JP5061019B2 - アーク溶接方法 - Google Patents
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Description
<アーク溶接ロボットの概略構造>
図1に本発明に係るウィービング方法を実施するために用いられる6軸多関節型アーク溶接ロボットの一例に係る概略構造を示す。このアーク溶接ロボットは、床面に固設されたベース11と、ベース11に設けられたアーム10とを備えている。アーム10は、基台12と第1アーム13と第2アーム14と手首部材15とを有している。基台12は、旋回軸J1として機能するようにベース11上に旋回可能に設けられている。基台12の上面には、第1アーム13が縦設されており、第1アーム13は、前後揺動軸J2として機能するように揺動可能となっている。
このように構成されたアーク溶接ロボットを用いて、以下に説明するレ形開先内の溶接を行う。その条件について詳細に説明する。
図2にレ形開先の構造及びトーチの設定条件を模式的に表した図を示す。レ形開先20として、鉛直壁を備えた第1母材21と、開先加工された第2母材22と、裏当て金23から構成されたものを例示している。第1母材21の鉛直壁と第2母材22の開先斜面とのなす角度をθ3(以下「開先角度θ3」という)とする。
(a)5°≦θ1≦25°、
(b)1°≦θ2≦20°、
(c)25°≦θ3≦35°、
(d)θ1−5°≦θ3/2≦θ1+5°、
(e)α=θ2/2−θ1+θ3≧15°、
(f)β=θ1+θ2/2≧15°、
の条件が満たされた状態で行われる。これらの全ての条件が満たされた振り子ウィービングを用いたレ形開先20内のアーク溶接により、スパッタの発生を低減し、かつ、溶込み深さを確保し、融合不良等の溶接欠陥(以下単に「溶接欠陥」という)の発生を抑制した溶接を行うことができる。以下、上記(a)〜(f)の各条件について説明する。
トーチ傾斜角θ1が5°未満の場合には、ワイヤ16の先端が第1母材21と裏当て金23との接合部への接近が困難になるため、第1母材21側で溶込み深さが不足しやすく、溶接欠陥が発生しやすくなる。また、前提条件として開先角度θ3を条件(c)の通りに設定するため、トーチ傾斜角θ1が25°を超える場合には、開先角度θ3との差が小さくなった状態でワイヤ16が開先斜面に接近することとなる。このとき、アークが開先側へ偏向して、ワイヤ16先端の溶滴に働く反力方向がワイヤ送給方向から大きく外れ、溶滴がスパッタとなって第1母材21に付着するため(この現象については、後に条件(e)について説明する際に、図3を参照しながら詳細に説明する)、溶接後にこれを除去する作業が必要となる。さらに、第2母材22側で溶込み深さが不足しやすく、溶接欠陥が発生しやすくなる。よって、トーチ傾斜角θ1を5〜25°の範囲(5°≦θ1≦25°)とする。
ウィービング振り角θ2が1°未満の場合とは、実質的にウィービングが行われていない状態であり、このような条件では、後述する実施例に示すように、スパッタの発生量が多くなり、溶接欠陥も発生しやすくなる。そこで、ウィービング振り角θ2を1°以上とする。また、前提条件として、開先角度θ3を条件(c)の通りに設定し、トーチ傾斜角θ1を5〜25°とするため、ウィービング振り角θ2の上限を、現実的に振り子ウィービングを行うことができる20°に設定する。
開先角度θ3は、実際に溶接される母材の構造、溶接構造物に求められる強度等を考慮して適宜定められるが、振り子ウィービングの条件は、開先角度θ3に応じて変わることが予想されるため、本発明では、前提条件として、開先角度θ3を25〜35°(25°≦θ3≦35°)に設定する。
トーチ17が第1母材21及び第2母材22に干渉しない範囲で十分なウィービング幅ΔW(図2参照)を確保するために、条件(d)が満たされるように、トーチ傾斜角θ1を開先角θ3に応じて設定することが必要であり、その条件が[θ1−5°≦θ3/2≦θ1+5°]となることが、本発明により見いだされた。但し、振り子ウィービングでは、条件(d)のみが満たされても、第1母材21側で溶込み深さが不足しやすく、溶接欠陥を発生させると共に、第2母材22側で多量のスパッタを発生させ、このスパッタが第1母材21に付着してしまう。このような問題を回避するために、条件(e),(f)が必要とされる。
