを所定の傾斜角で配置し、前記ウィービング中心位置を中心として前記溶接トーチを略円弧状に所定のウィービング振り角でウィービングさせながらアーク倣いを実施するアーク溶接方法であって、
    前記ウィービング中心位置における前記溶接トーチの傾斜角をθ(°)、前記ウィービング振り角をθ(°)、前記レ形開先の開先角度をθ(°)としたときに、
    (a)5°≦θ≦25°、
    (b)1°≦θ≦20°、
    (c)25°≦θ≦35°、
    (d)θ−5°≦θ/2≦θ+5°、
    (e)θ/2−θ3≧15°、
    (f)θ/2≧15°、
    の条件が満たされていることを特徴とするアーク溶接方法。
  2. 溶接電流としてパルス電流を用いることを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接方法。
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