JP2833279B2 - 鋼管の溶接方法 - Google Patents

鋼管の溶接方法

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保彦 田中
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に大径溶接鋼管の製
造方法に係り、UOEプロセス等により鋼管に成形した
後のシーム溶接を効率的に溶接を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】大径鋼管の製造方法には、その形成方法
によりUOE方式、コンチニュアスフォーミング方式、
またはベンディング方式に分類される。いずれの成形方
式を採用したとしても、成形後の鋼管は、一般的にはそ
れぞれ独立の溶接ステージで、仮付溶接→内面溶接→外
面溶接の順で行われている。なお、前記鋼管の内外面の
本溶接は、一般的には高能率、高速化を図るために2本
以上の電極を使用する多電極サブマージドアーク溶接
(SAW)が採用されている。
【0003】近年、鋼管のシーム溶接法においては、高
能率、高品質、高速化のために種々の溶接方法が提案さ
れている。たとえば、特公昭63−17554号公報に
おいては、U→O成形後に、内面側開先を外側開先より
も小断面積の非対称形状とし、内面側はサブマージドア
ーク溶接を行い、外面側は第1層は所定電流のMIG溶
接を行った後、第2層をサブマージドアーク溶接する方
法の開示がある。
【0004】また、特開昭61−253174号公報に
おいては、仮付溶接を省略し、初段管外面からの本溶接
を溶加材の不要なプラズマアーク溶接で行うとともに、
20〜150mm下流側にて、管内面に生じた裏波ビード
を平滑化するために内面側からTIG溶接を行い、最後
に同一パス中に管外面に充分な肉盛を行うためにTI
G、MIGまたはサブマージアークを行うことで、溶接
パス数の低減および溶接ワイヤの節減を図った溶接方法
の開示がある。
【0005】さらに、特公平2−52586号公報にお
いては、ステンレス鋼、ニッケル基合金鋼、非鉄金属な
どのソリッドおよびクラッド鋼管をUOE鋼管として製
造するに当り、U成形後O成形した素管を、内面側から
TIG溶接するとともに、同時に外面側からプラズマ溶
接し、さらに外面側から前記プラズマ溶接上にTIGま
たはMIG溶接を行うことで、効率的な溶接を行うとと
もに、溶接割れ、スラグ巻き込み等の溶接欠陥を無くし
た溶接方法の開示がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭
63−17554号公報における溶接方法は、基本的に
従来と同様に仮付溶接(外面側から)→内面溶接→外面
溶接の工程を経なければならず、各溶接ステージ毎の段
取り・盛り換え作業を必要とするため作業が能率的でな
いなどの問題を要する。また、前記特開昭61−253
174号公報および特公平2−52586号公報におけ
る溶接方法においては、溶接材のコスト低減は図れる
が、溶接パス中にプラズマ溶接を挿入する溶接法である
ため、このプラズマ溶接により全体の溶接速度が律速さ
れ、溶接速度は最高で50cm/min 程度となるため、同
時溶接による溶接パス数の低減は実現できるものの結果
的には、それほどの高能率化は望めない。
【0007】そこで、本発明の主たる課題は、従来から
の溶接順序を見直しを行い、溶接パス数の低減を図ると
ともに、同時に溶接入熱量および開先深さの制御を行っ
た鋼管の溶接方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題は、板状鋼板を
プレス加工により円筒形に成形した後、管長手方向の継
目に沿って管内外面の溶接を行うに当り、ガスシールド
アーク溶接による仮付溶接とサブマージドアーク溶接に
よる外面側溶接とを同一溶接パスにて行い、次いで内面
側のサブマージドアーク溶接を行うとともに、前記外面
側のサブマージドアーク溶接に際し、溶接入熱量および
内面側開先深さを、必要溶け込み量を確保しかつ溶け落
ちが生じない条件とすることで解決できる。
【0009】
