JPH0713258B2 - ステンレス鋼線の製造方法 - Google Patents

ステンレス鋼線の製造方法

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JPH0713258B2
JPH0713258B2 JP2118569A JP11856990A JPH0713258B2 JP H0713258 B2 JPH0713258 B2 JP H0713258B2 JP 2118569 A JP2118569 A JP 2118569A JP 11856990 A JP11856990 A JP 11856990A JP H0713258 B2 JPH0713258 B2 JP H0713258B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、加工性が良好で、かつ導電性と耐食性の向上
を図ったコイルばねに主として使用されるステンレス鋼
線の製造方法に関する。
[従来の技術] ステンレス鋼線は耐食性が良いことを利用してコイルば
ねなどに広く利用されている。このステンレス鋼線は伸
線加工の際、さらにはばね成形加工時表面の潤滑性が悪
いため、その製造に際し、ステンレスの表面に樹脂皮
膜、鉛、銅、ニッケルなどの金属メッキを施して潤滑性
を高めている。その中でも最も一般的なものがニッケル
めっきである。このニッケルめっきを施す前のステンレ
ス線の状態には硬質線そのものにめっきを施す場合と、
溶体化して軟かい状態でめっきを施す方法があるが、そ
れぞれ一長一短がある。すなわち硬質線にニッケルめっ
きを施してから溶体化処理を行う場合には、メッキ過程
で吸収した水素ガスを放出してその後の線の性質の向上
に寄与させたり、あるいはニッケルめっきとステンレス
母材との間に金属の拡散層を作って密着性を向上させる
利点がある。しかしこの方法では、硬質線をめっきする
ので線グセが悪くメッキ槽の中で、メッキ線が隣りの線
にからみついたり、電極棒との接点部分に接したり、離
れたりしてスパークを起しこの部分で疵を生じたりする
などの非常に多くの問題がある。そこでその対策として
溶体化処理してニッケルめっきを施す方法がある例えば
(特公昭62−16278号)。この場合、母線が軟かすぎて
メッキ装置のガイドでこすり疵を生じたり、又溶体化処
理時にボビン巻き取りを行う場合、ボビンの胴部で重な
り合った部分がクニック(微小曲り)を生じて、これが
メッキ浴中で蛇行して電極棒から外れて、スパークの原
因となったりする。又めっき前の母線は1100℃程度で溶
体化処理を行うためステンレスの表面層は軟かく又結晶
粒界が外部に数多く顔を出しめっき時の水素侵入場所を
多く与えている。又ステンレス素地が軟かすぎるとその
上に析出したニッケルがその後の伸線加工時ダイスとの
接触を受ける際、ニッケルそのものの潤滑性を充分に発
揮する以前に素地にニッケルが、めり込んでしまう場合
がある。その場合、析出したニッケルの結晶粒間の隙
間、すなわち潤滑剤の粉末がはまり込む隙間が減少し、
潤滑性が低下してしまう。
またステンレス母線にニッケルなどの貴の金属をメッキ
すると、使用雰囲気環境如何によっては、かえってステ
ンレス鋼自体の耐食性をそこなう場合もある。
[発明が解決しようとする課題] 本発明の目的とするところは、ニッケルめっき処理をお
こなう前に、ステンレス鋼線に加工硬化処理を施し、ニ
ッケルめっき処理を張力をかけた状態でおこなうことに
より、スパーク疵、接触疵、かき疵を防止するステンレ
ス鋼線の製造方法を提供することである。
本発明の別の目的は、ニッケルめっき処理をおこなう前
に、ステンレス鋼線に加工硬化処理を施することによ
り、ニッケルめっき処理時に水素が鋼線内部に侵入する
ことを防止し、もってステンレス鋼線の脆化を阻止する
ステンレス鋼線の製造方法を提供することである。
更に本発明の目的は、ニッケルめっき処理をおこなう前
に、ステンレス鋼線に加工硬化処理を施すことにより、
鋼線の硬さを、この表面に形成されるニッケルめっき層
よりも硬くし、もって、仕上加工時にニッケルめっき層
が鋼線に埋め込まれるのを防ぐとともに、ニッケルめっ