条件(e)は開先側トーチ進入角αについて規定したものであり、この条件(e)が満たされることにより、スパッタの発生が低減され、かつ、第2母材22側で溶込み深さが確保され、溶接欠陥の発生が抑制されることが、鋭意研究の結果、見いだされた。スパッタの発生をより効果的に低減するためには、α≧20°とすることが好ましい。この理由について図3を参照して説明する。図3に開先側トーチ進入角とスパッタの飛散方向との関係を模式的に表した図を示す。ここで、図3(a)は本発明例の場合を示しており、図3(b)は開先側トーチ進入角が小さい(条件(e)を満たさない)参考例の場合を示している。
条件(f)は立板側トーチ進入角βについて、前記条件(e)と同等に規定したものである。したがって、条件(f)が満たされることにより、スパッタの発生が低減されると共に第1母材21側での溶込み深さが確保され、溶接欠陥の発生が抑制される。スパッタの発生をより効果的に低減するためには、β≧20°とすることが好ましい。
振り子ウィービングは、パルスMAG溶接方法及びCO2パルスアーク溶接方法に好適に用いられ、これにより、スパッタの発生をさらに低減し、溶込み深さをより確実に確保して、溶接欠陥の発生をさらに抑制することができる。その理由について、以下に説明する。
本発明においては、振り子ウィービングを実施しながら、開先倣いとしてのアーク倣いが実行される。一般的には、振り子ウィービングを用いると、従来方法に比して、溶接電流の変化が小さくなり、倣い難くなる。しかし、前記した条件(d)〜(f)を規定することにより、ウィービングによる電流の変化が現れる。そのため、本発明に係る振り子ウィービングを用いれば、アーク倣いの精度も確保される。
図1に示した構造のアーク溶接ロボットを用い、100%CO2ガスをシールドガスとして用いたアーク溶接を行った。以下に溶接試験の共通条件を示す。また、表1,2には、試料ごとに設定された試験条件を示す。さらに、図4(a)にアーク溶接に用いた母材の構造とスパッタの捕集ツールの外観を表した斜視図を示し、図4(b)に図4(a)に示すA−A断面図を示す。また、図5にパルス溶接で用いたパルスパターンを示す。
溶接ワイヤ : JIS Z3312 YGW11 φ1.2mm
シールドガス : 100%炭酸ガス(CO2)
母材材質 : SM490A
コンタクトチップ
−母材間距離 : 25mm
溶接速度 : 40cm/min
溶接ワイヤ送給速度 : 13.0〜18.0m/min
平均ルートギャップ : 3〜16mm
開先倣い方法 : アーク倣い(電流制御)
θ2 ウィービング振り角
θ3 開先角度
α 開先側トーチ進入角
β 立板側トーチ進入角
10 アーム
10a アーム先端部
16 溶接ワイヤ(ワイヤ)
17 溶接トーチ(トーチ)
18 トーチブラケット
20 レ形開先
21 第1母材
22,22a 第2母材
23 裏当て金
Claims (2)
- レ形開先内のウィービング中心位置に溶接トーチを所定の傾斜角で配置し、前記ウィービング中心位置を中心として前記溶接トーチを略円弧状に所定のウィービング振り角でウィービングさせながらアーク倣いを実施するアーク溶接方法であって、
前記ウィービング中心位置における前記溶接トーチの傾斜角をθ1(°)、前記ウィービング振り角をθ2(°)、前記レ形開先の開先角度をθ3(°)としたときに、
(a)5°≦θ1≦25°、
(b)1°≦θ2≦20°、
(c)25°≦θ3≦35°、
(d)θ1−5°≦θ3/2≦θ1+5°、
(e)θ2/2−θ1+θ3≧15°、
(f)θ1+θ2/2≧15°、
の条件が満たされていることを特徴とするアーク溶接方法。 - 溶接電流としてパルス電流を用いることを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接方法。
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