【作用】従来のサブマージドアーク溶接方法において
は、基本的に最初に内面側溶接を行い下側(管内面側)
に内面ビードを形成した後、外面側溶接を行うことで、
外面側溶接の際の溶け落ちを防止していた。一方、前記
特開昭61−253174号公報のように仮付溶接を省
略した溶接法の場合には、やはり外面側溶接の時点で溶
接される鋼板両エッジの突き合わせ状態を安定させるこ
とが難しく、溶接中に生じたズレにより、オフセット、
ビード割れなどの溶接欠陥を発生させる場合があるた
め、仮付溶接パスを省略することは得策でない。そこ
で、本発明においては、先ず溶接パス数を少なくするた
めに、従来、仮付溶接→内面側溶接→外面側溶接の順序
で行っていた溶接を、仮付溶接・外面側溶接(同一パ
ス)→内面側溶接の順序で行う。したがって、溶接パス
数の削減により生産効率が格段に高まる。 一方、内面側
溶接に先立って外面側溶接を行う場合には、外面側溶接
の際に内面ビードが形成されていないために溶け落ちが
生じ易い。しかし、各板厚に応じて溶接入熱量と開先深
さとの関係を図1に示される範囲に制御することで、必
要溶け込み量を確保するとともに、溶け落ちを防止する
ことができることを知見し 、本発明の完成に到ったもの
である。
【0010】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づき詳説する。図
2において、円筒状鋼管1は、UOプレス方式によって
円筒状に製管された鋼管である。UOプレスにおいて
は、エッジプレーナにより所定板幅に切削するととも
に、精度良く開先加工を行った後、クリピングプレスに
より板端部のみの曲げ加工を行う。次いでUプレスによ
りU字状に成形した後、O字状に成形して所定形状の円
筒管を得る。前記円筒状鋼管1は、成形後洗浄および乾
燥工程を経た後、図示される溶接工程に入る。ガイドロ
ール4、4…に沿って走行する円筒状鋼管1は、1パス
中に仮付溶接用トーチ3により仮付溶接が行われるとと
もに、その後段で多電極サブマージドアーク溶接機2に
より、継目1aの外面側に沿ってサブマージドアーク溶
接が行われる。
【0011】前記仮付溶接は、炭酸ガスまたは炭酸ガス
+Arガスを用いたガスシールドアーク溶接が行われ、
溶接方式は、連続仮付方式であると断続仮付方式である
とを問わない。前記連続仮付方式によれば、溶接速度を
著しく速くすることができるが、図4に示されるよう
に、仮付速度の上昇に伴って、スタッピングビードまた
はハンピングビードが発生しないビード良好範囲が狭め
られると同時に、アーク電圧範囲も狭められるため、綿
密な管理の下で操業されることが重要である。使用され
るワイヤ径は、板厚に応じてφ2.4〜φ4.0mm程度
の範囲とされ、アーク電流は、600A〜1300A程
度の範囲とされる。また、シールドガスの流量は50 l
/min〜100 l/min程度とされる。
【0012】前記仮付溶接トーチ3の離間距離lをもっ
て、円筒状鋼管1の進行方向前方に多電極サブマージド
アーク溶接機2が配設される。前記離間距離lは、10
00〜2000mmの範囲とされる。1000mm未満の場
合には、仮付溶接のスパッタがサブマージドアーク溶接
機2に付着したり、ワイヤ送給等における故障の原因と
なったり、開先倣いフラックス散布等のスペースを確保
できない。また、2000mmを超える場合には、仮付連
続締付機(ケージロール)の拘束から外れ、サマージ
ドアーク溶接中にシーム部の角変形を起こし、溶接部に
凝固割れを発生させる原因となる。また、シーム部の捩
じれが大きい場合、後続の溶接ヘッド自体のシーム追従
が不能となる。
【0013】図示の例では、本実施例におけるサブマー
ジドアーク溶接機2は6電極としているが、板厚、溶接
速度等に応じて適宜の電極数とすることができる。な
お、通常の例に従って、アークの干渉を抑えて溶融池を
安定に保つために、直流−交流の組合せとするか、また
は交流−交流の場合には位相差をもつようにする。
【0014】また、サブマージドアーク溶接の溶接条件
は、電極数、板厚等のよって異なるが、概ね電流は各極
500〜1600A程度、電圧は30〜50V、溶接速
(仮付溶接速度と同一)は1〜5m/分、使用ワイヤ