き層に多数の亀裂を生じせしめ、両者の作用により潤滑
剤の侵入領域を増大して、潤滑性を向上することができ
るステンレス鋼線の製造方法を提供することである。
本発明の更に異なる目的は、めっき層を半光沢ニッケル
めっき層/銅めっき層/光沢ニッケルめっき層の三層構
造とすることによりステンレス鋼線の耐食性を向上する
ステンレス鋼線の製造方法を提供することである。
[課題を解決する手段] この目的を達成するために、本発明のステンレス鋼線の
製造方法は、オーステナイト系ステンレス鋼線に溶体化
処理を施す工程と、溶体化処理した上記鋼線に、加工硬
化処理を施す工程と、加工硬化処理を施した鋼線に張力
を付加した状態でニッケルめっき処理をおこなう工程
と、ニッケルめっきした鋼線を仕上伸線処理する工程と
を具備したステンレス鋼線の製造方法である。
本発明の実施態様のステンレス鋼線の製造方法は、ステ
ンレス鋼線へのめっき処理が、半光沢ニッケルめっき、
銅めっき、光沢ニッケルめっきを順におこなう工程であ
る。
本発明の別の実施態様のステンレス鋼線の製造方法は、
溶体化処理する銅線が、下引き伸線加工されている。
本発明の別の実施態様のステンレス鋼線の製造方法は、
鋼線の加工硬化処理で得られる鋼線の表面硬度が、ニッ
ケルめっき処理で得られるニッケルめっき層の硬度より
も高くなるように加工硬化処理がおこなわれている。
本発明の実施態様のステンレス鋼線の製造方法は、仕上
伸線処理が、鋼線の組織中にαマルテンサイトが60〜90
%含まれるようにおこなわれている。
[作用および効果] 本発明のステンレス鋼線の製造方法によれば、ニッケル
めっき処理をおこなう前にステンレス鋼線に加工硬化処
理を施し、ニッケルめっき処理をテンションを掛けた状
態でおこなっている。従って、ニッケルめっき処理は、
処理されるステンレス鋼線の表面が硬くしかも真直ぐな
状態でおこなわれる。このためステンレス鋼線がニッケ
ルめっき処理設備の各ガイドや電極に接触することを防
止し、仮に接触してもステンレス鋼線に疵が付きにくく
なる。すなわち、めっき処理時におけるステンレス鋼線
のスパーク疵、接触疵、かき疵を防止することができ
る。
本発明のステンレス鋼線の製造方法によれば、ニッケル
めっき処理をおこなう前にステンレス鋼線に加工硬化処
理を施している。このため、ステンレス鋼線の表面に形
成されている結晶粒界(ここが水素の侵入経路となる)
を潰して、ニッケルめっき処理時にここから水素が鋼線
内部に侵入捕捉されることを阻止し、もってステンレス
鋼線の脆化を防止することができる。なお、素材を硬化
することによる水素脆化の助長が考えられるが、本発明
程度の加工では問題とはならず、むしろ粒界を潰すこと
の方が脆化防止に有効である。
更に本発明のステンレス鋼線の製造方法によれば、ニッ
ケルめっき処理をおこなう前に、ステンレス鋼線に加工
硬化処理を施すことにより、鋼線の硬さを、この表面に
形成されるニッケルめっき層よりも硬くすることができ
る。この結果、ステンレス鋼線が硬いので、初期の伸線
加工時にニッケルめっき層が鋼線に埋め込まれることが
なく、析出したニッケル結晶の粒界に多くの潤滑剤がは
まり込むと同時に、相対的に柔らかいニッケルめっき層
が塑性変形して、ニッケルめっき層に多数の亀裂が生
じ、この亀裂箇所にも潤滑剤が侵入することにより潤滑
剤の侵入領域を増大して、潤滑性を向上することができ
る。本発明の別のステンレス鋼線の製造方法によれば、
めっき層を半光沢ニッケルめっき層/銅めっき層/光沢
ニッケルめっき層の三層構造とすることにより、めっき
ステンレス鋼線が腐食環境下に置かれた場合、卑なる光
沢めっき層がアノードとなって溶解し、貴なる銅や半光
沢めっき層がカソードとして防食され、その結果、下層
にあるステンレス鋼線が保護され、その耐食性を向上す
る。
[発明の具体的な説明] 本発明のステンレス鋼線の製造方法は、まずオーステナ
イト系ステンレス鋼線を用意し、この鋼線に必要により
常法に従って下引き伸線処理を施す。ついで常法に従っ
た溶体化処理(約1100℃に加熱)後に、加工硬化処理を
おこなう(以下この処理で得られた鋼線を母線と称す
る)。この加工硬化処理は、母線表面に形成されるめっ
き層よりも母線の硬度が高くなるようにおこなわれるも
ので、通常、ビッカース硬さで50〜150程度向上させる
ように処理するのが好適である。すなわち、母線の硬度
はその線径によっても異なるが、概ねHv170〜230程度で
ある。またこの母線表面に析出形成されるニッケルめっ
き層の硬さは、めっきの条件(液の組成、液のpH、液の
温度、添加剤の有無など)により異なるが、通常のめっ
きではHv190〜250程度である。従って、ビッカース硬度
で50〜150程度向上させることにより、母線の硬度がニ
ッケルめっき層よりも概ね硬くなる。加工硬化処理は、
例えば、母線に圧延加工を施してもよく、また線引き用
ダイスにより線径を1/10〜1/30程度細くすることにより
なされる。この加工硬化処理後又はこの処理と同時に、
母線に張力を付加して伸直に保持した状態でめっき処理
槽内に母線を通す。
母線のめっき処理をおこなうと、水素が母線内に侵入し
ようとするが、上記加工硬化処理により母材表面に露出
していたオーステナイト組織の結晶粒界(ここが水素の
侵入しやすい箇所となる)が押し潰されており、母線へ
の水素吸蔵量が減少する。母線のめっき処理は、常法に
従って、通常のニッケルめっき処理をおこなってもよ
く、また、半光沢ニッケルめっき、銅めっき、光沢ニッ
ケルめっきを順に行って三層のめっき層を形成するよう
にしてもよい。三層のめっき層を形成した場合、めっき
ステンレス鋼線が腐食環境下に置かれた場合、卑なる光
沢めっき層がアノードとなって溶解し、貴なる銅や半光
沢ニッケルめっき層がカソードとして防食され、その結
果、下層にあるステンレス鋼線が保護され、その耐食性
を向上する。
めっき層を形成した後、仕上伸線加工をおこなうと、め
っき層に比べて母線の硬度が高いため、ニッケルめっき
層が鋼線に埋め込まれることがなく、相対的に柔らかい
ニッケルめっき層が塑性変形して、ニッケルめっき層に
多数の亀裂が生じ、この亀裂箇所に潤滑剤が侵入するこ
とにより潤滑剤の侵入領域を増大して、潤滑性を向上す
る。
このようにして製造されたステンレス鋼線を伸線加工を
施すとオーステナイト組織は加工によってマルテンサイ
ト組織に変化し硬度を増して強度が上昇する。オーステ
ナイトからマルテンサイト組織に変化する度合はステン
レスを構成するニッケルやクロームやカーボンなどの含
有元素の量によって異なりばね用線としてはニッケル8
%、クローム18%カーボン0.07%程度を含有する18−8
ステンレスが最も一般的である。この成分のものををば
ね用線材として使用する場合には、加工を加えることに
よって発生するマルテンサイトの量が60%〜90%の組織
の機械的性質が最も適している。このマルテンサイト量
を発生せしめるためには、常温環境下では、母線の直2
に対し、その1/2〜1/4程度の仕上り径まで引き伸ばせば
よい。マルテンサイトの量が60%以下では強度不足であ
り、90%以上となければ脆化を生じて好ましくない。オ
ーステナイトからマルテンサイトを生じる度合は、加工
の程度のみでなく加工を加える時の温度によっても著し
く変化するものであるから加工温度を充分に管理して線
引加工を行うことが重要である。
このように種々の特長ある製法によって製造したばね用
ステンレス鋼線は、表面的にも好潤滑性を有しているた
めその後の成形加工性もよく、又出来上ったばねも通電
性、耐食性そして強度的にも最適の製品と云える。
[実施例] 次に実施例によって、本発明を具体的に説明する。
実施例及び比較例 第1表に示す元素を含むオーステナイト径ステンレス鋼
材を用いて次の各種の方法でステンレス鋼線を製造し
た。
A:(従来方法:母線への加工硬化処理、張力付加をおこ
なわない) 溶体化処理した直径1.5mmφのボビン巻きした母線に5.0
μmのニッケルメッキを施した後直径を1/3の0.5mm迄線
引き加工し、これをコイルばねに加工した。
B:(従来方法:母線への加工硬化処理、張力付加をおこ
なわない) 強度の伸線加工を施した1.5mmφの硬引線を5.0μmの厚
さのニッケルメッキを施した後溶体化処理を行い、直径
を1/3の0.5mm迄線引き加工を行った。