径はφ4.0〜φ8.0mmの範囲とされる。
【0015】以上の外面側溶接を終えたならば、引き続
き、次の溶接パスで内面側溶接を行う。内面側溶接は、
外面側溶接と同じくサブマージドアーク溶接を行うが、
その内面側溶接条件は外面側溶接条件に準じることがで
きる。
【0016】本発明においては、仮付溶接の直後位置に
おいて、内面側溶接に先立って外面側溶接を行うため
に、裏側からの溶け落ちが心配される。そのため、図1
に示されるグラフに従って、溶接入熱量と内面側開先深
さを管理する。図1は板厚別に、必要溶け込み量Pを確
保し、かつ溶け落ちの生じない外面側溶接を行うため
に、板厚に対応した溶接入熱量と開先深さXとの関係を
示したものである。図1の範囲は、材質、仮付溶接条
件、開先角度などの条件によって若干左右されるもの
の、従来から行われている仮付溶接条件、開先角度条件
等に基づく限り、適する範囲として設定できる。
【0017】なお、図1中における記号は、図2に示さ
れるように、T;母材板厚、P;母材の内外面一層の溶
接とするために必要な溶け込み量の範囲、X;板厚Tと
溶接入熱量により決定される溶け落ちをしないための内
面側の最高開先深さである。
【0018】図1に示されるグラフ中、板厚別のライン
各板厚でのX値を○印の値からX=0まで変化させ
て、6電極にてサブマージドアーク溶接を実施した場合
に必要な適性溶込み量として求めた。また、図中の必要
溶け込み量Pの範囲は、ミルの操業能率を考慮し、外面
仮付−SAW溶接ラインと下工程の内面溶接ラインの能
率(溶接速度)バランスから外面側の適性溶込み量を設
定したものである。
【0019】X/Tは溶接能率を考慮して0.3〜0.
5の範囲内とするのが望ましい。なお、開先角度は内外
とも50°〜100°とされる。
【0020】本発明における板厚別のより具体的な仮付
溶接条件および外面側溶接条件例を、それぞれ表1およ
び表2に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】〔実施例〕 U成形後O成形した鋼管に関し、板厚6〜40mmの範囲
について、種々内面開先深さと溶接入熱量を変化させ
て、溶け落ちの有無および溶込み深さについて調査を行
った。その結果を表3に示す。
【0024】
【表3】
【0025】表3より、各板厚別ライン上にプロットさ
れるXと入熱量の関係にあるとき、溶け落ちもなく、ま
た適性な溶込み深となり、良好な溶接が行われたことが
判明される。
【0026】
【発明の効果】以上詳説のとおり、本発明によれば、内
面側溶接に先行して外面側溶接を行うため、仮付溶接と
外面側溶接とを同一溶接パスにより行い得るようにな
り、溶接パス数の低減により生産効率の向上を図ること
ができる。また、外面側溶接に際して、入熱量と開先深
さを緻密に制御しているため溶け落ちが発生することが
ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】板厚別の溶接入熱量と開先深さの関係図であ
る。
【図2】図1における記号説明図である。
【図3】本実施例における仮付溶接および外面側溶接の
斜視図である。
【図4】仮付溶接における仮付速度とアーク電圧との関
係図である。
【符号の説明】
1…円筒状鋼管、2…サブマージドアーク溶接機、3…
仮付溶接用トーチ、4…ガイドロール

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】板状鋼板をプレス加工により円筒形に成形
    した後、管長手方向の継目に沿って管内外面の溶接を行
    うに当り、ガスシールドアーク溶接による仮付溶接とサブマージド
    アーク溶接による外面側溶接とを 同一溶接パスにて行
    い、次いで内面側のサブマージドアーク溶接を行うとと
    もに、 前記外面側のサブマージドアーク溶接に際し、溶接入熱
    量および内面側開先深さを、必要溶け込み量を確保しか
    つ溶け落ちが生じない条件とすることを特徴とする鋼管
    の溶接方法。
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