C:(本発明方法) 溶体化処理した直径1.6mmφのボビン巻した母線に軽度
の圧延加工を加えて1.5mmφに仕上げながら5.0μmの厚
さでニッケルメッキを施し、直径を1/3の0.5mmφ迄線引
き加工を行いこれをコイルばねに加工した。なおメッキ
時には30kg程度のバックテンションを加えた。軽度の圧
延加工後の母線の硬度は280Hv、ニッケルメッキ層の硬
度は190Hvであった。
D:(本発明方法) 溶体化処理した直径1.6mmφのボビン巻きした母線に軽
度の圧延加工を加えて1.4mmφに仕上げながら厚み2μ
mの半光沢ニッケルメッキを施しその上に2μmの銅メ
ッキを施し更にその上に2μmの光沢ニッケルメッキを
施して後直径を1/3の0.50mmφ迄線引き加工を行い、こ
れをコイルばねに加工した。なおメッキ時には30kg程度
のバックテンションを加えた。軽度の圧延加工後の母線
の硬度は290Hv、ニッケルメッキ層の硬度は200Hvであっ
た。
ここで使用されためっき処理ラインを第3図に示す。図
中1は母線、2は圧延ローラー、3は引き出しキャプス
タン、4は前処理層、5は半光沢ニッケルめっき層、6
は銅めっき層、7は光沢ニッケルめっき層、8は引出し
キャプスタン、9はめっき後のステンレス鋼線を示す。
第2表は、これら諸テスト品を線引き加工した後の機械
的性質と表面観察による平坦率を調査したものである。
この表から従来法と本発明法とを比較すると平坦率で明
らかに本発明品Cの平坦率が特に小さく潤滑性の良好な
ことが判る。また、本発明品Cは、強度が高いにも拘ら
ず絞り率が大きい。更に本発明品Dも、従来品A及びB
に比較して平坦率は小さく、絞り率が大きく、潤滑性及
び靱性が優れていることが判る。
第3表には、メッキ工程で生じたスパーク疵を5000mの
長さについて30μ以上の深さの疵を別ラインで伸線加工
時に渦電流探傷器で確認したものである。
明らかに硬質線をメッキしたものBはスパーク疵が著し
く多く認められ、溶体化処理したものを軽度の圧延加工
してめっき作業を行ったものC及びDではスパーク疵は
認められなかった。それは線が伸直化されたためと、且
つバックテンションが加わりメッキライン上を真直ぐな
状態で走行するためと考えられる。スパークの残存疵
は、ばね成形加工時の折損を生じる問題をのこす。
第4表に、各テスト材の導電率を測定し比較した値を示
す。
銅メッキした本発明品Dは明らかに導電率の向上が認め
られる。
[ばねコイリング性] A,C,Dを供試材として、第1図に示す如きばねを2000個
制作し自由長Lの分布を測定した結果第2図に示す如き
分布が得られた。
この結果Cが最もバラツキが少なく、次はDで、AはC
とDに比較してばらつきが幾分大きかった。
[塩水噴霧テストによる耐食性] A及びDを供試材としてJIS Z2371による塩水噴霧試験
を行った。その結果を表−5に示す。
この結果から判る通り、Dの発明品、すなわち半光沢ニ
ッケル+銅+光沢ニッケルの複合メッキ品は従来のニッ
ケル単独のメッキ品に比較して明らかに、赤錆の初期発
生迄の時間が長く、しかもその後の全錆の程度も少なく
耐食性が優れていると云える。
以上説明したごとく、本発明は製造工程上における品質
も安定し、これによって作り出すステンレス線の電導
性、耐食性が向上し、又最終製品であるばねの形状も安
定した良い製品が作り出されることになる。
以下、本発明の効果を以下の実験例により確認した。
実験例1(表面硬さと疵との関係) 電極棒の重さを750grとし2.0mmφのワイヤーを10m/min
のスピードで1Hr走らせた場合にステンレスワイヤーの
表面硬さを変えて疵の発生状況を調査した(電極棒との
摩擦疵のみ調査)。対象とした疵の種類は「50μm以上
の目玉」、「巾100μm以上のカキキズ」、「連続した
巾50μm以上のキズ(100mで1ケと見る)」、「スパー
ク疵(大小を問わず)」である。
疵は明らかに電極棒よりもステンレス肌がより硬くなる
と急激に減少してHvで100程度の差がある場合には殆ん
ど無くなり、逆にHv50程軟かくなっただけで急激に増加
することが判る(第4図参照)。
実験例2(バックテンションの大きさと疵との関係) 実際のメッキラインに2.0mmφを10m/minで走らせてテス
トした。溶体化処理材ではバックテンションがゆるい場
合には陰極棒でのスパーク疵や途中のガイドとの接触疵
がかなり認められる。硬化処理材の方が溶体化処理材よ
りも明らかに疵は少なくこの場合でもバックテンション
の大きい方が疵は減少し、30kgで殆んど無くなる(第5
図参照)。なお、硬化処理をダイスで引き抜きこの場合
に要する引抜き力をそのままバックテンションに利用す
る場合には減面率20%で90kg程度のバックテンションに
なる。
実験例3(硬化処理におけるニッケルの素地への最大め
り込み率) 析出ニッケルの硬さをHv220としステンレス母線の表面
硬度を変化させてこれにニッケルメッキを施し、減面率
20%の引抜加工で硬化処理を施した場合、ニッケルのス
テンレス素地への最大めり込み率を金属顕微鏡観察で求
めた。この結果母線の硬さが概ねHv230以上であればめ
り込み率は小さく、逆にメッキ層への素地のめり込みが
幾分認められるようになる。素地へのニッケルのめり込
みの程度を見る「最大めり込み率」とは次の如き内容で
ある。すなわち素地へニッケルがめり込むのをプラス、
逆にニッケルへ素地がめり込むのをマイナスの符号で表
わし、いずれにもめりこまないのを0で表わした。即ち
めっき直後は0であるが、これに伸線加工を加えて行く
と、いずれかがめり込みながら、加工度が増加するにつ
れてめっき層の厚みの絶対値を漸次減少して行く。最大
めり込み率とは、初めのめっき厚みに対し、その時の伸
線加工によっていずれかの方向に最も深くめり込んだ所
を横断面上でさがし出して、その割合で呼ぶ。例えば、
第7図の記号A,B、Cを用いて表現すること(1−B/A)
×100又は(1−C/A)×100=最大めり込み率となる。
ただし、|B|≦|A|≦|C|の条件有 A−B>Cの場合−めっき層への素地のめり込み、A−
B<Cの場合+素地へのめっきのめり込み、この状態を
実際の顕微鏡写真で示す第8図〜第11図になる。
しかし、この考え方は、伸線加工の初期段階、すなわち
減面率が50%(伸線前の母線の直径に対して約7割程の
直径となる加工)程度までの範囲で適用できるもので、
表面潤滑性はこの段階までの加工で概ね決定される。そ
れ以上の伸線加工となると、素線及びニッケルめっき層
のそれぞれの加工効果の違いや、めっき層が非常に薄く
なっていくことから、相互へのめり込み上体が複雑とな
り、一律に律することはできなくなる。第8図はめっき
直後の母線の横断面の顕微鏡写真を示す。第9図はめっ
き層と素地の硬さがほぼ同じ状態、第10図はニッケルめ
っきがステンレス素線よりも硬い場合(従来品)、第11
図はステンレス素線がニッケルめっきよりも硬い場合
(本発明品)のめっき線をそれぞれ15%(第9図)、35
%(第10図)、35%(第11図)の減免率の伸線加工を施
したものの顕微鏡写真である。なおニッケルめっきとス
テンレス素線との硬度差はそれぞれHvで±70程度のもの
である。
実施例4(水素脆性に対する加工硬化処理の影響) ステンレス線の表面には、ハンドリング中の汚れ、酸化
皮膜、油脂分などの附着がある場合、それ等を完全に除
去しておかないと、その後のニッケルメッキの密着性に
悪い影響を生じ剥離する場合もある。
従って、ステンレス線の表面清浄には優れた電解処理法
が採用されなければならない。最近の最も優れている電
解清浄法を採用する場合、即ち、処理する線とは無接触
で、電解洗浄を強力に行う無接触交番電解法があるが、
この場合通常の陰極又は陽極電解洗浄法に比して10倍〜
20倍の大電流密度が採用出来るのでそれだけ強力な表面
処理が可能である。しかし一方においては、素材が陰極
となる場合、その表面から発生する水素の量は極めて多
く、通常の接触陰極電解法で発生する程度の水素量で
は、比較的鈍感と云われている溶体化したオーステナイ
ト系ステンレス線の場合でも、充分に留意する必要があ
る。更にまた、その後の伸線加工でα′マルテンサイト
を発生するオーステナイト系ステンレス鋼線の場合、水
素が侵入すれば、その量は僅かでも脆化への水素の影響
は大きくなる。ステンレス表面から水素が内部に侵入す
る侵入路としては溶体化されたステンレスでは再結晶後
のフレッシュな結晶粒界が大きな役割を果たしている。
従って、表面に露出している結晶粒界を押し潰して、水
素の侵入路を減少せしめることが内部に侵入する水素を
減少せしめることに大いに寄与することになる。一般に
強度の加工をおこなえば、その後のめっきによる水素脆
性が起こりやすいと言われているが、本発明程度の加工
では問題はない。
そこで、本発明ではステンレス表面を圧延ローラーで圧
延し、結晶粒界を押し潰すわけであるが、その実験例に
よる効果を次に示す。
まず3.8mmφの溶体化したステンレス線を硫酸200g/lの
浴組成で無接触交番電解清浄法を採用し60A/cm2の電流
密度で30秒処理した母線と、4.05mmφの溶体化処理した
ステンレス線をローラーダイスで3.8mmφ迄圧延し、こ
れを前述した方法と全く同じ条件で処理した線の2種類
に厚み3μmのニッケルメッキ処理を施し、両者の水素
の吸蔵量を測定比較し、更にこれらの線を1.8mm迄連続
伸線機で伸線し、これらの線の捻回値及び絞り率を測定
比較した。それらの結果を第12図、第13図、第14図に示
す。図から、本発明法はガスの吸収は少なく、捻回値と
絞り率の向上が認められる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明方法に係るステンレス鋼線からなるコイ
ルばねの一例を示す図、第2図はこのコイルばねの自由
長のバラツキを示す分布図、第3図は本発明方法に係る
めっき処理ラインの模型図、第4図はステンレス鋼線の
表面硬さ(Hv)と疵の数との関係を示す図及び実験の模
型図、第5図はバックテンション(kg)と疵の箇数との
関係を示す図、第6図はステンレス鋼線の表面硬さ(H
v)と素地への最大めり込み率(%)との関係を示す
図、第7図はめっき粒子の素地へのめり込み状態を示す
図、第8図ないし第11図は、めっき粒子の素地への異な
るめり込み状態を示す表面層近傍の金属組織の顕微鏡写
真、第12図ないし第14図は本発明のステンレス鋼線の水
素ガス含有率、素線の捻回値、素線の絞り率%をそれぞ
れ従来のステンレス鋼線と比較して示す図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】オーステナイト系ステンレス鋼線に溶体化
    処理を施す工程と、溶体化処理した上記鋼線に、加工硬
    化処理を施す工程と、加工硬化処理を施した鋼線に張力
    を付加した状態でニッケルめっき処理をおこなう工程
    と、ニッケルめっきした鋼線を仕上伸線処理する工程と
    を具備したステンレス鋼線の製造方法。
  2. 【請求項2】オーステナイト系ステンレス鋼線に溶体化
    処理を施す工程と、溶体化処理した上記鋼線に、加工硬
    化処理を施す工程と、加工硬化処理を施した鋼線に張力
    を付加した状態で、半光沢ニッケルめっき、銅めっき、
    光沢ニッケルめっきを順におこなう工程と、このように
    めっき層を形成した鋼線を仕上伸線処理する工程とを具
    備したステンレス鋼線の製造方法。
  3. 【請求項3】溶体化処理する鋼線は、下引き伸線加工さ
    れている請求項1または2に記載のステンレス鋼線の製
    造方法。
  4. 【請求項4】鋼線の加工硬化処理は、この処理で得られ
    る鋼線の表面硬度が、ニッケルめっき処理で得られるニ
    ッケルめっき層の硬度よりも高くなるようにおこなわれ
    る請求項1ないし3のいずれかに記載のステンレス鋼線
    の製造方法。
  5. 【請求項5】仕上伸線処理は、鋼線の組織中にα′マル
    テンサイトが60〜90%含まれるようにおこなわれる請求
    項1ないし4のいずれかに記載のステンレス鋼線の製造
    方法。
JP2118569A 1990-05-10 1990-05-10 ステンレス鋼線の製造方法 Expired - Fee Related JPH0713258B2 (ja)

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